改良された柔軟性バリヤー膜を有するクッション装置
【課題】競技靴10の製造に適する、柔軟性、耐久性および低コストの目標を満たす、窒素または他の環境上望ましい気体または気体の組合せによって本質的に永久的にふくらんでいるクッション装置28を提供すること。
【解決手段】熱可塑性ウレタンを包含する少なくとも一つの層(32、34)およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーの少なくとも一つの層(30)を用いた柔軟性の膜から製造されたクッション装置は比較的高圧にふくらませることができる。このクッション装置は拡散注入と称する現象を用いることにより延長された期間にわたって、初期のふくらんだ状態の圧力を維持する。本発明のクッション装置は窒素または空気のような気体によって永久的にふくらんだ状態にできる。
【解決手段】熱可塑性ウレタンを包含する少なくとも一つの層(32、34)およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーの少なくとも一つの層(30)を用いた柔軟性の膜から製造されたクッション装置は比較的高圧にふくらませることができる。このクッション装置は拡散注入と称する現象を用いることにより延長された期間にわたって、初期のふくらんだ状態の圧力を維持する。本発明のクッション装置は窒素または空気のような気体によって永久的にふくらんだ状態にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は履物用クッション装置に関し、より詳しくは、大気中に通常含まれている気体の制御された拡散を可能にする一方で不活性気体の拡散を選択的に制御するためのエラストマー性バリヤー材料を包含した気体充填クッション装置に関し、このクッション装置は履物製品の中に特に使用される。
【0002】
本発明を更によく理解するには、本願と同時に出願された発明の名称を「積層された柔軟性弾性バリヤー膜(Laminated Resilient Flexible Barrier Membrances) 」とする米国特許出願第 号が関連があり、その内容は本願明細書中に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
靴、特に競技靴は、主に2つの範疇の構成要素すなわち靴の甲(upper) と靴底(sole)を包含するものとして記述できる。靴の甲部の一般的目的は足をそれに合わせて心地よく包むことである。理想的には、靴の甲部は魅力的で高度に耐久性で尚且つ心地よい材料または材料の組合せから製造されるべきである。やはり一つまたはそれ以上の耐久性材料から製造することができる靴底は牽引を与えることと靴のデザインに合った使用の間に着用者の足および体を保護することを主にして設計されている。競技活動のような使用中に生じる相当大きい力は競技靴の靴底が着用者の足、足首および脚を保護および衝撃吸収することの向上を要求する。たとえば、ランニング活動中に起こる衝撃は体重の2、3倍までの力を発生させることがあり; 或る種の他の競技、たとえば、バスケットボールのプレーは個人の体重の約6〜10倍までの力を発生させることが知られている。従って、現在では、多くの靴は、特に、多くの競技靴は、激しい競技活動中に使用者の衝撃を緩和させるための幾つかのタイプの弾性の衝撃吸収材料または衝撃吸収要素をもって提供されている。かかる弾性の衝撃吸収材料または要素は今や製靴工業では間底(mid-sole)と称されるに至っている。
【0004】
より詳しくは、充分な衝撃吸収と弾性の両方が適切に考慮されている有効な衝撃応答を達成する間底のデザインを開発することが当工業の焦点になっている。かかる弾性の衝撃吸収材料または要素は靴の中で足裏が直接ふれる部分として一般に規定される靴の中底(insole)部分にも応用することができる。
【0005】
製靴工業における特別の注目点は液体または気体どちらかの流体または両方の流体を含有するのに適する間底または差込み構造物を開発することである。靴底の中に利用される気体充填構造物の例は1908年10月13日にミラー(Miller)に発行された「履物用クッション(Cushion for Footwear)」と題する米国特許第900,867号; 1913年7月29日にガイ(Guy) に発行された「靴用のクッション底及びかかと(Cushioned Sole and Heel for Shoes) 」と題する米国特許第1,069,001号; 1919年5月27日にスピニイ(Spinney) に発行された「空気入り中底(Pneumatic Insole)」と題する米国特許第1,304,915号; 1924年11月4日にショッフ(Schopf)に発行された「アーチクッション(Arch Cushion)」と題する米国特許第1,514,468号; 1937年5月18日にギルバート(Gilbert) に発行された「空気入りフットサポート(Pneumatic Foot Support)」と題する米国特許第2,080,469号; 1953年7月21日にタウン(Towne) に発行された「靴用クッション中底(Cushioning Insole for Shoes) 」と題する米国特許第2,645,865号; 1954年5月11日にリード(Reed)に発行された「靴用クッション中底およびその製造方法(Cushioned InnerSole for Shoesand Method of Making the Same)」と題する米国特許第2,677,906号; 1980年1月15日にルディ(Rudy)に発行された「履物製品用中底構成物(Insole Construction for Articles of Footwear)」と題する米国特許第4,183,156号; 1980年9月2日にやはりルディ(Rudy)に発行された「履物(Footwear)」と題する米国特許第4,219,945号; 1988年2月2日にウァング(Huang) に発行された「エアクッション靴底(Air Cushion Shoe Sole) 」と題する米国特許第4,722,131号; および1989年9月12日にホロビッツ(Horovitz)に発行された「履物用底部構成物(Sole Construction for Footwear)」と題する米国特許第4,864,738号に示されており、これら特許の内容はいずれも本願明細書中に組み入れられる。当業者には認識されるように、かかる空気充填構造物(しばしば、製靴工業では「ブラダー(bladder) 」と称される) は代表的には2つの広い範疇、すなわち、(1) 米国特許第4,183,156号および第4,219,945号に開示されているもののような「空気圧で」ふくらんだシステム、および(2) 米国特許第4,722,131号に例示されているようなポンプや弁で調整可能なシステムに分類される。「空気圧で」ふくらんだブラダーを包含している、米国特許第4,182,156号に開示されているタイプの競技靴は、オレゴン州ビーバートン(Beaverton) のナイキ社(Nike, Inc.)によって商標「エアソール(Air Sole)」およびその他の商標で成功裏に販売されてきた。今までに、このタイプの競技靴は米国および世界中で数百万足も販売された。
【0006】
空気圧でふくらんだブラダーは代表的には、柔軟性(flexible)の熱可塑性材料を使用する方法で構成され、それはこの工業分野で「スーパーガス(super gas) 」と称されている大分子低溶解度係数の気体たとえばSF6でふくらまされている。例としては、1982年7月20日にルディに発行された「装置を自動的にふくらませる拡散注入装置(Diffusion Pumping Apparatus Self-inflating Device) 」と題する米国特許第4,340,626号(これの内容は本願明細書中に組み入れられる)は、一対のエラストマー性の、選択透過性のフィルムシートでブラダーを形成した後に気体または気体混合物によって好ましくは大気圧より高い規定された圧力にふくらませたものを開示している。理想的には、利用される気体(単数または複数)は選択透過性のブラダーを通って外部大気中へ拡散する速度が比較的低いものであり、他方、(大気中に含有されている、比較的高い拡散速度を有する)窒素、酸素およびアルゴンのような気体はブラダーに侵入することができる。このことは大気中からブラダーの中へと拡散する窒素、酸素およびアルゴンの分圧と、ふくらませたときにブラダーの中に注入された最初に含有された気体(単数または複数)の分圧とを合わせることによって、ブラダー内の全圧の増加を生じさせる。この、ブラダーの全圧を増加させる総合的には殆ど「一方向」の気体追加の概念は、当分野では「拡散注入(diffusion pumping) 」として知られている。
【0007】
拡散注入システムにおいては、内圧の定常状態が達成されるまでに時間がかかる。この時間は使用されるブラダーの材料およびブラダーに含有される気体(単数または複数)の選択に関係する。たとえば、酸素はむしろ急速にブラダーの中に拡散する傾向があり、その効果は約2.5psiの内圧増加である。対照的に、窒素ガスは何週間にもわたって徐々にブラダーの中に拡散し、結果として圧力増加が約12.0psiにもなる。このように徐々にブラダーの圧力が増加することは典型的に皮膜の緊張を増加させ、結果として伸張による容積増加を生じる。この効果はこの工業分野では通常、「引張緩和」または「クレープ」と称されている。従って、ブラダーに使用される材料の最初の選択およびブラダーを最初にふくらませるのに利用される拘束空気(または空気混合物)の選択は、本質的に永久的に最初の所定圧力でふくらみ続け従って長時間にわたって最初の所定圧力を維持するブラダーの達成にとっては臨界的である。
【0008】
エアソール(登録商標)競技靴の導入以前または導入直後は、この工業分野に使用されていた多数の間底用ブラダーはポリ塩化ビニリデン系材料たとえばサラン(Saran、ダウケミカル社の登録商標)から製造された単一層の気体バリヤー型フィルムから構成されていた。これら材料はその性質が硬質プラスチックであることによって、曲げ疲労、ヒートシール性、弾性および崩壊の観点から理想より劣る。これらの限界を、(様々な熱可塑性樹脂のような可撓性のブラダー用材料と組合わされた一つまたはそれ以上のバリヤー材料を包含する)積層や被覆のような手法によって製造したブラダー用フィルムを創造することによって対処する試みは、かかる組合せに典型的な広く様々な問題を呈した。かかる複合的構成による問題としては、中でも、典型的な離層; 接合界面における、剥がれによる気体拡散または毛管作用; ふくらんだ製品のしわにつながる低い伸び; 曇った外観に仕上がったブラダー; 減少した耐破壊性および引裂強さ; 吹込成形による成形および/またはヒートシーリングおよび/または高周波溶接(R-F welding) に対する抵抗性; 高コスト加工; および、発泡封入および接着結合による困難性; が挙げられる。
【0009】
従来は、(単一材料の利点と欠点の均衡をとるために2つまたはそれ以上の非類似材料を積層する試みによって生じた)これら問題を解決するために、積層体の製造において層間に結合層または接着剤を使用することによって、対処してきた。かかる結合層または接着剤の使用は上記問題の幾つかを解決する助けにはなるが、一般に製品の成形中に生じた廃棄物を利用可能生成物に再粉砕し再循環させることを妨げるので、やはり高い製造コストおよび関連廃棄物に寄与してしまう。これら及びその他の短期間の従来技術は米国特許第4,340,626号;第4,936,029号; および第5,042,176号に更に詳しく記載されており、これら特許の内容は本願明細書中に組み入れられる。
【0010】
「エアソール(登録商標)」靴のような大きな商業的成功をおさめた製品によって、消費者はポンプや弁に頼ることなく、長い耐久寿命、優れた衝撃吸収性および弾性、妥当なコスト、およびふくらませた状態の圧力の安定性、を有する製品を享受することができた。従って、長寿命のふくらんだ気体充填ブラダーの使用を通して達成された有意な商業上の容認および成功の脚光をあびて、かかる製品に関連した幾つかの残りの欠点を解決するための技術的開発が大いに望まれている。目標は、ナイキ社によって提供されている「エアソール(登録商標)」競技靴のような製品によって達成された性能を満たし且つ望むべくはその性能を越える、可撓性の「永久的に」ふくらんだ気体充填クッション要素を提供することである。
【0011】
可能な技術的進歩の一つの手掛かりとなる領域は上記の米国特許第4,183,156号、第4,219,945号および第4,864,738号に記載されているような大分子低溶解度係数の「スーパーガス」を、より低コストで且つより環境にやさしい気体に置き換えることによって、それらスーパーガス以外の「捕獲」または「拘束」気体を使用することが望ましいであろうとの認識に由来している。たとえば、米国特許第4,936,029号および第5,042,176号は、拘束気体として窒素を使用することによって本質的に永久にふくらんだ状態を維持する柔軟性ブラダーフィルムを製造する方法を詳しく論じている。さらに米国特許第4,906,502号(その内容も本願明細書中に組み入れられる)に記載されているように、上記の米国特許第4,936,029号および第5,042,176号に論じられている多数の認識された問題は結晶質材料の機械的バリヤーを、織物、フィラメント、スクリムおよびメッシュのような可撓性フィルムに組み入れることによって解決されている。米国特許第4,906,502号に記載されている技術を使用した(ナイキ社によって商標「テンシルエア(Tensile Air) 」の名称で販売された) 履物製品のかなりの商業的成功がやはり達成された。その中で利用されているブラダーは代表的には、熱可塑性ウレタンを、芯織物の三次元のダブルバーのラッシェル(Raschel) 編ナイロン布に積層したものから構成されており、その中に拘束気体としてSF6を含有している。この米国特許第4,906,502号に論じられているように、かかるブラダーの構成はSF6、窒素およびその他の拘束気体に対して減少した透過度を有する。
【0012】
