説明

改善された性質を持つプロピレンポリマー樹脂

【課題】ファイバー、不織布、フィルム及びシートに好適に使用可能な、結合性、延伸性および熱成形性を改善されたプロピレンポリマー樹脂の提供。
【解決手段】少なくとも一つのスラリー反応器を含む第一反応領域において触媒の存在下にプロピレンを重合して第一重合生成物を与え、少なくとも一つの気相反応器を含む第二反応領域に該第一生成物を移送し、そして該第一重合生成物の存在下に気相においてプロピレンの重合を継続することを含む多段階重合法においてポリプロピレンポリマーを製造する方法に関し、スラリー反応器及び気相反応器の両者における温度が少なくとも75℃であり、かつ少なくとも一つの反応器の生成物が、0.05〜0.5重量%の範囲のエチレン含有量を有しているプロピレンポリマー樹脂を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された結合性、改善された延伸性及び改善された熱成形性を持つプロピレンポリマー樹脂、並びにそのような樹脂の製造法に関する。更に、本発明は、そのような樹脂を含むファイバー及びそのようなファイバーを含む不織布、そのような樹脂を含むフィルム、とりわけ二軸延伸フィルム、並びにそのような樹脂を含む、とりわけ熱成形用のシートに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、ウェブを形成するファイバーにより製造されるところの多孔性シートである。ポリプロピレンファイバーからの不織布の製造において、通常第一段階において、更なる成分、例えば、酸化防止剤又は酸素捕捉剤を含むポリプロピレンポリマー組成物が、200℃を超える温度で溶融押出しされる。ファイバーは次いで、紡糸口金に溶融物を通し、冷却し、そして製造されたファイバーを巻き取ることにより紡糸される。任意的に、冷却後、一つ以上の延伸段階が該ファイバーに適用される。そのような紡糸法は今日、1000m/分〜4000 m/分のオーダーの高速度で実行されるが、更に、ライン速度及び出力の増加が経済的理由のために所望される。
【0003】
不織布は次いで、ウェブを成形し、通常、次いで、ファイバーが一緒に結合されてウェブの強度を増加するところの最終結合段階に付すことにより、ファラメント又はステープルファイバーのいずれかの形態におけるポリプロピレンファイバーから製造される。この結合段階は通常、カレンダーにウェブを通すことにより、ウェブに熱及び圧力を与えることにより実行される。ステープルファイバーが使用されるとき、ウェブ成形は通常、カーディング段階を含む。
【0004】
ファイバー表面に作用する結合プロセスは、非常に短時間及び温度窓(temperature window)内で生じる。従って、熱結合された不織布の製造において、結合段階は最大ライン速度を制限している。従って、例えば、最大ライン速度に関して結合段階の改善をもたらすところのファイバーの結合性の改善が所望される。
【0005】
更に、不織布の機械的性質はまたファイバーの結合性に依存し、そして従って、ファイバーのより良好な結合性が、不織布の改善された機械的性質、とりわけ機械的強度をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、改善された結合性を持つポリプロピレンファイバーの製造のためのプロピレンポリマーを提供することが本発明の目的である。
【0007】
プロピレンポリマーの分子量分布を広げることにより、そのようなポリマーを含むファイバーの結合性の小さな改善が得られ得ることが知られている。更に、ファイバー製造のために使用されるポリマーのより高い結晶化度は結合性に負の効果を与えることが知られている。
【0008】
米国特許第5,281,378号明細書は、ポリマーの最適化された分子量分布及びファイバー紡糸の間の遅らされた冷却の組み合わせによる、ファイバーの結合性における改善を開示している。
【0009】
フィルムの製造において、ポリプロピレン樹脂の使用は周知である。その適用性のために重大なところのフィルムの機械的及び光学的性質は主として、フィルム製造のために使用される樹脂の性質により決定される。特に、フィルムが、例えば、キャスティングによるその製造後、二軸延伸されるなら、とりわけ、フィルムが良好な延伸挙動を示すことが所望される。
【0010】
それ故、改善された機械的性質、特に、改善された延伸性を持つポリプロピレンフィルムの製造のためのプロピレンポリマーを提供することが本発明の更なる目的である。
