説明

改良されたレオロジー特性を有するポリカーボネート成形組成物

式(I)のエポキシ樹脂を含有するポリカーボネートは、改良されたレオロジー特性と、そうではない場合に匹敵する光学特性を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネートと特定のエポキシ樹脂を含有する組成物に関し、これは改良されたレオロジー特性と、そうではない場合と同じ光学特性を備えることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートの処理では、ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートは特に良好な流動性を有するべきである。ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートの流動性の改良は様々な手段で達成することができる。最も単純な手段は分子量を減らすことであるが、しかしながらこれは機械特性、たとえば、衝撃強度、特に切欠き衝撃強度の低下につながる。
【0003】
ポリカーボネートの流動性はさらに、低分子量の添加剤を介して増加させることができる。日本特許公開第2001226576号公報では、低分子量を有するポリカーボネートを高分子量のポリカーボネートに添加している。しかし、一般的にこれらの低分子量添加物は光学的品質、たとえば、透過率または黄色指数(YI)を低下させることにつながりうる。さらに、低分子量添加物はしばしば射出成形部品上にデポジットを生じ(プレートアウト)、このようにして射出成形物品の品質を低下させる。ポリカーボネートの機械特性はさらに、これらの添加物によって非常に低下し、その結果、ポリカーボネートの使用にとって重要な材料上の有益性を損なう。
【0004】
また、特定のコモノマーを介して得られたコポリカーボネートの流動性は、常套のビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートを比べて改良されうる。しかし、これはしばしばスペクトル特性の変化につながる。そして、ガラス転移温度を著しく低下させる場合がある。J.シュミドハウザー(Schmidhauser)およびP.D.シーベルト(Sybert)によってJ.マクロモル.サイ.−プロ.レブ.(Macromol. Sci. − Pol. Rev.)2001年、 C41、 352−367で記載されるように、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンの使用は、得られたポリカーボネートにおいて53℃の非常に低いガラス転移温度につながる。また、たとえば、米国特許第5 321 114号公報に記載されるようなBPAと各種脂肪族ジカルボン酸との共重合も、ガラス転移温度の低下につながる。WO 2002/038647号公報は、流動性を改良するために、長鎖アルキルフェノールを鎖重合停止剤として使用することを開示している。
【0005】
一般的にこれらの変性ポリカーボネートは調製するために非常に費用がかかり、したがって、コスト高につながる。特定のコモノマーおよび/または分子量調節剤はしばしば市販入手できず、費用のかかる手段で合成せねばならない。
【0006】
ポリカーボネートのレオロジー特性を改良するためのさらなる可能性は、ポリカーボネート混合物を使用すること、すなわち、ポリカーボネートを他のポリマー、たとえば、ポリエステルと混合することである。このような混合物はたとえば、日本特許公開第2002012748号公報に記載されている。
【0007】
しかしながら、いくらかの場合には、これらのポリカーボネート混合物のポリマー特性は標準的なビスフェノールAポリカーボネートとは著しく異なり、したがって、同じ分野について無制限に使用できるものではない。そして、熱安定性、光学特性、熱ひずみ安定性(ガラス転移温度の低下)および機械特性が、いくらかの場合に標準的なポリカーボネートの特性と著しく異なる。
【0008】
エポキシ樹脂と工業的な熱可塑性プラスチック、たとえば、ポリ(メチルメタクリレート)および/またはポリカーボネートとの混合物は、E.M.ウー(Woo)、M.N.ウ(Wu)によってポリマー(Polymer)1996年、37、2485−2492においてすでに記載されている。これらのエポキシ樹脂は発明による組成物とは著しく異なる。E.M.ウーらは、特にヒドロキシル基を含有するエポキシ樹脂のポリカーボネートへの悪影響を報告している。混合物を熱に暴露する場合に、分子量の低下が生じるのである。この悪影響はここで記載される混合物には見られない。
