説明

改善された洗濯耐久性の抗菌性ポリエステル含有物品の製造方法およびそれによって製造された物品

本発明は、キトサンおよびキトサン−金属錯体を利用した抗菌性ポリエステル含有物品であって、その洗濯耐久性がキトサン化学種をポリエステルに共有結合させることによって改善される物品に関する。本発明はまた前記物品の準備方法にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンおよびキトサン−金属錯体を利用した抗菌性ポリエステル含有物品であって、その洗濯耐久性がキトサン化学種をポリエステルに共有結合させることによって改善される物品に関する。本発明はまた前記物品の準備方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、改善された洗濯耐久性を有する抗菌性ポリエステル含有物品を生み出すためのキトサンおよびキトサン−金属錯体の使用に関する。
【0003】
(特許文献1)は殺菌特性の基質の準備を開示している。他の材料のうちで、ポリエステル上への可溶化キトサンの沈積、引き続く銀塩での処理、銀塩の還元およびキトサンの架橋が耐久性の殺菌性物品をもたらすと開示されている。該出願はまた、キトサンが付けられた後、銀塩処理の前か後かのどちらかのキトサンの架橋を開示している。
【0004】
(非特許文献1)は、キトサンを使用するポリエステル布の変性を開示している。ポリエステルは苛性ソーダで加水分解され、1%酢酸溶液で中和され、次にキトサン溶液でおよび、任意選択により、架橋剤で処理された。この方法は何の共有結合もキトサンとポリエステルとの間に確立されないという制限を受け、それは多段階法であり、所望の耐久性を獲得するためにキトサンの複数のパディングが必要とされる。
【0005】
(非特許文献2)は、ポリエステル物品へのアクリル酸単位のグラフト化、引き続く表面カルボキシル基の活性化およびキトサンの共有結合化を開示している。アクリルオリゴマー単位のこの付加は、多くのテキスタイル用途では望ましくないかもしれないし、テキスタイル工場向けのドロップ−イン方法として好適でないかもしれない。
【0006】
(特許文献2)は、キトサンとのその次の共有結合のためにポリエステルカルボニル基を活性化するためのカルボジイミド化学種の使用を開示している。ポリラクチドまたはカプロラクトンポリマーの末端カルボキシル基はN−ヒドロキシスクシンイミドおよびカルボジイミドで処理されて活性エステルを作る。この活性エステルは次にキトサンで処理されてアミド結合を作る。該特許は抗菌特性も、またかかる特性の耐久性も開示していない。
【0007】
【特許文献1】PCT出願国際公開第00/49219号パンフレット
【特許文献2】PCT出願国際公開第01/88019号パンフレット
【特許文献3】米国特許第3,671,379号明細書
【非特許文献1】エス.マツカワ(S.Matsukawa)ら著、繊維学会誌、51(1)(1995)、51−56ページ
【非特許文献2】フー(Huh)ら著、J.Appl.Polymer Sci.、81(2001)、27692778ページ
【非特許文献3】有機化学における命名法の規則C−956(Rule C−956 in Nomenclature in Organic Chemistry)、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)、英国ロンドン(London,UK)、バターワース・アンド・コ(Butterworth & Co.)、1971年、295ページ
【非特許文献4】有機化学における命名法の規則C−956(Rule C−956 in Nomenclature in Organic Chemistry)、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)、英国ロンドン(London,UK)、バターワース・アンド・コ(Butterworth & Co.)、1971年、80ページ
【非特許文献5】繊維およびテキスタイル技術辞典(Dictionary of Fiber & Textile Technology)、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC)、ヘキスト・セラニーズ社(Hoechst Celanese Corp.)、1990年、8ページ
【非特許文献6】ウルマンの工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、第5版、ウォルフガング・ゲルハルツ編集主幹(Wolfgang Gerhartz,Executive Editor)、第A10巻、独国ワインハイム(Weinheim,Federal Republic of Germany)、VCH Verlagsgesellschaftg、1987年、「Fibers, 3. General Production Technology、H.リュッカー(Lucker)W.ケーギ(Kagi)U.ケンプ(Kemp)およびW.スティバール(Stibal)511566ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリエステルの加水分解、引き続く何の中間のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルもなしの水溶性カルボジイミドを用いる加水分解ポリエステルの単段階アミド化によってキトサンが物品上へ共有結合された抗菌性ポリエステル含有物品を提供する。処理は室温で実施することができる。高温硬化の必要性の欠如は本方法を単純化し、また布の色もより良好に保つ。物品は繰り返し洗濯後にその抗菌特性を保持する。
【0009】
(a)ポリエステル含有物品を提供する工程と、
(b)ポリエステル含有物品を塩基性溶液と接触させる工程と、
(c)任意選択により、工程(b)で生じた物品を洗浄する工程と、
(d)工程(b)または工程(c)で生じた物品を強い無機酸溶液と接触させる工程と、
(e)任意選択により、工程(d)で生じた物品を水で洗浄する工程と、
(f)工程(d)または工程(e)で生じた物品を水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドを含む溶液と接触させる工程と、
(g)任意選択により、工程(f)で生じた物品を水で洗浄する工程と、
(h)工程(f)または工程(g)で生じた物品を、キトサン、キトサン塩およびキトサン誘導体よりなる群から選択されたキトサン剤を含む溶液と接触させる工程と、
(i)任意選択により、工程(I)で生じた物品を加熱する工程と
の順次工程を含む抗菌性ポリエステル含有物品の準備方法がさらに開示される。
【0010】
(a)ポリエステル含有物品がその上に配置される供給ステーションとポリエステル含有物品を受け取ることができる巻取ステーションとを提供する工程と、
