説明

改善された耐表面磨耗性または耐ピリング性を有する難燃性布地およびそれらを製造する方法

改善された耐ピリング性および/または耐磨耗性を有する難燃性布地および衣服を開示する。布地、その布地を構成する繊維またはヤーン、あるいはその布地から製造された衣服は、繊維、ヤーン、布地または衣服に適用される仕上げ組成物で処理され、次いで硬化される。仕上げ組成物は、繊維、ヤーン、布地または衣服の耐ピリング性および/または耐磨耗性を増大させる。仕上げ組成物は、ポリマー耐磨耗性助剤、アルキルフルオロポリマー、ポリエチレン、および湿潤剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する難燃性布地、耐磨耗性および/または耐ピリング性を付与する布地用の新規な仕上げ組成物、および耐磨耗性および/または耐ピリング性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消火、緊急対応、捜索救助、および隊務に限定されないが、これらを含む多くの職業は、極度の高温および/または火炎に曝されなければならないことがある。このような状況で作業する間に負傷しないために、通常、個人は熱および火炎の両方からその個人を保護するように設計された特別な難燃性材料で構成された防護服を着用する。こうした防護服としては、例えば産業上は一般に防火服と呼ばれる消防士が着用する衣服が挙げられる。防火服は、カバーオール、ズボン、および上着を含む種々の衣服を含むことができる。これらの衣服は、通常、火炎から着用者を保護する外側シェル、衣服への水の浸入を防ぐ湿分バリア、および極度の高温から着用者を防護する熱バリアのような幾つかの材料層を含む。他の種類の防護服は、石油化学工場作業員、電気工事士、隊務に従事する人、および極度の高温および/または火炎から保護する必要がある人のような個人が着用する。
【0003】
消防士およびその他の初期対応者のような緊急隊員に限定されないが、これらを含む一部の個人は、極度の高温または火炎に曝されるだけでなく、水にも曝される。こうした場合、難燃性布地は撥水特性も有することが望ましい。従って、防火服およびその他の防護服は、1つ以上の種類の難燃性繊維で形成された織布を含むものであってよく、これらの布地はまた撥水特性を有するものであってよい。
【0004】
防護服は、火炎、過剰な熱、および磨耗に耐える必要があり、多くの場合、防護服は強くて耐久性のある難燃性材料で構成されている。これらの防護服は高価であるので、布地の耐久性が重要である。磨耗とは、別の表面との擦れにより材料の一部が磨り減ることを指す。布地が磨耗したとしても、難燃性繊維はその難燃性を保持するが、磨耗した防護布地は、撥水性のような他の保護特性を失う場合がある。磨耗した衣服は、消防士、緊急対応士、またはその他の個人が必要とする保護を提供できない。そのため、防護服が磨耗した場合、その防護服は交換する必要がある。従来の防護服よりも交換頻度が低い耐磨耗性が向上した衣服が必要とされている。布地の耐磨耗性は、ASTM規格D3886およびD3884に記載される試験手順のような種々の試験方法論および設備によって測定できる。
【0005】
リング紡績ヤーン、フィラメントヤーン、またはそれらの組み合わせを用いたものを含む多くの防護布地は、ピリング(毛玉)を生じる傾向がある。「ピリング」は、防護布地の表面に形成される、絡まった繊維の比較的小さいボールである。ピリングは、布地を構成する1つ以上の繊維によって防護布地の表面に保持される。大抵の布地はピリングを生じるが、本発明の防護布地は、強い繊維で作製されており、多くの他の繊維よりも強固にピリングを保持する。従って、これらの防護布地上に形成されたピリングは、布地上に堆積する傾向がある。このようなピリングは経時的に蓄積したり、または別の様式では布地の表面で数が増えたりする場合があり、そうでなければ平滑な表面を使い古したかのように、または極端な場合には不体裁にする。場合によっては、防護布地の不体裁な外観は、関連する衣服が質的に劣っていると考えられることになり、ユーザーがその衣服の使用を望まなくなる場合がある。多くの場合、衣服は、その布地がまだユーザーに好適な保護を提供できるにもかかわらず、早期に交換されてしまうことがある。布地の耐ピリング性は、ASTM規格D3512に記載されるランダム・タンブル・ピリング・テスターおよび試験手順のような、種々の試験方法論および設備によって測定できる。
【0006】
布地のピリングを生じる傾向を低減するための従来の技術では、ヤーンを機械的にねじった特定ヤーン、例えば空気ジェット紡績ヤーンを使用する。しかしながら、本発明の布地に使用される一部の繊維を含む一部の繊維は、空気ジェットによって紡績できない。さらに、空気ジェット紡績ヤーンから製造された防護服は依然として、絡まった繊維が残るためにピリングを生じ易くなり、このような布地の表面にはピリングが形成され得る。
【0007】
特に有用な特性を布地に付与するような仕上げ剤で布地を処理することは当該技術分野において既知である。例えば、一部の先行技術の仕上げ剤は、アルキルフルオロポリマーおよびその他の任意添加剤、例えばブロックイソシアネート架橋剤、パラフィン系ワックスなどを含む撥水性仕上げ剤である。他の先行技術の仕上げ剤は、布地および繊維に親水性を付与するために、軟化剤、パーマネントプレス樹脂および親水性ポリマーを含む湿分管理仕上げ剤を含む。どちらにしても、過酷な物理的磨耗に曝された布地は、精密な構成および布地に使用される繊維ブレンドに依存して、ヤーン破断、ピリングの形成、またはその両方を示す傾向にある。
【0008】
先行技術の仕上げ組成物は、ある程度の耐磨耗性および/または耐ピリング性を提供することもできる。一例として、湿潤剤、1つ以上のフルオロポリマー、ワックスフルオロケミカル増量剤/撥水剤、メラミンホルムアルデヒド樹脂、および架橋剤を含む組成物が使用されている。この仕上げ組成物は、以前から既知の製剤が付与する撥水性よりも耐久性のある撥水性を付与するために開発され、布地に適用された。この仕上げ剤は、未処理の布地に比べてある程度の耐磨耗性を付与するが、この仕上げ剤で処理された布地は依然として相当磨耗され易い。例えば、これらの布地は、H−18輪および各輪にて500gの荷重を用いてASTM D3884に従って試験された場合に、最初の糸破断前に約500テーバーの磨耗サイクルに耐えるだけである。
【0009】