様々なフィルム材料の相対的な性能、透過度および拡散を測定するために許容される方法の具体例はASTM1434Vとして表示される手順の中に記載されている。ASTM1434Vによれば、性能、透過度および拡散は次の式によって測定される。
【0013】
性能
【数1】
【0014】
透過度
【数2】
【0015】
拡散
【数3】
【0016】
上記の式を利用することによって、一定の圧力差およびフィルム厚さと組合わされた気体透過速度は特定条件下での気体の運動を規定するのに利用できる。この関連において、過酷な且つ繰り返される衝撃によって与えられる疲労抵抗の厳しい要求を満足させるために開発される競技靴の構成要素の中のブラダーに関する好ましい気体透過速度(GTR)は、好ましくは上記手順によって測定されたときに、約10未満の気体透過速度(GTR)を有しており、より好ましくは、約7.5未満、更により好ましくは、約5未満であり、更により好ましくは2.0またはそれ未満のGTRを有する。
【0017】
上記に加えて、上記の米国特許第4,936,029号および第5,042,176号には、少なくとも一つのプラスチック材料が酸素に対するバリヤーとして作用するように選択されている同時積層されたプラスチック材料の組合せを使用する上記試みに関連した問題についても論じられている。これに関する主な問題はバリヤー層の疲労抵抗性の欠如であった。上記米国特許第5,042,176号に記載されているように、ポリ塩化ビニリデンたとえばサラン(登録商標)とウレタンエラストマーの満足な同時積層は中間結合剤を要求する。かかる構成下では、比較的複雑かつ経費高の工程制御が要求され、たとえば、厳密な時間‐温度関係および加熱プラテンおよび圧力の使用は加圧下で材料を一緒にして冷凍するための冷圧プレスと組合わされる。加えて、接着結合層を使用し又は結晶質材料を充分高レベルで柔軟性フィルムの中に組み入れて気体透過速度を10またはそれ未満にすることは、フィルムの柔軟性を顕著に減少させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の主な目的は、柔軟性、耐久性および低コストの目標を満たす、窒素または別の環境上望ましい気体または気体の組合せによって本質的に永久的にふくらんだクッション装置を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、10.0またはそれ未満の気体透過速度を有する透過性バリヤー材料を有するクッション装置を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、層間の剥がれに対して実質的に抵抗性であり、比較的透明であり、かつ製造するに経済的であるクッション具を提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、バリヤー層が実質的に離層抵抗性であり、かつバリヤー層と柔軟性層の間に結合層を要求しないクッション装置を提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、限定されないが吹込成形、チューブ押出、シート押出、真空成形、ヒートシーリングおよび高周波溶接を包含する様々な技術を利用して形成可能であるクッション装置を提供することである。
【0023】
本発明の更に別の目的は、材料間の界面に沿った毛管作用による気体の喪失が防止されている気体充填クッション装置を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、成形可能な材料の中にクッション装置を封入させるような通常の履物の製造を可能にするクッション装置を提供することである。
【0025】
上記列挙は本発明の目的または利点を網羅しているわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の及びその他の目的を達成するために、本発明は熱可塑性エラストマー性フィルムの望ましい物理的性質と窒素気体およびその他の拘束気体を留めるための改良されたバリヤー的性質との両方を有する一つまたはそれ以上の新規な気体充填膜を特徴とするクッション装置を提供する。気体充填膜は、特定の拘束気体(たとえば、窒素およびスーパーガス)が膜を通して外側へ拡散する割合を選択的に制御するように並びに外部の移動性気体(たとえば、アルゴン、酸素、二酸化炭素、および周囲空気中に存在するその他気体)が気体充填膜の中へ拡散注入するのを可能にするように、処方されている。
【0027】
本発明の気体充填膜は好ましくは少なくとも2つの柔軟性材料から構成されており、それら柔軟性材料は一緒になってバリヤーとして作用し、そして好ましくはエラストマー性でかつ極性であり、かつ様々な形状の製品を形成することが可能である。理想的には、本発明の教示に従って利用される柔軟性バリヤー材料は気体充填膜の内部要素の中の拘束気体を比較的長期間にわたって含有するべきである。大いに好ましい態様においては、たとえば、気体充填膜は最初のふくらんだ気体圧力の約20%以上を2年間で失うべきではない。言い換えれば、最初に20.0〜22.0psiの定常状態の圧力にふくらんだ製品は約2年間は約16.0〜18.0psiの範囲の圧力を保留するべきである。
【0028】
加えて、バリヤー材料は柔軟性で、比較的軟質且つしなやかであるべきであり、そして疲労に対して高度に抵抗性であり且つ代表的には高周波溶接またはヒートシーリングによって達成される有効なシールを形成するように溶接可能であるべきである。バリヤー材料はまた、破損無しで高サイクル負荷に耐える能力を有するべきであり、特に、利用されるバリヤー材料が約5ミル〜約50ミルの厚さを有する場合にはそうである。本発明の膜のもう一つの重要な特徴は高量産に使用される技術によって膜が様々な形状に加工可能であるべきだということである。この分野で知られているこれら望ましい技術の中には、吹込成形、射出成形、真空成形、回転式成形、トランスファー成形および加圧成形がある。好ましくは、本発明の膜は、別個の接着剤または結合層を使用しないで以下に詳述する所望の「接着的」または「化学的」結合を達成するのに特に十分高い温度における押出吹込成形を包含する、チューブまたはシート押出のような、押出技術によって成形可能であるべきである。これら上記方法は多様な断面寸法の製品を与えるはずである。
【0029】
先に述べたように、本発明の膜の有意な特徴はバリヤー層を通しての移動性気体の制御された拡散と、その中の拘束気体の保留である。本発明によれば、バリヤーの改良された性能によって、拘束気体として有用なスーパーガスだけでなく、窒素ガスも拘束気体として使用されてもよい。主要な移動性気体は酸素であり、それはバリヤーを通して比較的急速に拡散し、そしてその他の移動性気体は窒素以外の空気中に通常存在する気体のどれでもよい。窒素ガスが拘束気体として適切であるためのバリヤー材料を提供したことの実用的効果は有意義である。
【0030】
たとえば、膜は最初に窒素ガスによって、または窒素ガスと一つまたはそれ以上のスーパーガスとの混合物または空気との混合物によって、ふくらまされてもよい。窒素を、または窒素と一つまたはそれ以上のスーパーガスとの混合物を、充填した場合には、この拘束気体は膜内に本質的に留まるので、膜内への酸素ガスの比較的急速な拡散により、圧力の増加が生じる。これは最初のふくらんだ状態の圧力よりも約2.5psi以下の圧力増加を効果的に計上し、そして結果として、初期圧力に依存して1〜5%の比較的穏やかな膜容積増加を生じる。しかしながら、ふくらませるための気体として空気を使用した場合には、窒素は拘束気体として留まるが、酸素は膜から外へ拡散する傾向がある。この場合には、酸素の膜外への拡散と拘束気体の保留との結果として、定常状態の圧力は最初のふくらんだ状態の圧力よりも減少する。
【0031】
本発明は本発明の様々な形態および態様を考慮することによって当業者に明らかでなるであろう多数のその他利点を有する。かかる態様は添付図面に示されており、そして本願明細書の一部を成す。以下の詳細な説明は限定的な意味に解釈されるべきでなく、本発明の一般的な原理を例証するために様々な態様をより詳しく以下に説明するのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜図5を引用して説明するが、そこには競技靴10が示されており、それは靴底構造物と、本発明の教示に従う膜と称されるクッション装置を包含している。靴10は靴底14に取付けられた甲部12を包含している。靴の甲部12は限定するものではないが皮革、ビニル、ナイロンおよびその他の一般的な織布材料を包含する様々な通常の材料から製造できる。代表的には、靴の甲部12はつま先16、レース小穴18、最上部20のまわりと、かかと領域22に沿って、補強材を包含している。大抵の競技靴がそうであるように、靴底14はつま先領域16から土踏まず領域24を通って後方のかかと部分22に至る一般に靴10の全長に延びている。
【0033】
本発明によれば、靴底構造物14は好ましくは靴底構造物の間底26の中に配置された一つまたはそれ以上の選択透過性の膜28を含有している。具体的には、本発明の膜28は、図1〜図5に図解されているように間底26のかかと領域22の中に互いに平行の関係で間隔を置いて配置されている複数のチューブ状部材のような様々な幾何学的構造を有して形成することができる。チューブ状部材28は注入された拘束気体を含有しているシールされたふくらんだ膜である。より詳しくは、各膜28は移動性気体の拡散を許すが拘束気体の拡散に対しては抵抗または阻止するバリヤー層を包含している。膜28のこの予め定められた拡散特性は熱可塑性外層32の内面に沿って直接隣接して接触して位置する内層であるバリヤー層30によって付与される。これら2つの膜層は図4および図5に最もよく示されている。先に言及したように、本発明の膜28は様々な構成または形状に形成することができる。たとえば、別の態様の膜28Bは図8および図9に図解されているように、かかと台の形状に形成することができる。図8および図9に示されているかかと台構成物を包含する競技靴は商業的に使用され、そしてオレゴン州ビーバートンのナイキ社によって登録商標エアヘルスウォーカープラス(Air Health WakerPlus) の名称で商業的に使用され販売されている。図8および図9のかかと台構造物は1993年4月20日に出願された米国意匠特許出願第007,934号にも示されている。同様に、図10に図解されている態様の膜28Cに実質的に類似した幾何学的構造を有するかかと台はナイキ社から登録商標エアストラクチャー(Air Structure)II の名称で販売された競技靴の中に使用されている。図10のかかと台構成物は1994年1月25日に発行された米国意匠特許第343,504号にも示されている。さらに例示的に、図11〜13を引用して図解された別態様の膜28Dはナイキ社の登録商標エアマックス2(AirMax2) およびエアマックス2CBの名称で販売されている競技靴の中に現在使用されており、そして本発明の教示に従って形成可能である。この膜構成物は1994年8月23日に発行された米国意匠特許第349,804号および1994年8月30日に発行された米国意匠特許第350,016号にも示されている。さらに別態様の膜28Eは図14〜16を引用して図解されている。膜28Eはナイキ社によって登録商標エアマックス(Air Max) の名称で販売されている競技靴の中に現在使用されている。この膜構成物は1992年6月12日に出願された米国意匠特許出願第897,966号にも示されている。さらに、図17および図18には、引用数字28Fによって表示された更に別の膜構成物が図解されている。この点によって認識されるはずであるが、本発明の膜構成物は(チューブの形態であっても、長い台の形態であっても、またはその他の形態のかかる構成物であっても)、履物製品の間底または外底の中に完全または部分的に封入されてもよい。
【0034】
ここに図解されているものに似た幾何学的構造を有する多数のチューブ状部材及びかかと台が商業的に使用されているが、従来の態様に利用されているようなチューブ状部材及びかかと台は典型的に単一のエラストマー性材料から形成されている。たとえば、膜(またはかかる引用資料の中に使用されている用語としての外被)用にしばしば使用されている材料は代表的には、ポリウレタンエラストマー性材料、ポリエステルエラストマー、フルオロエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、等々からなる群から選ばれ、得られた製品は一つまたはそれ以上のスーパーガスによってふくらまされていた。ポリウレタンエラストマー材料はそれらの優れたヒートシール特性、屈曲疲労強度、適切な弾性率、引張強さ、引裂強さおよび耐磨耗性の故に、一般に好ましい。しかしながら、従来の開示されたポリウレタンエラストマー系(すなわち、単独で又は結晶質材料との組合せで使用される)は気体およびスーパーガスの望まない拡散に対するバリヤーとしては本発明の膜よりもはるかに有効でない傾向がある。従って、本発明の目標は、一般にポリウレタンエラストマーによって与えられる特徴の利点を獲得する一方で、接着剤または結合層の使用に頼らず拡散注入の利点を与え且つ従来開示の広範な様々な製造方法で使用できる改良されたバリヤー材料の提供によって、かかる特徴を向上させることである。
【0035】
やはり図1〜図5を引用して説明すると、本発明の教示に従う膜28の第一の態様が図解されている。膜28は図示されているように、外層32を包含する複合構造を有しており、外層は気圧を受けても膜の予め定められた最大容積を越えての膨張には好ましく抵抗性である柔軟性弾性エラストマー性材料から形成されている。膜28は制御された拡散注入または自動加圧を可能にするバリヤー材料から形成された内層30も包含している。
【0036】
先に言及したように外層32は、優れたヒートシール特性、曲げ疲労強度、適する弾性率、引張強さ、引裂強さおよび耐磨耗性を呈する材料または材料の組合せから好ましく形成される。引用された特徴を呈する利用可能な材料の中には、様々なウレタン類の熱可塑性エラストマー、本願明細書中に引用されているもの、たとえば、熱可塑性ウレタンまたは簡単なTPUは、それらの優れた加工性故に大いに好ましい。本願明細書中に使用されている用語「熱可塑性樹脂」は、この材料が特徴的な温度範囲を通して加熱することにより軟化する又は冷却することにより硬化することができ従って様々な技法によって軟化状態で様々な製品に成形できることを意味している。
