説明

改良径の測定装置及び改良径の測定方法

【課題】改良体の径を正確かつ容易に測定することのできる改良径の測定装置及び改良径の測定方法を提供する。
【解決手段】地盤G中に、硬化材を噴射させて混合攪拌することによって造成される改良体Kの径を測定する改良径の測定装置1は、地盤G内に貫入されるケーシング2と、このケーシング2の内部に挿入されて、その下端部がケーシング2の内部から水平方向に延出するとともに改良体Kと未改良地山との境界面へと貫入もしくは接触される棒状部材3と、棒状部材3を境界面へと貫入もしくは接触させる送り込み装置4と、棒状部材3の先端部に設けられて、境界面における荷重変化、温度変化又はPH変化のうち少なくともいずれか一つを検出する検出センサ5と、この検出センサ5によって境界面が確認された際の棒状部材3の水平方向における改良体Kへの貫入量に基づいて改良体Kの径を測定する測定手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に、硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成される改良体の径を測定する改良径の測定装置及び改良径の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地盤改良工法として知られている高圧噴射攪拌工法によって造成される地盤改良体の径の確認については、通常、地盤内に噴射された改良体が硬化した後に、例えば改良体の100〜200本に1本程度の割合でボーリングを行い、1本の改良体について深度を変えて1個〜数個の資料を採取して改良体の出来具合を調査するといった方法が採られているが、造成した改良体の全てについて確認することができず、時間やコストがかかる等の問題があった。また、設計においては、地盤の強度と従来の施工実績との相関から改良体の径を決定しているため、信頼性が低く、改良体硬化後に追加施工等を行う必要性が生じていた。
そこで、このようなチェックボーリングや掘り出し確認以外に改良体の径を測定できる方法として、地中に予め管体を介して所定位置に温度センサを埋設して記録計に接続しておき、地盤改良体の中心に削孔し硬化材注入装置を挿入して硬化材の噴流を噴射し、このとき温度センサで、到達した硬化材の水和熱を感知して記録計により温度上昇を記録し、その記録した温度上昇により地盤改良体の平面的拡がりを確認している方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−180136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法によると、温度センサが取り付けられた管体は、地盤の未改良部分と、地盤改良体内と、その境界とにそれぞれ埋設されており、硬化材の噴流を噴射させることによって温度センサの温度が上昇した管体の位置により地盤改良体の平面的拡がりを確認している。そのため、未改良部分と、地盤改良体内と、その境界との位置を作業者が判断して、各位置にそれぞれ管体を正確に埋設しなければ改良体の径を正確に測定することが困難であり、また、各菅体を埋設する作業等に手間がかかるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、改良体の径を正確かつ容易に測定することのできる改良径の測定装置及び改良径の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、地盤G中に、硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成される改良体Kの径を測定する改良径の測定装置1であって、
地盤内に貫入されるケーシング2と、
このケーシングの内部に挿入されて、その下端部がケーシングの内部から水平方向に延出するとともに改良体と未改良地山との境界面へと貫入もしくは接触される棒状部材3と、
前記棒状部材を前記境界面へと貫入もしくは接触させる送り込み手段(例えば、送り込み装置4)と、
前記棒状部材の先端部に設けられて、前記境界面における荷重変化、温度変化又はPH変化のうち少なくともいずれか一つを検出する検出センサ5と、
この検出センサによって境界面が確認された際の前記棒状部材の水平方向における改良体への貫入量に基づいて改良体の径を測定する測定手段とを備えていることを特徴とする。
【0005】