【0011】
熱成形法による物品の製造のためにポリプロピレン樹脂を含むシートを使用することが更に知られている。これらの方法において、シートの熱成形性は主として、シート製造のために使用される樹脂により決定される。
【0012】
改善された熱成形性を持つポリプロピレンシートの製造のためのプロピレンポリマーを提供することが、本発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の目的を達成するプロピレンポリマーが、プロピレンの重合が高められた温度でかつ少量のエチレンの存在下に実行されるところの方法により得られ得ることを見出したことに基づく。
【0014】
それ故、本発明は、少なくとも一つのスラリー反応器を含む第一反応領域において触媒の存在下にプロピレンを重合して第一重合生成物を与え、少なくとも一つの気相反応器を含む第二反応領域に該第一生成物を移送し、そして該第一重合生成物の存在下に気相においてプロピレンの重合を継続することを含む多段階重合法においてポリプロピレンポリマーを製造する方法を提供し、スラリー反応器及び気相反応器の両者における温度が少なくとも75℃であり、かつ少なくとも一つの反応器の生成物が、0.05〜0.5重量%の範囲のエチレン含有量を有していることを特徴とする。
【0015】
好ましい実施態様において、スラリー反応器及び気相反応器の間に温度差があり、例えば、気相反応器における温度がスラリー反応器における温度より高い。
【0016】
好ましくは、気相反応器における温度は、スラリー反応器における温度より少なくとも3℃高く、かつより好ましくは少なくとも5℃高い。
【0017】
好ましくは、スラリー反応器及び気相反応器の両方の温度は少なくとも80℃である。
【0018】
とりわけ好ましい態様において、スラリー反応器の温度は約80℃であり、かつ気相反応器の温度は約85℃である。
【0019】
更に、本発明は、0.05〜0.5重量%の量のエチレンコモノマーを含み、3.0重量%以下のキシレン可溶分(XS)含有量を有しており、かつ120℃以下において温度上昇溶出分別(TREF)関数における最大値を有することを特徴とするプロピレンポリマーを提供する。
【0020】
ポリマーの「TREF関数」は、実施例欄において与えられているような手順に従って溶出温度の連続関数としてプロットされた、ポリマーの溶出された重量フラクションを示す。
【0021】
本発明の方法及び本発明のポリマーは、改善された結合性を有するポリプロピレンファイバーの製造を可能にし、従って、そのようなファイバーを含む不織布は、より高い結合速度及び/又は改善された機械的性質、とりわけ機械的強度を伴って製造され得る。本発明はまたこれらのファイバーに関する。
【0022】
本発明の方法及び本発明のポリマーは、改善された機械的性質、特に、改善された延伸性を有するポリプロピレンフィルムの製造を可能にし、従って、例えば、改善された性質を持つ二軸延伸フィルムが製造され得る。本発明はまたこれらのフィルムに関する。
【0023】
更に、本発明の方法及び本発明のポリマーは、改善された熱成形性を有するポリプロピレンシートの製造を可能にし、従って、熱成形による物品の製造が改善される。本発明はまた、これらのシートに関する。
【0024】
更に、本発明は、本発明のファイバーを含むウェブを成形し、そして該ウェブを結合することを含むことを特徴とする不織布の製造法に関し、並びに本発明のファイバーを含む不織布に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
そのようなウェブそしてそれ故不織布は、ステープルファイバー、即ち、製造後に裁断されたファイバー、又はフィラメント、例えば、連続フィラメントのいずれかにより製造され得る。本明細書において使用される術語「ファイバー」は、ステープルファイバー及びフィラメントの両者をカバーすることを意図されている。
【0026】
不織布が基礎とされるところの繊維状ウェブにおけるファイバーの結合は、該ウェブに強度を与え、かつ通常その性質に影響を与える。そのような繊維状ウェブを結合する一つの広く使用されている方法は、熱による方法である。不織布の製造法は、種々の刊行物、例えば、「The Nonwovens Handbook」(The Association of the Nonwoven Industry, 1988年)及び「Encyclopaedia of Polymer Science and Engineering」、第10巻、Nonwoven fabrics(John Wiley and Sons, 1987年)に開示されている。