【0037】
外層32を形成するのに有効である多数の熱可塑性ウレタンの中には、ペレタン(Pellethane 、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社の登録商標); エラストラン(Elastollan 、BASF社の登録商標); およびエスタン(ESTANE 、B.F.グッドリッチ社の登録商標); のようなウレタンがあり、それらはエステル系またはエーテル系どちらかであり、特に有効であることが判明した。その他の、ポリエステル、ポリエステル、ポリカプロラクトンおよびポリカーボネートのマクログリコール系の熱可塑性ウレタンも使用できる。
【0038】
内層30は気体透過を制御することに主として責任をもつ主要なバリヤー成分である。層30は、エチレンとビニルアルコールのコポリマー、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルと酢酸メチルのコポリマー、たとえば、バーレックス(BAREX、ブリティッシュ・ペトローリアム社の登録商標) 、ポリエステル、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、脂肪族および芳香族ポリアミド、液晶ポリマー、およびポリウレタン工学用熱可塑性樹脂、たとえばイソプラスト(ISOPLAST 、ダウケミカル社の商標) からなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の材料から製造されてもよい。
【0039】
上記に列挙された材料の中で、エチレンとビニルアルコールを包含するコポリマーから形成された内層30は大いに好ましく、最も好ましいのは本質的にエチレンとビニルアルコールからなるコポリマーである。大いに好ましいエチレン・ビニルアルコール系コポリマーのかかるタイプの一つは、ニューヨーク州ニューヨークの日本ゼオン(USA)から入手可能であるソアルノール(SOARNOL、登録商標) として知られている商業的に入手可能な生成物である。別の大いに商業的に利用可能な、エチレンとビニルアルコールのコポリマーはイリノイ州リッスルのエバル(Eval)カンパニー・オブ・アメリカから入手可能なエバル(EVAL 、登録商標) である。大いに好ましい商業的に利用可能な、エチレンとビニルアルコールのコポリマーは代表的には約27モル%〜約48モル%の平均エチレン含量を有する。一般に、より高いエチレン含量は熱可塑性ウレタン層とエチレン・ビニルアルコールコポリマー層の間の結合をより強いものにする。
【0040】
拡散注入は先に引用した米国特許第4,340,626号に記載されている。この特許に論じられているように、膜をふくらませるのに使用されている気体は膜を取り囲む周囲空気とは異なるか又は少なくとも部分的に異なる。「スーパーガス」とも称されている、ふくらませるための気体は、大分子および低溶解度係数を有する気体の群、たとえば、非常に低い透過度を示し、そして内層であるバリヤー層を通して容易に拡散することには無能力である気体の群から選ばれる。膜が周囲空気によって囲まれると、膜内の圧力は最初のふくらんだ状態から比較的急速に上昇することに注目すべきである。この圧力上昇は周囲空気中の窒素、酸素およびアルゴンが膜を通して内側へ拡散するせいであり、膜内に含有された空気の分圧が囲みの外の大気圧に等しくなるまで起こる。周囲空気は内側へと拡散するのに、最初のふくらませるための気体は囲みから外への拡散が非常に遅いので、囲み内の全圧は認めうる程の上昇を示す。従って、かかる全圧は膜内の空気の分圧と膜内の最初のふくらませるための空気の圧力との和である。
【0041】
米国特許第4,340,626号に論じられているように、圧力は最初の2月〜4月の間に拡散注入作用によって初期のふくらんだ状態の圧力よりも高くなり、それからゆっくりと降下し始める。全圧の上昇がそのピークに達するときには、拡散注入は膜内の分圧がその最大に到達した点まで進行している。この時点において膜は、内部空気の圧力が外の周囲空気と平衡するので、装置から外へ拡散することができない加圧媒体(空気)の最大量で充填された状態になっている。加えて、スーパーガスの圧力は初期状態におけるよりも小さくなっており、その理由は主として、エラストマー性フィルムの伸張による容積増加のためである。このより低い圧力においては、スーパーガスの通常でさえ非常に低い拡散速度が更に低い値にまで減少する。これらの2つのファクター、すなわち、平衡圧力における最大空気とスーパーガスの最小拡散の両方が、本質的に一定の圧力における長期加圧に貢献する。
【0042】
圧力がピークに達した後では、降下の速度は非常に遅くなり、膜内の全圧は、使用された具体的なふくらませるための気体、膜をつくっている材料及びふくらませた状態の圧力に依存して、約2年またはそれ以上の長期間にわたって初期圧力より高いままである。先に言及したように、圧力降下は継続するであろうが、膜からの気体の拡散の速度が遅いので、膜内の圧力は膜が更に数年間は効率的に使用するのに貢献できるように十分に高いままである。従って、膜は本質的に永久にふくらんでいる。
【0043】
本発明の製品を実際に商業的に利用するには、(1) 一方では活性化された拡散の最小速度と(2) 他方では疲労抵抗、製造加工性およびヒートシール性のような物理的性質との間の適切かつ最適な均衡をとることが重要である。従って、膜は酸素のような気体が外へ拡散するのを100%許さないバリヤーを形成しないこと、それでいて窒素やスーパーガスを包含するその他気体が膜を通して拡散するのを有効に阻止することが好ましい。
【0044】
酸素が膜を通して拡散できるということは問題ではなく、そして実際には、望ましい独特の利点である。たとえば、膜を窒素および/またはスーパーガスでふくらませた後では、周囲環境の酸素は先に記載したように拡散注入のメカニズムを通して膜内へ拡散することができる。従って、酸素の分圧は膜内に既に含有されている窒素および/またはスーパーガスの分圧に加えられ、その結果として製品の全圧は上昇する。周囲雰囲気中の酸素の分圧は(14.7psiの海水レベルにおける全圧から離れた)約2.5psiである。従って、膜内への酸素気体の逆拡散は約2.5psiの最大の圧力上昇を起こすであろう。かかる圧力上昇は膜の実質的な引張緩和(その結果の、囲みの初期容積の増加)を相殺するのに有効であり、そこでは、空気の気体成分のどれもが膜内へ拡散する。従って、本発明の特徴の一つは膜の複合材料が窒素以外の空気中気体に対しては半透過性の膜であり従って気体に対する完全なバリヤーではないということである。実用的な利点はフィルム弛緩による容積増加による圧力損失が酸素の拡散注入によって相殺されるということである。
【0045】
透過度と拡散注入を制御することの実際的利点の一つは製品の引張弛緩特性を拘束気体の保留と移動性気体の拡散による圧力変動によって調整していることに関係する。たとえば、幾つかの製品においては、より低い弾性率又はより薄い厚さのどちらかを有するフィルムを使用してクッション装置により柔らかい感触を付与することが望ましい。より小さい厚さ又はより低い弾性率によって、拘束気体がバリヤーを通して拡散する傾向はより大きくなる。かかる損失を補償するために、クッション装置をやや過剰にふくらませてもよい。しかしながら、フィルムの薄さ又は低弾性率のために、クッション装置は拡張する傾向があり、その結果は製品の幾何学的構造が望まれるようには完全でなくなる、即ち、製品が時間とともに変化する。従って、相対的により厚い内層30および外層32を提供することによって、弾性率は増加し、かつ拘束気体の流動は減少し、そして製品は実質的に過剰にふくらませる必要もなく、ふくらませた状態の圧力を、比較的小さい構造変化で、維持することが可能である。
【0046】
本発明の拡散注入能力によって、更に安価な拘束気体を使用できる。加えて、軽量でより安価な材料を複合構造体の最も外側の層32に使用できる。次の表は2種類のスーパーガスを、本発明の教示に従ってスーパーガスとして有効に作用する更に安価な拘束気体と比較している。
【表1】
【0047】
スーパーガスとして典型的に分類されてはいないが、空気および窒素は入手容易性、コストおよび重量の観点から本発明の実施においては、ふくらませるための気体の候補として優れている。
【0048】
本発明の重要な利点の一つは図8および図9に図解されている膜から明らかである。言及したように、クッション装置の幾何学的構造に依存するが、拡散注入の期間に、膜の実質的膨張は生じない。膜の全体寸法は元の寸法の約3〜5%以内に維持される。従って、膜の形状および幾何学的構造は最初のふくらんだ状態から、拡散注入を通して及び製品の有効寿命を通しての期間の間、明らかに一定に維持される。
【0049】
先に言及したように、本願開示の膜は様々な加工技術によって形成することができ、かかる技術は限定されるものではないが、チューブまたはシート押出フィルム材料の、吹込成形、射出成形、真空成形およびヒートシールまたは高周波溶接合を包含する。好ましくは、本発明の教示に従った膜は次のように製造される。まず、熱可塑性ウレタン材料の外層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマーの内層を一緒に同時押出して多層フィルム材料を効率的に生成し、結果としてこの材料から膜が生成される。この多層フィルム材料を形成した後に、続いて、このフィルム膜をヒートシールまたは高周波溶接によって接合して、高い可撓性と拡散注入能力の両特性を有する非平坦膜にする。
【0050】
図6および図7を引用して説明すると、別態様の膜28Aが、長いチューブ形状の多層要素の形態で図解されている。この改質された膜28Aは第三層34がバリヤー層30の内面に沿って隣接して設けられており、バリヤー層30が外層32と最も内側の層34の間に挟まれていること以外は図1〜図5に図解されている複合構造物と本質的に同じである。最も内側の層34も好ましくは、バリヤー層30を湿気から防護することを付加するために熱可塑性ウレタン系材料から製造される。層34はバリヤー層30の崩壊に対する向上した防護を与えるという利点に加えて、三次元形状の空気袋を可能にする高品質の溶接を提供することを助ける傾向もある。
【0051】
図1〜図7に示されている空気袋は多層押出チューブから好ましく加工される。1フィートから5フィートまでのコイルの範囲の長さの同時押出チューブは、拘束気体好ましくは窒素によって0psiの周囲圧から100psiまでの範囲の、好ましくは、5〜50psiの範囲の、所望の初期のふくらんだ状態の圧力に、ふくらまされる。チューブの区画は内部要素35を規定する所望の長さに高周波溶接またはヒートシールされる。それから、この製造されたブラダーとブラダーの間の溶接領域で切断することによって個々のブラダーが分離されてもよい。ブラダーはいわゆる平坦な状態に押出されたチューブ材を使用し内部幾何学構造物を溶接してチューブにすることによっても加工できるということにも留意すべきである。
【0052】
熱可塑性ウレタンと主要バリヤー材料(すなわち、EVOH)が個々の流路を通って押出機の出口端に進むと、ダイリップ出口近くで、溶融流はそれらがダイ本体に入るときには典型的に積層流で移動する層状態で共に浮流するように合わされ配列される。理想的には、これら材料は層30、32および34の隣接部間の最大接着に最適な湿潤を得るために約300°F〜約450°Fの温度で合わせられる。
【0053】
図6および図7との関連で更に詳しく説明すると、図6および図7によれば、膜28Aは熱可塑性ウレタンからなる第一層32、バリヤー材料からなる中間に位置する第二層30、および熱可塑性ウレタンからなる第三層34を包含する、「サンドイッチ」構造に配列された3層から成る。
【0054】
極めて好ましい態様においては、2つの熱可塑性ウレタン層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマー層が、反応するような接触(reactive contact)を実質的に全体にわたって生じさせるのに充分な高い温度を使用して、同時押出される。従って、中間の接着剤または結合層を必要としない。
【0055】
現時点の理論および知識によって拘束するつもりはないけれども、熱可塑性ウレタンおよびエチレンビニルアルコールコポリマーの予め重合されたシートは少なくとも約200psiの圧力で約300°F〜約450°Fの範囲の温度で反応するように接触させられた(たとえば、同時押出された)場合には一体積層体を提供するのに充分な水素結合を生じると信じられる。
【0056】
好ましくは、熱可塑性ポリウレタンおよびエチレンビニルアルコールは結合層または接着剤を何ら使用することなく、2層間に交叉結合または通常の共有結合を生じさせることで改質される。本発明の好ましい組成物および方法は本発明の方法によって反応するような接触をもたらされたときの熱可塑性ウレタンおよびエチレン‐ビニルアルコールコポリマーの固有の性質に専ら頼っている。
【0057】
膜28Aの実質的に予定の接触表面領域全体にわたって生じる、熱可塑性ウレタンを包含する層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマーを包含する層の間の表面結合を形成する明らかな化学反応は、次のようにまとめることができる:
【化1】
【0058】
ただし、Rは
【化2】
【0059】
であり、そしてR′は(CH2)4のような短鎖ジオールである。
【0060】
生じる明らかな水素結合の他に、その他の力、たとえば、配向力および誘導力、ファンデルワールス力として知られているもの、それは2分子間に存在するロンドンの力の結果である、および極性分子間に存在する双極子相互力も、熱可塑性材料と主要バリヤー材料の隣接層間の結合力に寄与する。
【0061】
