擬似患者体、医療用診療台、及び医療用実習装置
【課題】屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことのできる擬似患者体、医療用診療台、及び医療用実習装置を提供することを目的とする。
【解決手段】座部シート3aと背板シート3bの屈曲角度を調整可能な診療台3に載置可能な医療実習用の医療用実習装置1であって、座部シート3aと背板シート3bの関節機構21による屈曲に対応して可動する胴体模型2bと脚部模型2dとの間の可動部を有するとともに、診療台3における載置許容面31と当接する臀部対応部分2eに、診療台3に係着する係着手段60を備えた。
【解決手段】座部シート3aと背板シート3bの屈曲角度を調整可能な診療台3に載置可能な医療実習用の医療用実習装置1であって、座部シート3aと背板シート3bの関節機構21による屈曲に対応して可動する胴体模型2bと脚部模型2dとの間の可動部を有するとともに、診療台3における載置許容面31と当接する臀部対応部分2eに、診療台3に係着する係着手段60を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療教育、特に歯科医療の教育において、切削等の実習教育に用いる医療実習用の擬似患者体、当該擬似患者体を載置可能な医療用診療台、擬似患者体と医療用診療台とで構成する医療用実習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療教育、特に歯科医療の教育では、人体頭部模型等に植立させた歯牙に対して切削等を行うような実習教育が行われており、様々な医療用実習装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、頭部模型を有する擬似患者体に対する治療状態を擬似患者体の口内などに設けたセンサで検出して、擬似患者体の目、瞼などを駆動制御することにより実際の患者の動き、表情を再現させる医療用シミュレータが提案されている。
しかしながら、上述の医療用シミュレータは、頭部だけであり、実際の臨床からかけ離れており臨場感がないため、実習教育としては十分な効果を得ることができなかった。
【0004】
そこで、特許文献2では、診療状態に応じて、表情を変化させる擬似患者体駆動手段を内蔵するとともに、目、鼻および口腔を有する頭部模型と、胴体模型と、腕模型と、脚部模型とで構成した擬似患者体を、医療用診療台に載置する医療用実習装置が提案されている。
【0005】
このように、表情を変化させる擬似患者体駆動手段を内蔵するとともに、目、鼻および口腔を有する頭部模型を備えたことにより、診療台の姿勢、器具の動作、及び擬似患者体の受診状態に基づいて、擬似患者体の表情を変化させることで、実際の臨床に近い臨場感のある実習を行うことができるとされている。
【0006】
しかし、通常の医療用診療台は、背板と座板との屈曲角度を調整可能に構成しているため、座板に対する背板の起伏角度を調整した際に擬似患者体が患者体の体軸方向、つまり身長方向に位置ズレするおそれがあり、起伏角度を調整しながらの実際の臨床に近い臨場感のある実習では、安心して施術できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−233585号公報
【特許文献2】国際公開第2008/023464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことのできる擬似患者体、医療用診療台、及び医療用実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置可能な医療実習用の擬似患者体であって、前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有するとともに、前記医療用診療台における診療台載置許容面と当接する当接部分に、前記医療用診療台に係着する係着手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記屈曲角度は、座板に対する背板、あるいは背板に対するヘッドレストの角度であり、上記屈曲角度を調整可能な屈曲部は、座板と背板、あるいは背板とヘッドレストとの間の部分とすることができる。
【0011】
上述の前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部は、座板と背板との屈曲部に対応する腰部、あるいは背板とヘッドレストとの屈曲部に対応する頸椎部、さらには、これらの両方とすることができる。
【0012】
上述の前記医療用診療台における診療台載置許容面と当接する当接部分は、仰向け姿勢で載置する擬似患者体における背面側であり、詳しくは、座板に当接する太腿部、座板と背板との屈曲部に当接する臀部、背板に当接する腰部、背中部または二の腕部、ヘッドレストに当接する後頭部、肘掛に当接する前腕部、あるいはこれらの組み合わせとすることができる。
【0013】
前記係着手段は、医療用診療台の屈曲部の屈曲による位置ズレを防止するための手段であり、屈曲方向に沿った平面、つまり医療用診療台の長手方向に沿った垂直面に略一致する体軸方向に少なくとも係着できればよく、さらには脱着可能に係着できればよい。そのため、前記係着手段は、例えば、医療用診療台の凹部(凸部)と嵌合する凸部(凹部)、粘着シート、剥離可能な接着剤、後述する係止手段、医療用診療台における診療台載置許容面に対して吸着する吸盤、あるいは医療用診療台に対して吸着する永久磁石や電磁石等とすることができる。
【0014】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0015】
詳述すると、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置する擬似患者体に、前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有するため、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりして、実際の臨床に近い臨場感のある実習を行うことができる。
【0016】
しかしながら、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりすると、実際の患者は無意識に位置がずれない様に踏ん張ったり、肘掛部を持ったりするため位置ズレすることはないが、前記医療用診療台における診療台載置許容面に載置した擬似患者体は、体軸方向に位置ズレする可能性がある。そこで診療台載置許容面に当接する当接部分に、前記医療用診療台に係着する係着手段を備えたことにより、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりしても、医療用診療台に対して擬似患者体が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0017】
また、係着手段を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体と医療用診療台とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体を取り換えることができる。したがって、例えば、成人型の擬似患者体、老人型の擬似患者体、子供型の擬似患者体のように、複数種類の擬似患者体を用意し、実習目的に応じて適した擬似患者体を容易に交換し、実習に用いることができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0018】
この発明の態様として、前記係着手段を、前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に備えた被係止手段と係止する係止手段で構成することができる。
【0019】
上記係止手段及び被係止手段は、例えば、当接部分に備えたフックと当接対応部分においてフックの係止を許容する部分、面ファスナ、線状のファスナ、ホックボタン、スナップボタン、当接対応部分において体軸方向に交差する方向に配置した被係止溝と当該被係止溝に係止する当接部分に備えた係止凸部、当接対応部分において体軸方向に交差する方向に配置した被係止レールと当該被係止レールに係止する当接部分に備えた係止凹部等とすることができる。
【0020】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0021】
詳述すると、当接部分に係止部を備え、前記医療用診療台側の当接対応部分に係止部と係止する被係止部を備えたことにより、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりしても、医療用診療台に対して擬似患者体が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、前記係止手段を、フック状面ファスナで構成することができる。
この発明により、簡易な構造かつ安価で、実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。また、被係止手段を構成するループ状面ファスナ、係止手段を構成するフック状面ファスナはともに、可撓性を有する面状体であるため、診療台載置許容面のクッション性を損なうことなく、医療用診療台に対して擬似患者体をしっかりと係止することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備え、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えることができる。
【0024】
上記駆動部は、座板と背板との屈曲部に対応する腰部、あるいは背板とヘッドレストとの屈曲部に対応する頸椎部、さらには、これらの両方で構成する可動部を駆動するだけでなく、擬似患者体の表情を変化させるための目、瞼、顎などを駆動する駆動部、さらには意思表示するための上肢などの可動部を駆動させてもよい。
なお、駆動源とは、電気的な駆動部を駆動させるための電力、あるいは、空気圧等の流体圧力によって駆動する駆動部に対する流動体とすることができる。
【0025】
この発明により、さらに実際の臨床に近く、より臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
詳しくは、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えたことにより、制御部によって制御された駆動部によって可動部が駆動するため、治療に対する反応等を表現でき、さらに実際の臨床に近く、より臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0026】
また、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えたことにより、診療台側コネクタに接続された接続コネクタを取り外すことで、容易に擬似患者体を外すことができる。したがって、例えば、実習目的に応じた擬似患者体を容易に交換することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記医療用診療台における前記診療台載置許容面に配置した前記診療台側コネクタに対して接続許容する前記接続コネクタを、前記当接部分に配置することができる。
【0028】
この発明により、接続状態にある診療台側コネクタと接続コネクタとが、診療台載置許容面と当接部分との間に配置され、医療用診療台に擬似患者体を載置した状態において、外観上露出しないため、実習の臨場感を向上することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、女性を模した外観形状で構成することができる。
この発明により、実習者は緊張感を持って実習に取り組むことができる。一般的に男性より女性の方が、治療に対して、あるいは不要な接触に対して敏感に反応することが知られているため、女性を模した外観形状の擬似患者体を用いることで、実習者は緊張感を持って実習に取り組むことができる。
【0030】
またこの発明は、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有し、医療実習用の擬似患者体を載置可能な医療用診療台であって、前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有する前記擬似患者体において、診療台載置許容面と当接する当接部分に備えた係着手段の係着を許容する被係着部を備えたことを特徴とする。
【0031】
前記被係着部は、医療用診療台の屈曲部の屈曲による擬似患者体の位置ズレを防止するための手段である係着手段の係着を許容する部分であり、脱着可能に係着できればよい。そのため、前記被係着部は、例えば、擬似患者体に形成した嵌合する凸部(凹部)、粘着シート、剥離可能な接着剤、後述する係止手段等などの係着手段が係着できる部分とすることができる。
【0032】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0033】
また、被係着部を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体と医療用診療台とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体を取り換えることができる。したがって、例えば、成人型の擬似患者体、老人型の擬似患者体、子供型の擬似患者体のように、複数種類の擬似患者体を用意し、実習目的に応じて適した擬似患者体を容易に交換し、実習に用いることができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0034】
この発明の態様として、前記被係着部を、前記当接部分に備え、前記係着手段を構成する係止手段と係止する被係止手段で構成し、該被係止手段を、前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に配置することができる。
