説明

改善された色品質を有するN−アルキルラクタムの製造方法

N−アルキルラクタムに0.01〜10質量%のC1〜10のアルコール、または0.01〜10質量%のC1〜10のアルコールを遊離する化合物を添加する、改善された色品質を有するN−アルキルラクタムの製造方法である。少なくとも99.0質量%のN−アルキルラクタムと、100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコール、または100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコールを遊離する、アセタール、アミナールまたはオルトエステルを含む混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された色品質(Farbqualitaet)を有するN−アルキルラクタムの製造方法、および少なくとも99.0質量%のN−アルキルラクタムと、100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコール、または100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコールを遊離する、アセタール、アミナール、またはオルトエステルを含む混合物に関する。
【0002】
N−アルキルラクタムは化学工業において重要な製品である。それらの中でも最も広く普及しているのは、N−アルキルピロリドン(五員環のN−アルキルラクタム)である。
【0003】
N−アルキルピロリドンは例えば有機溶剤であり、多数の適用に使用される。
【0004】
N−アルキルピロリドンは、熱安定性の、化学的に充分に不活性な、無色の、低粘度の、および非プロトン性の、幅広い適用可能性を有する溶剤である。そのため、N−メチルピロリドン(NMP)、およびN−エチル−ピロリドン(NEP)、ならびにより高級な同族体は、溶剤、希釈剤、抽出剤、洗浄剤、脱脂剤、吸着剤、および/または分散剤として使用可能である。
【0005】
NMPは、石油化学処理における純粋な炭化水素の抽出、ガス、例えばアセチレン、1,3−ブタジエン、またはイソプレンの洗浄および分離、芳香族の抽出、例えばLURGI GmbHのDistapex法において、酸性ガス洗浄、および潤滑油抽出において適用される。さらにNMPは、ポリマー分散液、例えばポリウレタン分散液のための溶剤としても使用することができる。
【0006】
NMPは、多くのプラスチック、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、アクリラート、またはブタジエン−アクリルニトリルのコポリマーのための良好な溶剤でもあり、かつそれらの加工の際に使用される。
【0007】
NMPは塗料残渣、およびラッカー残渣の除去の際の洗浄剤としても使用され、ならびに金属表面、セラミック表面、ガラス表面、およびプラスチック表面のための、酸洗い剤および洗浄剤としても使用される。
【0008】
同様にNMPは、植物保護における作用物質の調製のための溶剤または補助溶剤である。
【0009】
NEP、および他のN−アルキルピロリドンは、多くの適用においてNMPで代替することができ、さらには多くの場合において付加的に有利な特性を示す(WO−A−2005/090447、BASF AG)。
【0010】
普及している他のN−アルキルラクタムは、N−アルキルピペリドン、およびN−アルキルカプロラクタムである。N−アルキルカプロラクタム、とりわけN−メチルカプロラクタムは、ガス脱酸(Gasentsaeuerung)のための選択的な溶剤として使用することができ、例えばChem.Techn.29巻(1977年)、445〜448ページ、(Wehnerら、VEB Leuna)に記載されている。また炭化水素の抽出においても、N−アルキルカプロラクタムが、高度に達成可能な選択性に基づいて適用され、例えばChem.Techn.27巻、(1975年)、401〜405ページ、(Wehnerら、VEB Leuna)に記載されている。WO−A−05/092953(BASF AG)も参照すること。N−アルキルピペリドン、例えばN−メチル−ピペリドンは、これらの適用に同様に使用することができる。
【0011】
N−アルキルラクタムの製造は公知である。N−アルキルピロリドンは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、A22巻、第5版、459ページ(1993年)と同様に、またはDE−A−19626123(BASF AG)と同様に、例えば、1当量の水を遊離して、γ−ブチロラクトン(γ−BL)と、モノアルキルアミンとの反応によって行うことができる。同様にN−アルキルピロリドンを、無水マレイン酸または他のジカルボン酸誘導体と、モノエチルアミンとから、水素と水素化触媒の存在下で製造することができ、例えばEP−A−745598(Bayer AG)、またはWO−A−02/102773(BASF AG)に記載されている。
【0012】