試験は本発明の積層膜10を形成するために使用した材料について、および反応を特徴付ける膜サンプルについて行った。最初に、商業的に入手可能な形態の熱可塑性ウレタンすなわちペレタン(登録商標)のサンプルを、遊離イソシアネート基が存在するかどうかを決定するためにエチレンジアミンの溶液の中に入れた。沈澱が起こらなかった; 従って、尿素は形成されなかった。従って、エチレンとビニルアルコールのコポリマーの中のビニルアルコール成分によって提供されるヒドロキシル基と結合する可能性のある有効イソシアネート基は存在しないことが推論された。従って、米国特許第5,036,110号に記載されているようには有意な通常のイソシアネート/ポリオール反応は起こらないし、それは本発明の反応するような接触のためには必要でない。
【0062】
その後に、熱可塑性ウレタンに含有されている酸素分子と、エチレンとビニルアルコールのコポリマーの中のビニルアルコール成分によって提供されるヒドロキシル基との間の可能な表面反応を特徴付けることに使用するための薄いフィルム形態のサンプルを製造した。エラストラン(登録商標) C−90A−13(000)ポリエステル系熱可塑性ウレタン、ペレタン(登録商標)2355−87AEポリエステル系熱可塑性ウレタン、およびソアルノール(登録商標)エチレンビニルアルコールコポリマー、の比較的薄いフィルムを製造した。さらに、ペレタン(登録商標)2355−80AEの第一層、エバル(登録商標) の第二層、およびペレタン(登録商標)2355−80AEの第三層を包含する3層積層体から薄いフィルムを形成した。図20〜図23に示されているフーリエ変換赤外線スペクトルによれば、約3400cm-1の波数において実質的な水素結合が各フィルム中に検出された。従って、(交叉結合なしで又は結合層または接着剤の使用なしで)本発明の膜に観察された強い結合は実質的に水素結合によって生じるとみられ、それは本発明の膜の実質的長さにわたって起こることが観察される。従って、熱可塑性ウレタンおよびエチレンビニルアルコールコポリマーの交互層を使用した本発明の膜は(高極性溶剤中に置かれる場合以外は)接着剤または結合層を必要とすることなく離層抵抗性である。
【0063】
本発明の熱可塑性ウレタンの層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマーの層の間の水素結合は、従来技術の態様、代表的にはバイネル(Bynel)のような接着剤結合層をたとえば熱可塑性ウレタンおよびエチレンビニルアルコール各層間の結合を改良および維持するために使用しているものとは対照的である。従来、かかる水素結合の存在および/または可能性を認識できなかったという事実はさらに米国特許第5,036,110号に例証されている。この特許には、熱可塑性ポリウレタンの層の間に挟まれたバリヤー層を提供するためにエチレンとビニルアルコールのコポリマーを熱可塑性ポリウレタンと予め混合することが開示されている。これは熱可塑性ウレタン並びにエチレンとビニルアルコールのコポリマーの各々の混合されていない層とは区別される。米国特許第5,036,110号には、熱可塑性ウレタンと、エチレン‐ビニルアルコールコポリマーとを予め混合して成る層は2つのTPU層に堅固に結合されるためには更に改質されなければならないことも教示されている。
【0064】
これに関しては、有意な結合は積層膜の長さに沿ってエチレン‐ビニルアルコールコポリマーのビニルアルコール基によって付与される有効な水素分子およびヒドロキシルおよびウレタン、または単に有効極性基、の結果として起こる。
【0065】
熱可塑性ウレタンの組成もバリヤー層30(すなわち、エチレン‐ビニルアルコール)と外層32および内層34(すなわち、熱可塑性ウレタン)との間の結合に対して影響を有する。また、充填剤、たとえば、無極性ポリマー材料および無機充填剤、または増量剤、たとえば、タルク、シリカ、マイカ等、は熱可塑性ウレタンとエチレンビニルアルコールの材料の結合能力に対してマイナス影響を与える傾向がある。
【0066】
一般に、本発明の熱可塑性ウレタン(すなわち、ポリウレタン)は、通常の作業温度でゴム状であるエラストマー性材料(ポリエステルまたはポリエーテル)の軟質セグメント(50〜80%)によって連結された硬質セグメント(20〜50%)を有する交互ブロックコポリマーを有する。硬質セグメントと軟質セグメントはポリマー鎖に沿って秩序をもって又は無作為に配列されている。硬質ブロックの組成は代表的にはジフェニルウレタンジイソシアネート(通常、MDIと称される)、および1,4‐ブタンジオールである。加熱されたときに、硬質および軟質のTPUブロックコポリマーセグメントは溶融し、そして材料は流体になり、そして若干のウレタン結合は分離するかも知れない。冷却されると、セグメントは再硬化し軟質セグメントを連結して熱可塑性ゴムに類似した固体構造を与える。また、TPUエラストマーは比較的極性であるので、それらは実に容易にヒートシール可能であり、特に高周波誘導加熱シールによってシール可能である。
【0067】
図12〜図16には、吹込成形によって加工された空気袋が示されている。2層または好ましくは3層フィルムのパリソン(parison)が同時押出される。それから、通常の吹込成形手法を使用して、パリソンを吹込み成形する。得られたブラダーは図12および図15に最もよく示されており、それらブラダーはそれから所望の拘束気体によって好ましい初期圧力にふくらまされ、それから、ふくらませるために使用した口(たとえば、38)は高周波溶接によってシールされる。
【0068】
別の好ましいブラダーの加工方法は図8〜図10に示されている。同時押出された2層または好ましくは3層のシートまたはフィルムがまず形成される。同時押出シートまたはフィルムの厚さの範囲は0.001インチ〜0.100インチ、好ましくは、0.010インチ〜0.050インチである。内部区画を形成するために、多層フィルムの2つのシートの一方を他方の上に配置し、そして通常のヒートシールまたは高周波溶接の手法を用いて選択点に沿って互いに接合した。それから、まだふくらんでいないブラダーの内部区画を、形成された口130から、0psiの周囲圧から100psiまでの範囲の、好ましくは5〜50psiの範囲の、所望の初期圧力にふくらませる。好ましい拘束気体は窒素である。
【0069】
図17および図18に示されているような別の好ましい空気袋は、同時押出された2層または3層チューブ材を成形することによって製造された。同時押出チューブの壁(すなわち全層の断面)の厚さの範囲は0.001インチ〜約0.100インチであり、好ましくは、0.010インチ〜0.050インチである。チューブ材は平坦な状態の構造に押しつぶされており、そして相対する壁は通常のヒートシール手法または高周波溶接を用いて選択点および各端部において接合される。それから、このブラダーは形成された口38から、0psiの周囲圧から100psiまでの範囲の、好ましくは5〜50psiの範囲の、所望の初期圧力にふくらまされる。
【0070】
図示されている様々な製品は履物製品用の間底として特に競技靴の中に使用されるように設計されている。かかる用途においては、ふくらませることが可能な膜は次のような様々な態様のいずれかで使用されてもよい: (1) 適する間底発泡体の中に完全に封入される; (2) 足裏の心地よさを付加するための非平坦表面に充填する又は滑らかにするユニットの上面にのみ封入される; (3) 外底の取付けを助けるために底部に封入される; (4) 装飾上および販売上の理由で最上部と底部には封入されるが周辺側面は露出させる; (5) 最上部と底部には封入されるがユニットの側面の選択部分だけは露出させる; (6) 成形された「足台(Footbed)」によって最上部に封入される; および(7) 封入用発泡体なしで使用される。
【0071】
さらに例示によって、大抵のものが本発明の範囲に包含される様々な材料についての気体透過速度が図19に示されている。図19からわかるように、積層製品は熱可塑性ウレタン成分によって付与される可撓性の他に比較的低い気体透過速度の利点を与える。
【0072】
上記の詳細な説明は本発明の好ましい態様を記述しているが、本発明は特許請求の範囲を逸脱しないで改造、変形および変更が可能であることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の競技靴の側面図であり、中間底の部分を切取って断面図を示す。
【図2】図1の競技靴の底面図であり、一部を切取って別の断面図を示す。
【図3】図1の線3−3に沿った断面図である。
【図4】本発明の一態様のチューブ造形2層クッション装置の部分側面斜視図である。
【図5】図4の線5−5に沿った断面図である。
【図6】本発明の別態様のチューブ造形3層クッション装置の部分側面斜視図である。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図である。
【図8】本発明の別態様の膜の斜視図である。
【図9】図8に図解した膜の側面図である。
【図10】本発明の更に別態様の膜の斜視図である。
【図11】本発明の更に別態様の膜を有する競技靴の側面図である。
【図12】図11に図解した膜の斜視図である。
【図13】図11および図12に図解した膜の平面図である。
【図14】本発明の更に別態様の膜を有する競技靴の側面図である。
【図15】図15に図解した膜の斜視図である。
【図16】図14および図15に図解した膜の平面図である。
【図17】本発明の更に別態様の膜の斜視図である。
【図18】図17に図解した膜の側面図である。
【図19】様々な材料についての気体透過速度を表わすグラフである。
【図20】第一サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【図21】第二サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【図22】第三サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【図23】第四サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【符号の説明】
【0074】
10 競技靴
12 甲部
14 靴底
16 つま先
18 レース小穴
20 最上部
22 かかと領域
24 土踏まず
26 間底
28 ブラダー
30 内層であるバリヤー層
32 外層
34 最も内側の層
【技術分野】
【0001】
本発明は履物用クッション装置に関し、より詳しくは、大気中に通常含まれている気体の制御された拡散を可能にする一方で不活性気体の拡散を選択的に制御するためのエラストマー性バリヤー材料を包含した気体充填クッション装置に関し、このクッション装置は履物製品の中に特に使用される。
【0002】
本発明を更によく理解するには、本願と同時に出願された発明の名称を「積層された柔軟性弾性バリヤー膜(Laminated Resilient Flexible Barrier Membrances) 」とする米国特許出願第 号が関連があり、その内容は本願明細書中に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
靴、特に競技靴は、主に2つの範疇の構成要素すなわち靴の甲(upper) と靴底(sole)を包含するものとして記述できる。靴の甲部の一般的目的は足をそれに合わせて心地よく包むことである。理想的には、靴の甲部は魅力的で高度に耐久性で尚且つ心地よい材料または材料の組合せから製造されるべきである。やはり一つまたはそれ以上の耐久性材料から製造することができる靴底は牽引を与えることと靴のデザインに合った使用の間に着用者の足および体を保護することを主にして設計されている。競技活動のような使用中に生じる相当大きい力は競技靴の靴底が着用者の足、足首および脚を保護および衝撃吸収することの向上を要求する。たとえば、ランニング活動中に起こる衝撃は体重の2、3倍までの力を発生させることがあり; 或る種の他の競技、たとえば、バスケットボールのプレーは個人の体重の約6〜10倍までの力を発生させることが知られている。従って、現在では、多くの靴は、特に、多くの競技靴は、激しい競技活動中に使用者の衝撃を緩和させるための幾つかのタイプの弾性の衝撃吸収材料または衝撃吸収要素をもって提供されている。かかる弾性の衝撃吸収材料または要素は今や製靴工業では間底(mid-sole)と称されるに至っている。
【0004】
より詳しくは、充分な衝撃吸収と弾性の両方が適切に考慮されている有効な衝撃応答を達成する間底のデザインを開発することが当工業の焦点になっている。かかる弾性の衝撃吸収材料または要素は靴の中で足裏が直接ふれる部分として一般に規定される靴の中底(insole)部分にも応用することができる。
【0005】