【0035】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりする実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記被係止手段の不使用時に、前記診療台載置許容面から前記被係止手段を露出させない露出回避手段を備えることができる。
上記露出回避手段は、診療台載置許容面に設けた被係止手段を覆って外観上露出させない手段、診療台載置許容面に設けた被係止手段を引っ込めて外観上露出させない手段、診療台載置許容面に対して取り外し可能に被係止手段を構成し、取り外すことによって不使用時に露出させない被係止手段、あるいは被係止手段が形成され、交換可能に構成された座板または背板自体を、被係止手段を備えていない座板または背板に交換する等で構成することができる。
【0037】
この発明により、実習を行わないときには、医療用診療台を通常の施術用の医療用診療台として用いることができる。したがって、医療用診療台を実習用のみならず通常の施術用としても用いることができ、医療用診療台の利用率を向上させ、無駄を省くことができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、前記係止手段を、フック状面ファスナで構成することができる。
この発明により、簡易な構造かつ安価で、実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。また、被係止手段を構成するループ状面ファスナ、係止手段を構成するフック状面ファスナはともに、可撓性を有する面状体であるため、診療台載置許容面のクッション性を損なうことなく、医療用診療台に対して擬似患者体をしっかりと載置することができる。さらには、通常の施術用に医療用診療台を用いる場合においても、被係止手段を構成するループ状面ファスナによる座り心地の悪さが生じることを防止できる。
【0039】
また、ループ状面ファスナで構成する被係止手段を、当接対応部分において、デザイン性高く配置することによって、診療台載置許容面のデザイン性を向上することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記擬似患者体に、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えるとともに、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記擬似患者体に備えた接続コネクタに対して接続許容する診療台側コネクタを備えることができる。
【0041】
この発明により、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えたことにより、制御部によって制御された駆動部によって可動部が駆動するため、治療に対する反応等を表現できるため、さらに実際の臨床に近く、より臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0042】
また、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えたことにより、診療台側コネクタに接続された接続コネクタを取り外すことで、容易に擬似患者体を外すことができる。したがって、例えば、実習目的に応じた擬似患者体を容易に交換することができる。
【0043】
またこの発明の態様として、前記接続コネクタを、前記当接部分に配置するとともに、前記診療台側コネクタを、前記診療台載置許容面に配置することができる。
この発明により、接続状態にある診療台側コネクタと接続コネクタとが、診療台載置許容面と当接部分との間に配置され、外観上露出しないため、実習の臨場感を向上することができる。
【0044】
さらにまたこの発明は、上述の擬似患者体と、上述の医療用診療台とで構成する医療用実習装置であることを特徴とする。
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことのできる擬似患者体、医療用診療台、及び医療用実習装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】医療用実習装置の斜視図による説明図。
【図2】医療用実習装置のブロック図。
【図3】医療用実習装置の概略断面図による説明図。
【図4】第2実施形態の医療用実習装置の斜視図による説明図。
【図5】第2実施形態の医療用実習装置の概略断面図による説明図。
【図6】第2実施形態における医療用実習装置として使用しない状態の医療用診療台の斜視図。
【図7】第3実施形態の医療用実習装置の概略断面図による説明図。
【図8】第4実施形態の医療用実習装置の斜視図による説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0047】
以下、本発明による医療用実習装置1について、図1乃至3とともに説明する。
図1は医療用実習装置1の斜視図による説明図を示し、図2は医療用実習装置1のブロック図を示し、図3は医療用実習装置1の概略断面図による説明図を示している。
【0048】
詳しくは、図1は擬似患者体2を診療台3の上方に配置した状態の医療用実習装置1の斜視図を示している。また、図3(a)は診療前ポジションにおける医療用実習装置1の概略断面図を示し、図3(b)は診療中ポジションにおける医療用実習装置1の概略断面図を示している。
【0049】
医療用実習装置1は、図1に示すように、女性患者を模した擬似患者体2と、擬似患者体2を載せて治療を行うための診療台3(医療用診療台に対応)と、GUIとして各種情報を表示し、擬似患者体2に対する各種指令を受け付ける情報処理装置4(制御部に対応)と、各種診療器具を備えた器具台(図示省略)とで構成されている。
【0050】
なお、図示省略する器具台は、診療台3にアームを介して回動可能に取付けたテーブルの手前側に器具ホルダを備え、そこにエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどの切削を行う診療器具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジなどの各種診療器具を着脱可能に取付け、テーブルの上方には表示部を設けて、患者のカルテを呼出表示したり、実習中の診療器具の操作内容などがモニタできたりするように構成しており、それぞれの詳細な構成やバリエーションについては既に公知であるため、詳細の説明を省略する。
【0051】
擬似患者体2は、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成し、その内部に、後述する擬似患者体2の姿勢、表情を変化させる擬似患者体駆動手段D、擬似患者体2に対する診療状態を検出する受診状態検出手段C(いずれも図2の機能ブロック図参照)を備えている。
【0052】
なお、人体に酷似した外観にするため、擬似患者体2は、全体、あるいは衣服を着用させる場合には服から露出する部分を、人工皮膚で覆うとともに、頭部模型2aに頭髪となるカツラを被せ、外観上女性患者に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成している。
【0053】
詳しくは、擬似患者体2は、上述したように、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成され、頭部模型2aと胴体模型2bとの間、胴体模型2bと左右の脚部模型2dとの間、胴体模型2bと左右の脚模型2dとの間、さらには、左右の腕模型2cのひじ部、脚部模型2dのひざ部には、関節機構21を設けて、人体の関節と同様な動きをなすように屈曲自在になっている。
【0054】
可動部に対応する関節機構21は、骨格を構成するため相互に枢着された2本の主ロッド(図示省略)に、エアシリンダ(図示省略)を付設し、エアシリンダのロッドを進退させることで、2本の主ロッドによって屈曲動作可能に構成している。
【0055】
また、擬似患者体2の頭部模型2aは、人体に酷似した外観にするため、上述したように、皮膚に似た柔らかさのシリコンゴムで形成した人工皮膚を顔面に被せるとともに、頭部に頭髪となるカツラが被せている。
【0056】
また、擬似患者体2は、顔面の各部、眼球、瞼、眉毛、頬、口、唇、首22を駆動する駆動手段の他、音声を出するために音声出力手段を備えており、これらそれぞれに備えた駆動手段(後述する擬似患者駆動手段D)を駆動することで、人に酷似した顔面表情を出している。さらに、頬には接触センサを備え、その検出信号は、後述する受診状態検出手段Cに送信する。
【0057】
首22は、頭部模型2aと胴体模型2bとを前後、左右に傾倒可能に連結するジョイント機構を備えている。これにより、首22は、ジョイント機構によって前後に+10度から−30度まで、左右に±45度の範囲で傾倒でき、左右に±45度の範囲で回動できるようになっている。
【0058】
また、図示省略するが、頭部模型2aに内蔵する顎模型は、上顎模型と下顎模型とを組み合わせて構成し、上顎模型や下顎模型には、歯牙が1本毎に交換可能に植立している。これによって、切削実習をした際に消耗した歯牙を交換したり、虫歯や歯石を付けた特別な歯牙に交換したりすることができる。また、顎模型は、子供用の小さい模型や、歯牙が植立されていない無歯顎の模型にも交換可能に構成している。
【0059】
また、上顎模型や下顎模型は、実習時の処置、治療を検出するため、以下に示すような各種センサを備えている。より具体的には、診療器具が歯牙に接触したときの衝撃を検出する衝撃センサ、切削治療時に歯牙や上下顎に加えられる圧力を検出する圧力センサ、振動を検出する振動センサ、温度上昇(例えば、印象採得時、レーザ切削時など)を検出する温度センサ、歯牙の切削度合いを検出する導通あるいは抵抗値の変化を検出するセンサを設けている。そして、これらのセンサによって検出された受診状態検出信号は後述する制御手段I(図2におけるCPU)に送信され、実習時における擬似患者体2の受診状態が客観的に把握でき、受診データとして利用できる。これらのセンサは、受診状態検出手段Cにまとめられ、さらに診療状態検出信号として出力されて、情報処理装置4に送出される。
【0060】
さらには、上述したような擬似患者体2における各種駆動手段を駆動するための駆動源であるエアーの供給を許容する駆動源供給管路23と、後述する情報処理装置4と電気信号を通信する通信ケーブル24とを、擬似患者体2の底面側、即ち擬似患者体2の背面側から延出している。なお、駆動源供給管路23と通信ケーブル24とには、後述する情報処理装置4の上面に備えた被接続コネクタ43a,44aに接続する接続コネクタ23a,24aを備えている。
【0061】
また、診療台3において、後述する座部シート3a、背板シート3b、及びヘッドレスト3cの少なくともいずれかの上面の一部を、擬似患者体2を載置する診療台載置許容面とした場合において、診療台載置許容面に当接する当接部分である胴体模型2bの背面側と、脚部模型2dの背面側の間の臀部対応部分2eには、係止手段に対応するフック状面ファスナ51を備えている。フック状面ファスナ51は、平面視略正方形状に形成された可撓性を有するシート状であり、後述する診療台3に備えたループ状面ファスナ52(被係止手段に対応)と係止可能な面ファスナ50(係着手段及び係止手段に対応)を構成している。
【0062】
診療台3は、基台30に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動可能なヘッドレスト3cとで構成している。なお、座部シート3aと背板シート3bとの間、及び背板シート3bとヘッドレスト3cとの間は、他方に対して屈曲可能に構成している。
【0063】
これらを診療状況に応じた最適位置に制御するため、図示省略する座部シート昇降手段、背板シート傾倒手段、ヘッドレスト傾倒手段等の油圧シリンダや電動モータ等によって駆動するシート駆動部を設け、フートコントローラ等の操作手段によって操作制御されるよう構成している。
【0064】
また、座部シート3a、背板シート3b、及びヘッドレスト3cにおいて、図1における上面を、診療台載置許容面として機能する載置許容面31とし、座部シート3aにおける背板シート3b側に、上述のフック状面ファスナ51と係止するループ状面ファスナ52を備えている。なお、ループ状面ファスナ52は、フック状面ファスナ51と同様に、平面視正方形状に形成した可撓性のシート状体であるが、フック状面ファスナ51に比べて、ひと回り大きな平面寸法で形成している。
【0065】
情報処理装置4は、診療台3の近傍に擬似患者体制御操作部Gとして機能する移動可能な操作ボックス40として配置され、PC本体を内蔵している。
操作ボックス40の上面には、液晶モニタ等の表示手段41や、キーボード、マウス等の操作手段42を設けている。
【0066】
また、操作ボックス40の上面には、操作ボックス40内部から導出された擬似患者体駆動手段Dの駆動用作動媒体の流体(水、エア等)管路43及び電気線束44(流体的及び電気的駆動系)の先端に接合されたコネクタ部43a,44a(診療台側コネクタに対応)が取付けられている。
【0067】
このように構成した情報処理装置4は、GUIとして、表示手段41に各種の情報を表示し、キーボード、マウス等の操作手段42で各種の指令を受け付ける。表示手段41は、実習時の擬似患者体2の受診状況を表示したり、必要な情報を随時呼出して表示したりできる他、内蔵するPC本体に特定のプログラムを格納し、それを稼動させることで、擬似患者体制御操作部(図2でGで示す)としても作動し、後述する表情選択手段G2としての表情選択ボタンを表示手段41に表示させて、実習教官が、実習者の状況を把握しながら、表情選択ボタンを選択操作することで、擬似患者体2の動作や、表情をコントロールできる。また、後述するように、表示手段41に表示したセンサ選択ボタンを選択操作することによって、擬似患者体2の各部に内蔵した各種のセンサの出力を呼び出して、検知信号をモニタ表示することもできる。