【0027】
ポリプロピレンの性質は、結晶化度及びラメラ寸法分布の度合に依存する。高収率のZiegler-Natta触媒は、広い立体規則性分布をもたらす低モル質量鎖及びキシレン可溶分の増加された量をまたもたらすポリプロピレンの分子間不均一性に立体欠陥を集中する傾向を有することが知られている(L.Paukkeriら、Polymer、1993年、第34号、第2488〜2494頁)。
【0028】
物質の見地から見れば、立体欠陥の分布は、全体のイソタクチック性より重要なパラメーターである。良好な(不規則な)欠陥分布は、より更なる(より狭い)イソタクチック配列長分布及びより少ない量のキシレン可溶分を意味する。
【0029】
重合条件(とりわけ温度)を変えることにより、イソタクチック及びアタクチック配列の相対量及び平均長を、ある程度まで制御することができる。立体欠陥の不規則分布は、そのような立体欠陥がイソタクチック状ブロックに分離されるところの場合に比較して、より短い平均長の完全にイソタクチックな配列に対応する。
【0030】
イソタクチック配列の平均長はまた、ポリマー鎖中の立体欠陥として挙動するコモノマー単位の制御された導入により影響を及ぼされ得る。
【0031】
イソタクチック性分布の測定のために、TREF法が適用され得る。TREFは、ポリオレフィンの溶解性の相違に従ってポリオレフィンを分別するためのありふれた方法である。ポリプロピレンポリマー鎖の溶解性は、立体欠陥の濃度によりのみ影響を受ける。TREFフラクトグラムがイソタクチック性の分布を定性的に反映することは、ポリプロピレンについて実証されている。イソタクチック鎖の平均長は、溶出温度を増加することに伴って殆ど直線的に増加する(P. Villeら、Polymer 2001年、第42号、第1953〜1967頁)。結果は更に、TREFが、鎖中の最も長い結晶化し得る配列に従うこと以外、立体規則性に従ってポリプロピレンを厳密には分別しないことを示した。
【0032】
本発明によれば、本発明の方法は、本発明のポリプロピレンポリマーにおける一様なエチレンコモノマー分布を提供することが見出された。これらのエチレンコモノマーは、立体欠陥として挙動し、そして従って、イソタクチックプロピレンモノマーの配列を中断する。従って、エチレンコモノマーの一様な分布により、立体欠陥の一様な分布が得られ、即ち、欠陥分布、そして従って、ポリプロピレンのイソタクチック性分布を調整することが本発明の方法により可能である。
【0033】
それ故、イソタクチックプロピレンモノマーのより狭い配列長分布が得られる。従って、一方において、短いイソタクチックプロピレン配列長を持つポリマー鎖を支配的に含むところのキシレン可溶分のより少ない量、及び他方において、長いイソタクチックプロピレン配列長を持つポリマー鎖のより少ない量が得られる。これは、一方、例えば、ポリマーの一様な融点及び調整されたイソタクチック性の故に、そのようなプロピレンポリマーを含むファイバーの結合性の改善をもたらす。
【0034】
ファイバーの結合性は、N/5cmとして見積もられた、機械方向(MD)と交差方向(CD)における結合力の積の平方根として定義されるところの製造された不織布に結合指数(BI)の測定により測定される。
【数1】

【0035】
機械方向における強度(ウェブ/不織布の動きに平行)がしばしば、交差方向の強度と異なる故に、結合指数はこれらの両者の関数である。最適例において、MD強度とCD強度との間の比はほぼ1である。
【0036】
更に、結合窓は、15%以下だけ、最適結合温度において得られた最大結合指数BImaxと相違するところの不織布における結合指数が得られるところの温度間隔を規定される。例えば、衛生吸収剤製品における使用のための典型的な良好な品質の不織布の場合に、これは、BImaxに比較して約3N/5cmの結合指数の相違に対応する。
【0037】
カレンダー表面における温度変化を伴うカレンダーシステムを使用するとき、又はより高い結合速度若しくはより低い結合温度を使用するときでさえ、広い結合窓は、均一な生成物を得ることのより良好な可能性を不織布の製造者に与える。これは、不織布製造者のためにかなり有利である。
【0038】
「スラリー反応器」は、任意の反応器、例えば、ポリマーが粒子形状を形成するところの、超臨界状態を含む、バルク又はスラリーで操作する、連続若しくは単純なバッチ攪拌槽反応器又はループ反応器を示す。