請求項1の発明によれば、地盤内にケーシングを貫入させて、ケーシングの内部に挿入された棒状部材を送り込み手段によって境界面へと貫入もしくは接触させるとともに、棒状部材の先端部に設けられた検出センサによって荷重変化、温度変化又はPH変化のうち少なくともいずれか一つを検出することにより境界面が検出される。そして、測定手段が、境界面が確認された際の棒状部材の改良体への水平方向における貫入量に基づいて改良体の径を測定する。このようにして、棒状部材を改良体内に直接貫入させていき、その際の棒状部材の貫入量から改良体の径を測定しているので、正確に測定することができ、しかも、従来のように複数の管体を地盤内に埋設する必要もなく容易に測定でき、施工効率に優れる。
【0006】
請求項2の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、請求項1又は2に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材は、一方向以外曲がらない多関節構造又は高い靭性の少なくともいずれか一方を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明によれば、棒状部材は、一方向以外曲がらない多関節構造又は高い靭性の少なくともいずれか一方を有しているので、ケーシングの鉛直方向から水平方向へと自在に延出させて改良体へと貫入させることができる。
【0008】
請求項3の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、請求項1又は2に記載の改良径の測定装置において、
前記ケーシング内には、前記棒状部材が挿入されて、該棒状部材をケーシングの鉛直方向から水平方向へと延出させるようにガイドするガイドパイプ21が組み込まれていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によれば、ケーシング内には棒状部材が挿入されて、棒状部材をケーシングの鉛直方向から水平方向へと延出させるようにガイドするガイドパイプが組み込まれているので、ガイドパイプ内に棒状部材を挿入させていくことによって、棒状部材を簡単に鉛直方向から水平方向へと延出させて改良体へと貫入させることができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材の内部に補強材が挿入されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明によれば、棒状部材の内部に補強材が挿入されているので、強度に優れ、硬度の高い改良体であってもスムーズに貫入させることができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材には、硬化前の前記改良体をサンプリングするサンプリング手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明によれば、棒状部材に設けられたサンプリング手段によって、硬化前の改良体をサンプリングして、サンプリング後の改良体を数日間養生して硬化させ、その強度を計測することにより、従来のように改良体硬化後に新たにチェックボーリングによって強度を計測する必要がなく、改良径の測定と同時にその強度も計測することができる。よって、工期を短縮できコストも低減することができる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材には、前記改良体に棒状部材を挿入する際に、その先端の傾斜状態を検出する傾斜検出手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明によれば、棒状部材に設けられた傾斜検出手段によって、改良体に棒状部材を挿入させた際に、その先端の傾斜状態を検出することができるので、改良体と地山との境界面をより確実に検出することができる。すなわち、棒状部材は一方向以外に曲がらない多関節構造又は高い靭性の少なくともいずれか一方を有していることから、地山に当たった場合に曲がる可能性がある。この場合、棒状部材の先端が地山に当たった時点で検出センサの荷重計値が一度上がるが、曲がった時点で荷重計値が下がるため、改良体と地山との境界面に気付きづらく、引き続き棒状部材を貫入させてしまう可能性もある。しかし、本発明のように傾斜検出手段により棒状部材の先端の傾斜状態を検出し、棒状部材の先端が大きく傾斜していないことを計測することによって、境界面の検出精度を向上させることができる。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材は、アルミニウム製又はチタン製であることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明によれば、棒状部材がアルミニウム製又はチタン製であるので、軽量化することができ、棒状部材の座屈を防ぐことができる。また、施工面でも搬送し易く好都合である。
