説明

改善された抗菌性能を有する表面消毒組成物

本発明は、アルコールベースの揮発性殺生剤と追加の低濃度の非揮発性抗菌剤の組合せから成る消毒組成物または調製物に関する。本発明の1つの実施形態においては、清浄薬調製物は、少なくとも(1)30%w/w以上乃至70%w/w以下の濃度で揮発性アルコールを含んで成る殺生剤と、(2)0.001%w/w以上乃至0.1%w/w以下の濃度で前記アルコール中で可溶性である1つもしくはそれ以上の非揮発性抗菌剤とから成る表面消毒組成物または調製物を含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールベースの揮発性殺生剤と追加の低濃度、非揮発性抗菌剤の組合せを含んで成る消毒組成物または調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールおよび他の殺生成分を含有する消毒剤は一般的に、細菌、真菌、およびウイルスなど病原性生物因子によるヒト皮膚などの表面の汚染と闘うために使用されている。最近、米国疾病対策予防センター(CDC)は、この問題を取り上げるモノグラフ(非特許文献1)を発行したが、本モノグラフは本明細書で参照によってその全体が組込まれている。CDCモノグラフでは、かかる消毒剤の使用がいかに発展し、かつ用法が増大したか記載されており、石鹸や水による簡単な洗浄では不十分でありうることが明らかとなった。
【0003】
すなわち、
「数代にわたって、石鹸と水で手を洗うことは個人衛生の手段とみなされている。生体消毒薬で手を洗浄する考え方は、おそらく19世紀初期に出現した。
「1846年、イグナーツ・ゼンメンルワイズ(Ignaz Semmelweis)は、ウィーン総合病院第1クリニックの学生や医師によって赤ん坊が分娩された女性が、第2クリニックの助産婦によって赤ん坊が分娩された女性よりも一貫して高い死亡率を示すことを確認した。彼は、解剖室から産科病棟へ直接向かった医師が、産科クリニックに入る際に石鹸と水による手の洗浄にもかかわらず、彼らの手には不快な臭気があることに気づいた。彼は、きわめて多くの妊産婦に影響を及ぼす産褥熱が、学生や医師の手を介して解剖室から産科病棟へ移された「死体微粒子」によってひき起こされると仮定した。おそらく、塩素化合物の既知の脱臭効果のため、1847年5月の時点で、彼は、学生や医師がクリニックの各患者間に塩素溶液で手を消毒することを要求した。第1クリニックの妊婦の死亡率はその後に劇的に低下し、何年間も低いままであった。
【0004】
「1843年、オリバー・ウェンデル・ホームス(Oliver Wendell Homes)は、産褥熱は医療従事者の手によって広まると自主的に結論づけた。彼は、その広がりを制限するように取られる手段を記載したが、彼の提言は当時は産科の実践に対する影響がほとんどなかった。しかし、ゼンメルワイズとホームスによる生殖研究の結果、手洗いが徐々に医療施設における病原体の伝染を予防するための最も重要な手段の1つとして受入れられるようになった。
【0005】
「1961年、米国公衆衛生局は、医療作業者(HCW)による使用に推奨される手洗い法を実例説明する研修用映画を製作した。当時、勧告では、作業者は患者との接触の前後に手を石鹸と水で1乃至2分間洗うことが指図された。生体消毒薬で手を洗浄することは、手洗いよりも有効ではないと考えられており、緊急時または流し台が利用できない区域においてのみ推奨された。
【0006】
「1975年および1985年、病院における手洗い実践に関する正式の書面によるガイドラインがCDCによって発行された。これらのガイドラインでは、多数の患者との接触間に非抗菌石鹸による手洗い、および侵襲的処置または高リスクにある患者の看護を実行する前後の抗菌石鹸による洗浄が推奨された。水を必要としない生体消毒薬(例えば、アルコールベースの溶液)の使用は、流し台が利用できない状況下でのみ推奨された。
【0007】
「1988年および1995年、手洗いおよび手の消毒のガイドラインが感染管理従事者学会(APIC)によって発行された。手洗いの推奨指示は、CDCガイドラインに記載されているものとほぼ同じであった。1995年のAPICガイドラインには、アルコールベースの手指消毒剤のより詳細な考察が含まれ、初期のガイドラインで推奨されていたよりも臨床的な設定におけるその使用が支持された。1995年および1996年、医療保健施設感染対策諮問委員会(HICPAC)は、抗菌石鹸または水を必要としない生体消毒薬のいずれかを、多剤耐性病原体(例えば、バンコマイシン耐性腸球菌[VRE]およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA))を有する患者の病室を出る際に手を消毒するために使用することを推奨した。これらのガイドラインは、ルーチンの患者看護を含む他の臨床的設定における手洗いおよび手の消毒の勧告も提示した。APICおよびHICPACのガイドラインは大多数の病院によって採用されているが、推奨された手洗い実践のHCWの順守は低いままである。」(非特許文献1、pp.1−2)
【0008】
したがって、19世紀中期の当初から、病原体に対抗する消毒剤の使用は、医療作業者、消費者、および疾患の感染を憂慮する他の人々によって一般化へと展開された。
抗菌剤の大半は、手の皮膚の消毒において使用するためにデザインされており、したがって、外科および消費者向けに石鹸またはローションとして製剤化されている。他のかかる薬剤が、例えば、口内洗浄剤として口内を含むヒトの体の他の部分での使用のために製剤化されている。
【0009】
大部分のかかる抗菌剤の主な成分はアルコール(エタノールまたはイソプロパノールなど)であり、これは細胞の物理的崩壊および重要なタンパク質の変性に基づき、強力であるが一時的な抗菌作用を示す。非特許文献1ではこれらの作用が以下のように記載されている。
【0010】