【0009】
米国特許第3 978 020号公報では、ある種のエポキシド化合物をポリカーボネートの変性のために、リン化合物と組み合わせて使用している。発明によれば、これらのエポキシド化合物は、本発明の一般式(I)のエポキシ樹脂とは構造的に異なる。
【0010】
欧州特許公開第A 718 367号公報は、発明によるエポキシ樹脂と構造的に異なるエポキシ樹脂と、芳香族ポリカーボネートとの混合物を開示している。これらの組成物は高い耐食性を特徴とする。
【0011】
ドイツ特許公開第A 2 400 045号公報では、特定の芳香族または脂肪族エポキシド化合物を、高温での加水分解に対する安定性を改良するために、ポリカーボネート組成物に使用している。
【0012】
ドイツ特許公開第A 2019325号公報は、ポリカーボネートとエポキシド基を含む顔料とを含有するポリカーボネート混合物を開示している。エポキシド化合物は顔料含有量に基づいて5〜100重量%の量で使用され、その結果、水分による劣化に対して非常に安定する。
【0013】
ドイツ特許公開第A 2327014号公報は、石英鉱物および/またはTiO2を充填剤として含有し、エポキシド基を含むビニルポリマーを含有するポリカーボネートを開示し、その結果、機械特性を事実上変化させることなく分子量の低下を防止している。
【0014】
日本特許公開第63117030号公報は、ホスフィン酸誘導体で変性させたエポキシ樹脂を開示している。しかしながら、これらのエポキシ樹脂はここで記載されるエポキシ樹脂とは著しく異なる。さらに、日本特許公開第63117030号公報に記載される物質はポリカーボネートに使用されていなかった。
【0015】
日本特許公開第63271357号公報は、ヒドロキシアルキルで変性させたエポキシ樹脂を開示している。しかしながら、これらのエポキシ樹脂はここで記載されるエポキシ樹脂とは構造的に異なる。さらに、日本特許公開第63271357号公報に記載される物質はポリカーボネートに使用されていなかった。
【0016】
確かに、いくらかの場合には先行技術に記載される組成物は特定のポリカーボネートの流動性を改良するが、同時に光学特性、たとえば、透明性、透過率および黄色指数(YI)だけでなく、他の特性たとえば、「プレートアウト」現象が悪化する。したがって、ポリカーボネートにおけるこのような添加剤の使用は大規模な透明射出成形物品、たとえば、拡散スクリーンの製造には好適でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、改良された流動性を有するとともに光学特性と良好な処理性を保持するポリカーボネート組成物を提供することである。驚くべきことに、ポリカーボネートと特定のオリゴマー状エポキシ樹脂との組成物が優れた流動性とともに良好な光学特性を備えること見出した。さらに、発明によるエポキシ樹脂を導入することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は式(I)
【0019】
【化1】


(ここで、R、Rは互いに独立して、H、C−C12アルキル、フェニルまたはベンジル基、または共同で環状C−C12アルキル基、好ましくはHまたはメチルまたは、共同でシクロヘキシル基を表し、
は任意に置換されたアリール、ベンジル、任意に分岐C−C18アルキルまたは環状C−C12アルキル基を表し、
nは0.5〜20の数平均値、好ましくは1〜9の数平均値、特に好ましくは1〜4の数平均値を表し、
qは0または1、好ましくは1である)
のオリゴマー状エポキシ樹脂を提供するものである。
【0020】
ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートにおいて式(I)によるオリゴマー状エポキシ樹脂を流動剤として使用することが有益である。
【0021】
したがって、本発明は
A)95〜99.9重量%、好ましくは97〜99重量%のポリカーボネートおよび
B)0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の式(I)のエポキシ樹脂
を含有する組成物を提供するものでもある。
【0022】
また、本発明は、オリゴマー状エポキシ樹脂をポリカーボネートにマスターバッチの重量に基づいて5〜20重量%の量で添加することによってマスターバッチを調製することを提供するものである。同様に、本発明は発明による組成物の調製方法を提供するものであって、ここでは計算された量のマスターバッチをポリカーボネートと混合し、これをその溶融状態または溶液状態にする。ここで使用されるマスターバッチの量は、オリゴマー状エポキシ樹脂が、組成物全体に基づいて、0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の量で存在するように計算される。