【0018】
請求項8の発明は、例えば、図6、図7に示すように、請求項1〜7のいずれか一項に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材は、複数のリング31が互いに連結されてなる多関節構造を有しており、
前記棒状部材の先端部に位置する各リングの関節部分には、延出方向前方のリングが後方のリングに対して水平方向上側へ曲がることを防止する曲がり防止機構(例えば、テンションワイヤ7、反力バネ81、固定部材82)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明によれば、棒状部材の先端部に位置する各リングの関節部分に、曲がり防止機構が設けられているので、延出方向前方のリングが後方のリングに対して水平方向上側へ曲がることなく、ケーシングの鉛直方向から水平方向へと延出させて改良体に貫入させることができる。その結果、測定手段による改良体の径の測定を正確に行うことができる。
【0020】
請求項9の発明は、例えば、図8に示すように、請求項8に記載の改良径の測定装置において、
前記関節部分に被覆処理(例えば、被覆チューブ37、ワイヤブレード38)が施されていることを特徴とする。
【0021】
請求項9の発明によれば、関節部分に被覆処理が施されているので、関節部分における汚泥の進入を防ぐことができ、関節部分の不作動を防止することができる。
【0022】
請求項10の発明は、例えば、図6に示すように、請求項1〜9のいずれか一項に記載の改良径の測定装置において、
前記棒状部材の内部に、前記検出センサを有する信号線(信号ケーブル51)又は動力線を配線するための挿入孔33が棒状部材に沿って形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項10の発明によれば、棒状部材の内部に挿入孔が形成されているので、これら挿入孔に検出センサを有する信号線又は動力線を配線でき、配線作業が簡易となる。
【0024】
請求項11の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、請求項1〜10のいずれか一項に記載の改良径の測定装置を使用して、地盤中に、硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成される改良体の径を測定する改良径の測定方法であって、
地盤内に前記ケーシングを貫入させ、
前記棒状部材を前記ケーシングの内部から改良体と未改良地山との境界面へと貫入もしくは接触させるとともに、前記棒状部材の先端部に設けられた前記検出センサによって荷重変化、温度変化、PH変化のうち少なくともいずれか一つを検出することにより前記境界面を確認し、この際の棒状部材の水平方向における改良体への貫入量に基づいて改良径を測定することを特徴とする。
【0025】
請求項11の発明によれば、地盤内にケーシングを貫入させて、棒状部材をケーシングの内部から境界面へと貫入もしくは接触させるとともに、棒状部材の先端部に設けられた検出センサによって荷重変化、温度変化又はPH変化のうち少なくともいずれか一つを検出することにより境界面が検出される。そして、測定手段が、境界面が確認された際の棒状部材の改良体への水平方向における貫入量に基づいて改良体の径を測定する。このようにして、棒状部材を改良体内に直接貫入させていき、その際の棒状部材の貫入量から改良体の径を測定しているので、正確に測定することができ、しかも、従来のように複数の管体を地盤内に埋設する必要もなく容易に測定でき、施工効率に優れる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る改良径の測定装置及び改良径の測定方法によれば、棒状部材を地盤の鉛直方向から水平方向へと改良体に直接貫入させていき、境界面での棒状部材の改良体への貫入量から改良体の径を測定するので、従来に比べて正確かつ容易に測定でき、施工効率に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における改良径の測定装置を示す側面図、図2は、図1における送り込み装置のA−A断面図、図3(a)は、ケーシングの側断面図、(b)は、ケーシングの上断面図、図4(a)、(b)は、改良径の測定方法を示す図、図5(a)及び(b)は、改良径を測定する際の棒状部材の状態図である。
図1及び図4に示すように、本発明に係る改良径の測定装置1は、改良対象地盤G中に、高圧で硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成した改良体Kの径を、改良体Kの硬化前に測定することのできる装置である。