【0068】
このように構成した医療用実習装置1の機能構成について、医療用実習装置1の機能ブロック図を示す図2とともに、以下で説明する。
医療用実習装置1は、制御手段(CPU)Iと各機能実現手段A〜H,J,Kとを直接信号線あるいは院内LANなどで接続し、制御手段Iによって各機能ブロックA〜H,J,Kが制御される構成である。
【0069】
姿勢検出手段Aは、座部シート昇降検出手段Aa、背板シート傾倒検出手段Ab、ヘッドレスト傾倒検出手段Acを組み合わせて構成し、診療台3の診療時における制御状態を検出する。例えば、各検出手段は、角度検出センサやポテンショメータ等を有し、昇降量、傾倒量又は傾倒角度、駆動信号のオン、オフ等を検出する。
【0070】
診療器具状態検出手段Bは、上述した診療器具駆動手段によって駆動される各診療器具、口腔カメラ、光重合照射器、フートコントローラの実習中の操作状態、つまり、オン、オフ、回転数、負荷などを検出する手段であり、エアータービンハンドピース状態検出手段Ba、マイクロモータハンドピース状態検出手段Bb、スリーウエイシリンジ状態検出手段Bc、スケーラ状態検出手段Bd、バキュームシリンジ状態検出手段Be、口腔カメラ状態検出手段Bf、光重合照射器状態検出手段Bg、フートコントローラ操作状態検出手段Bhを組み合わせて構成している。
【0071】
受診状態検出手段Cは、擬似患者体2に内蔵した各種センサや、診療時の状態を撮像する撮像手段で構成している。各種センサとしては、後述するように、擬似患者体2の、頬部に対する接触を検出する手段Ca、胸に対する接触を検出する手段Cb、歯牙への衝撃や圧力を検出する手段Cc、歯牙の温度上昇を検出する手段Cd、麻酔部位を検出する手段Ce、首、腰、腕の回転角度検出手段Cf、撮像手段Cg、マイクChなどを含み、これらのセンサや撮像手段、マイクによって、実習中に擬似患者体2に対して処置、治療時に与えられる刺激の有無、度合いを把握され、受診状態検出信号として出力する構成である。
【0072】
擬似患者体駆動手段Dは、眼球駆動手段Da、瞼駆動手段Db、眉毛駆動手段Dc、下顎駆動手段Dd、首駆動手段De、腕駆動手段Df、音声出力手段Dgなどを組み合わせて構成し、上述したように擬似患者体2の頭部模型2a,胴体模型2b,腕模型2c、脚部模型2dに組み込まれ、これらの駆動を組み合わせることによって擬似患者体2の顔面の表情、身体の動作などを実現している。
記憶手段Eは、受診状態検出手段Cから出力された受診状態検出信号や、実習結果評価手段で使用される評価基準情報を記憶している。
【0073】
実習結果評価手段Fは、実習者の診療行為が終了した後、予め記憶手段Eに記憶する評価基準と、診療器具状態検出手段Bで検出した診療器具状態検出信号及び又は受診状態検出手段Cで検出した受診状態検出結果とを比較し、所定のアルゴリズムに基づいて実習の評価結果を出力して、実習者の技能に応じてランク付けしたり、結果に応じて不適切な診療項目を情報処理装置4の表示手段41や器具台の表示部(図示省略)に表示したりする構成である。
【0074】
また、擬似患者体制御操作部Gは、擬似患者体2に組み込まれた擬似患者体駆動手段Dの動きを、擬似患者体2の姿勢、表情変化に対応させて記憶する記憶手段G1と、その記憶手段G1に記憶された表情変化を選択する表情選択手段G2とを備え、表情選択手段G2は表情選択ボタンを設け、例えば、擬似患者体2の嘔吐、苦痛、不安、リラックス、不快などの表情変化を再現できるように構成している。このような、擬似患者体制御操作部Gを設けることによって、実習者の診療行為が擬似患者体2の表情や身体の動作に自動的に反映される本来の制御動作に加えて、後述するように、実習教官が、実習者の状況を判断して、上記表示選択ボタンを選択操作し、擬似患者体2の表情をコントロールすることができる。
【0075】
表示操作部Hは、表示手段Haと、表示選択手段Hbとを組み合わせて構成し、表示手段Haは、情報処理装置4に設けた表示手段41で構成され、表示選択手段Hbは、受診状態検出手段Cの各センサの出力を選択する選択ボタンで構成され、マウスなどで選択する。
【0076】
システム停止手段Jは、上述の通りシステム停止操作スイッチで構成され、このシステム停止操作スイッチの操作信号は、制御手段Iに入力され、制御手段Iはこの入力信号に基づき上記システムの停止制御を行うことができる。
【0077】
擬似患者体脱力手段Kは、擬似患者体脱力操作スイッチで構成され、この擬似患者体脱力操作スイッチの操作信号は、制御手段Iに入力され、制御手段Iはこの入力信号に基づき、擬似患者体駆動手段Dを駆動するための作動媒体によって擬似患者体2に加わる力の全部又は一部を抜く制御を行う。
【0078】
上述したように構成した本発明の医療用実習装置1は、診療台3に擬似患者体2を載置し、情報処理装置4で診療台3や擬似患者体2を制御しながら、実際の臨床に近い臨場感のある実習を行うことができる。
【0079】
なお、診療台3の載置許容面31に擬似患者体2を載置する際に、診療台3の座部シート3aに備えたループ状面ファスナ52と、擬似患者体2の臀部対応部分2eに備えたフック状面ファスナ51とを係止させているため、例えば、図3(a)に示す診療前ポジションから図3(b)に示す診療中ポジションに移行するため診療台3の背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習を行うことができる。
【0080】
詳しくは、例えば、診療に応じて診療台3の座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりすると、実際の患者は無意識に位置がずれない様に踏ん張ったり、肘掛部を持ったりするため位置ズレすることはない。
【0081】
しかしながら、擬似患者体2に関節機構21を備えているため、座部シート3aに対する背板シート3bの屈曲に追従して姿勢を変化することができるものの、診療台3における載置許容面31に載置しただけでは、特に体軸方向に位置ズレする可能性がある。
【0082】
そこで、擬似患者体2において載置許容面31に当接する当接部分である臀部対応部分2eにフック状面ファスナ51を備え、診療台3において臀部対応部分2eに対応する部分にループ状面ファスナ52を備え、擬似患者体2を診療台3に載置するにあたり、擬似患者体2のフック状面ファスナ51と診療台3のループ状面ファスナ52とを係止させたことにより、診療前ポジション(図3(a))と診療中ポジション(図3(b))とを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0083】
また、フック状面ファスナ51とループ状面ファスナ52とで構成する面ファスナ50を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体2と診療台3とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体2を取り換えることができる。したがって、例えば、成人型の擬似患者体2、老人型の擬似患者体2、子供型の擬似患者体2のように、複数種類の擬似患者体2を用意し、実習目的に応じて適した擬似患者体2を容易に交換し、実習に用いることができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0084】
また、可撓性を有するシート状の面ファスナ50で擬似患者体2と診療台3とを係止したため、診療台3の座部シート3aや背板シート3bのクッション性を損なうことがなく、フック状面ファスナ51を配置した擬似患者体2の臀部対応部分2eの形状に、診療台3においてループ状面ファスナ52を配置した部分が追従する。したがって、フック状面ファスナ51とループ状面ファスナ52との係止面積を確保でき、しっかりと診療台3に対して擬似患者体2を係止することができる。
【0085】
なお、面ファスナ50のうち、擬似患者体2の臀部対応部分2eにフック状面ファスナ51を備え、診療台3の座部シート3aにループ状面ファスナ52を備えたが、フック状面ファスナ51を胴体模型2bの背面側、つまり診療台3の背板シート3bにおける載置許容面31に当接する当接部分にフック状面ファスナ51を備え、診療台3の背板シート3bにおいてフック状面ファスナ51に対応する部分にループ状面ファスナ52を備えてもよい。また、フック状面ファスナ51を頭部模型2aの後頭部側、つまり診療台3のヘッドレスト3cにおける載置許容面31に当接する当接部分にフック状面ファスナ51を備え、診療台3のヘッドレストシート3cにおいてフック状面ファスナ51に対応する部分にループ状面ファスナ52を備えてもよい。
【0086】
さらには、フック状面ファスナ51とループ状面ファスナ52とで構成する面ファスナ50のうち、擬似患者体2側にフック状面ファスナ51を備え、診療台3側にループ状面ファスナ52を備えたが、擬似患者体2にループ状面ファスナ52を備え、診療台3にフック状面ファスナ51を備えてもよい。しかしながら、フック状面ファスナ51に比べて、肌触りのよいループ状面ファスナ52を診療台3に配置しているため、例えば、診療台3に擬似患者体2を載置せず、診療台3に患者が座っても問題無く医療用実習装置1を通常の医療用診療台として用いることができる。
【0087】
またループ状面ファスナ52を、例えば、診療台3における載置許容面31の幅方向中央において、長手方向に連続して配置してもよい。このように、ループ状面ファスナ52を連続して配置することにより、ループ状面ファスナ52が診療台3における載置許容面31のデザイン性を向上することができるため、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として用いる場合であっても、違和感なく診療台3を用いることができる。
【0088】
また、診療台3における載置許容面31の幅方向中央において、長手方向に連続してループ状面ファスナ52を配置した場合、成人男性、成人女性、子供あるいは老人のように複数種類の擬似患者体2を用意した場合において、体型の異なる擬似患者体2においてフック状面ファスナ51の位置が異なっても、診療台3に擬似患者体2を確実に係止でき、医療用実習装置1としての利便性が向上する。
【0089】
なお、擬似患者体2は成人女性患者を模した外観を有するが、これに限定されず、上述したように、成人男性、子供あるいは老人を模した外観を有する擬似患者体2であってもよい。しかしながら、一般的に男性患者より女性患者の方が、治療や不要な接触に対して敏感に反応することが知られているため、女性を模した外観形状の擬似患者体2を用いることで、実習者は緊張感を持って実習に取り組むことができる。
【実施例2】
【0090】
以下において、第2実施形態の医療用実習装置1について図4乃至6とともに説明する。
なお、図4は第2実施形態の医療用実習装置1の斜視図による説明図を示し、図5は第2実施形態の医療用実習装置1の概略断面図による説明図を示し、図6は第2実施形態における医療用実習装置1として使用しない状態の医療用診療台3の斜視図を示している。
【0091】
詳しくは、図4は擬似患者体2を診療台3の上方に配置した状態の第2実施形態の医療用実習装置1の斜視図を示している。また、図5(a)は診療前ポジションにおける第2実施形態の医療用実習装置1の概略断面図を示し、図5(b)は診療中ポジションにおける第2実施形態の医療用実習装置1の概略断面図を示している。
【0092】
第1実施形態の医療用実習装置1では、面ファスナ50によって擬似患者体2と診療台3とを係止させたが、図4,5に示すように、第2実施形態の医療用実習装置1は、擬似患者体2の背面側、つまり診療台3における載置許容面31に当接する当接部分に、背面側から突出する係着凸部61(係着手段に対応)を備え、診療台3に係着凸部61の係着を許容する被係着部である係着孔62を備えている。
【0093】
さらには、第1実施形態の医療用実習装置1では、擬似患者体2の背面側から延出させた駆動源供給管路23及び通信ケーブル24を、診療台3の近傍に配置した操作ボックス40の流体管路43及び電気線束44に接続したが、第2実施形態の医療用実習装置1は、情報処理装置4自体を診療台3に内蔵する、あるいは、別の位置に配置し、流体管路43及び電気線束44の先端を載置許容面31から露出させ、図5に示すように、診療台3の載置許容面31と擬似患者体2の背面との間で接続するよう構成している。
【0094】
詳しくは、擬似患者体2の臀部対応部分2eに、背面側に突出する略円筒状の係着凸部61を備え、診療台3の座部シート3aにおける背板シート3b側端部に、係着凸部61の挿入を許容する係着孔62を備えている。また、背板シート3bにおける座部シート3a側端部に、コネクタ部43a,44aごと流体管路43及び電気線束44の先端の通過を許容するケーブル孔64を備え、ケーブル孔64から流体管路43及び電気線束44を引き出して、露出させる。
【0095】
擬似患者体2を診療台3の載置許容面31に載置する際には、係着凸部61を係着孔62に挿入するとともに、診療台3の載置許容面31と擬似患者体2の背面との間で、接続コネクタ23a,24aとコネクタ部43a,44aとを接続する。
【0096】
この様な構成により、第2実施形態の医療用実習装置1は、臀部対応部分2eに備えた係着凸部61と、診療台3の座部シート3aに形成した係着孔62とが係着するため、診療前ポジション(図5(a))と診療中ポジション(図5(b))とを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0097】
また、係着凸部61と係着孔62とで構成する係着手段60を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体2と診療台3とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体2を取り換えることができる。
【0098】