「大多数のアルコールベースの手の消毒剤は、イソプロパノール、エタノール、n−プロパノール、またはこれら製品の2つの組合せを含有する。n−プロパノールは何年もの間、ヨーロッパの一部でアルコールベースの手指消毒剤において使用されているが、米国のHCWの手洗いまたは外科の手洗い消毒調製物用の承認された活性剤としてTFMには記載されていない。アルコールの試験の大多数では、異なる濃度で個別のアルコールが評価された。他の試験では、限られた量のヘキサクロロフェン、四級アンモニウム化合物、ポピドン−ヨウ素、トリクロサン、またはグルコン酸クロルヘキシジンを含有する2つのアルコールまたはアルコール溶液の組合せが焦点となった。
【0011】
「アルコールの抗菌活性は、タンパク質を変性させる能力に寄与しうる。60%乃至95%アルコールを含有するアルコール溶液が最も有効であり、より高い濃度は、タンパク質が水の非存在下に容易に変性されないため強力ではない…
【0012】
「アルコールは、多剤耐性病原体(例えば、MRSAおよびVRE)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、および種々の真菌を含むグラム陽性およびグラム陰性植物性細菌に対して優れたインビトロ殺菌活性を有する。一部のエンベロープ(親油性)ウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス[HIV]、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、およびワクシニアウイルス)は、インビトロ試験の場合、アルコールの影響を受けやすい。B型肝炎ウイルスは、わずかに影響されにくいが、60%乃至70%アルコールによって殺傷されるエンベロープウイルスであり、C型肝炎ウイルスもこの割合のアルコールによって殺傷される可能性がある…」(非特許文献1、pp.8−10)
【0013】
アルコールに加えて、他の潜在的な成分としては、主に「静菌」特性を有する一部の薬剤(すなわち、細菌の成長を阻害するトリクロサンおよび塩化ベンザルコニウムなどの薬剤)が挙げられる。かかる潜在的能力におけるトリクロサンの既知の有用性は、非特許文献1で考察されている。
【0014】
「トリクロサン(化学名:2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)は、1960年代に開発された非イオン、無色の物質である。これはHCWおよび一般の人々による使用のための石鹸および他の消費者用製品に組込まれている。0.2%乃至2%の濃度が抗菌活性を有する。トリクロサンは細菌細胞に侵入し、細胞膜に影響を及ぼすほか、RNA、脂肪酸、およびタンパク質の合成に影響を及ぼす。最近の研究では、この薬剤の抗菌活性がエノイル−アシル担体タンパク質還元酵素の活性部位への結合に起因することが示されている。
【0015】
「トリクロサンは広範囲の抗菌活性を有するが、しばしば静菌性である。最小阻止濃度(MIC)は、0.1乃至10μg/mLであるが、最小殺菌濃度は25乃至500μg/mLである。グラム陽性微生物(MRSAを含む)に対するトリクロサンの活性は、グラム陰性桿菌、特に緑膿菌(P.aeruginosa)に対するよりも大きい。この薬剤は、マイコバクテリアおよびカンジダ属に対する適度な活性を有するが、糸状菌に対しては限られた活性を有する。トリクロサン(0.1%)は、1分間の衛生的手洗い後に2.8log10で手の細菌数を減少させる。一部の研究においては、クロルヘキシジン、ヨードフォア、またはアルコールベースの製品を適用した場合よりもトリクロサンを使用した後に対数減少が低くなっている。1994年、FDATFMは、試験的に1.0%以下のトリクロサンをカテゴリーIIISE活性剤として分類した(すなわち、この薬剤を消毒手洗いとしての使用に安全かつ有効と分類する不十分なデータが存在する)。FDAによるこの薬剤のさらなる評価は進行中である。クロルヘキシジンと同様、トリクロサンは皮膚上で持続的な活性を有する。ハンドケア製品におけるその活性は、pH、界面活性剤、皮膚軟化剤、または保湿剤の存在によって、また特定の製剤のイオン性質によって影響される。トリクロサンの活性は実質的に有機物によって影響されないが、一部の製剤に存在する界面活性剤によって形成されるミセル構造物中の薬剤の金属イオン封鎖によって阻害されうる。2%未満のトリクロサンを含有する大多数の製剤は、耐容性が良好であり、めったにアレルギー反応をひき起こすことがない。一部の報告では、病院の作業者にトリクロサン含有調製物を手の消毒用に提供することによりMRSA感染を減少させたことが示されている。トリクロサンのグラム陰性桿菌に対する強力な活性の欠如は、結果として、時折生じる汚染報告をもたらした。」(非特許文献1、p.16)
【0016】
したがって、清浄薬のアルコールおよび他の殺生成分とは対照的に、トリクロサンのような静菌剤は、細菌の成長を(それらがすぐに殺生特性を示すことが可能である、高い濃度で使用した場合を除き)抑制すると考えられている。技術上、トリクロサンは主に静菌剤として有用である比較的良性の抗菌剤であり、かつ局所適用されたトリクロサンがヒト皮膚への最小限の浸透を示すことも証明されている。
【0017】
抗菌石鹸およびローションに加えて、追加のクラスの抗菌剤がアルコールベースの清浄薬である。MMRW/RR−16では、「これらは通常、手の生微生物の数を削減するための手に適用するためにデザインされたアルコール含有調製物である。米国においては、かかる調製物は一般的に60%乃至95%エタノールまたはイソプロパノールを含有する」と言及されている(非特許文献1、p.3)。
【0018】
本出願の目的で、以下の定義が使用されるが、これらは当分野におけるかかる用語の従来の用法と一致すると考えられる。
抗菌剤は、細菌、真菌、およびウイルスなど微生物の成長を破壊または阻害する能力がある化学化合物(または2つもしくはそれ以上の化学化合物の混合物から成る調製物)と定義される。
【0019】
殺生剤は、多くの異なる微生物に、通常、かかる微生物の物理的崩壊による即時に有害である化学化合物(または2つもしくはそれ以上の化学化合物の混合物から成る調製物)と定義される。したがって、殺菌剤は、細菌に即時に有害である殺生剤である。
Biostatは、微生物の増殖を、通常、かかる微生物の重要な生理的経路への干渉により阻止し、またはこれを妨げる化学化合物(または2つもしくはそれ以上の化学化合物の混合物から成る調製物)と定義される。したがって、静菌剤は細菌の増殖を阻止し、またはこれを妨げるBiostatである。