(b)供給ステーションからの物品を、前記物品が塩基性溶液に曝される第1処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(c)任意選択により、工程(b)−処理物品を、物品が水に曝される第2処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(d)工程(b)−または工程(c)−処理物品を、物品が強い無機酸溶液に曝される第3処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(e)任意選択により、工程(d)−処理物品を、物品が脱イオン水に曝される第4処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(f)工程(d)−または工程(e)−処理物品を、物品が水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドを含む溶液に曝される第5処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(g)任意選択により、工程(f)−処理物品を、工程(f)−処理物品が水に曝される第6処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(h)工程(f)−または工程(g)−処理物品を、物品がキトサン、キトサン塩およびキトサン誘導体よりなる群から選択されたキトサン剤を含む溶液に曝される第7処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(i)任意選択により、工程(h)−処理物品を、それが第7処理ステーションを出た後に加熱する工程と、
(j)工程(h)−または工程(i)−処理物品を巻取ステーション上で受け取られ、かつ、その上で蓄積するようにさせる工程と
の順次工程を含む抗菌性ポリエステル含有物品の連続製造方法がさらに開示される。
【0011】
図面は次の通り4つの図よりなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、キトサンがそれに共有結合された抗菌性ポリエステル含有物品の準備にかかわる。キトサンはポリ−[1−4]−β−D−グルコサミンに対して一般に用いられる名前である。キトサンはポリ−[1−4]−β−N−アセチル−D−グルコサミンであるキチンから化学的に誘導され、それは順繰りに真菌類の細胞壁、昆虫の殻および特に甲殻類から誘導される。本明細書で用いるところでは、用語「共有結合された」は、イオン(静電気)結合とは対照的に、結合に関与する各原子によって寄与される電子が共有されている共有結合によってキトサンがポリエステル基質に結合していることを意味する。ポリエステルへのキトサンの共有結合に必要とされる官能性は、物品の塩基での加水分解、引き続く無機酸処理によって成し遂げられる。その次に、カルボキシル基は水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドで活性化され、キトサンはテレフタル酸含有ポリマー鎖に直接結合される。
【0013】
ポリエステルは、ジオールとジカルボン酸とから準備されたそれらのポリマーを含む。ポリエステルの準備に使用できるジカルボン酸には、非置換および置換の芳香族、脂肪族、不飽和、および脂環式ジカルボン酸ならびに2個の炭素〜36個の炭素を有するジカルボン酸の低級アルキルエステルが含まれるが、それらに限定されない。望ましいジカルボン酸成分の具体例には、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジメチル−2,6−ナフタレート、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジメチル−2,7−ナフタレート、3,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジメチル、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジメチル、3,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸ジメチル、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸ジメチル、3,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸ジメチル、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸ジメチル、3,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸ジメチル、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ジメチル−1,4−ナフタレート、4,4’−メチレンビス(安息香酸)、4,4’−メチレンビス(安息香酸)ジメチル、蓚酸、蓚酸ジメチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、コハク酸、コハク酸ジメチル、メチルコハク酸、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、3−メチルアジピン酸、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ウンデカン二酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,1−シクロヘキサン二酢酸、5−スルホ−ジメチルイソフタレートの金属塩、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸などおよびそれらから誘導された混合物が挙げられる。
【0014】
ポリエステルの準備に有用なジオールには、2個の炭素原子〜36個の炭素原子を有する非置換、置換、直鎖、分岐、環式の脂肪族、脂肪族−芳香族または芳香族ジオールが含まれるが、それらに限定されない。望ましいジオール成分の具体例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、ダイマージオール、イソソルビド、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(ブチレンエーテル)グリコールなどをはじめとするジオールまたはポリオールとアルキレンオキシドとの反応生成物によって製造された長鎖ジオールおよびポリオールならびにそれらから誘導された混合物が挙げられる。
【0015】
本明細書で有用な好ましいポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)(「2GT」)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(「3GT」)、ならびにそれらのブレンドおよび共重合体である。
【0016】
用語「ポリエステル含有物品」は本明細書で用いるところでは面積で少なくとも10%ポリエステルの表面組成を有する物品を意味する。
【0017】
