説明

支柱及び支柱を有する構造

本発明は、開孔内に着脱可能に固定できるよう構成し、また所定の第1断面積を有する支柱(12)に関する。支柱は、傾斜面(20)を有する端部部分(14)および楔(22)を備え、楔(22)は端部部分の傾斜面に対向配置した相補的な傾斜面を有する。楔(22)は、端部部分(14)で摺動可能にし、楔及び前記端部部分により画定される第2断面積を調整可能に構成する。楔の傾斜面は、端部部分(14)の傾斜面(20)に対して摺動可能とし、第2断面積を第1断面積に対して増大させ、これにより、端部部分(14)をより緊密に開孔に固定する。支柱は、さらに、楔に連結して、端部部分の傾斜面に対して楔傾斜面を摺動させ、第2断面積を第1断面積に対して増大させ、端部部分をより緊密に開孔に固定させる機構を備えることができる。この機構は、楔に係合可能なねじ山付き部分を有する引張りバーとし、引張りバーの回転によって楔が摺動させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に関し、また特に限定するものではないが、個別の支柱、または塀、柵もしくはこれらに類似する構造的特徴であって、支柱を開孔に配置および固定する構造的特徴の一部を形成する支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設に用いる支柱及び柵を固定するための手段として、楔構造を持ったソケットが知られており、この楔構造は、配置する支柱の外表面の局部的なポイントに押し付け、支柱を適切な位置に固定する。しかし、例えば特許文献1(米国特許第4059934号)では、支柱を配置する開孔は、その開孔に支柱を固定するための手段を備える必要がある。支柱を固定することに関連する機構は、使用時においていずれも邪魔および/または目障りであり、塵埃等による汚染を受けやすく、見映えが良くない。今日では、建設に用いる支柱及び柵には、実用的であるだけではなく、美的外観も求められている。
【0003】
また、特許文献2(特開平4−113011)では、ソケット内でソケットおよび中空支柱の側面相互を強制的に引き離すよう構成した楔を開示しており、この場合、ソケットの局部的区域における力を加えるポイントで支柱の直径を増大させ、支柱がソケット内でジャム(噛み付き)を生ずるようにする。直径の拡大は、支柱の極端部のみに生じるため、このシステムは、留めねじによる二次的な固定が必要とし、これにより支柱に対して剛性を与えるようにする。この構成の細部には、支柱に対して内側からのアクセスを必要とし、また着脱可能な細部構成への適用には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4059934号明細書
【特許文献2】特開平4−113011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものである。この発明は、支柱を開孔内に固定するのに従来使用されてきた既知の装置の問題を解決しようとする努力の賜物である。本発明の他の目的は、以下の記載によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、開孔内に着脱可能に固定できるよう構成し、また所定の第1断面積を有する支柱を提供し、傾斜面を持った端部部分と、該端部部分の傾斜面に対向配置した相補的な(補完し合う)傾斜面を持った楔部であって、前記端部部分で摺動可能にし、当該楔及び前記端部部分により画定される第2断面積を調整可能に構成した、該楔とを備え、前記楔の傾斜面が、前記端部部分の傾斜面に対して摺動可能とし、前記第2断面積を前記第1断面積に対して増大させ、これにより、該端部部分をより緊密に開孔に固定する。
【0007】
前記開孔は、ソケット、窪みの形式とする、または2個の固定した物体間の空間によって画定されるものとすることができる。実際には、この開孔の寸法は、支柱の寸法に密に適合するが、支柱を挿入した後であって開孔に固定する前に、わずかに動かすことができる程度とする。
【0008】
使用にあたり、支柱をソケットに挿入するのは、楔及び端部部分によって画定される第2断面積が、支柱の断面積よりも小さい、または等しいときである。結果として端部部分の形状が縮小し、使用者が、より容易にこの支柱の端部部分を開孔に挿入することができることになる。その後、楔を、端部部分の傾斜面に沿って摺動させ、楔が支柱の表面を越えて突出することにより、ソケット内の楔が効果的に拡張し、これにより、第2断面積が、第1断面積に対して増大する。楔を横方向外方に強制的に押圧することにより、支柱からあらゆる振動および遊びを排除し、組立体に対して良好なソリッド(一体)感を付与することができる。
