説明

攪拌乾燥機の異常検出方法。

【課題】攪拌乾燥機の攪拌羽根と乾燥機胴体との間隔を正確に把握し、攪拌乾燥機の異常を確実に検出する方法を提供することにある。
【解決手段】内部に攪拌羽根を有する攪拌乾燥機の乾燥機胴体の外周部に渦電流センサを設け、攪拌羽根と乾燥機胴体との間隔を測定し、異常を検出することを特徴とする、すなわち攪拌羽根と乾燥機胴体との間隔を直接、非接触で測定することによって、攪拌軸や攪拌羽根等の異常による攪拌羽根と乾燥機胴体の異常接近を確実に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌乾燥機の異常検出方法に関する。詳しくは攪拌乾燥機の攪拌羽根と乾燥機胴体との間隔を正確に測定して異常を検出する攪拌乾燥機の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水や有機溶媒が付着した有機物や無機物の粉体や粒子(以下、湿潤粉粒体と言う。)の乾燥に攪拌乾燥機が使用されている。攪拌乾燥機には、その上部に設置されているホッパーやサイロから湿潤粉粒体が供給され、内部に有する攪拌羽根の回転によって混合しつつ、熱風の供給または乾燥機胴体(以下、単に胴体と言うことがある。)の外周部に設けられているジャケットからの加熱によって粉粒体が乾燥される。
攪拌乾燥機としては、横型、縦型等のものがあり、攪拌羽根としては、パドル型、リボン型、イカリ型等のものがある。
【0003】
乾燥を効率良く行うためには、良く攪拌して混合する必要があり、胴体内面にできるだけ粉粒体が残らないように、攪拌羽根と胴体内面との間隔を小さくするのが好ましい。
しかしながら、湿潤粉粒体が過剰に投入されたり、片寄ったりした時等に攪拌羽根がたわんで、攪拌羽根と胴体が接近する。攪拌羽根と胴体が接近し過ぎて、ついには接触すると、攪拌羽根や胴体を傷つけたり、接触して削られてできた金属粉が粉粒体に混入して品質問題を引き起こしたりすることがある。
従って、攪拌羽根と胴体との間隔を把握し、異常を検出することが望ましい。
【0004】
一般に回転機の異常検出方法として、回転軸のトルクの異常を検出して行う方法が知られているが、この方法では、攪拌羽根と胴体との極僅かな接触を把握することは困難である。回転体の異常を検出する方法として、粉体定量排出器の攪拌羽根と底板との間隔を渦電流センサで検出して行う方法が知られている(特許文献1参照。)が、攪拌乾燥機について精度良く異常を検出する方法は知られていない。
【特許文献1】特開2005−140769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、攪拌乾燥機の攪拌羽根と胴体との間隔を正確に把握し、攪拌乾燥機の異常を確実に検出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはかかる課題を解決するために、攪拌乾燥機の異常を確実に検出する方法について鋭意検討した結果、乾燥機胴体の外周部に渦電流センサを設け、攪拌羽根と胴体との間隔を非接触で測定することによって、攪拌羽根と胴体の異常接近を確実に検出できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、内部に攪拌羽根を有する攪拌乾燥機の乾燥機胴体の外周部に渦電流センサを設け、攪拌羽根と乾燥機胴体との間隔を測定し、異常を検出することを特徴とする攪拌乾燥機の異常検出方法である。
また、攪拌乾燥機が、その攪拌軸が水平方向に配設された横型攪拌乾燥機であり、乾燥機胴体の外周の最底部から攪拌羽根の回転方向に略45°回転した位置に渦電流センサが設けられていることを特徴とする前記の攪拌乾燥機の異常検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によって、攪拌乾燥機の攪拌羽根と胴体との間隔を精度良く把握することができ、攪拌羽根の異常を確実かつ迅速に検出することが可能である。その結果、攪拌羽根や胴体を傷つけたり、接触して削られてできた金属粉が粉粒体に混入して品質問題を引き起こしたりすることを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、内部にリボン型攪拌羽根を有し、その攪拌軸が水平方向に配置された横型攪拌乾燥機を例に本発明を説明する。
図1は本発明における横型乾燥機の一例の断面模式図である。横型乾燥機の胴体1の内部にリボン型攪拌羽根3が水平方向に設けられている。攪拌軸2の一方の端部が軸受4で支持されており、他端は軸受で支持されていない。すなわち攪拌機が片持ち型の乾燥機である。胴体の周囲には加熱用のジャケット7が設けられている。
ホッパー等からの湿潤粉粒体が供給口5から乾燥機に投入され、図示していないモータの回転が減速機を介して攪拌軸2に伝えられ、攪拌羽根3が約1〜10RPMで回転する。湿潤粉粒体が混合すると共にジャケット7からの加熱によって水分または有機溶媒が蒸発する。これらの蒸気は、通常、系内を減圧にして蒸気排出口6から排出される。乾燥した粉粒体は排出口8から排出される。