改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する布地および防護服が必要とされ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、このような改善された耐磨耗性および/または耐ピリング性を種々の布地に付与できる仕上げ組成物を提供することが望ましい。さらに、改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する難燃性布地および防護服を提供することが望ましい。最終的には、改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する難燃性および撥水性布地および防護服を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的は、本発明の実施形態によって達成される。
【0012】
本発明の実施形態の1つは、先行技術の布地よりも改善された耐磨耗性および/または耐ピリング性を有する布地である。本発明の好ましい実施形態の1つは、難燃性繊維の組成を含む防護布地であり、繊維または布地は新規な仕上げ組成物で処理されており、防護布地は、未処理の防護布地および先行技術の仕上げ組成物で処理された布地よりも改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、難燃性繊維の組成を含む布地から製造される防護服であり、防護服は、先行技術の防護服よりも改善された耐ピリング性および/または耐表面磨耗性を有する。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する防護布地および防護服であり、布地および防護服は、難燃性繊維の組成を含み、布地および防護服はさらに撥水特性を有する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、繊維、布地または衣服に適用でき、それら繊維、布地および衣服に耐磨耗性および/または耐ピリング性を付与する新規な仕上げ組成物である。1つの実施形態において、繊維、布地または衣服は、難燃性である。1つの実施形態では、新規な仕上げ組成物は、少なくともポリマー耐磨耗性助剤、アルキルフルオロポリマー、ポリエチレン、および湿潤剤を含む。この組成物は、組成物で処理された布地の耐磨耗性および/または耐ピリング性を改善することによって先行技術の組成物を改善する。試験は、本発明に従う仕上げ組成物で処理された布地が、未処理の布地または先行技術の仕上げ組成物で処理された布地に比べて改善された耐磨耗性および/または耐ピリング性を示すことを示す。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態は、布地または衣服に改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を付与する方法である。これらの方法は、新規な仕上げ組成物を、繊維、ヤーン、複数の繊維もしくはヤーンを含む布地、または衣服に適用する工程、および仕上げ組成物を硬化させる工程を含む。この方法は、それらの方法に従って処理されていない布地および衣服に比べて改善された耐磨耗性および耐ピリング性を有する布地および衣服を提供する。
【0017】
本明細書に記載される布地および衣服に関連する他のシステム、方法、プロセス、装置、特徴および利点は、次の図面および詳細な説明を検討する際に当業者に明らかであるか、明らかとなる。このような追加のシステム、方法、プロセス、装置、特徴および利点の全ては、この説明内に含まれることを意図し、それらは本発明の範囲内に含まれることを意図する。
【0018】
次の図面を参照して、本発明をよりよく理解することができる。図面中の成分は、必ずしも正確な縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】防護服の部分切り欠き図を示す。
【図2】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/PBI布地の改善された耐磨耗性を示す。
【図3】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/PBI布地の改善された耐磨耗性を示す。
【図4】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/メタ−アラミド布地の改善された耐磨耗性を示す。
【図5】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルおよび市販の同様の布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/メタ−アラミド布地の改善された耐磨耗性を示す。
【図6】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/メタ−アラミド布地の改善された耐磨耗性を示す。
【図7】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルおよび市販の同様の布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/PBI布地の改善された耐磨耗性を示す。
【図8】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/メタ−アラミド布地の改善された耐ピリング性を示す。
【図9】既知の仕上げ組成物で処理された同じ布地のサンプルに比べて、本発明に一致する仕上げ組成物で処理された60/40パラ−アラミド/PBO布地の改善された耐ピリング性示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態では、耐磨耗性および/または耐ピリング性の布地を提供する。磨耗試験は、これらの布地および先行技術の布地に対して行われたが、本発明に一致する布地は、先行技術の製剤で処理された布地よりも少なくとも2倍の耐磨耗性を有していた。例えば、本発明の布地は、H−18輪および各輪にて500gの荷重を用いるASTM D3884の繊維製品布地の耐磨耗性に関する標準試験方法(回転台、ダブルヘッド方法)に従って、最初の糸破断前に少なくとも1000サイクルに耐える。布地の耐磨耗性は、より好ましくは最初の破断前に1500サイクルであり、最も好ましくは最初の破断前に2500サイクルである。さらにまたはあるいは、これらの布地は、ASTM D3512の繊維製品布地の耐ピリング性および他の関連する表面変化についての標準試験方法:ランダム・タンブル・ピリング・テスターに従って、60分後に少なくとも4のピリング性能評価、および90分後に少なくとも3の評価を有する。より好ましくは、布地は、90分後に少なくとも4の評価、および120分後に少なくとも3の評価を有する。