さらにまた、背板シート3bにおける座部シート3a側端部に、コネクタ部43a,44aとともに流体管路43及び電気線束44の先端の通過を許容するケーブル孔64を備え、ケーブル孔64から流体管路43及び電気線束44を引き出し、診療台3の載置許容面31と擬似患者体2の背面との間で、接続コネクタ23a,24aとコネクタ部43a,44aとを接続するため、接続状態にある接続コネクタ23a,24aとコネクタ部43a,44aとが、診療台3に擬似患者体2を載置した状態で外観上露出しないため、実習の臨場感を向上することができる。
【0099】
また、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として用いる場合において、図6に示すように、係着孔62及びケーブル孔64を塞ぐ挿入ブロック63,65(露出回避手段に対応)を備え、流体管路43及び電気線束44を内部に押し戻して、係着孔62及びケーブル孔64を挿入ブロック63,65で塞いでもよい。これにより、通常の医療用診療台として不要な孔が埋まり、通常の医療用診療台として診療台3を違和感なく用いることができる。
【0100】
なお、係着凸部61を円筒状に形成し、係着孔62に挿入して係着させたが、係着凸部61をフック状に形成し、座部シート3aと背板シート3bとの間に挿入して係着させてもよい。
【0101】
また、流体管路43及び電気線束44は、背板シート3bにおける座部シート3a側端部に設けたケーブル孔64に挿通する例を示したが、この他にも、流体管路43のコネクタ部43a及び電気線束44のコネクタ部44aのいずれか一方または双方を、擬似患者体の腕部模型2cの載置を許容する不図示のアームレスト、あるいは、医療用診療台3の側部に配設する不図示のスピットンユニットに設けてもよい。
【0102】
その場合、流体管路43あるいは電気線束44は、アームレストやスピットンユニットの内部を挿通し、あるいは各部の陰に隠れるように取り回される。また、各コネクタ部43a,44aを覆う蓋やシャッターなどのカバー部材(露出回避手段に対応)を設けることで、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として用いる場合であっても、違和感なく診療台3を用いることができる。
【実施例3】
【0103】
続いて、第3実施形態の医療用実習装置1について図7とともに説明する。
なお、図7は第3実施形態の医療用実習装置1の概略断面図による説明図を示している。また、図7(a)は診療前ポジションにおける第3実施形態の医療用実習装置1の概略断面図を示し、図7(b)は診療前ポジションにおける第3実施形態の変形例の医療用実習装置1の概略断面図を示している。
【0104】
上述の説明では、第1実施形態の医療用実習装置1では面ファスナ50によって擬似患者体2と診療台3とを係止させ、第2実施形態の医療用実習装置1では、係着手段60で擬似患者体2と診療台3とを係着させたが、図7(a)に示すように、第3実施形態の医療用実習装置1は擬似患者体2の背面側、つまり診療台3における載置許容面31に当接する当接部分に、背面側から突出するとともに診療台3の幅方向に配置した係止レール71(係着手段及び係止手段に対応)を備え、診療台3の載置許容面31に係止レール71の係止を許容する被係止溝部72(被係着部及び被係止手段に対応)を備えている。
【0105】
詳しくは、図7(a)のa部拡大図に示すように、第3実施形態の医療用実習装置1の擬似患者体2は、胴体模型2bの背面、つまり背板シート3bの載置許容面31に当接する当接部分に、幅方向に配置され、胴体模型2bの背面から突出する係止レール71を備えている。また、第3実施形態の医療用実習装置1の診療台3は、擬似患者体2の係止レール71に対応する背板シート3bの載置許容面31に、幅方向に配置され、背板シート3bの載置許容面31より断面内側に凹状の被係止溝部72を備えている。
【0106】
擬似患者体2を診療台3の載置許容面31に載置する際には、診療台3の幅方向側方より、擬似患者体2の係止レール71を診療台3の被係止溝部72に嵌め込み、幅方向にスライドさせて、擬似患者体2を診療台3に載置する。
【0107】
この様な構成により、第3実施形態の医療用実習装置1は、胴体模型2bに備えた係止レール71と、診療台3の背板シート3bに形成した被係止溝部72とが係止するため、診療前ポジション(図7(a))と診療中ポジション(図示省略)とを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が体軸方向に位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0108】
なお、第3実施形態の変形例として、図7(b)及びb部拡大図に示すように、擬似患者体2の胴体模型2bの背面側に被係止溝部72を備え、背板シート3bの載置許容面31に係止レール71を備え、係止レール71と被係止溝部72とを係止させて擬似患者体2を診療台3に載置してもよい。さらには、係止レール71と被係止溝部72とで構成する係止手段70を胴体模型2b及び背板シート3bに備えずとも、脚部模型2d及び座部シート3a、あるいは、頭部模型2aとヘッドレスト3cに備えてもよい。
【実施例4】
【0109】
続いて、第4実施形態の医療用実習装置1について図8とともに説明する。
なお、図8は第4実施形態の医療用実習装置1の斜視図による説明図を示している。詳しくは、図8は擬似患者体2を診療台3の上方に配置した状態の第4実施形態の医療用実習装置1の斜視図を示している。
【0110】
上述の説明では、第1実施形態の医療用実習装置1では面ファスナ50によって擬似患者体2と診療台3とを係止させ、第2実施形態の医療用実習装置1では、係着手段60で擬似患者体2と診療台3とを係着させ、第3実施形態の医療用実習装置1では、係止手段70で擬似患者体2と診療台3とを係着させたが、図8に示すように、第4実施形態の医療用実習装置1は擬似患者体2の背面側、つまり診療台3における載置許容面31に当接する当接部分と、載置許容面31との間に、係着手段として機能する粘着シート80を挟み込んで係着している。
【0111】
詳しくは、図8に示すように、粘着シート80は、可撓性を有する平面視正方形状のシート体であり、両表面が粘着性を有している。なお、粘着シート80は、露出回避手段としても機能するように、貼付けと剥がしとを繰り返し行うことのできる粘着性を有するものである。
【0112】
擬似患者体2を診療台3の載置許容面31に載置する際には、載置許容面31の所定の場所に粘着シート80を貼付けてから擬似患者体2を載置する。
この様な構成により、第4実施形態の医療用実習装置1は、擬似患者体2の背面が、粘着性を有する粘着シート80を介して、診療台3の載置許容面31に係着するため、診療前ポジションと診療中ポジションとを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0113】
なお、粘着シート80は、貼付け位置を問わないため、擬似患者体2の形状に応じた任意の場所に貼付ければよく、容易に係着することができる。また、粘着シート80は、貼付けと剥がしとを繰り返し行うことのできる粘着性を有するものであるため、粘着シート80を剥がせば、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として違和感なく用いることができる。
【0114】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の屈曲部は、座部シート3aと背板シート3bとの間、及び背板シート3bとヘッドレスト3cの間に対応し、
以下同様に、
医療用診療台は、診療台3に対応し、
擬似患者体は、擬似患者体2に対応し、
可動部は、関節機構21に対応し、
診療台載置許容面は、載置許容面31に対応し、
当接部分は、臀部対応部分2eや胴体模型2bの背面に対応し、
係着手段は、面ファスナ50、係着手段60の係着凸部61、係止手段70、粘着シート80に対応し、
当接対応部分は、載置許容面31における所定部分に対応し、
被係止手段は、被係止溝部72あるいはループ状面ファスナ52に対応し、
係止手段は、係止レール71あるいはフック状面ファスナ51に対応し、
制御部は、情報処理装置4に対応し、
診療台側コネクタは、コネクタ部43a,44aに対応し、
被係着部は、係着孔62、及び載置許容面31に対応し、
露出回避手段は、挿入ブロック63、不使用時に剥がせる粘着シート80に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0115】
例えば、擬似患者体2を診療台3に係着させる係着手段として、剥離可能な接着剤、載置許容面31に対して吸着する吸盤、あるいは診療台3に対して吸着する永久磁石や電磁石等とすることができる。また、係止手段及び被係止手段として、線状のファスナ、ホックボタン、スナップボタン等で構成することができる。
【0116】
また、医療用実習装置として使用しない場合に、ループ状面ファスナ52や被係止溝部72等の被係止手段が形成された座部シート3aや背板シート3bを、被係止手段を備えていない座部シート3aや背板シート3bに交換する構成であってもよい。
【0117】
また、擬似患者体2を頭部模型2aと胴体模型2bだけで構成し、頭部模型2aをヘッドレスト3cに対して係着・係止したり、胴体模型2bを背板シート3bに対して係着・係止したりして、実習してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
この発明は、擬似患者体と、医療用診療台とを用いるような様々な医療用実習装置として、医療教育、特に歯科医療の教育において用いることができる。
【符号の説明】
【0119】
1…医療用実習装置
2…擬似患者体
2b…胴体模型
2d…脚部模型
2e…臀部対応部分
3…診療台
3a…座部シート
3b…背板シート
3c…ヘッドレスト
4…情報処理装置
21…関節機構
23a,24a…接続コネクタ
31…載置許容面
43a,44a…コネクタ部
50…面ファスナ
51…フック状面ファスナ
52…ループ状面ファスナ
60…係着手段
62…係着孔
63…挿入ブロック
70…係止手段
71…係止レール
72…被係止溝部
80…粘着シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療教育、特に歯科医療の教育において、切削等の実習教育に用いる医療実習用の擬似患者体、当該擬似患者体を載置可能な医療用診療台、擬似患者体と医療用診療台とで構成する医療用実習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療教育、特に歯科医療の教育では、人体頭部模型等に植立させた歯牙に対して切削等を行うような実習教育が行われており、様々な医療用実習装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、頭部模型を有する擬似患者体に対する治療状態を擬似患者体の口内などに設けたセンサで検出して、擬似患者体の目、瞼などを駆動制御することにより実際の患者の動き、表情を再現させる医療用シミュレータが提案されている。
しかしながら、上述の医療用シミュレータは、頭部だけであり、実際の臨床からかけ離れており臨場感がないため、実習教育としては十分な効果を得ることができなかった。
【0004】
そこで、特許文献2では、診療状態に応じて、表情を変化させる擬似患者体駆動手段を内蔵するとともに、目、鼻および口腔を有する頭部模型と、胴体模型と、腕模型と、脚部模型とで構成した擬似患者体を、医療用診療台に載置する医療用実習装置が提案されている。
【0005】
このように、表情を変化させる擬似患者体駆動手段を内蔵するとともに、目、鼻および口腔を有する頭部模型を備えたことにより、診療台の姿勢、器具の動作、及び擬似患者体の受診状態に基づいて、擬似患者体の表情を変化させることで、実際の臨床に近い臨場感のある実習を行うことができるとされている。
【0006】
しかし、通常の医療用診療台は、背板と座板との屈曲角度を調整可能に構成しているため、座板に対する背板の起伏角度を調整した際に擬似患者体が患者体の体軸方向、つまり身長方向に位置ズレするおそれがあり、起伏角度を調整しながらの実際の臨床に近い臨場感のある実習では、安心して施術できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−233585号公報
【特許文献2】国際公開第2008/023464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことのできる擬似患者体、医療用診療台、及び医療用実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置可能な医療実習用の擬似患者体であって、前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有するとともに、前記医療用診療台における診療台載置許容面と当接する当接部分に、前記医療用診療台に係着する係着手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記屈曲角度は、座板に対する背板、あるいは背板に対するヘッドレストの角度であり、上記屈曲角度を調整可能な屈曲部は、座板と背板、あるいは背板とヘッドレストとの間の部分とすることができる。
【0011】
上述の前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部は、座板と背板との屈曲部に対応する腰部、あるいは背板とヘッドレストとの屈曲部に対応する頸椎部、さらには、これらの両方とすることができる。
【0012】
上述の前記医療用診療台における診療台載置許容面と当接する当接部分は、仰向け姿勢で載置する擬似患者体における背面側であり、詳しくは、座板に当接する太腿部、座板と背板との屈曲部に当接する臀部、背板に当接する腰部、背中部または二の腕部、ヘッドレストに当接する後頭部、肘掛に当接する前腕部、あるいはこれらの組み合わせとすることができる。