衣料用途では、ポリエステルを含む衣類は、アクリル、羊毛、絹、綿、リンネル、亜麻、麻、レーヨン、セルロース、木材パルプ、酢酸セルロースまたは三酢酸セルロース、ナイロン6またはナイロン66、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(商標ノメックス(Nomex)(登録商標)で本願特許出願人、米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE,USA)から入手可能な「PMIA」)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)で本願特許出願人から入手可能な「PPTA」)、ポリプロピレンおよびポリエチレンのようなポリオレフィン、繊維ガラス、ライクラ(Lycra)(登録商標)スパンデックス(本願特許出願人から入手可能)、ならびにエラストマーのような他の成分をしばしば含む。ポリ(エチレンテレフタレート)以外のポリエステル、例えば、ファイバフィル中にバインダー繊維として使用される低溶融温度の共重合体もまた存在してもよい。
【0018】
上にリストされた繊維の組合せを追加便益のために本発明で使用することができる。かかる繊維組合せは、当業者に公知の任意の方法によって準備することができる。2つのポリマーが並んでまたはシース−コア配置で配置されている「複合」フィラメントは紡糸工程中に形成することができる。参照により本明細書に援用される米国特許公報(特許文献3)に開示されているような2GT/3GT複合繊維は本発明で有用な一例である。
【0019】
繊維組合せの別の準備方法はステープルファイバーの均質ブレンドによってである、すなわち、スフ糸が紡糸される時に、異なる繊維をカーディングまたは延伸法で組み合わせることができる。繊維組合せはまた、異なる組成の糸、ステープル、またはフィラメントを同じ布へと編むまたは織ることによって準備することもできる。ライクラ(登録商標)スパンデックス(本願特許出願人、デラウェア州ウィルミントン)のケースでは、スパンデックスは、紡糸工程か編みでの被覆のような布製造中かのどちらかでスフ糸に加えられる。
【0020】
本発明の方法の第1工程として、ポリエステル含有物品は前処理される。この前処理は、前記ポリエステル含有物品の表面を加水分解してキトサン基のその次の結合の準備をすることを含む。前処理は、カルボキシレート基を生み出すためにポリエステル含有物品中エステル結合の幾らかの加水分解によって達成される。
【0021】
加水分解処理は、塩基の水溶液へのポリエステル含有物品の曝露を含む。すべての可溶性I、II、およびIII族水酸化物、水酸化アンモニウム、および水酸化アルキル置換アンモニウムを、加水分解を達成するために使用することができる。塩基は、水または水と1つまたは複数の水溶性有機溶媒との混合物に溶解することができる。好適な水溶性有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0022】
本発明で有用な塩基は、典型的にはアルカリ金属水酸化物、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。水溶液中の塩基の濃度は決定的に重要ではなく、使用中の塩基および処理温度に依存する。水酸化ナトリウムのケースでは、濃度は1〜40重量%の範囲であってもよい。処理の温度は決定的に重要ではなく、室温が好ましい。10〜90℃の温度範囲が用いられてもよい。より高濃度の塩基ではより低温が好ましい。物品は、その重量を1〜30%、好ましくは1〜10%だけ減らすのに十分なほど長く塩基溶液に曝される。処理時間は塩基溶液の濃度および温度に依存するだろうし、塩基溶液の濃度が高ければ高いほど、および用いられる温度が高ければ高いほど、処理の時間は短くなる。2〜30秒ほどに短い時間を成功裡に用いることができる。任意選択により、物品は次に塩基溶液の大部分を除去するために水で洗浄される。
【0023】
加水分解処理の後、物品は加水分解処理によって生じたカルボキシレート基のpKa未満のまたはそれに等しいpHまで強い無機酸での処理によって酸性化される。物品は、水洗の関与なしに水性無機酸または有機酸で直接酸性化することができる。しかしながら、水性洗浄が酸の使用量を最小限にするために好ましい。本明細書で用いるところでは、用語「強い」無機酸は、pH2未満のpHを有する酸を意味する。本明細書で有用な無機酸には、例えば、塩酸、硫酸およびリン酸が含まれる。塩酸が最も好ましい。酸性化工程の時間および温度は決定的に重要ではなく、室温で2秒〜30分の範囲の時間を成功裡に用いることができる。当業者に明らかであるように、上記のように、ポリエステルは、処理されつつある物品中で多種多様な他の成分と組み合わされているかもしれないので、加水分解処理の時間および温度ならびに使用するのに適切な塩基溶液の濃度もまた物品の全体組成によって影響を受けるであろう。
【0024】
任意選択により、物品は無機酸の大部分を除去するために再び水で洗浄される。物品は次に次の工程に直接使用されてもよいし、または任意選択により乾燥されてもよい。
【0025】
いかなる特定の理論によって縛られることを望まないが、遊離カルボン酸基の形成をもたらす、カルボキシレ−ト基のpKaより下への酸性化は、その次の工程でカルボキシル化学種とキトサンとの反応の速度および効能を大きく上げると考えられる。
【0026】
酸性化工程の後、物品は水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドの水溶液で処理される。「カルボジイミド」は一般式RN=C=NR(ここで、RおよびRは同一であっても異なってもよい)を有する化合物の誘導体を意味する。例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドはC11−N=C=N−C11である((非特許文献3)を参照されたい)。 「R」は、炭素を介して結合した、飽和または不飽和、および非置換または置換であってもよい脂肪族、炭素環式、または複素環化合物に由来する一価基を意味するが、それは−CN、−CNO、−CNS、もしくは−CNSe基に対しては、または>C=X(ここで、XはO、S、Se、Te、NH、もしくは置換NHである)によって直接結合した基に対しては用いられない(非特許文献4)。1つの好ましいかかるカルボジイミドは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)であり、それは、例えば、アドバンスド・ケムテック(Advanced Chemtech)(ケンタッキー州ルイスビル(Louisville,Kentucky))製の塩酸塩として商業的に入手可能である。好適な濃度は0.01〜2重量/容量%、好ましくは0.1w/v%である。反応は約20〜80℃で行うことができ、好ましくは室温で行うことができる。曝露時間は約5秒〜約60分、好ましくは繊維については約6秒および布については約30分の範囲であることができる。カルボジイミドでの処理の後、物品は任意選択により水で洗浄される。.