このような攪拌乾燥機では、通常、回分法によって乾燥が行われる。
【0009】
乾燥機胴体内面に粉粒体等が残ると乾燥が非効率になるので、攪拌羽根と乾燥機胴体内面との間隔を小さくするが、通常、10mm程度である。なお、図1では最も外側のリボン型攪拌羽根を示すが、その内側にもリボン型攪拌羽根を有するもの、すなわち二重に攪拌羽根が設けられているもある。
攪拌羽根が存在する部分の胴体外周部には、渦電流センサ9が取り付けられている。渦電流センサからの信号を処理して攪拌羽根と胴体との間隔を測定する測定器10が設けられ、その結果を記録するレコーダー11が接続されている(図2)。測定器10としては、通常、いわゆる渦流探傷器が用いられる。
【0010】
攪拌乾燥機には種々の大きさのものがあるが、例えば、攪拌羽根の直径が約1500mm、攪拌羽根の厚みが約10mm、攪拌羽根と胴体の間隔が約10mmのようなものもある。胴体が比較的短いものでは攪拌軸の一方の端部を軸受で保持した片持ち型の乾燥機、胴体が長くなると攪拌軸の両方の端部を軸受で保持した両持ち型の乾燥機もある。
【0011】
渦電流センサは、片持ち型の攪拌乾燥機の場合には、攪拌軸が保持されていない他端部分の位置に設けるのが好ましく、また、両持ち型の攪拌乾燥機の場合には、通常、攪拌羽根の中央部分の位置に設けられる。
渦電流センサは負荷および遠心力によって最も接近し易い、乾燥機胴体の外周の最底部から攪拌羽根の回転方向に略45°、具体的には約35〜55°、好ましくは約40〜50°回転した位置に設けるのが望ましい。
【0012】
渦電流センサは、胴体が非磁性体材料で作製されている場合には、そのまま胴体の表面に取り付ける。胴体が磁性材料で作製されている場合には、胴体に孔を空け、先端部に非磁性材料の平板を取り付けた渦電流センサを差込み、先端部の平板表面が胴体の内側の表面と同じ面を形成するように取り付けられる。渦電流センサの取り付け方法は特に制限されるものではなく、胴体に直接ネジ留めする方法、曲面に取り付けるための治具を用いる方法等によって行われる。
上記した渦電流センサの位置に加熱用ジャケットがある場合には、その部分のジャケットを除き、直接、胴体に渦電流センサを取り付ける。
【0013】
渦電流センサは、ボビン、その表面部に上下2本のコイルから構成されている。検出感度を高めるために、コイルの内側にコア材を有する構成のものもある。具体的には、コイルの内側に磁石、フェライトまたは高透磁率金属等のコア材のないセンサ(以下、空芯センサと呼ぶことがある。)、コア材として磁石、フェライトまたは高透磁率金属を使用し、コイルの内側に磁石を有するセンサ(以下、磁芯センサと呼ぶことがある。)、コイルの内側にフェライトを有するセンサ(以下、フェライト芯センサと呼ぶことがある。)、またはコイルの内側に高透磁率金属を有するセンサ(以下、高透磁率金属芯センサと呼ぶことがある。)が使用される。
コイルの内側に磁石を有するセンサ、コイルの内側にフェライトを有するセンサ、コイルの内側に高透磁率金属を有するセンサは、コイルの内側にコア材のないセンサを使用した場合に比べて、検出感度が高い(渦電流が大きい)ことから、好ましく用いられる。高透磁率金属としては、4−79Moパーマロイ、86Ni電着パーマロイ、49Co−2V−Feパーメンダー等が挙げられる。
【0014】
コア材の形状は円筒状でも円柱状でもよく、円板上のものを重ねたものでも良い。コア材の長さは、上側のコイルの高さと略同じにすることにより、検出感度が向上する。コア材として磁石を使用した場合、その高さが上側のコイルの高さに満たない時には、フェライトまたは高透磁率金属を配置して同じ高さにするのが好ましい。また、上下に磁石を配し、その間にフェライトまたは高透磁率金属を配置しても良い。
【0015】
磁芯センサ、フェライト芯センサまたは高透磁率金属芯センサとしては、コイル外径が45〜120mmφ、好ましくは50〜110mmφ、コイル幅が1〜10mm、好ましくは2〜7mm、コイル間隔1〜50mm、好ましくは5〜40mmのものが用いられる。
また、空芯センサとしては、コイル外径が20〜140mmφ、好ましくは30〜100mmφ、コイル幅が1〜10mm、好ましくは2〜7mm、コイル間隔1〜50mm、好ましくは5〜40mmのものが用いられる。
これらのセンサにおいて、コイルは直径が0.05〜0.5mmの素線を200〜350巻/コイルして作製される。なお、渦電流センサは、通常、そのコイルの外径でその大きさが表されることが多い。
【0016】
これらコイルに流す交流の試験周波数は0.5〜50KHz、好ましくは1〜8KHzであり、この範囲より小さくても、また大きくても検出感度が低下し、好ましくない。
【0017】