持続的活性(または残留性活性)は、消毒剤適用後期間に微生物の増殖または生存を阻止または阻害する延長または拡大した抗菌活性と定義される。
【0020】
表面消毒組成物は、液体、エアロゾル噴霧、または多量のゲル(ヒドロゲルなど)、またはローションを含んで成る組成物など、消毒される表面に送達される組成物と定義されるが、かかる組成物の少なくとも薄膜でかかる表面を実質的に覆うために十分な量である。かかる組成物で消毒されうる実例としての表面としては、ヒト皮膚など軟い表面とともに、調理台やテーブルの天板、電話送受器、および浴室の設備など硬い表面が挙げられる。したがって、かかる組成物は、かかる表面と適合可能であるように製剤化されなければならない。
【0021】
揮発性は、室温またはヒトの体温など比較的低い温度で容易に蒸発可能である物質と定義される。非揮発性は、揮発性ではない(すなわち、比較的低い温度で容易に蒸発しない)物質と定義される。
【0022】
したがって、本発明の目的は、硬い表面、軟い表面、およびヒト皮膚を含む表面の抗菌消毒のための新しい組成物、方法、および調製物を提供することである。
【非特許文献1】「医療機関における手の衛生のためのガイドライン(Guideline for Hand Hygine in Health−CareSettings)」、Morbidity and Mortality Weekly Report、2002年10月25日付、第519巻、RR−16(以降、「MMWR/RR−16」と記載)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1つの実施形態においては、消毒組成物または調製物は、(1)30%w/w以上乃至70%w/w以下の濃度で揮発性アルコールを含んで成る殺生剤と、(2)0.001%w/w以上乃至0.1%w/w以下の濃度で前記アルコール中で可溶性である少なくとも1つの非揮発性抗菌剤とを含んで成る。
【0024】
本発明の別の実施形態においては、殺生剤は、エタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールより成る群から選択される少なくとも1つのアルコールから実質的に成る。
本発明のさらに別の実施形態においては、1つもしくはそれ以上の抗菌剤は、トリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)から実質的に成る。
【0025】
本発明のさらに代わりの別の実施形態においては、1つもしくはそれ以上の抗菌剤は、以下、すなわち塩化ベンザルコニウム、BP1、セフタジジム、セルレニン、セトリミド、クロラムフェニコール、クロルヘキシジン、シプロフロキサシン、シス−3−デシノイル−NAC、CPC、DBC、ジフルフェニカン、エチオナミド、ヘキサクロロフェン、イミペネム、イソニアジド、イソキシル、L−16a,240、フェネチルアルコール、ポリミキシンB、ポビドン−ヨウ素、チオエノジアザボリン、チオラクトマイシン、チモール、およびトブラマイシンの1つもしくはそれ以上から実質的に成る。
【0026】
本発明の別の実施形態においては、表面消毒組成物はエアロゾルとして製剤化される。
本発明の代わりの別の実施形態においては、表面消毒組成物はヒドロゲルとして製剤化される。
本発明の別の代わりの実施形態においては、表面消毒組成物はローションとして製剤化される。
本発明の別の代わりの実施形態においては、表面消毒組成物は液体として製剤化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、アルコールベースの揮発性殺生剤と低濃度の非揮発性抗菌剤の組合せから成る消毒組成物または調製物に関する。好ましくは、この組合せは、処理表面に対する強力な相乗的抗菌作用をもたらすことができる。この相乗効果にはいくつかの重要な側面がある。第一に、揮発性殺生剤は、その蒸発前に即時殺傷をもたらし、低濃度の抗菌剤を均一に送達するための適切な賦形剤として役立つ。第二に、殺生剤と抗菌剤の組合せは、細菌の(いずれかの成分単独の効果よりも優れた)顕著に増強された殺傷をもたらす。さらに第三に、揮発性殺生剤の蒸発後に表面上に残る余剰の非揮発性抗菌剤は、かかる表面の微生物の再汚染に対する持続的な活性を提供する。
【0028】
この組合せおよびこれらの相乗効果は未知であり、特に、追加の低濃度、非揮発性抗菌剤(トリクロサンなど)とともにアルコールベースの揮発性殺生剤(エタノールまたはイソプロパノールなど)から成る、かかる2成分の清浄薬調製物の増強された殺生活性の証拠を示すことができなかった従来の開示によって予測されえなかった。これら新規な特性は、従来の清浄薬調製物を本発明の新しい2成分清浄薬調製物と比較する以下の実験データによって明らかに示されている。
【実施例1】
【0029】
グラム陽性細菌に対する清浄薬調製物の試験
種々の清浄薬調製物をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して試験し、グラム陽性細菌に対する静菌および殺菌性能を評価した。
【0030】
被験生物 黄色ブドウ球菌(S.aureus)をコロンバス・ジョージア・メディカル(Columbus Georgia Medical)センターにおける患者の咽頭鼻部から最初に単離された保存コレクションから増殖させた。この生物は、1x10ブドウ球菌未満の皮下用量で実験用マウスを殺傷しうるきわめて毒性の病原体である。これは広範囲の抗生物質に対してもきわめて耐性である。−80℃下に10%(v/v)グリセロールで凍結培養として黄色ブドウ球菌(S.aureus)を維持し、解凍して室温(R.T.)下にトリプチケースソイ寒天培地(TBS)または寒天プレート上で増殖させ、所定のサンプル中の最確数(MPN)の測定を37℃下、標準のアッセイ法を用いて行った。
【0031】