【0009】
実際には、支柱は、さらに、前記楔に連結して、前記端部部分の傾斜面に対して該楔の傾斜面を摺動させ、前記第2断面積を前記第1断面積に対して増大させ、該端部部分をより緊密に前記開孔に固定させるための機構を備えることができる。この機構は、引張りバーの形式とすることができ、またこの引張りバーは、前記楔に係合可能なねじ山付き部分を有するものとすることができる。この引張りバーを回転させることにより、楔が摺動する。楔の位置は、代案として、自転車のクイックリリースハブ(quick-release hub)に使用される機構と同様の原理を用いたカンチレバー機構を介して制御することができる。この引張りバーは、前記端部部分から離れた当該支柱の末端部まで延びて存在(延在)させる、または支柱の側面に位置する調整ポイントを介して操作することができるようにし、機構の調整は、ウォームギヤまたは同様の構成によって実施することができる。
【0010】
楔の位置を調整するとき、楔の外表面または接触面は、支柱の長手方向軸線とほぼ平行な関係を維持することができる。接触面の平行な移動により、楔の接触面の全長にわたり、ソケットの内表面に力が加わることになる。このようにすることで、ソケットまたは安全でなく固定された支柱に損傷を与える結果となり得る、局部的な点集中応力(point-force)が、ソケットに加わるのを防止することができる。
【0011】
支柱は、正方形、円形、長方形、六角形または多角形の断面形状とすることができる。
【0012】
支柱は、柵、シート構体、標識、家具または塀(フェンス)のうち一つにおける一体部分を構成することができる。支柱は、より一般的には、このような構体のリムを形成することができ、支柱またはリムの端部部分の傾斜面上に配置した楔の適用は、単一の支柱に限定することなく、支柱またはリムをソケットまたはその他の開孔に挿入および固定すべき、任意の数の構体に使用することができる。本発明における支柱は、構体の下方部分のみを構成し、この下方部分に対して任意の形式の支柱、柵またはリムを取り付けることができる。
【0013】
本発明は、また、上記の支柱を少なくとも2個備え、これら支柱間に柵を形成するよう延在する少なくとも1個の交差部材を有する柵を提供する。支柱またはリムは、シート構体、展示標識、柵(フェンス)用途、またはソケットまたは開孔内に一体に固定すべき任意なこのような対象物に適用することができる。
【0014】
本発明の理解をより容易にするため、以下に例示としての図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】それぞれ楔を設けた端部部分を有する2本の支柱を具える、本発明による柵の斜視図である。
【図2】楔が図1の端部部分の第1位置にある状態を示す、当該端部部分の斜視図である。
【図3】楔が図1の端部分の第2位置にある状態を示す、当該端部部分の斜視図である。
【図4】図2に示す端部部分の断面図である。
【図5】図3に示す端部部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1につき説明すると、柵10は、2個の支柱12を具え、各支柱12は、端部部分14及び末端部16を有する。交差バー18を支柱12間に延在させ、柵10の構体を形成する。各端部部分14は、傾斜面20および楔22を具え、楔22は、該端部部分14の傾斜面20に対向配置する相補的な傾斜面24を具える。各支柱12の端部部分は、使用時、対応するソケットまたは他の開孔(図示せず)に挿入し、これにより該端部分14をその内部に配置する。
【0017】
柵10は、正方形断面の軟鋼の管から製造することができ、また、この柵は、任意の形状にする、またはその用途に応じて任意の数の交差ピースを具えることができる。柵は、単一の支柱12、1対の支柱(図1参照)または任意な複数個の支柱12により構成することができる。少なくとも1個の支柱12は、傾斜面20及びこれに対向配置する楔22の部分を備える。
【0018】
第1位置では、図2に示すように、支柱12の端部部分は、該端部部分14の傾斜面20に対向配置した楔22を具える。第1位置では、楔の接触(外表)面26が、支柱12の接触面に対して同一平面となるよう位置決めされ、楔及び端部部分を横切る断面積が、支柱12の主本体の断面積と等しい。
【0019】