【0027】
物品は次にキトサンで処理される。これは物品を、キトサン剤を含有する溶液に浸漬するまたはそれで濡らすことを含む。用語「キトサン剤」は本明細書で用いるところではキトサン、キトサン塩、およびキトサン誘導体をはじめとするすべてのキトサン−ベースの部分を意味する。キトサン剤を含む溶液は水性であってもよい。しかしながら、キトサンそれ自体は水に可溶性ではないので、キトサンは溶液に可溶化されてもよい。溶解性は、モノ−、ジ−およびポリカルボン酸よりなる群から選択された水溶性の有機酸の希薄溶液にキトサンを加えることによって得られる。これは、キトサンが酸と反応して本明細書では「キトサン塩」と言われる水溶性の塩を形成することを可能にする。あるいはまた、水溶性であるN−およびO−カルボキシアルキルキトサンをはじめとする「キトサン誘導体」をキトサン塩の代わりに水中で直接使用することができる。キトサンはまた、塩化リチウムの存在下でのジメチルアセトアミド、またはN−メチルモルホリン−N−オキシドのような特別な溶媒に溶解されてもよい。かかる可溶化キトサン溶液は、キトサン塩またはキトサン誘導体を含有する水溶液の代わりに本発明で使用することができる。
【0028】
典型的には、キトサン溶液は酢酸水溶液であり、例えば、2%キトサンおよび0.75%酢酸または2%キトサンおよび1.5%酢酸水を含有する水性溶液である。処理の時間は典型的には5〜30分である。処理の温度は決定的に重要ではなく、室温が好ましい。キトサン溶液での処理の後、過剰の溶液は滴り落ちるにまかせられてもよく、または絞り取りまたは回転によって除去されてもよい。
【0029】
任意選択により、処理物品は次にオーブン乾燥または周囲風乾とオーブン乾燥との組合せによって乾燥される。
【0030】
任意選択により、物品は次に室温〜190℃の範囲の温度で、好ましくは室温で約24時間または約110℃で約1時間空気または窒素中で加熱される。
【0031】
上の方法によって準備された物品は、下の実施例で例示されるように、抗菌特性を示し、かつ、かかる特性を多くの洗濯後に保持する。用語「抗菌性」は本明細書で用いるところでは殺菌性および殺真菌性の両方を意味する。さらに、本明細書で処理されたポリエステル含有繊維および糸は、靱性、伸びおよび手触りに関して有利な物理的性質を示す。
【0032】
前記抗菌特性は、任意選択により、可溶性金属塩、例えば、可溶性銀塩、可溶性銅塩および可溶性亜鉛塩での処理によってさらに強化されてもよい。本発明の好ましい金属塩は、硫酸亜鉛、硫酸銅または硝酸銀の水溶液である。金属塩は典型的には水中の塩の希薄(0.1〜5%)溶液に浸漬するまたはそれをパディングすることによって付けられる。強化の程度は、使用された特定の金属塩、その濃度、曝露の時間および温度、ならびに具体的なキトサン処理、すなわち、キトサン剤のタイプ、その濃度、温度および曝露の時間に依存する。
【0033】
本発明の上の方法によって準備された物品はまた、改善された帯電防止性をも示す。帯電防止性は、静電荷を分散させる、および静電気の蓄積を防ぐテキスタイル材料の能力に関する(非特許文献5)。
【0034】
さらなる任意の後処理は、キトサン処理物品への、または金属塩処理キトサン処理物品へのカルボキシル基含有ポリマーの付着を含む。用語「カルボキシル基含有ポリマー」は本明細書で用いるところではポリマー主鎖に結合した側鎖にカルボン酸基を含有するポリマーを意味する。カルボキシル基含有ポリマー、最も好ましくはポリアクリル酸は、典型的には浸漬またはパディングによって希薄水溶液から付けられる。
【0035】
上記のキトサン処理物品、金属塩処理物品またはカルボキシル基含有ポリマー処理物品のいかなるものも、さらなるキトサン溶液処理から恩恵を受けるかもしれない。本発明の方法によるキトサンでの第1処理を受けた、最終物品の表面が金属塩またはキトサン溶液で処理されるという条件で、任意の順で金属塩、カルボキシル基含有ポリマーおよび/または追加キトサンでの1つまたは複数の処理をさらに受ける物品は本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、キトサン−グラフト化ポリエステル含有物品を窒素または周囲雰囲気下で室温〜190℃の温度に30秒〜24時間加熱する工程をさらに含む。
【0037】
本発明の物品はまた、連続プロセスで製造することもできる。本プロセスは本明細書の図面の図1で例示される。図1について今言及すると、本発明の次の順次工程を行うための装置が示される。
(a)ポリエステル含有物品(1)がその上に配置される供給ステーション(2)が提供される。供給ステーションは典型的には1つまたは複数の供給ローラー(10)を含むであろう。
(b)物品は、前記物品が塩基性溶液に曝される第1処理ステーション(4)を通して供給ステーションから引っ張られる。該処理ステーションは本明細書では典型的には浸漬浴トレーまたはタンクであろう。
(c)物品は任意選択により、工程(b)−処理物品が水に曝される第2処理ステーション(5)を通して第1処理ステーションから引っ張られる。任意選択により、1つまたは任意の数の延伸ロール(11)が処理ステーション間で物品を導くのを助けるかもしれない、延伸ロール(11)のような延伸ロールは、当該技術で一般に公知であるように連続プロセスの任意の工程に沿って置かれてもよい。
(d)第2処理ステーションからの物品は、工程(c)−処理物品が強い無機酸溶液に曝される第3処理ステーション(6)を通して引っ張られる。
(e)任意選択により、第3処理ステーションからの物品は、工程(d)−処理物品が水に曝される第4処理ステーション(7)を通して引っ張られる。
