説明

改良された薬物溶出要素を有する医用インプラント

体内脈管の狭窄の治療のための埋め込み可能なドレナージ装置(10)が開示されている。この装置は、入口(14)を含み、出口(12)まで伸びて、入口と出口を抜けて形成されているドレナージルーメン(18)を画定しているドレナージチューブ(16)を備えている。ドレナージチューブは、膨潤層と、膨潤層の周囲に形成されているキャスト層を含んでいる。膨潤層は、その周囲に、キャスト層を介しての調整された薬物溶出のために分散させた第1の化学物質を有している。キャスト層は、その周囲に、同層からの薬物溶出のために配置させた第2の化学物質を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋め込み可能な医療装置に関する。より厳密には、本発明は、胆管での使用に適合させたステントを含め、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
胆管ステント構造物の埋め込みによって、閉鎖性黄疸など様々な病態の治療が施されている。胆道瘻又は巨大総胆管結石のような病態の短期治療を施すには、胆管ステント留置治療の各手法を使用することができる。胆管ステントは、術後胆管狭窄症、原発性硬化性胆管炎、及び慢性膵炎のような慢性的病態を治療するのに埋め込まれることもある。
【0003】
胆管ステントは、適切であるとはいえ、ひとたび胆管内に埋め込まれてしまうと、ステントの表面にアモルファスの生体物質や細菌の堆積物(「スラッジ」)が積って徐々にステントのルーメンを詰まらせることで、閉塞してゆくこともあり得る。胆管スラッジはアモルファス物質で、多くの場合、ビリルビン酸カルシウムやパルミチン酸カルシウムの結晶を相当量の各種タンパク質や細菌と共に含有している。細菌の存在下に埋め込まれると、スラッジが急激に堆積することがある。例えば、細菌が線毛を介し又はムコ多糖膜の産生を介してプラスチックステントの表面に付着する可能性がある。ステントのルーメンの表面に細菌が付着すると、細菌がスラッジの多糖外被母体内で繁殖し、埋め込まれたドレナージステントのルーメン内のスラッジの上にバイオフィルムを形成することで、ステントのルーメンが閉塞を起こしかねない。バイオフィルムは、包み込まれた細菌を抗生物質から保護する物理的バリアになり得る。時間が経つにつれて埋め込まれた胆管ステントルーメンが塞がってゆき、それにより、望ましくないことに胆管ステントを通る胆汁の流れが絞られるか又は遮断されることにもなりかねない。
【0004】
胆管ステントは、また、ひとたび埋め込まれると、十二指腸液が総胆管に逆流するのを許してしまうかもしれない。そのような逆流は炎症を引き起こし、総胆管の狭窄の原因となる恐れがある。そのような障害は望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,599,321号
【特許文献2】米国特許第5,217,493号
【特許文献3】米国特許出願第2005/0008763A1号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】メルクインデックス(Merch Index)第9版(1976年)及び第11版(1989年),Merck & Co., Inc.社(ニュージャージー州ローウェイ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当技術には、胆管ステントのような埋め込み可能なドレナージステントのバイオフィルム及びスラッジの堆積プロセスを防止又は低減し、且つ十二指腸液の総胆管への逆流を防止又は低減する、埋め込み可能な医療装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、体内脈管の狭窄の治療のための埋め込み可能なドレナージ装置を提供している。この装置は、入口を含み、出口まで伸びて、入口と出口を抜けて形成されているドレナージルーメンを画定するドレナージチューブを備えている。ドレナージチューブは、膨潤層と、膨潤層の周囲に形成されているキャスト層を含んでいる。膨潤層は、その周囲に、キャスト層を介しての調整された薬物溶出のために分散させた第1の化学物質を有している。キャスト層は、その周囲に、同層からの薬物溶出のために配置させた第2の化学物質を有している。
【0009】
もう1つの例では、本発明は、体内脈管の狭窄の治療用の埋め込み可能なドレナージ装置を製造するための方法を提供している。この方法は、熱成形可能なポリマー材料を用いて管状部材を形成する段階を含んでいる。管状部材は、入口を有し、出口まで伸びて、入口から出口まで形成されているドレナージルーメンを画定している。この方法は、管状部材を、膨潤加工用溶媒と膨潤加工用溶質を備えている膨潤加工用溶液の中で膨潤させる段階を更に含んでいる。膨潤加工用溶質は、膨潤後のチューブを特徴づける抗菌剤と抗血栓剤のうちの少なくとも1つを含んでいる。この方法は、膨潤させたチューブを、キャスト加工用溶媒とキャスト加工用溶質を含むるキャスト加工用溶液の中で被覆を施してドレナージチューブを画定する段階を更に含んでいる。キャスト加工用溶質は、抗菌剤と抗血栓剤と望ましくはポリマーのうち少なくとも1つを含んでいる。
【0010】
本発明の更なる目的、特徴、及び利点は、以下の説明及び付随の特許請求の範囲を添付図面と併せて考察することにより明らかになってゆくであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1つの実施形態による改良された薬物溶出要素を有する胆管ステントの側面図である。
【図2a】図1の胆管ステントの一部の線2−2に沿う側面断面図である。
【図2b】本発明の1つの実施例によるドレナージチューブの膨潤層の化学物質の可変濃度を膨潤時間の関数として描いているグラフである。
【図2c】図2bのグラフに対応しているドレナージチューブの断面図である。
【図3a】図1の胆管ステントの線3−3に沿う断面図である。
【図3b】生体分解性の外被覆を有する胆管ステントの断面図である。
【図3c】本発明の1つの実施形態による、膨潤処理前の胆管ステントの断面図である。
【図3d】膨潤処理後の胆管ステントの断面図である。
【図3e】キャスト加工後の胆管ステントの断面図である。
【図4】本発明のもう1つの実施形態による改良された逆流防止要素を有する胆管ステントの側面図である。
【図5】本発明の更に別の実施形態による改良された薬物溶出要素を有する胆管ステントの側面図である。
【図6】本発明のもう1つの実施形態による改良された薬物溶出要素及び逆流低減要素を有する医療装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、体内脈管に埋め込むための医療装置を提供している。そのような医療装置、例えばステントは、それぞれ、薬物溶出能力を高めるために溶媒膨潤層と溶媒キャスト層を有している。本発明の他の実施例は、前記医療装置を作る方法と、前記医療装置を利用した治療の方法を含んでいる。溶媒膨潤層と溶媒キャスト層のそれぞれは、ステント詰まりの低減、逆流の減少、細菌付着の低減、及び胆管に積もる膜の減少のための抗菌剤と抗血栓剤のうちの少なくとも1つを含有している。
【0013】
ここに論じられている医療装置は、溶媒膨潤層の上に溶媒キャスト層を備えている例示的な胆管ステント実施形態に関して説明されていることに留意されたい。しかしながら、尿管ステント、食道ステント、又はカテーテルなどの他の医療装置も、本発明の他の実施形態による埋め込み可能な医療装置として使用することができる。
【0014】
