説明

支持構造体

船舶または他の移動可能な運搬ユニットのホールド内の角柱形状または直立した円筒形状のタンクのための支持構造体は、基部を有した角柱形状または直立した円筒形状のタンクと、タンクの重みを支えるためにタンクの基部を支持する基部支持体と、タンクに設けられたタンク支持面と、ホールドに設けられ、タンク支持面と協働するように構成されたホールド支持面とを備えており、これらの支持面が熱移動の方向に向けて延びており、また、これらの支持面が、ホールドに対するタンクの横方向の移動を抑制するように、水平方向と鉛直方向との中間の角度で延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶または他の移動可能な運搬ユニットのホールドまたは貯蔵ユニットの内部の角柱形状または直立した円筒形状のタンクのための支持構造体に関するものである。移動可能な貯蔵ユニットの一例としては浮遊する沖合の貯蔵設備が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
たとえば液化天然ガス(LNG)、液体エチレン、液体石油ガス(LPG))または液体窒素の如きタンク内の媒体を周囲温度よりも低い温度で運搬または貯蔵することが知られている。このような媒体は船舶により運搬されるのが常識的であり、このような媒体を浮遊する沖合いの貯蔵ユニット内に貯蔵することへの関心が高まっている。船舶または他の移動可能なユニットのホールドは波の作用により移動するので、このような移動にもかかわらずホールド内のタンクをしっかりと支えるように、タンクの支持構造体を設計しなければならない。さらに起き得ることは、事故によってホールドの中へ水が進入してタンクを上昇させることが多い。これに加えて、支持構造体は、温度変化、とくにタンクが空の状態と、その中に周囲の温度よりも低い媒体がいっぱいに充填されている状態との間で生じる温度変化に起因してタンクがホールドに対して熱移動(thermal movement)するという問題に対処することができなければならない。
【0003】
以上のことから、球形状のタンクおよび支持システムが知られている。英国特許第GB1500799号、米国特許第US3908574号および米国特許US4013030号には具体例が記載されている。しかしながら、このような球形状のタンクは、その球体の下方および上方に使用されない空間が形成されるために経済的ではない。このことは、ポートおよび運河のコストの如きコストが船舶のサイズに依存し積み荷のサイズに依存しない船舶にとってとくに問題である。通常、球形状のタンク支持システムは、タンクの外周に延設されるまたはタンクの中央真下に位置する支持リングからタンクを浮かせことが必要である。このように、支持リングはタンクの重さを支えなければならず、また、これに合わせて支持リングおよびタンクが設計されなければならない。さまざまなシステムが熱移動に対処するために提案されてきたが、これらは、空間が非効率的であり、大きな重量のタンクを支えるように支持リングを設計および製造することが困難でありコストがかかるという欠点を有している。本発明は、球形状のタンクに関するものではなく、球形状のタンクに適用することはできない。
【0004】
また、長手方向の軸を水平方向にして配置された円筒形状のタンクも、周囲温度よりも低い媒体を運搬する船舶において用いられてきた。具体例は英国特許第GB2032087号に記載されている。このようなシステムでは、円筒形状のタンクは揺りかご状の受け台に支えられているので、船の移動中の転倒は重要な問題ではなく、タンクの浮遊を回避するための処置が望まれる。球形状のタンクの場合と同様に、水平に向けられた円筒形状のタンクは、タンクよりも下方の空間が無駄になるので一般的に非経済的である。本発明は、水平に取り付けられた円筒形状のタンクに関するものではなく、水平に取り付けられた円筒形状のタンクに適用することはできない。
【0005】
船舶の如き周囲温度よりも低い媒体を大量に運搬または貯蔵するための他の公知のタイプのタンクは角柱形状のタンクである。角柱形状のタンクは、通常船舶の形状に一致するように設計することができるので、空間の利用という点から考えて非常に効率的である。このようなタンクの従来の設計では、転倒を防止するための支持面がタンクに設けられ、それに対応するホールド空間支持面がホールドに固定されている。しかしながら、タンクが冷たい気体で満たされると、これらのタンクは熱収縮を受けるため、タンク支持面とホールド支持面との間のギャップが大きくなる。LNGの如き非常に冷たい気体だと、上述の支持面間のギャップがあまりにも大きくなり過ぎるので、ホールド空間が回転したりまたは移動すると、タンクが不安定になる。したがって、一般的に、これらのタンクのための支持システムは、ある限られた程度のタンクの熱移動にしか対処できないので、−160℃よりも低い温度を通常必要とするLNGの如き非常に低い温度を必要値する製品に対して使用されてこなかった。
【0006】
基底面に自立する角柱形状のタンクを備える液化ガス運搬用船舶を提供することが欧州特許第EP0619222号(図12および図13)に記載されている。鉛直方向に向けられたタンク支持部材がタンクの頂面の中央に設けられている。タンク支持部材は、上方に向けて突出しており、転倒防止手段として、その円周に沿ったホールド支持面と協働するようになしてある。転倒を防止するための力を伝達するために、ホールドおよびタンクの支持体のまわりのプレート構造は、360度すべてのラジアル方向の力および曲げモーメントを伝達するために強化されなければならない。これらの力は、全体的に、対応する構造条件を備えた側面構造体に伝達されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなシステムの欠点が欧州特許第EP0619222号に記載されており、同文献は、他の転倒防止手段を提案している。タンクの頂部の中央に支持体を配置することに代えて、角柱形状のタンクの前側鉛直壁および後側鉛直壁でホルダー支持面とタンク支持面とを協働させることが提案されている。これら協働する面は、長手方向かつ鉛直面内に延設されて、タンクの横倒れを防ぐようになしてある。このように構成すると、タンクの頂部に移動拘束手段を設ける必要がなくなるので、タンクを頂面で支持するという厄介な構造上の用件の要求を回避することができるようになる。しかしながら、長手方向かつ鉛直方向に延びた協働する面では、タンクの前後への転倒を防ぐことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、船舶または他の移動可能な運搬ユニットのホールド内の角柱形状または直立した円筒形状のタンクのための支持構造体が提供されており、当該支持構造体は、基部を有した角柱形状または直立した円筒形状のタンクと、タンクの重みを支えるためにタンクの基部を支える基部支持体と、タンクに設けられたタンク支持面と、ホールドに設けられ、タンク支持面と協働するように構成されたホールド支持面とを備えており、上記の支持面がタンクの熱移動の方向に向かって延びるように構成されており、上記の支持面が、ホールドに対するタンクの横(lateral)方向に移動を抑制するように水平方向と鉛直方向との間の中間の角度で延びるように構成されている。