この改良径の測定装置1は、改良体Kの硬化前における地盤G内に貫入されるケーシング2と、ケーシング2の内部に挿入されて、その下端部がケーシング2の内部から水平方向に延出するとともに改良体Kと未改良地山との境界面へと貫入もしくは接触される棒状部材3と、棒状部材3を境界面へと貫入もしくは接触させる送り込み装置(送り込み手段)4と、棒状部材3の先端部に設けられて、境界面における荷重変化、温度変化、PH変化を検出する検出センサ5と、この検出センサ5によって境界面が確認された際の棒状部材3の水平方向における改良体Kへの貫入量に基づいて改良体Kの径を測定する測定手段とを備えている。
【0028】
ケーシング2は、図3に示すように、その径が約140φで、その内部には棒状部材3が挿入されて、棒状部材3をケーシング2の鉛直方向から水平方向へと延出させるようにガイドするガイドパイプ21が組み込まれている。ガイドパイプ21は、その径が約40φで、ケーシング2の周面に形成されてケーシング2内部から外側に貫通する開口部22に挿通されている。すなわち、ガイドパイプ21の下端部で水平方向に湾曲しており、ガイドパイプ21内に挿入された棒状部材3は、その開口部22を介して水平方向に延出されている。
また、ケーシング2の内部には、地上から吊り下げられた孔曲がり測定器23(図5参照)が挿入された孔曲がり測定器用パイプ24が組み込まれている。この孔曲がり測定器用パイプ24の径は約70φとされている。
【0029】
図6は、棒状部材の詳細を示した図であって、(a)は、側面図で一部断面を示している。(b)は、上断面図である。
棒状部材3は、約30φの径をなしており、一方向以外曲がらない多関節構造を有している。
この棒状部材3は、複数の金属製のリング31が互いに一方向に回動自在に連結されている。すなわち、その連結部分において鉛直方向から水平方向に向けて約90度に湾曲するように構成されている。金属としては、例えば軽量なアルミニウムやチタン等が挙げられる。
また、複数のリング31のうち先端部に位置するリング31の先端には、改良体Kに嵌入し易いように先端が尖った形状の貫入部32を有している。
このようにして複数のリング31が連結されてなる棒状部材3は、その鉛直方向に沿って、先端部に検出センサ5を有する信号ケーブル51が内蔵されている。検出センサ5としては、例えば改良体Kと未改良地山との境界面における荷重変化、温度変化、PH変化を検出する各センサ等が挙げられる。
検出センサ5は、改良体Kに挿入させ易いように棒状が好ましく、挿入時の押し込み圧によって常に水平に方向制御できるように、先端の角度が水平方向から下方に45度を向くように取り付けておくことが好ましい。
【0030】
棒状部材3の先端部に位置する各リング31の関節部分は、水平方向に対して上側に曲がらないように防止するための曲げ防止機構が設けられている。
このような曲げ防止機構としては、棒状部材3の基端部に位置するリング31から、先端部に位置するリング31まで張架されたテンションワイヤ7が挙げられる。このテンションワイヤ7は、棒状部材3の長手方向に沿って形成された挿入孔33に挿入されている。そして、テンションワイヤ7の先端部は、先端部のリング31の基端部において、リング31の外面から挿入孔33まで貫通するネジ穴34に、止めネジ35が挿通されることにより止着されている(図6(c)参照)。そして、水平方向に延出された先端部に位置するリング31の関節部分では、テンションワイヤ7の張力によって、水平方向上側に曲がらないようになっている。
なお、この挿入孔33には、信号ケーブル51も挿入されて配線されている(図6(b)参照)。
【0031】
また、その他の曲げ防止機構として、各リング31の互いに連結される関節部分に設けられた反力バネ81と固定部材82とからなるものが挙げられる。具体的には、反力バネ81が、後方のリング31内に形成された凹部36に収容され、反力バネ81の後端部が凹部36に固定されている。一方、固定部材82は、図7に示すように断面視略山形状をなした金属棒であり、その山形状の一方の片82aが反力バネ81内に挿入されて、反力バネ81の前端部に固定され、他方の片82bが反力バネ81から突出して前方のリング31に固定されている。これにより、固定部材82は、反力バネ81によって延出方向と逆側に付勢される。したがって、前方のリング31と後方のリング31との関節部分において、前方のリング31が前方に延出する際には、反力バネ81の付勢力に抗して延出され、これにより反力バネ81が伸びるようになっている。そして、水平方向に延出された先端部に位置するリング31の関節部分では、反力バネ81が伸びきった状態とされ、固定部材82が前方リング31に固定されているため、水平方向上側に曲がらないようになっている。
