説明

支持ディスクを備えたジョイント外側部分

本発明は、鐘形のジョイント外輪(16)と、該ジョイント外輪(16)に付設された結合ジャーナル(17)と、該結合ジャーナル(17)の付設部でジョイント外輪(16)に設けられた半径方向の支持面(18)とから成る、等速回転ジョイント(11)のジョイント外側部分(12)であって、該ジョイント外側部分(12)が、ねじ締結手段によって、結合ジャーナル(17)に被せ嵌められるべきホイールハブ(25)と緊締可能であり、該ホイールハブ(25)が直接的または間接的に前記支持面に支持されるようになっている形式のものに関する。本発明の構成では、摩擦の少ない材料から成る環状ディスク(22)が設けられており、該環状ディスク(22)が結合ジャーナル(17)に対して同心的に前記支持面(18)に載着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鐘形のジョイント外輪(Gelenkglocke)と、該ジョイント外輪に付設された接続ジャーナルもしくは結合ジャーナルと、該結合ジャーナルの付設部でジョイント外輪に設けられた半径方向の支持面とから成る、等速回転ジョイントのジョイント外側部分であって、該ジョイント外側部分が、ねじ締結手段によって、結合ジャーナルに被せ嵌められるべきホイールハブと緊締可能であり、該ホイールハブが直接的または間接的に前記支持面に支持されるようになっている形式のものに関する。
【0002】
さらに本発明は、鐘形のジョイント外輪と、該ジョイント外輪に付設された接続ジャーナルもしくは結合ジャーナルと、該結合ジャーナルの付設部でジョイント外輪に設けられた半径方向の支持面とから成るジョイント外側部分を備えた等速回転ジョイントと、結合ジャーナルに被せ嵌められたホイールハブとから成るアッセンブリであって、ホイールハブが、ねじ締結手段によってジョイント外側部分と緊締されており、しかもホイールハブが直接的または間接的に前記支持面に支持されている形式のものに関する。
【0003】
このような形式のアッセンブリは公知の自動車の、駆動される車両ホイール、つまり駆動輪のホイール軸受け装置の範囲で使用される。等速回転ジョイントはこの場合、自動車のドライブシャフトもしくはハーフシャフトのホイール側のジョイントを形成する。シャフトとハブアッセンブリとの組付け時では、ホイールハブとジョイント外側部分との間の軸方向の緊締がねじ締結手段によって行われる。この場合、相対的な支持は、ホイールハブに被せられたホイール軸受け装置の軸受け内側リングもしくは軸受け内レースを介して、またはホイールハブ自体を介して、それぞれジョイント外側部分に設けられた支持面に対して行われる。車両での使用では、ジョイント外側部分の支持面における高い緊締力にもかかわらず、微小運動が生じる恐れがあり、このような微小運動は著しいノイズ発生の原因となる。相応する微小運動はこの場合、不均一なトルク導入の結果であり、かつ場合によっては回転する曲げモーメントの結果でもある。互いに接触する表面を慎重に加工した場合でも、上記ノイズ発生はこれまで回避され得なかった。
【0004】
このような公知先行技術から出発して、本発明の課題は、ノイズ発生を抑制するための上記問題の解決手段を提供することである。この課題を解決するための手段は、冒頭で述べた形式のジョイント外側部分において、摩擦の少ない材料から成る環状ディスクが設けられており、該環状ディスクが結合ジャーナルに対して同心的に前記支持面に載着されていることを特徴とする、支持ディスクを備えたジョイント外側部分にある。この場合、環状ディスクは、特に外縁部を起点として延びる円筒状区分を有しており、この円筒状区分は鐘形のジョイント外輪に設けられた、対応する円筒状区分に摩擦接続的に、つまり半径方向の予荷重もしくはプリロードをかけられて装着されていてよい。
【0005】
これに相応して、冒頭で述べた形式の、等速回転ジョイントとホイールハブとから成るアッセンブリは、摩擦の少ない材料から成る環状ディスクが設けられており、該環状ディスクが結合ジャーナルに対して同心的に直接に前記支持面に載着されていて、前記ねじ締結手段の緊締力を吸収していることを特徴としている。この場合、本発明の第1の実施態様では、ホイールハブに軸受け手段が被せられており、該軸受け手段がねじ締結手段によって軸方向で予荷重もしくはプリロードをかけられており、該軸受け手段の軸受け内側リングもしくは軸受け内レースが一方ではホイールハブに、他方では環状ディスクに、それぞれ軸方向でねじ締結手段の負荷を受けて支持されている。これに対して択一的な別の実施態様では、ホイールハブに軸受け手段が被せられており、該軸受け手段の軸受け内レースが、ホイールハブに設けられた環状縁曲げ部によってホイールハブに緊締されており、該環状縁曲げ部が、ねじ締結手段の負荷を受けて直接に環状ディスクに支持されている。環状縁曲げ部はこの場合、軸受け手段を被せ嵌めた後にホイールハブを塑性変形させることにより形成されている。摩擦の少ない環状ディスクはこの場合、いまや環状ディスクとジョイント外側部分との間ならびに環状ディスクと軸受け内レースもしくは縁曲げ部との間に分配されている微小運動がもはやノイズを発生し得なくなるように選択される。