【0009】
水平方向と鉛直方向との中間の角度で延びるようにタンク支持面およびホールド支持面を構成することにより、これらの面は、タンクの横方向の移動を抑制するように協働することができるようになる。したがって、これらの面は、船舶または他の移動可能ユニットの移動の間にタンクが転倒することを抑制するように働く。同時に、これらの協働する支持面は、タンクの熱移動の方向に相互に移動することができる。このようにして、温度変化により引き起こされるタンクのホールドに対する熱移動に対処することが可能となる。
【0010】
このタンクは独立したタンクであることが好ましい。このことは、タンクが自立式であり、船舶または他の移動可能な運搬ユニットまたは貯蔵ユニットの構造の一部(たとえば、船舶の船体)を形成していないことを意味する。このタンクは、国際海事機関(IMO)の分類によるAタイプであってもよいし、Bタイプであってもよいし、または、Cタイプであってもよい。
【0011】
ある好ましい実施形態では、タンクは角柱形状のタンクである。角柱形状のタンクは非常に効率的な空間の利用を可能とするので、とくに船舶上での使用に適している。角柱形状のタンクの船舶での使用が非常に有益ではあるが、角柱形状のタンクの効率的な空間の利用は、浮遊する沖合の貯蔵設備の如き移動可能な貯蔵ユニットの場合の利点でもある。角柱形状のタンクは、一般的に長方形状おまたは正方形の壁から構成されていてもよいし、または、より複雑な形状を有していてもよい。たとえば、側壁は、湾曲するまたは湾曲した部分を有することにより、湾曲した船体を備えた船舶またはユニット内の利用可能なホールド空間をこれらの側壁が最大限に占有することができるようになっていてもよい。
【0012】
他の好ましい実施形態では、タンクは、円筒形状のタンクであって、その中心の長手方向の軸が鉛直となって直立して配置されている。このような直立した円筒形状のタンクを船舶上で用いることができるが、これらは、とくに浮遊する沖合の貯蔵設備の如き移動可能な貯蔵ユニットの使用に向けて考えられている。この理由は、空間の経済性が重要というよりは、タンクの製造コストの方がより重要だからである。直立した円筒形状のタンクは、比較的安く、また、本発明の支持システムから利益を得ることができる。
【0013】
タンク支持面およびホールド支持面は、それらを滑り接触させることによって相互に協働するように構成されてもよい。しかしながら、これらの面の間にギャップがあることが好ましい。このことにより、とくに大きなタンクの場合において熱膨張ラインが完全には直線状ではない場合もあるという事実に対するマージンを設けることができる。タンクとホールドとが同一の温度である場合にはこのギャップは小さいことが好ましい。ギャップのサイズについていえば、タンクが設計されているすべての運用条件の下において、タンクが適所に維持され、ギャップによるタンクのどんな小さな移動もタンクまたはタンクが支えられているホールドに対して損傷を与える危険性をもたらさないということを担保できる十分な小ささであることが必要である。したがって、たとえばタンクの横方向の移動を引き起こすようなホールドの移動があった場合であっても、実際上は、ギャップのサイズが小さいためにタンクは適所に維持されることとなる。
【0014】
各支持面はそれに対応する支持部材によって提供されうる。支持部材は、溶接、リベットまたは他の固定方法によってタンク構造体またはホールド構造体に固定されてもよい。タンク支持部材は、タンクの頂壁上に設けられてもよいが、側壁上に設けられることが好ましい。
【0015】
ある好ましい実施形態では、おおむね下方に面するタンク支持面と、おおむね上方に面するホールド支持面とが設けられている。本明細書では、これを第一のタイプの支持システムと呼ぶ。このような面は、ホールドに対するタンクの横方向の移動を抑制することができ、転倒防止手段として一般的に有効である。タンクが転倒しそうな場合、タンク支持面がホールド支持面を下方にかつ横方向に押すことにより抵抗が生じる。ホールド支持面は、おおむね上方にかつ横方向反対に押す反応をする。この構成では、支持部材がタンクの側面とホールドの側面との間に設けられた場合、支持部材は主として圧縮力を受けることになる。したがって、支持部材は、主としてこのような圧縮に対して抵抗するように設計される必要がある。したがって、支持部材は、比較的に設計および製造が簡単な構造を有することができる。また、横方向の力または転倒力により支持部材が固定されているタンクまたはホールドの方向に向けて支持部材を押すので、疲労による故障の危険性は低い。
【0016】
ある好ましい実施形態では、おむね上方に面するタンク支持面と、おおむね下方に面するホールド支持面が提供されている。本明細書では、これを第二のタイプの支持システムと呼ぶ。このような一対の協働する支持面は、ホールドに対するタンクの横方向の移動を抑制し、また、ホールドに対するタンクの鉛直方向上方向きの移動を抑制するように機能することができる。したがって、協働する支持面は、転倒防止機能および浮遊防止機能を備えている。各支持面がそれに対応する支持部材上で設けられているような構成では、タンクが転倒しようとすると、タンク支持面が、上方のかつ横方向に向いた力をホールド支持面に加え、この力の横方向の成分がタンク支持部材をその取り付け部からタンクへと横方向に引く。次いで、ホールド支持部材上の力の横方向の成分がホールド支持部材を横方向に押し、ホールド支持部材がホールド構造体にタンクの横方向外側に向けて取り付けられている場合、この横方向の成分はホールド支持部材をホールド構造体のその取り付け部から引き離すように作用する。これらの作用により、各支持部材がタンクまたはホールド構造体に固定されているところで高い曲げモーメントが生じさせられる。したがって、このような支持部材は、このような力に耐えかつ疲労に対して耐性を有するように適切に設計されなければならない。しかしながら、これらは、タンク支持面がおおむね下方に向いておりそしてホールド支持面がおおむね上方に向いている第一のタイプの支持システムに比べると、タンクのわずかな上方向きの移動に対してでもそれに対して抵抗をするため、転倒に対するより良好な抵抗と浮遊に対する抵抗とを提供するという利点を有している。
【0017】