【0032】
図8(a)〜(c)は、棒状部材3の先端部分に被覆処理を施す手順を示した側面図である。
棒状部材3のうち、先端部のリング31の関節部分には被覆処理が施されている。この被覆処理とは、具体的に、まず、図8(a)に示すように、棒状部材3の先端部のリング31、すなわち貫入部32を除いたリング31の外周面に被覆チューブ37が熱収縮により被覆し、その被覆チューブ37の表面にワイヤーブレード38を被覆している。さらに、ワイヤーブレード38の先端の外側に2つの固定リング39を重ねて嵌め込んでいる。これによって、貫入部32のみが表面に露出し、改良体Kに貫入させ易く、その他のリング31は被覆処理がなされているので、関節部分への汚泥が防止される。
【0033】
さらに、この棒状部材3には、その鉛直方向に沿って孔部(図示略)が形成されており、この孔部内に補強のためのFRP製のロッド(図示略)が挿入されている。
また、特に棒状部材3の先端部を構成するリング31は、摩擦を低減するためのテフロン(登録商標)加工が施されている。
そして、このような棒状部材3の基端部が送り込み装置4に取り付けられている。
【0034】
送り込み装置4としては、例えば図1に示すように周知の地盤改良機6に取り付けられるものが挙げられる。
地盤改良機6は、ベース61上に移動自在に支持され、地盤改良機6全体の運転制御を行う本体部62と、本体部62の前面に設けられたリーダ63と、リーダ63に昇降自在に設けられてケーシング2を回転させる回動機構64と、この回動機構64の上部に設けられてケーシング2をチャックするための油圧チャック本体65とを備えたものが挙げられる。したがって、ケーシング2は油圧チャック本体65に保持された状態で、回動機構64がリーダ63に対して昇降するとともに回動機構64による回転駆動を受けることによって、改良体Kの鉛直方向へと貫入されるようになっている。
このような構成からなる地盤改良機6のリーダ63の上部に送り込み装置4が取り付け可能とされている。
【0035】
この送り込み装置4は、図1及び図2に示すように、地盤改良機6のリーダ63上に据え付けられる送り込み装置本体41と、送り込み装置本体41にプーリ46を介して設けられたチェーンベルト42と、チェーンベルト42を駆動させる駆動用モータ43と、チェーンベルト42に取り付けられて棒状部材3を鉛直方向に支持する取付台座44等を備えている。
したがって、取付台座44に棒状部材3を取り付けた後に、駆動用モータ43を駆動させることにより、チェーンベルト42が回転し、これに伴って取付台座44が上下に昇降自在とされている。
また、送り込み装置本体41の下端部に設けられたプーリ46の回転軸にはロータリエンコーダ45が連結されており、ロータリエンコーダ45はチェーンベルト42の回転量を検出できるように構成されている。そして、このロータリエンコーダ45で検出した回転量は、地盤改良機6の本体部62に内蔵された制御部(測定手段)(図示略)に出力されて、制御部でこの回転量情報に基づいて棒状部材3の改良体Kへの水平方向の貫入量が演算され、これによって改良体Kの径が測定されるようになっている。
【0036】
次に、上述の構成をなした改良径の測定装置1を使用して、改良体Kの径を測定する方法について説明する。
まず、周知の高圧噴射攪拌工法により改良対象地盤Gに改良体Kを造成する。すなわち、例えば掘削ロッドを使用して、掘削ロッド内に高圧ポンプで循環水を注入し、掘削ロッドのノズルから循環水を噴射させながら掘削ロッドを回転させて掘削していき所定の深度まで掘削する。
その後、そのまま掘削ロッドを硬化材を注入するための注入管として利用するか、あるいは、別途新たに注入管を挿入し、同様にして高圧ポンプを介して掘削ロッドの先端のノズルから硬化材を地盤G内に高圧噴射させるとともに、掘削ロッドを上方に引き上げていくことによって改良体Kを造成する。
【0037】
次いで、図4(a)に示すように改良体Kの径を測定するために、上記地盤改良機6の油圧チャック本体65にガイドパイプ21及び孔曲がり測定器用パイプ24が組み込まれたケーシング2を設置する。そして、改良体Kの硬化前にこのケーシング2を地盤G内に鉛直方向に貫入させていき、改良体Kの底盤に到達させる。
その後、図4(b)に示すように地盤改良機6のリーダ63の上部に設置した送り込み装置4に棒状部材3を取り付ける。次いで、送り込み装置4の駆動用モータ43を駆動させることによってチェーンベルト42を回転させるとともに、棒状部材3をケーシング2内で下降させることによって、その先端部を改良体Kに向けて水平方向に貫入させていく(図4(b)、図5(a)、(b)参照)。
