説明

改良されたカンデサルタンの製剤

本発明は、カンデサルタンを含んでなる医薬組成物及びその調製方法を包含する。特に、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンデサルタンを含んでなる医薬組成物及びその調製方法を包含する。特に前記医薬組成物は、カンデサルタン・シレキセチルを含んでなる。
【背景技術】
【0002】
製剤(即時放出、使用される賦形剤、製造方法、調節放出 − 遅延放出、持続放出、徐放等)は、薬物の生物学的利用能に影響を及ぼす場合がある。特に、薬物の生物学的利用能は、非静脈内投与後の薬物の溶解不良によって制限される場合がある。
【0003】
水溶性の低い薬物は、溶解速度が低い場合が多い。水溶性の低い薬物の例としては、これらに限定されるものではないが、アルブテロール、酒石酸ゾルピデム、オメプラゾール、パクリタキセル、フマル酸クエチアピン、アルプロスタジル、カンデサルタン、リスペリドン、カルベジロール、セレコキシブ、シプロフロキサシン、アルプラゾラムが挙げられる。これらの低水溶性の薬物の処方は、多くの場合、薬物の溶解度を向上させ、生物学的利用能を改善するように行う必要がある。
【0004】
カンデサルタン(CNS)は、強力な長時間作用型の選択的AT1サブタイプ・アンジオテンシンIIレセプター拮抗薬である。カンデサルタンは、特に循環器系疾患、例えば高血圧性疾患、心臓病(例えば心肥大、心不全、心筋梗塞症等)、発作、脳卒中、腎臓炎等の治療に有用な治療薬である。カンデサルタンは高効力の要請を満たすが、経口投与すると吸収され難い。そのため、プロドラッグであるカンデサルタン・シレキセチルが開発された。胃腸管吸収時に、カンデサルタン・シレキセチルは急速、且つ完全にカンデサルタンに加水分解される。カンデサルタンの化学名は2−エトキシ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸である。カンデサルタン・シレキセチルの化学名は(±)−1−[[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ]エチル−2−エトキシ−1−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシラートである。
【0005】
カンデサルタン・シレキセチルは、白色ないし淡灰色の粉末であり、水及びメタノールに難溶性である。カンデサルタン・シレキセチルは分子のエステル部分に不斉中心を有するが、ラセミ混合物として販売されている。
【0006】
【化1】

【0007】
アンギオテンシンIIは、アンギオテンシン変換酵素(ACE、キニナーゼII)が触媒する反応により、アンジオテンシンIから形成される。アンギオテンシンIIはレニン−アンギオテンシン系の主要な昇圧薬であり、血管収縮、アルドステロンの合成及び放出の刺激、心臓刺激、及びナトリウムの腎臓再吸収等の効果を有する。アンジオテンシンIIは、ヒトの水分補給、ナトリウム摂取、及びその他の生理的な可変要素が変動する中で、血圧を一定に維持するのを補助している。また、アンギオテンシンIIは、腎臓によるナトリウムの排泄を阻害し、ノルエフェドリンの再取り込みを阻害し、また、アルドステロン生合成を刺激する調節機能も有する。カンデサルタンは、血管平滑筋や副腎等の多くの組織において、AT1受容体へのアンギオテンシンIIの結合を選択的に阻害することにより、アンギオテンシンIIによる血管収縮因子及びアルドステロンの分泌効果を阻害する。AT1受容体へのアンギオテンシンIIの結合を阻害することにより、カンデサルタンは、AT1受容体によって媒介される血管収縮を妨げる。アンギオテンシンIIによる血管収縮阻害は、高血圧症患者に有益であることが判明した。米国食品医薬品局はカンデサルタンを単独で、或いは他の降圧薬との併用で、高血圧症治療に関して承認した。カンデサルタン・シレキセチルは商品名Atacand(登録商標)として、米国で販売されている。Atacand(登録商標)錠剤は、カンデサルタン・シレキセチルと、賦形剤として、ヒドロキシプロピル・セルロース、ポリエチレングリコール、ラクトース、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムとを含んでいる。
【0008】
欧州特許出願番号EP0459136Aは、カンデサルタン・シレキセチル、その調製方法、及びそれを含んでなるカプセル剤/錠剤を開示する。
【0009】
欧州特許出願番号EP0546358Aには、カンデサルタン・シレキセチルと、融点20〜90℃の油性物質を含んでなる医薬組成物を開示する。
【0010】
薬物の溶解速度を改善する試みが多数なされてきた。例として、難溶性の薬物粉末を水溶性ゼラチンと混合することによる、薬物の溶解速度の改善が挙げられる(Imai, et al., J. Pharm. Pharmacol, 42:615-19 (1990))。水溶性ゼラチンは前記薬物の表面を親水性にすると推測される。
【0011】
米国特許番号第6932983号は、水性媒質への薬物の溶解を促進する多孔質薬物マトリックス、及びその製造方法に関する。
【0012】
また、カンデサルタン及びカンデサルタン・シレキセチル組成物の生物学的利用能を改善する試みもなされてきた。
【0013】