【0021】
実施形態の1つは、布地が難燃性布地である。布地は、好ましくは仕上げ組成物を適用した後にも残る難燃性特性を有する。布地はさらに、仕上げ組成物が適用された後にも残る撥水特性を有することができる。布地は、次の1つ以上の難燃性および撥水性の要件の全てを満たすことが意図される:NFPA1951、NFPA1971、NFPA1977、NFPA2112、NFPA70E、および軍用規格MIL−C−83429BおよびGL−PD−07−12。例えば、NFPA1971によれば、消防士用の外側シェル布地は、火炎曝露後に4.0インチ以下の炭化長を示さなければならず、布地は、ASTM D6413に従って試験された場合に2.0秒未満の残炎を示さなければならない。
【0022】
本発明の布地の可燃性は、ASTM D6413の繊維製品の難燃性についての標準試験方法(垂直試験)に従って試験された。布地は、洗濯前に縦糸方向に0.8インチ以下、および横糸方向に0.6インチ以下の炭化長を示し、5回の洗濯後は縦糸方向に0.6インチ以下、および横糸方向に0.5インチ以下の炭化長を示した。布地は、洗濯前および5回の洗濯後の両方で0.0秒の残炎を示した。布地の撥水特性は、AATCC試験方法22撥水性:噴霧試験およびNFPA1971、8.26耐吸水性試験に従って決定された。布地は、洗濯前に100の水噴霧評価および5回の洗濯後は少なくとも70の水噴霧評価を有している。布地は、洗濯前は1.0%以下の吸水性および5回の洗濯後は2.0%以下の吸水性を示した。
【0023】
難燃性布地は、本発明の実施形態に従う仕上げ組成物で処理された布地であってもよい。好適な難燃性布地としては、アラミド(メタ−アラミドまたはパラ−アラミド)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、メラミン、ポリイミド、ポリイミドアミド、アクリル系繊維(modacrylic fibers)、FRレーヨン、およびこれらの組み合わせのような固有に難燃性の繊維を含む布地が挙げられるが、これらに限定されない。単独または他の繊維との組み合わせで、本発明での使用に適した具体的に市販されている繊維としては、KEVLAR(登録商標)(パラ−アラミド)、NOMEX(登録商標)(メタ−アラミド)、TWARON(登録商標)(パラ−アラミド)、TECHNORA(登録商標)(芳香族コポリアミド)、およびZYLON(登録商標)(ポリベンゾオキサゾール)が挙げられる。他の好適な布地としては、このような繊維を好適な難燃剤で処理することによって難燃性にした非固有の難燃性繊維を含む布地が挙げられる。このような繊維としては、ナイロン、セルロース繊維(例えばレーヨン、綿、アセテート、トリアセテート、リヨセル)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な布地は、平織布地であってもよく、またはこれらに限定されないが、リップストップ、綾織、朱子織、または編物のような別の構成を有する布地であってもよく、これらの構成は伸縮性または非伸縮性であってもよい。難燃性布地はさらに、耐水特性を有していてもよく、および/またはこの布地で構成された衣服が使用され得る外部環境からの吸水を防止または低減するために、耐水性仕上げ剤で処理されてもよい。
【0024】
本発明の別の実施形態は、仕上げ組成物で処理された布地から製造される衣服であり、仕上げ組成物は、布地の耐性、ひいては衣服の耐ピリング性および/または耐表面磨耗性を改善する。衣服は、好ましくは仕上げ組成物が適用された後でも残る難燃特性を有する。衣服はさらに、仕上げ組成物が適用された後にも残る撥水特性を有していてもよい。
【0025】
好ましくは、本発明の防護服の外面の繊維の大部分は、メタ−アラミド、パラ−アラミド、難燃性セルロース系材料(例えば、難燃性綿、レーヨン、またはアセテート)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、またはポリベンズイミダゾール(PBI)のような難燃性材料で構成される。
【0026】
図1は、本発明の布地が特に良く適している防護服100の一例を示す。防護服100は、消防士の出動服(図1に示す)または本明細書に記載されるような難燃性と、耐表面磨耗性および/または耐ピリング性とを有するいずれかの他の衣服または衣服層であることができる。出動服は、例示として使用され、本明細書にて明確に議論されるが、出動服は、例示の目的だけで同定されている。従って、本発明は、消防士の出動服に限定されずに、消防士、救助隊員、軍隊、電気工事士、石油化学工場作業員、またはその他の個人が着用できる実質的にあらゆる衣服に関し、熱保護または別の種類の保護を提供する。このような衣服としては、シャツ、パンツ、上着、カバーオール、ベスト、Tシャツ、下着、手袋、手袋、帽子、ヘルメット、ブーツの裏地などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、衣服に限定されず、それらの用途に拘わらず、難燃性、ならびに耐ピリング性および/または耐表面磨耗性布地についての他の使用を含むことができる。
【0027】
図1に示される衣服100は、衣服100の外面を形成する外側シェル102、衣服の中間層を形成するバリア層104、および衣服100の内面を形成する熱ライナー106を含む。一般参照のために、外面または外側シェル102は、ユーザーまたは着用者が作業中の環境に直接曝されることがあり、熱ライナー106の内面は、ユーザーもしくは着用者と接触する、またはユーザーもしくは着用者が着用している場合がある衣類と接触する面である。本発明の実施形態によれば、衣服100を形成する層102、104もしくは106の一部または全ては、本発明の難燃性、耐ピリング性および/または耐表面磨耗性の布地を含むことができる。
【0028】
本発明の別の実施形態は、耐磨耗性および/または耐ピリング性を繊維、布地および衣服に付与できる布地仕上げ組成物である。本発明の種々の実施形態によれば、仕上げ剤は、繊維、布地もしくは衣服の耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を改善できる。好ましくは、仕上げ剤は布地の難燃性および/または耐水特性を低減することなく、難燃性および/または耐水性の布地の耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を改善できる。仕上げ剤の布地への適用は、処理される布地の所望の物理的特性、布地の組成、および布地のために選択された繊維またはボディヤーンの種類に依存して変更できる。