Yakugaku Zasshi 71(1951年)、1341ページ(Susagawaら)によって記載されているように、他のN−アルキルラクタム、例えばN−アルキルピペリドン、およびN−アルキルカプロラクタムを、同様に相応するラクトンからモノアルキルアミンとの反応により製造することができる。さらには、DE−A−1192208(BASF AG)に開示されているように、これらのラクタムをオキシニトリルとモノメチルアミンとの反応によって得ることもでき、またはChem.Techn.33巻(1981年)、193〜196ページ(Wehnerら、VEB Leuna)、またはRO 137218(Centrul de Cercetari pentru Fibre Chimice)に記載されているように、酸性触媒、例えばAl23を用いたラクタムとモノアルコールまたはジアルキルエーテルとの反応によって巧妙に得ることもでき、または例えばJ.Org.Chem.29巻(1964年)、2748〜2750ページ(Moriarty)に記載されているように、塩基性条件下で他のアルキル化剤、例えば硫酸ジアルキル、またはハロゲン化アルキルを用いて得ることもできる。
【0013】
N−アルキルラクタムのための精製方法は公知である。N−アルキルピロリドンの精製は、例えば分留によって(JP06228088(三菱化成株式会社)に記載されているように多段式でも)、または抽出によって行うことができる。他の、または付加的な精製工程は、EP−A−1038867(BASF AG)に記載されているように、イオン交換体による処理、またはWO−A−2005/092851(Lyondell L.P.)と同様に、固体の吸着剤、例えば酸化アルミニウムによる処理であり得る。N−アルキルピロリドンを、さらに酸、例えばトルエンスルホン酸の存在下(例えばJP11071346(東燃株式会社)に記載)、またはリン酸の存在下(例えばJP2028148(大内新興化学)に記載)、蒸留の間に精製することができる。製造の、および/または蒸留の間の他の有利な添加剤は、例えばUS4,885,371(GAF Chemicals Corp.)に開示されているように、アルカリ金属ボロヒドリド、アルカリ土類金属ボロヒドリド、またはアンモニウムボロヒドリド、JP7222225(帝人株式会社)に記載されているように、酸化剤、例えば過マンガン酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、または二クロム酸カリウム、またはUS2,964,535(Monsanto Chemicals)に記載されているように、水酸化ナトリウムであり得る。
【0014】
さらにJP−A−2001089446(三菱化学株式会社)は、蒸留の間に水素量がピロリドン含有量に対して0.01mol%の閾値を、および酸素量がピロリドン含有量に対して0.002mol%の閾値を超えないようにすれば、より僅少な色を有するきれいなNMPを得ることができることを教示している。JP6279401(三菱化成株式会社)によれば、無色のN−メチルピロリドンを熱処理(150〜250℃での「温度処理」)、および引き続いた蒸留によっても得ることができる。
【0015】
他のN−アルキルラクタム、例えばN−アルキルピペリドン、およびN−アルキルカプロラクタムを、同様の方法で精製することができる。
【0016】
N−アルキルラクタムの多くの適用のために、例えば塗料およびラッカー、または接着剤の製造における、またはプラスチック生産における溶剤としてのN−アルキルピロリドンの使用のために、この溶剤を可能な限り無色の、すなわち黄変されていない形態で使用することが重要である。
【0017】
N−アルキルピロリドンは、貯蔵の際に黄変する傾向があり、製品、例えばラッカー、またはプラスチックで黄変部が得られたままになり、かつこの黄変部はそうした製品では望ましくないので、それらへの適用は従って考慮されない。
【0018】
従って、N−アルキルピロリドンの精製またはその他の処理による、黄変の除去のための方法、および貯蔵の間の黄変の回避のための方法が重要である。
【0019】
分留、多段式蒸留、添加物、例えば酸(例えばp−トルエンスルホン酸)、塩基(例えば水酸化ナトリウム)、還元剤(例えばナトリウムボロヒドリド)、および酸化剤(例えば過マンガン酸カリウム)の存在下での蒸留のような精製方法が、N−アルキルピロリドンの色の改善に、すなわち漂白につながり得ることは、公知である。
【0020】
その上、酸化アルミニウム、またはマクロ多孔性のイオン交換樹脂を用いた処理による不純物の除去が、色を含む製品特性の改善につながり得ることは公知である。
【0021】
その上、N−アルキルピロリドンの合成の間、添加物、例えばナトリウムボロヒドリドが、改善された色特性につながり得ることは既に記載されている。
【0022】
精製方法、および製造方法のためのこれらの多数の手法が、色特性の改善のために記載されている一方、貯蔵の間の製品の安定化のための工業的な解決法は非常に僅かしかない。
【0023】
JP−A−2003081885(三菱化学株式会社)には、窒素によるN−メチルピロリドンの飽和、および被覆(Ueberlagerung)が、非常に僅少な酸素量しか残らないようにし、貯蔵安定性を著しく改善し、かつ酸化的分解の速度を明らかに引き下げることが記載されている。高温(250゜以上)におけるN−メチルピロリドンの分解に対する熱安定性は、US4,168,226(Exxon Research&Engineering Co.)によれば、最大0.5質量%の水を添加することによっても改善することができる。この場合、NMPの分解は非常にゆっくりと進行する。
【0024】