【0013】
前記係着手段は、医療用診療台の屈曲部の屈曲による位置ズレを防止するための手段であり、屈曲方向に沿った平面、つまり医療用診療台の長手方向に沿った垂直面に略一致する体軸方向に少なくとも係着できればよく、さらには脱着可能に係着できればよい。そのため、前記係着手段は、例えば、医療用診療台の凹部(凸部)と嵌合する凸部(凹部)、粘着シート、剥離可能な接着剤、後述する係止手段、医療用診療台における診療台載置許容面に対して吸着する吸盤、あるいは医療用診療台に対して吸着する永久磁石や電磁石等とすることができる。
【0014】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0015】
詳述すると、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置する擬似患者体に、前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有するため、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりして、実際の臨床に近い臨場感のある実習を行うことができる。
【0016】
しかしながら、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりすると、実際の患者は無意識に位置がずれない様に踏ん張ったり、肘掛部を持ったりするため位置ズレすることはないが、前記医療用診療台における診療台載置許容面に載置した擬似患者体は、体軸方向に位置ズレする可能性がある。そこで診療台載置許容面に当接する当接部分に、前記医療用診療台に係着する係着手段を備えたことにより、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりしても、医療用診療台に対して擬似患者体が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0017】
また、係着手段を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体と医療用診療台とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体を取り換えることができる。したがって、例えば、成人型の擬似患者体、老人型の擬似患者体、子供型の擬似患者体のように、複数種類の擬似患者体を用意し、実習目的に応じて適した擬似患者体を容易に交換し、実習に用いることができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0018】
この発明の態様として、前記係着手段を、前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に備えた被係止手段と係止する係止手段で構成することができる。
【0019】
上記係止手段及び被係止手段は、例えば、当接部分に備えたフックと当接対応部分においてフックの係止を許容する部分、面ファスナ、線状のファスナ、ホックボタン、スナップボタン、当接対応部分において体軸方向に交差する方向に配置した被係止溝と当該被係止溝に係止する当接部分に備えた係止凸部、当接対応部分において体軸方向に交差する方向に配置した被係止レールと当該被係止レールに係止する当接部分に備えた係止凹部等とすることができる。
【0020】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0021】
詳述すると、当接部分に係止部を備え、前記医療用診療台側の当接対応部分に係止部と係止する被係止部を備えたことにより、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりしても、医療用診療台に対して擬似患者体が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、前記係止手段を、フック状面ファスナで構成することができる。
この発明により、簡易な構造かつ安価で、実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。また、被係止手段を構成するループ状面ファスナ、係止手段を構成するフック状面ファスナはともに、可撓性を有する面状体であるため、診療台載置許容面のクッション性を損なうことなく、医療用診療台に対して擬似患者体をしっかりと係止することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備え、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えることができる。
【0024】
上記駆動部は、座板と背板との屈曲部に対応する腰部、あるいは背板とヘッドレストとの屈曲部に対応する頸椎部、さらには、これらの両方で構成する可動部を駆動するだけでなく、擬似患者体の表情を変化させるための目、瞼、顎などを駆動する駆動部、さらには意思表示するための上肢などの可動部を駆動させてもよい。
なお、駆動源とは、電気的な駆動部を駆動させるための電力、あるいは、空気圧等の流体圧力によって駆動する駆動部に対する流動体とすることができる。
【0025】
この発明により、さらに実際の臨床に近く、より臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
詳しくは、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えたことにより、制御部によって制御された駆動部によって可動部が駆動するため、治療に対する反応等を表現でき、さらに実際の臨床に近く、より臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0026】
また、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えたことにより、診療台側コネクタに接続された接続コネクタを取り外すことで、容易に擬似患者体を外すことができる。したがって、例えば、実習目的に応じた擬似患者体を容易に交換することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記医療用診療台における前記診療台載置許容面に配置した前記診療台側コネクタに対して接続許容する前記接続コネクタを、前記当接部分に配置することができる。
【0028】
この発明により、接続状態にある診療台側コネクタと接続コネクタとが、診療台載置許容面と当接部分との間に配置され、医療用診療台に擬似患者体を載置した状態において、外観上露出しないため、実習の臨場感を向上することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、女性を模した外観形状で構成することができる。
この発明により、実習者は緊張感を持って実習に取り組むことができる。一般的に男性より女性の方が、治療に対して、あるいは不要な接触に対して敏感に反応することが知られているため、女性を模した外観形状の擬似患者体を用いることで、実習者は緊張感を持って実習に取り組むことができる。
【0030】
またこの発明は、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有し、医療実習用の擬似患者体を載置可能な医療用診療台であって、前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有する前記擬似患者体において、診療台載置許容面と当接する当接部分に備えた係着手段の係着を許容する被係着部を備えたことを特徴とする。
【0031】
前記被係着部は、医療用診療台の屈曲部の屈曲による擬似患者体の位置ズレを防止するための手段である係着手段の係着を許容する部分であり、脱着可能に係着できればよい。そのため、前記被係着部は、例えば、擬似患者体に形成した嵌合する凸部(凹部)、粘着シート、剥離可能な接着剤、後述する係止手段等などの係着手段が係着できる部分とすることができる。
【0032】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0033】
また、被係着部を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体と医療用診療台とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体を取り換えることができる。したがって、例えば、成人型の擬似患者体、老人型の擬似患者体、子供型の擬似患者体のように、複数種類の擬似患者体を用意し、実習目的に応じて適した擬似患者体を容易に交換し、実習に用いることができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0034】
この発明の態様として、前記被係着部を、前記当接部分に備え、前記係着手段を構成する係止手段と係止する被係止手段で構成し、該被係止手段を、前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に配置することができる。
【0035】
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、例えば座板に対して背板を起こしたり、寝かしたりする実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記被係止手段の不使用時に、前記診療台載置許容面から前記被係止手段を露出させない露出回避手段を備えることができる。
上記露出回避手段は、診療台載置許容面に設けた被係止手段を覆って外観上露出させない手段、診療台載置許容面に設けた被係止手段を引っ込めて外観上露出させない手段、診療台載置許容面に対して取り外し可能に被係止手段を構成し、取り外すことによって不使用時に露出させない被係止手段、あるいは被係止手段が形成され、交換可能に構成された座板または背板自体を、被係止手段を備えていない座板または背板に交換する等で構成することができる。
【0037】
この発明により、実習を行わないときには、医療用診療台を通常の施術用の医療用診療台として用いることができる。したがって、医療用診療台を実習用のみならず通常の施術用としても用いることができ、医療用診療台の利用率を向上させ、無駄を省くことができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、前記係止手段を、フック状面ファスナで構成することができる。
この発明により、簡易な構造かつ安価で、実際の臨床に近い臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。また、被係止手段を構成するループ状面ファスナ、係止手段を構成するフック状面ファスナはともに、可撓性を有する面状体であるため、診療台載置許容面のクッション性を損なうことなく、医療用診療台に対して擬似患者体をしっかりと載置することができる。さらには、通常の施術用に医療用診療台を用いる場合においても、被係止手段を構成するループ状面ファスナによる座り心地の悪さが生じることを防止できる。
【0039】
また、ループ状面ファスナで構成する被係止手段を、当接対応部分において、デザイン性高く配置することによって、診療台載置許容面のデザイン性を向上することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記擬似患者体に、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えるとともに、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記擬似患者体に備えた接続コネクタに対して接続許容する診療台側コネクタを備えることができる。
【0041】
この発明により、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えたことにより、制御部によって制御された駆動部によって可動部が駆動するため、治療に対する反応等を表現できるため、さらに実際の臨床に近く、より臨場感のある実習をより確実に位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【0042】
また、前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えたことにより、診療台側コネクタに接続された接続コネクタを取り外すことで、容易に擬似患者体を外すことができる。したがって、例えば、実習目的に応じた擬似患者体を容易に交換することができる。
【0043】
またこの発明の態様として、前記接続コネクタを、前記当接部分に配置するとともに、前記診療台側コネクタを、前記診療台載置許容面に配置することができる。
この発明により、接続状態にある診療台側コネクタと接続コネクタとが、診療台載置許容面と当接部分との間に配置され、外観上露出しないため、実習の臨場感を向上することができる。
【0044】
さらにまたこの発明は、上述の擬似患者体と、上述の医療用診療台とで構成する医療用実習装置であることを特徴とする。
この発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に擬似患者体を載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置し、実際の臨床に近い臨場感のある実習を位置ズレすることなく、安心して行うことのできる擬似患者体、医療用診療台、及び医療用実習装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】医療用実習装置の斜視図による説明図。
【図2】医療用実習装置のブロック図。
【図3】医療用実習装置の概略断面図による説明図。
【図4】第2実施形態の医療用実習装置の斜視図による説明図。