(f)物品は次に、工程(d)−または工程(e)−処理物品が水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドを含む溶液に曝される第5処理ステーション(8)を通して引っ張られる。
(g)任意選択により、物品は次に、工程(f)−処理物品が水に曝される第6処理ステーション(13)を通して引っ張られる。
(h)物品は次に、キトサン剤を含む第7処理ステーションを通して引っ張られる。上に議論されたように、キトサン剤はキトサン、キトサン塩およびキトサン誘導体よりなる群から選択される。
(i)任意選択により、それがキトサン処理ステーションを出た後で、工程(h)−処理物品はヒーターロール・アセンブリ(9)のようなヒーターで加熱されてもよい。
(j)工程(h)−または工程(i)−処理物品は次に巻取ステーション(3)上で受け取られ、そしてその上に蓄積する。処理物品は典型的には横行ガイド(12)を介して典型的には1つまたは複数の厚紙または樹脂チューブである巻取ステーション(3)上へ巻き取られて紡績ボビンを形成する。
【0038】
供給ステーション、処理ステーション、ヒーター、および巻取部品は、繊維および糸の連続処理に便利な当該技術で公知の任意の手段であってもよい(例えば、(非特許文献6)を参照されたい)。連続プロセスは、商業的規模でポリエステル含有繊維または糸を処理するために特に適切である。
【0039】
本発明の好ましい物品は繊維;織布および不織布をはじめとする布;フィラメント;フィルム;ならびにそれらから準備された物品および構造物の形態である。「不織」布とは、布の層が、布へ織られておらず、むしろシート、特にティッシューへ形成されている繊維よりなる布を意味する。
【0040】
本発明の抗菌性物品は、スポーツウェア、アクティブウェア、インティメート・アパレル(例えば、下着)、水着、保護スポーツパッド、および医療用衣服(例えば、ガウン、マスク、手袋、ヘッドカバー)をはじめとする衣料;包帯、医療用ドレープ、およびおむつをはじめとする洗えるヘルスケア製品;ファイバフィル、寝具類、ベッドリネン、窓処理剤、カーペットおよびフローリング部品、室内装飾部品、タオル、洗浄クロス、ダストクロス、自動車ワイプ、家庭クリーニングワイプ、カウンターワイプ、モップ、テーブルクロス、および表面材をはじめとする家庭用品;ならびに食品および他の容器、クリーニングクロス、タオル、および表面材をはじめとする食品加工/サービスのような用途での適用を見いだすであろう。用語「ワイプ」は本明細書で用いるところでは、特に表面を拭くためであるが前記表面をきれいにするためだけでないシート様の物品を意味する。
【実施例】
【0041】
(方法)
(洗濯)
試験検体をAATCC試験方法61の2A試験手順に従って洗濯した。
【0042】
(抗菌特性)
処理物品を、次の通り、材料の抗菌性試験のための振盪フラスコ試験(Shake Flask Test for Antimicrobial Testing of Materials)によって抗菌特性について試験した。
1.単一の、バクテリアまたは酵母寒天プレート培養物からの分離コロニーを滅菌フラスコ中の15〜25mlのトリプチケースソイブロス(Trypticase Soy Broth)(TSB)に接種した。それを、振盪ありまたはなしで(特定菌株の適切な曝気を選択して)25〜37℃で(特定微生物にとって最適成長温度を用いて)16〜24時間培養した。糸状菌については、胞子形成培養物を寒天プレート上に調製した。
2.一晩のバクテリアまたは酵母培養物をpH6.0〜7.0の滅菌リン酸塩バッファー(下を参照されたい)中へ希釈してml当たりおおよそ10コロニー形成単位(cfu/ml)を得た。必要としたリン酸塩バッファーの総容量は50ml×試験フラスコの数(対照を含めて)であった。糸状菌については、10芽胞/mlの芽胞懸濁液を調製した。芽胞懸濁液は、滅菌した生理食塩水またはリン酸塩バッファーであふれさせた寒天プレート培養物からの芽胞を穏やかに再懸濁することによって調製した。初期接種原カウントを得るために、10−4と10−3の最終希釈液(リン酸塩バッファーで調製した)をトリプチケースソイアガー(TSA)プレート上へ正副2通り一面被覆した(plated)。プレートを25〜37℃で一晩培養した。
3.50mlの接種されたリン酸塩バッファーを、0.5gの試験されるべき材料を含有する各滅菌試験フラスコ中へ移した。また、何の試験材料もなしの接種されたリン酸塩バッファーおよび非接種のリン酸塩バッファーの対照フラスコも調製した。
4.すべてのフラスコを手首アクション振盪機上に置き、室温で激しく振盪しながら培養した。すべてのフラスコを定期的にサンプリングし、適切な希釈物をTSAプレート上へ一面被覆した。TSAプレートを25〜37℃で16〜48時間培養し、次にコロニーを数えた。
5.コロニー数は、ml当たりのコロニー形成単位(cfu/ml)の数として報告した。
6.活性定数、Δt値は次の通り計算した。Δt=C−B(ここで、Δtは接触時間tについての活性定数であり、Cは平均1og10(X時間培養後の未処理対照材料のフラスコ中の微生物の密度)であり、Bは平均1og10(X時間培養後の処理材料のフラスコ中の微生物の密度)である)。Δtは典型的には4、6、または24時間で計算され、Δtとして表されてもよい。
【0043】
ストック・リン酸塩バッファー:
一塩基性リン酸カリウム 22.4g
二塩基性リン酸カリウム 56.0g
脱イオン水 1000mlまで増やされる容量
