説明

支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法、金属ナノ粒子融合体の製造方法および金属ナノ粒子融合体

【課題】より連続性、自己支持性、機械的強度および耐久性に優れた、金属ナノ粒子融合体を製造できる方法等を提供する。
【解決手段】第1の溶媒に溶解した金属イオン含有化合物を支持体内に含浸させる工程(A)と、該含浸後の支持体を、前記第1の溶媒よりも溶解度の低い第2の溶媒に浸漬させる工程(B)と、該浸漬後の支持体内に含浸している金属イオン含有化合物を還元して金属ナノ粒子化する工程(C)とを含む、支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体に金属ナノ粒子を含浸させた支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法および金属ナノ粒子融合体の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属ナノ粒子融合体を製造する方法が検討されている。例えば、特開2004−353040号公報には、有機材料からなる支持体に金属イオン含有化合物を含浸させる工程と、含浸した金属イオン含有化合物を還元し、前記支持体において金属ナノ粒子を形成させる工程とを有することを特徴とする、支持体付金属ナノ粒子の製造方法および該方法により得られた支持体付金属ナノ粒子を焼成等することにより、金属ナノ粒子融合体とする方法について開示されている。
しかしながら、該支持体付金属ナノ粒子の製造方法では、上記含浸における、金属イオンの含浸量が少なく、その制御もできなかった。そのため、該製造方法を用いて得られた金属ナノ粒子融合体は、連続性、自己支持性、機械的強度および耐久性が低かった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−35040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、より連続性、自己支持性、機械的強度および耐久性に優れた、金属ナノ粒子融合体を製造できる方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により本発明の課題は解決された。
(1)第1の溶媒に溶解した金属イオン含有化合物を支持体内に含浸させる工程(A)と、該含浸後の支持体を、前記第1の溶媒よりも溶解度の低い第2の溶媒に浸漬させる工程(B)と、該浸漬後の支持体内に含浸している金属イオン含有化合物を還元して金属ナノ粒子化する工程(C)とを含む、支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
(2)前記工程(A)、前記工程(B)および前記工程(C)を含む一連の工程を、2回以上繰り返す、(1)に記載の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
(3)金属イオン含有化合物が有する金属イオンは、銀イオンを含む、(1)または(2)に記載の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
(4)前記支持体にセルロースを用いる、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法により支持体−金属ナノ粒子複合体を製造する工程と、該支持体−金属ナノ粒子複合体より、支持体を除去する工程(E)を含む、金属ナノ粒子融合体の製造方法。
(6)前記支持体の除去は、550℃〜前記金属ナノ粒子の融点を超えない温度での焼成により行う、(5)に記載の金属ナノ粒子融合体の製造方法。
(7)前記支持体を除去した後に、表面処理する工程(F)を含む、(5)または(6)に記載の金属ナノ粒子融合体の製造方法。
(8)(5)〜(7)のいずれか1項に記載の方法により製造してなり、導電率が102S/m以上である、金属ナノ粒子融合体。
(9)空間率が85%以上であり、導電率が102S/m以上であり、かつ、シート状である、金属ナノ粒子融合体。
(10)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法により製造された支持体−金属ナノ粒子複合体を焼成する工程を含み、かつ、該焼成する温度を調整することにより、金属ナノ粒子融合体の表面積を調整する方法。
(11)(8)または(9)に記載の金属ナノ粒子融合体を用いた触媒材料。
(12)(8)または(9)に記載の金属ナノ粒子融合体を用いた導電性材料。
(13)(8)または(9)に記載の金属ナノ粒子融合体を用いた熱導電性材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法では、支持体内に含浸させた、金属イオン含有化合物を金属ナノ粒子化することにより、逐次的に金属イオン含有化合物溶液を支持体に含浸させることが可能になった。
特に、本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法では、第1の溶媒に溶解した金属イオン含有化合物を含浸させた後に、前記第1の溶媒より金属イオン含有化合物の溶解度が低い第2の溶媒に浸漬させることにより、金属イオン含有化合物を高濃度に鋳型内に留めることができ、導入量を多くすることができる。
また、本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法では、含浸、浸漬および還元の各操作を複数回繰り返すことにより、金属イオン含有化合物の導入量をさらに増加させることができる。加えて、繰り返し回数を調整することにより金属イオン含有化合物導入量の制御も可能になった。
さらに、本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法は、支持体内に留まるものであれば、金属イオンの種類に関係なく採用できるという効果を有する。
【0007】
そして、本発明の金属ナノ粒子融合体は、導電性に優れ、自己支持性を有し、かつ、機械的強度に優れたものとなった。特に、3次元的構造の金属ナノ粒子融合体の造形が極めて容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において「含浸」とは、支持体の内部または表面の反応基(好ましくは、アミノ基、水酸基またはカルボキシル基)と金属イオン含有化合物との間に、化学結合(共有結合、水素結合、配位結合等)、静電的な結合(イオン結合等)または物理的な結合が形成され、金属イオン含有化合物が支持体に結合されている状態を意味し、支持体においてイオン交換が行われるものは含まれない。また、本明細書において「金属ナノ粒子融合体」とは、単一のまたは複数の種類の金属ナノ粒子同士が相互に融着、融合等することにより、金属ナノ粒子が連続して結合している構造体を意味する。従って、粒子状の形相を残していることを趣旨とするものではない。
【0009】
支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法は、第1の溶媒に溶解した金属イオン含有化合物を支持体内に含浸させる工程(A)と、該含浸後の支持体を、第1の溶媒よりも該金属イオン含有化合物の溶解度が低い第2の溶媒に浸漬させる工程(B)と、該浸漬後の支持体内に含浸している金属イオン含有化合物を還元して金属ナノ粒子化する工程(C)とを含む。
本発明では、特に、金属イオン含有化合物が支持体内に含浸した状態で、含浸工程(A)で用いた溶媒よりも金属イオン含有化合物の溶解度が低い溶媒(第2の溶媒)に浸漬させている(工程(B))。このような手段を採用することにより、従来法に比して、著しく金属イオン含有化合物の、支持体への導入率を高めることが可能になったものである。
【0010】
本発明では、さらに、工程(A)、工程(B)および工程(C)を2回以上繰り返すことが好ましい。このような手段を採用することにより、導入率よりを高めることができる。
【0011】
工程(A)