【図5】第2実施形態の医療用実習装置の概略断面図による説明図。
【図6】第2実施形態における医療用実習装置として使用しない状態の医療用診療台の斜視図。
【図7】第3実施形態の医療用実習装置の概略断面図による説明図。
【図8】第4実施形態の医療用実習装置の斜視図による説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0047】
以下、本発明による医療用実習装置1について、図1乃至3とともに説明する。
図1は医療用実習装置1の斜視図による説明図を示し、図2は医療用実習装置1のブロック図を示し、図3は医療用実習装置1の概略断面図による説明図を示している。
【0048】
詳しくは、図1は擬似患者体2を診療台3の上方に配置した状態の医療用実習装置1の斜視図を示している。また、図3(a)は診療前ポジションにおける医療用実習装置1の概略断面図を示し、図3(b)は診療中ポジションにおける医療用実習装置1の概略断面図を示している。
【0049】
医療用実習装置1は、図1に示すように、女性患者を模した擬似患者体2と、擬似患者体2を載せて治療を行うための診療台3(医療用診療台に対応)と、GUIとして各種情報を表示し、擬似患者体2に対する各種指令を受け付ける情報処理装置4(制御部に対応)と、各種診療器具を備えた器具台(図示省略)とで構成されている。
【0050】
なお、図示省略する器具台は、診療台3にアームを介して回動可能に取付けたテーブルの手前側に器具ホルダを備え、そこにエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどの切削を行う診療器具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジなどの各種診療器具を着脱可能に取付け、テーブルの上方には表示部を設けて、患者のカルテを呼出表示したり、実習中の診療器具の操作内容などがモニタできたりするように構成しており、それぞれの詳細な構成やバリエーションについては既に公知であるため、詳細の説明を省略する。
【0051】
擬似患者体2は、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成し、その内部に、後述する擬似患者体2の姿勢、表情を変化させる擬似患者体駆動手段D、擬似患者体2に対する診療状態を検出する受診状態検出手段C(いずれも図2の機能ブロック図参照)を備えている。
【0052】
なお、人体に酷似した外観にするため、擬似患者体2は、全体、あるいは衣服を着用させる場合には服から露出する部分を、人工皮膚で覆うとともに、頭部模型2aに頭髪となるカツラを被せ、外観上女性患者に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成している。
【0053】
詳しくは、擬似患者体2は、上述したように、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成され、頭部模型2aと胴体模型2bとの間、胴体模型2bと左右の脚部模型2dとの間、胴体模型2bと左右の脚模型2dとの間、さらには、左右の腕模型2cのひじ部、脚部模型2dのひざ部には、関節機構21を設けて、人体の関節と同様な動きをなすように屈曲自在になっている。
【0054】
可動部に対応する関節機構21は、骨格を構成するため相互に枢着された2本の主ロッド(図示省略)に、エアシリンダ(図示省略)を付設し、エアシリンダのロッドを進退させることで、2本の主ロッドによって屈曲動作可能に構成している。
【0055】
また、擬似患者体2の頭部模型2aは、人体に酷似した外観にするため、上述したように、皮膚に似た柔らかさのシリコンゴムで形成した人工皮膚を顔面に被せるとともに、頭部に頭髪となるカツラが被せている。
【0056】
また、擬似患者体2は、顔面の各部、眼球、瞼、眉毛、頬、口、唇、首22を駆動する駆動手段の他、音声を出するために音声出力手段を備えており、これらそれぞれに備えた駆動手段(後述する擬似患者駆動手段D)を駆動することで、人に酷似した顔面表情を出している。さらに、頬には接触センサを備え、その検出信号は、後述する受診状態検出手段Cに送信する。
【0057】
首22は、頭部模型2aと胴体模型2bとを前後、左右に傾倒可能に連結するジョイント機構を備えている。これにより、首22は、ジョイント機構によって前後に+10度から−30度まで、左右に±45度の範囲で傾倒でき、左右に±45度の範囲で回動できるようになっている。
【0058】
また、図示省略するが、頭部模型2aに内蔵する顎模型は、上顎模型と下顎模型とを組み合わせて構成し、上顎模型や下顎模型には、歯牙が1本毎に交換可能に植立している。これによって、切削実習をした際に消耗した歯牙を交換したり、虫歯や歯石を付けた特別な歯牙に交換したりすることができる。また、顎模型は、子供用の小さい模型や、歯牙が植立されていない無歯顎の模型にも交換可能に構成している。
【0059】
また、上顎模型や下顎模型は、実習時の処置、治療を検出するため、以下に示すような各種センサを備えている。より具体的には、診療器具が歯牙に接触したときの衝撃を検出する衝撃センサ、切削治療時に歯牙や上下顎に加えられる圧力を検出する圧力センサ、振動を検出する振動センサ、温度上昇(例えば、印象採得時、レーザ切削時など)を検出する温度センサ、歯牙の切削度合いを検出する導通あるいは抵抗値の変化を検出するセンサを設けている。そして、これらのセンサによって検出された受診状態検出信号は後述する制御手段I(図2におけるCPU)に送信され、実習時における擬似患者体2の受診状態が客観的に把握でき、受診データとして利用できる。これらのセンサは、受診状態検出手段Cにまとめられ、さらに診療状態検出信号として出力されて、情報処理装置4に送出される。
【0060】
さらには、上述したような擬似患者体2における各種駆動手段を駆動するための駆動源であるエアーの供給を許容する駆動源供給管路23と、後述する情報処理装置4と電気信号を通信する通信ケーブル24とを、擬似患者体2の底面側、即ち擬似患者体2の背面側から延出している。なお、駆動源供給管路23と通信ケーブル24とには、後述する情報処理装置4の上面に備えた被接続コネクタ43a,44aに接続する接続コネクタ23a,24aを備えている。
【0061】
また、診療台3において、後述する座部シート3a、背板シート3b、及びヘッドレスト3cの少なくともいずれかの上面の一部を、擬似患者体2を載置する診療台載置許容面とした場合において、診療台載置許容面に当接する当接部分である胴体模型2bの背面側と、脚部模型2dの背面側の間の臀部対応部分2eには、係止手段に対応するフック状面ファスナ51を備えている。フック状面ファスナ51は、平面視略正方形状に形成された可撓性を有するシート状であり、後述する診療台3に備えたループ状面ファスナ52(被係止手段に対応)と係止可能な面ファスナ50(係着手段及び係止手段に対応)を構成している。
【0062】
診療台3は、基台30に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動可能なヘッドレスト3cとで構成している。なお、座部シート3aと背板シート3bとの間、及び背板シート3bとヘッドレスト3cとの間は、他方に対して屈曲可能に構成している。
【0063】
これらを診療状況に応じた最適位置に制御するため、図示省略する座部シート昇降手段、背板シート傾倒手段、ヘッドレスト傾倒手段等の油圧シリンダや電動モータ等によって駆動するシート駆動部を設け、フートコントローラ等の操作手段によって操作制御されるよう構成している。
【0064】
また、座部シート3a、背板シート3b、及びヘッドレスト3cにおいて、図1における上面を、診療台載置許容面として機能する載置許容面31とし、座部シート3aにおける背板シート3b側に、上述のフック状面ファスナ51と係止するループ状面ファスナ52を備えている。なお、ループ状面ファスナ52は、フック状面ファスナ51と同様に、平面視正方形状に形成した可撓性のシート状体であるが、フック状面ファスナ51に比べて、ひと回り大きな平面寸法で形成している。
【0065】
情報処理装置4は、診療台3の近傍に擬似患者体制御操作部Gとして機能する移動可能な操作ボックス40として配置され、PC本体を内蔵している。
操作ボックス40の上面には、液晶モニタ等の表示手段41や、キーボード、マウス等の操作手段42を設けている。
【0066】
また、操作ボックス40の上面には、操作ボックス40内部から導出された擬似患者体駆動手段Dの駆動用作動媒体の流体(水、エア等)管路43及び電気線束44(流体的及び電気的駆動系)の先端に接合されたコネクタ部43a,44a(診療台側コネクタに対応)が取付けられている。
【0067】
このように構成した情報処理装置4は、GUIとして、表示手段41に各種の情報を表示し、キーボード、マウス等の操作手段42で各種の指令を受け付ける。表示手段41は、実習時の擬似患者体2の受診状況を表示したり、必要な情報を随時呼出して表示したりできる他、内蔵するPC本体に特定のプログラムを格納し、それを稼動させることで、擬似患者体制御操作部(図2でGで示す)としても作動し、後述する表情選択手段G2としての表情選択ボタンを表示手段41に表示させて、実習教官が、実習者の状況を把握しながら、表情選択ボタンを選択操作することで、擬似患者体2の動作や、表情をコントロールできる。また、後述するように、表示手段41に表示したセンサ選択ボタンを選択操作することによって、擬似患者体2の各部に内蔵した各種のセンサの出力を呼び出して、検知信号をモニタ表示することもできる。
【0068】
このように構成した医療用実習装置1の機能構成について、医療用実習装置1の機能ブロック図を示す図2とともに、以下で説明する。
医療用実習装置1は、制御手段(CPU)Iと各機能実現手段A〜H,J,Kとを直接信号線あるいは院内LANなどで接続し、制御手段Iによって各機能ブロックA〜H,J,Kが制御される構成である。
【0069】
姿勢検出手段Aは、座部シート昇降検出手段Aa、背板シート傾倒検出手段Ab、ヘッドレスト傾倒検出手段Acを組み合わせて構成し、診療台3の診療時における制御状態を検出する。例えば、各検出手段は、角度検出センサやポテンショメータ等を有し、昇降量、傾倒量又は傾倒角度、駆動信号のオン、オフ等を検出する。
【0070】
診療器具状態検出手段Bは、上述した診療器具駆動手段によって駆動される各診療器具、口腔カメラ、光重合照射器、フートコントローラの実習中の操作状態、つまり、オン、オフ、回転数、負荷などを検出する手段であり、エアータービンハンドピース状態検出手段Ba、マイクロモータハンドピース状態検出手段Bb、スリーウエイシリンジ状態検出手段Bc、スケーラ状態検出手段Bd、バキュームシリンジ状態検出手段Be、口腔カメラ状態検出手段Bf、光重合照射器状態検出手段Bg、フートコントローラ操作状態検出手段Bhを組み合わせて構成している。
【0071】
受診状態検出手段Cは、擬似患者体2に内蔵した各種センサや、診療時の状態を撮像する撮像手段で構成している。各種センサとしては、後述するように、擬似患者体2の、頬部に対する接触を検出する手段Ca、胸に対する接触を検出する手段Cb、歯牙への衝撃や圧力を検出する手段Cc、歯牙の温度上昇を検出する手段Cd、麻酔部位を検出する手段Ce、首、腰、腕の回転角度検出手段Cf、撮像手段Cg、マイクChなどを含み、これらのセンサや撮像手段、マイクによって、実習中に擬似患者体2に対して処置、治療時に与えられる刺激の有無、度合いを把握され、受診状態検出信号として出力する構成である。
【0072】
擬似患者体駆動手段Dは、眼球駆動手段Da、瞼駆動手段Db、眉毛駆動手段Dc、下顎駆動手段Dd、首駆動手段De、腕駆動手段Df、音声出力手段Dgなどを組み合わせて構成し、上述したように擬似患者体2の頭部模型2a,胴体模型2b,腕模型2c、脚部模型2dに組み込まれ、これらの駆動を組み合わせることによって擬似患者体2の顔面の表情、身体の動作などを実現している。
記憶手段Eは、受診状態検出手段Cから出力された受診状態検出信号や、実習結果評価手段で使用される評価基準情報を記憶している。
【0073】
実習結果評価手段Fは、実習者の診療行為が終了した後、予め記憶手段Eに記憶する評価基準と、診療器具状態検出手段Bで検出した診療器具状態検出信号及び又は受診状態検出手段Cで検出した受診状態検出結果とを比較し、所定のアルゴリズムに基づいて実習の評価結果を出力して、実習者の技能に応じてランク付けしたり、結果に応じて不適切な診療項目を情報処理装置4の表示手段41や器具台の表示部(図示省略)に表示したりする構成である。
【0074】
また、擬似患者体制御操作部Gは、擬似患者体2に組み込まれた擬似患者体駆動手段Dの動きを、擬似患者体2の姿勢、表情変化に対応させて記憶する記憶手段G1と、その記憶手段G1に記憶された表情変化を選択する表情選択手段G2とを備え、表情選択手段G2は表情選択ボタンを設け、例えば、擬似患者体2の嘔吐、苦痛、不安、リラックス、不快などの表情変化を再現できるように構成している。このような、擬似患者体制御操作部Gを設けることによって、実習者の診療行為が擬似患者体2の表情や身体の動作に自動的に反映される本来の制御動作に加えて、後述するように、実習教官が、実習者の状況を判断して、上記表示選択ボタンを選択操作し、擬似患者体2の表情をコントロールすることができる。
【0075】
表示操作部Hは、表示手段Haと、表示選択手段Hbとを組み合わせて構成し、表示手段Haは、情報処理装置4に設けた表示手段41で構成され、表示選択手段Hbは、受診状態検出手段Cの各センサの出力を選択する選択ボタンで構成され、マウスなどで選択する。
【0076】
システム停止手段Jは、上述の通りシステム停止操作スイッチで構成され、このシステム停止操作スイッチの操作信号は、制御手段Iに入力され、制御手段Iはこの入力信号に基づき上記システムの停止制御を行うことができる。
【0077】