米国2008/0058399は、生物学的利用能を改善することを目的とした可溶化剤の使用に関する。しかし、商業的・工業的に採用し得ない製造パラメータ、例えば微粒子化、固溶体形成、高温の使用、大量の可溶化剤の使用等が含まれている。更に、高温を採用することにより、生成物が安定性を喪失する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上に鑑みて、生物学的利用能が改善された組成物の開発が必要とされている。更には、組成物の安定性を損なうことなく、生物学的利用能が改善された組成物の開発も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様によれば、本発明は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物を包含する。
【0016】
前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体又は誘導体は、好ましくは、カンデサルタン・シレキセチルである。
【0017】
前記医薬組成物は更に、1種類以上の医薬的に許容し得る賦形剤を含んでいてもよい。
【0018】
他の態様によれば、本発明は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物を調製する方法であって、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と、前記医薬組成物の0.01〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と、任意により1種類以上の追加の医薬的に許容し得る賦形剤とを造粒する工程を含んでなる方法を包含する。前記顆粒は、湿式造粒により得ることが好ましい。
【0019】
更に他の態様によれば、本発明は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物であって、先に規定した方法によって取得可能な医薬組成物を提供する。
【0020】
他の態様によれば、本発明は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる顆粒であって、更に、前記顆粒の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と、任意により1種類以上の医薬的に許容し得る賦形剤とを含んでなる顆粒を提供する。前記顆粒は、湿式造粒により得ることが好ましい。
【0021】
他の態様によれば、本発明は、先に規定した顆粒を含んでなる医薬組成物を包含する。
【0022】
更に他の態様によれば、本発明は、医薬組成物の調製における先に規定した顆粒の使用を提供する。好ましくは、その医薬組成物は、錠剤の形態である。
【0023】
更なる態様によれば、本発明は、疾患に罹患している患者を治療する方法であって、治療的に有効な量の本発明の医薬組成物を、それを必要とする患者に、投与すること含んでなる方法を包含する。前記疾患は、高血圧症等の循環器系疾患であることが好ましい。
【0024】
更なる態様によれば、本発明は、医薬品として使用される、好ましくは高血圧症等の循環器系疾患の治療及び/又は予防に使用される、本発明の医薬組成物を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物を包含する。本発明の医薬組成物は、顆粒を含んでなることが好ましく、圧縮顆粒であることが好ましい。前記顆粒は、カンデサルタンを含んでなることが好ましい。
【0026】
本発明の医薬組成物は、湿式又は乾式造粒法により調製されても、直接圧縮法により調製されてもよい。中でも、前記医薬組成物は湿式又は乾式造粒法、好ましくは湿式造粒法によって調製されることが好ましい。前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体、又は誘導体は、カンデサルタン・シレキセチルであることが好ましい。
【0027】
カンデサルタン・シレキセチルは、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて調製することができる。例えば、US公開番号2005/0250827によれば、シレキセチル・トリチル・カンデサルタンを用意し、水とメタノールとの混合物中、シレキセチル・トリチル・カンデサルタンを脱保護してカンデサルタン・シレキセチルの残留物を取得し;メタノールとトルエンを使用してカンデサルタン・シレキセチルの残留物を結晶化させ;結晶性カンデサルタン・シレキセチルをメタノール中で再結晶させることにより、実質的に純粋なカンデサルタン・シレキセチルを調製することができる。
【0028】
通常、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))及びポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))のブロック共重合体、リシノール酸、オレイン酸及びリノール酸の水素化トリグリセリド・エステル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の医薬組成物は、1又は2種類の非イオン性界面活性剤を含有することが好ましく、1種類の非イオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー又は硬化ヒマシ油粉末、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。より好ましくは、前記非イオン性界面活性剤はポロキサマーであり、最も好ましくはポロキサマー407又は類似品である。