【0006】
この場合、第1の提案では、環状ディスクが鉄材料から成っていて、モリコート(Molykote)D321Rから成る被覆体を有している。この被覆体を被着させる前に、環状ディスクはリン酸塩処理され得るか、またはサンドブラスト処理され得る。別の可能性は、環状ディスクが青銅または非鉄金属から成っていることにある。さらに別の実施態様では、環状ディスクが、抵抗性のある、場合によっては繊維強化された適当なプラスチックから成っていることが可能である。
【0007】
以下に、本発明の有利な実施例を図面につき詳しく説明する。
【0008】
図1は、支持ディスクを備えた、本発明によるジョイント外側部分を有する等速回転ジョイントを示す縦断面図であり;
図2は、等速回転ジョイントとホイールハブとから成る、本発明によるアッセンブリの第1の構成を示す縦断面図であり;
図3は、等速回転ジョイントとホイールハブとから成る、本発明によるアッセンブリの第2の構成を示す縦断面図であり;
図4は、図2に示した構成に似た、本発明によるアッセンブリの変化実施例を示す縦断面図であり;
図5は、図3に示した構成に似た本発明によるアッセンブリの変化実施例を示す縦断面図である。
【0009】
図1には、等速回転ジョイント11が図示されている。この等速回転ジョイント11は本発明によるジョイント外側部分12と、ジョイント内側部分13と、ボールケージ14と、トルク伝達手段である複数のボール15とを有している。本発明によるジョイント外側部分12は鐘形のジョイント外輪16と、このジョイント外輪16に付設された接続ジャーナル17とを有していて、さらにこの接続ジャーナル17に対して同心的に半径方向の支持面18を有している。接続ジャーナル17には、外部にホイールハブ25とのトルク伝達係合のためのスプライン状の軸歯列19が設けられており、内部には締付けねじをねじ込むための雌ねじ山21を備えた内孔20が設けられている。半径方向の支持面18には、支持ディスク22が載着されている。この支持ディスク22の外周面は円筒状区分23に移行しており、この円筒状区分23はジョイント外側部分12に設けられた円筒状段部24に形状接続的に、つまり嵌合に基づいた係合により、保持されている。
【0010】
図2において、図1における構成要素と同じ構成要素には同一の符号が付与されている。これらの構成要素に関しては詳しい説明を省略する。接続ジャーナル17には、ホイールハブ25が被せ嵌められている。このホイールハブ25はスプライン状の軸歯列19に対応するスプライン状の対応歯列26を備えており、この対応歯列26が軸歯列19と形状接続的に係合している、つまり軸歯列19と噛み合っている。ホイールハブ25には、ホイールフランジ27が続いており、このホイールフランジ27にはブレーキディスク28が結合されている(詳しくは説明しない)。ホイールハブ25は締付けねじ29を介してジョイント外側部分12と緊締されている。締付けねじ29のねじヘッド30はホイールフランジ27に支持されており、締付けねじ29自体は貫通開口もしくは内孔20の雌ねじ山21にねじ込まれている。ホイールハブ25には、2列式のホイール軸受け34が装着されている。このホイール軸受け34の軸受け内側リングもしくは軸受け内レース32,33は一方ではホイールフランジ27に設けられた段部35に、他方では支持ディスク22に、締付けねじ29のプリロード力を受けて軸方向で支持されている。ホイール軸受け34の軸受け外レース31はホイールキャリヤ36内に挿入されている。選択されたホイール軸受け34の構造では、締付けねじ29によって軸受けプリロードが調節される。
【0011】