【0023】
また、本発明は、全てのタイプの押出成形物および/または成形物品の製造のための発明による組成物の使用を提供するものである。
【0024】
発明による組成物は光データキャリアの製造およびグレージング用に有効に使用される。
【0025】
また、本発明は、発明による組成物を含有する押出成形物を提供するものである。
【0026】
また、本発明は、発明による組成物を含有する成形物品を提供するものである。
【0027】
発明に従って、ポリカーボネート組成物に好適な成分を次に例によって説明する。
【0028】
(成分A)
発明によるポリカーボネート混合物に使用される芳香族ポリカーボネートはホモポリカーボネートとコポリカーボネートのいずれでもよい。この文章では、ポリカーボネートは線形であってもまたは周知の方法で分岐されてもよい。
【0029】
ドイツ特許公開第A 2 119 799号公報にもすでに記載されているように、ポリカーボネートの調製では、界面過程または均一相での処理によってフェノール性末端基を含むこととなる。両方の処理によって調製された芳香族ポリカーボネートを発明による組成物に使用することができる。
【0030】
界面過程によるポリカーボネートの調製は、先行技術、たとえば、H.シュネル(Schnell)、ポリカーボネートの化学と物理、ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews)、vol. 9、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)、ニューヨーク、1964年、 P.33およびポリマー・レビューズ、vol. 10、「界面法および溶液法による縮合ポリマー」、およびポール(Paul)W.モーガン(Morgan)、インターサイエンス・パブリッシャーズ、ニューヨーク、1965年、第VIII章、P.325に記載されている。
【0031】
しかし、発明による組成物用の芳香族ポリカーボネートを、ジアリールカーボネートとジフェノールからその溶融中で周知のポリカーボネート処理、たとえば、WO−A 01/05866号公報およびWO−A 01/05867号公報に記載されるいわゆる熔融エステル交換処理によって、調製することもできる。しかし、同時に、たとえば、米国特許公開第A 3 494 885号公報、米国特許公開第A 4 386 186号公報、米国特許公開第A 4 661 580号公報、米国特許公開第A 4 680 371号公報および米国特許公開第A 4 680 372号公報、欧州特許公開第A 26 120号公報、欧州特許公開第A 26 121号公報、欧州特許公開第A 26 684号公報、欧州特許公開第A 28 030号公報、欧州特許公開第A 39 845号公報、欧州特許公開第A 91 602号公報、欧州特許公開第A 97 970号公報、欧州特許公開第A 79 075号公報、欧州特許公開第A 146 887号公報、欧州特許公開第A 156 103号公報、欧州特許公開第A 234 913号公報および欧州特許公開第A 240 301号公報およびドイツ特許公開第A 1 495 626号公報およびドイツ特許公開第A 2 232 977号公報に記載されるエステル交換処理(酢酸処理およびフェニルエステル処理)からの芳香族ポリカーボネートを使用することもできる。
【0032】
(成分B)
式(I)のエポキシ樹脂では、指数nは、好ましくは340〜10,000、好ましくは700〜4,000の数平均分子量が達成されるように選択される。数平均分子量はポリスチレン基準を用いてゲル浸透クロマトグラフィーによって測定され、THFを溶媒として用い、測定は室温で行われる。
【0033】
発明による式(I)のエポキシ樹脂の調製のための出発化合物としての役割を果たすエポキシ樹脂は周知であり、たとえば、キルク・オスマー(Kirk Othmer)、「エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)」、第4巻、 vol.9、 P.731に記載されるように、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンから調製することができる。市販入手可能なエポキシ樹脂、たとえば、ハンフ+ネルス(Hanf+Nelles)GmbH Co KGからのエピコート(Epikote(登録商標))1001(エポキシド含有量:2,000〜2,220 mmol/kg;25℃での粘度:5.3〜6.8 mPas)を、発明による添加剤の調製用の出発材料として使用することもできる。