ある好ましい実施形態では、第一のタイプの支持システムと第二のタイプの支持システムとを混合したものが提供されている。第一のタイプは、設計の相対的な単純性と必要とされる材料、たとえば鋼の量という点から経済性を提供することができ、第二のタイプは、浮遊に対する抵抗および転倒に対するより良好な抵抗を提供することができる。
【0018】
協働するタンク支持面とホールド支持面とは、形状が平面形状であってもよい。これは単純な構成であるのでコストを抑えることができる。これより複雑な構成が提供されてもよい。たとえば、支持面がキー溝の形態をとっており、本質的にダブテール構成の範疇に含まれるものであり、この構成は協働する面の分離を防止するので、ホールドに対するタンクの移動を抑制するより安全な手段を提供するものである。
【0019】
タンクの基部はおおむね平坦であることが好ましい。この基部は単一の面内に延びていることが好ましい。
【0020】
タンクをその基部で支えるための構成はさまざまな形態をとることが可能である。タンクの基部とホールド構造との間は通常断熱されており、これは、たとえば広葉樹材または他の高断熱材で作られている基部支持体によって提供されている。単純な構成では、基部領域内におけるタンクの横方向の移動を防ぐためのいかなる処置も取ることなく、タンクを基部支持体上に単に載置する。次いで、ホールドに対するタンクの横方向の運動を、本明細書に記載のタンク支持面とホールド支持面とによって防ぐことができる。タンク支持面とホールド支持面とは、タンクの基部上の点または領域、たとえばタンクの基部の中心が、タンクが冷えるまたは暖まるにつれてホールドに対して移動しないことを担保することができる。したがって、タンクは、断熱されていることが好ましいホールドの空間の底部に単に載置することができる。このことにより、単純かつ安価なシステムを提供することができる。この構成では、高架支持ブロックを必要としないので、多くの空間を取得することができることに加えて、重心を下げることができるようになる。これに加えて、タンクの基部を載置する平面状の基部支持体を検査する必要が通常ないので、保守が簡単なものとなる。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、タンクの基部は、タンクの熱膨張または熱収縮の間、ホールドに対するタンクの基部のある点または領域の移動を抑制するとともに、当該タンクの他の部分の相対的な移動を許容するように支持されている。この点または領域については、タンクの基部上に必要に応じて選択することができ、また、タンクの基部の中心を選択することが最も好都合である。所望の支持体は、相対的な移動がないたとえばタンクの基部の中心の点または領域から半径方向外側に向けて延びるガイド手段により提供されてもよい。このことによって、タンクの基部が基部支持体上を半径方向に相対的に熱移動することはできるものの、タンクの基部が全体として横方向に移動することは妨げられる。
【0022】
ガイド手段は、たとえばタンクおよびホールドのうちの一方にある突出部であって、タンクまたはホールドのうちの他方にある凹部に受けられる突出部の形態をとっていてもよい。複数の半径方向に延びるガイド手段を提供することによって、任意の横方向に沿って、相対的な熱移動以外のタンクの基部とホールドとが相対的に横方向に移動することを防ぐことが可能となる。
【0023】
ホールドに対してタンクの基部のある点または領域での移動を防ぐ他の方法は、その点または領域に配置される取付け具を提供することである。これは、半径方向のガイド手段に加えてまたはそれに代えて提供されてもよい。中央位置とは、タンクが冷えるまたは暖まるときにホールドに対して熱移動しないタンクの基部上の点であり、当該タンクのその他の部分は必要に応じて熱的に自由に移動することができるので、中央位置を用いることは好都合である。取付け具がたとえば高架支持体ブロック上に設けられてもよい。
【0024】
好ましい実施形態では、タンクおよび支持面の熱移動の方向は、タンクの内部に向かって下方に、たとえば半径方向内側に向かって下方に傾斜している。熱移動の方向は、通常、タンクが冷えるまたは暖まるときにホールドに対して移動しないタンクの基部上の点または領域に向かう方向である。
【0025】
支持構造体は、複数の協働する対のタンク支持面とホールド支持面とを有していることが好ましい。このような協働する対の支持面をタンク上の異なる位置に設けることにより、それは、よりしっかりと固定されるようになる。単一の対の協働する面に過度のストレスが集中することを回避することができる。協働する対の位置については、個々の部位における構造条件、たとえばホールド内におよび/またはタンク上に梁があるというような条件に基づいて選択することができる。各対はタンクの側面領域の位置に設けられてもよい。さらに、一般的に、各対の協働する面に加えられる力は、一方向のみにすることにより、その対におけるストレス集中に対して容易に対処できるようにすることに加えて、設計が単純化されている。
【0026】
好ましくは、第一の対の協働するタンク支持面とホールド支持面とは、タンクの熱移動の第一の方向に向かって延びており、第二の対の協働するタンク支持面とホールド支持面とは、第一の方向とは異なるタンクの熱移動の第二の方向に向かって延びている。熱移動の第一の方向および第二の方向は、通常、タンクとホールドとの間に相対的な熱移動がない点または領域、たとえばタンクの基部の中心に収束するようになっている。
【0027】
第一の対の協働する面および第二の対の協働する面は、タンクの両側に配置されてもよい。三つ以上の対の協働する面は、これらの面をタンクの周面に配置するように設けられてもよい。たとえば円筒形状のタンクの軸を鉛直に配置した円筒形状のタンクの場合、このような複数の対の協働する面は、円筒形状のタンクの円周面上に等角をなして配置されてもよい。各対の協働する面は、熱移動の異なる方向を有していることが好ましく、また、好ましい実施形態では、これらの方向がおおむね収束するようになっていることが好ましい。
【0028】
好ましい構成では、協働するタンク支持面とホールド支持面とは、タンクの真ん中の高さレベルよりも上の位置に設けられている。さらに好ましくは、これらの支持面は、タンクの4分の3の高さレベル以上の位置に設けられている。比較的高い位置に支持面を位置決めることによって、これらの支持面がタンクの転倒の防止にさらに有効なものとなる。タンクの重さをタンクの基部で支えているため、構造全体的が、相対的な熱移動を許容しつつ、ホールド内のタンクのすべての移動に対して良好な支えを提供することができるようになっている。
【0029】
協働するタンク支持面とホールド支持面とは、タンクの側面領域に設けられてもよい。これらの支持面がタンクの側面かつ頂部に設けられている場合、このことは、その反対側の基部に位置しうる転倒点からの距離を最大限に大きくすることができるので、転倒に抵抗するためのモーメントを与えるにあたって必要となるこれらの支持面間の力を(タンクの頂部の中心に設けられる転倒防止構成と比較して)比較的小さなものとすることができる。協働するタンク支持面およびホールド支持面の周辺構造体の強度をその分削減することが可能となる。