図1は、本発明の1つの実施形態により、溶媒膨潤層の周囲に溶媒キャスト層を配した胆管ステント10として構成されている管腔内医療装置を示している。この実施形態では、二層型ステント10は、所望の体内脈管内で同ステントから抗菌剤や抗血栓剤を溶出させるための効率的なメカニズムを提供している。図示のように、ステント10は、入口14から出口12まで貫通形成されているドレナージルーメン18を含んでいるドレナージチューブ16を有する胆管ドレナージステントである。入口14は体液がドレナージチューブ16内のドレナージルーメン18に進入できるようにし、出口12は体液がドレナージルーメン18からドレナージチューブ16を出てゆけるようにしているのが望ましい。ステント10は、胆管又は膵管内に設置できるように構成されているのが望ましく、ステントは当該管道の長さに亘り十二指腸の中まで伸ばされる。例えば、ステント10の入口14は、胆管又は膵管内に置かれていてもよい。ステント10は、当該管道の長さに亘り十二指腸の中まで伸ばされ、その十二指腸に出口12が置かれていてもよい。好適な実施形態では、管道の閉塞又は通過障害を有する患者の総胆管又は膵管での使用を意図したステント10が説明されているが、ステント10は、体内の他の区域で使用されるように構成されていてもよい。例えば、ステントは、尿道、尿管、食道、又は血管内で使用されるように構成することもできる。
【0015】
ドレナージチューブ16は、図1に示されているように、実質的に直線状であり、長手方向軸線Xを中心として対称に配置されていてもよい。例えば、ドレナージチューブ16の外径としては約7−12フレンチ(2.3mm−4.0mm又は0.091−0.156インチ)の直径が適し、入口14と出口12の間の距離としては約25−180mm(0.98−7.1インチ)の間の長さが適しているといえよう。
【0016】
この医療装置は、装置を体内通路内にアンカー固定するためのアンカー固定用構成要素を備えているのが望ましい。胆管ステントのアンカー固定用構成要素は、ドレナージチューブの外面から伸びているフラップを含んでいてもよい。アンカー固定用フラップの数、大きさ及び向きは、埋め込まれる特定の医療装置の移動防止要件、埋め込み部位、及び装置の所望機能に適合するように修正することができる。例えば、ステント10は、出口12と入口14それぞれに近接してドレナージチューブ16の外面から伸びる半径方向に張り出したフラップの出口側アレイ30と入口側アレイ32を備えている。フラップの出口側アレイ30と入口側アレイ32は、ステント10を胆管内にアンカー固定するのに選択された任意の適したフラップ数、サイズ、及び構成を有することができる。例えば、出口側アレイ30は、4つのフラップを1列備えており、入口側アレイ32は、4つのフラップを2列備えている。アンカー固定用フラップのアレイ30、32は、例えば、ドレナージチューブ16の遠位端又は近位端の長手方向の小区間を薄切りにし、薄切りにした区間を半径方向に向かせるなど、どのような適切な手段によっても形成することができる。薄切りにする場合の切り込みは、チューブ16の外面に、貫通穴が作成されないように浅く入れるのが望ましい。無論、他の実施形態では、薄切りにする場合の切り込みは、本発明の範囲又は精神を逸脱しないように貫通孔が作成されてもよい。
【0017】
図1と図2aに示されているように、ドレナージチューブ16は、膨潤層22と、膨潤層の周囲に周方向に配置されたキャスト層24と、を含んでいる外面を備えている。ドレナージチューブ16は、膨潤加工用溶媒と、抗菌剤と抗血栓剤のうちの少なくとも1つを含んでいる溶質と、を含有する膨潤加工用溶液の浸透によって「膨潤させる」ことができるポリマー材料から成るのが望ましい。膨潤加工用溶液は、チューブの外部表面に塗布されると、チューブの本体全体に浸透して本体全体を「膨潤させる」。その結果、定常状態で、(単数又は複数の)抗菌材又は(単数又は複数の)抗血栓剤のチューブ全体に亘る実質的に均一な分散が観察される。即ち、(単数又は複数の)抗菌剤及び/又は(単数又は複数の)抗血栓剤は、ドレナージチューブの本体に塗布されると、拡大した分子間空間内に分散することができ、薬物溶出用の膨潤層が画定される。
【0018】
膨潤/含浸プロセス以前で定常状態に達する前は、ドレナージチューブの本体の拡大した分子間空間内の(単数又は複数の)抗菌剤又は(単数又は複数の)抗血栓剤の分散は不均一になるものと理解されたい。即ち、分散中、ポリマー壁に浸透してゆく溶媒及び化学物質の濃度は、定常状態になるまでは、表面が最も高く中間部がより低くなるはずである。図2bと図2cに描かれているように、膨潤時間(t)の関数として、dの内壁部とDの外壁部それぞれでは化学物質の濃度はより高く、中心部に向かうにつれて濃度は低くなっている。時間が増すにつれ(t<t<t)、壁の様々な部分の間の濃度差はゼロに近づき、無視できるほどになる(定常状態)。膨潤プロセスが定常状態の様相に達する前に終わってしまうと、その結果、不均一な様相となる。
【0019】
この実施形態では、また、ドレナージチューブのポリマー材料は、ポリマーと、キャスト加工用溶媒と、抗菌剤と抗血栓剤のうちの少なくとも1つを含む溶媒と、を含有しているキャスト加工用溶液でキャスト加工を施せるのが望ましい。キャスト加工用溶液は、膨潤層に塗布されると、膨潤層の周囲に周方向にキャスト層が形成されるように効果的にポリマー材料を部分的に溶かすことができる。こうして、薬物溶出を目的として、抗菌剤又は抗血栓剤は溶媒キャスト加工によって固形ポリマー材料上に組み入れられる。
【0020】
キャスト加工用溶液のポリマーは、溶媒によって溶解するポリマー、望ましくは、溶媒によって比較的簡単に溶解することが知られているポリマーである。このポリマーは、ここで論じられているポリマー材料と同じポリマーであってもよい。
【0021】
1つの実施形態では、キャスト加工用溶媒は、以下のもの、即ち、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの少なくとも1つを含んでいる。更に、この実施形態では、キャスト加工用溶液は、以下のもの、即ち、セファロポリン類、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、カルバペネム類、ミノサイクリン類、リファンピン、ペニシリン類、モノバクタム類、キノロン類、テトラサイクリン、マクロライド類、サルファ系抗生物質、トリメトプリム、フシジン酸、アミノグリコシド類、アンフォテリシンB、アゾール類、フルシトシン、シロフンギン、ニッコZ、ホスホリルコリン、ポリマー、及びヘパリンのうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0022】
或いは、キャスト加工用溶液は、キャスト加工用溶媒、溶質、及び既知のモノマー又は既知のオリゴマーを含有していてもよい。この実施例では、モノマー又はオリゴマーは、キャスト加工中に反応してポリマーを形成する。
【0023】
ドレナージチューブのポリマー材料と(ここで論じられている)キャスト加工用溶液のポリマーのそれぞれは、エラストマーポリウレタン及びポリウレタンコポリマーのようなエラストマー類;シリコン類;ポリカーボネート類から形成されていてもよい。前述の何れかの混合物又はランダムコポリマー類は、本発明の医療装置を製造するのに有用な非生体分解性の生体適合性基材ポリマー類の非限定的な例である。他の適したポリマー類として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、又はそれらのコポリマー類のようなポリオレフィン;ポリスチレンのようなビニル芳香族系ポリマー類;スチレン−イソブチレンコポリマー類及びブタジエン−スチレンコポリマー類のようなビニル芳香族系コポリマー類;エチレンビニルアセテート(EVA)、酸性基の幾つかを亜鉛又はナトリウムイオンの何れかで中性化させたエチレン−メタクリル酸及びエチレン−アクリル酸コポリマー類(イオノマー類として一般に知られている)のようなエチレン系コポリマー類;ポリアセタール類;ポリ塩化ビニル(PVC)のようなクロロポリマー類;ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル類;ポリエステル−エーテル類;ナイロン6及びナイロン6,6のようなポリアミド類、ポリアミドエーテル類、ポリエーテル類がある。