製靴工業における特別の注目点は液体または気体どちらかの流体または両方の流体を含有するのに適する間底または差込み構造物を開発することである。靴底の中に利用される気体充填構造物の例は1908年10月13日にミラー(Miller)に発行された「履物用クッション(Cushion for Footwear)」と題する米国特許第900,867号; 1913年7月29日にガイ(Guy) に発行された「靴用のクッション底及びかかと(Cushioned Sole and Heel for Shoes) 」と題する米国特許第1,069,001号; 1919年5月27日にスピニイ(Spinney) に発行された「空気入り中底(Pneumatic Insole)」と題する米国特許第1,304,915号; 1924年11月4日にショッフ(Schopf)に発行された「アーチクッション(Arch Cushion)」と題する米国特許第1,514,468号; 1937年5月18日にギルバート(Gilbert) に発行された「空気入りフットサポート(Pneumatic Foot Support)」と題する米国特許第2,080,469号; 1953年7月21日にタウン(Towne) に発行された「靴用クッション中底(Cushioning Insole for Shoes) 」と題する米国特許第2,645,865号; 1954年5月11日にリード(Reed)に発行された「靴用クッション中底およびその製造方法(Cushioned InnerSole for Shoesand Method of Making the Same)」と題する米国特許第2,677,906号; 1980年1月15日にルディ(Rudy)に発行された「履物製品用中底構成物(Insole Construction for Articles of Footwear)」と題する米国特許第4,183,156号; 1980年9月2日にやはりルディ(Rudy)に発行された「履物(Footwear)」と題する米国特許第4,219,945号; 1988年2月2日にウァング(Huang) に発行された「エアクッション靴底(Air Cushion Shoe Sole) 」と題する米国特許第4,722,131号; および1989年9月12日にホロビッツ(Horovitz)に発行された「履物用底部構成物(Sole Construction for Footwear)」と題する米国特許第4,864,738号に示されており、これら特許の内容はいずれも本願明細書中に組み入れられる。当業者には認識されるように、かかる空気充填構造物(しばしば、製靴工業では「ブラダー(bladder) 」と称される) は代表的には2つの広い範疇、すなわち、(1) 米国特許第4,183,156号および第4,219,945号に開示されているもののような「空気圧で」ふくらんだシステム、および(2) 米国特許第4,722,131号に例示されているようなポンプや弁で調整可能なシステムに分類される。「空気圧で」ふくらんだブラダーを包含している、米国特許第4,182,156号に開示されているタイプの競技靴は、オレゴン州ビーバートン(Beaverton) のナイキ社(Nike, Inc.)によって商標「エアソール(Air Sole)」およびその他の商標で成功裏に販売されてきた。今までに、このタイプの競技靴は米国および世界中で数百万足も販売された。
【0006】
空気圧でふくらんだブラダーは代表的には、柔軟性(flexible)の熱可塑性材料を使用する方法で構成され、それはこの工業分野で「スーパーガス(super gas) 」と称されている大分子低溶解度係数の気体たとえばSF6でふくらまされている。例としては、1982年7月20日にルディに発行された「装置を自動的にふくらませる拡散注入装置(Diffusion Pumping Apparatus Self-inflating Device) 」と題する米国特許第4,340,626号(これの内容は本願明細書中に組み入れられる)は、一対のエラストマー性の、選択透過性のフィルムシートでブラダーを形成した後に気体または気体混合物によって好ましくは大気圧より高い規定された圧力にふくらませたものを開示している。理想的には、利用される気体(単数または複数)は選択透過性のブラダーを通って外部大気中へ拡散する速度が比較的低いものであり、他方、(大気中に含有されている、比較的高い拡散速度を有する)窒素、酸素およびアルゴンのような気体はブラダーに侵入することができる。このことは大気中からブラダーの中へと拡散する窒素、酸素およびアルゴンの分圧と、ふくらませたときにブラダーの中に注入された最初に含有された気体(単数または複数)の分圧とを合わせることによって、ブラダー内の全圧の増加を生じさせる。この、ブラダーの全圧を増加させる総合的には殆ど「一方向」の気体追加の概念は、当分野では「拡散注入(diffusion pumping) 」として知られている。
【0007】
拡散注入システムにおいては、内圧の定常状態が達成されるまでに時間がかかる。この時間は使用されるブラダーの材料およびブラダーに含有される気体(単数または複数)の選択に関係する。たとえば、酸素はむしろ急速にブラダーの中に拡散する傾向があり、その効果は約2.5psiの内圧増加である。対照的に、窒素ガスは何週間にもわたって徐々にブラダーの中に拡散し、結果として圧力増加が約12.0psiにもなる。このように徐々にブラダーの圧力が増加することは典型的に皮膜の緊張を増加させ、結果として伸張による容積増加を生じる。この効果はこの工業分野では通常、「引張緩和」または「クレープ」と称されている。従って、ブラダーに使用される材料の最初の選択およびブラダーを最初にふくらませるのに利用される拘束空気(または空気混合物)の選択は、本質的に永久的に最初の所定圧力でふくらみ続け従って長時間にわたって最初の所定圧力を維持するブラダーの達成にとっては臨界的である。
【0008】
エアソール(登録商標)競技靴の導入以前または導入直後は、この工業分野に使用されていた多数の間底用ブラダーはポリ塩化ビニリデン系材料たとえばサラン(Saran、ダウケミカル社の登録商標)から製造された単一層の気体バリヤー型フィルムから構成されていた。これら材料はその性質が硬質プラスチックであることによって、曲げ疲労、ヒートシール性、弾性および崩壊の観点から理想より劣る。これらの限界を、(様々な熱可塑性樹脂のような可撓性のブラダー用材料と組合わされた一つまたはそれ以上のバリヤー材料を包含する)積層や被覆のような手法によって製造したブラダー用フィルムを創造することによって対処する試みは、かかる組合せに典型的な広く様々な問題を呈した。かかる複合的構成による問題としては、中でも、典型的な離層; 接合界面における、剥がれによる気体拡散または毛管作用; ふくらんだ製品のしわにつながる低い伸び; 曇った外観に仕上がったブラダー; 減少した耐破壊性および引裂強さ; 吹込成形による成形および/またはヒートシーリングおよび/または高周波溶接(R-F welding) に対する抵抗性; 高コスト加工; および、発泡封入および接着結合による困難性; が挙げられる。
【0009】
従来は、(単一材料の利点と欠点の均衡をとるために2つまたはそれ以上の非類似材料を積層する試みによって生じた)これら問題を解決するために、積層体の製造において層間に結合層または接着剤を使用することによって、対処してきた。かかる結合層または接着剤の使用は上記問題の幾つかを解決する助けにはなるが、一般に製品の成形中に生じた廃棄物を利用可能生成物に再粉砕し再循環させることを妨げるので、やはり高い製造コストおよび関連廃棄物に寄与してしまう。これら及びその他の短期間の従来技術は米国特許第4,340,626号;第4,936,029号; および第5,042,176号に更に詳しく記載されており、これら特許の内容は本願明細書中に組み入れられる。
【0010】
「エアソール(登録商標)」靴のような大きな商業的成功をおさめた製品によって、消費者はポンプや弁に頼ることなく、長い耐久寿命、優れた衝撃吸収性および弾性、妥当なコスト、およびふくらませた状態の圧力の安定性、を有する製品を享受することができた。従って、長寿命のふくらんだ気体充填ブラダーの使用を通して達成された有意な商業上の容認および成功の脚光をあびて、かかる製品に関連した幾つかの残りの欠点を解決するための技術的開発が大いに望まれている。目標は、ナイキ社によって提供されている「エアソール(登録商標)」競技靴のような製品によって達成された性能を満たし且つ望むべくはその性能を越える、可撓性の「永久的に」ふくらんだ気体充填クッション要素を提供することである。
【0011】
可能な技術的進歩の一つの手掛かりとなる領域は上記の米国特許第4,183,156号、第4,219,945号および第4,864,738号に記載されているような大分子低溶解度係数の「スーパーガス」を、より低コストで且つより環境にやさしい気体に置き換えることによって、それらスーパーガス以外の「捕獲」または「拘束」気体を使用することが望ましいであろうとの認識に由来している。たとえば、米国特許第4,936,029号および第5,042,176号は、拘束気体として窒素を使用することによって本質的に永久にふくらんだ状態を維持する柔軟性ブラダーフィルムを製造する方法を詳しく論じている。さらに米国特許第4,906,502号(その内容も本願明細書中に組み入れられる)に記載されているように、上記の米国特許第4,936,029号および第5,042,176号に論じられている多数の認識された問題は結晶質材料の機械的バリヤーを、織物、フィラメント、スクリムおよびメッシュのような可撓性フィルムに組み入れることによって解決されている。米国特許第4,906,502号に記載されている技術を使用した(ナイキ社によって商標「テンシルエア(Tensile Air) 」の名称で販売された) 履物製品のかなりの商業的成功がやはり達成された。その中で利用されているブラダーは代表的には、熱可塑性ウレタンを、芯織物の三次元のダブルバーのラッシェル(Raschel) 編ナイロン布に積層したものから構成されており、その中に拘束気体としてSF6を含有している。この米国特許第4,906,502号に論じられているように、かかるブラダーの構成はSF6、窒素およびその他の拘束気体に対して減少した透過度を有する。
【0012】
様々なフィルム材料の相対的な性能、透過度および拡散を測定するために許容される方法の具体例はASTM1434Vとして表示される手順の中に記載されている。ASTM1434Vによれば、性能、透過度および拡散は次の式によって測定される。
【0013】
性能
【数1】
【0014】
透過度
【数2】
【0015】
拡散
【数3】
【0016】
上記の式を利用することによって、一定の圧力差およびフィルム厚さと組合わされた気体透過速度は特定条件下での気体の運動を規定するのに利用できる。この関連において、過酷な且つ繰り返される衝撃によって与えられる疲労抵抗の厳しい要求を満足させるために開発される競技靴の構成要素の中のブラダーに関する好ましい気体透過速度(GTR)は、好ましくは上記手順によって測定されたときに、約10未満の気体透過速度(GTR)を有しており、より好ましくは、約7.5未満、更により好ましくは、約5未満であり、更により好ましくは2.0またはそれ未満のGTRを有する。
【0017】
上記に加えて、上記の米国特許第4,936,029号および第5,042,176号には、少なくとも一つのプラスチック材料が酸素に対するバリヤーとして作用するように選択されている同時積層されたプラスチック材料の組合せを使用する上記試みに関連した問題についても論じられている。これに関する主な問題はバリヤー層の疲労抵抗性の欠如であった。上記米国特許第5,042,176号に記載されているように、ポリ塩化ビニリデンたとえばサラン(登録商標)とウレタンエラストマーの満足な同時積層は中間結合剤を要求する。かかる構成下では、比較的複雑かつ経費高の工程制御が要求され、たとえば、厳密な時間‐温度関係および加熱プラテンおよび圧力の使用は加圧下で材料を一緒にして冷凍するための冷圧プレスと組合わされる。加えて、接着結合層を使用し又は結晶質材料を充分高レベルで柔軟性フィルムの中に組み入れて気体透過速度を10またはそれ未満にすることは、フィルムの柔軟性を顕著に減少させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の主な目的は、柔軟性、耐久性および低コストの目標を満たす、窒素または別の環境上望ましい気体または気体の組合せによって本質的に永久的にふくらんだクッション装置を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、10.0またはそれ未満の気体透過速度を有する透過性バリヤー材料を有するクッション装置を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、層間の剥がれに対して実質的に抵抗性であり、比較的透明であり、かつ製造するに経済的であるクッション具を提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、バリヤー層が実質的に離層抵抗性であり、かつバリヤー層と柔軟性層の間に結合層を要求しないクッション装置を提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、限定されないが吹込成形、チューブ押出、シート押出、真空成形、ヒートシーリングおよび高周波溶接を包含する様々な技術を利用して形成可能であるクッション装置を提供することである。
【0023】
本発明の更に別の目的は、材料間の界面に沿った毛管作用による気体の喪失が防止されている気体充填クッション装置を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、成形可能な材料の中にクッション装置を封入させるような通常の履物の製造を可能にするクッション装置を提供することである。
【0025】
上記列挙は本発明の目的または利点を網羅しているわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の及びその他の目的を達成するために、本発明は熱可塑性エラストマー性フィルムの望ましい物理的性質と窒素気体およびその他の拘束気体を留めるための改良されたバリヤー的性質との両方を有する一つまたはそれ以上の新規な気体充填膜を特徴とするクッション装置を提供する。気体充填膜は、特定の拘束気体(たとえば、窒素およびスーパーガス)が膜を通して外側へ拡散する割合を選択的に制御するように並びに外部の移動性気体(たとえば、アルゴン、酸素、二酸化炭素、および周囲空気中に存在するその他気体)が気体充填膜の中へ拡散注入するのを可能にするように、処方されている。
【0027】
本発明の気体充填膜は好ましくは少なくとも2つの柔軟性材料から構成されており、それら柔軟性材料は一緒になってバリヤーとして作用し、そして好ましくはエラストマー性でかつ極性であり、かつ様々な形状の製品を形成することが可能である。理想的には、本発明の教示に従って利用される柔軟性バリヤー材料は気体充填膜の内部要素の中の拘束気体を比較的長期間にわたって含有するべきである。大いに好ましい態様においては、たとえば、気体充填膜は最初のふくらんだ気体圧力の約20%以上を2年間で失うべきではない。言い換えれば、最初に20.0〜22.0psiの定常状態の圧力にふくらんだ製品は約2年間は約16.0〜18.0psiの範囲の圧力を保留するべきである。
【0028】