【0030】
タンクの下方の位置、たとえばタンクの中間の高さレベルより下に協働するタンク支持面とホールド支持面とを設けることが望ましい場合がある。このような協働するタンク支持面とホールド支持面とは、衝突によって引き起こされるタンク上の横方向の力に抵抗することを容易なものとすることができる。これらの支持面が反転防止手段としてより高い上方の面に比べて有効なものではないので、協働するタンクと支持面とを高い位置および低い位置に設けることが好ましい。高い位置の面は、タンクの転倒に抵抗するように働くことができ、高い位置の面と低い位置の面とを組み合わせたものは、衝突で生じうるような横方向に直進する力に抵抗することができる。
【0031】
好ましい実施形態は、タンクの第一の高さレベルに、タンクの熱移動の方向に向けてかつ水平方向と鉛直方向との間の中間の角度で延びる協働するタンクおよび支持面を備え、タンクの第二の高さレベルに、タンクの熱移動の方向に向けてかつ水平方向と鉛直方向との中間の角度で延びる協働するタンクおよび支持面を備えている。支持面をこのように組み合わせることにより、基部支持体を単純な設計、たとえばタンクの重さを支えることができるだけであって横方向の力に抵抗しなくてもよいようなたとえば単純な平面状の基部支持体を有したものにするにあたってとくに有益である。このような単純な基部支持体は、上述のようなホールド空間を効率的に使用するという利点、タンクの重心を下げるという利点および保守を比較的必要としないという利点を有している。
【0032】
さらに、一次バリアとなるタンクの壁の外側に二次バリアを設けることはよくあることであり、また、このような構成は本発明の実施形態において好ましいものである。二次バリアは、強化されたポリエステル製の布地などであってもよい。タンクが高架支持体により支持されている公知のシステムでは、高架支持体が二次バリアを突き抜ける場合もある。本発明のある好ましい実施形態によれば、上述のような単純な基部支持体を設けることによって、いかなる二次バリアでも突き抜けなくなしてある。このことにより、単純で安全な二次バリアの設計が可能となる。
【0033】
これらの高い位置にある協働する面およびこれらの低い位置にある協働する面は、通常、ホールドに対する熱移動のないタンクの基部上の点または領域に向かう方向に延びているので、高い位置にある面の延出方向の水平面に対する角度は、低い位置にある面の延出方向の水平面に対する角度よりも大きくなっているほうが好ましい。
【0034】
また、タンクは、その鉛直方向の軸を中心とする回転に対して抵抗するように支持されることが好ましい。したがって、おおむね鉛直方向の軸を中心として回るタンクの回転運動を抑制するための手段が設けられてもよい。回転運動を抑制するための手段は、タンク上に設けられている当接面と協働するように構成された、ホールド上に設けられている当接面を有してもよい。このような回転防止手段が、タンクの基部における支持体の配置によって提供されてもよい。回転防止手段は、タンクのおおむね中間の高さ以上の位置に設けられることが好ましい。好ましい実施形態では、ホールド当接面およびタンク当接面はおおむね鉛直な平面に含まれている。このような当接面は、ホールドの移動が回転を引き起こそうとするとき、相互の当接により鉛直方向の軸を中心とするタンクの回転を防ぐように働くことができる。このような当接面は、タンクの半径方向の平面内、すなわちタンクの鉛直方向の中心軸を通る鉛直平面内に延びている。
【0035】
複数のこのような対の協働する当接面がホールドに設けられていることが好ましい。たとえば、第一の対が時計回りの方向に向かう回転を防ぐように構成され、第二の対が時計回りの方向とは逆の方向に向かう回転を防ぐように構成されてもよい。このような一方の対が、たとえば水平方向と鉛直方向との中間の角度で延びている対応する対の支持面の一方の側面に設けられ、他方の垂直の対が反対側にある他方の側面に設けられてもよい。
【0036】
本明細書に記載の支持構造体は、種々さまざまな媒体に用いられてよく、とくに周囲の温度よりも低い媒体の運搬および貯蔵に好適かつ有益である。これらは、たとえば−163℃の温度に用いうる液化天然ガス(LNG)のように非常に低温な媒体に用いられうる。液体水素または液体窒素は他の可能性である。もちろん、たとえば−48℃まで冷やされる液化された石油ガスまたはエチレン(たとえば−104℃)のようにそれほど冷たくない他の媒体に対して同一の構造体を用いることもできる。
【0037】
これらの支持構造体が用いられるホールドは、船舶のホールドであってもよいし、または、他の移動可能な運搬ユニットもしくは貯蔵ユニットのホールドであってもよい。移動可能な貯蔵ユニットの一例は浮遊する沖合の貯蔵設備である。船舶以外の移動可能な運搬ユニットの具体例はトラック、列車または航空機である。
【0038】
本発明は、本明細書に記載の支持構造体に用いられる、ホールド内の角柱形状または直立した円筒形状のタンクを支持するために用いられる支持装置であって、タンク支持面とホールド支持面とを備えている支持装置に関するものでもある。
【0039】
したがって他の側面から見ると、本発明は、角柱形状または直立した円筒形状のタンクを支えるための支援装置を提供しており、当該支持装置は、タンクに固定されるタンク支持面と、ホールドに固定され、タンク支持面と協働するように構成されたホールド支持面とを備えており、これらの支持面は、利用時に、支持面がタンクの熱移動の方向に向けて延びるように、また、支持面が、ホールドに対するタンクの横方向の移動を抑制するよう水平方向と鉛直方向との中間の角度で延びるように構成されている。
【0040】
したがって、このような支持装置は、タンクとホールドとは別に提供され、新規の設置としてまたはホールド内の既存のタンクに対する付属品としてそれらに設けられてもよい。
【0041】
ここで、例示を目的とし、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】直立した円筒形状のタンクの鉛直面に沿った断面図である。
【図2】図1のタンクの基部を支えるための構成を示す拡大図である。
【図3】図1に類似した図であって、タンク支持面とホールド支持面とを示す図である。
【図4】図3の細部「A」を示すとともに、熱移動中の支持面間の相互作用を示す図である。
【図5】三つのタンク支持面を有している直立した円筒形状のタンクを示す斜視図である。