第2位置では、図3に示すように、楔22が、支柱12の末端部16に向かって、端部部分14の傾斜面20に沿って移動しており、これにより楔の接触面26が支柱12の表面を越えて突出する。第2位置では、端部部分14に対向配置した楔22によって画定される断面積は、支柱12の断面積よりも大きくなる。第2位置では、楔の接触面が、開孔(通常は、ソケット)の内面に強制的に押し付けられ、これによって、支柱12を所定位置に固定する。
【0020】
図4は、楔22が、第1位置にあるときの、支柱12の端部部分における断面図である。楔は、楔フレーム28を有し、該楔フレームは調整ナット30に連結し、この調整ナット30は引張りバー32の形式とした機構に螺合し、引張りバーは、調整ナット30に貫通する。
【0021】
引張りバー32は、支柱12内の中心に配置するが、横方向にも移動可能にし、また、楔22を引っ張り上げるとき、わずかに曲がることができる。ストップナット38を、引張りバー32の端部に設け、調整ナット30が引張りバー30から外れるのを防止し、また、ストップナット34を設け、引張りバー32は、楔を押し下げて機構を解除することができる。
【0022】
楔フレーム28は、調整ナット30に連結し、これにより、使用にあたり、引張りバー32を回転が調整ナットを移動させ、これにより、端部部分14の傾斜面20に沿って楔22を移動させることになる。楔が、端部部分の傾斜面に沿って移動するとき、接触面26は、引張りバー32に対するほぼ平行な関係を維持する。
【0023】
使用にあたり、端部部分14は、開孔(図示せず)内に挿入、および配置する。使用者は、その後、引張りバー32を回転して、調整ナット30を交差ピース36に向けて引き上げることができる。交差ピースの孔は、引張りバーが横方向に動いて、楔22を移動して、第2断面積に向かって増大できるように、溝孔状または過大寸法にする。楔フレーム28は、調整ナット30に連結する。代案として、楔フレーム28は、楔フレーム28及び楔22が、引張りバー32に対して横方向に移動できるように、調整ナット30に連結する。
【0024】
引張りバーを数回転させた後、調整ナット30は、楔22が、図2に対応し、図5の断面図に示す第2位置に達するまで、交差ピース36に向かって移動する。楔22が端部部分の傾斜面20に沿って移動するとき、調整ナット30での楔フレーム28の横方向調整により、楔22の接触面26を、引張りバー32または支柱12の中心軸線に対して平行に保つことができる。第2位置では、楔の接触面26の横方向移動が、調整ナット30及び楔フレーム28を介して、該端部部分14を配置した開孔における側面に対して横方向力を加える。結果として、端部部分14は、この開孔(図示せず)内に固定される。
【0025】
図には示していないが、引張りバー32は、支柱12の末端部16まで延びて存在し(延在し)ており、この末端部には、使用者が引張りバー32を回転させるためのインタフェースを設ける。このインタフェースは、手動のユーザー・インタフェース、例えば蝶ナットを備える、または代案として、工具が係合するのに適するインタフェースを備えることができる。例えば、インタフェースは、ソケット、スパナまたはアーレンキーとのインタフェースをなす六角ヘッドを備えることができる。
【0026】
単独、1対、または複数個を用いて使用する際、本発明の端部部分により、支柱、レールまたは基台等の、迅速かつ簡単な装着および取外しを可能にする。引張りバーを介して、端部部分の傾斜面に対して楔を引っ張り上げることにより、安価かつ簡単なソケット内での、強固な固定を得ることができる。本発明に必要とされるソケットは、簡単であり、コンクリート内での型成形またはスチールで形成することができ、また任意な他の構体にもボルト結合または溶接結合することができる。
【0027】
支柱が柵の一部を構成する用途においては、正方形断面の支柱及びこれに対応する正方形のソケットを使用すべきである。支柱の回転調整が必要な場合、円形の支柱を、対応する円形ソケットに使用して、ソケット内での角度調節を可能にする。図には、支柱が正方形断面形状の輪郭を示すが、支柱及びこれに対応する開孔の形状は、長方形、六角形、多角形または任意な他の形状にし、所要に応じて、開孔内での支柱の整列を制御する、または支柱の向きを選択することができる。
【0028】
本発明の支柱は、ソケットまたはその他の開孔に固定することに限定するものではなく、隣接する2個の物体によって画定される、固定平面間にも使用することもできる。
【0029】