【0029】
一部の実施形態において、本発明の仕上げ組成物は、洗浄中に生じるフィブリル化の量を低減することによって、パラ−アラミドを含有する特定の布地の洗浄後外観を改善できる。
【0030】
本発明の1つの実施形態によれば、好適な仕上げ剤は、ポリマー架橋耐磨耗性助剤、アルキルフルオロポリマー、ポリエチレン、および湿潤剤の組み合わせであることができる。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、好適な仕上げ剤はさらに、複合縫製/磨耗ポリマー助剤、アルコキシル化脂肪族アミンまたはそれらの誘導体、メラミンホルムアルデヒド樹脂またはN−メチロールステアラミド、難燃性添加剤またはこれらの組み合わせをさらに含んでいてもよい。
【0032】
好適なポリマー架橋耐磨耗性助剤の例としては、ウレタン系ポリマー、例えばEccorez FRU−33(Eastern Color and Chemicalから入手可能な疎水性ウレタンポリマー)、耐磨耗性ポリマー/ペルフルオロアルキル含有ポリマーブレンド、例えばHipel340(Hi−Tech Chemicalsから入手可能な磨耗助剤ポリマーおよびペルフルオロアルキル含有ポリマーの専用ブレンド)およびRidgepel34(Blue Ridge Productsから入手可能なブレンドされたウレタン/ペルフルオロアルキル生成物)、アクリル系ポリマー、例えばFDP−61063(Omnova Solutionsから入手可能な+25℃のTgを有する自己架橋アクリル系コポリマー)およびDicrylan TA−GP(Huntsman Chemicalから入手可能な−14℃のTgを有する自己架橋エチルアクリレートポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なペルフルオロアルキル含有ポリマーとしては、UNIDYNE(登録商標)TG580(Daikin Americaから入手可能な非イオン性C8ペルフルオロアルキルポリマー)、UNIDYNE(登録商標)TG581(Daikin Americaから入手可能なカチオン性フルオロポリマー)、Rainoff F−8(Eastern Color and Chemicalから入手可能なペルフルオロアルキルポリマー)、およびアルキルフルオロポリマーおよび磨耗助剤ポリマーHipel340およびRidgepel34の上述のブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリエチレンとしては、中および高密度ポリエチレンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な湿潤剤としては、Ridgewet NRW(Genwet NRWと以前は呼ばれ、Blue Ridge Productsから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な縫製/磨耗ポリマー助剤としては、中から高密度のポリエチレンエマルション、例えばAquasoft706(Apollo Chemicals、Ware Shoals、SCから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なアルコキシル化脂肪族アミンまたはそれらの誘導体としては、Cartafix U(Clariantから入手可能な、仕上げ剤の移動を阻害し、パッドロールのビルドアップを最小限にするように設計されたアルコキシル化脂肪族アミン誘導体生成物)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なメラミンホルムアルデヒド樹脂としては、Aerotex M3(Cytec Industriesによって製造され、Emerald Carolina Chemicals、Charlotte、NCから入手可能)およびEccoresin M300(Eastern Color and Chemicalから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なN−メチロールステアラミドとしては、Aurapel330(Star Chemicalsから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な難燃性添加剤としては、Amgard CT(Rhodiaから入手可能な、環状ホスフェート難燃性添加剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の別の実施形態において、仕上げプロセスは、繊維、ヤーン、布地、または衣服に仕上げ剤を適用するために使用できる。好ましい実施形態において、仕上げプロセスは、防護布地に仕上げ剤を適用するために使用される。次のプロセスは例示として記載され、本発明に従う他のプロセスの実施形態は、より少ないまたはより多い数の工程を有することができ、他の手順で実施されてもよい。複数の難燃性繊維を含む防護布地は、処理を受け入れる。この点において、防護布地は、実質的に処理されていなくてもよく、または難燃性、撥水性またはその他の組成物で処理されてもよい。しかし、そうした布地は、本明細書では、本発明の方法に従って処理された布地と区別するために、「未処理」であると称される。上述され、本発明に一致する仕上げ組成物は、未処理の防護布地に適用される。仕上げ剤は、次の少なくとも1つを制御することによって硬化される:熱、圧力、または時間。このプロセスによって処理された布地は、改善された耐表面磨耗性および/または耐ピリング性を有する。
【0034】
あるいは、本発明に従う仕上げ組成物は、布地に適用される別の仕上げ組成物に添加される場合に、布地に耐磨耗性および/または耐ピリング性を付与できる。例えば、本発明に従い、ポリマー磨耗助剤、脂肪族アミンまたはそれらの誘導体、ポリエチレン、および場合により1つ以上の縫製/磨耗ポリマー助剤、架橋メラミンホルムアルデヒド樹脂、およびN−メチロールステアラミドを含む仕上げ組成物は、湿分管理仕上げ剤、耐久性プレス仕上げ剤、または抗菌性仕上げ剤が挙げられるが、これらに限定されないような既知の仕上げ組成物に添加できる。この場合、仕上げ剤の組み合わせは、使用される仕上げ剤に依存して、耐磨耗性および/または耐ピリング性を含む種々の有利な特性を付与する。
【0035】