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法で用いられる支持体は、金属イオン含有化合物を含浸し得る材料であれば、特に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、有機材料および無機材料のいずれも好ましく用いることができる。特に、後述する支持体を除去する工程(E)を行う場合、有機材料の方が好ましい。
例えば、本発明における支持体としては、表面に反応基(好ましくは、アミノ基、水酸基またはカルボキシル基)を有する、天然由来または人工の有機材料が挙げられる。また、内部に複数の細孔を有する多孔質基材であることが好ましい。そのような支持体を例示すれば、濾紙、セルロースシート、綿糸、毛糸などの糸類、綿布、綿織物、毛糸織物などの織物類、繊維、木片、竹材、合成ポリマーからなるシートおよび織物、木炭などの炭素材料等を挙げることができる。支持体は、表面に反応基を多く有するセルロースシート、綿布などを好適に用いることができる。
【0012】
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法で用いられる支持体の大きさ、形状、構造等は、用途に応じて適宜定めることができる。本発明の製造方法では、支持体に金属イオン含有化合物を含浸させるため、支持体は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の支持体を適宜選択することができる。例えば、支持体の形状は、平板状、繊維状、ビーズ状、粉末状、薄片状などの様々な形状であってもよく、さらに大面積の支持体にも対応することができる。後述する金属ナノ粒子融合体を作製し、さらに、製品へ応用する観点からは、フィルム状の支持体を用いることが好ましい。また、2種類以上の支持体の接合体であってもよい。
一例を挙げると、内径250μm以下(好ましくは、1〜250μm)の繊維を主成分とするフィルム状の支持体が好ましい。また、内径1μm以下(特に、20〜100nm)といった細い径の繊維を主成分とするフィルム状の支持体も採用することができる。
特に、繊維を主成分とするフィルム状の支持体を採用すると、後述するような空間率の高いフィルム状の金属連続体を製造でき好ましい。
さらに、明瞭な構造を有する立体的な造形物やパターンも支持体として採用できる。
【0013】
また、上記支持体の表面(多孔性支持体の場合、支持体内部の孔内および表面)に反応基(アミノ基、水酸基またはカルボキシル基等)が存在しない場合、該支持体の表面に、新たに反応基を導入して、本発明における支持体として用いることが好ましい。支持体の表面への反応基の導入方法は、例えば、公知の導入方法を採用することができる。
【0014】
上記支持体の内部または表面に存在させる、または導入する反応基の単位面積当たりの量は、支持体に形成される金属ナノ粒子の密度や製造効率等に影響を与える。例えば、多数の金属ナノ粒子をセルロースの支持体において形成させる場合、反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシル基)の量は、5.0×1013〜5.0×1014当量/cm2とすることが好ましく、1.0×1014〜2.0×1014当量/cm2とすることがより好ましい。
【0015】
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法で用いられる金属イオン含有化合物は、例えば、支持体に上記のような反応基を有する有機材料(例えば、セルロース)を用いる場合、水中でカチオンまたは配位性の金属化合物として存在できるものであれば、特に制限はない。
水中において金属イオン含有化合物がカチオンとして溶解する金属化合物を例示すれば、第一遷移金属を含有する化合物(例えば、Crイオン、Mnイオン、FeイオンまたはCoイオンを含有する化合物)、第二遷移金属を含有する化合物(例えば、Pdイオン、AgイオンまたはCdイオンを含有する化合物)、ランタノイド金属を含有する化合物(例えば、LaイオンまたはGdイオンを含有する化合物)、アルカリ土類金属を含有する化合物(例えば、BaイオンまたはCaイオンを含有する化合物)、アルカリ金属を含有する化合物(KイオンまたはLiイオンを含有する化合物)、AuイオンまたはPtイオンを含有する化合物などが好ましい例として挙げられる。また、水中にカチオンの金属イオンを与える化合物の対アニオンは特に限定されない。
本発明で用いることができる金属イオン含有化合物として、より具体的には、硝酸クロミウム(Cr(NO33)、硝酸マンガン(Mn(NO32)、硝酸鉄(Fe(NO33)、硝酸コバルト(Co(NO32)等の第一遷移金属の金属塩、硝酸パラジウム(Pd(NO32)、硝酸銀(AgNO3)、硝酸カドミウム(Cd(NO32)等の第二遷移金属の金属塩、硝酸ランタン(La(NO33)、硝酸ガドリニウム(Gd(NO33)等のランタノイド金属の金属塩、硝酸バリウム(Ba(NO32)、硝酸カルシウム(Ca(NO32)などのアルカリ土類金属の金属塩、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸リチウム(LiNO3)等のアルカリ金属の金属塩などが挙げられる。
また、M2PtCl6 (M= H、 Na、K、NH4、その他有機カチオンなど)、M2PtCl4 (M= H、Na、Kなど)、M2PdCl6 (M= H、 Na、Kなど)、M2PdCl4 (M= H、Na、Kなど)およびMAuCl4 (M= H、Na、Kなど)のアニオン性の金属塩および錯塩(配位化合物)も採用できる。
さらに、配位性を有する三塩化金(AuCl3)、塩化白金(PtCl3)、塩化第二白金(PtCl4)塩化パラジウム(PdCl3)などの金属塩化物も好適に用いることができる。水酸化ナトリウム(NaOH)の希薄溶液なども本発明の金属イオン化合物として用いることができる。また、本発明の製造方法では、[Cu(NH342+、[Fe(NH363+、[Co(NH342+ などの金属錯体化合物も用いることができる。
【0016】
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法では、上記の金属イオン含有化合物を必要に応じて2種以上組み合わせて用いることもできる。例えば、銀イオンとパラジウムイオン、金イオンと銀イオンの組み合わせが挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法において、上記金属イオン含有化合物を溶解する第1の溶媒は、金属イオン含有化合物(金属塩、金属錯化合物など)を溶解して金属イオン、金属錯体、または配位性の金属化合物を生成し得る溶媒であれば、特に限定されない。例えば、溶媒として水、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、クロロホルム、ヘキサン、アセチレン(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを単独でまたは組合わせて用いることでき、水が好ましい。
【0018】
上記金属イオン含有化合物の濃度は、目的とする支持体−金属ナノ粒子複合体に用いられる支持体および金属イオン含有化合物の種類等に応じて適宜定めることができる。金属イオン含有化合物の濃度は10mM〜10Mの範囲の濃度であることが好ましく、10mM〜1Mであることがさらに好ましい。
【0019】
工程(A)において、支持体に金属イオン含有化合物を含浸させる方法は、特に制限されるものではない。例えば、支持体を、金属イオン含有化合物を含む溶液中に浸漬させて、支持体表面または支持体内部の細孔内に金属イオン含有化合物を含浸させる方法、多孔性支持体の場合、前記溶液中に多孔性支持体を浸漬させた後、該溶液を減圧下で多孔性支持体の細孔から吸引する方法などが挙げられる。
【0020】
また、工程(A)における金属イオン含有化合物の含浸時間および含浸温度は、用いられる金属イオン含有化合物の種類や性質に応じて適宜定めることができる。例えば、セルロースを支持体に用いる場合、1分〜数時間で、0〜100℃の範囲内で決定すればよい。また、例えば、銀イオン含有化合物を用いる場合、1〜120分、20〜40℃が好ましい。
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法においては、金属イオン含有化合物が銀イオン含有化合物であり、支持体がセルロースである組み合わせが好ましい一例として挙げられる。