【0029】
先に記載したとおり、前記非イオン性界面活性剤成分としてはポロキサマーが好ましい。ポロキサマーは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体である。ポロキサマーは、ポリエチレン−プロピレングリコール共重合体、又は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体と呼ばれる場合も多い。入手可能なポロキサマーとしては、Lutrol(登録商標)F127(ポロキサマー407、BASF)が挙げられる。
【0030】
医薬組成物中に存在する非イオン性界面活性剤の量は、医薬組成物の約0.01〜約10重量%である。中でも、医薬組成物の約0.01〜約8重量%であることが好ましく、医薬組成物の約0.01〜約5重量%であることがより好ましく、約0.01〜約2.2重量%であることが更に好ましく、約0.01〜約2.0重量%であることが最も好ましい。
【0031】
1剤形単位あたり存在する非イオン性界面活性剤の量は、例えば、約0.5〜約20mg、好ましくは約0.5〜約15mg、例えば約0.5〜約8mg、より好ましくは約2〜約10mg、例えば約2〜約6mg又は約2.5〜約5.5mg、更に好ましくは約5〜約8mgである。
【0032】
1剤形単位あたり存在するカンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体の量は、例えば、約2mg〜約40mg、好ましくは約10mg〜約35mgである。錠剤形態の医薬組成物は、例えば2、4、8、16、32mgの、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含む。
【0033】
本発明の医薬組成物は、更に1種類以上の追加の添加剤を含んでいてもよい。例としては、これらに限定されることはないが、充填剤、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、担体、増量剤、結合剤、湿潤剤、着香料等が挙げられる。
【0034】
好適な充填剤及び希釈剤としては、これらに限定されるものではないが、粉末セルロース、微結晶性セルロース(例えばAvicel(登録商標))、マイクロ細粒セルロース、メチル・セルロース、エチル・セルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・セルロース(例えばKlucel(登録商標))、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、カルボキシメチル・セルロース塩(カルボキシメチル・セルロース・カルシウム等)、他の置換又は非置換のセルロース等のセルロース誘導体;トウモロコシ・デンプン等のデンプン;α化デンプン;ラクトース、好ましくはラクトース一水和物(例えば、Pharmatose(登録商標));タルク;ワックス;糖;マンニトールやソルビトール等の糖アルコール;アクリラート重合体及び共重合体;デキストレート(dextrates);デキストリン;デキストロース;マルトデキストリン;ペクチン;ゼラチン;炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化ナトリウム、及び、医薬品業界で公知のその他の希釈剤等の無機希釈剤が挙げられる。
【0035】
最も好ましい充填剤としては、ラクトース一水和物、α化デンプン、マンニトール又はソルビトールが挙げられる。充填剤として糖を使用する場合、医薬組成物中に存在する糖の量は、医薬組成物の約30重量%〜80重量%、そして好ましくは約40重量%〜60重量%である。充填剤としてデンプンを使用する場合、医薬組成物中に存在するデンプンの量は、医薬組成物の約5重量%〜50重量%、好ましくは約8重量%〜15重量%である。
【0036】
好適な崩壊剤としては、クロスカルメロース・ナトリウム(例えば、Ac Di Sol(登録商標)、Primellose(登録商標))、クロスポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)、Polyplasdone(登録商標))、微結晶性セルロース、ポラクリリン・カリウム(polacrilin potassium)、粉末セルロース、α化デンプン、デンプン・グリコレール酸ナトリウム(例えば、Explotab(登録商標)、Primoljel(登録商標))、及びデンプンが挙げられる。
【0037】
圧縮前に固体組成物の流動性を改善するために、特に圧縮及びカプセル充填時に投薬量の精度を改善するために、流動促進剤を加えてもよい。流動促進剤として機能し得る賦形剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、及びタルクが挙げられる。
【0038】
接着を低減するべく、及び/又は、金型(die)等からの製品の取り外しを容易にするべく、本発明の医薬組成物に滑沢剤を加えてもよい。好適な滑沢剤としては、これらに限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、硬化ヒマシ油、硬化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。ステアリン酸マグネシウムが最も好まれる。