1つの実施形態において、未処理の防護布地は、複数の難燃性繊維、例えばアラミド、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、メラミン、または上述のその他の繊維で形成される。
【0036】
種々の方法論および関連する装置は、未処理の防護布地に仕上げ剤を適用するために使用できる。これらの方法論としては、噴霧適用、パッディング、ロールコーティング、フォーム仕上げ剤の適用、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
一部の実施形態において、仕上げ剤の1つ以上の成分が影響を受けるまで、未処理の防護布地、仕上げ剤、またはその両方に経時的に熱および/または圧力を適用することによって、仕上げ剤を硬化できる。このような場合、硬化は、特定の仕上げ成分を活性化でき、布地との架橋を作り、またはそうでなければ実質的に仕上げ剤を未処理の防護布地と接着できると同時に、未処理の防護布地および/または仕上げ剤に存在し得る過剰な湿分を除去する。限定ではない例として、好適な硬化プロセスは、初期の処理布地および仕上げ剤に約1〜5分間にわたって約300〜約400°Fの熱を適用するオーブン乾燥プロセスであることができる。
【実施例】
【0038】
本発明は、本発明の特定の実施形態を示す次の実施例によってさらに例示されるが、本発明を限定することを意味するものではない。
【0039】
布地および仕上げ剤
本発明に一致する仕上げ組成物で処理された種々の布地の実施例を表Iに記載する。布地は全て、リング紡績ヤーンを含む織布防護布地である。布地1〜3は、消防署のアウターシェル布地であり、布地4および5は、PBOを含有する消防署のアウターシェル布地であり、布地6は軍用防護布地である。
【表1】

【0040】
本発明に一致する種々の仕上げ組成物を表IIに記載する。これらの仕上げ組成物は、(a)Ridgewet NRW(以前はGenwet NRWと呼ばれた)、布地の浸透性を改善するための非再湿潤界面活性剤、(b)磨耗助剤ポリマーおよびペルフルオロアルキル含有ポリマーの専有ブレンドであるHipel340、(c)自己架橋アクリル系コポリマーであるFDP−61063、(d)自己架橋エチルアクリレートポリマーであるDicrylan TA−GP、(e)非イオン性フルオロポリマーであるUnidyne TG580、(f)カチオン性フルオロポリマーであるUnidyne TG581、(g)アルコキシル化脂肪族アミン誘導体であるCartafix U、(h)両方ともメラミンホルムアルデヒド架橋樹脂であるAerotex M3またはEccoresin M300、(i)メラミンホルムアルデヒド樹脂の自己架橋を促進するための触媒であるリン酸ジアンモニウム、(j)DA6で乳化されたポリエチレンエマルションであるAquasoft 706、(k)N−メチロールステアラミド反応性疎水性物質であるAurapel 330R、および(l)環状ホスホネート難燃性添加剤であるAmgardCTの種々の組み合わせを含む。全ての量は、浴の重量に基づくパーセンテージ(owb)として列挙される。
【0041】
表IIはまた、既知の仕上げ組成物SSTを含む。この組成物は、Ridgewet NRW、Eccoresin M300、リン酸ジアンモニウム、(m)Zonyl7040および(n)Zonyl FMX(Huntsmanから入手可能であり、DuPontにより製造されるフルオロポリマー)、および(o)Phobotex JVA(Huntsmanから入手可能なパラフィンワックスのエマルション)を含む。
【表2】

【0042】
仕上げ組成物は、布地1〜5を処理するために使用した。仕上げ剤Iは布地1、2および3を処理するために使用した。仕上げ剤IIは、布地4および5を処理するために使用した。さらに仕上げ剤IIIは、布地6を処理するために使用した。各実施例では、仕上げ剤をディップ仕上げパッド中で適用した。次いで仕上げ剤を乾燥および硬化させた。布地1〜5を乾燥させ、300〜400°Fで1〜5分間硬化させた。布地6を乾燥させ、280〜350°Fで1〜5分間硬化させた。処理された布地は、未処理の布地よりも改善された耐磨耗性および耐ピリング性を有する。改善された耐磨耗性および耐ピリング性は、少なくとも5〜10回の洗濯の間保持される。処理された布地は、未処理の布地の撥水特性および難燃特性を保持し、ランダム・タンブル・ピリング・テスターおよびテーバー磨耗のような標準ASTM試験方法によって測定される場合に、先行技術の仕上げ剤で処理された布地よりも、劇的に改善された耐磨耗性および耐ピリング性を示した。以下の実施例およびデータにおいて、布地は、表Iに示す組成を有し、表IIに示される仕上げ組成物で処理されたか、または先行技術の仕上げ剤SSTで処理された。
【0043】
<試験方法>
耐磨耗性は、H−18輪および各輪で500g荷重を用いるASTM D3884の繊維製品布地の耐磨耗性に関する標準試験方法(回転台、ダブルヘッド方法)に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
耐ピリング性は、ASTM D3512の繊維製品布地の耐ピリング性および他の関連する表面変化についての標準試験方法:ランダム・タンブル・ピリング・テスター方法に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0045】
引張強度は、ASTM D5034の繊維製品布地の破断強度および弾性率についての標準試験方法(Grab Test)に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書により組み込まれる。
【0046】
引裂強度は、ASTM D5733のTrapezoid手順による不織布の引裂強度に関する標準試験方法に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0047】
垂直可燃性は、ASTM D6413の繊維製品の難燃性についての標準試験方法(垂直試験)に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
水噴霧評価は、AATCC試験方法22(AATCC技術マニュアル)撥水性:噴霧試験に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0049】
耐吸水性は、NFPA1971の建築物消火活動および近位消火活動のための保護アンサンブル、8.26耐吸水性試験に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