【0021】
工程(B)
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法は、前記工程(A)における含浸後の支持体を、上記工程(A)で用いた第1の溶媒よりも、用いる金属イオン含有化合物に対する溶解度の低い溶媒(第2の溶媒)に浸漬させる。ここで、第2の溶媒は、第1の溶媒に対する金属イオン含有化合物の飽和溶解度を100としたとき、好ましくは該金属イオン含有化合物に対する飽和溶解度が90以下の溶媒、より好ましくは該金属イオン含有化合物に対する飽和溶解度が70以下の溶媒、さらに好ましくは該金属イオン含有化合物に対する飽和溶解度が50以下の溶媒、最も好ましくは全く溶解しない溶媒である。
このような手段を採用することにより、従来技術より、著しく多くの金属イオン含有化合物を支持体内に含浸させることができる。
さらに、本発明の溶媒は、支持体との親和性が高い溶媒(例えば、親和力が正である溶媒)を採用することが好ましい。より具体的には、支持体内部まで充分に浸透する溶媒である。このような溶媒を採用することにより、より容易に多量の金属イオン含有化合物を含浸させることができる。
例えば、支持体が上記のような反応基を有する場合、該反応基と、化学結合を形成しない溶媒が好ましい。
ここで、上記第2の溶媒は、金属イオン含有化合物に応じて適宜定められる。例えば、硝酸銀を用いる場合、エタノール、アセトンおよびTHFが好ましい例として挙げられる。K2PdCl4またはK2PdCl6を用いる場合、エタノールが好ましい例として挙げられる。
【0022】
浸漬時間は、金属の種類および支持体の種類に応じて適宜定めることができるが、好ましくは、1分〜120分である。特に、支持体にセルロースを用い、金属に銀を用いる場合は、1〜20分が好ましく、1〜15分がより好ましい。1分以上とすることにより銀の導入率をより充分なものとすることができる。また、15分以下とすることにより、充分な量の銀を導入しつつ、再現性よく目的物を得ることができ、さらに、時間短縮もできる。
【0023】
工程(C)
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法は、前記工程(B)の後、支持体内に含浸している金属イオン含有化合物を還元して金属ナノ粒子化する工程を含む。工程(C)で金属イオン含有化合物を還元する方法は、公知の還元方法を制限されることなく用いることができる。例えば、還元剤を用いて還元を行う場合、還元剤としては水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)等のヒトリド類、グリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ヨウ化水素(HI)、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン系化合物、ジメチルアミノエタノール、ジメチルエチルアミン等の2級若しくは3級アミン化合物などを用いることができる。また、水素、一酸化炭素などの還元性雰囲気中での処理や水素プラズマ、あるいは光照射などの方法により還元することもできる。還元剤の濃度、水素プラズマの強度、光源の種類、光の強度、還元時間、還元温度などは、公知の還元方法の条件を用いることができる。
【0024】
なお、溶液中で還元反応を行う際、反応系中へ水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物、無機酸、有機酸等のpH調整剤、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のオキシカルボン酸系統のもの、あるいはホウ素、炭酸等の無機酸、有機酸、無機酸のアルカリ塩等の緩衝剤、硫化物、フッ化物等の促進剤、塩化物、硫化物、硝化物等の安定剤、界面活性剤等の改良剤等を加えることは本発明をなんら逸脱するものではない。また還元性雰囲気中での熱処理による方法の際、不活性ガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム等を併用することについても同様である。
【0025】
洗浄工程(工程(G))
また、還元後、洗浄工程(工程(G))を設けてもよい。洗浄することにより、不純物を除去することができ、より精度高く支持体−金属ナノ粒子複合体を製造することができる。洗浄は、還元剤の種類等によって適宜定めることができ、例えば、還元剤として、NaBH4を用いる場合、水、極性溶媒等に浸漬することにより行うのが好ましい。浸漬温度は10〜40℃が好ましく、浸漬時間は1〜20分が好ましい。
【0026】
乾燥工程(工程(D))
さらに、本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法では、工程(B)後であって工程(C)前に、および/または、工程(C)後であって後述する工程(E)前に、乾燥工程を設けてもよい。乾燥工程を採用することにより、時間が削減できるという利点がある。乾燥は公知の方法で行うことができるが、揮発性の高い有機溶媒(例えば、0.1mlの溶媒が25℃で10分以内に揮発する溶媒)に浸漬して乾燥させることが好ましい。
このような有機溶媒としては、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
浸漬時間は、金属の種類および支持体の種類に応じて適宜定めることができるが、好ましくは、1分〜120分であり、1分〜10分がより好ましい。
【0027】
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法により得られる支持体−金属ナノ粒子複合体に含まれる金属ナノ粒子は、ナノメートル単位の粒径を有する金属微粒子(金属酸化物)であり、金属ナノ粒子の平均粒径は、用いられる金属イオン含有化合物の濃度および支持体の形状に依存した平均粒径を有するものとすることができる。好ましくは、金属ナノ粒子の平均粒径は、1〜100nmの範囲であることが好ましく、1〜50nmの範囲であることが好ましく、1〜20nmの範囲であることがさらに好ましい。また、上記金属ナノ粒子は、支持体において良好な粒径分布を示し、例えば、標準偏差σは好ましくは0.1〜5nm、より好ましくは0.1〜3nmの範囲とすることができる。
【0028】
本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法では、金属が支持体内に相対的に従来法に比して多く導入される。例えば、セルロース支持体の空間1Lあたり、0.01〜10molの金属を付着させることができる。
【0029】
金属ナノ粒子複合体の製造方法および金属ナノ粒子融合体
本発明の金属ナノ粒子融合体は、上記支持体−ナノ粒子複合体の製造方法により製造した支持体−ナノ粒子複合体より、支持体を除去すること(工程(E))により得られる。
【0030】
支持体除去工程(工程(E))
ここで、支持体を除去する方法は、特に定めるものではなく公知の方法を採用することができる。例えば、プラズマ処理(好ましくは酸素プラズマ処理)、オゾン処理、焼成、溶媒洗浄による除去、酵素・触媒による除去等が挙げられ、焼成が好ましい。
このように、支持体が除去されることにより、支持体に担持されていた金属ナノ粒子同士が融着または融合等して、金属ナノ粒子融合体を形成することができる。
【0031】
本発明の製造方法における酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理および焼成処理は、支持体に担持された金属ナノ粒子の性質に応じて適宜決定することができる。例えば、酸素プラズマ処理時の時間、圧力、出力及び温度は、酸素プラズマ処理すべき支持体の種類、金属ナノ粒子の粒径、プラズマ源などに応じて適宜決定することができる。具体的には、酸素プラズマ処理時の圧力については、1.33〜66.5Pa(10〜500 mtorr)、好ましくは13.3〜26.6Pa(100〜200 mtorr)であることが適当である。また、酸素プラズマ処理時のプラズマ出力については、5〜500W、好ましくは10〜50Wであることが適当である。また、酸素プラズマ処理時の処理時間は、5分〜数時間、好ましくは5〜60分であることが適当である。また、酸素プラズマ処理の温度は、低温であり、好ましくは−30〜800℃であり、さらに好ましくは0〜100℃であり、最も好ましくは5〜40℃である。