【0039】
担体としては、これらに限定されるものではないが、ラクトース、グラニュー糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶性セルロース、及びケイ酸が挙げられる。
【0040】
結合剤としては、これらに限定されるものではないが、カルボキシメチル・セルロース、シェラック、メチル・セルロース、リン酸カリウム、及びポリビニールピロリドンが挙げられる。その他の好適な結合剤としては、これらに限定されるものではないが、アカシアゴム、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、グルコース、並びに湿式及び乾式造粒法、及び直接圧縮打錠法で使用されるその他の結合剤が挙げられる。
【0041】
着香料及び調味料(flavor enhancer)は、剤形を患者にとってより口当たりのよいものにする。本発明の組成物中に含まれ得る医薬製品用の一般的な着香料及び調味料としては、これらに限定されるものではないが、マルトール、バニリン、エチル・バニリン、メンソール、クエン酸、フマル酸、エチル・マルトール、及び酒石酸が挙げられる。
【0042】
前記製剤に導入してもよいその他の賦形剤としては、保存料、界面活性剤、抗酸化剤、着色料(例えば、弁柄(iron oxide red))、又は医薬品業界で一般に使用される他の賦形剤が挙げられる。好ましくは、医薬組成物は、クロスカルメロース・ナトリウム、弁柄、スプレードライ・ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピル・セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、及びステアリン酸マグネシウム等の追加の賦形剤を含んでいてもよい。
【0043】
医薬組成物は如何なる形態であってもよいが、好ましくは固体組成物である。より好ましくは、本発明の医薬組成物は、圧縮された固体組成物である。好適な固体剤形としては、これらに限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、粉末、又はサシェ剤が挙げられる。
【0044】
現在は錠剤の多くが、圧縮後に被覆される。被覆の目的としては、錠剤成分の味の隠蔽、錠剤の潤滑性及び嚥下容易性の改善、環境耐久性の向上、貯蔵期限の延長が挙げられる。錠剤は公知の様々な被覆材で被覆可能である。例えば、錠剤は糖、ゼラチン膜又は腸溶被膜で被覆可能である。二層錠剤や多層錠剤も存在する。
【0045】
錠剤及び粉末を腸溶被膜で被覆する場合、腸溶被覆粉末の有する被膜は、これらに限定されるものではないが、フタル酸酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース・フタラート、ポリビニール・アルコール・フタラート、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸との共重合体、メタクリル酸とメチル・メタクリレートとの共重合体等が挙げられる。これらは所望により、好適な可塑剤及び/又は増量剤と共に利用してもよい。
【0046】
前記医薬組成物がカプセル剤である場合、カプセル剤が含有する本発明の医薬組成物としては、非圧縮又は圧縮の顆粒又は粉末混合物等の形態が挙げられる。カプセル剤を硬式シェル又は軟式シェルで被覆してもよい。前記シェルとしては、これに限定されるものではないが、ゼラチン製のものが挙げられる。また、グリセリンやソルビトール等の可塑剤、乳白剤又は着色料を含んでいてもよい。
【0047】
循環器系疾患の治療のための本発明の医薬組成物の投与方法は制限されず、患者の年齢、性別及び症状に応じて様々な調製物の形態で投与することができる。医薬組成物の好適な投与経路としては、これらに限定されるものではないが、経口、口腔内及び直腸投与が挙げられる。所与の場合における最も好適な投与は、治療される病状の性質及び重症度に応じて異なるが、本発明の最も好ましい投与経路は経口投与である。
【0048】
循環器系疾患の治療のための本発明の医薬組成物が含有するカンデサルタン・シレキセチルの量は制限されないが、上記循環器系疾患に関連する症状を治療、改善又は軽減するのに十分な量とすべきである。循環器系疾患の治療のための本発明の医薬組成物の投薬量は、利用方法、患者の年齢、性別及び病状に応じて異なるが、剤形単位当たり約2mg〜32mgのカンデサルタン・シレキセチルを含有することが好ましい。
【0049】
一態様によれば、本発明は、前述の医薬組成物を調製する方法であって、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と、任意により1種類以上の追加の医薬的に許容し得る賦形剤とを組み合わせる工程を含んでなる方法を包含する。
【0050】
好ましくは、前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体又は誘導体は、カンデサルタン・シレキセチルである。
【0051】
医薬組成物中に存在する非イオン性界面活性剤の量は、医薬組成物の約0.01〜約10重量%であり、好ましくは医薬組成物の約0.01〜約8重量%であり、より好ましくは医薬組成物の約0.01〜約5重量%であり、更に好ましくは約0.3〜約2.2重量%、最も好ましくは約0.5〜約2.0重量%で存在する。