通気性は、連邦政府試験方法5450.1の通気性、衣類、較正されたオリフィス方法に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0051】
布地サンプルを、それらを洗浄する前(BW)、5回の洗濯後(5x)、または10回の洗濯後(10x)のいずれかで試験した。全ての洗濯は、AATCC試験方法135の家庭洗濯後の布地の寸法変化に従った。具体的には、試料を機械サイクル1:通常/綿試験サイクル、洗浄温度V:60±3℃(140±5°F)、洗濯機条件:18±1galの水レベル、179±2spmの攪拌機速度、12分の洗浄時間、645±15rpmのスピン速度および6分の最終スピン時間での通常サイクル、ならびに乾燥機設定条件:高排気温度(66±5℃、150±10°F)および10分の冷却時間での綿/試験サイクルに従って洗浄および乾燥に供する。
【0052】
本明細書で言及される難燃性基準は、NFPA1951技術的救援時のための保護アンサンブル基準、NFPA1971建築物消火活動および近位消火活動のための保護アンサンブル基準、NFPA1977原野消火活動のための保護衣類および装備基準、NFPA2112突発的火事に対する作業員の保護のための難燃性衣服基準、NFPA70E作業場での電気安全要件のための基準、およびMIL−C−83429BおよびGL−PD−07−12の軍用規格であり、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
<実験>
表Iの布地2のサンプルを、本発明の実施形態に従って布地仕上げ剤(特に表IIからの仕上げ組成物IIおよびIV−VI)で処理するか、または先行技術の仕上げ剤SSTで処理した。各布地サンプルを、H−18輪および各輪上の500g荷重を用いてASTM D3884に従って標準テーバー磨耗試験に供した。本発明に方法によれば、試料を圧力および磨耗動作を制御した条件下にて回転摩擦動作を用いて磨耗した。台に備え付けた試験試料を、2つの磨耗輪のスライド回転に対して垂直軸に向ける。1つの磨耗輪は周辺部に向かって外側の試料を擦り、他方は中央に向かって内側を擦る。得られた磨耗傷は、約30cmの面積にわたって交差した弧のパターンを形成する。
【0054】
各布地サンプルを250サイクルに供し、次いで糸破断に関して調査した。糸破断が観測されない場合は布地サンプルを250回の追加サイクルに供し、再び調査した。このプロセスを、各サンプルについて糸破断が観測されるまで続けた。耐磨耗性試験の結果を以下の表IIIに示す。本発明の実施形態で処理された布地サンプルは、先行技術の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも破断前により多くのサイクルに耐えた。これらのデータは、先行技術の組成物で処理された布地サンプルよりも、耐磨耗性について少なくとも約100%の改善を示す。
【表3】

【0055】
表Iの布地4のサンプルを、本発明の実施形態に従う布地仕上げ剤(特に表IIからの仕上げ組成物IIおよびIV−VI)または先行技術仕上げ剤SSTで処理し、耐ピリング性を決定するために試験に供した。各布地サンプルを、ASTM D3512に従って標準耐ピリング性試験に供した。試験方法D3512に従って、試料を環境チャンバーで調整し、次いで綿片を用いてコルクで裏打ちしたシリンダー中でタンブルする。バイアスカット複製品を所定の回数試験する。サンプルをMacbeth Light Booth(日光条件)にて写真評価基準を用いて評価した。評価1は、非常に重度のピリングを示すが、評価5はピリングを全く示さない。試料を、60、90、および120分間にわたって試験した。これらの試験の結果を以下の表IVに示す。本発明の実施形態で処理された布地は、先行技術SSTの仕上げ組成物で処理された布地よりも耐ピリング性の改善を示した。
【表4】

【0056】
表Iの布地2および4のサンプルを、本発明の実施形態に従う布地仕上げ剤(特に表IIからの仕上げ組成物IIおよびIV−VI)または先行技術の仕上げ剤SSTで処理し、引張強度、引裂強度、難燃性、撥水性および通気性を決定するために種々の試験に供した。
【0057】
引張強度は、荷重下で布地を破断するのに必要な応力である。布地サンプルを、ASTM D5034に従う標準引張試験に供した。この方法に従って、試料を引張機のクランプに中央にて取り付け、試料が破断するまで応力を加える。破断応力および試験試料の伸びについての値を、試験機と連動した機械測り、ダイアル、自動記録チャート、またはコンピュータから得る。各布地の引張強度を縦糸方向(w)および横糸方向(f)にて試験した。これらの試験結果を以下の表Vに示す。これらの結果に基づくと、本発明に従う仕上げ組成物は、布地の引張強度について悪影響を与えない。
【表5】

【0058】
引裂強度は、布地の裂け始めまたは裂けの継続もしくは成長のいずれかに必要な応力である。各布地サンプルをまた、ASTM D5733に従って標準引裂強度試験に供した。この方法に従って、二等辺四辺形のアウトラインを引裂強度決定用に切断した四角形試料にマークする。試料を四辺形の最小辺の中央にてスリットをいれ、引裂き始める。試料にマークされた四辺形の非平行側部を、引張試験機の平行ジョーにクランプする。ジョーの分離を連続的に増加させて応力を適用し、試料を横断する引裂きを成長させる。同時に、顕在する応力を記録する。引裂きを継続するための最大応力を自動チャート記録機またはマイクロプロセッサデータ収集システムから計算する。各布地の引裂強度を、縦糸方向(w)および横糸方向(f)にて決定した。これらの試験の結果を以下の表VIに示す。これらの結果に基づくと、本発明に従う仕上げ組成物は、布地の引裂強度に悪影響を与えない。
【表6】

【0059】
布地の難燃特性をASTM D6413に従って試験した。この方法に従って、布地を垂直に吊り下げ、直火に曝す。炭化長および残炎を各布地について決定する。各布地の炭化長を、縦糸方向(w)および横糸方向(f)にて決定した。本明細書に記載される布地についてこの試験結果を以下の表VIIに示す。これらの結果に基づくと、本発明に従う仕上げ組成物は、布地の難燃特性に悪影響を与えない。
【表7】

【0060】