【0032】
酸素プラズマ処理に用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
【0033】
焼成処理の場合、大気雰囲気中で、好ましくは300℃以上、より好ましくは550℃以上、さらに好ましくは600℃以上である。また、上限値としては、採用する金属ナノ粒子の融点を超えない温度であることが好ましい。例えば、900℃以下、800℃以下等である。このような焼成温度を採用することにより、より強固かつ表面の滑らかな金属ナノ粒子融合体が得られる。逆に、焼成温度を調整(例えば、採用する金属ナノ粒子の融点より300℃〜700℃低い温度)とすることにより、金属ナノ粒子融合体の表面に空孔構造を設けることができ、得られる金属ナノ粒子融合体の表面積がより大きくなり好ましい。特に、本発明の方法では、支持体−金属ナノ粒子複合体に含有されている金属ナノ粒子量が多い為、このように金属ナノ粒子融合体の表面に空孔構造を設けても、充分な導電性を有しつつ、かつ、表面積のより大きい金属ナノ粒子融合体を製造できる。
さらに、焼成における上昇時間は、1時間〜12時間が好ましく、1〜8時間がより好ましく、1時間〜2時間がさらに好ましい。また、保持時間は、1時間〜20時間が好ましく、2〜20時間がより好ましく、5時間〜15時間がさらに好ましい。このような焼成条件を採用することにより、より強固かつ表面の滑らかな金属ナノ粒子融合体が得られる。
【0034】
オゾン酸化処理における条件は、処理すべき支持体の性質および使用する装置に応じて適宜決定することができる。例えば、オゾン酸化処理時の圧力は、大気圧〜13.3Pa(100mTorr)、好ましくは0.013〜13.3Pa(0.1〜100 mTorr)であることが適当である。オゾン酸化処理時間は数分から数時間、好ましくは5〜60分とすることができる。処理温度は、室温〜600℃であり、好ましくは室温〜400℃とすることができる。
【0035】
表面処理(工程(F))
本発明の金属ナノ粒子融合体の製造方法では、支持体を除去する工程(E)の後、表面処理をすることが好ましい。
表面処理することにより、金属ナノ粒子融合体の表面をより滑らかにし、かつ、焼成の際の残留物除去することができるため好ましい。表面処理は、還元剤等の不純物の種類に応じて適宜定めることができ、アルカリ処理、酸処理が好ましい例として挙げられる。
アルカリ処理の方法は、特に定めるものではないが、例えば、アルカリ溶液に浸漬することが挙げられる。この場合のアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が好ましい。アルカリ溶液の濃度は、0.1〜100mMが好ましい。このような手段を採用することにより、不純物をアルカリ処理しない場合の、例えば1/2以下、さらには1/20以下とすることができる。また、浸漬時間および浸漬温度は、金属ナノ粒子融合体の種類およびアルカリ溶液の濃度に応じて適宜定めることができるが、例えば浸漬時間は1〜60分が好ましく、浸漬温度は10〜40℃が好ましい。さらに、アルカリ溶液に浸漬後、超音波照射、洗浄工程および/または乾燥工程を設けてもよい。この場合の洗浄工程の条件としては、上記還元後の洗浄(工程(G))と同様の条件を好ましく採用できる。また、乾燥工程についても、上記工程(D)と同様の条件を好ましく採用できる。
また、アルカリ処理工程は、上記工程を2回以上繰り返して行ってもよい。
酸処理の方法も特に定めるものではないが、希塩酸溶液、希硫酸溶液等に浸漬することが好ましい。また、その他の条件は上記アルカリ処理と同様に行うことができる。
【0036】
本発明の製造方法で得られた金属ナノ粒子融合体は、線状(一次元)、平面状(二次元)および立体状(三次元)のいずれの構造であってもよい。好ましくは、細線構造または薄膜構造を有する連続体である。
【0037】
本発明の金属ナノ粒子融合体が細線構造を有する場合、例えば、線幅(若しくは径)は20nm〜200μmの範囲内とすることができ、好ましくは20nm〜20μmであり、さらに好ましくは20nm〜10μmとすることができる。また線幅に対する全長の比(例えば、線状連続構造体の長さ/幅)、すなわち軸比は、10以上であることが好ましく、1000以上であることがさらに好ましく、10000以上であることが最も好ましい。
特に、本発明の金属ナノ粒子融合体は、断線が無いまたは極めて少ないことが好ましい。
【0038】
本発明の金属ナノ粒子融合体は、担持された金属ナノ粒子が、酸素プラズマ処理等により支持体の形態に沿って金属ナノ粒子相互間で融着または融合が行われるため、その形態は、支持体の形態をそのまま再現した形態とすることができる。すなわち、本発明の金属ナノ粒子融合体は、支持体を鋳型とする形態を有することができる。例えば、支持体として濾紙、糸を用いた場合、本発明の製造方法により得られる金属ナノ粒子融合体は、多孔質シート状、撚り糸状等の形態を有することができる。
【0039】
また、本発明の金属ナノ粒子融合体は、2種類以上の金属ナノ粒子を使用した場合、複合金属ナノ粒子融合体であることができる。
【0040】
本発明の金属ナノ粒子融合体は、金属ナノ粒子が連続的につながり、さらに、融合して表面がつるつるの状態となっている。このため、支持体を鋳型としたより忠実な金属ナノ粒子融合体を得ることができる。特に、支持体内に金属イオン含有化合物を高い割合で導入できるため、強度が高く、耐久性に優れた金属ナノ粒子融合体が得られる。
【0041】
さらに、本発明の金属ナノ粒子融合体は、金属の含有率に比して極めて大きな導電性を有する。例えば、導電率が102S/m以上、さらには104S/m以上の導電率を有する金属ナノ粒子融合体が得られる。特に、本発明の金属ナノ粒子融合体は、鋳型である支持体に忠実な形状の金属ナノ粒子融合体であるため、支持体とほぼ同率の空間率を有する。このため、例えば、高い空間率を有する支持体を用いることによって、空間率が高く、かつ、導電性を有する金属ナノ粒子融合体が得られる。さらに、支持体を鋳型とする金属ナノ粒子融合体の空間部分に、他の物質を充填することにより、より有用性が高まる。例えば、空間部分に絶縁性物質を充填して、絶縁性部分と導電性部分を分離したり、金属より比重の軽い物質(例えば、プラスチック、金属酸化物等)を充填して、すべての部分が金属で構成されているものより軽く、かつ、該金属で構成されているものと同程度の導電性を有する金属ナノ融合体を製造することができる。特にこのような態様は、シート状の金属ナノ融合体において有用である。
本発明の金属ナノ粒子融合体は、例えば、シート状の金属ナノ融合体として用いる場合、空間率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましい。また、シート状の金属ナノ融合体として用いる場合、シート厚さは、100nm〜5cmが好ましく、100nm〜1mmがより好ましく、500nm〜1mmがさらに好ましい。
ここで、本明細書における空間率(%)は、該金属ナノ粒子融合体の見かけ上の厚みtを想定し、該見かけ上の厚みt部分に100%金属が充填されたものの重量に対する、実際に充填された金属の重量の割合(%)を示したものである。ここで、見かけの厚みとは、例えば、シート状の金属ナノ粒子融合体の場合、シートの最外面同士の垂直方向の距離をいう。
【0042】
【化1】

【0043】
また、本発明における導電率は、ファンデルポー法(Van der Paw法)により測定されるものであり、上記式に従う。上記式中、V43は上記図中の4・3間の電圧を、V23は上記図中の2・3間の電圧を、I12は上記図中の1・2間の電流を、I14は上記図中の1・4間の電流を、それぞれ示している。
【0044】
特に、このように高い空間率を有し、かつ、導電性を有する金属ナノ粒子融合体は従来では得られていなかった。かかる観点からも本発明は極めて有利である。
【0045】
支持体−金属ナノ粒子複合体および金属ナノ粒子融合体の利用