【0034】
エーテル化法(q=0の場合)またはエステル化法(q=1の場合)は原理的には周知であり、これを発明による化合物の調製に使用することができる。
【0035】
発明によるエポキシ樹脂の調製は以下に記載するように行うことができる。
【0036】
a)溶媒あり
ビスフェノールAとエピクロロヒドリンから調製され、Mn(数平均)=340〜Mn=10,000の平均分子量を有する市販入手可能なエポキシ樹脂を、有機溶媒、たとえば、ジエチルエーテル、クロロホルムまたは塩化メチレンに溶解する。有機塩基、たとえば、ピリジンまたはトリアルキルアミン、たとえば、トリエチルアミンをこの溶液に−5〜35℃で添加する。その後、有機溶媒、たとえば、ジエチルエーテル、クロロホルムまたは塩化メチレンに溶解させたアリールまたはアルキル酸塩化物を、温度変化させずにゆっくりと添加する。混合物を0.5〜24時間、好ましくは1〜6時間攪拌する。その後、形成した沈殿をたとえば、濾過によって除去する。塩を除去するために、有機相を水で洗浄し、有機相を水の好適な除去の後、好ましくは真空中で単離する。
【0037】
b)溶媒なし
発明によるエポキシ樹脂の調製についてさらなる可能性は溶媒なしでの合成である。この方法の利点は、簡単に加工および生成物の単離ができることにある。このため、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンからの市販入手可能なエポキシ樹脂をアリールまたはアルキル酸無水物とともに80〜200℃、好ましくは無水物の沸点と対応する酸の沸点の間の温度に加熱し、反応中に蒸留除去する。反応を蒸留除去される酸の量によって監視する。冷却後には、使用可能な生成物がさらなる加工をしなくても生じる。
【0038】
発明による組成物の調製方法は、エポキシ樹脂のポリカーボネートへの添加によって行われる。ポリマー合成後加工段階時に、エポキシ樹脂を計量添加することができるし、または合成直後に、たとえば、続いて混成押出成形機内で混合することもできる。
【0039】
混成を選択する場合には、エポキシ樹脂またはその混合物を、材料として、または5〜20重量%のポリカーボネートにおけるエポキシ樹脂のマスターバッチとして、混成押出成形機へ供給することができる。さらに、任意に添加剤を、同処理工程においてエポキシ樹脂またはそのマスターバッチとともに混合物中に添加することができる。
【0040】
ポリカーボネート合成後の加工段階時にエポキシ樹脂を計量添加することを選択する場合には、その手順は以下に記載するとおりである。
【0041】
熱、真空または加熱された流入ガスによって溶媒を蒸発させることにより、ポリカーボネートを溶液から単離することができる。他の単離方法は結晶化法および沈殿法である。ポリマー溶液の濃縮およびもしくはポリマーの単離が、溶媒の蒸留除去によって、任意に過熱と緩和によって行われる場合には、「フラッシュ法(flash process)」を参照し(「サーミッシュ・トレンベルファーレン(Thermische Trennverfahren)」、VCHベラグサンシタルト(Verlagsanstalt)、1988年、P.114も参照);この代わりに加熱されたキャリアガスを蒸発させるべき溶液とともにスプレイする場合には、「スプレイ蒸発法/スプレイ乾燥法」を参照する(バウク(Vauck)、「グルンドペラチオネン・ヘミッシャー・ベルファーレンステクニック(Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik)」、ドイチャー・ベラグ・ファー・グルンドストフィンドゥストリー(Deutscher Verlag fueR Grundstoffindustrie)、2000年、第11巻、P.690の実施例を介して記載される)。これらの方法は全て特許文献や教本に記載され、当業者には馴染み深いものである。
【0042】
熱(蒸留除去)または工業的により効果的なフラッシュ法によって溶媒を除去する場合には、高濃縮ポリマー熔融物が得られる。周知のフラッシュ法では、ポリマー溶液を、僅かに加圧下で常圧下での沸点以上の温度にまで繰り返し加熱し、常圧に関して過熱されたこれらの溶液を、次により低い圧力、たとえば、常圧の容器に入れ緩和する。この文章では、濃縮工程、言い換えれば過熱の加熱工程が多くなりすぎることが許されず、むしろ2〜4工程にすることが有効である場合がある。
【0043】