【図6】直立した円筒形状のタンクの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】直立した円筒形状のタンクの他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】角柱形状のタンクを示す斜視図である。
【図9】他の角柱形状のタンクの鉛直面に沿った断面図である。
【図10】図9の矢印「B」に沿った図である。
【図11】角柱形状のタンクの他の実施形態を示す斜視図である。
【図12】タンク底部支持体およびホールド基部支持体を示す平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿った断面図である。
【図14】ホールドが断面図で示された、ホールド内の角柱形状のタンクを示す端面図である。
【図15】ホールドが断面図で示された、ホールド内の他の角柱形状のタンクを示す端面図である。
【図16】図15の支持体のうちの一つを示す拡大図である。
【図17】タンクがホールド内に収納される前の角柱形状のタンクとホールドとを示す斜視図である。
【図18】ホールド支持体の一部を示した、図17の一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、中心軸が鉛直方向に向くように配置された円筒形状のタンク2の鉛直断面図が示されている。この鉛直方向の中心軸上にあるタンクの基部6に、中央底部支持体4が設けられている。この支持体4は、タンクの基部6から突出した、ホールド内に設けられたソケット10内に収納される突出部8を有している。この基部支持体4は、ホールド空間の床部に沿った横方向の移動を防ぐようになっており、その一方、基部6の下方向きの面は、ホールドの上方向きのタンク支持面上と水平に接触して載置されている。このことにより、ホールドは、タンクの重さを支えることが可能となり、また、タンクが冷めるまたは暖まるときに、それぞれの表面の相対的な熱移動を許容することが可能となる。
【0044】
図3および図4から分かるように、タンクは、その上側領域に、タンク支持面12が設けられている。タンク支持面12はタンクに固定されている。ホールドには、当該ホールドに固定されているとともに面12と協働するように構成されたホールド支持面14が設けられている。したがって、第一の支持体11は、一対の協働するタンク面12とホールド面14とによって提供されている。これらの面は、あるギャップにより間隔をおいて設けられており、このギャップのサイズは、図3および図4では、例示の目的で誇張されて示されている。タンク支持面12とホールド支持面14とは、線16により示されている方向に延びるように構成されており、この線16により示されている方向は、水平方向と垂直方向との間の中間の角度に向いている。すなわち、水平でもなければ垂直でもない。この方向は、タンクの内側に向けて下方に延びている。第二の支持体13は、タンクの正反対側にある一対の協働するタンク面とホールド面とにより提供されている。
【0045】
図1には、冷たい時のタンク2が実線で示されており、そして、高温になり、熱膨張を受けた時のタンクが点線で示されている。協働する面を有する支持体11、13の各々に対して点線16が用いられている。各点線は、タンクが冷めることにより収縮を受けまたは暖まることにより膨張を受けたときのその異なる位置でのタンク上の点の軌跡により形成されている。この線は、協働する支持面が延びる方向を規定している。いうまでもなく、タンクが断熱されているのでタンクが冷める時または暖まる時のホールド空間構造の熱移動は無視できる程度である。ホールド支持面14はホールドに固定されており、タンク支持面12は、熱移動の間、固定された面14に対して摺動するようになっている。
【0046】
協働する面12および14が延びる方向は、水平方向の成分と鉛直方向の成分とを有しており、鉛直方向でもなければ水平方向もない。水平方向成分は、固定されたホールド面14によるタンクの上方向きの移動の防止を可能としており、これがなければ、タンクは、事故により水がホールドの中へ進入したことによる浮遊に起因してまたは波によりホールドが突然下方に向けて移動した理由により、上方向きに移動する恐れがある。協働する面の鉛直方向の成分は、タンクのホールドに対する水平方向の移動を防止する役目をしており、これがなければ、タンクは、ホールドの横方向の移動により、ホールドに対して水平方向に移動する恐れがある。図3および図4から分かるように、協働する面12および14から構成される支持体11は、左に向かうタンクの横方向の移動を防ぎ、タンクの正反対側にある協働する面から構成される支持体13は、右に向かうタンクの移動を防ぐようになっている。
【0047】
タンクが図3に記載のタンクの左下角部にある転倒点を中心として左側に向けて傾こうとした場合、支持体11による抵抗を受けることになる。この抵抗は、転倒点から出発してタンクの対角線上の正反対の位置にあるタンク上の点、すなわち転倒点から最も離れた距離にあるタンク上の点に加えられる。したがって、横揺れ中にタンクを適切な位置に維持するために必要な力が最小限に抑えられることになる(力×転倒点と支持体との間の長さ=タンクを適切な場所に維持するために必要なモーメント)。実務的な帰結は、支持体およびそれらの周囲の構造体の寸法をその分だけ縮小することができるということである。
【0048】
したがって、波の作用がタンクを覆らせるような恐れがある場合、このことは、タンクの頂部にある協働する支持体によって防がれる。同一の支持体が、タンクの浮遊を防ぐ役目をする。タンクの熱移動によるストレスがタンク内に生じることはない。というのは、このような熱移動の方向と一致するように支持面が配置されているからである。したがって、タンクは、当該タンクが設計されている温度領域全体にわたってホールド空間支持構造体から自由にかつ独立して移動することができる。
【0049】
本発明のシステムは、種々さまざまな角柱形状のおよび直立した円筒形状のタンクの設計および形状に適している。図5には、協働するタンク面およびホールド面から構成される三つの支持体11、13、15を備えた直立した円筒形状のタンクが示されている。図面では、タンク支持面12だけが明瞭さのために示されているが、いうまでもなく、タンク面の上方には、対応するホールド面14が配置されている。各タンク支持面12は、対応するタンク支持部材30上に設けられている。
【0050】
図5には、直立した円筒形状のタンクの一例が示されている。シリンダの直径をより大きくするためにはシリンダの壁厚を大きくする必要があるという事実と、直径を大きくすると自由面が広くなりそれに対応してスロッシング(跳ね回る)状況が発生するという事実とを考慮すると、たとえば沖合での貯蔵を含む一部の用途では、直径は小さいものの長さの大きなシリンダを横に並べて置くことが好ましいことになる。直立した円筒形状のタンクは、沖合での貯蔵にとって非常に重要なものとなると期待されている。直立したシリンダが鉛直方向に沿って著しい熱移動をするため、本発明は、このようなタンクにとって理想的な支持構造体を提供することができる。