布地の耐水性をAATCC試験方法22およびNFPA1971、8.26を用いて決定した。AATCC試験方法22に従って、水を制御された条件下で試験試料の緊張面に対して噴霧し、湿潤したパターンを生成させるが、そのサイズは布地の撥水性に依存する。評価は、基準チャートに基づいて写真にて湿潤パターンを比較することで達成される。NFPA1971、8.26に従って、試料を、刺繍用フープに取り付け、ある体積の水を試料に噴霧する。吸い取り紙を使用して過剰の水を除去し、4インチ×4インチ平方をサンプルから切断する。湿潤サンプルを計量し、乾燥し、再び計量する。%吸水(PWA)を、湿潤および乾燥重量の差に基づいて決定する。これらの試験の両方の結果を以下の表VIIIに示す。これらの結果に基づくと、本発明の仕上げ組成物は、布地の撥水特性に悪影響を与えず、これらの布地はNFPA1971の耐水性の要件を満たす。
【0061】
布地の通気性は、連邦試験方法5450.1を用いて決定した。この方法に従って、試料を布オリフィスにわたって僅かな引張で、平滑状態でクランプする。空気は、吸入ファンによって布および較正されたオリフィスを通って引き込まれる。布にかかる圧力降下は、ファンモーターの速度を調節することによって必要な圧力降下に調節される。布を通過する空気体積をこの値およびオリフィスの較正から計算する。この試験の結果を以下の表VIIIに示す。これらの結果に基づくと、本発明の仕上げ組成物は、布地の通気特性に悪影響を与えず、これらの布地はNFPA1971の通気性の要件を満たす。
【表8】

【0062】
図2〜図7に示されるサンプルを、H−18輪および各輪にて500gの荷重を用いて、耐磨耗性についてASTM D3884試験に供したが、これは上記で記載されたものであった。
【0063】
図2は、表Iからの布地1の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルは、表IIに記載されるSST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐磨耗性を、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは試験前に洗濯しなかった。本発明の実施形態に従って処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0064】
図3は、表Iからの布地1の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルを表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルをSST仕上げ組成物で処理した。両方の布地の耐磨耗性を上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルを試験の前に10回洗濯した。本発明の実施形態に従って処理した布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0065】
図4は、表Iからの布地2の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐磨耗性を上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは試験前に洗濯しなかった。本発明の実施形態に従って処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0066】
図5は、表Iからの布地2の2つのサンプル、およびSafety Componentsから入手可能なFusion布地の1つのサンプルを示す。左および中央にある布地サンプルは表Iからの布地2であり、右の布地サンプルはFusionである。Fusionは、50/50p−アラミド/m−アラミドブレンド布地である。左端にある布地2のサンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。中央に示される布地2のサンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。3つの布地サンプルの耐磨耗性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に5回洗濯した。左端にある布地サンプルは、本発明の実施形態に従って処理したものであり、SST仕上げ組成物で処理された布地サンプルおよびFusion布地よりも改善された耐磨耗性を示す。
【0067】
図6は、表Iからの布地2の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐磨耗性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に10回洗濯した。本発明の実施形態に従って処理した布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0068】
図7は、表Iからの布地3の2つのサンプル、およびSafety Componentsから入手可能なMatrix布地の1つのサンプルを示す。左および中央にある布地サンプルは、表Iからの布地3であり、右の布地サンプルはMatrixである。Matrix布地は、60/40p−アラミド/PBI布地である。左の布地3のサンプルは、表IIに記載の仕上げ組成物Iで処理した。中央にある布地3のサンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。3つの布地サンプルの耐磨耗性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは試験前に5回洗濯した。左の布地サンプルは、本発明の実施形態に従って処理したが、SST仕上げ組成物で処理された布地サンプルおよびMatrix布地よりも改善された耐磨耗性を示す。
【0069】
図8および図9に示されるサンプルは、上記で記載した耐ピリング性についてのASTM D3512に供した。
【0070】
図8は、表Iからの布地2の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載された仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルはSST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐ピリング性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に洗濯しなかった。本発明の実施形態で処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐ピリング性を示す。
【0071】