図3において、図1における構成要素と同じ構成要素には同一の符号が付与されている。これらの構成要素に関しては詳しい説明を省略する。接続ジャーナル17には、ホイールハブ25が被せ嵌められている。このホイールハブ25はスプライン状の軸歯列19に対応するスプライン状の対応歯列26を備えており、この対応歯列26が軸歯列19と形状接続的に係合している、つまり軸歯列19と噛み合っている。ホイールハブ25には、ホイールフランジ27が続いており、このホイールフランジ27にはブレーキディスク28が結合されている(詳しくは説明しない)。ホイールハブ25は締付けねじ29を介してジョイント外側部分12と緊締されている。締付けねじ29のねじヘッド30はホイールフランジ27に支持されており、締付けねじ29自体は貫通開口もしくは内孔20の雌ねじ山21にねじ込まれている。ホイールハブ25には、ホイール軸受け34が装着されている。このホイール軸受け34の軸受け内レース32,33はホイールフランジ27に設けられた段部35に支持されている。ホイール軸受け34はホイールハブ25に設けられた縁曲げ部39によって軸方向で緊締され、かつ位置固定されている。この縁曲げ部39は締付けねじ29のプリロード力を受けて環状面で支持ディスク22に接触している。この場合にも、ホイール軸受け34の軸受け外レース31はやはりホイールキャリヤ36内に挿入されている。軸受けプリロードはこの場合、製作経過および縁曲げ部の形状により決定される。
【0012】
図4において、図2における構成要素と同じ構成要素には同一の符号が付与されている。これらの構成要素に関しては詳しい説明を省略する。図示の部分は上記実施例とは少しだけ異なるジオメトリ(幾何学的形状)を有しており、この場合、特に締付けねじ29のねじヘッド30は明らかに上記実施例のものとは異なっている。ブレーキディスクは描き込まれていない。ホイール軸受け装置はシール部材および軸受けケージと共に完全な状態で図示されている。軸受け外レース31はこの場合、ホイールキャリヤ36と一体に形成されている。ホイールフランジ27とホイールキャリヤ36とには、フランジ孔37,38が図示されている。支持ディスク22により、軸受け内レース33とジョイント外側部分12の支持面18との間の直接的な接触が回避されるので、負荷を受けても、相対的な微小運動(Mikrobewegung)は支持ディスク22によってノイズなしに吸収される。
【0013】
図5において、図2における構成要素と同じ構成要素には同一の符号が付与されている。これらの構成要素に関しては詳しい説明を省略する。図示の部分は上記実施例とは少しだけ異なるジオメトリ(幾何学的形状)を有しており、この場合、特に締付けねじ29のねじヘッド30は明らかに上記実施例のものとは異なっている。ブレーキディスクは描き込まれていない。ホイール軸受け装置はシール部材および軸受けケージと共に完全な状態で図示されている。軸受け外レース31はこの場合、ホイールキャリヤ36と一体に形成されている。ホイールフランジ27とホイールキャリヤ36とには、フランジ孔37,38が図示されている。支持ディスク22により、縁曲げ部39とジョイント外側部分12の支持面18との間の直接的な接触が回避されるので、負荷を受けても、相対的な微小運動は支持ディスク22によってノイズなしに吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】支持ディスクを備えた、本発明によるジョイント外側部分を有する等速回転ジョイントを示す縦断面図である。
【図2】等速回転ジョイントとホイールハブとから成る、本発明によるアッセンブリの第1の構成を示す縦断面図である。
【図3】等速回転ジョイントとホイールハブとから成る、本発明によるアッセンブリの第2の構成を示す縦断面図である。
【図4】図2に示した構成に似た、本発明によるアッセンブリの変化実施例を示す縦断面図である。
【図5】図3に示した構成に似た本発明によるアッセンブリの変化実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0015】
11 等速回転ジョイント
12 ジョイント外側部分
13 ジョイント内側部分
14 ボールケージ
15 ボール
16 ジョイント外輪
17 接続ジャーナル
18 支持面
19 軸歯列
20 孔
21 ねじ山
22 環状ディスク
23 円筒状区分
24 円筒状段部
25 ホイールハブ
26 内側歯列
27 ホイールフランジ
28 ブレーキディスク
29 ねじ
30 ねじヘッド
31 軸受け外レース
32 軸受け内レース
33 軸受け内レース
34 ホイール軸受け
35 支持面
36 ホイールキャリヤ
37 ねじ孔
38 ねじ孔