溶媒残留物を、このようにして得られた高濃縮ポリマー溶融物からか、または揮発分除去押出成形機(ベルギー特許公開第A 866 991号公報、欧州特許公開第A 0 411 510号公報、米国特許公開第A 4 980 105号公報、ドイツ特許公開第A 33 32 065号公報)、薄膜蒸発器(欧州特許公開第A 0 267 025を号公報)、流下薄膜型蒸発器または押出蒸発器を用いて直接溶融物から、または任意に流入剤、たとえば、窒素または二酸化炭素を添加しつつ摩擦成形によって(欧州特許公開第A 0 460 450号公報)、または真空を用いて(欧州特許公開第A 0 039 96号公報、欧州特許公開第A 0 256 003号公報、米国特許公開第A 4 423 207号公報)、または場合によっては続いて結晶化し(ドイツ特許公開第A 34 29 960号公報)固体相中の溶媒残留物を加熱除去する(米国特許公開第A 3 986 269号公報、ドイツ特許公開第A 20 53 876号公報)ことによって除去することができる。
【0044】
溶融物を直接スピニングし次いで粒状化することによって、または熔融押出成形機を用いて、そこから空気中へまたは液体、好ましくは水面下でスピニングを行うことによって粒剤が得られる。押出成形機を用いる場合には、添加剤を、この押出成形機の溶融物上流に、任意に静電混合機を用いてまたは押出成形機内の補助的な押出成形機によって、添加することができる。
【0045】
この加工処理では、任意にさらなる添加剤を有するエポキシ樹脂を濃縮されるべきポリカーボネートに混合することができる。
【0046】
ポリカーボネート調製処理からのポリカーボネート溶液の濃縮が揮発分除去押出成形機を用いて行われる場合には、手順は混成の場合と同様であってもよく、またはさらなる添加剤を含んだ樹脂を補助的な押出成形機を介してマスターバッチによって添加し、このようにして揮発分除去押出成形機に供給される。
【0047】
使用されるマスターバッチは、好ましくは熱可塑性ポリカーボネートとオリゴマー状エポキシ樹脂を全マスターバッチ重量に基づいて5〜20重量%の量で含有し、マスターバッチの熱可塑性ポリカーボネートは好ましくは発明による組成物からの芳香族ポリカーボネートに相当する。マスターバッチとポリカーボネートを含有する組成物全体は、溶融物の状態か溶液として存在し、全組成物に基づいて0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%のオリゴマー状エポキシ樹脂を含有するように、計算された量でマスターバッチは使用される。
【0048】
そして、本発明は、
第1工程で、80〜95重量%のポリカーボネートAと5〜20重量%の式(I)のエポキシ樹脂を含有するマスターバッチを調製し、かつ
第2工程で、2〜20重量%の第1工程からのマスターバッチを、80〜98重量%のポリカーボネートA1と混合する方法をも提供し、
ここでポリカーボネートAはポリカーボネートA1と同じであっても異なっていてもよい。
【0049】
また、本発明は、式(I)のエポキシ樹脂を、ポリカーボネート合成後加工段階で、濃縮されるべきポリカーボネート溶液に添加し、ポリカーボネートのエポキシ樹脂に対する重量比が99.9:0.1〜95:5、好ましくは99:1〜97:3になることを特徴とする方法を提供するものである。
【0050】
マスターバッチとして使用することができる他の熱可塑性ポリカーボネートは変性ポリカーボネート、たとえば、コポリカーボネートである。マスターバッチにおいてビスフェノールAポリカーボネートの使用が好ましい。
【0051】
オリゴマー状エポキシ樹脂をポリカーボネート溶液に導入する場合には、有機溶媒、たとえば、塩化メチレンまたは塩化メチレンとクロロベンゼンの混合物を芳香族ポリカーボネート用に使用する。塩化メチレンが溶媒として好ましい。
【0052】
発明による組成物はさらに、追加の添加剤(成分C)を含有することもできる。このような添加剤は、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、UV安定剤および熱安定剤であって、これらは芳香族ポリカーボネート用として周知であり、ポリカーボネートについて常套的な量で、である。使用されるポリカーボネートに基づいて0.1〜1.5重量%が好ましい。このような添加剤の例は、ステアリン酸および/またはステアリルアルコール、特に好ましくはペンタエリスリトールステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ステアリルステアレートおよびグリセロールモノステアレートに基づく離型剤、さらにはホスファンおよびホスフィトに基づく熱安定剤である。
【0053】