図9は、表Iから布地5の2つのサンプルを示す。底部にある布地サンプルは、表IIに記載の仕上げ組成物Iで処理した。上部の布地サンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐ピリング性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に10回洗濯した。本発明の実施形態に従って処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルより改善された耐ピリング性を示す。
【0072】
上述のものは、本発明の代表的な実施形態および特定の利益について例示、説明、および記載の目的で提供する。例示され、記載された実施形態の変更および適応は、当業者に明らかであり、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく行なうことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の難燃性繊維を含む防護布地であって、前記布地が、ASTM試験方法D3884に従って試験された場合に、最初の糸破断の前に少なくとも約1000サイクルの耐磨耗性を有し、および前記布地が、AATCC試験方法135に従って、10回洗濯された後にその耐磨耗性を保持する、防護布地。
【請求項2】
前記耐磨耗性が、最初の糸破断の前に少なくとも約1500サイクルである、請求項1に記載の防護布地。
【請求項3】
前記耐磨耗性が、最初の糸破断前に少なくとも約2500サイクルである、請求項2に記載の防護布地。
【請求項4】
前記布地が、NFPA1951、NFPA1971、NFPA1977、NFPA2112、軍用規格MIL−C−83429B、または軍用規格GL−PD−07−12の1つ以上の全ての難燃性要件を満たす、請求項1に記載の防護布地。
【請求項5】
前記布地が、AATCC試験方法135に従って、5回洗濯された後にその難燃特性を保持する、請求項4に記載の防護布地。
【請求項6】
前記布地が、NFPA1951、NFPA1971、NFPA1977、NFPA2112、軍用規格MIL−C−83429B、または軍用規格GL−PD−07−12の1つ以上の全ての撥水性要件を満たす、請求項1に記載の防護布地。
【請求項7】
前記布地が、AATCC試験方法135に従って、5回洗濯された後にその撥水特性を保持する、請求項1に記載の防護布地。
【請求項8】
前記布地が、AATCC試験方法22によって決定されるような、約100の水噴霧評価を含む撥水特性を有し、およびNFPA1971,8.26によって決定されるような、約1.0%以下の吸水性を有する、請求項1に記載の防護布地。
【請求項9】
前記布地が、AATCC試験方法22によって決定されるような、少なくとも約70の水噴霧評価を含む撥水特性を有し、およびNFPA1971,8.26によって決定されるような、約2.0%以下の吸水性を有し、前記布地が、AATCC試験方法135に従って、5回洗濯された後にその撥水特性を保持する、請求項1に記載の防護布地。
【請求項10】
前記布地が、ASTM試験方法D3512に従って試験された場合に、60分後に少なくとも4のピリング性評価を有し、および90分後に少なくとも3の評価を有する、請求項1に記載の防護布地。
【請求項11】
前記ピリング性評価が、90分後に少なくとも4であり、および120分後に少なくとも3である、請求項10に記載の防護布地。
【請求項12】
複数の難燃性繊維を含む防護布地であって、前記布地がポリマー耐磨耗性助剤、アルキルフルオロポリマー、およびポリエチレンを含む仕上げ剤を含み、前記布地が、耐磨耗性について前記仕上げ剤を含まない同じ布地のサンプルよりも少なくとも約100%の改善を示し、前記布地が、AATCC試験方法135に従って、10回洗濯された後にその耐磨耗性を保持する、防護布地。
【請求項13】
前記布地が、ASTM試験方法D3884に従って試験された場合に、最初の糸破断の前に少なくとも約1000サイクルの耐磨耗性を有する、請求項12に記載の防護布地。
【請求項14】
前記仕上げ剤がさらに、アルコキシル化脂肪族アミンまたはそれらの誘導体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、N−メチロールステアラミド、またはこれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載の防護布地。
【請求項15】
前記仕上げ剤がさらに難燃剤を含む、請求項12に記載の防護布地。
【請求項16】
前記難燃性繊維の少なくとも一部が、アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリイミドアミド繊維、アクリル系繊維、またはFRレーヨン繊維の少なくとも1つを含む固有に難燃性の繊維である、請求項12に記載の防護布地。
【請求項17】
前記難燃性繊維の少なくとも一部が、ナイロン繊維、セルロース系繊維、レーヨン繊維、綿繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、またはリオセル繊維の少なくとも1つを含み、前記難燃性繊維の少なくとも一部が難燃剤で処理されている、請求項12に記載の防護布地。
【請求項18】
前記布地が、平織布地、リップストップ、綾織、朱子織、または編物布地を含み、前記布地が伸縮性または非伸縮性である、請求項12に記載の防護布地。
【請求項19】
請求項12に記載の防護布地を含む防護服。
【請求項20】
前記布地が、ポリマー耐磨耗性助剤、アルキルフルオロポリマー、およびポリエチレンを含む仕上げ剤を含む、複数の難燃性繊維を含む防護布地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−509354(P2011−509354A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541579(P2010−541579)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/030111
【国際公開番号】WO2009/089155
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(505451040)サザンミルズ インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Southern Mills,Inc.
【Fターム(参考)】