試験調製物 試験調製物は、2つのメーカーからの市販のゲル製品(すなわち、「ブランドA」および「ブランドB」)であったが、これらのゲルは実質的にエタノール(60乃至70%w/w)から成った。独自の液体調製物も、イソプロピルアルコール(イソプロパノール)、エチルアルコール(エタノール、またはEtOH)、トリクロサン、およびその一部の組合せを含む標準の実験用化学試薬を用いて製造した。追加の試作液体調製物(「ブランドC1」および「ブランドC2」)は実質的にトリクロサン(約0.04%w/w)と組合わせたアルコール(60乃至70%エタノールまたはイソプロパノール、w/w)の混合物から成った。最後に、一部の市販の製品(ブランドB)にトリクロサンを添加し、約0.04%w/wのレベルでトリクロサンを含有する改良製品(「ブランドB1」)を得た。
【0032】
静菌性アッセイ 各試験調製物のサンプルをコースター(Coaster)96穴平底組織培養プレート上で滅菌TSB(1:2または1:10v/v連続希釈)へ希釈した。次いで、黄色ブドウ球菌(S.aureus)接種材料の10μLアリコート(力価1x10細菌/mL、MPN、コロニー形成アッセイ、CFUによって確認)を各ウェルに添加した。プレートを一夜(約18時間)37℃下にインキュベートした。濁度を視覚的に観察することによって各ウェル中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の成長を測定し、630nmでダイナテック マイクロタイター(Dynatek Microtiter)プレートリーダーを用いて確認したが、これにより各調製物の静菌レベル(すなわち、最小阻止濃度、MIC)が、プラス成長をもたらすのに必要な希釈ステップの数に基づき容易に評価された。
【0033】
殺菌アッセイ 各希釈での細菌の殺傷(すなわち、最小殺菌濃度、MBC)を5μLアリコートを除去し、これらをTSB寒天プレート上で継代培養することによって測定した。プレートを一夜、37℃下にインキュベートし、成長を観察した。チャレンジ細菌を添加後30秒、5、10、および30分、かつ1、2、4、および8時間の時点で試験を行った。
【0034】
相乗効果アッセイ モデル系(すなわち、アルコール+トリクロサン調製物)の相乗効果を検証するために、別個の一連の試験を行った。イソプロパノールまたはエタノールのいずれか10mLにトリクロサンを37℃下に添加することによってトリクロサン保存溶液を作製し、添加したトリクロサンの量を滅菌蒸留水(pH8.0、45℃、10%v/vの最終アルコール濃度を得る)で保存溶液希釈後0.01%(w/w)の最終濃度を得るために測定した。混合液の温度をその後の室温TSBへの(上記のマイクロウェルプレートを使用)連続希釈中40℃下に維持した。1:2および1:10(v/v)の連続希釈を行って1:1010の最終希釈を得た。エタノールおよびイソプロピルアルコール(水中60%v/v)を単独またはトリクロサンと組合わせて同様に連続希釈した。結果として得られた希釈液を黄色ブドウ球菌(S.aureus)10μL(1x10乃至1x10細菌/mL)の添加によってチャレンジした。プレートを一夜、37℃下にインキュベートし、細菌の成長をウェル中の濁度によって確認した。ウェルをTBSプレート上で継代培養し(上記の通り)殺菌活性を測定した。
【0035】
アッセイ結果 これらのアッセイの結果が表1にまとめて示されているが、これは多くの重要な所見を示す。種々のアルコール(すなわち、EtOH、イソプロパノール、およびEtOHベースゲル)は、標準の1成分調製物中の単独で、きわめて限られた静菌性能を示す。反対に、トリクロサン単独では、高度に希釈された場合でも顕著な静菌性能を示す。2成分調製物を含んで成る、アルコールへのトリクロサンの添加により、トリクロサン単独と同等である静菌性能が得られる。かかる付加的反応は、アルコールが希釈時に限られた静菌特性を有すると同時にトリクロサンは広範囲の静菌活性を有することが知られているため、予想される。したがって、かかる調製物における各成分の静菌効果は付加的である。これらの結果と対照的に、かかる2成分調製物で知られる相乗的殺菌反応は完全に前例がない。例えば、トリクロサンもいずれかの1成分アルコール調製物も因数10以上(すなわち、1:10)希釈した場合に殺菌活性を示さず、1成分調製物中のトリクロサンとこれらアルコールのいずれかの組合せは、希釈の効果に対するこれら調製物の顕著に増強した耐性によって明らかなように、大きく増強した殺菌活性を示した。具体的には、トリクロサンまたはアルコールの10倍以上の希釈液は1x10MRSAでのチャレンジ時に殺菌性ではなかったが、2成分調製物は1000倍に希釈された場合でも相乗的殺菌活性を示した。
【0036】
追加の所見 種々の調製物へのMSRAの短い曝露は、30秒以内(すなわち、試験した最小接触時間)で殺菌作用が生じ、8時間までの曝露では追加の作用が認められなかった。
【0037】
【表1】

【0038】
表面試験 表面上のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する種々の清浄薬調製物の残効性を評価するために、各調製物を滅菌表面に塗布し、清消毒表面を乾燥させ、乾燥表面を黄色ブドウ球菌(S.aureus)で汚染し、次いで結果として得られる汚染表面を数時間にわたってサンプリングし、静菌および殺菌性能を評価した。
100μLの所定の被験調製物をLab−TekIIチャンバースライド(4穴)の滅菌ウェル(1.2cm)に添加し、材料を表面上に均等に分布させ、30秒間乾燥させた。滅菌綿棒による静かなワイピングにより残留物を除去した。エタノールおよびトリクロサン調製物で処理した1つのウェルをその後に5回、それぞれの2mLの滅菌蒸留水で(水曝露に対する処理表面の耐性を評価するために)洗浄した。別の1つのウェルは未処理のまま対照として使用した。次いで、200μLの黄色ブドウ球菌(S.aureus)(力価1x10細菌/mL、または2x10細菌)を各ウェルに添加した。この汚染後の種々の時間で、この培養培地の10μLアリコートを除去し、連続希釈して生存細菌のMPNを測定した。これらの希釈液の継代培養を作製し、殺菌活性を測定した。
【0039】