発明による組成物を常套の機械で常套の条件下で処理して、いずれの所望の成形物品、たとえば、シート、フィルム、糸、レンズ、ガラスおよび装置収納容器をも得ることができる。発明によるポリカーボネートを、熱可塑性成形組成物に好適な全てのユニットに処理することができる。発明によるポリカーボネートは、ポリカーボネートにとって常套的であるように、予備乾燥させねばならない。発明によるポリカーボネートは、全ての常套的方法、たとえば、射出成形および押出成形さらには射出ブロー成形によって、幅広い処理範囲に成形することができる。これらの処理の概要はたとえば、クンストストッフハンドブッフ(Kunststoffhandbuch)、1992年、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル、W.ベッカー(Becker)、P.211に要約されている。
【0054】
本願は、発明による方法によって得られるようなポリカーボネートを提供し、かつ押出成形物および成形物品、特に透明の分野、非常に特別には光学的用途の分野で使用するためのもの、たとえば、シート、多層壁紙、グレージング、拡散スクリーン、ランプカバーまたは各種読取のみまたは1回書込みおよび任意に再書込みも可能な実施の形態の光学データ記憶媒体(たとえば、オーディオCD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)、ミニディスク)の製造のためのその使用をも提供するものである。
【0055】
また、本願は、発明によるポリマーからの押出成形物および成形物品をも提供するものである。
【0056】
さらに、たとえば、用途は次のものであるが、これは本発明の主題を限定するものではない:
1.周知のように、安全ガラスが建物、自動車および飛行機の多くの領域で求められる。たとえば、ヘルメット用シールド。
2.フィルム。
3.ブロー成形物品(米国特許公開第A 2 964 794号公報も参照)、たとえば、1〜5ガロンの水ボトル。
4.光に対して透明な光透過性シート、たとえば、固形シート、特にたとえば、建物、たとえば、鉄道の駅、植物園および照明施設を覆うための多孔性チャンバーシート。
5.光学データ記憶媒体、たとえば、オーディオCD、CD−R(W)、DVD、DVD−R(W)、ミニディスクおよび後続開発品。
6.交通信号機収納容器または道路標識。
7.開放または閉鎖した、任意に印刷可能な表面を有するフォーム
8.糸およびワイヤー(ドイツ特許公開第A 11 37 167号公報も参照)。
9.半透明の分野で使用するために任意にガラスファイバを用いた照明用途。
10.内容物に硫酸バリウムおよび/または二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムまたは有機ポリマー状アクリレートゴムを有する光透過性および光散乱性成形物品の製造用の半透明の配合物(欧州特許公開第A 0 634 445号公報、欧州特許公開第A 0 269 324号公報)。
11.精密射出成形部品、たとえば、ホルダー、たとえば、レンズホルダー;ここでは任意にガラスファイバと、(全成形組成物に基づいて)1〜10重量%の二硫化モリブデンの任意の追加内容物を含有するポリカーボネートが使用される。
12.光学装置部品、特に写真およびフィルムカメラ用レンズ(ドイツ特許公開第A 27 01 173号公報)。
13.光透過性キャリア、特に光誘導性ケーブル(欧州特許公開第A 0 089 801号公報)およびイルミネーション片。
14.導電体用およびプラグ収納容器およびプラグ接続器、さらにはコンデンサ用絶縁性材料。
15.自動車電話収納容器。
16.ネットワークインターフェイス装置。
17.有機光伝導体用キャリー材料。
18.照明ユニット、照明灯、拡散スクリーンまたは内部レンズ。
19.医療用途、たとえば、酸素供給器および透析装置。
20.食料品用途、たとえば、ボトル、器具およびチョコレート型。
21.自動車分野での用途、たとえば、ABSを含んだ混合物の状態のグレージングやバンパー。
22.スポーツ用品、たとえば、スラロームポールおよびスキーブーツバックル。
23.家庭用品、たとえば、台所シンク、洗面器およびレターボックス。
24.収納容器、たとえば、電気分配ボックス。
25.電気器具、たとえば、歯ブラシ、ヘアードライヤー、コーヒーメーカーおよびツール機器、たとえば、ドリル加工、ミル、平削り機械およびのこぎり用の収納容器。
26.洗濯機の丸窓。
27.保護ガラス、サングラス、調節ガラスおよびそのレンズ。
28.ランプカバー。
29.パッケージフィルム。
30.チップボックス、チップキャリアおよびSiウェハー用ボックス。