【0051】
図6は、他の直立した円筒形状のタンクの立面図が示されている。この場合、タンク支持体11および13のタンク支持部材30は、下方かつ横方向に面するタンク支持面12を有している。ホールド支持部材32は、ホールド構造体34に固定され、上方かつ横方向に面するホールド支持面14を有している。したがって、協働するタンク支持面12およびホールド支持面14の位置は図5のものと比較して逆になっている。このような逆配置は、本明細に記載のタンクのうちのいずれに用いられてもよい。図6には、第一のタイプの支持システムと呼ばれる支持システムの一例が示されている。図5および他の図には、第二のタイプの支持システムの具体例が示されている。
【0052】
図6から分かるように、第一のタイプの支持システムの利点は、ホールド支持部材32がホールド内の適当な場所に固定されると、タンク2を適切な場所に下ろしてもよいということである。このことにより、組立プロセスまたは搭載プロセスを容易にすることが可能となる。
【0053】
図6に記載のタンクの左下角部にある転倒点を中心としてタンクが左側に向けて傾こうとした場合、支持体13により抵抗を受けることになる。図6のタンクが、横方向の移動に対して抵抗しない基部支持体上に配置された場合、図6の左側に向けてタンクが摺動しようとした場合に、支持体13による抵抗を受けることになる。転倒する場合または摺動する場合のいずれであっても、協働するタンク支持面12とホールド支持面14との間に作用する力は主として圧縮力であり、タンク支持部材30とタンク壁との間に作用する力も主として圧縮力である。同様に、ホールド支持部材32とホールド構造体34との間に作用する力は主として圧縮力である。したがって、タンク支持部材30およびホールド支持部材32は設計および製造が容易な構造を持つことがで、また、これらをタンクおよびバルクヘッドにそれぞれ取り付けることも比較的簡単なことであるのは明らかなことである。これらの部材が使用時に抵抗しなければならない力は、その力自体がこれらの構成部材をくっつけるので、これら部材を極度に巧みに設計する必要はない。
【0054】
しかしながら、いうまでもなく、図6のようにタンク支持面が下方に面しておりホールド支持面が上方に面しているような第一のタイプの支持システムでは、協働する面は浮遊防止機能を実行するようにはなっていない。浮遊防止機能が望まれる場合、その機能は、たとえばタンク支持面が上方に向けて面しホールド支持面が下方に向けて面している第二のタイプの支持システムのような他の何かにより提供される必要がある。このような浮遊防止手段はよりロバストな設計を必要とする場合がある。というのは、図3および図4から分かるように、協働するタンク支持面とホールド支持面との間の圧縮力により、支持面が形成されている支持部材がタンクとホールドとにそれぞれ対応して固定されているところに大きな曲げモーメントが生じ安くなるからである。
【0055】
好ましい実施形態では、複数の支持体11、13が設けられており、少なくとも一つは、タンク支持面がおおむね上方に向けて面しホールド支持面がおおむね下方に向けて面している第一のタイプであり、少なくとも一つは、タンク支持面がおおむね下方に向けて面しホールド支持面がおおむね上方に向けて面している第二のタイプである。
【0056】
図7には、タンクの周面に設けられた複数の支持体11、13、15などを備えた直立した円筒形状のタンク2が示されている。典型的な支持体11は、上方かつ横方向内側に面するタンク支持面12が設けられた、タンクに固定されている支持部材30を有している。支持体11は、下方かつ横方向外側に面する面14が設けられたホールド支持部材32を有している。ホールド支持部材32は、ホールド構造体に固定されているが、図面には示されていない。
【0057】
図8には、LNGまたはLPGの輸送または貯蔵に適した設計をされたタンクが示されている。タンクの一方の側面には、図示されていないホールド支持面と協働して支持体11を形成するためのタンク支持面12が示されている。一対の協働する面から構成された他の支持体がタンクの他方の側面に設けられているが、図示はされていない。この第二の対は、二つの対の間の中間位置にある鉛直面に対して、第一の対の支持体11と対称になっている。タンクには基部支持体4が設けられている。
【0058】
図9および図10には、図8の構成の変形例が示されている。この場合、先の場合と同様に、協働する面12、14から構成される支持体11が設けられている。ホールド面14は固定されており、タンク面12はタンクの熱移動とともに移動することができる。これに加えて、このホールドには、一対の鉛直当接面20、22が設けられている。第一の当接面20は、固定されるようにホールドに設けられている。第二の当接面はタンクに設けられている。第二の対の当接面19も第一の当接面20と第二の当接面22とを有しており、当接面20はホールドに属し、当接面22はタンクに属している。
【0059】
ホールドの床部を横切る横方向の移動からタンクを固定するために基部支持体4が設けられている。先に記載されているように、協働する面から構成される支持体11はタンクの横方向の移動および上方向の移動を防ぐようになっている。これらの当接面の対17、19は、基部支持体4を中心とするタンクの回転を防ぐ働きをする。起こりうる回転の方向は図10に矢印25で示されている。タンクが図10における右側に移動すべく回転しようとする場合、対17の当接ホールド面20は、当接タンク面22と係合し、そのような移動を防ぐ。タンクが図10における左側に移動しようとする場合、対19の当接ホールド面20は、対19の当接タンク面22と係合し、その移動を防ぐ。同時に、対17、19の当接面は、タンクの熱移動の方向と一直線上に並んでいるので、温度変化が生じたときにタンクのこのような移動を妨げることがなければ、タンクにストレスをかけることもない。
【0060】
図11には、図7に示されたものに類似しているタンク支持部材30が設けられた角柱形状のタンクが示されている。この場合、ホールド支持部材は示されていない。角柱形状のタンクの四つの鉛直壁の各々に沿って複数のタンク支持部材30が設けられている。
【0061】
図12および図13には、基部支持体の他の設計が示されている。タンクの基部6には、そこから下方に向けて突出している十字形状の突出部40が設けられている。十字形状の突出部の中心42は、タンクの基部6の重心に位置するように構成されている。突出部40は、中心42から半径方向外側にタンクの基部6の外周に向けて突出する四つの腕部43、44、45、46を有している。突出部の腕部45は一対の側面47を有しており、これらの側面は、それぞれ対応するホールド支持ブロック49の側面48と係合するように構成されている。第二の対のホールド支持ブロック49が、突出部の腕部45に沿って第一の対から長手方向に沿って間隔をおいてさらに設けられている。同様に、突出部の腕部46には、二つの対の支持ブロック49が設けられている。突出部の腕部43および44には各々一対の支持ブロック49が設けられている。