この際に、棒状部材3の先端に設けられた検出センサ5が改良体Kにおける荷重変化、温度変化、PH変化を順次検出しながら改良体Kと未改良地山との境界面を検出する。そして、このとき、プーリ46の軸部に連結されたロータリエンコーダ45によって、検出された境界面における改良体Kの水平方向に貫入された貫入量が演算され、改良体Kの径が測定される。
測定終了後、改良体Kに貫入された棒状部材3を送り込み装置4によって抜き出し、さらに深度を変えて同様の方法で改良体Kの径を測定することにより改良体Kの形状を確認する。
【0038】
以上、本発明の実施の形態によれば、地盤G内にケーシング2を貫入させて、ケーシング2の内部に挿入された棒状部材3を送り込み装置4によって境界面へと貫入もしくは接触させるとともに、棒状部材3の先端部に設けられた検出センサ5によって荷重変化、温度変化又はPH変化を検出することにより境界面が検出される。そして、このとき送り込み装置4のロータリエンコーダ45で検出した回転量に基づいて地盤改良機6の制御部が、棒状部材3の水平方向における貫入量に基づいて改良体Kの径を測定する。したがって、棒状部材3を改良体K内に直接貫入させてその貫入量から改良体Kの径を測定しているので、正確かつ容易に測定でき、施工効率に優れる。
また、棒状部材3は複数のリング31が連結されてなり一方向以外曲がらない多関節構造を有するので、ケーシング2の鉛直方向から水平方向へと自在に延出させて改良体Kへと貫入させることができる。
さらに、ケーシング2内にはガイドパイプ21が組み込まれているので、ガイドパイプ21内に棒状部材3を挿入させていくことによって、棒状部材3を簡単に鉛直方向から水平方向へと延出させて改良体Kへと貫入させることができる。
また、棒状部材3の内部に補強材が挿入されているので、強度に優れ、硬度の高い改良体Kであってもスムーズに貫入させることができる。
【0039】
また、本実施の形態においては、棒状部材3がアルミニウム製又はチタン製であるため、軽量化でき、棒状部材3の座屈を防止でき、施工面でも好都合である。
各リング31の関節部分にテンションワイヤ7及び反力バネ81等の曲がり防止機構が設けられているので、棒状部材3の先端部に位置するリング31の関節部分において、延出方向前方のリング31から後方のリング31に対して水平方向上側へ曲がることを防止でき、ケーシング2の鉛直方向から水平方向へと延出させて改良体Kに貫入させることができ、その結果、改良体Kの径を正確に測定できる。
さらに、先端部に位置するリング31の関節部分には被覆処理が施されているため、汚泥の進入を防げ、関節部分の不作動を防止できる。
棒状部材3の内部に挿入孔33が形成されているので、挿入孔33に信号ケーブル51を配線でき、作業が簡易となる。
【0040】
なお、本発明の改良径の測定装置1は、上記実施の形態に限定されるものではなく、各構成部材の形状、寸法等の具体的構成要件はその要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なものとする。
例えば、上記実施の形態において、棒状部材3は複数のリング31が連結されてなり、一方向以外曲がらない多関節構造を有するものとしたが、例えば一方向以外曲がらない靭性の高いロッドであっても良い。すなわち、ガイドパイプ21内に挿入させた際に、ガイドパイプ21の湾曲に沿って湾曲して鉛直方向から水平方向に向くような材料からなるロッドとする。
【0041】
また、上記実施の形態において改良体Kを造成する場合、掘削ロッドを上述した地盤改良機6の油圧チャック本体65に取り付けて掘削し、改良体Kを造成後、掘削ロッドに代えて油圧チャック本体65にケーシング2を取り付けて改良径を測定するといったように、改良体Kの造成と改良径の測定とを同様の地盤改良機6を使用して兼用しても構わない。
さらに、例えば、ケーシング2内に組み込まれたガイドパイプ21や孔曲がり測定器用パイプ24をケーシング2から取り出し可能なものとすれば、ケーシング2内に掘削ロッドを挿入して改良体Kを造成後、ケーシング2はそのまま地盤G内に貫入させた状態で掘削ロッドのみを取り出して、代わりにガイドパイプ21及び孔曲がり測定器用パイプ24をケーシング2に組み込んで、上述のようにガイドパイプ21内に棒状部材3を挿入させていくことによって、ケーシング2も兼用することができる。この場合、新たにケーシング2を地盤Gに貫入させる工程を省略することができるので、施工の簡略化を図ることができる。
【0042】
また、棒状部材3の先端には、荷重センサ、温度センサ、PHセンサの3つのセンサが設けられているとしたが、これらのうち少なくとも1つあれば良い。