【0039】
本発明の方法は、プロピレンポリマーの製造のための多段階法である。そのような方法は、例えば、欧州特許第0887379号公報に開示されている。この文献の内容は引用することにより本明細書に含まれる。
【0040】
触媒として、プロピレンの重合のために適する化学化合物の全ての種類、例えば、Ziegler-Natta、及びシングルサイト触媒、例えば、メタロセン触媒が使用され得る。もし、シングルサイト触媒が使用されるなら、国際特許出願公開第95/12622号及び国際特許出願公開第00/34341号に記載されている触媒が好ましい。
【0041】
好ましい実施態様において、触媒成分、助触媒成分及び外部電子供与体を含むZiegler-Natta型触媒系が使用される。そのような触媒系は、例えば、米国特許第5,234,879号明細書、国際特許出願公開第92/19653号、国際特許出願公開第92/19658号及び国際特許出願公開第99/33843号に開示されている。
【0042】
使用される外部供与体は好ましくは、シランに基づいた供与体、特に、ジシクロペンチルジメトキシシラン(供与体D)である。
【0043】
任意的に、主要な重合段階は、前重合によりまず行われることができ、そこで、最大10重量%、好ましくは0.1〜10重量%、そして最も好ましくは0.5〜5重量%の合計量のポリマーが製造される。
【0044】
本発明の方法の好ましい実施態様において、スラリー反応器で製造された生成物及び気相反応器で製造された生成物の両者が、0.05〜0.5重量%の範囲のエチレン含有量を有している。
【0045】
更に好ましくは、少なくとも一つの反応器において製造される生成物のエチレン含有量は、0.15〜0.4重量%の範囲であり、かつ最も好ましくは約0.3重量%である。これらの好ましい及び最も好ましい値はまた、スラリー反応器及び気相反応器の両者においてエチレンを含む生成物が製造されるところの好ましい方法の実施態様において、両者の生成物のエチレン含有量のために適用される。
【0046】
更に好ましくは、本発明の方法において、スラリー反応器はバルク反応器である。「バルク」は、少なくとも60重量%のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。
【0047】
好ましくは、バルク反応器はループ反応器である。
【0048】
好ましくは、本発明の方法において、スラリー反応器と気相反応器との間の生産比は、70:30〜40:60、好ましくは60:40〜50:50である。
【0049】
両者の反応器における反応温度は、100℃以下、より好ましくは95℃以下であることが更に好ましい。
【0050】
本発明のプロピレンポリマーは好ましくは、上記の好ましい実施態様を含む方法において製造される。
【0051】
上記において概説したように、本発明は、0.05〜0.5重量%の量のエチレンコモノマーを含み、3.0重量%以下のキシレン可溶分(XS)含有量を有しており、かつ120℃以下において温度上昇溶出分別(TREF)関数における最大値を有することを特徴とするプロピレンポリマーを提供する。
【0052】
術語「キシレン可溶分」(XS)は、実施例欄において概説されているような手順において測定される、キシレンに可溶のポリマーのフラクションを示す。
【0053】
好ましい実施態様において、本発明のプロピレンポリマーは、キシレン可溶分含有量が2.5重量%以下であることを特徴とする。
【0054】
プロピレンポリマーが、118℃以下において温度上昇溶出分別(TREF)関数における最大値を有することが更に好ましく、かつ115℃以下において更により好ましい。
【0055】
更に好ましくは、本発明のプロピレンポリマーは、0.15〜0.4重量%の量、更により好ましくは約0.3重量%の量でエチレンコモノマーを含む。
【0056】
好ましくは、本発明のプロピレンコポリマーは、ISO 1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定された、1〜50g/10分、より好ましくは5〜20 g/10分かつ最も好ましくは10〜16 g/10分のメルトフローレートMFR2を有する。
【0057】
ポリマー物質の分子量分布(MWD)は、好ましくは2〜7、より好ましくは4〜6の範囲である。
【0058】
本発明の方法に従って得られるプロピレンポリマーは通常、高度のイソタクチック性を有する。
【0059】