【0024】
膨潤層の周囲にキャスト加工層を形成するためのキャスト加工用溶媒として使用してもよい物質は数多くあるものと理解されたい。表Aは、キャスト加工層用のキャスト加工用溶媒の一例的リストを示している。
【表A】

【0025】
膨潤層を形成するための膨潤溶媒として使用してもよい物質は数多くあるものと理解されたい。表Bは、膨潤加工層用の膨潤溶媒の例示的なリストを示している。
【表B】



【0026】
図2aに示されているように、ドレナージチューブ16は、ステント10の長手方向軸線Xに沿って中心を有するドレナージルーメン18を形成している。ドレナージチューブ16は、胆管のような体内脈管の通過障害のある部分を通り抜けてドレナージを提供するようになっている連続した途切れのないチューブとして構成されている。
【0027】
図3bに示されているもう1つの実施形態では、ステント10は、ドレナージチューブ16のキャスト層24に塗布された生体分解性の潤滑被覆材料を含む外被覆25を更に含んでいる。
【0028】
「抗菌剤」という用語は、細菌、微生物、真菌、ウイルス、胞子、酵母、かび、及びその他ここで説明されている医用品の使用により罹患するような感染症と一般的に関係付けられるものの阻害、予防、又はそれらに対する防護に効果を発揮する生物活性剤を指す。抗菌剤は抗生剤と抗真菌剤を含む。抗菌剤は、以下のもの、即ち、セファロポリン類、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、カルバベネム類、ミノサイクリン類、リファンピン、ペニシリン類、モノバクタム類、キノロン類、テトラサイクリン、マクロライド類、サルファ系抗生物質、トリメトプリム、フシジン酸、及びアミノグリコシド類のうち1つを含んでいてもよい。抗真菌剤としては、アンホテリシンB、アゾール系、フルシトシン、シロフンギン、及びニッコZが挙げられる。更に、参考文献としてここに援用する米国特許第5,599,321号(Conway他)に記載されているような殺菌性ニトロフラン系配合物も抗菌薬として使用することができる。
【0029】
適した抗菌性材料の例として、金属銀又は約2.5重量%の銅を含有する銀の合金(以下、「銀銅」と呼ぶ)のナノサイズ粒子、クエン酸銀、酢酸銀、安息香銀、ビスマスピリチオン、ピリチオン亜鉛、過炭酸亜鉛、過ホウ酸亜鉛、及びビスマス塩のような塩類、メチル系、エチル系、プロピル系、ブチル系、及びオクチル系安息香酸エステル類(一般的にはパラベン類と呼ばれている)のような各種食品保存料、クエン酸、塩化ベンザルコニウム(BZC)、リファマイシン、及び過炭酸ナトリウムが挙げられる。溶媒膨潤加工及び溶媒キャスト加工のプロセスで使用される化学物質は、同じ薬物であってもよいし異なる薬物であってもよいことに留意されたい。それぞれのプロセスでは、単一又は複数の種類の抗菌剤を使用することができる。
【0030】
適した抗生剤の具体的で非限定的な例として、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アモキシシリン、メトロニダゾール、ノルフロキサシン(随意的にウルソデスオキシコール酸と組み合わせてもよい)、セフタジジム、及びセフォキシチンが挙げられる。他の適した抗生剤には、米国特許第5,217,493号(Raad他)に論じられているリファンピン、ミノサイクリン、ノボビオシン、及びそれらの組み合わせが含まれる。リファンピンは、かびのストレプトミセスメディテラニック(Streptomyces mediterranic)により産生される大環状の抗生物質化合物であるリファマイシンBの半合成誘導体である。リファンピンは、細菌DNA依存型RNAポリメラーゼ活性を阻害すると考えられており、実際に殺菌性がある。リファンピンは、米国ではオハイオ州シンシナティのMerrill Dow Pharmaceuticals社から市販されている。ミノサイクリンは、テトラサイクリン由来の半合成抗生物質である。これは、本来静菌性であり、タンパク質合成を阻害することによって抗菌効果を発揮すると考えられている。ミノサイクリンは、黄色結晶粉末として存在する塩酸塩として市販されており、これは水には溶けるが、アルコールには溶けにくい。ミノサイクリンは、ニューヨーク州パールリバーのAmerican Cyanamid Company社のLederle Laboratories Divisionから入手可能である。ノボビオシンは、ストレプトミセスニベアス(Streptomyces niveus)又はSスフェロイド(S. spheroides)の培養物から得られる抗生物質である。ノボビオシンは、通常、活動においては静菌性であり、細菌細胞壁合成を妨げ細菌たんぱく質及び核酸合成を阻害すると考えられている。ノボビオシンは、更に、マグネシウムと錯化することによって細胞膜の安定性に影響を及ぼしてもいるようである。ノボビオシンは、ミシガン州カラマズーのUpjohn Company社から入手できる。
【0031】
抗菌性生物活性剤としては、参考文献としてここに援用する米国特許第5,599,321号(Conway他)に記載されているような殺菌性ニトロフラン化合物も使用することができる。好適なニトロフラン生物活性剤としては、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ニドロキシゾン、ニフラデン、フラゾリドン、フラルチドン、ニフロキシム、ニヒドラゾン、ニトロビン、ニフルピリノール、ニフルプラジン、ニフラルデゾン、ニフラテル、ニフロキサジン、ウルファジン、ニフルチモックス、トリアフル、ニフルトイノール、ニフルジド、ニフルホリン、ニフロキン、及びそれらの誘導体、及び水に対する可溶性と抗菌活性を兼ね備えた他の同様のニトロフラン類が挙げられる。上記ニトロフラン化合物のそれぞれに関する参考資料は、ニュージャージー州ローウェーのMerck & Co., Inc.社によって出版されているメルクインデックス(Merch Index)、具体的には第9版(1976年)及び第11版(1989年)の中に見出すことができ、同出版物の開示内容を参考文献としてここに援用する。
【0032】
抗菌剤は、更に、金属銀又は約2.5重量%の銅を含有する銀の合金(以下、「銀銅」と呼ぶ)のナノサイズ粒子、クエン酸銀、酢酸銀、安息香銀、ビスマスピリチオン、ピリチオン亜鉛、過炭酸亜鉛、過ホウ酸亜鉛、及びビスマス塩のような塩類、メチル系、エチル系、プロピル系、ブチル系、及びオクチル系安息香酸エステル類(一般的にはパラベン類と呼ばれている)のような各種食品保存料、クエン酸、塩化ベンザルコニウム(BZC)、リファマイシン、及び過炭酸ナトリウムを含んでもよい。
【0033】
適した抗菌剤のもう1つの例が、参考文献としてここに援用されている、公開済みの米国特許出願第2005/0008763A1号(2003年9月23日Schachterにより出願)に記載されている。
【0034】
更に、上で言及した抗血栓剤は、患者の体内脈管の中に在る間は装置の周囲の血栓形成を低減するためのホスホリルコリンやヘパリンのような当技術で既知の何れの適切な抗血栓剤を含んでいてもよいものと理解されたい。
【0035】
1つの実施形態(図3a)では、ドレナージチューブ16の膨潤層の半径方向の厚さ(R−R)とキャスト層の半径方向の厚さ(R−R)は変化させてもよい。1つの態様では、膨潤層とキャスト層の各半径方向の厚さを変化させながらも、膨潤層とキャスト層を合わせた厚さ(R−R)は一定に保たれている。膨潤層の半径方向の厚さは、意図された用途にとって望ましい量の可撓性又は剛性をステントに提供するように選択することができる。キャスト層の半径方向の厚さと組成は、同層を介しての薬物溶出の望ましい速度を提供するように選択することができる。