本発明は、加工および貯蔵の間のN−アルキルラクタムの黄変の回避および/または遅延のための方法を発見するという課題に基づいていた。改善された色品質、すなわち黄変の低減、および/または色安定性の改善、とりわけ貯蔵における黄変の低減、および/または色安定性の改善、を有するN−アルキルラクタムを製造するための、改善された、経済的な、容易に実施できる方法を発見することが望ましかった。
【0025】
これに応じて、N−アルキルラクタムに0.01〜10質量%の範囲のC1〜10のアルコール、または0.01〜10質量%の範囲のC1〜10のアルコールを遊離する化合物を添加することによって特徴付けられる、改善された色品質を有するN−アルキルラクタムの製造方法が判明した。
【0026】
さらに、少なくとも99.0質量%のN−アルキルラクタムと、100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコール、または100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコールを遊離するアセタール、アミナール、またはオルトエステルを含む混合物が判明した。
【0027】
この方法は好ましくは、N−アルキルラクタムに0.02〜2質量%の範囲、とりわけ0.03〜1質量%、特に0.03〜0.5質量%、さらに特に0.03〜0.2質量%、さらに特に0.03〜0.1質量%のC1〜10のアルコール、または0.02〜2質量%の範囲、とりわけ0.03〜1質量%、特に0.03〜0.5質量%、さらに特に0.03〜0.2質量%、さらに特に0.03〜0.1質量%のC1〜10のアルコールを遊離する化合物を添加することによって特徴付けられる。
【0028】
本発明による方法を、好ましくは−20〜400℃の範囲、特に0〜350℃の範囲、さらに特に10〜250℃の範囲の温度で実施する。
【0029】
さらなる実施形態において、好ましい温度範囲の下限は20、50、100、または200℃、上限は220、または150℃である。
【0030】
この度判明した、N−アルキルラクタムの発色に関するアルコールの影響は新規である。例えばUS4,168,226(Exxon Research&Engineering Co.)による、250℃以上でのN−メチルピロリドンの熱安定化のような工業的教示とは異なり、本発明による方法に記載のアルコール添加、もしくはアルコールの遊離はN−アルキルラクタムの分解速度に対して測定可能な肯定的影響を与えないが、それらの色品質、例えば発色に対して肯定的影響を与える。
【0031】
アルコール添加の正確な作用機構は未だに知られていない。本発明によれば、すべてのN−アルキルラクタムをこの方法で処理することができる。N−アルキルラクタムのラクタム環は、例えば4〜8の炭素原子、好ましくは4(ピロリドン)、5(ピペリドン)、または6(カプロラクタム)を有することができ、特に好ましくは2−ピロリドン、および2−ピペリドンを使用することができる。
【0032】
好ましくは、本発明による方法において、式IのN−アルキルラクタム
【化1】

[式中、Rは直鎖状、または分枝状の飽和脂肪族基、好ましくはC1〜12のアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、s−ペンチル、ネオ−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソ−ヘキシル、s−ヘキシル、シクロペンチルメチル、n−ヘプチル、イソ−ヘプチル、シクロヘキシルメチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、イソ−ノニル、n−デシル、イソ−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、イソ−ドデシルを意味し、
特に好ましくはC1〜8のアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、および2−エチルヘキシル、
極めて特に好ましくはC1〜4のアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを意味し、
または1の
3〜12のC原子を有する飽和脂環式基、好ましくはC4〜8のシクロアルキル、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル、特に好ましくはシンクロペンチル、およびシクロヘキシルを意味し、
かつnは1〜5の整数を意味し、
かつその際、Nで置換されたラクタムの複素環の炭素原子が、条件下で不活性の、1から2の相互に独立している置換基、例えばアルキル基、例えばC1〜8のアルキル基、好ましくは1のC1〜8のアルキル基、特に1のC1〜4のアルキル基を有することができる]
を使用する。
【0033】
Nで置換されたラクタムの複素環の炭素原子が有することができる、C1〜8のアルキル基の例は:
例えば1,5−ジメチル−2−ピロリドン、および1−エチル−5−メチル−2−ピロリドンにおけるような、
メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、および2−エチルヘキシルである。
【0034】
本発明による方法で特に好ましくは式IのN−アルキルラクタム
【化2】