本発明の製造方法により得られる支持体−金属ナノ粒子複合体は、例えば、磁性粒が高分散した薄膜材料やプラズモン吸収を有する薄膜材料として利用することができる。
【0046】
さらに、本発明の製造方法により得られる金属ナノ粒子融合体は、従来の材料とは異なる物理化学的特性や電子特性を有する材料を提供でき、例えば、異種の金属イオン含有化合物を組み合わせたり、これらの化合物を融合したりすることにより、絶縁体から導電体までの幅広い電気物性を示し、導電材料や絶縁材料、誘電体などとしての応用が可能である。特に、半導体材料を含む金属ナノ粒子融合体では量子サイズ効果が期待できる。特に、ドット状、(二次)粒子状、細線状のナノ材料においては、この効果が著しいものとなる可能性がある。
【0047】
また、磁気特性又は感光特性を示す金属ナノ粒子を用いれば、次世代の磁気記憶材料又は光記憶材料としての応用が期待できる。さらに、金属ナノ粒子の屈折率を制御すれば、新しい光学特性を有する薄膜材料を作製することができる。さらに、金属ナノ粒子融合体は、新しい発光材料としての開発が期待できる。さらに、紫外・可視光を吸収する金属ナノ粒子からなる薄膜材料では、光エネルギーの捕捉や光電変換材料としての利用が期待できる。
【0048】
また、支持体に遷移金属ナノ粒子を含む場合、高効率な触媒材料の開発が可能となる。さらに、本発明の金属ナノ粒子連続体は、優れた力学特性や熱安定性、化学安定性を示し、この特性を用いれば材料表面のコーティング剤としての利用にも有用である。さらに、材料表面のぬれ性や分子吸着特性を本発明の金属ナノ粒子連続体により制御することも可能となる。
【0049】
また、本発明の金属ナノ粒子融合体は、酸素プラズマ処理などにより穏和(室温)な条件下で簡単に得られるため、あらゆる形状の表面、パターン及び大面積を有する基板としての応用が可能であり、特にデバイス基材として好適に用いることができる。
【0050】
より具体的には、本発明の支持体−金属ナノ粒子複合体および金属ナノ粒子融合体は、以下のものに用いることができる。
【0051】
(1)産業資材
人工皮革および合成皮革(皮革類似構造・外観・風合の利用);
フィルター用途(嵩高・多孔性・濾過性能の利用)、例えば、フィルター濾材と用途、 気体用フィルター、液体用フィルター;
水処理用資材(大表面積・嵩高性・成形性の利用);
電気材料(含浸性・成形性の利用)、例えば、電池セパレーター、宇宙への携帯電池用不織布、キャパシター、電気絶縁材、電磁波シールド材、磁気シールド材;
音響コーン紙(軽量・剛性・内部損失の利用);
機械部品(成形加工性・強度の利用);
ファスナー(成形加工性・強度の利用);
ガラス繊維強化プラスチック(FRP)基材(成形加工性・強度の利用);
断熱材(嵩高性・耐熱性・耐薬品性の利用);
保温材(嵩高性・耐熱性・耐薬品性の利用);
包装材(強度・柔軟性・シール性の利用)、例えば、ティーバッグ、コーヒーフィルター、食品鮮度保持用包装材、ミートケーシング、医薬のプレス・スルーパック
包装材(プラスチックシートとアルミの圧着包装)、例えば、高吸水・吸液性包装材、 消臭シート、洗剤用分包材、フロッピーディスクライナー(フロッピー:登録商標)、カイロ包材、発泡火成岩包装袋;
研磨材(弾力性・多孔性・磨耗性の利用);
産業用ワイパー(加工適性・吸取り拭取り性の利用)、例えば、工業用ワイパー、業務用ワイパー、
印刷基材(印刷適性、耐水性、加工性の利用);
ラベル(印刷適性、耐水性、加工性の利用);
美術品複製材(印刷適性、耐水性、加工性の利用);
情報記録媒体(可撓性、加工性の利用);
粘着テープ(柔軟性・耐水性・強度の利用);
高温用遮熱材(断熱性・耐熱性の利用);
クリーンルーム用手袋(無塵性・強度・着用性の利用);
安全帽キャップ(成形性・通気性の利用);
ヘアキャップ(成形性・通気性の利用);
溶接火花防止シート(難燃性の利用);
マウスパッド(弾力性・表面摩擦性の利用);
【0052】
(2)土木・建築・自動車用資材
土木用資材(濾過性・吸水性・強度の利用)、例えば、土木用シート(ジオテキスタイル)、排水および軟弱地盤改良材、防草、緑化シート、貝、藻類付着防止シート、植生マット、コンクリートブロックシーリング材、コンクリート養生マット、土木用防水シート(ジオメンブレン)、廃棄物処分場遮水シート、法面保護資材;
建築・自動車用途(防水性・通気性・強度・成形性・意匠性の利用)、例えば、ルーフィング材(屋根下葺材)、屋根材、一般建築防水、モルタル下地用防水シート、ハウスラッピング材、外壁材、内壁材、自動車用内装材、内装材以外の自動車用部材、床材、 カーペット、断熱材・吸音材、機能性内装材、インテリア、防蟻シート、コンクリートパネル用ドレーン材、建材用保護材;
【0053】
(3)農業用資材
マルチ資材(通気透湿性・防水性・断熱性・遮光性の利用);
ベたがけ(通気性・断熱性の利用);
ハウス内張りカーテン(通気性・断熱性の利用);
遮光透湿防水資材(遮光・透湿・防水性の利用);
果実袋(通気性・透光性・柔軟性の利用);
雑草防止資材(通気性・透水性・強度の利用);
牛舎等の簡易屋根材(断熱性・軽量性・強度の利用);
培地(保水能力・耐久性の利用);
獣舎床マット(生分解性・防水性・通気性の利用);
【0054】
(4)生活関連資材
ベッドマット(クッション性・衛生性の利用);
洋服カバー(消臭機能・通気性の利用);
炊飯袋(多孔性の利用);
水切りゴミ袋(水切れ性の利用);
水保存タンク(抗菌性の利用);
水槽の水ゴケ防止テープ(防藻性の利用);
浴槽の菌除去材(含浸性の利用);
ペット用トイレマット(多孔性の利用);
【0055】
(5)医療資材
使い捨て医療用材料(使い捨て可能性・バクテリアバリア性の利用)、例えば、ガウン類、カバーブーツ、マスク、外用貼付材、ガーゼ、脱脂綿、白血球除去フィルター、患者移動用シート;
非使い捨て医療用材料(抗菌性・軽量性・弾力性の利用)、例えば、医療施設用ベッドマット、シート、カーペット、医療用具容器蓋、DNAチップ;
【0056】
(6)機能繊維
異形断面繊維;
極細繊維;
高強度・高弾性率繊維;
導電性繊維、例えば、導電加工有機繊維、導電性高分子、金属繊維、無機系高温超電導性繊維、グラファイト繊維;
帯電防止繊維(制電繊維);
電石(エレクトレット)繊維;
マイナス空気イオンを発生させる繊維;
磁性繊維;
電気絶縁性繊維;
電導度調整繊維;
耐熱繊維;
【0057】
(7)難燃・不燃繊維、防炎・耐炎繊維
蓄熱・発熱繊維;
熱伝導性繊維;
遠赤外線放射繊維;
赤外線・紫外線遮蔽繊維;
光の屈折反射による発色繊維;
温度により変色する繊維(サーモクロミック繊維);
含浸・分離繊維、例えば、活性炭繊維、イオン交換繊維、キレート繊維、重金属含浸能を有する天然繊維、含浸剤との複合・加工;
酵素固定化繊維;
透水性繊維;
親水性繊維;
吸水性繊維;
透湿;
吸放湿性繊維・シート;
撥水繊維;
吸油繊維;
微生物の活性を高める材料;
殺菌材料;
抗菌繊維;
防臭繊維;
消臭繊維;
芳香繊維、例えば、抗菌繊維、防臭繊維、消臭繊維、芳香繊維、防虫繊維、弱酸性繊維;
【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1 セルロース−銀ナノ粒子複合体(1)の作製
以下の操作により、セルロース−銀ナノ粒子複合体(1)を作製した。
操作(1) 1.0Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液(イオン交換水に溶解)に、繊維終端のないリントフリー(lint free)構造のセルロースシート(旭化成製、100%セルロース、3cm×3cm、繊維径2〜3μm)を室温(22〜25℃)で10分間浸した。
操作(2) 操作(1)を行った後のセルロースシートを、エタノールに5分間浸漬した。
操作(3) 操作(2)を行った後のセルロースシートを、アセトンに5分間浸漬して乾燥させた。
操作(4) 0.2Mの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)水溶液(イオン交換水に溶解)20mlに、操作(3)を行った後のセルロースシートを10分間浸漬させた。
操作(5) 操作(4)を行った後のセルロースシートをイオン交換水に5分間浸漬した。
操作(6) 操作(5)を行った後のセルロースシートをアセトンに5分間浸漬して乾燥させてセルロース−銀ナノ粒子複合体(1)を得た。