【0052】
1剤形単位あたり存在する非イオン性界面活性剤の量は、約0.5〜約20mg、好ましくは約0.5〜約15mg、例えば約0.5〜約8mg、より好ましくは約2〜約10mg、例えば約2〜約6mg又は約2.5〜約5.5mg、更に好ましくは約5〜約8mgであってもよい。
【0053】
1剤形単位あたり存在するカンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体の量は、例えば、約2mg〜約40mg、好ましくは約10mg〜約35mgである。錠剤の形態の医薬組成物は、例えば、2、4、8、16、32mgのカンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる。
【0054】
他の態様によれば、本発明は、前述した、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物を調製する方法であって、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と、任意により1種類以上の追加の医薬的に許容し得る賦形剤とを組み合わせる工程を含んでなる方法を含有する。前記造粒ステップは、湿式造粒法であっても乾式造粒法であってもよい。前記顆粒は湿式造粒されることが好ましい。
【0055】
前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体、又は誘導体は、カンデサルタン・シレキセチルであることが好ましい。
【0056】
医薬組成物中に存在する非イオン性界面活性剤の量は、医薬組成物の約0.01〜約10重量%であり、好ましくは医薬組成物の約0.01〜約8重量%であり、より好ましくはその医薬組成物の約0.01〜約5重量%であり、更に好ましくは約0.3〜約2.2重量%であり、最も好ましくは約0.5〜約2.0重量%の量で存在する。
【0057】
1剤形単位あたり存在する非イオン性界面活性剤の量は、例えば約0.5〜約20mg、好ましくは約0.5〜約15mg、例えば約0.5〜約8mg、より好ましくは約2〜約10mg、例えば約2〜約6mg又は約2.5〜約5.5mg、更に好ましくは約5〜約8mgである。
【0058】
1剤形単位あたり存在するカンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体の量は、例えば、約2mg〜約40mg、好ましくは約10mg〜約35mgである。錠剤の形態の医薬組成物は、例えば、2、4、8、16、32mgのカンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでいてもよい。
【0059】
先に記載したもの等の追加の賦形剤を、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体、及び、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と組み合わせてもよい。前記賦形剤は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と非イオン性界面活性剤とを混合するのと同時に加えてもよい。任意により、追加の賦形剤を、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と非イオン性界面活性剤との混合後に加えてもよい。
【0060】
本発明の方法は、少なくとも1の圧縮工程を含んでもよい。前記圧縮工程としては、直接打錠法が好ましい。直接打錠法の場合、本発明の方法は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と、医薬組成物の約0.01〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と、任意により1種類以上の追加の医薬的に許容し得る賦形剤とを組み合わせる工程と、得られた組み合わせを固形の医薬組成物、好ましくは錠剤に圧縮する工程とを含んでなる。
【0061】
更なる態様によれば、前記圧縮工程は、乾式造粒法又は直接打錠法によって得られる混合物を含んでなる。
【0062】
一態様によれば、本発明は、カンデサルタン又はそのプロドラッグ、その類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%で存在する上述の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物中の、カンデサルタン又はそのプロドラッグ、その誘導体又はその類似体の生物学的利用能を増強するための、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤の使用を包含する。
【0063】
特定の好ましい態様に即して本発明を説明したが、その他の態様は本明細書を参照すれば当業者には明らかであろう。本発明の医薬組成物、及び医薬組成物の調製方法を詳細に説明する以下の実施例を参照しながら、本発明を更に規定される。当業者には明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく、材料と方法の双方に種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0064】