本発明の支柱は、特に、正方形断面の支柱を円形開孔内に固定するときに有利である。固定した位置で、支柱の4個のコーナーが開孔に係合し、これにより、支柱に対してほぼ直交する方向に自由な動きまたは遊びがほとんどないようになる。支柱が1個以上の支柱を持つ構体の一部をなし、またこの構体を1個以上の開孔内に配置する場合、好ましくは、少なくとも1個の支柱は正方形断面とし、また対応する正方形の開孔に固定すると好適であり、なぜなら、このような構成によれば、支柱にほぼ直交する少なくとも1つの方向に、移動または遊びを生じ、これにより、設置した構体の位置に対して微調整をすることができるからである。
【0030】
開孔の内面に対して接触面の力を加えることの他に、接触面および/または端部部分にリップ、ピンまたは返しを形成して、厳しい安全性を要する用途における支柱の抜けを抑止し、これにより、不慮の抜けを防止することができる。
【0031】
支柱は、任意の適切な材料で製造することができるが、コスト削減のためには、レーザ加工した軟鋼によって形成することが好ましい。
【0032】
上述の用途は、柵を使用した例で説明したが、調整可能な端部部分またはリムを有する本発明の支柱は、シート構体、展示看板、フェンス用途にも適用することができる。
【0033】
本発明の支柱は、床、壁及び天井への装着に適用することができ、また室内外、建物、船、飛行機、または自動車もしくは車両トレーラにも適用可能である。
【0034】
本発明の支柱によれば、邪魔で目障りな固定具を必要とせず、構体または建築付帯物に着脱可能部分を設けることができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔内に着脱可能に固定できるよう構成し、また所定の第1断面積を有する支柱において、
傾斜面を持った端部部分と、
該端部部分の傾斜面に対向配置する相補的な傾斜面を持った楔であって、前記端部部分で摺動可能にし、当該楔及び前記端部部分により画定される第2断面積を調整可能に構成した、該楔と
を備え、
前記楔の傾斜面が、前記端部部分の傾斜面に対して摺動可能とし、前記第2断面積を前記第1断面積に対して増大させ、これにより、該端部部分をより緊密に開孔に固定する、支柱。
【請求項2】
請求項1に記載の支柱において、さらに、前記楔に連結して、前記端部部分の傾斜面に対して前記楔の傾斜面を摺動させ、前記第2断面積を前記第1断面積に対して増大させ、該端部部分をより緊密に前記開孔に固定させるための機構を備えた、支柱。
【請求項3】
請求項2に記載の支柱において、前記機構は、前記楔に係合可能なねじ山付き部分を有する引張りバーとし、該引張りバーの回転によって前記楔を摺動させる構成とした、支柱。
【請求項4】
請求項3に記載の支柱において、前記引張りバーを、前記端部部分から離れた前記支柱の末端部まで延在させた、支柱。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の支柱において、前記楔の外表面を、前記支柱の長手方向軸線に対してほぼ平行な状態を維持する構成とした、支柱。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の支柱において、前記支柱の断面輪郭を円形とした、支柱。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の支柱において、断面輪郭を正方形とした、支柱。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の支柱において、前記支柱は、柵、シート構体、標識、家具または塀のうち一つにおける一体部分とした、支柱。
【請求項9】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の支柱を少なくとも2個備え、これら支柱間に柵を形成するよう延在する少なくとも1個の交差部材を有する柵。
【請求項10】
概ね、本明細書に記載したように、また添付図面に示したように構成および配置した支柱または柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−538229(P2010−538229A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523586(P2010−523586)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003009
【国際公開番号】WO2009/030920
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509338606)スチールデック インダストリーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】