加えて、バリヤー材料は柔軟性で、比較的軟質且つしなやかであるべきであり、そして疲労に対して高度に抵抗性であり且つ代表的には高周波溶接またはヒートシーリングによって達成される有効なシールを形成するように溶接可能であるべきである。バリヤー材料はまた、破損無しで高サイクル負荷に耐える能力を有するべきであり、特に、利用されるバリヤー材料が約5ミル〜約50ミルの厚さを有する場合にはそうである。本発明の膜のもう一つの重要な特徴は高量産に使用される技術によって膜が様々な形状に加工可能であるべきだということである。この分野で知られているこれら望ましい技術の中には、吹込成形、射出成形、真空成形、回転式成形、トランスファー成形および加圧成形がある。好ましくは、本発明の膜は、別個の接着剤または結合層を使用しないで以下に詳述する所望の「接着的」または「化学的」結合を達成するのに特に十分高い温度における押出吹込成形を包含する、チューブまたはシート押出のような、押出技術によって成形可能であるべきである。これら上記方法は多様な断面寸法の製品を与えるはずである。
【0029】
先に述べたように、本発明の膜の有意な特徴はバリヤー層を通しての移動性気体の制御された拡散と、その中の拘束気体の保留である。本発明によれば、バリヤーの改良された性能によって、拘束気体として有用なスーパーガスだけでなく、窒素ガスも拘束気体として使用されてもよい。主要な移動性気体は酸素であり、それはバリヤーを通して比較的急速に拡散し、そしてその他の移動性気体は窒素以外の空気中に通常存在する気体のどれでもよい。窒素ガスが拘束気体として適切であるためのバリヤー材料を提供したことの実用的効果は有意義である。
【0030】
たとえば、膜は最初に窒素ガスによって、または窒素ガスと一つまたはそれ以上のスーパーガスとの混合物または空気との混合物によって、ふくらまされてもよい。窒素を、または窒素と一つまたはそれ以上のスーパーガスとの混合物を、充填した場合には、この拘束気体は膜内に本質的に留まるので、膜内への酸素ガスの比較的急速な拡散により、圧力の増加が生じる。これは最初のふくらんだ状態の圧力よりも約2.5psi以下の圧力増加を効果的に計上し、そして結果として、初期圧力に依存して1〜5%の比較的穏やかな膜容積増加を生じる。しかしながら、ふくらませるための気体として空気を使用した場合には、窒素は拘束気体として留まるが、酸素は膜から外へ拡散する傾向がある。この場合には、酸素の膜外への拡散と拘束気体の保留との結果として、定常状態の圧力は最初のふくらんだ状態の圧力よりも減少する。
【0031】
本発明は本発明の様々な形態および態様を考慮することによって当業者に明らかでなるであろう多数のその他利点を有する。かかる態様は添付図面に示されており、そして本願明細書の一部を成す。以下の詳細な説明は限定的な意味に解釈されるべきでなく、本発明の一般的な原理を例証するために様々な態様をより詳しく以下に説明するのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜図5を引用して説明するが、そこには競技靴10が示されており、それは靴底構造物と、本発明の教示に従う膜と称されるクッション装置を包含している。靴10は靴底14に取付けられた甲部12を包含している。靴の甲部12は限定するものではないが皮革、ビニル、ナイロンおよびその他の一般的な織布材料を包含する様々な通常の材料から製造できる。代表的には、靴の甲部12はつま先16、レース小穴18、最上部20のまわりと、かかと領域22に沿って、補強材を包含している。大抵の競技靴がそうであるように、靴底14はつま先領域16から土踏まず領域24を通って後方のかかと部分22に至る一般に靴10の全長に延びている。
【0033】
本発明によれば、靴底構造物14は好ましくは靴底構造物の間底26の中に配置された一つまたはそれ以上の選択透過性の膜28を含有している。具体的には、本発明の膜28は、図1〜図5に図解されているように間底26のかかと領域22の中に互いに平行の関係で間隔を置いて配置されている複数のチューブ状部材のような様々な幾何学的構造を有して形成することができる。チューブ状部材28は注入された拘束気体を含有しているシールされたふくらんだ膜である。より詳しくは、各膜28は移動性気体の拡散を許すが拘束気体の拡散に対しては抵抗または阻止するバリヤー層を包含している。膜28のこの予め定められた拡散特性は熱可塑性外層32の内面に沿って直接隣接して接触して位置する内層であるバリヤー層30によって付与される。これら2つの膜層は図4および図5に最もよく示されている。先に言及したように、本発明の膜28は様々な構成または形状に形成することができる。たとえば、別の態様の膜28Bは図8および図9に図解されているように、かかと台の形状に形成することができる。図8および図9に示されているかかと台構成物を包含する競技靴は商業的に使用され、そしてオレゴン州ビーバートンのナイキ社によって登録商標エアヘルスウォーカープラス(Air Health WakerPlus) の名称で商業的に使用され販売されている。図8および図9のかかと台構造物は1993年4月20日に出願された米国意匠特許出願第007,934号にも示されている。同様に、図10に図解されている態様の膜28Cに実質的に類似した幾何学的構造を有するかかと台はナイキ社から登録商標エアストラクチャー(Air Structure)II の名称で販売された競技靴の中に使用されている。図10のかかと台構成物は1994年1月25日に発行された米国意匠特許第343,504号にも示されている。さらに例示的に、図11〜13を引用して図解された別態様の膜28Dはナイキ社の登録商標エアマックス2(AirMax2) およびエアマックス2CBの名称で販売されている競技靴の中に現在使用されており、そして本発明の教示に従って形成可能である。この膜構成物は1994年8月23日に発行された米国意匠特許第349,804号および1994年8月30日に発行された米国意匠特許第350,016号にも示されている。さらに別態様の膜28Eは図14〜16を引用して図解されている。膜28Eはナイキ社によって登録商標エアマックス(Air Max) の名称で販売されている競技靴の中に現在使用されている。この膜構成物は1992年6月12日に出願された米国意匠特許出願第897,966号にも示されている。さらに、図17および図18には、引用数字28Fによって表示された更に別の膜構成物が図解されている。この点によって認識されるはずであるが、本発明の膜構成物は(チューブの形態であっても、長い台の形態であっても、またはその他の形態のかかる構成物であっても)、履物製品の間底または外底の中に完全または部分的に封入されてもよい。
【0034】
ここに図解されているものに似た幾何学的構造を有する多数のチューブ状部材及びかかと台が商業的に使用されているが、従来の態様に利用されているようなチューブ状部材及びかかと台は典型的に単一のエラストマー性材料から形成されている。たとえば、膜(またはかかる引用資料の中に使用されている用語としての外被)用にしばしば使用されている材料は代表的には、ポリウレタンエラストマー性材料、ポリエステルエラストマー、フルオロエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、等々からなる群から選ばれ、得られた製品は一つまたはそれ以上のスーパーガスによってふくらまされていた。ポリウレタンエラストマー材料はそれらの優れたヒートシール特性、屈曲疲労強度、適切な弾性率、引張強さ、引裂強さおよび耐磨耗性の故に、一般に好ましい。しかしながら、従来の開示されたポリウレタンエラストマー系(すなわち、単独で又は結晶質材料との組合せで使用される)は気体およびスーパーガスの望まない拡散に対するバリヤーとしては本発明の膜よりもはるかに有効でない傾向がある。従って、本発明の目標は、一般にポリウレタンエラストマーによって与えられる特徴の利点を獲得する一方で、接着剤または結合層の使用に頼らず拡散注入の利点を与え且つ従来開示の広範な様々な製造方法で使用できる改良されたバリヤー材料の提供によって、かかる特徴を向上させることである。
【0035】
やはり図1〜図5を引用して説明すると、本発明の教示に従う膜28の第一の態様が図解されている。膜28は図示されているように、外層32を包含する複合構造を有しており、外層は気圧を受けても膜の予め定められた最大容積を越えての膨張には好ましく抵抗性である柔軟性弾性エラストマー性材料から形成されている。膜28は制御された拡散注入または自動加圧を可能にするバリヤー材料から形成された内層30も包含している。
【0036】
先に言及したように外層32は、優れたヒートシール特性、曲げ疲労強度、適する弾性率、引張強さ、引裂強さおよび耐磨耗性を呈する材料または材料の組合せから好ましく形成される。引用された特徴を呈する利用可能な材料の中には、様々なウレタン類の熱可塑性エラストマー、本願明細書中に引用されているもの、たとえば、熱可塑性ウレタンまたは簡単なTPUは、それらの優れた加工性故に大いに好ましい。本願明細書中に使用されている用語「熱可塑性樹脂」は、この材料が特徴的な温度範囲を通して加熱することにより軟化する又は冷却することにより硬化することができ従って様々な技法によって軟化状態で様々な製品に成形できることを意味している。
【0037】
外層32を形成するのに有効である多数の熱可塑性ウレタンの中には、ペレタン(Pellethane 、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社の登録商標); エラストラン(Elastollan 、BASF社の登録商標); およびエスタン(ESTANE 、B.F.グッドリッチ社の登録商標); のようなウレタンがあり、それらはエステル系またはエーテル系どちらかであり、特に有効であることが判明した。その他の、ポリエステル、ポリエステル、ポリカプロラクトンおよびポリカーボネートのマクログリコール系の熱可塑性ウレタンも使用できる。
【0038】
内層30は気体透過を制御することに主として責任をもつ主要なバリヤー成分である。層30は、エチレンとビニルアルコールのコポリマー、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルと酢酸メチルのコポリマー、たとえば、バーレックス(BAREX、ブリティッシュ・ペトローリアム社の登録商標) 、ポリエステル、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、脂肪族および芳香族ポリアミド、液晶ポリマー、およびポリウレタン工学用熱可塑性樹脂、たとえばイソプラスト(ISOPLAST 、ダウケミカル社の商標) からなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の材料から製造されてもよい。
【0039】
上記に列挙された材料の中で、エチレンとビニルアルコールを包含するコポリマーから形成された内層30は大いに好ましく、最も好ましいのは本質的にエチレンとビニルアルコールからなるコポリマーである。大いに好ましいエチレン・ビニルアルコール系コポリマーのかかるタイプの一つは、ニューヨーク州ニューヨークの日本ゼオン(USA)から入手可能であるソアルノール(SOARNOL、登録商標) として知られている商業的に入手可能な生成物である。別の大いに商業的に利用可能な、エチレンとビニルアルコールのコポリマーはイリノイ州リッスルのエバル(Eval)カンパニー・オブ・アメリカから入手可能なエバル(EVAL 、登録商標) である。大いに好ましい商業的に利用可能な、エチレンとビニルアルコールのコポリマーは代表的には約27モル%〜約48モル%の平均エチレン含量を有する。一般に、より高いエチレン含量は熱可塑性ウレタン層とエチレン・ビニルアルコールコポリマー層の間の結合をより強いものにする。
【0040】
拡散注入は先に引用した米国特許第4,340,626号に記載されている。この特許に論じられているように、膜をふくらませるのに使用されている気体は膜を取り囲む周囲空気とは異なるか又は少なくとも部分的に異なる。「スーパーガス」とも称されている、ふくらませるための気体は、大分子および低溶解度係数を有する気体の群、たとえば、非常に低い透過度を示し、そして内層であるバリヤー層を通して容易に拡散することには無能力である気体の群から選ばれる。膜が周囲空気によって囲まれると、膜内の圧力は最初のふくらんだ状態から比較的急速に上昇することに注目すべきである。この圧力上昇は周囲空気中の窒素、酸素およびアルゴンが膜を通して内側へ拡散するせいであり、膜内に含有された空気の分圧が囲みの外の大気圧に等しくなるまで起こる。周囲空気は内側へと拡散するのに、最初のふくらませるための気体は囲みから外への拡散が非常に遅いので、囲み内の全圧は認めうる程の上昇を示す。従って、かかる全圧は膜内の空気の分圧と膜内の最初のふくらませるための空気の圧力との和である。
【0041】
米国特許第4,340,626号に論じられているように、圧力は最初の2月〜4月の間に拡散注入作用によって初期のふくらんだ状態の圧力よりも高くなり、それからゆっくりと降下し始める。全圧の上昇がそのピークに達するときには、拡散注入は膜内の分圧がその最大に到達した点まで進行している。この時点において膜は、内部空気の圧力が外の周囲空気と平衡するので、装置から外へ拡散することができない加圧媒体(空気)の最大量で充填された状態になっている。加えて、スーパーガスの圧力は初期状態におけるよりも小さくなっており、その理由は主として、エラストマー性フィルムの伸張による容積増加のためである。このより低い圧力においては、スーパーガスの通常でさえ非常に低い拡散速度が更に低い値にまで減少する。これらの2つのファクター、すなわち、平衡圧力における最大空気とスーパーガスの最小拡散の両方が、本質的に一定の圧力における長期加圧に貢献する。
【0042】
圧力がピークに達した後では、降下の速度は非常に遅くなり、膜内の全圧は、使用された具体的なふくらませるための気体、膜をつくっている材料及びふくらませた状態の圧力に依存して、約2年またはそれ以上の長期間にわたって初期圧力より高いままである。先に言及したように、圧力降下は継続するであろうが、膜からの気体の拡散の速度が遅いので、膜内の圧力は膜が更に数年間は効率的に使用するのに貢献できるように十分に高いままである。従って、膜は本質的に永久にふくらんでいる。