さらに、上記実施の形態において検出センサ51の表面及びリング31の連結部の保護のために、ケーシング2内に洗浄用セメントミルクを送水可能な機構(図示略)を備えても良い。また、ガイドパイプ21の先端部に棒状部材3及び検出センサ51の収納時における開閉弁(図示略)を設けても良い。
【0043】
また、棒状部材3の先端には、荷重センサ、温度センサ、PHセンサのうち少なくとも1つあれば良いとしたが、これに加えて、改良体Kに棒状部材3を挿入する際に、その先端の傾斜状態を検出する傾斜検出センサ(傾斜検出手段)を設けても良い。これにより、改良体Kと地山の境界点を把握する手段として重要な情報となる。
傾斜検出センサとしては、例えば、すり鉢状のケースと、このケース内に収容された導電体ボールとを備え、ケース内の導電体ボールの移動を検知して出力をON・OFF作動させる機構のものが挙げられる(図示省略)。そして、すり鉢のある角度以上に傾斜がかかるとONとなり、振動時にはチャタリング(ON・OFFの繰り返し)するようになっている。なお、ケース及び導電体ボールの導電性を良好とし腐食防止とするために金メッキを施すことが好ましい。また、連続的な傾斜状況が把握できる傾斜センサにより確度を上げることができる。
このように棒状部材3に傾斜検出センサを設けた場合、棒状部材3は一方向以外に曲がらない多関節構造又は高い靭性の少なくともいずれか一方を有していることから、地山に当たった場合に曲がる可能性があり、当たった時点で荷重計値が一度上がるが、曲がった時点で荷重計値が下がるため、改良体と地山との境界面に気付きづらく、引き続き棒状部材3を貫入させてしまう可能性がある。しかし、このように傾斜検出センサを設けることにより棒状部材3の先端の傾斜状態を検出し、棒状部材3の先端が大きく傾斜していないことを計測することによって、境界面の検出精度を向上させることができる。
【0044】
さらに、棒状部材3に、硬化前の改良体Kをサンプリングするサンプリング手段を設けることが好ましい。サンプリング手段としては、例えば棒状部材3を改良体Kに貫入させることによって、改良体Kをサンプリングできるような凹部等が挙げられ、このサンプリング手段は、棒状部材3の先端で各種センサの近傍に設けても良いし、先端以外の箇所に設けても良い。
このようにサンプリング手段を設けることによって、硬化前の改良体Kをサンプリングして、サンプリング後の改良体Kを数日間養生して硬化させ、その強度を計測することにより、改良径の測定と同時にその強度も計測することができる。よって、従来のようにチェックボーリングする場合に比べて、工期を短縮できコストも低減することができる。
【0045】
また、信号ケーブルやテンションワイヤが挿入される挿入孔には、その他、電気、エアー、水圧、油圧、試料採取用チューブ等を挿入しても構わない。
【0046】
また、上記実施の形態では高圧噴射攪拌工法に適用する場合について説明したが、攪拌翼によって攪拌混合する機械攪拌工法と、高圧ジェット噴流によって攪拌混合する上記高圧噴射攪拌工法とを併用した工法に適用しても良い。すなわち、この併用工法では図示しないが、攪拌翼を設けた掘削ロッドを回転させながら地盤中に貫入し、掘削ロッドの先端付近から硬化材を低圧で噴射しながら、硬化材と掘削ロッド周囲の緩んだ土砂とを攪拌翼で攪拌して改良体を造成し、また、攪拌翼の先端に設けたノズルから硬化材を高圧ジェット噴流により攪拌して、機械攪拌によって造成された改良体の周囲に噴射攪拌による円環状の改良体を付加する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態を示すためのもので、改良径の測定装置を示す側面図である。
【図2】同、図1における送り込み装置のA−A断面図である。
【図3】同、(a)は、ケーシングの側断面図、(b)は、ケーシングの上断面図である。
【図4】同、(a)、(b)は、改良径の測定方法を示す図である。
【図5】同、(a)及び(b)は、改良径を測定する際の棒状部材の状態図である。
【図6】同、棒状部材の詳細を示した図であって、(a)は、側面図で一部断面を示している。(b)は、上断面図である。(c)は、リングの要部を示す側断面図である。
【図7】同、曲げ防止機構としての反力バネ及び固定部材の斜視図である。
【図8】同、(a)〜(c)は、棒状部材の先端部分に被覆処理を施す手順を示した側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 改良径の測定装置
2 ケーシング
3 棒状部材
4 送り込み装置(送り込み手段)
5 検出センサ
6 テンションワイヤ(曲がり防止機構)
21 ガイドパイプ
31 リング
33 挿入孔
37 被覆チューブ
38 ワイヤブレード
51 信号ケーブル(信号線)
81 反力バネ(曲がり防止機構)
82 固定部材(曲がり防止機構)