好ましくは、本発明のプロピレンポリマーを含むファイバーは、不織布において20以上、より好ましくは21.5以上かつ最も好ましくは23以上の結合指数を有する。
【0060】
更に好ましくは、該ポリマーは、40〜60%、より好ましくは48〜60%かつ最も好ましくは50〜57%の結晶化度を有する。結晶化度は、2のISO 11357-03に従って測定され、かつ科学的背景は、A. P. Grey著、Thermal Chimica Acta 1970年、第1号、第563頁に与えられている。
【0061】
本発明のファイバーを含む不織布の製造において、結合法は好ましくは、少なくとも150m/分、より好ましくは少なくとも200 m/分かつ最も好ましくは少なくとも250 m/分の速度において実行される。
【0062】
結合は好ましくは、熱結合、例えば、カレンダー結合又は熱空気結合、赤外結合又は超音波結合により実行される。更に好ましくは、結合は、好ましくはカレンダーでの熱結合により実行される。
【0063】
下記において、本発明の方法及びコポリマーの好ましい実施態様が、添付図面を参照して実施例により説明される。
【0064】
(実施例)
1)測定法
a)TREF法:
ポリプロピレン試料の分別は、分析TREFを使用することにより実行された。TREFプロフィールは、公表されたデザイン(Wild, L.,Trends Polym Sci. 1993年、第1号、第50頁)と同様な手製の装置を使用して生成された。
【0065】
該試料は、130℃でキシレン(2〜4ミリグラム/ミリリットル)に溶解され、そして130℃でカラムに注入され、そして次いで後者は、1.5K/時間の速度で20℃まで冷却された。カラムは次いで、0.5ミリリットル/分の流速で1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)により溶出されると共に、温度が4.5時間に亘って20℃から130℃まで上昇された。3.41μmの波長において操作される赤外検出器で検出された出力は、不変領域に対して標準化されたフラクトグラムとして与えられた。
【0066】
b)キシレン可溶分(XS):
キシレン可溶分フラクションの測定のために、2.0グラムのポリマーが、攪拌下に135℃で250ミリリットルのp-キシレンに溶解される。30±2分後、該溶液は、環境温度で15分間放冷され、そして次いで、25±0.5℃で30分間静置することを許される。該溶液は、二つの100ミリリットルフラスコ中に濾紙を用いて濾過される。
【0067】
第一の100ミリリットル容器からの溶液は、窒素流中で蒸発され、そして残渣は、一定重量が達成されるまで90℃で減圧下に乾燥される。キシレン可溶分フラクションは下記式を使用して計算される。
【0068】
【数2】

ここで、m0=初期のポリマー量(グラム)、m1=残渣の重量(グラム)、V0=初期の体積(ミリリットル)、V1=分析された試料の体積(ミリリットル)である。
【0069】
c)Mw/Mn
Mw/Mnは、130℃においてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定された。溶出液として、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)が使用された。
【0070】
d)メルトフローレート(MFR)
MFR2は、230℃及び2.16kgの荷重でISO 1133に従って測定された。
【0071】
e)熱的性質
溶融温度Tm、結晶化温度Tcr、及び結晶化度は、3±0.5ミリグラムの試料に基づいて、Mettler TA820示差走査熱量測定装置(DSC)により測定された。結晶化及び溶融曲線の両者が、30〜225℃の間の10℃/分の冷却及び加熱走査の間に得られた。
【0072】
溶融及び結晶化温度は、吸熱及び発熱のピークとして取られた。結晶化度は、完全結晶ポリプロピレンの溶融熱、即ち、209J/グラムに比較して計算された。
【0073】
2)プロピレンポリマー製造
(実施例1):本発明
連続多段階法が、プロピレン(コ)ポリマーを製造するために使用された。該方法は前重合段階を含み、第一重合段階はループ反応器において実行し、そして第二重合段階は流動床気相反応器において実行した。
【0074】