【0043】
本発明の製品を実際に商業的に利用するには、(1) 一方では活性化された拡散の最小速度と(2) 他方では疲労抵抗、製造加工性およびヒートシール性のような物理的性質との間の適切かつ最適な均衡をとることが重要である。従って、膜は酸素のような気体が外へ拡散するのを100%許さないバリヤーを形成しないこと、それでいて窒素やスーパーガスを包含するその他気体が膜を通して拡散するのを有効に阻止することが好ましい。
【0044】
酸素が膜を通して拡散できるということは問題ではなく、そして実際には、望ましい独特の利点である。たとえば、膜を窒素および/またはスーパーガスでふくらませた後では、周囲環境の酸素は先に記載したように拡散注入のメカニズムを通して膜内へ拡散することができる。従って、酸素の分圧は膜内に既に含有されている窒素および/またはスーパーガスの分圧に加えられ、その結果として製品の全圧は上昇する。周囲雰囲気中の酸素の分圧は(14.7psiの海水レベルにおける全圧から離れた)約2.5psiである。従って、膜内への酸素気体の逆拡散は約2.5psiの最大の圧力上昇を起こすであろう。かかる圧力上昇は膜の実質的な引張緩和(その結果の、囲みの初期容積の増加)を相殺するのに有効であり、そこでは、空気の気体成分のどれもが膜内へ拡散する。従って、本発明の特徴の一つは膜の複合材料が窒素以外の空気中気体に対しては半透過性の膜であり従って気体に対する完全なバリヤーではないということである。実用的な利点はフィルム弛緩による容積増加による圧力損失が酸素の拡散注入によって相殺されるということである。
【0045】
透過度と拡散注入を制御することの実際的利点の一つは製品の引張弛緩特性を拘束気体の保留と移動性気体の拡散による圧力変動によって調整していることに関係する。たとえば、幾つかの製品においては、より低い弾性率又はより薄い厚さのどちらかを有するフィルムを使用してクッション装置により柔らかい感触を付与することが望ましい。より小さい厚さ又はより低い弾性率によって、拘束気体がバリヤーを通して拡散する傾向はより大きくなる。かかる損失を補償するために、クッション装置をやや過剰にふくらませてもよい。しかしながら、フィルムの薄さ又は低弾性率のために、クッション装置は拡張する傾向があり、その結果は製品の幾何学的構造が望まれるようには完全でなくなる、即ち、製品が時間とともに変化する。従って、相対的により厚い内層30および外層32を提供することによって、弾性率は増加し、かつ拘束気体の流動は減少し、そして製品は実質的に過剰にふくらませる必要もなく、ふくらませた状態の圧力を、比較的小さい構造変化で、維持することが可能である。
【0046】
本発明の拡散注入能力によって、更に安価な拘束気体を使用できる。加えて、軽量でより安価な材料を複合構造体の最も外側の層32に使用できる。次の表は2種類のスーパーガスを、本発明の教示に従ってスーパーガスとして有効に作用する更に安価な拘束気体と比較している。
【表1】
【0047】
スーパーガスとして典型的に分類されてはいないが、空気および窒素は入手容易性、コストおよび重量の観点から本発明の実施においては、ふくらませるための気体の候補として優れている。
【0048】
本発明の重要な利点の一つは図8および図9に図解されている膜から明らかである。言及したように、クッション装置の幾何学的構造に依存するが、拡散注入の期間に、膜の実質的膨張は生じない。膜の全体寸法は元の寸法の約3〜5%以内に維持される。従って、膜の形状および幾何学的構造は最初のふくらんだ状態から、拡散注入を通して及び製品の有効寿命を通しての期間の間、明らかに一定に維持される。
【0049】
先に言及したように、本願開示の膜は様々な加工技術によって形成することができ、かかる技術は限定されるものではないが、チューブまたはシート押出フィルム材料の、吹込成形、射出成形、真空成形およびヒートシールまたは高周波溶接合を包含する。好ましくは、本発明の教示に従った膜は次のように製造される。まず、熱可塑性ウレタン材料の外層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマーの内層を一緒に同時押出して多層フィルム材料を効率的に生成し、結果としてこの材料から膜が生成される。この多層フィルム材料を形成した後に、続いて、このフィルム膜をヒートシールまたは高周波溶接によって接合して、高い可撓性と拡散注入能力の両特性を有する非平坦膜にする。
【0050】
図6および図7を引用して説明すると、別態様の膜28Aが、長いチューブ形状の多層要素の形態で図解されている。この改質された膜28Aは第三層34がバリヤー層30の内面に沿って隣接して設けられており、バリヤー層30が外層32と最も内側の層34の間に挟まれていること以外は図1〜図5に図解されている複合構造物と本質的に同じである。最も内側の層34も好ましくは、バリヤー層30を湿気から防護することを付加するために熱可塑性ウレタン系材料から製造される。層34はバリヤー層30の崩壊に対する向上した防護を与えるという利点に加えて、三次元形状の空気袋を可能にする高品質の溶接を提供することを助ける傾向もある。
【0051】
図1〜図7に示されている空気袋は多層押出チューブから好ましく加工される。1フィートから5フィートまでのコイルの範囲の長さの同時押出チューブは、拘束気体好ましくは窒素によって0psiの周囲圧から100psiまでの範囲の、好ましくは、5〜50psiの範囲の、所望の初期のふくらんだ状態の圧力に、ふくらまされる。チューブの区画は内部要素35を規定する所望の長さに高周波溶接またはヒートシールされる。それから、この製造されたブラダーとブラダーの間の溶接領域で切断することによって個々のブラダーが分離されてもよい。ブラダーはいわゆる平坦な状態に押出されたチューブ材を使用し内部幾何学構造物を溶接してチューブにすることによっても加工できるということにも留意すべきである。
【0052】
熱可塑性ウレタンと主要バリヤー材料(すなわち、EVOH)が個々の流路を通って押出機の出口端に進むと、ダイリップ出口近くで、溶融流はそれらがダイ本体に入るときには典型的に積層流で移動する層状態で共に浮流するように合わされ配列される。理想的には、これら材料は層30、32および34の隣接部間の最大接着に最適な湿潤を得るために約300°F〜約450°Fの温度で合わせられる。
【0053】
図6および図7との関連で更に詳しく説明すると、図6および図7によれば、膜28Aは熱可塑性ウレタンからなる第一層32、バリヤー材料からなる中間に位置する第二層30、および熱可塑性ウレタンからなる第三層34を包含する、「サンドイッチ」構造に配列された3層から成る。
【0054】
極めて好ましい態様においては、2つの熱可塑性ウレタン層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマー層が、反応するような接触(reactive contact)を実質的に全体にわたって生じさせるのに充分な高い温度を使用して、同時押出される。従って、中間の接着剤または結合層を必要としない。
【0055】
現時点の理論および知識によって拘束するつもりはないけれども、熱可塑性ウレタンおよびエチレンビニルアルコールコポリマーの予め重合されたシートは少なくとも約200psiの圧力で約300°F〜約450°Fの範囲の温度で反応するように接触させられた(たとえば、同時押出された)場合には一体積層体を提供するのに充分な水素結合を生じると信じられる。
【0056】
好ましくは、熱可塑性ポリウレタンおよびエチレンビニルアルコールは結合層または接着剤を何ら使用することなく、2層間に交叉結合または通常の共有結合を生じさせることで改質される。本発明の好ましい組成物および方法は本発明の方法によって反応するような接触をもたらされたときの熱可塑性ウレタンおよびエチレン‐ビニルアルコールコポリマーの固有の性質に専ら頼っている。
【0057】
膜28Aの実質的に予定の接触表面領域全体にわたって生じる、熱可塑性ウレタンを包含する層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマーを包含する層の間の表面結合を形成する明らかな化学反応は、次のようにまとめることができる:
【化1】
【0058】
ただし、Rは
【化2】
【0059】
であり、そしてR′は(CH2)4のような短鎖ジオールである。
【0060】
生じる明らかな水素結合の他に、その他の力、たとえば、配向力および誘導力、ファンデルワールス力として知られているもの、それは2分子間に存在するロンドンの力の結果である、および極性分子間に存在する双極子相互力も、熱可塑性材料と主要バリヤー材料の隣接層間の結合力に寄与する。
【0061】
試験は本発明の積層膜10を形成するために使用した材料について、および反応を特徴付ける膜サンプルについて行った。最初に、商業的に入手可能な形態の熱可塑性ウレタンすなわちペレタン(登録商標)のサンプルを、遊離イソシアネート基が存在するかどうかを決定するためにエチレンジアミンの溶液の中に入れた。沈澱が起こらなかった; 従って、尿素は形成されなかった。従って、エチレンとビニルアルコールのコポリマーの中のビニルアルコール成分によって提供されるヒドロキシル基と結合する可能性のある有効イソシアネート基は存在しないことが推論された。従って、米国特許第5,036,110号に記載されているようには有意な通常のイソシアネート/ポリオール反応は起こらないし、それは本発明の反応するような接触のためには必要でない。
【0062】
その後に、熱可塑性ウレタンに含有されている酸素分子と、エチレンとビニルアルコールのコポリマーの中のビニルアルコール成分によって提供されるヒドロキシル基との間の可能な表面反応を特徴付けることに使用するための薄いフィルム形態のサンプルを製造した。エラストラン(登録商標) C−90A−13(000)ポリエステル系熱可塑性ウレタン、ペレタン(登録商標)2355−87AEポリエステル系熱可塑性ウレタン、およびソアルノール(登録商標)エチレンビニルアルコールコポリマー、の比較的薄いフィルムを製造した。さらに、ペレタン(登録商標)2355−80AEの第一層、エバル(登録商標) の第二層、およびペレタン(登録商標)2355−80AEの第三層を包含する3層積層体から薄いフィルムを形成した。図20〜図23に示されているフーリエ変換赤外線スペクトルによれば、約3400cm-1の波数において実質的な水素結合が各フィルム中に検出された。従って、(交叉結合なしで又は結合層または接着剤の使用なしで)本発明の膜に観察された強い結合は実質的に水素結合によって生じるとみられ、それは本発明の膜の実質的長さにわたって起こることが観察される。従って、熱可塑性ウレタンおよびエチレンビニルアルコールコポリマーの交互層を使用した本発明の膜は(高極性溶剤中に置かれる場合以外は)接着剤または結合層を必要とすることなく離層抵抗性である。
【0063】
本発明の熱可塑性ウレタンの層とエチレン‐ビニルアルコールコポリマーの層の間の水素結合は、従来技術の態様、代表的にはバイネル(Bynel)のような接着剤結合層をたとえば熱可塑性ウレタンおよびエチレンビニルアルコール各層間の結合を改良および維持するために使用しているものとは対照的である。従来、かかる水素結合の存在および/または可能性を認識できなかったという事実はさらに米国特許第5,036,110号に例証されている。この特許には、熱可塑性ポリウレタンの層の間に挟まれたバリヤー層を提供するためにエチレンとビニルアルコールのコポリマーを熱可塑性ポリウレタンと予め混合することが開示されている。これは熱可塑性ウレタン並びにエチレンとビニルアルコールのコポリマーの各々の混合されていない層とは区別される。米国特許第5,036,110号には、熱可塑性ウレタンと、エチレン‐ビニルアルコールコポリマーとを予め混合して成る層は2つのTPU層に堅固に結合されるためには更に改質されなければならないことも教示されている。
【0064】
これに関しては、有意な結合は積層膜の長さに沿ってエチレン‐ビニルアルコールコポリマーのビニルアルコール基によって付与される有効な水素分子およびヒドロキシルおよびウレタン、または単に有効極性基、の結果として起こる。
【0065】
熱可塑性ウレタンの組成もバリヤー層30(すなわち、エチレン‐ビニルアルコール)と外層32および内層34(すなわち、熱可塑性ウレタン)との間の結合に対して影響を有する。また、充填剤、たとえば、無極性ポリマー材料および無機充填剤、または増量剤、たとえば、タルク、シリカ、マイカ等、は熱可塑性ウレタンとエチレンビニルアルコールの材料の結合能力に対してマイナス影響を与える傾向がある。
【0066】
一般に、本発明の熱可塑性ウレタン(すなわち、ポリウレタン)は、通常の作業温度でゴム状であるエラストマー性材料(ポリエステルまたはポリエーテル)の軟質セグメント(50〜80%)によって連結された硬質セグメント(20〜50%)を有する交互ブロックコポリマーを有する。硬質セグメントと軟質セグメントはポリマー鎖に沿って秩序をもって又は無作為に配列されている。硬質ブロックの組成は代表的にはジフェニルウレタンジイソシアネート(通常、MDIと称される)、および1,4‐ブタンジオールである。加熱されたときに、硬質および軟質のTPUブロックコポリマーセグメントは溶融し、そして材料は流体になり、そして若干のウレタン結合は分離するかも知れない。冷却されると、セグメントは再硬化し軟質セグメントを連結して熱可塑性ゴムに類似した固体構造を与える。また、TPUエラストマーは比較的極性であるので、それらは実に容易にヒートシール可能であり、特に高周波誘導加熱シールによってシール可能である。
【0067】
図12〜図16には、吹込成形によって加工された空気袋が示されている。2層または好ましくは3層フィルムのパリソン(parison)が同時押出される。それから、通常の吹込成形手法を使用して、パリソンを吹込み成形する。得られたブラダーは図12および図15に最もよく示されており、それらブラダーはそれから所望の拘束気体によって好ましい初期圧力にふくらまされ、それから、ふくらませるために使用した口(たとえば、38)は高周波溶接によってシールされる。