【0036】
図3aに示されているように、外側半径Rは、長手方向軸線Xからチューブの外面までの半径方向距離として測定することができる。Rは、ドレナージルーメン18の半径である。膨潤層の厚さは、選択された材料によって異なるが、望ましい可撓性のレベルを保ちつつ望ましい量の半径方向支持を提供する厚さであればどれ程の厚さであってもよい。例えば、ポリウレタン胆管ステント膨潤層であれば、約0.2mm(0.01インチ)から約1.0mm(0.04インチ)の厚さであってもよく、10Fステントでは約0.4mm(0.02インチ)であるのが望ましい。胆管ステントの場合の半径Rの数値は、10Fステントでは約0.5mm(0.02インチ)から約1.5mm(0.06インチ)まで、また5Fステントでは約0.25mm(0.01インチ)から約0.75mm(0.03インチ)までと異なってくる。ドレナージルーメン18は、ドレナージルーメン18を画定している膨潤層の表面積を最大化するように構成されるのが望ましい。一般的に、膨潤層とキャスト層の合計の半径方向厚さは、約0.4mm(0.02インチ)から約1.5mm(0.06インチ)であり、約0.6mm(0.06インチ)と約1.0mm(0.04インチ)の間であるのが望ましい。膨潤層とキャスト層の半径方向厚さは、埋め込まれたとき、少なくともドレナージルーメン18の開通性を維持するのに要求される最低限の量の半径方向強度が提供されるように選択することができる。
【0037】
膨潤層の半径方向厚さ対キャスト層の半径方向厚さの比は、ドレナージステントを胆管又は膵管内に埋め込む前において、望ましくは約20:1未満、より望ましくは約10:1、5:1、3:1、2:1未満、そして最も望ましくは約1:1である。1つの好適な胆管ステントは、約1.75mm(0.07インチ)の半径方向厚さを有するポリウレタン膨潤層を提供している。装置の内面と外面に既知の手段でマスキングを施してもよいが、その場合、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、それらの面のうち一方を選択的にマスキングして他方の面に処理を施すようにしてもよいものと理解されている。
【0038】
膨潤加工処理は寸法に影響を及ぼすことはないが、キャスト加工用溶液の被覆は寸法に影響を及ぼす可能性もあるものと理解されている。例えば、図3cと図3dでは、膨潤層22がチューブ又は基材ポリマー16に塗布されたとき、直径dとDには影響が及ばなかった。この例では、溶媒はポリマーを膨潤させてポリマー鎖を遊離させ、化学物質は溶媒に溶解する。図3c−図3eでは、直径dとDには影響が及んでおり、今はそれぞれ直径d及びDとして表されているが、ここで、直径d>d及びD>Dである。これは、キャスト加工層が装置に塗布されたことによる。
【0039】
使用に際し、キャスト層は、同層から抗菌剤及び/又は抗血栓剤が比較的ゆっくりと放出されるように構成されているのが望ましい。他方、膨潤層は、同層から抗菌剤及び/又は抗血栓剤が比較的速やかに放出されるように構成されている。キャスト層を堆積させることで、キャスト層を膨潤層からの薬物放出の減速器として働かせ同層からの薬物溶出の速度を遅くする。これにより体内脈管内への薬物溶出にとって機能強化された装置となる。
【0040】
図4は、1つ又はそれ以上の曲がりを有するドレナージチューブ116を備えている装置110を示している。この実施形態では、ドレナージチューブ116は、出口112と入口114の間のほぼ中間に配置されている曲がり115を含み、胆管の解剖学的構造に対応できるようになっている。曲がりは、十二指腸の解剖学的構造に一致しているのが望ましく、そうすると約120度になる。或いは、曲がりは入口114から出口112までの距離の約1/3の場所に配置させることもできる。
【0041】
図5は、本発明のもう1つの実施形態による、何らかの特定の形状、例えば「ピッグテール」形状220を有するドレナージチューブ216を備えている医療装置210を示している。この実施例では、装置210は、(上で言及されている)膨潤層と、膨潤層の周囲に配置されたポリマー層を備えている。膨潤層は、(上で論じられている)膨潤加工用溶液で膨潤加工されている層であるのが望ましい。この実施形態では、ポリマー層は、溶媒キャスト加工されていない。図示されているように、ポリマー層は、ドレナージチューブ216の膨潤層を露出させるためにポリマー層を半径方向に貫いて形成されている複数の孔を備えている。図示されているように、孔204は、患者の体内脈管に埋め込まれると分解する生体分解性材料206が充填されて、即ち同材料で「詰まって」いる。使用時、生体分解性の詰まり物が体内脈管内で溶解又は分解するにつれ膨潤層が露出されてゆき、それにより膨潤層から体内脈管内への薬物溶出を始動させる。こうして、上層即ち外側のポリマー層が空乏してゆくと、詰まり物の分解によって下層即ち膨潤加工の施された層の露出が「開始される」。
【0042】
図6は、ドレナージチューブ316の出口312に取り付けられた協働する逆流防止部材317を有するドレナージチューブ316を備えている装置310を示している。ドレナージチューブ316は、上で言及されているドレナージチューブ16と同様の構成要素を備えている。この実施形態では、逆流防止部材317は、入口ボア324と、同入口ボア324と流体連通している出口ボア326を備えている。図示されているように、入口ボア324と出口ボア326は、装置の使用中に出口ボア326から入口ボア324を通って逆流するのを防止するために、非整列関係にある。
【0043】
ドレナージチューブは、生体適合性と生体安定性を有する何れの適した材料から形成することもできる。チューブは、それが設置されることになる管道の湾曲に容易に合致するだけの弾性的なコンプライアンスを有し、更に管道内でその形状を維持できるだけの「フープ」強度を有しているのが望ましい。チューブは、別の層として、(下で論じられている)生体分解性材料と同時押出成形することができる熱成形性材料から形成されているのが望ましい。
【0044】
1つの適したドレナージチューブに、COTTON−LEUNG(登録商標)(アムステルダム)胆管ステント(米国ノースカロライナ州ウインストンセーレムのCook Endoscopy Inc.社)がある。湾曲形状を有する適当なドレナージチューブの例としては、COTTON−HUIBREGTSE(登録商標)胆管ステント、COTTON−LEUNG(登録商標)(アムステルダム)ステント、GEENEN(登録商標)膵管ステント、ST−2 SOEHENDRA TANNENBAUM胆管ステント、及びJOHLIN(登録商標)膵管ウェッジステントが挙げられ、これらは全てWilson‐Cook Medical Inc.社(米国ノースカロライナ州ウインストンセーレム)から市販されている。コイル状(「ピッグテール」)の入口及び出口構成を有する適切なステント10の例としては、ダブルピッグテールステントであるZIMMON(登録商標)胆管ステントとZIMMON(登録商標)膵臓ステントが挙げられ、これらは全てWilson‐Cook Medical Inc.社(米国ノースカロライナ州ウインストンセーレム)から市販されている。
【0045】