リン酸塩バッファーのpHをNaOHかHClかのどちらかでpH6.0〜7.0に調整した。ストック・リン酸塩バッファーを濾過し、滅菌し、使用まで4℃で保管した。実用リン酸塩バッファーは、1mlのストック・リン酸塩バッファーを800mlの滅菌脱イオン水に希釈することによって調製した。
【0044】
(キトサングラフト化2GT標準ポリエステル編布の準備)
ポリエステル布を10%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、90分間穏やかに振盪した。それを次に水で洗浄し、1M塩酸水溶液中に30分間浸漬し、脱イオン水で洗浄し、24時間風乾した。布を次に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)の0.1%(w/v)水溶液に3時間浸漬した。布を次に脱イオン水で洗浄し、1.5%酢酸を含有する2重量%水性キトサン溶液に30分間浸漬した。キトサンは、ノルウェー国プリメックス・イングリディエンツASA(Primex Ingredients ASA,Norway)製の食品グレードのキトクリア(Chitoclear)(登録商標)キトサン、分子量75,000であった。キトサンのN−脱アセチル化の程度は、プロトンおよびカーボン13NMR分光法で確定されるように90%より上であった。分子量は文献に報告されるような標準相対粘度測定を用いて推定した。過剰のキトサン溶液を圧搾し、布を24時間風乾した。必要ならば、(手順A)布を存在するかもしれないいかなる有機異物をも除去するためにアセトニトリルで任意選択により洗浄した。手順Bは何の有機溶媒洗浄も用いなかった。処理布を次に1時間風乾し、引き続き空気中110℃で1時間加熱するか、周囲温度(約25℃)で少なくとも1日放置するかのどちらかをした。
【0045】
(実施例1)
キトサンを上記のようにポリエステル布(8インチ×8インチ、5.59gの重さがある2GT編布) 上へグラフトした。キトサン処理布の重量は5.73g、0.14gの増加であった。アセトニトリルで洗浄しなかった(すなわち、手順B)サンプルは空気中110℃で1時間加熱するか、または空気中周囲温度(約25℃)で少なくとも1日放置した。アセトニトリルで洗浄した(すなわち、手順A)サンプルは空気中110℃で1時間加熱した。
【0046】
布サンプルを上記のように大腸菌(E.coli)ATCC25922に対する抗菌性効能について試験した。図2のデータは、高温硬化がポリエステル表面上のキトサンの抗菌活性を維持するために必要ではないことを明らかに示す。
【0047】
(実施例2)
手順Bを用いて実施例1で準備し、110℃で1時間硬化させた布の小サンプルを、オレンジII(Orange II)染料(0.7%酢酸水中0.5g/l)で5分間処理し、脱イオン水で十分に洗浄し、風乾した。強い橙色着色は布上のキトサンの存在を示唆した。処理しなかったまたは苛性アルカリで処理しただけの2GT布は、オレンジII染料で同様に処理した時にかかる着色を示さなかった。1つの2A(5洗浄サイクルと同等の)、4つの2A(20洗浄サイクルと同等の)および10の2A(50洗浄サイクルと同等の)洗浄後に、カルボジイミド活性化キトサン処理布は依然として橙色であり、かなりの量のキトサンがポリエステル布の表面を依然として被覆していることを示唆した。
【0048】
(実施例3)
手順Aを用いて実施例1で準備し、110℃で1時間硬化させたキトサン処理2GT布を、AATCC試験方法61、試験2Aに従って洗濯した。洗浄したカルボジイミド活性化キトサン処理布および同様に洗浄した2GT対照布の抗菌性試験の結果を図3に示す。5洗浄サイクルの同等量(すなわち、1つの2A洗浄)の後に、キトサン処理布は24時間内に大腸菌すべてを殺した。50洗浄サイクルの同等量(10の2A洗浄)の後でさえも、キトサン処理布は抗菌活性を依然として有した。対照2GT布は何の抗菌活性も示さなかった。
【0049】
(実施例4)
手順Bを用いて実施例1でのように準備し、110℃で1時間硬化させたカルボジイミド活性化キトサン処理布は、抗菌活性を同様に保持して(図4)、AATCC試験方法61、試験2Aプロトコール(1つの2A洗浄)に従って様々な一般家庭用洗剤を使って洗濯された。
【0050】
(実施例5)
キトサンを、110℃で1時間硬化させて手順Bを用いて、実施例1でのようにポリエステル含有布(60:40の2GT:綿ブレンド)上へグラフトする。処理布を皿布巾にする。皿布巾をまた未処理布からも作製する。各布巾の一片を、上記のように抗菌性効能について試験する。処理布から作製した皿布巾の一片は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853、および大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922に対して抗菌活性を示すが、未処理対照は示さない。処理皿布巾は次にAATCC試験方法61、試験2Aに従って10回洗濯され、黄色ブドウ球菌ATCC6538、緑膿菌ATCC27853、および大腸菌ATCC25922に対するその抗菌活性を保持していることが示される。
【0051】
(実施例6)