擬似患者体脱力手段Kは、擬似患者体脱力操作スイッチで構成され、この擬似患者体脱力操作スイッチの操作信号は、制御手段Iに入力され、制御手段Iはこの入力信号に基づき、擬似患者体駆動手段Dを駆動するための作動媒体によって擬似患者体2に加わる力の全部又は一部を抜く制御を行う。
【0078】
上述したように構成した本発明の医療用実習装置1は、診療台3に擬似患者体2を載置し、情報処理装置4で診療台3や擬似患者体2を制御しながら、実際の臨床に近い臨場感のある実習を行うことができる。
【0079】
なお、診療台3の載置許容面31に擬似患者体2を載置する際に、診療台3の座部シート3aに備えたループ状面ファスナ52と、擬似患者体2の臀部対応部分2eに備えたフック状面ファスナ51とを係止させているため、例えば、図3(a)に示す診療前ポジションから図3(b)に示す診療中ポジションに移行するため診療台3の背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習を行うことができる。
【0080】
詳しくは、例えば、診療に応じて診療台3の座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりすると、実際の患者は無意識に位置がずれない様に踏ん張ったり、肘掛部を持ったりするため位置ズレすることはない。
【0081】
しかしながら、擬似患者体2に関節機構21を備えているため、座部シート3aに対する背板シート3bの屈曲に追従して姿勢を変化することができるものの、診療台3における載置許容面31に載置しただけでは、特に体軸方向に位置ズレする可能性がある。
【0082】
そこで、擬似患者体2において載置許容面31に当接する当接部分である臀部対応部分2eにフック状面ファスナ51を備え、診療台3において臀部対応部分2eに対応する部分にループ状面ファスナ52を備え、擬似患者体2を診療台3に載置するにあたり、擬似患者体2のフック状面ファスナ51と診療台3のループ状面ファスナ52とを係止させたことにより、診療前ポジション(図3(a))と診療中ポジション(図3(b))とを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0083】
また、フック状面ファスナ51とループ状面ファスナ52とで構成する面ファスナ50を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体2と診療台3とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体2を取り換えることができる。したがって、例えば、成人型の擬似患者体2、老人型の擬似患者体2、子供型の擬似患者体2のように、複数種類の擬似患者体2を用意し、実習目的に応じて適した擬似患者体2を容易に交換し、実習に用いることができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0084】
また、可撓性を有するシート状の面ファスナ50で擬似患者体2と診療台3とを係止したため、診療台3の座部シート3aや背板シート3bのクッション性を損なうことがなく、フック状面ファスナ51を配置した擬似患者体2の臀部対応部分2eの形状に、診療台3においてループ状面ファスナ52を配置した部分が追従する。したがって、フック状面ファスナ51とループ状面ファスナ52との係止面積を確保でき、しっかりと診療台3に対して擬似患者体2を係止することができる。
【0085】
なお、面ファスナ50のうち、擬似患者体2の臀部対応部分2eにフック状面ファスナ51を備え、診療台3の座部シート3aにループ状面ファスナ52を備えたが、フック状面ファスナ51を胴体模型2bの背面側、つまり診療台3の背板シート3bにおける載置許容面31に当接する当接部分にフック状面ファスナ51を備え、診療台3の背板シート3bにおいてフック状面ファスナ51に対応する部分にループ状面ファスナ52を備えてもよい。また、フック状面ファスナ51を頭部模型2aの後頭部側、つまり診療台3のヘッドレスト3cにおける載置許容面31に当接する当接部分にフック状面ファスナ51を備え、診療台3のヘッドレストシート3cにおいてフック状面ファスナ51に対応する部分にループ状面ファスナ52を備えてもよい。
【0086】
さらには、フック状面ファスナ51とループ状面ファスナ52とで構成する面ファスナ50のうち、擬似患者体2側にフック状面ファスナ51を備え、診療台3側にループ状面ファスナ52を備えたが、擬似患者体2にループ状面ファスナ52を備え、診療台3にフック状面ファスナ51を備えてもよい。しかしながら、フック状面ファスナ51に比べて、肌触りのよいループ状面ファスナ52を診療台3に配置しているため、例えば、診療台3に擬似患者体2を載置せず、診療台3に患者が座っても問題無く医療用実習装置1を通常の医療用診療台として用いることができる。
【0087】
またループ状面ファスナ52を、例えば、診療台3における載置許容面31の幅方向中央において、長手方向に連続して配置してもよい。このように、ループ状面ファスナ52を連続して配置することにより、ループ状面ファスナ52が診療台3における載置許容面31のデザイン性を向上することができるため、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として用いる場合であっても、違和感なく診療台3を用いることができる。
【0088】
また、診療台3における載置許容面31の幅方向中央において、長手方向に連続してループ状面ファスナ52を配置した場合、成人男性、成人女性、子供あるいは老人のように複数種類の擬似患者体2を用意した場合において、体型の異なる擬似患者体2においてフック状面ファスナ51の位置が異なっても、診療台3に擬似患者体2を確実に係止でき、医療用実習装置1としての利便性が向上する。
【0089】
なお、擬似患者体2は成人女性患者を模した外観を有するが、これに限定されず、上述したように、成人男性、子供あるいは老人を模した外観を有する擬似患者体2であってもよい。しかしながら、一般的に男性患者より女性患者の方が、治療や不要な接触に対して敏感に反応することが知られているため、女性を模した外観形状の擬似患者体2を用いることで、実習者は緊張感を持って実習に取り組むことができる。
【実施例2】
【0090】
以下において、第2実施形態の医療用実習装置1について図4乃至6とともに説明する。
なお、図4は第2実施形態の医療用実習装置1の斜視図による説明図を示し、図5は第2実施形態の医療用実習装置1の概略断面図による説明図を示し、図6は第2実施形態における医療用実習装置1として使用しない状態の医療用診療台3の斜視図を示している。
【0091】
詳しくは、図4は擬似患者体2を診療台3の上方に配置した状態の第2実施形態の医療用実習装置1の斜視図を示している。また、図5(a)は診療前ポジションにおける第2実施形態の医療用実習装置1の概略断面図を示し、図5(b)は診療中ポジションにおける第2実施形態の医療用実習装置1の概略断面図を示している。
【0092】
第1実施形態の医療用実習装置1では、面ファスナ50によって擬似患者体2と診療台3とを係止させたが、図4,5に示すように、第2実施形態の医療用実習装置1は、擬似患者体2の背面側、つまり診療台3における載置許容面31に当接する当接部分に、背面側から突出する係着凸部61(係着手段に対応)を備え、診療台3に係着凸部61の係着を許容する被係着部である係着孔62を備えている。
【0093】
さらには、第1実施形態の医療用実習装置1では、擬似患者体2の背面側から延出させた駆動源供給管路23及び通信ケーブル24を、診療台3の近傍に配置した操作ボックス40の流体管路43及び電気線束44に接続したが、第2実施形態の医療用実習装置1は、情報処理装置4自体を診療台3に内蔵する、あるいは、別の位置に配置し、流体管路43及び電気線束44の先端を載置許容面31から露出させ、図5に示すように、診療台3の載置許容面31と擬似患者体2の背面との間で接続するよう構成している。
【0094】
詳しくは、擬似患者体2の臀部対応部分2eに、背面側に突出する略円筒状の係着凸部61を備え、診療台3の座部シート3aにおける背板シート3b側端部に、係着凸部61の挿入を許容する係着孔62を備えている。また、背板シート3bにおける座部シート3a側端部に、コネクタ部43a,44aごと流体管路43及び電気線束44の先端の通過を許容するケーブル孔64を備え、ケーブル孔64から流体管路43及び電気線束44を引き出して、露出させる。
【0095】
擬似患者体2を診療台3の載置許容面31に載置する際には、係着凸部61を係着孔62に挿入するとともに、診療台3の載置許容面31と擬似患者体2の背面との間で、接続コネクタ23a,24aとコネクタ部43a,44aとを接続する。
【0096】
この様な構成により、第2実施形態の医療用実習装置1は、臀部対応部分2eに備えた係着凸部61と、診療台3の座部シート3aに形成した係着孔62とが係着するため、診療前ポジション(図5(a))と診療中ポジション(図5(b))とを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0097】
また、係着凸部61と係着孔62とで構成する係着手段60を備えたことにより、例えばボルト等の締結手段で、載置した擬似患者体2と診療台3とを接続固定する場合と比べて、容易に擬似患者体2を取り換えることができる。
【0098】
さらにまた、背板シート3bにおける座部シート3a側端部に、コネクタ部43a,44aとともに流体管路43及び電気線束44の先端の通過を許容するケーブル孔64を備え、ケーブル孔64から流体管路43及び電気線束44を引き出し、診療台3の載置許容面31と擬似患者体2の背面との間で、接続コネクタ23a,24aとコネクタ部43a,44aとを接続するため、接続状態にある接続コネクタ23a,24aとコネクタ部43a,44aとが、診療台3に擬似患者体2を載置した状態で外観上露出しないため、実習の臨場感を向上することができる。
【0099】
また、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として用いる場合において、図6に示すように、係着孔62及びケーブル孔64を塞ぐ挿入ブロック63,65(露出回避手段に対応)を備え、流体管路43及び電気線束44を内部に押し戻して、係着孔62及びケーブル孔64を挿入ブロック63,65で塞いでもよい。これにより、通常の医療用診療台として不要な孔が埋まり、通常の医療用診療台として診療台3を違和感なく用いることができる。
【0100】
なお、係着凸部61を円筒状に形成し、係着孔62に挿入して係着させたが、係着凸部61をフック状に形成し、座部シート3aと背板シート3bとの間に挿入して係着させてもよい。
【0101】
また、流体管路43及び電気線束44は、背板シート3bにおける座部シート3a側端部に設けたケーブル孔64に挿通する例を示したが、この他にも、流体管路43のコネクタ部43a及び電気線束44のコネクタ部44aのいずれか一方または双方を、擬似患者体の腕部模型2cの載置を許容する不図示のアームレスト、あるいは、医療用診療台3の側部に配設する不図示のスピットンユニットに設けてもよい。
【0102】
その場合、流体管路43あるいは電気線束44は、アームレストやスピットンユニットの内部を挿通し、あるいは各部の陰に隠れるように取り回される。また、各コネクタ部43a,44aを覆う蓋やシャッターなどのカバー部材(露出回避手段に対応)を設けることで、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として用いる場合であっても、違和感なく診療台3を用いることができる。
【実施例3】
【0103】
続いて、第3実施形態の医療用実習装置1について図7とともに説明する。
なお、図7は第3実施形態の医療用実習装置1の概略断面図による説明図を示している。また、図7(a)は診療前ポジションにおける第3実施形態の医療用実習装置1の概略断面図を示し、図7(b)は診療前ポジションにおける第3実施形態の変形例の医療用実習装置1の概略断面図を示している。
【0104】
上述の説明では、第1実施形態の医療用実習装置1では面ファスナ50によって擬似患者体2と診療台3とを係止させ、第2実施形態の医療用実習装置1では、係着手段60で擬似患者体2と診療台3とを係着させたが、図7(a)に示すように、第3実施形態の医療用実習装置1は擬似患者体2の背面側、つまり診療台3における載置許容面31に当接する当接部分に、背面側から突出するとともに診療台3の幅方向に配置した係止レール71(係着手段及び係止手段に対応)を備え、診療台3の載置許容面31に係止レール71の係止を許容する被係止溝部72(被係着部及び被係止手段に対応)を備えている。
【0105】
詳しくは、図7(a)のa部拡大図に示すように、第3実施形態の医療用実習装置1の擬似患者体2は、胴体模型2bの背面、つまり背板シート3bの載置許容面31に当接する当接部分に、幅方向に配置され、胴体模型2bの背面から突出する係止レール71を備えている。また、第3実施形態の医療用実習装置1の診療台3は、擬似患者体2の係止レール71に対応する背板シート3bの載置許容面31に、幅方向に配置され、背板シート3bの載置許容面31より断面内側に凹状の被係止溝部72を備えている。
【0106】
擬似患者体2を診療台3の載置許容面31に載置する際には、診療台3の幅方向側方より、擬似患者体2の係止レール71を診療台3の被係止溝部72に嵌め込み、幅方向にスライドさせて、擬似患者体2を診療台3に載置する。
【0107】
この様な構成により、第3実施形態の医療用実習装置1は、胴体模型2bに備えた係止レール71と、診療台3の背板シート3bに形成した被係止溝部72とが係止するため、診療前ポジション(図7(a))と診療中ポジション(図示省略)とを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が体軸方向に位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0108】