管腔内医療装置は、体内脈管内の医療装置の向き又は位置を設定又は視認するための手段を含んでいてもよい。例えば、管腔内医療装置又は医療装置送達システムは、体内脈管内の医療装置の位置又は向き関する情報を提供する放射線不透過性表示を備えることができる。管腔内医療装置又は送達装置は、医療装置の追跡又は配置を容易にするために1つ又はそれ以上の放射線不透過性材料を備えていてもよい。放射線不透過性材料は、1つ又はそれ以上のマーカー帯を形成するように医療装置の一部又は全部の表面に、任意の製作方法で追加するか、又は吸収させるか、又は噴霧することができる。マーカー帯は、適した放射線不透過性を有する材料から形成することができる。放射線不透過性は、医療装置の要素のポリマー単量体構成単位にヨウ素を共有結合させることによって、マーカー帯に付与してもよい。一般的な放射線不透過性物質としては、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、及び二酸化ジルコニウムが挙げられる。他の放射線不透過性元素としては、カドミウム、タングステン、金、タンタル、ビスマス、白金、イリジウム、ロジウムが挙げられる。1つの好適な実施形態では、それが持つ放射線不透過性と抗菌性の属性故にヨウ素が用いられ得る。放射線不透過性は、通常、蛍光透視像又はX線フィルムによって判断される。放射線不透過性材料から形成されている画像化可能マーカーは、医療装置の何れの部分にも組み込むことができる。例えば、放射線不透過性マーカーは、体内脈管内のドレナージチューブの長軸線又は短軸線を識別するのに使用することができる。放射線不透過性材料をドレナージステントのドレナージチューブに取り付けてもよい。マーカー帯は、体内管腔内での管腔内医療装置の方向決めのための手段を提供することができる。マーカー帯は、X線、超音波、磁気共鳴映像法などを含む遠隔画像化法によるか、又はマーカーからの又はマーカーに対応する信号を検出することによって識別することができる。例えば、マーカー帯は、胆管ドレナージステントの入口及び出口の一方又は両方に設けてもよい。
【0046】
上で言及したように、この装置は、表面に配置された生体分解性被覆を含んでいてもよい。生体分解性被覆は、生体適合性のあるやり方で体内で所望の時間を掛けて溶解する1つ又はそれ以上の被覆層を含んでいてもよい。生体分解性被覆材料の(例えば溶解又は分解による)消散の結果、埋め込み後に層の表面に積もっているかもしれない細菌又はバイオフィルムのようなスラッジ成分が「はがれ落ちてゆく」ことになる。従って、ドレナージルーメン18の実際の直径は、時間経過と共に生体分解性被覆の消散量が増すにつれ大きくなってゆく。
【0047】
生体分解性材料は、時間経過と共に分解して体内に吸収されてゆき、時間経過と共に徐々にドレナージルーメン18内のスラッジ堆積物を(例えば「はがれ落す」ことによって)除去して同ルーメンを広げることができる何れの適した生体分解性材料を備えることもできる。その他多くの生体分解性ホモポリマー類、コポリマー類、又は生体分解性ポリマー類の配合物を生体分解性被覆に含めることができる。これらには、限定するわけではないが、ポリエステル類、ポリ(アミノ酸類)、コポリ(エーテル−エステル類)、ポリアルキレン類、オキサレート類、ポリアミド類、ポリ(イミノカーボネート類)、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミド基含有ポリオキサエステル類、ポリ(アンハンドライド類)、ポリホスファゼン類、ポリ−アルファ−ヒドロキシ酸類、トリメチレンカーボネート、ポリ−ベータ−ヒドロキシ酸類、ポリオルガノホスファジン類、ポリアンハイドライド類、ポリエステルアミド類、ポリエチレンオキシド、ポリエステル−エーテル類、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、シアノアクリレート類、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ−N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、ポリグリコール類、脂肪族ポリエステル類、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(エステル−アミド類)、ポリアンハイドライド類、変性多糖類、及び変性タンパク質類が挙げられる。
【0048】
生体分解性被覆は、ヒドロゲル、エラスチン様ペプチド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類、ポリヒドロキシブチレート化合物類、及びそれらのコポリマー類及び混合物類から成る群から選択された1つ又はそれ以上の生体分解性材料を含んでいてもよい。生体分解性材料は、様々な設計基準に基づき選択及び変更することができる。生体分解性材料は、エステルのような1つ又はそれ以上の加水分解可能な化学結合、所望の架橋結合度、非均一分解が最小限に抑えられた分解メカニズム、及び無毒モノマーを備えているのが望ましい。生体分解性材料は、ポリヒドロキシアルカノエート化合物、ヒドロゲル、ポリ(グリセロール−セバケート)、又はエラスチン様ペプチドであってもよい。生体分解性材料は、ポリ乳酸(PLA)のようなポリ−α−ヒドロキシ酸を備えていてもよい。PLAは、一般にポリ−D,L−乳酸と呼ばれるエナンチオマーの混合物である。或いは、生体分解性材料は、ポリ−L(+)−乳酸(PLLA)又はポリ−D(−)−乳酸(PDLA)であり、それらは生体分解速度が互いに異なる。PLLAは、半結晶質である。対照的に、PDLAは、アモルファスであり、活性種の均一的分散を促進することができる。別途特に規定のない限り、ここで「PLA」と言えば、PLA、PLLA、及びPDLAから成る群から選択された生体分解性ポリマーを指す。
【0049】
もう1つの実施例では、生体分解性材料は、ポリ乳酸(ポリラクチド)、ポリグリコール酸(ポリグリコリド)、ポリ乳酸グリコール酸(ポリラクチド−コ−グリコリド)、ポリ−4−ヒドロキシブチレート、又はそれらの何らかの組み合わせ、のようなポリヒドロキシアルカノエート生体分解性ポリマーを含んでいる。適した生体分解性ポリマー類としては、ポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリ−D−ラクチド(PDLA)、ポリグリコリド(PGA)、ラクチドとグリコリドのコポリマー類(PLGA)、ポリジオキサノン、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー類、変性セルロース、コラーゲン、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリアンハイドライド、ポリホスホエステル、ポリ(アミノ酸類)又は近縁コポリマー類が挙げられ、それらの各々は特徴的な体内分解速度を有している。例えば、PGAとポリジオキサノンは、比較的速やかに(数週間から数カ月で)生体吸収される材料であり、PLLAとポリカプロラクトンは比較的ゆっくり(数カ月から数年かけて)生体吸収される材料である。従って、当業者は、所望の用途に適した分解速度を有する適切な生体分解性材料を選定することができるであろう。
【0050】
生体分解性材料は、更に、ポリグリコール酸(PGA)を備えていてもよい。ポリグリコール酸は、半結晶質構造を有する単純な脂肪族系ポリエステルであり、実質的に3カ月で分解される。PLAと比較すると、PGAは、より強い酸であり、親水性がより高く、従って加水分解し易い。PLAは、一般的に、PGAよりも疎水性が高く、1年から2年かけて完全な質量放出が起こる。幾つかの望ましい生体分解性材料のポリマー類の属性の要約を下の表Cに示す。
【表C】

【0051】
所望の用途に適した分解速度が提供されるように生体分解性被覆の組成を選択してもよい。生体分解性材料の分子量は、所望の生体吸収速度と装置に関する所望の物理的属性、例えば半径方向強度など、が提供されるように選択することができる。例えば、PGAとポリジオキサノンは、比較液速やかに(数週間から数か月で)生体吸収される材料であり、PLLAとポリカプトラクトンは、比較的ゆっくり(数カ月から数年かけて)生体吸収される材料である。生体分解性材料は、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、又はPLAとPGAの他のコポリマー類とすることもできる。コポリマー類の属性は、PLA対PGAの比を変えることによって制御することができる。例えば、PGAに対するPLA比が高いコポリマー類は、一般的に、PLAに対するPGA比が高いコポリマー類よりゆっくり分解する。PLGAは、PLAより僅かに速く分解する。乳酸の加水分解のプロセスは、PLGAコポリマーのグリコール酸単位よりも遅い。従って、PLGAコポリマーのPLA:PGA比が大きくなると、一般的に、PLGAポリマーの生体内での生体吸収速度がより遅くなる。