【0062】
図12および13に示されている構成は、相対的な熱移動以外の、ホールドに対するタンクの横方向の移動をすべて防ぐ働きをする。中心点42は、相対的な熱移動がない位置にある。タンクが膨張または収縮するとき、係合面47および48は、タンクとホールドとの間に相対的な熱移動が生じることを可能にする。
【0063】
係合面47および48が中心点42を通る鉛直面に沿ってより正確に、すなわち半径方向外側の方向に向けてより正確に延びるように、図12に示されている構成を変更することができる。しかしながら、実際問題として、面47と面48との間に小さなギャップを設け、これらの面が厳密にいって半径面上にないという事実に対する許容値を考慮に入れているので、変更は必要ないかもしれない。
【0064】
角柱形状のタンクに関連させて示されているが、図12および図13に示されている構成は、直立した円筒形状のタンクに対しても適用可能である。
【0065】
図14には、広葉樹材または他の断熱材料からなる基部支持体5により支えられている角柱形状のタンク2が示されている。基部支持体5はホールドの床部7に載置されている。タンクには、第一の高さレベル、すなわちタンクの真ん中の高さよりも上に支持体11aが設けられている。タンク支持部材30は、タンクの側壁に固定さており、上方かつ横方向に面するタンク支持面12を有している。ホールド支持部材32は、ホールド構造体34に固定されており、下方かつ横方向に面するホールド支持面14を有している。協働するタンク支持面12とホールド支持面14とは、熱移動の方向に沿って、タンクの基部の中心に向かう方向に向かって延びている。
【0066】
他のタンク支持体11bが、タンクの同一の側面にかつより低い第二の高さレベル、すなわちおおむねタンクの真ん中の高さよりも下に設けられている。これも、協働するタンク支持面12とホールド支持面14とを有しており、これらのタンク支持面12およびホールド支持面14はタンクの熱移動の方向に沿って延びている。この場合、熱移動の方向もタンクの基部の中心を指している。水平面に対する傾斜角度は、上側支持対11aにおける熱移動の方向の水平面に対する傾斜角度よりも小さくなっている。
【0067】
図14の左側には、他の上側タンク支持体11aおよび他の下側タンク支持体11bが設けられていることが明らかである。図示されていないが、同様の上側タンク支持体および下側タンク支持体がタンクのその他の二つの側壁に設けられてもよい。第一のレベルと第二のレベルで、複数のタンク支持体が各側壁に沿って設けられてもよい。
【0068】
支持体11a、11bは、タンクの転倒を防ぎ、また、タンクの横方向の直進運動も防ぐように働く。したがって、タンクの基部において横方向の移動に対して特別な措置を取る必要はないし、また、基部支持体5はたんなる平面な部材である。図示されている支持体は、第二のタイプ(ホールド支持面より下にタンク支持面)であるので、浮遊防止機能も有している。
【0069】
図15の角柱形状のタンク2は図14のものと類似しているが、主な違いは、タンク支持面12とホールド支持面14との位置が逆になっているということである。したがって、タンク支持部材30は、タンクの側壁に固定され、下方にかつ横方向に面するタンク支持面12を有している。ホールド支持部材32は、ホールド構造体34に固定され、上方にかつ横方向に面するホールド支持面14を有している。協働するタンク支持面12とホールド支持面14とは、熱移動の方向に沿って、タンクの基部の中心に向かう方向16に向かって延びている。
【0070】
図15のタンクの右側底部に示されている支持体11bは図16に拡大して示されている。この支持体(当該支持体は、図示されている低い高さレベルでタンクの側面に沿った複数の支持体のうちの一つであってもよい)には、ホールド支持部材32に形成された停止部35およびタンク支持部材30に形成された端面36が設けられている。停止部35および端面36は、タンクが周囲温度である場合、これらが接触しているように配置されている。低温の貨物を受け取りタンクが冷えるにつれて停止部35と端面36との間にギャップが形成されるようになっている。
【0071】
ホールドが鉛直面からある角度、たとえば鉛直面から30度まで傾いた場合に、支持体11aおよび11bは、タンクを支え、タンクが傾くのを防ぐ。この状況では、タンク支持部材30は、ホールド支持部材32で静止する。停止部35は、主として、衝突によって引き起こされた動態作用に応じたタンクの移動を抑制するために設けられている。タンクが低温の媒体でいっぱいになって、熱収縮している場合であっても、このような動態作用に応じたタンクの移動は、停止部35と端面36との間に開いたギャップの幅に制限されることになる。
【0072】
停止部35は下側支持体11bにのみ示されている。一般的に、このような停止部は上側支持体11aには必要ではないと考えられている。というのは、タンク支持面12とホールド支持面14とが、水平面に対して大きな角度で傾斜しているので、ホールドが垂直面から傾けられた場合であっても動態作用に対してうまく抵抗することができると考えられているからである。停止部35は、タンクの一方側にだけ図示され、タンクの他方側には図示されていない。このような停止部は、タンクの前方側で特に有用であり、タンクの後側または船尾側では必要ではない場合もある。この理由は、一般的にタンクを後方に向けて移動させる傾向がある衝突よりもタンクを前方に向けて移動させる傾向がある衝撃力の大きな衝突に対して支えなければならないからである。
【0073】
図17および図18には、タンク2およびホールド構造体34が示されている。この場合、タンクは、上側に、一列の支持体11aを有しており、タンク支持部材30は、上方かつ横方向に面するタンク支持面12を有している。これらに対応するホールド支持部材32は、ホールド構造体34に固定されており、また、下方かつ横方向に面するホールド支持面14を有している。
【0074】