31.他の用途、たとえば、飼育舎の扉または動物ケージ。
【実施例】
【0057】
(成分A)
マクローロン(Makrolon(登録商標))2808(ベイヤー・マテリアルサイエンス(Bayer MaterialScience)AG、レベルクッセン、ドイツ)、ビスフェノールAに基づく線形ポリカーボネートで、1.29の相対溶液粘度を有する。相対溶液粘度は25℃で溶媒としてCHCl中で0.5g(100ml)の濃度で測定される。
【0058】
(成分B1)
tert−ブチルベンゾイル−変性エポキシ樹脂の調製
192gのBPAエポキシ樹脂エピコート(Epikote(登録商標))1001(ハンフ+ネルスGmbH CoKG、ドイツ)(エポキシド含有量、2,000〜2,220mmol/kg;25℃での粘度、5.3〜6.8mPas)を250mlの塩化メチレンに溶解し、溶液を0〜5℃にまで冷却する。55.7gのトリエチルアミン(0.55mol)を添加する。108.2g(0.55mol)のtert−ブチルベンゾイルクロライドを次に0〜5℃で滴加する。混合物を室温にまで温め次いで2時間還流下で加熱する。冷却して不溶性材料を濾過除去する。有機相をNaCl溶液(半−飽和)で1回、希HCl溶液(2molar)で1回、最後に濾液が中性のpHを示すまで水で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し真空中で濃縮する。残留物を70℃で高真空下(mbar)で乾燥する。222.0gの黄色いガラス質の固形分が得られ、これは1H−NMRデータの評価によれば、式(I)に相当する。ここで、
=CH
=CH
= 4t−Bu−C−および
q=1。
H−NMR(400MHz、CDCl)δ=8.0−7.90(m)、7.50−7.40(m)、7.15−7.05(m)、6.85−6.75(m)、5.79−6.60(m)、4.35−4.25(m)、4.20−4.10(m)、4.0−3.90(M)、3.35−3.25(m)、3.90−3.80(m)、3.75−3.65(m)、1.65−1.55 (m)、1.40−1.25(m)
【0059】
(成分B2)
材料としてのアセチル変性エポキシ樹脂の調製
49.6gの無水酢酸を200gの乾燥BPAエポキシ樹脂エピコート(Epikote(登録商標))1001(ハンフ+ネルス GmbH CoKG、ドイツ)(エポキシド含有量、2,000〜2,220mmol/kg;25℃での粘度、5.3〜6.8mPas)に添加し、混合物を125℃で24時間攪拌し、その間に形成された酢酸を蒸留除去する。冷却後に、220gの黄色い固形分が得られ、これは1H−NMRデータの評価によれば、式(I)に相当する。ここで、
=Me、
=Me、
=Meおよび
q=1。
H−NMR(400MHz、CDCl)δ=7.15−7.05(m)、6.85−6.75(m)、5.50−5.40(m)、4.25−4.05(m)、4.0−3.90(m)、3.35−3.30(m)、2.90−2.85(m)、2.75−2.70(m)、2.08(s)、1.65−1.5(m)
【0060】
(実施例1)(比較例)
マクローロン2808を添加剤なしで処理する。
【0061】
ポリカーボネートを混成押出成形機(ZSK 32/3;32mmのスクリュー外径を有するスクリュー混練機)にかけ、粒剤化する。粒剤を295℃の融点で97min−1の押出成形機速度で射出成形し、150×100×3.2mmの大きさの光学品質のシートを得る。
【0062】
(実施例2)
AおよびB1からのコンパウンドの調製
792.0gのポリカーボネート(成分A)を5.0lの塩化メチレンに溶解する。上記のように調製された8gのtert−ブチルベンゾイル変性エポキシ樹脂を50mlの塩化メチレンに溶解し、溶液をポリカーボネート溶液に添加する。混合物を濃縮し残留物を80℃で真空乾燥キャビネット中で15mbar下で24時間乾燥する。得られた固形分を粉砕し、次いで混成押出成形機(ZSK 32/3;32mmのスクリュー外径を有する2−スクリュー混練機)にかける。
【0063】
(実施例3)
アセチル変性エポキシ樹脂B2のポリカーボネートAへの導入
40gのアセチル変性エポキシ樹脂B2をパウダー化し3,960gのポリカーボネートとジャイロホイールミキサーで混合する。
この混合物を混成押出成形機(ZSK 32/3;32mmのスクリュー外径を有するスクリュー混練機)にかけ、粒剤化する。粒剤を295℃の融点で97min−1の押出成形機速度で射出成形し、150×100×3.2mmの大きさの光学品質のシートを得る。
【0064】
(成形組成物の試験)