【0052】
生体分解性材料は、送達中及び体内に埋め込む際に予想される機械的応力又は歪みに耐えられるだけの強度がなくてはならない。(単数又は複数の)ポリマーの分子量は、医療装置の滅菌、取り扱い、又は配備中にポリマーが擦り落されることのないように、また装置が拡張した時にひびが入ることのないように、十分な耐久性を提供できるだけの高い量でなくてはならない。同様に1つ又はそれ以上の被覆層で使用してもよい一例的なポリマー系には、医療装置が埋め込まれた場合の生体適合性を有するポリマーが含まれる。生体分解性材料の分子量は、約50−500kDa以上であるのが望ましい。通常、ポリマー類の機械的属性は、分子量が増すと高くなる。例えば、PLLAの強度と引張係数は、一般的に、分子量が増すと高くなる。PLLA、PDLA、及びPGAは、引張強度が1平方インチ当たり約40,000ポンド(psi)(276MPa)から約120psi(827MPa)であり、引張強度80psi(552MPa)が標準であり、好適な引張強度は約60psi(414MPa)から約120psi(827MPa)である。
【0053】
管腔内医療装置は、ドレナージルーメンの少なくとも一部を画定しているドレナージチューブを提供するどのような適切なやり方でも形成することができる。ドレナージチューブは、医療装置に所望レベルの機械的強度を提供する熱成形可能な非生体分解性材料であるのが望ましい。ドレナージチューブは押出成形プロセスで形成されるのが望ましい。ドレナージチューブは、積層射出成形(LIM)技術のような他の加工及び成形技法で形成されてもよい。例えば、押出成形しようとするポリマーをその融解点より上の高温まで熱してもよい。PLLAは、例えば、210℃と230℃の間まで加熱されてもよい。ポリマーは、次いで、この高温で、適した型を使用して、分当たり約3フィートから4フィートの速度で、連続的な概ね平坦な膜へと押し出される。この連続した膜は、次に、核生成用の水槽に通されることによって冷却される。
【0054】
次いで、ドレナージチューブには溶媒膨潤プロセスが施されてもよい。例えば、ドレナージチューブは、約30℃と60℃の間、より望ましくは40℃と45℃の間の温度で、膨潤加工用溶媒と、上で言及した抗菌剤と抗血栓剤のうち少なくとも1つを含む溶質とを含有している、上で言及した膨潤加工用溶液に浸漬して置かれてもよい。ドレナージチューブは、約30分から50分の間浸漬して置いてもよい。膨潤加工用溶液は、チューブの外面に塗布されると、チューブの本体全体に浸透して本体を「膨潤させる」。その結果、定常状態で、チューブ全体に亘る(単数又は複数の)抗菌剤又は(単数又は複数の)抗血栓剤の実質的に均一な分散が観察される。ドレナージチューブは、その後、純水で濯がれて空気乾燥される。乾燥させると、膨潤加工用溶媒はチューブから蒸発し、ドレナージチューブを構成しているポリマー材料の基材内には抗菌剤又は抗血栓剤が残る。即ち、(単数又は複数の)抗菌剤及び/又は(単数又は複数の)抗血栓剤は、ドレナージチューブに塗布されると、同チューブの本体の拡大した分子間空間内に分散することができ、薬物溶出用の膨潤層が画定される。
【0055】
ドレナージチューブは、次に、約30℃から60℃の間、より望ましくは40℃から45℃の間で、抗菌剤と抗血栓剤のうち少なくとも1つを含む溶質を含有しているキャスト加工用溶液でキャスト加工されてもよい。キャスト加工用溶液は、例えば浸漬又は噴霧などの何らかの適切なやり方でその上に塗布されてもよい。キャスト加工用溶液は、膨潤層に塗布されると、キャスト層が膨潤層の周囲に周方向に形成されてもよいように効果的にドレナージチューブのポリマー材料を部分的に溶かすことができる。ドレナージチューブは、その後、純粋で濯がれ空気乾燥される。乾燥させると、キャスト加工用溶媒はチューブから蒸発し、ドレナージチューブを構成しているポリマー材料の基材内には抗菌剤又は抗血栓剤が残る。こうして、薬物溶出を目的として、抗菌剤又は抗血栓剤は溶媒キャスト加工によって固形ポリマー材料の周囲に組み入れられ又はキャスト加工される。
【0056】
管腔内医療装置は、どのような適切なやり方で体内脈管内の治療地点まで送達してもよい。管腔内医療装置は、内視鏡的に送達されるのが望ましい。例えば、胆管ステントは、幾つかのやり方のうち1つ、即ち、針を腹壁そして肝臓に挿通すること(経皮的経肝的胆管造影法又は「PTC」)によるか、口と胃と十二指腸に挿通された内視鏡を通して胆管にカニューレを挿入すること(内視鏡的逆行性胆管造影法又は「ERCP」)によるか、又は外科手術中に直接切開を入れるかによって、胆管内へ挿入することができる。ステント挿入のための適切な位置を確定するために、挿入前の検査、PTC、ERCP、又は手術の時点での直接視診を行ってもよい。その後、ガイドワイヤに病変部を貫いて前進させ、このガイドワイヤに外挿して送達カテーテルを送り込み、ステントを挿入できるようにする。一般的には、プラスチックステントは、案内用カテーテルを併用するかしないかは別として、ガイドワイヤに外挿した押し出しチューブを使用して設置される。
【0057】
プラスチックステント用として、案内用カテーテルと押し出し用カテーテルを組み合わせた送達システムが現在入手可能である(ノースカロライナ州ウインストンセーレムのWilson−Cook Medical社製OASIS)。ステントは、従来式の押し出し技法によるか、又はステントの一端と係合可能なステント係合部材を有する回転可能な送達カテーテルに取り付けるかの何れかで胆管に設置することができる。通常、診断検査がPTCである場合には、ガイドワイヤと送達カテーテルは腹壁を通して挿入されてもよい。最初の検査がERCPであったなら、ステントは口腔を経由して設置されてもよい。次に、ステントは、放射線的、内視鏡的、又は直接視診的制御下に、胆管の狭窄部位を横断するような治療地点に配置されてもよい。ステントは従来式の押し出し技法を使用して解放されてもよい。その後、送達カテーテルは取り出され、ステントは胆管を開存維持するために留置されてもよい。ステントが適切に配置されていることを確認するために、更なる胆管造影を行ってもよい。或いは、他の管腔内医療装置を、静脈、動脈、尿道、尿路、又は消化管の一部のような何れかの適した体内脈管へ送達することもできる。
【0058】
「体内脈管」という語がここで使用されている場合、それは、限定するわけではないが、胆管、膵管、尿路、食道、及びヒトの脈管系のような血管を含め、体液を導く何れの体内通路管腔をも意味する。
【0059】
「埋め込み可能な」という語がここで使用されている場合、それは、医療装置の、体内脈管内のような体内の或る場所に配置させることができるという性能を指す。更に、「埋め込み」及び「埋め込まれた」という用語は、医療装置を体内脈管内のような体内の或る場所に配置することを指す。
【0060】
「管腔内的に」、「管腔内的な」又は「経管腔的な」という用語がここで使用されている場合、それらは全て、同意語として、人工器官を離れた場所から体内脈管内の目標部位まで体内脈管の管腔内で及び同管腔を通して前進させるという手技による埋め込み設置を指す。管腔内的送達は、内視鏡又はカテーテルからの胆管への埋め込みを含む。
【0061】