39 縁曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鐘形のジョイント外輪(16)と、該ジョイント外輪(16)に付設された結合ジャーナル(17)と、該結合ジャーナル(17)の付設部でジョイント外輪(16)に設けられた半径方向の支持面(18)とから成る、等速回転ジョイント(11)のジョイント外側部分(12)であって、該ジョイント外側部分(12)が、ねじ締結手段によって、結合ジャーナル(17)に被せ嵌められるべきホイールハブ(25)と緊締可能であり、該ホイールハブ(25)が直接的または間接的に前記支持面に支持されるようになっている形式のものにおいて、摩擦の少ない材料から成る環状ディスク(22)が設けられており、該環状ディスク(22)が結合ジャーナル(17)に対して同心的に前記支持面(18)に載着されていることを特徴とする、支持ディスクを備えたジョイント外側部分。
【請求項2】
環状ディスク(22)が、外縁部を起点として円筒状区分(23)を有しており、該円筒状区分(23)が鐘形のジョイント外輪(16)に摩擦接続的に装着されている、請求項1記載のジョイント外側部分。
【請求項3】
環状ディスク(22)がモリコートD321Rから成る被覆体を有している、請求項1または2記載のジョイント外側部分。
【請求項4】
環状ディスク(22)が青銅または非鉄金属から成っている、請求項1または2記載のジョイント外側部分。
【請求項5】
環状ディスク(22)がプラスチックから成っている、請求項1または2記載のジョイント外側部分。
【請求項6】
鐘形のジョイント外輪(16)と、該ジョイント外輪(16)に付設された結合ジャーナル(17)と、該結合ジャーナル(17)の付設部でジョイント外輪(16)に設けられた半径方向の支持面(18)とから成るジョイント外側部分(12)を備えた等速回転ジョイント(11)と、結合ジャーナル(17)に被せ嵌められたホイールハブ(25)とから成るアッセンブリであって、ホイールハブ(25)が、ねじ締結手段によってジョイント外側部分(12)と緊締されており、しかもホイールハブ(25)が直接的または間接的に前記支持面(18)に支持されている形式のものにおいて、摩擦の少ない材料から成る環状ディスク(22)が設けられており、該環状ディスク(22)が結合ジャーナル(17)に対して同心的に直接に前記支持面(18)に載着されていて、前記ねじ締結手段の緊締力を吸収していることを特徴とする、等速回転ジョイントとホイールハブとから成るアッセンブリ。
【請求項7】
ホイールハブ(25)に軸受け手段(34)が被せられており、該軸受け手段(34)の軸受け内レースが一方ではホイールハブ(25)に、他方では環状ディスク(22)に、それぞれ軸方向で支持されている、請求項6記載のアッセンブリ。
【請求項8】
ホイールハブ(25)に軸受け手段(34)が装着されており、該軸受け手段(34)の軸受け内レースが、ホイールハブ(25)に設けられた環状縁曲げ部(39)によってホイールハブ(25)に軸方向で緊締されており、該環状縁曲げ部(39)が直接に環状ディスク(22)に軸方向で支持されている、請求項6記載のアッセンブリ。
【請求項9】
環状ディスク(22)が、外縁部を起点として円筒状区分(23)を有しており、該円筒状区分(23)が鐘形のジョイント外輪(16)に摩擦接続的に装着されている、請求項6から8までのいずれか1項記載のアッセンブリ。
【請求項10】
環状ディスク(22)がモリコートD321Rから成る被覆体を有している、請求項6から9までのいずれか1項記載のアッセンブリ。
【請求項11】
環状ディスク(22)が青銅または非鉄金属から成っている、請求項6から9までのいずれか1項記載のアッセンブリ。
【請求項12】
環状ディスク(22)がプラスチックから成っている、請求項6から9までのいずれか1項記載のアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−508986(P2007−508986A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535983(P2006−535983)
【出願日】平成16年10月2日(2004.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011010
【国際公開番号】WO2005/050044
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(504467521)ゲー カー エヌ ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】GKN Driveline International GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 130, D−53797 Lohmar, Germany
【Fターム(参考)】