26ヶ月齢幼児、10人の男児および10人の女児は、110℃で硬化させて手順Bを用いて、実施例1でのようにキトサンでグラフトしたポリエステル含有繊維を含有する一連の布おむつを1ヶ月間着用する。同様なグループの10人の男児および10人の女児の6ヶ月齢幼児は、1ヶ月間、そのように処理しなかった一連の布おむつを着用する。すべてのおむつを、熱洗浄/冷すすぎサイクルでタイド(Tide)(登録商標)洗濯洗剤(プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー、オハイオ州シンシナチ(Proctor & Gamble Company,Cincinnati,OH))を用いて10回洗濯する。各おむつからのサンプルを上記のように抗菌性効能について試験する。処理繊維から製造したサンプルは黄色ブドウ球菌ATCC6538に対して抗菌活性を示すが、未処理のものは示さない。また、処理おむつを着用する群の間でのおむつかぶれの発生率は、対照群の間での発生率より低い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】抗菌性ポリエステル含有物品を製造するための本発明の連続プロセスの略図である。
【図2】共有キトサン結合化学処理を受けたポリエステル布の大腸菌ATCC25922に対する抗菌効果を示す図である。
【図3】洗濯(1、4、および10の2A洗浄サイクル)後の共有キトサン結合化学処理を受けたポリエステル布の大腸菌ATCC25922に対する抗菌効果を示す図である。
【図4】様々な家庭用洗剤で洗濯後の共有キトサン結合化学処理を受けたポリエステル布の大腸菌ATCC25922に対する抗菌効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエステル含有物品を提供する工程と、
(b)ポリエステル含有物品を塩基性溶液と接触させる工程と、
(c)任意選択により、工程(b)で生じた物品を洗浄する工程と、
(d)工程(b)または工程(c)で生じた物品を強い無機酸溶液と接触させる工程と、
(e)任意選択により、工程(d)で生じた物品を水で洗浄する工程と、
(f)工程(d)または工程(e)で生じた物品を水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドを含む溶液と接触させる工程と、
(g)任意選択により、工程(f)で生じた物品を水で洗浄する工程と、
(h)工程(f)または工程(g)で生じた物品を、キトサン、キトサン塩およびキトサン誘導体よりなる群から選択されたキトサン剤を含む溶液と接触させる工程と、
(i)任意選択により、工程(h)で生じた物品を加熱する工程と
の順次工程を含むことを特徴とする抗菌性ポリエステル含有物品の準備方法。
【請求項2】
(a)ポリエステル含有物品がその上に配置される供給ステーションとポリエステル含有物品を受け取ることができる巻取ステーションとを提供する工程と、
(b)供給ステーションからの物品を、前記物品が塩基性溶液と接触させられる第1処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(c)任意選択により、工程(b)−処理物品を、物品が水と接触させられる第2処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(d)工程(b)−または工程(c)−処理物品を、物品が強い無機酸溶液と接触させられる第3処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(e)任意選択により、工程(d)−処理物品を、物品が脱イオン水と接触させられる第4処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(f)工程(d)−または工程(e)−処理物品を、物品が水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドを含む溶液と接触させられる第5処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(g)任意選択により、工程(f)−処理物品を、工程(f)−処理物品が水と接触させられる第6処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(h)工程(f)−または工程(g)−処理物品を、物品がキトサン、キトサン塩およびキトサン誘導体よりなる群から選択されたキトサン剤を含む溶液と接触させられる第7処理ステーションを通して引っ張る工程と、
(i)任意選択により、工程(h)−処理物品を、それが第5処理ステーションを出た後に加熱する工程と、
(j)工程(h)−または工程(i)−処理物品を巻取ステーション上で受け取られ、かつ、その上で蓄積するようにさせる工程と
の順次工程を含むことを特徴とする抗菌性ポリエステル含有物品の製造方法。
【請求項3】
水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドが1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドの濃度が0.01〜2重量/容量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
水溶性のN,N’−二置換カルボジイミドの濃度が0.1w/v%であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(f)でポリエステル含有物品が水溶性のN,N’−置換カルボジイミドを含む溶液と約5秒〜約60分間接触させられることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