得られたコンパウンドの溶融物の粘度の同定について、ゼロ粘度はコーン−プレート粘度計(フィジカ(Physica)UDS 200回転式発振レオメータ)によって同定する。コーンプレートジオメトリーを使用する。コーンの角は2°、コーン直径は25mm(MK216)である。試料をホットプレスを用いて230℃で薄膜に圧縮する。等温周波数スペクトルを定められた温度で記録した。
【0065】
平均分子量は、GPCを介して室温でBPA−PCキャリブレートして同定する。
【0066】
ガラス転移温度は、熱流示差熱量計(Mettler)で20K/分で、アルミニウムの標準的なるつぼ内で、1回目は0℃〜250℃の温度範囲、2回目のヒートアップでは0〜300℃の温度範囲で測定する。2回目のヒートアップ操作で同定した値を記す。
【0067】
熱可塑性プラスチックの流動性(MVR)(溶融物体積流速)は、ISO 1133に従って同定する。
【0068】
比色定量評価はASTM E 308に従って行い、黄色指数はASTM E 313に従って同定する。ヘーズはASTM D 1003に従って同定し、光透過率は光タイプD65、10°観測者について記す(標準明度Y)。
【0069】
混合物の特性を表1に要約する。
【0070】
【表1】

【0071】
発明による組成物2および3は非変性マクローロン2808(成分A)と比べて著しくゼロ粘度が低下していることを示す。さらに、組成物2は有益な高いMVR値をも示している。他方で、光学特性、たとえば、シートの透過率、黄色指数(黄色値)およびヘーズ値(曇り度)、さらにはガラス転移温度および成形組成物の平均分子量は純粋なマクローロン2808(成分A)の値に匹敵するレベルのままである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


(ここで、R、Rは互いに独立して、H、C−C12アルキル、フェニルまたはベンジル基、または共同で環状C−C12アルキル基、好ましくはHまたはメチルまたは、共同でシクロヘキシル基を表し、
は任意に置換されたアリール、ベンジル、任意に分岐C−C18アルキルまたは環状C−C12アルキル基を表し、
nは0.5〜20の数平均値を表し、
qは0または1である)
のエポキシ樹脂。
【請求項2】
q=1である請求項1によるエポキシ樹脂。
【請求項3】
A)95〜99.9重量%のポリカーボネートおよび
B)0.1〜5重量%の請求項1による式(I)のエポキシ樹脂
を含有する組成物。
【請求項4】
A)97〜99重量%のポリカーボネートおよび
B)1〜3重量%の式(I)のエポキシ樹脂
を含有する請求項3による組成物。
【請求項5】
難燃剤、離型剤、帯電防止剤、UV安定剤および熱安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含有する請求項3による組成物。
【請求項6】
成分AおよびBを混合し、混成押出成形機において押出しする請求項3による組成物の調製方法。
【請求項7】
第1工程で、80〜95重量%のポリカーボネートAと5〜20重量%の式(I)のエポキシ樹脂を含有するマスターバッチを調製し、かつ
第2工程で、2〜20重量%の第1工程からのマスターバッチを、80〜98重量%のポリカーボネートA1と混合し、
ここでポリカーボネートAはポリカーボネートA1と同じであっても異なっていてもよいことを特徴とする請求項6による方法。
【請求項8】
式(I)のエポキシ樹脂を、ポリカーボネート合成後加工段階で、濃縮されるべきポリカーボネート溶液に添加し、ポリカーボネートのエポキシ樹脂に対する重量比が99.9:0.1〜95:5になることを特徴とする請求項3による組成物の調製方法。
【請求項9】
押出成形物および/または成形物品の製造のための請求項3〜5の1つによる組成物の使用。
【請求項10】
光学的用途用成形物品の製造のための請求項3〜5の1つによる組成物の使用。
【請求項11】
請求項3〜5の1つによる組成物を含有する成形物品および押出成形物。
【請求項12】
請求項3〜5の1つによる組成物を含有するシート、光学データ記憶媒体、レンズ、照明灯および拡散スクリーン。

【公表番号】特表2009−506144(P2009−506144A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527351(P2008−527351)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008062
【国際公開番号】WO2007/022902
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】