触媒として、135℃のチタン化温度において米国特許第5,234,879号明細書に従って製造された、高活性の、立体特異的にエステル交換されたMgCl2担持されたZiegler-Natta触媒が使用された。該触媒は、助触媒(トリエチルアルミニウム、TEAL)及びジシクロペンチルジメトキシシランであったところの外部供与体と接触されて、触媒系をもたらした。助触媒および外部供与体は、200のAl/Ti比及び10のAl/D比を持つ。
【0075】
触媒系及びプロピレンは、30℃で操作されたところの前重合反応器に供給された。前重合された触媒は、続く重合反応器において使用された。
【0076】
プロピレン、エチレン及び水素並びに前重合された触媒が、55バールの圧力において80℃でバルク反応器として操作されたところのループ反応器に供給された。
【0077】
次いで、ポリマースラリー流は、85℃及び20バールの圧力で操作されたところの気相反応器にループ反応器から供給された。より多くのプロピレン、エチレン及び水素が、気相反応器に供給されて、最終ポリマーの所望の性質を制御した。
【0078】
ループ反応器と気相反応器との間の生産比は60:40であった。
【0079】
該ポリマーは溶融均一化され、かつ標準として1300ppmの酸化防止剤及びUV安定剤で添加剤を加えられた。
【0080】
(実施例2):比較例
プロセスがループ反応器及び気相反応器に代えて二つのループ反応器を含み、かつエチレンが該プロセスに供給されなかったことを除いて、実施例1と同一の製造手順が使用された。両者の反応器における操作温度は70℃であった。使用された触媒系は、外部供与体としてシクロヘキシルメチルジメトキシシランが使用されたことを除いて実施例1と同一であった。
【0081】
比較ポリマーの添加剤添加は実施例1と同一であった。
【0082】
3)紡糸法/ウェブ成形
2)に従って製造されたポリプロピレンポリマーが、ファイバー及び続く不織布製造のために使用された。
【0083】
ESLパイロット慣用紡糸ラインが使用されて、ステープルファイバーを製造した。紡糸温度は270〜285℃の範囲であった。紡糸の間に、プロピレンファイバーのMFR2は、熱分解の故に約40グラム/10分に増加した。
【0084】
ファイバーは2.2dTexの繊度を有していた。ファイバーは、約12crimps/cmのレベルに加工され、そして40mmのステープルファイバーに切断された。
【0085】
不織布は、600mmの幅を有する、Hergeth monolayer/Kusters calenderを使用して製造された。プロセスラインの巻取機速度は100m/分であった。製造されたウェブは、1m2当り20グラムの重量を有するウェブであった。
【0086】
4)結果
実行された実施例の結果は、ポリプロピレンポリマーのTREF分析の結果を示すところの図1〜4及び表2、並びにポリマー及び製造されたファイバー/不織布の更なる性質を示すところの表1に示されている。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明に従う最終ポリマー(GPR)(実施例1)及びループ反応器のみにおいて製造された最終ポリマーのTREFフラクトグラムを示す。
【図2】図2は、本発明の従うポリマー(実施例1)及び比較ポリマー(実施例2) のTREFフラクトグラムを示す。
【図3】図3は、図1に与えられた結果から計算された、本発明の従う最終ポリマー(GPR)(実施例1)及びループ反応器のみにおいて製造された最終ポリマーのTREF関数を示す。
【図4】図4は、図2に与えられた結果から計算された、本発明の従うポリマー(実施例1)及び比較ポリマー(実施例2) のTREF関数を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのスラリー反応器を含む第一反応領域において触媒の存在下にプロピレンを重合して第一重合生成物を与え、少なくとも一つの気相反応器を含む第二反応領域に該第一生成物を移送し、そして該第一重合生成物の存在下に気相においてプロピレンの重合を継続することを含む多段階重合法においてポリプロピレンポリマーを製造する方法において、スラリー反応器及び気相反応器の両者における温度が少なくとも75℃であり、かつ少なくとも一つの反応器の生成物が、0.05〜0.5重量%の範囲のエチレン含有量を有していることを特徴とする方法。
【請求項2】
気相反応器における温度が、スラリー反応器における温度より高いことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