なお、第3実施形態の変形例として、図7(b)及びb部拡大図に示すように、擬似患者体2の胴体模型2bの背面側に被係止溝部72を備え、背板シート3bの載置許容面31に係止レール71を備え、係止レール71と被係止溝部72とを係止させて擬似患者体2を診療台3に載置してもよい。さらには、係止レール71と被係止溝部72とで構成する係止手段70を胴体模型2b及び背板シート3bに備えずとも、脚部模型2d及び座部シート3a、あるいは、頭部模型2aとヘッドレスト3cに備えてもよい。
【実施例4】
【0109】
続いて、第4実施形態の医療用実習装置1について図8とともに説明する。
なお、図8は第4実施形態の医療用実習装置1の斜視図による説明図を示している。詳しくは、図8は擬似患者体2を診療台3の上方に配置した状態の第4実施形態の医療用実習装置1の斜視図を示している。
【0110】
上述の説明では、第1実施形態の医療用実習装置1では面ファスナ50によって擬似患者体2と診療台3とを係止させ、第2実施形態の医療用実習装置1では、係着手段60で擬似患者体2と診療台3とを係着させ、第3実施形態の医療用実習装置1では、係止手段70で擬似患者体2と診療台3とを係着させたが、図8に示すように、第4実施形態の医療用実習装置1は擬似患者体2の背面側、つまり診療台3における載置許容面31に当接する当接部分と、載置許容面31との間に、係着手段として機能する粘着シート80を挟み込んで係着している。
【0111】
詳しくは、図8に示すように、粘着シート80は、可撓性を有する平面視正方形状のシート体であり、両表面が粘着性を有している。なお、粘着シート80は、露出回避手段としても機能するように、貼付けと剥がしとを繰り返し行うことのできる粘着性を有するものである。
【0112】
擬似患者体2を診療台3の載置許容面31に載置する際には、載置許容面31の所定の場所に粘着シート80を貼付けてから擬似患者体2を載置する。
この様な構成により、第4実施形態の医療用実習装置1は、擬似患者体2の背面が、粘着性を有する粘着シート80を介して、診療台3の載置許容面31に係着するため、診療前ポジションと診療中ポジションとを移行するため座部シート3aに対して背板シート3bを起こしたり、寝かしたりしても、診療台3に対して擬似患者体2が位置ズレすることなく、安心して実習することができる。
【0113】
なお、粘着シート80は、貼付け位置を問わないため、擬似患者体2の形状に応じた任意の場所に貼付ければよく、容易に係着することができる。また、粘着シート80は、貼付けと剥がしとを繰り返し行うことのできる粘着性を有するものであるため、粘着シート80を剥がせば、擬似患者体2を載置せず、診療台3を通常の医療用診療台として違和感なく用いることができる。
【0114】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の屈曲部は、座部シート3aと背板シート3bとの間、及び背板シート3bとヘッドレスト3cの間に対応し、
以下同様に、
医療用診療台は、診療台3に対応し、
擬似患者体は、擬似患者体2に対応し、
可動部は、関節機構21に対応し、
診療台載置許容面は、載置許容面31に対応し、
当接部分は、臀部対応部分2eや胴体模型2bの背面に対応し、
係着手段は、面ファスナ50、係着手段60の係着凸部61、係止手段70、粘着シート80に対応し、
当接対応部分は、載置許容面31における所定部分に対応し、
被係止手段は、被係止溝部72あるいはループ状面ファスナ52に対応し、
係止手段は、係止レール71あるいはフック状面ファスナ51に対応し、
制御部は、情報処理装置4に対応し、
診療台側コネクタは、コネクタ部43a,44aに対応し、
被係着部は、係着孔62、及び載置許容面31に対応し、
露出回避手段は、挿入ブロック63、不使用時に剥がせる粘着シート80に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0115】
例えば、擬似患者体2を診療台3に係着させる係着手段として、剥離可能な接着剤、載置許容面31に対して吸着する吸盤、あるいは診療台3に対して吸着する永久磁石や電磁石等とすることができる。また、係止手段及び被係止手段として、線状のファスナ、ホックボタン、スナップボタン等で構成することができる。
【0116】
また、医療用実習装置として使用しない場合に、ループ状面ファスナ52や被係止溝部72等の被係止手段が形成された座部シート3aや背板シート3bを、被係止手段を備えていない座部シート3aや背板シート3bに交換する構成であってもよい。
【0117】
また、擬似患者体2を頭部模型2aと胴体模型2bだけで構成し、頭部模型2aをヘッドレスト3cに対して係着・係止したり、胴体模型2bを背板シート3bに対して係着・係止したりして、実習してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
この発明は、擬似患者体と、医療用診療台とを用いるような様々な医療用実習装置として、医療教育、特に歯科医療の教育において用いることができる。
【符号の説明】
【0119】
1…医療用実習装置
2…擬似患者体
2b…胴体模型
2d…脚部模型
2e…臀部対応部分
3…診療台
3a…座部シート
3b…背板シート
3c…ヘッドレスト
4…情報処理装置
21…関節機構
23a,24a…接続コネクタ
31…載置許容面
43a,44a…コネクタ部
50…面ファスナ
51…フック状面ファスナ
52…ループ状面ファスナ
60…係着手段
62…係着孔
63…挿入ブロック
70…係止手段
71…係止レール
72…被係止溝部
80…粘着シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置可能な医療実習用の擬似患者体であって、
前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有するとともに、
前記医療用診療台における診療台載置許容面と当接する当接部分に、前記医療用診療台に係着する係着手段を備えた
擬似患者体。
【請求項2】
前記係着手段を、
前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に備えた被係止手段と係止する係止手段で構成した
請求項1に記載の擬似患者体。
【請求項3】
前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、
前記係止手段を、フック状面ファスナで構成した
請求項2に記載の擬似患者体。
【請求項4】
前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備え、
前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えた
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の擬似患者体。
【請求項5】
前記医療用診療台における前記診療台載置許容面に配置した前記診療台側コネクタに対して接続許容する前記接続コネクタを、前記当接部分に配置した
請求項4に記載の擬似患者体。
【請求項6】
女性を模した外観形状で構成した
請求項1乃至5のうちいずれかに記載の擬似患者体。
【請求項7】
屈曲角度を調整可能な屈曲部を有し、医療実習用の擬似患者体を載置可能な医療用診療台であって、
前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有する前記擬似患者体において、診療台載置許容面と当接する当接部分に備えた係着手段の係着を許容する被係着部を備えた
医療用診療台。
【請求項8】
前記被係着部を、
前記当接部分に備え、前記係着手段を構成する係止手段と係止する被係止手段で構成し、
該被係止手段を、前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に配置した
請求項7に記載の医療用診療台。
【請求項9】
前記被係止手段の不使用時に、
前記診療台載置許容面から前記被係止手段を露出させない露出回避手段を備えた
請求項8に記載の医療用診療台。
【請求項10】
前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、
前記係止手段を、フック状面ファスナで構成した
請求項8または9に記載の医療用診療台。
【請求項11】
前記擬似患者体に、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えるとともに、
前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記擬似患者体に備えた接続コネクタに対して接続許容する診療台側コネクタを備えた
請求項7乃至10のうちいずれかに記載の医療用診療台。
【請求項12】
前記接続コネクタを、前記当接部分に配置するとともに、前記診療台側コネクタを、前記診療台載置許容面に配置した
請求項11に記載の医療用診療台。
【請求項13】
請求項1乃至6のうちいずれかに記載の擬似患者体と、
請求項7乃至12のうちいずれかに記載の医療用診療台とで構成する
医療用実習装置。
【請求項1】
屈曲角度を調整可能な屈曲部を有する医療用診療台に載置可能な医療実習用の擬似患者体であって、
前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有するとともに、
前記医療用診療台における診療台載置許容面と当接する当接部分に、前記医療用診療台に係着する係着手段を備えた
擬似患者体。
【請求項2】
前記係着手段を、
前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に備えた被係止手段と係止する係止手段で構成した
請求項1に記載の擬似患者体。
【請求項3】
前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、
前記係止手段を、フック状面ファスナで構成した
請求項2に記載の擬似患者体。
【請求項4】
前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備え、
前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記医療用診療台に備えた診療台側コネクタに対して接続許容する接続コネクタを備えた
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の擬似患者体。
【請求項5】
前記医療用診療台における前記診療台載置許容面に配置した前記診療台側コネクタに対して接続許容する前記接続コネクタを、前記当接部分に配置した
請求項4に記載の擬似患者体。
【請求項6】
女性を模した外観形状で構成した
請求項1乃至5のうちいずれかに記載の擬似患者体。
【請求項7】
屈曲角度を調整可能な屈曲部を有し、医療実習用の擬似患者体を載置可能な医療用診療台であって、
前記屈曲部の屈曲に対応して可動する可動部を有する前記擬似患者体において、診療台載置許容面と当接する当接部分に備えた係着手段の係着を許容する被係着部を備えた
医療用診療台。
【請求項8】
前記被係着部を、
前記当接部分に備え、前記係着手段を構成する係止手段と係止する被係止手段で構成し、
該被係止手段を、前記診療台載置許容面において前記当接部分に対応する当接対応部分に配置した
請求項7に記載の医療用診療台。
【請求項9】
前記被係止手段の不使用時に、
前記診療台載置許容面から前記被係止手段を露出させない露出回避手段を備えた
請求項8に記載の医療用診療台。
【請求項10】
前記被係止手段を、ループ状面ファスナで構成し、
前記係止手段を、フック状面ファスナで構成した
請求項8または9に記載の医療用診療台。
【請求項11】
前記擬似患者体に、前記可動部を駆動する駆動部と、該駆動部を制御する制御部とを備えるとともに、
前記駆動部に対して駆動源を供給するとともに、前記制御部に対して制御信号を通信し、前記擬似患者体に備えた接続コネクタに対して接続許容する診療台側コネクタを備えた
請求項7乃至10のうちいずれかに記載の医療用診療台。
【請求項12】
前記接続コネクタを、前記当接部分に配置するとともに、前記診療台側コネクタを、前記診療台載置許容面に配置した
請求項11に記載の医療用診療台。
【請求項13】
請求項1乃至6のうちいずれかに記載の擬似患者体と、
請求項7乃至12のうちいずれかに記載の医療用診療台とで構成する
医療用実習装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−20208(P2013−20208A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155668(P2011−155668)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、「歯科臨床実習用ヒト型患者ロボットシミュレータ」に関する委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502397369)学校法人 日本歯科大学 (20)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【出願人】(591076257)株式会社ココロ (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、「歯科臨床実習用ヒト型患者ロボットシミュレータ」に関する委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502397369)学校法人 日本歯科大学 (20)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【出願人】(591076257)株式会社ココロ (11)
【Fターム(参考)】
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