渦電流センサのコイルからの磁場を横切る攪拌羽根の幅によって渦電流センサのコイルインピーダンスが変化し、スクリュー翼の幅が大きいほど渦電流センサのコイルインピーダンスの変化量は大きくなる。したがって、渦電流センサの設置位置上の攪拌羽根の幅について、攪拌羽根と胴体との間隔と発生する渦電流との関係、通常、渦電流センサからは最終的に電圧の変化として信号が取出されるので、電圧と間隔の関係を予め把握しておく。
【0018】
渦電流センサからの電圧信号を間隔測定器で把握し、予め求めておいた電圧と間隔の関係から、間隔が求められる。表示としては、電圧を表示しても良いし、間隔測定器に間隔と電圧の関係を入力しておき、渦電流センサからの電圧信号からその時の間隔を求め、これを表示しても良い。所定の間隔に対応する電圧信号に閾値を設けておき、これを超える場合に警報を出したり、更には攪拌乾燥機の運転を停止させたりすることも可能である。間隔またはそれに対応する電圧の変化を監視することによって、攪拌乾燥機の変化を把握することができ、異常に対して早期に対応することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
実験例1
下記の模擬攪拌羽根、模擬胴体、渦電流センサを用い、模擬胴体の下側に渦電流センサを取り付け、上側に厚さを変えてアクリル板を置き、その上を模擬攪拌羽根を通過させ、電圧変化を測定した。得られた電圧と間隔の関係を図3に示す。
【0021】
(a)模擬攪拌羽根:
断面が上辺60mm×下辺65mm×厚さ9mmの台形状のハステロイC22製の板
(b)模擬胴体:
厚さ8mmのハステロイC22製の板
(c)渦電流センサ:
コイルの内側にコア材のない渦電流センサである。
ボビン材質:フェノール樹脂
コイル:0.23mmφ被覆銅線(2種エナメル線)を312巻き×2
コイル外径50mmφ、コイル巻幅5mm、コイル間隔30mm、コイル幅3mm
(d)間隔測定器:
ホッキング社(株)製 渦流探傷器 ミニフェゼック
(e)試験周波数:
1KHz
【0022】
実験例2
下記の攪拌乾燥機に上記実験例1と同じ渦電流センサを取り付けて測定した。得られた電圧の時間変化を図4に示す。攪拌羽根が19.49秒毎に通過している(約3rpm)。約1Vの電圧が出力されており、精度良く攪拌羽根と胴体との間隔を把握することができる。
(a)横型攪拌乾燥機:
胴体:内径1450mm×長さ1800mm×厚さ8mm、容量3000L、
ハステロイC22製、
ジャケット:外径1550mm×長さ1800mm、容量400L
攪拌羽根:リボン型、片持ち型
外径1440mm×厚さ9mm、ハステロイC22製、
攪拌羽根と胴体との設定間隔:約10mm、
羽根回転数:3rpm、
(b)渦電流センサ:
上記実験例1と同じ渦電流センサを乾燥機胴体の外周の最底部から攪拌羽根の回転方向に45°回転した位置に取り付けた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における横型乾燥機の一例の断面模式図である。
【図2】渦電流センサと間隔測定器の配置を示す図である。
【図3】実験例1における電圧と間隔の関係を示すである。
【図4】実際の攪拌乾燥機における電圧の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 横型攪拌乾燥機の胴体
2 攪拌軸
3 リボン型攪拌羽根
4 軸受
5 供給口
6 蒸気排出口
7 ジャケット
8 排出口
9 渦電流センサ
10 間隔測定器
11 レコーダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に攪拌羽根を有する攪拌乾燥機の乾燥機胴体の外周部に渦電流センサを設け、攪拌羽根と乾燥機胴体との間隔を測定し、異常を検出することを特徴とする攪拌乾燥機の異常検出方法。
【請求項2】
攪拌乾燥機が、その攪拌軸が水平方向に配設された横型攪拌乾燥機であり、乾燥機胴体の外周の最底部から攪拌羽根の回転方向に略45°回転した位置に渦電流センサが設けられていることを特徴とする請求項1記載の攪拌乾燥機の異常検出方法。
【請求項3】
攪拌羽根がリボン型攪拌羽根であることを特徴とする請求項1または2記載攪拌乾燥機の異常検出方法。
【請求項4】
攪拌軸が一端で保持されている片持ち型の攪拌乾燥機であり、攪拌軸が保持されていない他端部分の位置に渦電流センサが設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載攪拌乾燥機の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−14258(P2009−14258A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175944(P2007−175944)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】