工程(f)、(g)、(h)または(i)で生じた物品を、金属塩を含む溶液;カルボキシル基含有ポリマーを含む溶液;キトサン剤を含む追加の溶液;またはそれらの組合せと接触させる工程をさらに含む方法であって、製造された物品の表面がキトサン、金属塩、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(f)−、(g)−、(h)−、または(i)−処理物品を、金属塩を含む溶液;カルボキシル基含有ポリマーを含む溶液;キトサン剤を含む追加の溶液;またはそれらの組合せを含有する次のステーションを通して引っ張る工程をさらに含む方法であって、製造された物品の表面がキトサン、金属塩またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
金属塩が可溶性銀塩、可溶性銅塩、および可溶性亜鉛塩よりなる群から選択されることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
カルボキシル基含有ポリマーがポリアクリル酸またはナトリウム・カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
ポリエステル含有物品がフィラメント、繊維、糸、織布、不織布、またはフィルムの形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
ポリエステルがポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタレート)、ならびにそれらの共重合体およびブレンドよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
ポリエステル含有物品が、本質的にポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(トリメチレンテレフタレート)とよりなる複合繊維の形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造されることを特徴とする抗菌性ポリエステル含有物品。
【請求項15】
請求項2に記載の方法によって製造されることを特徴とする抗菌性ポリエステル含有物品。
【請求項16】
フィラメント、繊維、糸、布またはフィルムの形態であることを特徴とする請求項14または15に記載のポリエステル含有物品。
【請求項17】
請求項16に記載の抗菌性ポリエステル含有物品を含むことを特徴とする衣料品。
【請求項18】
水着、スポーツウェア、アクティブウェア、保護スポーツパッド、下着、または医療用衣服の形態であることを特徴とする請求項17に記載の衣料品。
【請求項19】
医療用衣服がガウン、マスク、手袋、またはヘッドカバーであることを特徴とする請求項18に記載の衣料品。
【請求項20】
請求項16に記載の抗菌性ポリエステル含有物品を含むことを特徴とする洗えるヘルスケア製品。
【請求項21】
医療用ドレープ、おむつ、および包帯よりなる群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の洗えるヘルスケア製品。
【請求項22】
請求項14または15に記載の抗菌性ポリエステル含有物品を含むことを特徴とする容器。
【請求項23】
請求項14または15に記載の抗菌性ポリエステル含有物品を含むことを特徴とする食品加工または食品サービングのための表面材。
【請求項24】
請求項14または15に記載の抗菌性ポリエステル含有物品を含むことを特徴とする家庭用品。
【請求項25】
ファイバフィル、寝具類、ベッドリネン、窓処理剤、カーペットおよびフローリング部品、室内装飾部品、シーツ、自動車ワイプ、家庭クリーニングワイプ、カウンターワイプ、タオル、 洗浄クロス、ダストクロス、モップ、テーブルクロス、および表面材よりなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の家庭用品。
【請求項26】
金属塩、カルボキシル基含有ポリマー、およびそれらの組合せよりなる群から選択された1つまたは複数の化合物をさらに含むことを特徴とする請求項14または15に記載の抗菌性ポリエステル含有物品。
【請求項27】
金属塩が可溶性銀塩、可溶性銅塩、および可溶性亜鉛塩よりなる群から選択されることを特徴とする請求項26に記載のポリエステル含有物品。
【請求項28】
ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタレート)、またはそれらの共重合体もしくはブレンドであることを特徴とする請求項14または15に記載のポリエステル含有物品。
【請求項29】
本質的にポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(トリメチレンテレフタレート)とよりなる複合繊維の形態であることを特徴とする請求項16に記載のポリエステル含有物品。
【請求項30】
カルボキシル基含有ポリマーがポリアクリル酸またはナトリウム・カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項26に記載のポリエステル含有物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−516358(P2007−516358A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533015(P2006−533015)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/014950
【国際公開番号】WO2004/104292
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】