表面の結果 表2の結果は、アルコール単独(すなわち、ブランドAおよびブランドBゲル)が表面に対する残留静菌または殺菌作用を示さないことを実証している。いったん蒸発すると、これはMRSAによる汚染およびMRSAの成長を阻害することはない。その一方、アルコールとトリクロサンから成る2成分調製物で処理した表面は、サンプリングしたすべての時点(8時間まで)で耐汚染性であった。この持続性の活性は水による処理表面の複数の洗浄によって影響されることはなく、効果がきわめて強いことを示した。市販のゲル清浄薬(すなわち、ブランドB1)へのトリクロサンの添加は、表面汚染に対する同等の保護を提供した。短期効果がさらに表3のデータによって実証されているが、これはすべての細菌が2成分のアルコールとトリクロサン調製物で処理した表面上で30分以内に殺傷されることを示す。総合すれば、表2および3のデータは、2成分のアルコールとトリクロサンの静菌および殺菌作用が両方とも迅速かつ持続的であり、1成分調製物(アルコール単独など)よりも顕著に優れていることを示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【実施例2】
【0042】
グラム陰性細菌に対する清浄薬調製物の試験
種々の清浄薬調製物を抗生物質耐性大腸菌(Escherichia coli(E.coli))に対して試験し、グラム陰性細菌に対する静菌および殺菌性能を評価した。
【0043】
被験生物 大腸菌(E.coli)(P+)をコロンバス・ジョージア・メディカル(Columbus Georgia Medical)センターにおける患者の尿培養から最初に単離された保存コレクションから増殖させた。−80℃下に10%(v/v)グリセロールで凍結培養として大腸菌(E.coli)を維持し、解凍して室温下にTBSまたは寒天プレート上で増殖させ、所定のサンプル中の最確数(MPN)の測定を96穴マイクロタイタープレート中で1:10(v/v)の連続希釈を行った後、37℃下に一夜インキュベーションすることによって測定した。
【0044】
試験調製物 試験調製物をグラム陽性アッセイについて上述されている通りであった。
【0045】
静菌性アッセイ 各試験調製物のサンプルを、グラム陽性細菌を用いる同様の試験について上述されている通り、コースター(Coaster)96穴平底組織培養プレート上で滅菌TSB(1:2または1:10v/v連続希釈)へ希釈した。次いで、大腸菌(E.coli)接種材料の10μLアリコート(力価1x10細菌/mL、MPN)を各ウェルに添加した。プレートを一夜(約18時間)37℃下にインキュベートした。濁度を視覚的に観察することによって各ウェル中の大腸菌(E.coli)の成長を測定し、630nmでダイナテック マイクロタイター(Dynatek Microtiter)プレートリーダーを用いて確認したが、これにより各調製物の静菌レベルが、プラス成長をもたらすのに必要な希釈ステップの数に基づき容易に評価された。
【0046】
殺菌アッセイ 各希釈での細菌の殺傷(殺菌レベル)を、グラム陽性細菌を用いる同様の試験について上述されている通り、5μLアリコートを除去し、これらをTSB寒天プレート上で継代培養することによって測定した。プレートを一夜、37℃下にインキュベートし、成長を観察した。チャレンジ細菌を添加後30秒、5、10、および30分、かつ1、2、4、および8時間の時点で試験を行った。
【0047】
アッセイ結果 これらのアッセイの結果が表4にまとめて示されているが、これは多くの重要な所見を示す。アルコール単独(すなわち、EtOHベースゲル)は、グラム陰性細菌に対するきわめて限られた静菌性能を示した。2成分調製物(すなわち、ブランドB1およびブランドC1)を含んで成る、アルコールへのトリクロサンの添加により強力な殺菌性能が得られた。これらの結果の両方は、グラム陽性細菌に対する上記のものと同等であり、単独で使用した場合のかかる薬剤の既知の特性と一致する。これらMICの結果とは対照的に、2成分調製物について実証されている相乗的殺菌反応は、グラム陽性細菌の場合のように、完全に前例がない。例えば、トリクロサンは、このアッセイで用いられた低い濃度で顕著な殺菌特性を有することが意図されていない。それにもかかわらず、2成分調製物におけるトリクロサンとアルコールの組合せは、希釈の効果に対する2成分調製物の顕著に増強された耐性によって明らかであるように、アルコール単独に対して大きく増強された殺菌活性を示した。かかる相乗反応は、グラム陽性細菌に対して上記で明らかにされたものと同等である。
【0048】
追加の所見 種々の調製物へのグラム陰性細菌の短い曝露は、30秒以内(すなわち、試験した最小接触時間)で殺菌作用が生じ、8時間までの曝露では追加の作用が認められなかった。かかる反応は、グラム陽性細菌に対して上記で明らかにされたものと同等である。
【0049】
【表4】

【0050】
表面試験 活性大腸菌(E.coli)(1x10細菌/mL)25マイクロリットル(25μL)をヒト皮膚(前腕上)の直径1cmの円形パッチ上に均等に広げ、短時間乾燥させた。次いで、清浄薬25マイクロリットル(25μL)を各区域上に広げた。細菌で処理した1つの円を対照として未処理のまま放置した。清浄薬塗布後1分にTSB 3mLを含有する滅菌チューブを円上に配置し、3回反転させ、試験部位から細菌を洗浄した。各洗浄液中の細菌を真空ろ過によって滅菌0.22ミクロンフィルター(ナルゲン・アナリュティック(Nalgene Analytic)150mLフィルターユニット)の表面上へ収集した。フィルターを無菌で除去し、マックコンキー(MacConky)寒天プレート上に配置し、次いで一夜、37℃下にインキュベートした。このサンプリング手順を各試験部位で種々の経過時間(消毒後6時間まで)反復した。結果として得られるインキュベートされたプレートを大腸菌(E.coli)コロニー(CFU)の形成について観察した。
【0051】