実施例1
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
何れの生物実験についても、先発品の錠剤を対照として一緒に実施した。
表中の全ての値は、特に明記しない限り、mg/錠である。
製剤J、K、L、M、及びNは、比較例である。
【0068】
方法:湿式造粒法(製剤A、B、E、G、及びH):
第I部:
1)篩#80メッシュを通してカルボキシメチルセルロース・カルシウム(Carboxym Calcium)及び顔料弁柄(Col. Ferric Oxide Red)を篩にかける。
2)第I部の全成分を高速剪断ミキサー内に添加し、そして混合する。
【0069】
顆粒溶液:
3)溶液が透明になるまでスターラーで混合することにより、アルコール95%にLutrol(登録商標)F127を溶解させる。
4)ステップ3の溶液を、ステップ2の高速剪断ミキサーに加えて混合する。
5)ステップ4の湿式顆粒を、流動床乾燥機で乾燥する。
6)Quadro Comilを通して、ステップ5の乾燥顆粒を製粉する。
7)ステップ6の製粉顆粒を、Y-Cone又はFlow-Binに移す。
【0070】
第II部:
8)ステップ7からのY-Cone又はFlow-BinにStarlacを加え、そして混合する。
第III部:
9)#50メッシュの篩を通して、ステアリン酸Mgを篩分けする。
10)ステップ9のステアリン酸Mgを、ステップ8のY-Cone又はFlow-Binに加えて混合する。
11)ステップ10からの最終的な混合物を圧縮して、錠剤を成形する。
【0071】
方法:直接打錠法(製剤C、D、F、I、J、K、L、M、及びN):
第I部:
1)第I部の全成分を高速剪断ミキサーに加えて混合する。
顆粒溶液:
2)溶液が透明になるまでスターラーで混合することにより、アルコール95%にLutrol(登録商標)F127を溶解させる。
3)ステップ2の溶液を、ステップ1の高速剪断ミキサーに加えて混合する。
4)ステップ3の湿式顆粒を、流動床乾燥機で乾燥する。
5)Quadro Comilを通して、ステップ4の乾燥顆粒を製粉する。
【0072】
第II部:
6)第II部の全成分を、Y-Cone又はFlow-Binに加え、混合する。
7)Quadro Comilを通して、ステップ6の混合物を篩にかける。
8)ステップ7の篩物を、Y-Cone又はFlow-Binに移し、そして混合する。
【0073】
第III部:
9)#50メッシュの篩を通して、ステアリン酸Mgを篩分けする。
10)ステップ9のステアリン酸Mgを、ステップ8のY-Cone又はFlow-Binに加え、そして混合する。
11)ステップ10の最終的な混合物を圧縮して、錠剤を成形する。
【0074】
第I部、第II部、又は第III部の何れかが存在しない場合には、その部分に関連する工程は実施されない、例えば、第I部の構成成分が存在しない場合には、第II部と第III部とを一緒に混合される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物が、約0.01重量%〜約8重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、約0.01重量%〜約5重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体又は誘導体が、カンデサルタン・シレキセチルである、請求項1〜3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))及びポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))のブロック共重合体、リシノール酸、オレイン酸及びリノール酸の水素化トリグリセリド・エステル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー又は硬化ヒマシ油粉末、又はこれらの組み合わせである、請求項1〜5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー407である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、1種類以上の医薬的に許容し得る賦形剤を更に含んでなる、請求項1〜7の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物を製造する方法であって、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体と、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤とを組み合わせる工程を含んでなる方法。
【請求項10】
カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体、及び、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を、湿式又は乾式造粒する工程を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物が更に、1種類以上の医薬的に許容し得る賦形剤を含んでなる、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記造粒工程が湿式造粒工程である、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物が、約0.01重量%〜約8重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項9〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物が、約0.01重量%〜約5重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体又は誘導体が、カンデサルタン・シレキセチルである、請求項9〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が更に、前記医薬組成物を固体剤形に圧縮する工程を含んでなる、請求項9〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記固体剤形が錠剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる顆粒であって、更に、前記顆粒の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる顆粒。
【請求項19】
前記顆粒が湿式造粒されている、請求項18に記載の顆粒。
【請求項20】
前記顆粒が更に、1種類以上の医薬的に許容し得る賦形剤を含んでなる、請求項18又は請求項19に記載の顆粒。
【請求項21】
前記顆粒が、約0.01重量%〜約8重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項18〜20の何れか1項に記載の顆粒。
【請求項22】
前記顆粒が、約0.01重量%〜約5重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項21に記載の顆粒。
【請求項23】
前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体又は誘導体が、カンデサルタン・シレキセチルである、請求項18〜22の何れか1項に記載の顆粒。
【請求項24】
循環器系疾患患者を治療する方法であって、治療的に有効な量のカンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物を、それを必要とする患者に投与する工程を含んでなる前記方法。
【請求項25】
請求項1〜8の何れか1項に記載の医薬組成物、又は請求項18〜23の何れか1項に記載の顆粒の、循環器系疾患を治療するための医薬品の製造における使用。
【請求項26】
循環器系疾患、好ましくは高血圧症の治療に使用される、請求項1〜8の何れか1項に記載の医薬組成物、又は請求項18〜23の何れか1項に記載の顆粒。
【請求項27】
前記循環器系疾患が高血圧症である、請求項24に記載の方法、請求項25に記載の使用、又は請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体を含んでなる医薬組成物であって、更に、前記医薬組成物の約0.01重量%〜約10重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる医薬組成物中の、カンデサルタン又はそのプロドラッグ又はその類似体又はその誘導体の生物学的利用能を増強するための、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤の使用。
【請求項29】
前記医薬組成物が、約0.01重量%〜約8重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記医薬組成物が、約0.01重量%〜約5重量%の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記のカンデサルタンのプロドラッグ、類似体又は誘導体が、カンデサルタン・シレキセチルである、請求項28〜30の何れか1項に記載の使用。
【請求項32】
前記の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・アルキル・エーテル、及びショ糖エステル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28〜31の何れか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記の少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー又は硬化ヒマシ油粉末、又はこれらの組み合わせである、請求項28〜32の何れか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2010−535212(P2010−535212A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519937(P2010−519937)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/009295
【国際公開番号】WO2009/017812
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】