[式中、Rは先に記載されたようなC1〜4のアルキルを意味し、かつnは1、2、または3を意味し、かつNで置換されたラクタムの複素環の炭素原子は、1のC1〜4のアルキル基、特にメチル基、またはエチル基を有することができる]
を使用する。
【0035】
使用されるN−アルキルラクタムは、90質量%以上の純度、好ましくは95質量%以上の純度、さらに好ましくは99質量%以上の純度を有することができる。
【0036】
考えられるN−アルキルラクタムの不純物としては、好ましくはその都度1質量%以下の量で存在することができる、相応するラクトン(例えばγ−ブチロラクトン)、相応するNで置換されていないラクタム(例えばピロリドン)、有機過酸化物、相応するモノアルキルアミン(例えばモノエチルアミン)、相応する環式のN−アルキルイミド(例えばN−アルキルスクシンイミド)、水が考えられ、かつ妨害的ではない。
【0037】
色安定性の向上のために添加される、もしくは遊離されるアルコールとしては、1または複数のヒドロキシ官能基を有するすべてのアルコールが考慮され、とりわけ1〜10の、好ましくは1〜8の炭素原子、さらに好ましくは1〜3の炭素原子、極めて特に好ましくは1〜2の炭素原子を有するアルコールである。
【0038】
好ましい単官能性の(一価の)アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、およびn−オクタノールである。
【0039】
特に有効な多官能性の(多価の)アルコールは、1,2−エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ペンタエリトリトール、およびソルビトールである。
【0040】
極めて特に好ましい、添加される、もしくは遊離されるアルコールは、メタノール、および1,2−エチレングリコールである。
【0041】
本発明の意味において、化学反応、例えば水との反応(加水分解)か、またはアミンとの反応(アミノリシス)後に初めてアルコールを遊離する物質を添加することもでき、それらの物質はN−アルキルラクタム中に痕跡で存在することができるか、または添加することができる。
【0042】
以降アルコール前駆体とも呼ぶ、これらのアルコール源として挙げられるのは、例えば加水分解によってアルコールとエステル、またはアルコールとホルムアルデヒドを遊離する、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、テトラメトキシメタン、テトラエトキシメタン、オルトギ酸トリメチル、およびオルトギ酸トリエチルである。
【0043】
もちろんアルコールおよび/またはアルコール前駆体の混合物も使用することができる。この際添加されるアルコールまたはアルコール前駆体の純度は重要ではなく、例えば水、エーテル、エステル、および炭化水素といった不純物は許容される。
【0044】
アルコールの添加、もしくはアルコール前駆体の添加は、複数の方法で行うことができ、例えばアルコール、もしくはアルコール前駆体をN−アルキルラクタムにその合成の直後、ならびにラクタムの精製後、またはラクタムの精製の際に添加することができる。同様に、貯蔵可能な、または輸送可能な容器へのラクタムの充填の際の添加も可能である。アルコールの添加、もしくはアルコール前駆体の添加を、非連続的にも、連続的にも行うことができる。
【0045】
上記の実施による本発明の対象はまた、
少なくとも99.0質量%、好ましくは99.2質量%以上、特に99.5質量%以上のN−アルキルラクタム、および
100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコール、好ましくはC1〜8のアルコール、特にC1〜3のアルコール、極めて特にC1〜2のアルコール、
または100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコール、好ましくはC1〜8のアルコール、特にC1〜3のアルコール、極めて特にC1〜2のアルコールを遊離する、アセタール、アミナール、またはオルトエーテルを含む混合物であり、
とりわけ少なくとも99.0質量%、好ましくは99.2質量%以上、特に99.5質量%以上のN−エチル−2−ピロリドン(NEP)、および100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のメタノール、または1,2−エチレングリコールを含む混合物であり、
とりわけ少なくとも99.0質量%、好ましくは99.2質量%以上、特に99.5質量%以上のN−エチル−ε−カプロラクタム(NEC)、および100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のメタノール、または1,2−エチレングリコールを含む混合物であり、
とりわけ少なくとも99.0質量%、好ましくは99.2質量%以上、特に99.5質量%以上の1,5−ジメチル−2−ピロリドン、および100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のメタノール、または1,2−エチレングリコールを含む混合物であり、
とりわけ少なくとも99.0質量%、好ましくは99.2質量%以上、特に99.5質量%以上の1−エチル−5−メチル−2−ピロリドン、および100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のメタノール、または1,2−エチレングリコールを含む混合物であり、