G 地盤








【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に、硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成される改良体の径を測定する改良径の測定装置であって、
地盤内に貫入されるケーシングと、
このケーシングの内部に挿入されて、その下端部がケーシングの内部から水平方向に延出するとともに改良体と未改良地山との境界面へと貫入もしくは接触される棒状部材と、
前記棒状部材を前記境界面へと貫入もしくは接触させる送り込み手段と、
前記棒状部材の先端部に設けられて、前記境界面における荷重変化、温度変化又はPH変化のうち少なくともいずれか一つを検出する検出センサと、
この検出センサによって境界面が確認された際の前記棒状部材の水平方向における改良体への貫入量に基づいて改良体の径を測定する測定手段とを備えていることを特徴とする改良径の測定装置。
【請求項2】
前記棒状部材は、一方向以外曲がらない多関節構造又は高い靭性の少なくともいずれか一方を有していることを特徴とする請求項1に記載の改良径の測定装置。
【請求項3】
前記ケーシング内には、前記棒状部材が挿入されて、該棒状部材をケーシングの鉛直方向から水平方向へと延出させるようにガイドするガイドパイプが組み込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の改良径の測定装置。
【請求項4】
前記棒状部材の内部に補強材が挿入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の改良径の測定装置。
【請求項5】
前記棒状部材には、硬化前の前記改良体をサンプリングするサンプリング手段を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の改良径の測定装置。
【請求項6】
前記棒状部材には、前記改良体に棒状部材を挿入する際に、その先端の傾斜状態を検出する傾斜検出手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の改良径の測定装置。
【請求項7】
前記棒状部材は、アルミニウム製又はチタン製であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の改良径の測定装置。
【請求項8】
前記棒状部材は、複数のリングが互いに連結されてなる多関節構造を有しており、
前記棒状部材の先端部に位置する各リングの関節部分には、延出方向前方のリングが後方のリングに対して水平方向上側へ曲がることを防止する曲がり防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の改良径の測定装置。
【請求項9】
前記関節部分に被覆処理が施されていることを特徴とする請求項8に記載の改良径の測定装置。
【請求項10】
前記棒状部材の内部に、前記検出センサを有する信号線又は動力線を配線するための挿入孔が棒状部材に沿って形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の改良径の測定装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の改良径の測定装置を使用して、地盤中に、硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成される改良体の径を測定する改良径の測定方法であって、
地盤内に前記ケーシングを貫入させ、
前記棒状部材を前記ケーシングの内部から改良体と未改良地山との境界面へと貫入もしくは接触させるとともに、前記棒状部材の先端部に設けられた前記検出センサによって荷重変化、温度変化、PH変化のうち少なくともいずれか一つを検出することにより前記境界面を確認し、この際の棒状部材の水平方向における改良体への貫入量に基づいて改良径を測定することを特徴とする改良径の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−52634(P2006−52634A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201854(P2005−201854)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【出願人】(392012261)東興建設株式会社 (28)
【出願人】(390029687)株式会社東亜測器 (3)
【出願人】(594081766)株式会社村田製作所 (2)
【Fターム(参考)】