【0068】
別の好ましいブラダーの加工方法は図8〜図10に示されている。同時押出された2層または好ましくは3層のシートまたはフィルムがまず形成される。同時押出シートまたはフィルムの厚さの範囲は0.001インチ〜0.100インチ、好ましくは、0.010インチ〜0.050インチである。内部区画を形成するために、多層フィルムの2つのシートの一方を他方の上に配置し、そして通常のヒートシールまたは高周波溶接の手法を用いて選択点に沿って互いに接合した。それから、まだふくらんでいないブラダーの内部区画を、形成された口130から、0psiの周囲圧から100psiまでの範囲の、好ましくは5〜50psiの範囲の、所望の初期圧力にふくらませる。好ましい拘束気体は窒素である。
【0069】
図17および図18に示されているような別の好ましい空気袋は、同時押出された2層または3層チューブ材を成形することによって製造された。同時押出チューブの壁(すなわち全層の断面)の厚さの範囲は0.001インチ〜約0.100インチであり、好ましくは、0.010インチ〜0.050インチである。チューブ材は平坦な状態の構造に押しつぶされており、そして相対する壁は通常のヒートシール手法または高周波溶接を用いて選択点および各端部において接合される。それから、このブラダーは形成された口38から、0psiの周囲圧から100psiまでの範囲の、好ましくは5〜50psiの範囲の、所望の初期圧力にふくらまされる。
【0070】
図示されている様々な製品は履物製品用の間底として特に競技靴の中に使用されるように設計されている。かかる用途においては、ふくらませることが可能な膜は次のような様々な態様のいずれかで使用されてもよい: (1) 適する間底発泡体の中に完全に封入される; (2) 足裏の心地よさを付加するための非平坦表面に充填する又は滑らかにするユニットの上面にのみ封入される; (3) 外底の取付けを助けるために底部に封入される; (4) 装飾上および販売上の理由で最上部と底部には封入されるが周辺側面は露出させる; (5) 最上部と底部には封入されるがユニットの側面の選択部分だけは露出させる; (6) 成形された「足台(Footbed)」によって最上部に封入される; および(7) 封入用発泡体なしで使用される。
【0071】
さらに例示によって、大抵のものが本発明の範囲に包含される様々な材料についての気体透過速度が図19に示されている。図19からわかるように、積層製品は熱可塑性ウレタン成分によって付与される可撓性の他に比較的低い気体透過速度の利点を与える。
【0072】
上記の詳細な説明は本発明の好ましい態様を記述しているが、本発明は特許請求の範囲を逸脱しないで改造、変形および変更が可能であることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の競技靴の側面図であり、中間底の部分を切取って断面図を示す。
【図2】図1の競技靴の底面図であり、一部を切取って別の断面図を示す。
【図3】図1の線3−3に沿った断面図である。
【図4】本発明の一態様のチューブ造形2層クッション装置の部分側面斜視図である。
【図5】図4の線5−5に沿った断面図である。
【図6】本発明の別態様のチューブ造形3層クッション装置の部分側面斜視図である。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図である。
【図8】本発明の別態様の膜の斜視図である。
【図9】図8に図解した膜の側面図である。
【図10】本発明の更に別態様の膜の斜視図である。
【図11】本発明の更に別態様の膜を有する競技靴の側面図である。
【図12】図11に図解した膜の斜視図である。
【図13】図11および図12に図解した膜の平面図である。
【図14】本発明の更に別態様の膜を有する競技靴の側面図である。
【図15】図15に図解した膜の斜視図である。
【図16】図14および図15に図解した膜の平面図である。
【図17】本発明の更に別態様の膜の斜視図である。
【図18】図17に図解した膜の側面図である。
【図19】様々な材料についての気体透過速度を表わすグラフである。
【図20】第一サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【図21】第二サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【図22】第三サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【図23】第四サンプル材料のフーリエ変換赤外線(FIR)スペクトルを表わす。
【符号の説明】
【0074】
10 競技靴
12 甲部
14 靴底
16 つま先
18 レース小穴
20 最上部
22 かかと領域
24 土踏まず
26 間底
28 ブラダー
30 内層であるバリヤー層
32 外層
34 最も内側の層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を充填したクッション装置であって、
少なくとも一つの拘束気体成分を受容できる内部区画を有する気体充填膜の状態に形成されている多層フィルムを含み、前記多層フィルムは
第一の可撓性弾性エラストマー性熱可塑性材料から構成された外層、
第二の可撓性弾性エラストマー性熱可塑性材料から構成された内層、および
前記の内層と外層の間にそれらと直接隣接して接触して配置されており、前記接触により本質的に水素結合が形成され、前記拘束気体成分の外側への拡散に対しては選択的に抵抗すること及び少なくとも一つの移動性気体成分の内側への拡散注入を許すことが可能であるエチレンとビニルアルコールのコポリマーから構成されたバリヤー層、
を包含している、前記気体充填クッション装置。
【請求項2】
可撓性弾性エラストマー性熱可塑性材料の各層が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンおよびポリカーボネートのマクログリコール系材料およびそれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ウレタンから構成されている、請求項1の気体充填クッション装置。
【請求項3】
拘束気体成分が窒素である、請求項1の気体充填クッション装置。
【請求項4】
エチレンとビニルアルコールのコポリマーが、27モル%〜48モル%のエチレン含量を有するコポリマーからなる群から選ばれる、請求項1の気体充填クッション装置。
【請求項5】
気体を充填したクッション装置であって、
少なくとも一つの拘束気体成分を受容できる内部区画を有する気体充填膜の状態に形成されている多層フィルムを含み、前記多層フィルムは
第一の柔軟な弾性エラストマー性熱可塑性材料から構成された外層、
前記拘束気体成分の外側への拡散に対しては選択的に抵抗すること及び少なくとも一つの移動性気体成分の内側への拡散注入を許すことが可能であるエチレンとビニルアルコールのコポリマーを含む主たるバリヤー材料を含む内層を含み、
前記内層は外層に直接隣接して接触して配置されており、前記接触により本質的に水素結合が形成されている装置。
【請求項6】
前記外層が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンおよびポリカーボネートのマクログリコール系材料およびそれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ウレタンから構成されている、請求項5の気体充填クッション装置。
【請求項7】
拘束気体成分が窒素である、請求項5の気体充填クッション装置。
【請求項8】
エチレンとビニルアルコールのコポリマーが、27モル%〜48モル%のエチレン含量を有するコポリマーからなる群から選ばれる、請求項5の気体充填クッション装置。
【請求項9】
履物用の気体充填クッション装置であって、
熱可塑性材料からなる外側の第一層、および前記外側の第一層にその実質的長さにわたって直接接触し、前記接触により本質的に水素結合が形成される、エチレンとビニルアルコールのコポリマーを包含するバリヤー材料からなる内側の第二層を含み、柔軟な共押出しフィルム材料を含む、前記気体充填クッション装置。
【請求項10】
熱可塑性材料が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンおよびポリカーボネートのマクログリコール系材料およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項9の気体充填クッション装置。
【請求項11】
膜が少なくともひとつの拘束ガス成分によって永久に膨らんでいる請求項1または5に記載の気体を充填したクッション装置。
【請求項12】
膜が最初の膨らんだ気体圧力の20%以上を2年間で失わない請求項1または5に記載の気体を充填したクッション装置。
【請求項1】
気体を充填したクッション装置であって、
少なくとも一つの拘束気体成分を受容できる内部区画を有する気体充填膜の状態に形成されている多層フィルムを含み、前記多層フィルムは
第一の可撓性弾性エラストマー性熱可塑性材料から構成された外層、
第二の可撓性弾性エラストマー性熱可塑性材料から構成された内層、および
前記の内層と外層の間にそれらと直接隣接して接触して配置されており、前記接触により本質的に水素結合が形成され、前記拘束気体成分の外側への拡散に対しては選択的に抵抗すること及び少なくとも一つの移動性気体成分の内側への拡散注入を許すことが可能であるエチレンとビニルアルコールのコポリマーから構成されたバリヤー層、
を包含している、前記気体充填クッション装置。
【請求項2】
可撓性弾性エラストマー性熱可塑性材料の各層が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンおよびポリカーボネートのマクログリコール系材料およびそれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ウレタンから構成されている、請求項1の気体充填クッション装置。
【請求項3】
拘束気体成分が窒素である、請求項1の気体充填クッション装置。
【請求項4】
エチレンとビニルアルコールのコポリマーが、27モル%〜48モル%のエチレン含量を有するコポリマーからなる群から選ばれる、請求項1の気体充填クッション装置。
【請求項5】
気体を充填したクッション装置であって、
少なくとも一つの拘束気体成分を受容できる内部区画を有する気体充填膜の状態に形成されている多層フィルムを含み、前記多層フィルムは
第一の柔軟な弾性エラストマー性熱可塑性材料から構成された外層、
前記拘束気体成分の外側への拡散に対しては選択的に抵抗すること及び少なくとも一つの移動性気体成分の内側への拡散注入を許すことが可能であるエチレンとビニルアルコールのコポリマーを含む主たるバリヤー材料を含む内層を含み、
前記内層は外層に直接隣接して接触して配置されており、前記接触により本質的に水素結合が形成されている装置。
【請求項6】
前記外層が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンおよびポリカーボネートのマクログリコール系材料およびそれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ウレタンから構成されている、請求項5の気体充填クッション装置。
【請求項7】
拘束気体成分が窒素である、請求項5の気体充填クッション装置。
【請求項8】
エチレンとビニルアルコールのコポリマーが、27モル%〜48モル%のエチレン含量を有するコポリマーからなる群から選ばれる、請求項5の気体充填クッション装置。
【請求項9】
履物用の気体充填クッション装置であって、
熱可塑性材料からなる外側の第一層、および前記外側の第一層にその実質的長さにわたって直接接触し、前記接触により本質的に水素結合が形成される、エチレンとビニルアルコールのコポリマーを包含するバリヤー材料からなる内側の第二層を含み、柔軟な共押出しフィルム材料を含む、前記気体充填クッション装置。
【請求項10】
熱可塑性材料が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリオキシプロピレンおよびポリカーボネートのマクログリコール系材料およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項9の気体充填クッション装置。
【請求項11】
膜が少なくともひとつの拘束ガス成分によって永久に膨らんでいる請求項1または5に記載の気体を充填したクッション装置。
【請求項12】
膜が最初の膨らんだ気体圧力の20%以上を2年間で失わない請求項1または5に記載の気体を充填したクッション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−187644(P2006−187644A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76066(P2006−76066)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【分割の表示】特願平7−208904の分割
【原出願日】平成7年8月16日(1995.8.16)
【出願人】(595118113)ナイキ,インコーポレイテッド (5)
【出願人】(595118124)テトラ プラスチックス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【分割の表示】特願平7−208904の分割
【原出願日】平成7年8月16日(1995.8.16)
【出願人】(595118113)ナイキ,インコーポレイテッド (5)
【出願人】(595118124)テトラ プラスチックス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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