表面の結果 表5の結果は、アルコール単独(すなわち、ブランドAおよびブランドBゲル)がヒト皮膚のグラム陰性細菌汚染に対する一時的な殺菌作用を示すが、この作用が非持続性(すなわち、残留大腸菌(E.coli)レベルが時間経過とともに増加してから殺菌作用は確認されない)ことを示す。これは、これらの調製物のアルコールが蒸発すると阻害されなかったグラム陽性細菌で確認された同様の表面作用と同等である。その一方、アルコールとトリクロサンから成る2成分調製物で処理した表面は、即時殺菌作用を示しただけではなく、これらの調製物はサンプリングしたすべての時点(6時間まで)で持続的な殺菌活性も示した。この持続性の活性は、処理部位消毒後のさらなる細菌汚染を防ぐために異例のステップがとられなかったため特に注目すべきである。したがって、グラム陽性細菌について明らかにされているように、これらのデータは、グラム陰性細菌に対する2成分のアルコールとトリクロサンの静菌および殺菌作用が両方とも迅速かつ持続的であり、1成分調製物(アルコール単独など)よりも顕著に優れていることを示す。
【0052】
【表5】

【0053】
細菌による実験データの関連性
上記の通り、トリクロサンを含有する清浄薬調製物は、静菌特性を有することが知られている。例えば、トリクロサンのMICは、0.1乃至10μg/mLであることが知られている(すなわち、MMWR/RR−16、p.16を参照)。その一方、揮発性脂肪族アルコール(エタノールまたはイソプロパノールなど)と低濃度、低揮発性抗菌剤(すなわち、トリクロサンなどの静菌剤)から成る本発明の2成分清浄薬調製物の相乗的殺菌特性は未知である。例えば、濃度0.25%以上で60乃至70%アルコール+トリクロサンを含有する1つもしくはそれ以上を含む多くの2成分調製物の抗菌活性については言及されている(ジョーンズ(Jones)ら「トリクロサン:医療現場における有効性および安全性の検討(Triclosan:A Review of Effectiveness and Safety in Health Care Settings)、Am.J.Infect.Control、2000年、第28巻、p.191を参照)が、従来の開示では、特に低いトリクロサン濃度でのかかる成分の潜在的な相乗効果についての言及がない。さらに、他の文献(ジョンソン(Johnson)ら「常在および一過性の手の細菌のパラクロロ−メタ−キシレノールおよびトリクロサンに対する比較感受性(Comparative Susceptibility of resident and transient hand bacteria to parachloro−meta−xylenol and Triclosan)」、J.Appl.Microbiol.、2002年、第93巻、p.339を参照)では、トリクロサンの比較的高いMBC値、すなわち、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して7.5mg/L、および大腸菌(E.coli)に対して1.3mg/Lが報告されている。
【0054】
この文献とは対照的に、本出願の表1および4の表におけるデータは、本発明のアルコールとトリクロサンから成る2成分調製物のMBCレベルが、黄色ブドウ球菌(S.aureus)と大腸菌(E.coli)の両方に対して0.4mg/Lと同等またはそれ以下であることを示す(すなわち、1:10に希釈された場合、60乃至70%アルコール中の0.04%トリクロサンは、1x10MRSAおよび1x10大腸菌(E.coli)のチャレンジ用量に対して殺菌性である)。この相乗効果の関連性はさらに、本実験において使用された細菌の特定の株に対する2成分調製物の性能と1成分調製物の性能を比較することによって確認される。例えば、表1のデータは、2成分調製物が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して、個別の抗菌剤の付加的作用に基づき予測されるよりも約100倍殺菌性であることを示す。同様に、表4のデータは、かかる付加的作用に基づき予測されるものに対して大腸菌(E.coli)の殺菌活性における100倍以上の増大を示す。したがって、実質的にアルコールとトリクロサンなど低濃度、非揮発性抗菌剤からなる本発明の2成分清浄薬調製物は、予期せぬ殺菌相乗効果を示す。
【0055】
本発明によって実証された相乗効果は、清浄薬調製物が改善された殺菌活性を示すことを可能にするだけではなく、従来の開示に基づき予測されるものを十分に下回る静菌成分濃度を用いる有効な調製物の新規の形成を可能にする。さらに具体的には、本出願において示されたデータにより、かかる調製物は、殺菌剤濃度が0.1%以下のレベルであっても有効な表面清浄薬となることが明らかである。かかる濃度でも、顕著な相乗効果は、かかる調製物の希釈に対する回復力を増大させる(すなわち、その固有の広範な有効性範囲により)。さらに、かかる低いレベルの使用は、皮膚の刺激または消毒表面への他の損傷を最小限に抑え、かつ製造コストを削減する。
【実施例3】
【0056】
ウイルスに対する清浄薬調製物の試験
抗ウイルス性能を評価するために、ネコ腸コロナウイルス(FECV、SARSをひき起こすコロナウイルスと同じウイルスクラス)に対する種々の清浄薬調製物を試験した。
被験生物 FECVをアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から購入した。保存ウイルスのためのウイルスを増殖させ、ウイルスを滴定するCRFK細胞もATCCから得た。F−12ハム(Ham’s)普通培地(シグマ(Sigma))を含むダルベッコ改変イーグルズ(Dubecco’s Modified Eagles)培地(DMEM)を用いてCRFK細胞を増殖させ、DMEMにはアンピシリン、ゲンタマイシン、7%ウシ胎仔血清、Hepes、重炭酸ナトリウム、およびグルタミン酸塩を補充した。CRFK細胞を37℃下、5%COを含む加湿雰囲気下に維持した。CRFK細胞でのウイルス滴定を同じ条件下に行った。細胞を25cmまたは150cmコーニング・ティッシュ(Corning Tissue)培養フラスコ中で増殖させた。ウイルス滴定をコースター(Coster)96穴細胞培養クラスターを用いて行った。
【0057】
試験調製物 試験清浄薬は、実質的にエタノール(約60%w/w)から成る市販のゲル製品(すなわち、「ブランドD」)から成った。独自の液体調製物(すなわち、「EtOH+トリクロサン」)を、エチルアルコール(60%w/w)およびトリクロサン(0.04%w/w)を含む標準の化学試薬を用いて製造した。
【0058】