低いレベルには、一列の支持体11bが設けられている。この場合、タンク支持部材30は、下方かつ横方向に面するタンク支持面12を有している。ホールド支持部材32は、上方かつ横方向に面するホールド支持面14を有している。すべての場合において、協働するタンク支持面12とホールド支持面14とは、熱移動の方向に沿って、タンクの基部の中心に向かって延びている。したがって、図17および図18の実施形態では、上側の支持体11aは図14の実施形態のものに類似しており、下側の支持体11bは図15および図16の実施形態のものに類似している。図17および図18の実施形態にかかる組立体では、下側の一組のホールド支持部材32は、作成済みのものであって、ホールド構造体34に取り付けられ、また、上側および下側のタンク支持部材30の組は両方とも作成済みのものであって、タンク2に取り付けられる。次いで、タンクはホールドの中に落とし込まれ。タンクを適切な場所に配置すると、上側の一組のホールド支持部材32がホールドに固定される。
【0075】
図14〜図18では、二つの異なる高さレベルの支持体が角柱形状のタンク上に示されているが、直立した円筒形状のタンクに対しても適用可能である。
【0076】
ここで、協働するタンク支持面とホールド支持面とが延びる方向を設計する方法の一例を、図1に示されているような直立した円筒形状のタンクに関連して記載する。
【0077】
タンクの頂部側にある支持体11がタンクの底部から高さHに位置し、タンクの鉛直方向の中心線からの水平方向の距離Rのところに位置すると仮定する。熱収縮の間に支持体がたどる線の傾斜座標(x、y)を以下のように計算することができる:
x=αHΔT
y=αRΔT
ここで、
αは、支持体11および鉛直方向のタンクの鉛直方向の中心線を貫通する断面内の水平方向および垂直方向の線膨脹係数であり、ΔTは、図1の点線16により示された、xおよびyを計算する冷却温度間隔である。
【0078】
点線16の向きは、熱膨張時と冷却時とで同一である。
【0079】
いうまでもなく、本明細書において用語「水平」および用語「鉛直」の使用は、船舶または他の運搬ユニットのホールドまたは貯蔵庫が直立しかつ傾けられていない状態にある状況を言及しようと意図したものである。もちろん、船舶または他のユニットの移動中、この構造体は直立位置から傾くであろうし、また、本明細書に記載のさまざまな支持面はその移動とともに傾くであろう。
【0080】
本明細書におけるおおむね上方にまたはおおむね下方に面する面の記載は、対象となる面が、側面方向の成分とともに、上側方向の成分および下側方向の成分を有する方向に面していることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶または他の移動可能な運搬或いは貯蔵ユニットのホールド内の角柱形状または直立した円筒形状のタンクのための支持構造体であって、
基部を有する角柱形状または直立した円筒形状のタンクと、
前記タンクの重さを支えるための前記タンクの基部を支持する基部支持体と、
前記タンク上に設けられたタンク支持面と、
前記ホールド上に設けられ、前記タンク支持面と協働するように構成されたホールド支持面とを備えており、
前記各支持面がタンクの熱移動の方向に向かって延び、前記各支持面が、前記ホールドに対する前記タンクの横方向に移動を抑制するように水平方向と鉛直方向との間の中間の角度で延びるように構成されてなる、支持構造体。
【請求項2】
前記タンク支持面がおおむね下方に面しており、記ホールド支持面がおおむね上方に面してなる、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項3】
前記ホールドに対する前記タンクの鉛直方向上方向きの移動を抑制するように、前記タンク支持面がおおむね上方に面し、前記ホールド支持面がおおむね下方に面してなる、請求項1または2に記載の支持構造体。
【請求項4】
複数の対の協働するタンク支持面とホールド支持面とを備えてなる、請求項1、2または3に記載の支持構造体。
【請求項5】
第一の対の協働するタンク支持面とホールド支持面とが前記タンクの熱移動の第一の方向に向けて延び、第二の対の協働するタンク支持面とホールド支持面とが前記第一の方向とは異なる前記タンクの熱移動の第二の方向に向けて延びるように構成されてなる、請求項4に記載の支持構造体。
【請求項6】
三つ以上の対の協働するタンク支持面とホールド支持面とが設けられ、各対の協働する面の熱移動の方向がそれぞれ異なるように構成されてなる、請求項5に記載の支持構造体
【請求項7】
前記タンクの熱膨張または熱収縮の間、前記ホールドに対する前記タンクの前記基部のある点または領域の移動を抑制するとともに、前記タンクの他の部分の相対的な移動を許容するように前記タンクの基部が前記基部支持体により支持されてなる、請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の支持構造体。
【請求項8】
前記協働するタンク支持面とホールド支持面とが、前記タンクの真ん中の高さレベルよりも上の位置に設けられてなる、請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の支持構造体。
【請求項9】
前記タンクの第一の高さレベルで前記タンクの熱移動の方向に向けてかつ水平方向と鉛直方向との間の中間の角度で延びる協働するタンクおよびホールド支持面と、前記タンクの第二の高さレベルで前記タンクの熱移動の方向に向けてかつ水平方向と鉛直方向との中間の角度で延びる協働するタンクおよびホールド支持面とを備えてなる、請求項1乃至8のうちのいずれかに記載の支持構造体。
【請求項10】
おおむね鉛直方向の軸を中心とする前記タンクの回転運動を抑制するための手段を備えてなる、請求項1乃至9のうちのいずれかに記載の支持構造体。
【請求項11】
前記回転運動を抑制するための手段が、前記タンク上に設けられた当接面と協働するように構成されているとともに前記ホールド上に設けられている当接面を含んでなる、請求項10に記載の支持構造体。
【請求項12】
前記ホールドの前記当接面および前記タンクの前記当接面がおおむね鉛直方向の面に含まれてなる、請求項11に記載の支持構造体。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれかに記載の前記支持構造体に用いられる、ホールド内の角柱形状または直立した円筒形状のタンクを支持すべく用いられる支持装置であって、前記タンク支持面と前記ホールド支持面とを備えてなる、支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−519480(P2010−519480A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550761(P2009−550761)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000643
【国際公開番号】WO2008/104758
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(509239532)
【Fターム(参考)】