気相反応器における温度が、スラリー反応器における温度より少なくとも3℃高く、より好ましくは少なくとも5℃高いことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
スラリー反応器及び気相反応器の両者における温度が、少なくとも80℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
スラリー反応器における温度が約80℃であり、かつ気相反応器における温度が約85℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
スラリー反応器及び気相反応器の生成物の両者が、0.05〜0.5重量%の範囲のエチレン含有量を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
反応器生成物のエチレン含有量が、0.15〜0.4重量%の範囲、より好ましくは約0.3重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
スラリー反応器がバルク反応器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
スラリー反応器と気相反応器との間の生産比が、70:30〜40:60、好ましくは60:40〜50:50であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法により得られ得ることを特徴とするプロピレンポリマー。
【請求項11】
0.05〜0.5重量%の量のエチレンコモノマーを含み、3.0重量%以下のキシレン可溶分含有量を有しており、かつ120℃以下において温度上昇溶出分別(TREF)関数における最大値を有することを特徴とするプロピレンポリマー。
【請求項12】
キシレン可溶分含有量が2.5重量%以下であることを特徴とする請求項11記載のプロピレンポリマー。
【請求項13】
118℃以下、より好ましくは115℃以下において温度上昇溶出分別(TREF)関数における最大値を有することを特徴とする請求項11又は12記載のプロピレンポリマー。
【請求項14】
0.15〜0.4重量%の量のエチレンコモノマーを含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つに記載のプロピレンポリマー。
【請求項15】
ファイバーの製造のために請求項10〜14のいずれか一つに記載のプロピレンポリマーを使用する方法。
【請求項16】
請求項10〜14のいずれか一つに記載のプロピレンコポリマーを含むことを特徴とするファイバー。
【請求項17】
請求項16記載のファイバーを含むウェブを形成し、そして該ウェブを結合することを含むことを特徴とする不織布の製造法。
【請求項18】
請求項16記載のファイバーを含む不織布。
【請求項19】
フィルムの製造のために請求項10〜14のいずれか一つに記載のプロピレンポリマーを使用する方法。
【請求項20】
フィルムが二軸延伸フィルムであるところの請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項10〜14のいずれか一つに記載のプロピレンコポリマーを含むことを特徴とするフィルム。
【請求項22】
二軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項21記載のフィルム。
【請求項23】
シートの製造のために請求項10〜14のいずれか一つに記載のプロピレンポリマーを使用する方法。
【請求項24】
シートが熱成形用であるところの請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項10〜14のいずれか一つに記載のプロピレンコポリマーを含むことを特徴とするシート。
【請求項26】
シートが熱成形用であることを特徴とする請求項25記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−274295(P2008−274295A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165925(P2008−165925)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【分割の表示】特願2003−509005(P2003−509005)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】