有効性試験 滅菌Lab−TekIIチャンバースライド(1穴)を用いて、表面上のウイルス殺傷の有効性を明らかにした。
【0059】
即時有効性 FECV(10TCID、組織培養感染量)を直径約1cmの円でガラスチャンバースライドの表面上に広げ、乾燥(約5乃至7分)させた。次いで、被験調製物の1つの約100μLをFECVを含有する区域上に広げた。約30秒後、200μLのDMEMを処理区域に添加した。培地を吸引し、CRFKの融合単層とともに96穴マイクロタイター組織培養プレートのウェルに移した。マイクロタイタープレート中のCRFK細胞を72時間インキュベートし、観察した。このインキュベーション時間内のCRFK細胞の死滅は、生ウイルスの存在を示した。
【0060】
残効性 約100μLの被験調製物をLab−Tekスライド上の直径1cmの表面上に均等に分布させ、乾燥するまで表面上に放置させた(すなわち、約5分間)。処理スライド5回、2mLの滅菌蒸留水で洗浄した。次いで、スライドを室温下に8時間インキュベートした。8時間のインキュベーション後、FECVの10TCIDを1cm区域に添加し、乾燥(約5乃至8分間)させた。乾燥後、ウイルス感染性が回復し、即時有効性試験について記載されているように滴定された。
【0061】
アッセイ結果 これらのアッセイの結果が表6にまとめて示されているが、これは多くの重要な所見を示す。アルコールベースの調製物(すなわち、ブランドDおよびEtOH+トリクロサン)は、コロナウイルスに対して同等の抗ウイルス性能を示し、試験表面上のウイルスの99.9%以上を殺傷した。しかし、2成分調製物(すなわち、EtOH+トリクロサン)のみが、残効性をもたらした。この残効性は、処理とウイルスチャレンジとの間で表面を水で5回洗浄した場合には一層顕著である。したがって、抗菌特性の場合におけるように、2成分調製物は、特にアルコール成分の蒸発後に優れた保護をもたらす。
【0062】
【表6】

【0063】
高性能表面消毒調製物
本発明の新規な清浄薬調製物は、好ましくは、揮発性脂肪族アルコール(約30%乃至70%の濃度でエタノールまたはイソプロパノールなど)、および低濃度の非揮発性抗菌剤(すなわち、トリクロサンなどの静菌剤)から実質的に成る2成分の清浄薬調製物そのものを含んで成る。以下に説明されるように、本発明は、抗菌成分の選択に関係のある以下のパラメーターのすべてに合致する。すなわち、
−実質的にヒト皮膚によって吸収されず、
−ヒトに対する低い毒性および既知の安全性プロフィールを有し、
−低濃度で既知の静菌特性を示し、
−アルコールとともに使用されると相乗的殺生特性を提供し、
−水中で非溶性であり、したがって持続的活性を促進し、
−適度の、乃至低いコストであり、かつ
−化学的および物理的に安定である。
これらの基準に適合する抗菌剤により、本明細書で開示されているように、安全で効果的、持続性の、安定した低コストの清浄薬が得られることになる。
【0064】
皮膚吸収 局所適用されたトリクロサンは、ヒト皮膚への最小限の浸透を示すことが証明されている。したがって、トリクロサンはこの基準に適合する。
【0065】
毒性と安全性 トリクロサンの低毒性と安全性は定評がある。
【0066】
静菌特性 トリクロサンの静菌特性も定評がある。
【0067】
相乗特性 以前には不明であったが、アルコールとともに使用されると、トリクロサンの相乗的殺生特性が本明細書で明らかにされている。
【0068】
水溶性 抗菌剤は実質的に水中で不溶性であることが好ましい。この特性は、かかる薬剤の残留物が、表面のすすぎなど偶発的な水の接触による不用意な除去に耐性となり、それによって調製物の持続的な活性を増大させることを確実にする。トリクロサンは、詳細に上記された実例としての抗菌剤であるが、これは実質的に水中で不溶性であり、この基準に理想的に合致する。
【0069】
コストと安定性 トリクロサンは、適度のコストと高い安定性が知られている。
トリクロサンの特性の特殊な組合せにより、0.1%以下の濃度での使用が可能となる。かかる低レベルは可視フィルムまたは他の明らかな残留物を残すことがなく、清浄薬調製物の特性をさらに強化する。さらに、いくつかの他の抗菌剤はかかるレベルで顕著な皮膚刺激性を示す。
【0070】
実質的にアルコールおよび抗菌剤から成る本発明の好ましい消毒組成物または調製物は、液体、ゲル、ヒドロゲル、またはローションなどの半固体、およびエアロゾルとしてを含めて、多くの物理的形態のいずれかで製剤化されうる。
これらの消毒組成物または調製物は、アルコールベースの揮発性殺生と追加の低濃度、低揮発性抗菌剤の組合せを含んで成る。
【0071】
本発明の1つの実施形態においては、これらの消毒組成物または調製物は、(1)30%w/w以上乃至70%w/w以下の濃度で揮発性アルコールを含んで成る殺生剤と、(2)0.001%w/w以上乃至0.1%w/w以下の濃度で前記アルコール中で可溶性である1つもしくはそれ以上の非揮発性抗菌剤とを含んで成る。
【0072】
本発明の別の実施形態においては、殺生剤は実質的に1つもしくはそれ以上のエタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールから成る。
本発明のさらに別の実施形態においては、1つもしくはそれ以上の抗菌剤は、実質的にトリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)から成る。
【0073】
本発明の代わりのさらに別の実施形態においては、1つもしくはそれ以上の抗菌剤は、以下、すなわち塩化ベンザルコニウム、BP1、セフタジジム、セルレニン、セトリミド、クロラムフェニコール、クロルヘキシジン、シプロフロキサシン、シス−3−デシノイル−NAC、CPC、DBC、ジフルフェニカン、エチオナミド、ヘキサクロロフェン、イミペネム、イソニアジド、イソキシル、L−16a,240、フェネチルアルコール、ポリミキシンB、ポビドン−ヨウ素、チオエノジアザボリン、チオラクトマイシン、チモール、およびトブラマイシンの1つもしくはそれ以上から実質的に成る。
【0074】
本発明の別の実施形態においては、これらの消毒組成物または調製物はエアロゾルとして製剤化される。