実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。
【0060】
セルロースシート自体は黄色であったが、得られたセルロース−銀ナノ粒子複合体(1)は茶色を呈していた。この色の変化は銀ナノ粒子が含浸したセルロース−銀ナノ粒子複合体(1)が生成されたことを意味している。また、この色は長期間変化しなかった。このことから、得られたセルロース−銀ナノ粒子複合体(1)は、サイズ変化や酸化等による劣化が全くないことが示唆された。
重量増加を測定した結果、平均4.16重量%分の重量増加が認められた。ここで、重量増加は、(セルロース−銀ナノ粒子複合体(1)の重量−セルロースの初期重量)/(セルロース−銀ナノ粒子複合体(1)の重量)により算出した(以下、重量増加の算出方法は同じ)。重量測定は、乾燥後のセルロース−銀ナノ粒子複合体(1)の重量およびセルロースの初期重量を、実際に天秤により実測した。ここで、重量増加分は、その殆どが銀に相当するため、重量増加が大きいほど、金属導入量が多いことを示唆する。
【0061】
実施例2 浸漬時間を変えた場合
上記操作(1)〜(6)において、操作(1)の1.0Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液への浸漬時間を変えて、得られたセルロース−銀ナノ粒子複合体の重量増加を測定した。すなわち、操作(1)において、浸漬時間を、それぞれ1分、10分、30分、60分、120分とし、他の操作(1)〜(6)は、同様に行ってセルロース−銀ナノ粒子複合体を得た。
その結果を図1に示す。実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。
図1に示すとおり、浸漬時間がいずれのセルロース−銀ナノ粒子複合体についても、充分な重量増加が認められた。また、浸漬時間を長くすることによって、導入される重量が増加するわけではないことが確認された。
【0062】
実施例3 銀ナノ粒子融合体(3)の作製
実施例2で5サイクル行った後のセルロース−銀ナノ粒子複合体(2)を、以下の方法により焼成して、銀ナノ粒子融合体(3’)を作製した。
操作(11) セルロース−銀ナノ粒子複合体(2)を坩堝上端に載せ、2辺に坩堝の蓋を立て掛けて押さえた。
操作(12) 操作(11)の状態のものをマッフル炉にセットし、温度600℃、昇温時間3時間、保持時間3時間にて焼成させて、銀ナノ粒子融合体(3’)を得た。
【0063】
次に、以下の方法により、操作(12)で得られた銀ナノ粒子融合体(3’)を下記の方法により、アルカリ処理して、銀ナノ粒子融合体(3)を作製した。
操作(21) 操作(12)で得られた銀ナノ粒子融合体(3’)を10mM水酸化ナトリウム水溶液20mlに10分間浸漬させた。
操作(22) 操作(21)で得られた銀ナノ粒子融合体(3’)をイオン交換水にて水洗した。
操作(23) 操作(22)で得られた銀ナノ粒子融合体(3’)を、エタノール20mlに5分間浸漬した。
操作(24) 操作(23)で得られた銀ナノ粒子融合体(3’)を、アセトン2 0mlに5分間浸漬した。その後、濾紙上に置いて乾燥させて、銀ナノ粒子融合体(3 )を得た。
【0064】
アルカリ処理前試料(銀ナノ粒子融合体(3’))および焼成後試料(銀ナノ粒子融合体(3))の試料の繊維形態を下記操作により観察した。
操作(31) アルカリ処理前試料(銀ナノ粒子融合体(3’))および焼成後試料(銀ナノ粒子融合体(3))から約5×8mmの小片を切り出し、観察試料とした。観察は、走査型電子顕微鏡(S5200日立製)を用いて行った。
アルカリ処理前試料(銀ナノ粒子融合体(3’))は、表面にナトリウム、ホウ素、炭素等で構成される不純物が付着しているのが認められた。
焼成後試料(銀ナノ粒子融合体(3))の電子顕微鏡写真を図2に示した。
図2中、(a)、(b)、(c)は順に拡大した図である。図2から明らかなとおり、銀がナノレベルで連続して繋がっていることが認められた。また、この連続性は、支持体を鋳型としたものであることが認められた。さらに、図2(c)からも明らかなとおり、途切れが極めて少なく、また、自己支持性および機械的強度に優れた銀ナノ粒子融合体であることが確認された。
また、得られた銀ナノ粒子融合体(3)の空間率は97.7%であった。
【0065】
実施例4 15サイクルの繰り返し操作を行った場合
操作(1)〜(6)の一連の操作を1サイクルとして、15サイクルまで繰り返した。各サイクルの銀の重量増加を測定した。この結果を図3に示した。実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。この結果、サイクル数が多くなるに従って、セルロース−銀ナノ粒子複合体の重量が増加していることが認められた。すなわち、導入される銀の量もサイクル数に従って増加することが示唆された。なお、15サイクル行った後のセルロース−銀ナノ粒子複合体(4)の重量増加は38重量%であった。
【0066】
実施例5 銀ナノ粒子融合体(5−10))および図5(銀ナノ粒子融合体(5−15)の作製
実施例4で15サイクル行った後のセルロース−銀ナノ粒子複合体(4)を、上記操作(11)および(12)により焼成し、さらに、操作(21)〜(24)の方法によりアルカリ処理して、銀ナノ粒子融合体(5−15)を作製した。
得られた銀ナノ粒子融合体(6)について、上記操作(31)により電子顕微鏡観察した。
また、上記操作(1)〜(6)の一連の操作を1サイクルとして、10サイクルまで繰り返して得たセルロース−銀ナノ粒子複合体についても、上記と同様に行って銀ナノ粒子融合体(5−10)を作製し、電子顕微鏡観察した。
これらの電子顕微鏡写真を図4(銀ナノ粒子融合体(5−10))および図5(銀ナノ粒子融合体(5−15))に示した。
図4および図5中、ぞれぞれ、(b)は(a)を拡大した図である。図4および図5から明らかなとおり、銀がナノレベルで連続して繋がっていることが認められた。また、この連続性は、支持体を鋳型としたものであることが認められた。さらに、図4(b)および図5(b)からも明らかなとおり、途切れが極めて少なく、また、導電性に優れた銀ナノ粒子融合体であることが確認された。また、操作(1)〜(6)の一連の操作を1サイクルとした場合のサイクル数が5回のもの(図2)よりも、サイクル数が10回のもの(図4)がより連続性が高くかつ滑らかであり、さらに、サイクル数が15回のもの(図5)がより連続性が高くかつ滑らかであった。また、得られた銀ナノ粒子融合体(6)の空間率は96.3%であった。
【0067】
実施例6 硝酸銀以外の金属イオン含有化合物を用いた場合
上記操作(1)〜(6)について、下記の点を変更し他は同様にして行った。
操作(1)の硝酸銀(AgNO3)を下記金属イオン含有化合物に変えた。
操作(2)のエタノールを下記溶媒に変えた。また、比較例として、操作(2)のエタノールを水に変えて同様に行った。
上記操作を1サイクルとして5サイクル後の重量増加を測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
上記表1から明らかなとおり、操作(1)で用いた溶媒よりも、金属イオン含有化合物に対する溶解度が低い溶媒を、操作(2)で用いることにより、高い重量増加が認められた。一方、水を溶媒として用いた場合、いずれも、1/3以下の重量増加であった。すなわち、金属イオン含有化合物を3倍以上導入できることが示唆された。
【0070】
実施例7 導電性の測定
実施例3で得られた銀ナノ粒子融合体(3)について導電性の測定を行った。測定は、14点を金線リードを銀ペーストで固定し、ファンデルポー法(Van der Paw法)によって行った。この結果、1.6×106(Sm-1)というきわめて高い導電性を有することが分かった。また、他の位置からも測定したところ、繊維の絡み合いや、繊維の異方性によって多少のばらつきがあるが、1.0×105〜2.0×106 (S/m)の導電率が得られることも確認された。