とりわけ少なくとも99.0質量%、好ましくは99.2質量%以上、特に99.5質量%以上の1−メチル−2−ピペリドン、および100〜5000質量ppm、好ましくは200〜2000質量ppm、特に300〜1000質量ppmの範囲のメタノール、または1,2−エチレングリコールを含む混合物でもある。
【0046】
すべてのppmの記載は、質量に関する(質量ppm)。
【0047】
実施例
APHA色数(ハーゼン)をDIN EN ISO 6271によって測定した。
【0048】
N−アルキルラクタムの純度を測定するためのGC法:
ラクタムを希釈せずにGCクロマトグラフ(HP社、キャリアガス:水素)内で30mのDB5カラム(J+W社)に噴霧し、かつ60℃〜260℃のオーブン温度で(加熱速度、毎分16ケルビンで220℃まで、その後毎分20ケルビンで260℃まで)、水素炎イオン化検出器(温度290℃)を用いて分析した。クロマトグラムの信号の積分によって、純度を測定した。
【0049】
加水分解によって遊離可能なアルコールを含む、N−アルキルラクタム中のアルコールの全含有率の測定を、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによって実施した。全量のアルコールを遊離させるため、ガスクロマトグラフへの導入前に、試料(約100mg)に希釈した水性のリン酸(約1ml)を添加し、かつ1時間80℃で熱処理した。気相部(Dampfraum)を、DB1カラム(J+W社)、および水素炎イオン化検出器を有するガスクロマトグラフ(HP社、キャリアガス:水素)に導入した。評価はクロマトグラムの信号の積分によって行った。試験すべきアルコールの定義された量の添加、および同様の規定による分析によって校正を行った。
【0050】
実施例1
N−エチルピロリドン(250ml、GCで純度99.69%、ハーゼン色数12APHA)にメタノール(500ppm)を加え、かつ設置された還流冷却器と乾燥管を有する500mlのガラスフラスコ中で空気の存在下、100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで97.55%)、一方色数は208APHAに上昇していた。
【0051】
実施例2
N−エチルピロリドン(250ml、GCで純度99.69%、ハーゼン色数12APHA)に1,2−エチレングリコール(500ppm)を加え、かつ設置された還流冷却器と乾燥管を有する500mlのガラスフラスコ中で空気の存在下、100℃に加熱した。72時間後に純度は低下しており(GCで97.66%)、一方色数は176APHAに上昇していた。
【0052】
比較例1
N−エチルピロリドン(250ml、GCで純度99.69%、ハーゼン色数7APHA)を添加物無しで、設置された還流冷却器と乾燥管を有する500mlのガラスフラスコ中で空気の存在下、100℃に加熱した。72時間後に純度は低下しており(GCで97.77%)、一方色数は284APHAに上昇していた。
【0053】
実施例3
N−エチルピロリドン(10ml、GCで純度99.59%、ハーゼン色数7APHA)にジメトキシメタン(500ppm)を加えた。この混合物を気密封止された20mlのガラスオートクレーブ内で100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで99.37%)、一方色数は22APHAに上昇していた。
【0054】
比較例2
N−エチルピロリドン(10ml、GCで純度99.59%、ハーゼン色数7APHA)を添加物無しで、気密封止された20mlのガラスオートクレーブ内で100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで99.27%)、一方色数は32APHAに上昇していた。
【0055】
実施例4
N−メチルピペリドン(10ml、GCで純度99.20%、ハーゼン色数18APHA)にメタノール(500ppm)を加えた。この混合物を気密封止された20mlのガラスオートクレーブ内で100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで98.82%)、一方色数は172APHAに上昇していた。
【0056】
比較例3
N−メチルピペリドン(10ml、GCで純度99.20%、ハーゼン色数18APHA)を添加物無しで、気密封止された20mlのガラスオートクレーブ内で100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで98.73%)、一方色数は197APHAに上昇していた。
【0057】
実施例5
1,5−ジメチル−2−ピロリドン(10ml、GCで純度99.72%、ハーゼン色数5APHA)にメタノール(500ppm)を加えた。この混合物を気密封止された20mlのガラスオートクレーブ内で100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで99.53%)、一方色数は404APHAに上昇していた。
【0058】
比較例4