「周方向に囲む」又は「周方向に配置された」という用語がここで使用されている場合、それは、何らかの所望の断面形状を有する外周囲を形成することを意味する。周方向に囲んでいる又は配置された構造は、周方向に囲まれている構造の周囲に、同構造に物理的に接触しているかいないかを問わず、外周囲を形成している。周方向に囲んでいる構造を形成している材料は、どのような適切な面形態を有していてもよく、平滑面を含んでいてもよいし又は粗面を含んでいてもよい。周方向に囲んでいる構造の外周囲は、どのような断面形状を有していてもよいが、円形又は楕円形の断面形状を有しているのが望ましい。1つの好適な実施形態は、生体分解性被覆を周方向に囲んでいる支持部材を有し、この生体分解性被覆を貫いて1つ又はそれ以上のドレナージルーメンが伸びている、ドレナージステントを提供している。
【0062】
「生体適合性」材料は、毒性又は傷害性を持たず免疫反応を引き起こさないことにより生体組織又は生体系と共生できる材料である。
【0063】
「生体分解性」という用語は、ここでは、溶解、分解、吸収、及び排出のような消散を起こさせるメカニズムとは無関係に、体内に埋め込まれると選択的に消散する材料を指すのに使用されている。どの種類の材料を使用するかという実際の選定は、当業者であれば容易になすことができるであろう。そのような材料は、当技術では、材料が消散するメカニズムに応じて、「生体分解吸収性」、「生体吸収性」、又は「生体分解性」を含め、しばしば異なる用語で言及されている。本出願の解釈上、別途特に記載のない限り、「生体分解性」という用語は、「生体分解吸収性」及び「生体吸収性」を有する材料を含む。接頭辞である「生体−」は、例えば、高温、強酸及び/又は塩基、UV光、又は天候条件によって引き起こされる他の浸食とは対照的に、浸食工程が生理学的条件下で起こることを指し示している。「生体分解性材料」という用語がここで使用されている場合、それは、身体によって吸収されるポリマー又はコポリマーのような材料のみならず、分解されて、体内へ吸収されることなく消散してゆく材料も含む。「生体分解性ポリマー」という用語がここで使用されている場合、それは、体内に埋め込まれると消散するポリマー又はコポリマーを指す。当技術では、体内に挿入されて後に消散することができる数多くの異なる種類の材料が知られている。
【0064】
下に提示されているグラフ1は、以下の事項、即ち(1)シプロフロキサシンが大腸菌の阻害に非常に有効であること、つまり、サリチル酸に対しては感受性を示さないこと、及び(2)この研究で使用されている被覆方法(溶媒膨潤加工と溶媒キャスト加工)はポリウレタン材料又はポリエチレン材料の何れにも等しく良好であること、を表している。しかしながら、それらの方法は、テフロン(登録商標)材料では好適性を示さなかった。当技術では既知であるようにゾーン直径とは、試験対象の細菌の繁殖が阻害された増殖阻害リングのサイズを指す。

【0065】
下のグラフ2は、シプロフロキサシンで被覆されたプラスチックステントの薬物溶解挙動を表している。それらの薬物が被覆されたステントを、細菌阻害実験で試験する前に、水の中に一定時間浸漬して置いた。グラフ2に基づき、(1)溶媒膨潤加工被覆法は、薬物が被覆された試験品を14日間水に浸漬して置いた後にゾーン直径が10mm未満に落ち込んだことから、短期用途に有利であるように思われ、また、溶媒キャスティング加工被覆法は、30日間水に浸漬して置いた後もゾーン直径はなお15mmより大きいことから、長期用途に有利であると思われる、との結論に達した。

【0066】
10倍に希釈した細菌懸濁液で(10^8CFU/mlから10^7CFU/mlに落して)試験したところ、下のグラフ3は同様の情報、即ち(1)シプロフロキサシンは大腸菌の阻害に非常に有効であること、及び(2)本研究で使用されている被覆方法(溶媒膨潤加工と溶媒キャスト加工)は、更に、ポリウレタン材料又はポリエチレン材料又はソラロン材料の何れにも有利であること、を示している。しかしながら、これらの方法は、テフロン(登録商標)材料では好適性を示さなかった。

【0067】
本発明を好適な実施形態に関して説明してきたが、言うまでもなく、当業者には、特に以上の教示に鑑みて修正を加えることができることから、本発明はそれら実施形態に限定されるものではないことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0068】
10 ステント
12 出口
14 入口
16 ドレナージチューブ
18 ドレナージルーメン
22 膨潤層
24 キャスト層
25 外被覆
30 フラップの出口側アレイ
32 フラップの入口側アレイ
110 装置
112 出口
114 入口
115 曲がり
116 ドレナージチューブ
204 孔
206 生体分解性材料
210 装置
216 ドレナージチューブ
220 ピッグテール形状
310 装置
312 出口
316 ドレナージチューブ
317 逆流防止部材
324 入口ボア
326 出口ボア
d、D 直径
R 半径方向厚さ
X 長手方向軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内脈管の狭窄の治療のための埋め込み可能なドレナージ装置において、
入口を含み、出口まで伸びて、前記入口から前記出口まで形成されているドレナージルーメンを画定するドレナージチューブを備え、前記ドレナージチューブは、膨潤層と、前記膨潤層の周囲に形成されているキャスト層を含み、前記膨潤層は、前記キャスト層を通り抜ける、調整された薬物溶出のために、その周囲に分散された第1の化学物質を有しており、前記キャスト層は、同層からの薬物溶出のために、その周囲に配置された第2の化学物質を有している、埋め込み可能なドレナージ装置。
【請求項2】
前記第1の化学物質は、抗菌剤と抗血栓剤のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の化学物質は、抗菌剤と抗血栓剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記抗菌剤は、以下のもの、即ち、
セファロポリン類、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、カルバペネム類、ミノサイクリン類、リファンピン、ペニシリン類、モノバクタム類、キノロン類、テトラサイクリン、マクロライド類、サルファ系抗生物質、トリメトプリム、フシジン酸、アミノグリコシド類、アンフォテリシンB、アゾール類、フルシトシン、シロフンギン、及びニッコZのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記抗血栓剤は、以下のもの、即ち、ホスホリルコリンとヘパリンのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記抗菌剤は、以下のもの、即ち、セファロポリン類、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、カルバペネム類、ミノサイクリン類、リファンピン、ペニシリン類、モノバクタム類、キノロン類、テトラサイクリン、マクロライド類、サルファ系抗生物質、トリメトプリム、フシジン酸、アミノグリコシド類、アンフォテリシンB、アゾール類、フルシトシン、シロフンギン、及びニッコZのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記抗血栓剤は、以下のもの、即ち、ホスホリルコリンとヘパリンのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記装置を前記体内脈管にアンカー固定するために、前記ドレナージチューブから伸びる半径方向に張り出したフラップの入口側アレイと出口側アレイを含むアンカー固定用構成要素を更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記入口側アレイは、前記入口に近接して配置されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記出口側アレイは、前記ドレナージチューブの前記出口