また、比較例として、上記操作(1)〜(6)(但し、操作(2)のエタノールをイオン交換水変えた)を1サイクルとして5サイクル繰り返し、他は同様に行って得たサンプルについても、上記操作(11)および(12)により焼成し、さらに、操作(21)〜(24)の方法によりアルカリ処理した(以下、「比較銀ナノ粒子複合体」という)。比較銀ナノ粒子複合体についても導電率を測定したところ、1.0×101(Sm-1)以下の小さな導電性しか得られなかった。
【0071】
また、銀ナノ粒子融合体(3)および比較銀ナノ粒子複合体について電子顕微鏡観察した。図6に、銀ナノ粒子融合体(3)(右)および焼成前の銀ナノ粒子融合体(3)(すなわち、セルロース−銀ナノ粒子複合体(3))(左)を示す。但し、銀ナノ粒子融合体(3)(右)は、カットされた状態で示している。
銀ナノ粒子融合体(3)は、多少の収縮は見られたが、外観は、灰色(一部金属光沢)シート状の形状を保ち、その微細構造も金属性の繊維状の絡み合いは保たれていた。さらに、強固な自己支持性を有していた。
一方、比較銀ナノ粒子複合体では、ミクロな繊維構造は、繊維構造と認識できるほどに保たれるものの、マクロなシート構造は保たれなかった。また、板上に付着してしまうなど、著しく自己支持性に欠けるものであった。
銀ナノ粒子融合体(3)のX線光電子分光分析(XPS)およびオージェ分光分析(Auger electron spectroscopy)のピークは、それぞれ、368.1eV(3d2/5)と1130.4eVにあり、これより銀の機械的エネルギー(MNN)を357.3eVと見積もった。修正オージェパラメータ(Modified Auger parameter)は724.3eVとなり、金属銀の値である726.1eVと一致した。この結果、純度の高い銀ナノ粒子融合体が得られていることが確認された。
【0072】
実施例8 他のセルロース支持体を用いた場合
上記操作(1)〜(6)において、操作(1)のセルロースシートを、BMwiper、Bemcot、(100%セルロース、旭化成製、3cm×3cm、繊維径11μm)に変え(以下、該セルロースシートを「セルロースシートBM」という)、他は同様に行って、セルロース−銀ナノ粒子複合体(8)を得た。セルロースシートは黄色であったが、得られたセルロース−銀ナノ粒子複合体(8)は茶色を呈していた。この色の変化は銀ナノ粒子が含浸したセルロース−銀ナノ粒子複合体(8)が生成されたことを意味している。また、この色は長期間変化しなかった。このことから、得られたセルロース−銀ナノ粒子複合体(8)は、サイズ変化や酸化等による劣化が全くないことが示唆された。
この際銀の重量増加を測定した結果、10.64重量%の重量増加が観測された。
【0073】
実施例9 浸漬時間を変えた場合
上記操作(1)〜(6)において、以下の点を変えた他は同様に行ってセルロース−銀ナノ粒子複合体を得た。
操作(1)の1.0Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液への浸漬時間を1分、10分、30分、60分、120分とした。
操作(1)のセルロースを、セルロースシートBMに変えた。
実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。その結果を、図7(黒丸)に示す。この結果、図7に示されるように比較的速やかに飽和状態に達することが分かった。すなわち、1分〜10分の間で飽和に達し、60分までの間は導入される銀の量はほぼ一定であった。しかしながら、60分を超え、120分程度長く浸漬するとやや重量が増加することが分かった。この点について、走査型電子顕微鏡による詳細な形態観察を行ったところ、繊維の表面に銀の塊が多く析出していることが分かった。すなわち、再現性良くナノ粒子を均質に導入するためには、浸漬時間が必ずしも長い方が良いわけではないことが示唆された。
【0074】
実施例10 硝酸銀濃度を変えた場合
上記操作(1)〜(6)において、以下の点を変えた他は同様に行ってセルロース−銀ナノ粒子複合体を得た。
操作(1)の硝酸銀(AgNO3)水溶液の濃度を0.1Mとした。
操作(1)の硝酸銀(AgNO3)水溶液への浸漬時間を1分、10分、30分、60分、120分とした。
操作(1)のセルロースを、セルロースシートBMに変えた。
実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。その結果を、図7(白大丸)に示す。本実施例においても、充分な重量増加は認められたが、硝酸銀水溶液の浸漬濃度が高い方がより高い重量増加が得られることが認められた。
【0075】
実施例11 浸漬温度を変えた場合
上記操作(1)〜(6)において、以下の点を変えた他は同様に行ってセルロース−銀ナノ粒子複合体を得た。
操作(1)のセルロースをセルロースシートBMに変えた。
操作(1)の1.0Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液への浸漬時間を1分、10分、30分、60分、120分とした。
操作(1)の浸漬温度を、60℃にした。
実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。その結果を、図7(白小丸)に示す。本実施例においても、充分な重量増加は認められた。室温での浸漬した場合とほぼ変わらないことが認められた。
【0076】
実施例12 5サイクルの繰り返し操作を行った場合
上記操作(1)〜(6)において、以下のように代え、これを1サイクルとして5サイクル行って他は同様に行ってセルロース−銀ナノ粒子複合体を得た。
操作(1)のセルロースをセルロースシートBMに変えた。
実験は、それぞれ、同一条件で5回ずつ行った。その結果を、図8に示す。浸漬回数が3サイクルまでの重量増加は浸漬回数に比例して増加した。
また、図9は、上記において1サイクルのみ行ったセルロース−銀複合体(Ag1)および5サイクル行ったセルロース−銀複合体(Ag5)の外観写真を示す。1サイクルのセルロース−銀複合体(Ag1)は茶色を呈していた。5サイクル行ったセルロース−銀複合体(Ag5)は、黒色を呈していた。また、面積は僅かながら収縮したが大きな収縮は認められなかった。
【0077】
実施例13 焼成温度を変えた場合
実施例12で得られたセルロース−銀複合体(1サイクル〜5サイクルを行ったセルロース−銀複合体)について、以下の点を変えたほかは、操作(11)および(12)に従って焼成を行い、操作(21)〜操作(24)に従ってアルカリ処理して銀ナノ粒子融合体を得た。
操作(12)の焼成温度を、それぞれ温度450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃とした。
焼成後の銀ナノ粒子融合体の外観を図10に示す。図10中、横方向の矢印に従って、浸漬回数が順に、1、2、3、4、5サイクルとなる。図10〜明らかなとおり、焼成温度が高くなるにつれて、多少収縮が認められた。一方、重量増加が大きいほど収縮の程度が小さく、焼成前の繊維形態に極めて近い様子が見られた。
また、上記銀ナノ粒子融合体のうち、操作(1)〜(6)を5サイクル行った銀ナノ粒子融合体について、操作(31)に従って電子顕微鏡観察した。この結果を図11に示す。得られた銀ナノ粒子融合体の幅は約5〜8μmであった。銀ナノ粒子融合体の表面を観察したところ、測定した範囲内では、焼成温度450℃から高温になるにつれ、表面に凹凸および空洞部分がより減少し、より均一な銀ナノ粒子融合体が得られた。さらに、550℃以上、特に、600℃では、小塊が融合して一本の均一な繊維状の銀ナノ粒子融合体を形成していた。
また、焼成温度が450℃や550℃のものも、充分に導電性を有していた。従って、焼成温度を調整することにより、表面に空孔構造を有する、すなわち、表面積の大きい、銀ナノ粒子融合体を製造できることが確認された。
【0078】
実施例14 アルカリ処理の有無
実施例12で得られたセルロース−銀複合体(5サイクルを行ったセルロース−銀ナノ粒子複合体)について、操作(11)および(12)に従って焼成を行って銀ナノ粒子融合体を得た。
その後、銀ナノ粒子融合体の一方については、操作(21)〜操作(24)の操作を行い、アルカリ処理をした銀ナノ粒子融合体を得た。
他方の銀ナノ粒子融合体については、アルカリ処理を行わずに、エタノールに5分間浸漬後アセトン5分間浸漬し、その後乾燥させた。