1,5−ジメチル−2−ピロリドン(10ml、GCで純度99.72%、ハーゼン色数5APHA)を添加物無しで、気密封止された20mlのガラスオートクレーブ内で100℃に加熱した。72時間(h)後に純度は低下しており(GCで99.46%)、一方色数は669APHAに上昇していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された色品質を有するN−アルキルラクタムの製造方法において、N−アルキルラクタムに0.01〜10質量%のC1〜10のアルコール、または0.01〜10質量%のC1〜10のアルコールを遊離する化合物を添加することを特徴とする、改善された色品質を有するN−アルキルラクタムの製造方法。
【請求項2】
改善された色品質を有する、N−アルキル−2−ピロリドンまたはN−アルキル−2−ピペリドンを製造するための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
改善された色品質を有する、N−(C1〜8アルキル)−2−ピロリドンまたはN−(C1〜8アルキル)−2−ピペリドンを製造するための、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
改善された色品質を有する、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、またはN−エチル−ε−カプロラクタム(NEC)を製造するための、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記C1〜10のアルコールが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、1,2−エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ペンタエリトリトール、および/またはソルビトールであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
1〜10のアルコールを遊離する前記化合物が、アセタール、アミナール、またはオルトエステルであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1〜10のアルコールを遊離する前記化合物が、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、テトラメトキシメタン、テトラエトキシメタン、オルトギ酸トリメチル、および/またはオルトギ酸トリエチルであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
N−アルキルラクタムに0.02〜2質量%のC1〜10のアルコール、または0.02〜2質量%のC1〜10のアルコールを遊離する化合物を添加することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
N−アルキルラクタムに0.03〜1質量%のC1〜10のアルコール、または0.03〜1質量%のC1〜10のアルコールを遊離する化合物を添加することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
−20〜400℃の範囲の温度で実施することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
10〜250℃の範囲の温度で実施することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも99.0質量%のN−アルキルラクタムと、100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコール、または100〜5000質量ppmの範囲のC1〜10のアルコールを遊離するアセタール、アミナール、またはオルトエステルを含む混合物。
【請求項13】
少なくとも99.0質量%のN−エチル−2−ピロリドン(NEP)と、100〜5000質量ppmの範囲のメタノールまたは1,2−エチレングリコールを含む混合物。
【請求項14】
少なくとも99.0質量%のN−エチル−ε−カプロラクタム(NEC)と、100〜5000質量ppmの範囲のメタノールまたは1,2−エチレングリコールを含む混合物。
【請求項15】
少なくとも99.0質量%の1,5−ジメチル−2−ピロリドンと、100〜5000質量ppmの範囲のメタノールまたは1,2−エチレングリコールを含む混合物。
【請求項16】
少なくとも99.0質量%の1−エチル−5−メチル−2−ピロリドンと、100〜5000質量ppmの範囲のメタノールまたは1,2−エチレングリコールを含む混合物。
【請求項17】
少なくとも99.0質量%の1−メチル−2−ピペリドンと、100〜5000質量ppmの範囲のメタノールまたは1,2−エチレングリコールを含む混合物。

【公表番号】特表2009−532420(P2009−532420A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503543(P2009−503543)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053008
【国際公開番号】WO2007/115943
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】