本発明の代わりの別の実施形態においては、これらの消毒組成物または調製物はヒドロゲルとして製剤化される。
本発明の別の代わりの実施形態においては、これらの消毒組成物または調製物はローションとして製剤化される。
本発明の別の代わりの実施形態においては、これらの消毒組成物または調製物は液体として製剤化される。
この説明は例示目的のみに提示されており、本出願の発明を限定することは意図されていない。
特許証によって請求され、保護されるべきものは、添付の請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールベースの揮発性殺生剤と、
低濃度、非揮発性抗菌剤と、
を含んで成ることを特徴とする消毒組成物。
【請求項2】
前記殺生剤が、エタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールより成る群から選択される少なくとも1つのアルコールから実質的に成ることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項3】
前記抗菌剤が、トリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)から実質的に成ることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項4】
前記抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、BP1、セフタジジム、セルレニン、セトリミド、クロラムフェニコール、クロルヘキシジン、シプロフロキサシン、シス−3−デシノイル−NAC、CPC、DBC、ジフルフェニカン、エチオナミド、ヘキサクロロフェン、イミペネム、イソニアジド、イソキシル、L−16a,240、フェネチルアルコール、ポリミキシンB、ポビドン−ヨウ素、チオエノジアザボリン、チオラクトマイシン、チモール、およびトブラマイシンより成る群から選択される少なくとも1つの薬剤から実質的に成ることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項5】
前記消毒組成物がエアロゾルとして製剤化されることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項6】
前記消毒組成物がヒドロゲルとして製剤化されることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項7】
前記消毒組成物がローションとして製剤化されることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項8】
前記消毒組成物が液体として製剤化されることを特徴とする、請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項9】
30%w/w以上乃至70%w/w以下の濃度で揮発性アルコールを含んで成る殺生剤と、
0.001%w/w以上乃至0.1%w/w以下の濃度で前記アルコール中で可溶性である少なくとも1つの非揮発性抗菌剤と、
を含んで成ることを特徴とする消毒組成物。
【請求項10】
前記殺生剤が、エタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールより成る群から選択される少なくとも1つのアルコールから実質的に成ることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項11】
前記抗菌剤が、トリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)から実質的に成ることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項12】
前記抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、BP1、セフタジジム、セルレニン、セトリミド、クロラムフェニコール、クロルヘキシジン、シプロフロキサシン、シス−3−デシノイル−NAC、CPC、DBC、ジフルフェニカン、エチオナミド、ヘキサクロロフェン、イミペネム、イソニアジド、イソキシル、L−16a,240、フェネチルアルコール、ポリミキシンB、ポビドン−ヨウ素、チオエノジアザボリン、チオラクトマイシン、チモール、およびトブラマイシンより成る群から選択される少なくとも1つの薬剤から実質的に成ることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項13】
前記消毒組成物がエアロゾルとして製剤化されることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項14】
前記消毒組成物がヒドロゲルとして製剤化されることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項15】
前記消毒組成物がローションとして製剤化されることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項16】
前記消毒組成物が液体として製剤化されることを特徴とする、請求項9に記載の消毒組成物。
【請求項17】
消費者および外科用の消毒組成物の調製におけるアルコールベースの揮発性殺生剤および少なくとも1つの低濃度、非侵害性(violate)細菌剤の使用。

【公表番号】特表2006−519841(P2006−519841A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506947(P2006−506947)
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/007021
【国際公開番号】WO2004/080179
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505205410)ザンテック ファーマスーティカルズ,インク. (3)
【Fターム(参考)】