これらの銀ナノ粒子融合体について上記操作(31)に従って電子顕微鏡観察を行い、その結果を図12に示した。図12中、上段がアルカリ処理を行っていないものであり、下段がアルカリ処理を行ったものである。
図12から明らかなとおり、アルカリ処理を行っていない銀ナノ粒子融合体(図12上段)では、黒色の塊を成しているのが不純物(ナトリウム、ホウ素、炭素等からなる不純物)がより多く認められた。
上記銀ナノ粒子融合体のXPS分析から、Ag/Na比は1.96(上段)および64.1(下段)であった。さらに、操作(21)における水酸化ナトリウム水溶液への浸漬時間をより長く(30分)することにより、Ag/Na比を95以上とすることができた。
【0079】
実施例15 ポリビニルアルコール繊維を用いた場合
上記操作(1)〜(6)において、操作(1)のセルロースを、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(クラレ製、繊維径15μm)に変えた他は、同様に行った。この操作を1サイクルとし、20サイクル繰り返して、PVA−銀ナノ粒子複合体を得た。
得られたPVA−銀ナノ粒子複合体について、上記操作(11)および(12)に従って焼成を行って銀ナノ粒子融合体を得た。銀ナノ粒子融合体について、操作(31)に従って電子顕微鏡観察を行った。その結果、PVA繊維に比較すると多少収縮していたが、繊維構造が保たれた銀ナノ粒子融合体が得られた。その結果を図13に示す。図13中、左上は、用いたPVA繊維を、左下は、20サイクル後のPVA−銀ナノ粒子複合体を、右上は焼成後の銀ナノ粒子融合体を、右下は該銀ナノ粒子融合体の拡大図を示す。
【0080】
実施例16 球状セルロースを用いた場合
上記操作(1)〜(6)において、操作(1)および(2)を下記のように変えた一連の操作を1サイクルとして20サイクル行って、球状セルロース−銀ナノ粒子複合体を得た。
操作(1)および(2)の代わりの操作:球状セルロース(特開2003−252903号公報の実施例1(段落番号0052)に記載の球状セルロース誘導体)を吸引付のテフロン(登録商標)ろ過フィルム(ガラスフィルターに挟んだもの)の上に置いた。該ガラスフィルターに1.0Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液(イオン交換水に溶解)を加え、室温(22〜25℃)で10分間浸した。吸引によって、硝酸銀水溶液を濾取するとともにエタノールを加えエタノールに置き換わった後、エタノールに5分間浸漬した。
球状セルロース−銀ナノ粒子複合体および球状セルロース−銀ナノ粒子複合体について、上記操作(11)および(12)に従って焼成を行って銀ナノ粒子融合体を得た。
【0081】
球状セルロース−銀ナノ粒子複合体および銀ナノ粒子融合体について、操作(31)に従って電子顕微鏡観察を行った。その結果を図14および図15に示す。図14では、電子顕微鏡観察に伴い、樹脂に包埋してスライスし、薄片として観察した。
図14から、銀粒子は均一にセルロース球の中に生成していることが示唆された。また、図15は、左上および右上は球状セルロース−銀ナノ粒子複合体を、左下は球状セルロースそのもの(左)と球状セルロース−銀ナノ粒子複合体(右)の外観写真を、右下は焼成後の銀ナノ粒子融合体をそれぞれ示している。
このように、形状を問わず本発明の製造方法は適用できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例2で作製したセルロース−銀ナノ粒子複合体における、浸漬時間毎の重量増加を示す図である。
【図2】実施例3で作製した銀ナノ粒子融合体(3)の電子顕微鏡写真を示す。
【図3】実施例4で作製したセルロース−銀ナノ粒子複合体における、サイクル毎の重量増加を示す図である。
【図4】実施例5で作製した銀ナノ粒子融合体(5−10)の電子顕微鏡写真を示す。
【図5】実施例5で作製した銀ナノ粒子融合体(5−15)の電子顕微鏡写真を示す。
【図6】実施例7で観察した銀ナノ粒子融合体(3)の電子顕微鏡写真を示す。
【図7】実施例9〜12で作製したセルロース−銀ナノ粒子複合体の、浸漬時間毎の重量増加を示す図である。
【図8】実施例12で作製したセルロース−銀ナノ粒子複合体における、サイクル毎の重量増加を示す図である。
【図9】実施例12で作製したセルロース−銀ナノ粒子複合体の写真を示す。
【図10】実施例13における各種条件における焼成後の銀ナノ粒子融合体の写真を示す。
【図11】実施例13における焼成後の銀ナノ粒子融合体の電子顕微鏡写真を示す。
【図12】実施例14におけるアルカリ処理を行った場合および行っていない場合の銀ナノ粒子融合体の電子顕微鏡写真を示す。
【図13】実施例15における銀ナノ粒子融合体の電子顕微鏡写真等を示す。
【図14】実施例16における銀ナノ粒子融合体の電子顕微鏡写真を示す。
【図15】実施例16における球状セルロース−銀ナノ粒子複合体等の電子顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溶媒に溶解した金属イオン含有化合物を支持体内に含浸させる工程(A)と、該含浸後の支持体を、前記第1の溶媒よりも溶解度の低い第2の溶媒に浸漬させる工程(B)と、該浸漬後の支持体内に含浸している金属イオン含有化合物を還元して金属ナノ粒子化する工程(C)とを含む、支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)、前記工程(B)および前記工程(C)を含む一連の工程を、2回以上繰り返す、請求項1に記載の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
【請求項3】
金属イオン含有化合物が有する金属イオンは、銀イオンを含む、請求項1または2に記載の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
【請求項4】
前記支持体にセルロースを用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の支持体−金属ナノ粒子複合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により支持体−金属ナノ粒子複合体を製造する工程と、該支持体−金属ナノ粒子複合体より、支持体を除去する工程(E)を含む、金属ナノ粒子融合体の製造方法。
【請求項6】
前記支持体の除去は、550℃〜前記金属ナノ粒子の融点を超えない温度での焼成により行う、請求項5に記載の金属ナノ粒子融合体の製造方法。
【請求項7】
前記支持体を除去した後に、表面処理する工程(F)を含む、請求項5または6に記載の金属ナノ粒子融合体の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法により製造してなり、導電率が102S/m以上である、金属ナノ粒子融合体。
【請求項9】
空間率が85%以上であり、導電率が102S/m以上であり、かつ、シート状である、金属ナノ粒子融合体。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により製造された支持体−金属ナノ粒子複合体を焼成する工程を含み、かつ、該焼成する温度を調整することにより、金属ナノ粒子融合体の表面積を調整する方法。
【請求項11】
請求項8または9に記載の金属ナノ粒子融合体を用いた触媒材料。
【請求項12】
請求項8または9に記載の金属ナノ粒子融合体を用いた導電性材料。
【請求項13】
請求項8または9に記載の金属ナノ粒子融合体を用いた熱導電性材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−31753(P2007−31753A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214483(P2005−214483)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年7月15日 日本 社団法人高分子学会発行の「第8回 日本社団法人高分子学会 国際高分子会議予稿集−高分子科学技術における新興視野−」に発表
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】