に近接して配置されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ドレナージチューブは、以下のもの、即ち、エラストマーポリウレタン類、ポリウレタンコポリマー類、シリコン類、ポリカーボネート類、ポリオレフィン、ビニル芳香族系ポリマー類、ビニル芳香族系コポリマー類、エチレン系コポリマー類、ポリアセタール類、クロロポリマー類、ポリエステル類、ポリエステル−エーテル類、ポリアミド類、ポリアミドエーテル類、及びポリエーテル類のうちの少なくとも1つを含むポリマー材料を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ドレナージチューブの前記出口と共同で動作可能な逆流防止部材を更に備え、前記逆流防止膜は、入口ボアと、前記入口ボアと流体連通している出口ボアとを有し、前記入口ボアと前記出口ボアは、前記逆流防止部材の前記出口ボアから前記入口ボアへの逆流を低減するために非整列関係にある、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ドレナージチューブの前記キャスト層からの前記第2の化学物質の薬物溶出を遅らせるために、前記ドレナージチューブの前記キャスト層の周囲に配置された生体分解性被覆層を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記生体分解性材料は、以下のもの、即ち、ポリエステル類、ポリ(アミノ酸類)、コポリ(エーテル−エステル類)、ポリアルキレン類、オキサレート類、ポリアミド類、ポリ(イミノカーボネート類)、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミド基含有ポリオキサエステル類、ポリ(アンハンドライド類)、ポリホスファゼン類、ポリ−アルファ−ヒドロキシ酸類、トリメチレンカーボネート、ポリ−ベータ−ヒドロキシ酸類、ポリオルガノホスファジン類、ポリアンハイドライド類、ポリエステルアミド類、ポリエチレンオキシド、ポリエステル−エーテル類、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、シアノアクリレート類、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ−N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、ポリグリコール類、脂肪族ポリエステル類、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(エステル−アミド類)、ポリアンハイドライド類、変性多糖類、及び変性タンパク質類のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
体内脈管の狭窄の治療のための埋め込み可能なドレナージ装置を製造する方法において、
入口を有し、出口まで伸びて、前記入口から前記出口まで形成されているドレナージルーメンを画定する管状部材を、ポリマー材料を用いて形成する段階と、
前記管状部材を、膨潤加工用溶媒と、膨潤加工後のチューブを特徴づける抗菌剤と抗血栓剤のうちの少なくとも1つを含む膨潤加工用溶質と、を備えている膨潤加工用溶液の中で膨潤させる段階と、
前記膨潤させたチューブを、ポリマーと、キャスト加工用溶媒と、抗菌剤と抗血栓剤とポリマーのうちの少なくとも1つを含んでいるキャスト加工用溶質と、を含んでいるキャスト加工用溶液の中でキャスト加工して、ドレナージチューブを画定する段階と、から成る方法。
【請求項16】
前記ポリマー材料は、以下のもの、即ち、エラストマーポリウレタン類、ポリウレタンコポリマー類、シリコン類、ポリカーボネート類、ポリオレフィン、ビニル芳香族系ポリマー類、ビニル芳香族系コポリマー類、エチレン系コポリマー類、ポリアセタール類、クロロポリマー類、ポリエステル類、ポリエステル−エーテル類、ポリアミド類、ポリアミドエーテル類、及びポリエーテル類のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記膨潤加工用溶媒は、以下のもの、即ち、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ギ酸、酢酸、ホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、エチルアセテート、アセトニトリル、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、塩化メチレン、四塩化炭素、トルエン、キシレンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記膨潤加工用溶質は、以下のもの、即ち、セファロポリン類、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、カルバペネム類、ミノサイクリン類、リファンピン、ペニシリン類、モノバクタム類、キノロン類、テトラサイクリン、マクロライド類、サルファ系抗生物質、トリメトプリム、フシジン酸、アミノグリコシド類、アンフォテリシンB、アゾール類、フルシトシン、シロフンギン、ニッコZ、ホスホリルコリン、及びヘパリンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記キャスト加工用溶媒は、以下のもの、即ち、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記キャスト加工用溶質は、以下のもの、即ち、セファロポリン類、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、カルバペネム類、ミノサイクリン類、リファンピン、ペニシリン類、モノバクタム類、キノロン類、テトラサイクリン、マクロライド類、サルファ系抗生物質、トリメトプリム、フシジン酸、アミノグリコシド類、アンフォテリシンB、アゾール類、フルシトシン、シロフンギン、ニッコZ、ホスホリルコリン、ポリマー、及びヘパリンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
体内脈管の狭窄の治療のためのドレナージ装置を埋め込む方法において、
前記体内脈管に埋め込み可能なドレナージ装置を用意する段階であって、前記装置は、
入口を含み、出口まで伸びて、前記入口から前記出口まで形成されているドレナージルーメンを画定するドレナージチューブを備え、前記ドレナージチューブは、膨潤層と、前記膨潤層の周囲に形成されているキャスト層を含み、前記膨潤層は、前記キャスト層を通り抜ける、調整された薬物溶出のために、その周囲に分散された第1の化学物質を有しており、前記キャスト層は、同層からの薬物溶出のために、その周囲に配置された第2の化学物質を有している、段階と、
前記ドレナージ装置を前記体内脈管内に埋め込む段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−537743(P2010−537743A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523148(P2010−523148)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/074721
【国際公開番号】WO2009/029744
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(591157154)ウィルソン−クック・メディカル・インコーポレーテッド (135)
【氏名又は名称原語表記】WILSON−COOK MEDICAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】