説明

改質カーボン生産品を含有するポリマー生産品とその製造・使用方法

【課題】改質カーボン生産品とポリマーを含むポリマー生産品の一部を形成することができる種々の改質カーボン生産品が開示される。
【解決手段】開示される1つのタイプの改質カーボン生産品は、(a)カーボン生産品に直接結合した少なくとも1種の有機基を有するカーボン生産品、(b)その有機基に結合した少なくとも1種のイオン基、イオン性基、又はこれらの組み合わせ、及び(c)少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基との少なくとも1種の対イオン基又は対イオン性基又はこれらの組み合わせであって、そのイオン基及び/又はイオン性基に結合した対イオン基又は対イオン性基、を含んでなる。また、ポリマー中のカーボン生産品の分散を改良する方法が開示され、この方法は、上記の改質カーボン生産品を分散させてポリマー生産品を製造することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーに関するものであり、より詳しくは、ポリマーにフィラー、UU安定剤、又は強化材を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックのようなポリマーから形成される多数の物品は、強化材、フィラー、及び/又は着色剤を含む。一般に、こうした強化材、フィラー、着色剤の例えばカーボンブラックは、マスターバッチを使用してポリマーの中に含められる。マスターバッチが使用されるのは、強化材、フィラー、着色剤の例えばカーボンブラックを直接添加すると、ポリマー中に十分に分散せず、不都合なポリマー生産品をもたらすことがあるためである。マスターバッチは、強化材、フィラー、着色剤の例えばカーボンブラックをポリマー中に混和する手段として使用される。したがって、これらの通常のマスターバッチは、強化材、フィラー、着色剤をポリマー中に最終的に導入する中間工程としての役割をする。
【0003】
ポリマーの製造時、又はポリマーを目的物品に成形するときにカーボンブラックのような材料をポリマー中に直接導入することができ、それにより従来のマスターバッチの必要性が解消されるならば、ポリマーメーカーにとって望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリマーに直接混和させることができるUU安定剤、強化材、フィラー、及び/又は炭素製品のような着色剤、例えばカーボンブラックを提供することである。
本発明のもう1つの目的は、通常の炭素生産品よりも高度にポリマー生産品に中に分散させることができる炭素生産品、例えばカーボンブラックを提供することである。
本発明のもう1つの目的は、通常のマスターバッチよりも高レベルの炭素生産品、例えばカーボンブラックを含むマスターバッチを提供することである。
本発明のその他の目的と特長は、下記の説明に示しており、下記の説明から明らかであり、又は本発明の実施によって理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願で具体的に又は広義に記載した本発明の目的と特長を達成するため、本発明は、ポリマーとその中に分散された改質カーボン生産品を含むポリマー生産品に関する。この改質カーボン生産品は、少なくとも1種の有機基、モノマー基、及び/又はポリマー基が結合したカーボン生産品を含んでなる。
【0006】
本発明は、さらに、ポリマーとその中に分散された改質カーボン生産品を含むポリマー生産品に関するものであり、その改質カーボン生産品は、式:
−Ar−CO2 −R 又は Cn2nCO2 −R
(Rは、有機基、モノマー基、及び/又はポリマー基、nは、好ましくは1〜12の整数)
を有する少なくとも1種の基が結合したカーボン生産品を含んでなる。
【0007】
また、本発明は、
a)カーボン生産品に直接結合した少なくとも1種の有機基を有するカーボン生産品、
b)その有機基に結合した少なくとも1種のイオン基、イオン性基、又はこれらの組み合わせ、及び
c)少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基を有する少なくとも1種の対イオン基、あるいは、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基を有する少なくとも1種の対イオン性基、又はこれらの組み合わせであって、その対イオン基又は対イオン性基がイオン及び/又はイオン性基に結合したもの、
を含む改質カーボン生産品に関する。
【0008】
また、本発明は、ポリマーと、上記の1種以上の改質カーボン生産品を含むポリマー生産品に関する。
また、本発明は、ポリマー生産品に使用される上記の改質カーボン生産品に関する。
また、本発明は、本発明の1種以上の改質カーボン生産品を使用してポリマー生産品の中にカーボン生産品を分散させるのを改良する方法に関する。
また、本発明は、1種以上のポリマーと、本発明の1種以上の改質カーボン生産品を含むマスターバッチに関する。
以上の概要及び以下の詳細な説明における例示は、代表的なものであり、請求の範囲に示した本発明を説明するためのものであると理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般に、本発明は、改質カーボン生産品をポリマーに使用することに関する。即ち、本発明は、少なくとも1種のポリマー、及びそのポリマー中に分散されてそのポリマーと適合した少なくとも1種の改質カーボン生産品を含む、ポリマー生産品に関する。
【0010】
本発明の目的のため、1種以上のポリマーが、本発明のポリマー生産品の中に存在することができる。ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーでよい。また、ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及び/又は任意の数のいろいろな繰り返し単位を有するポリマーであることができる。また、本発明のポリマー生産品の中に存在するポリマーは、任意のタイプのポリマー、例えば、ランダムポリマー、交互ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、星状ポリマー、及び/又は櫛状ポリマーであることができる。本発明のポリマー生産品に使用されるポリマーは、1種以上のポリマー配合物であることもできる。こうしたポリマーは、相互に入り組んだ網状構造を形成したポリマー(IPN)、共発的に相互に入り組んだ網状構造を形成したポリマー(SIN)、又は相互に入り組んだ網状構造を形成したエラストマー(IEN)であることができる。
【0011】
ポリマーの具体的な例には、限定されるものではないが、鎖状ポリマーの例えばポリカチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリカプロラクタム(ナイロン)、ポリイソプレン等が挙げられる。本発明のポリマー生産品中に存在することができるポリマーのその他の一般的部類には、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、硫黄含有ポリマー(例えば、ポリサルファイド、(ポリフェニレン)サルファイド、ポリスルホン)、ポリオレフィン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、スチレンコポリマー(ABS等)、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマーとコポリマー、ハロゲン含有ポリオレフィン(ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン)、フルオロポリマー、イオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド−イミド、オレフィン二重結合含有ポリマー(ポリブタジエンやポリジシクロペンタジエン)、ポリオレフィンコポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱硬化性エラストマー等がある。
【0012】
好ましくは、本発明のポリマー生産品中に存在するポリマーは、ポリオレフィン又はポリエチレンであり、より好ましくは、エチレン、1-ブテン、プロピレン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1- ペンテン、置換アルファ−オレフィン等から誘導されたアルファ−オレフィンのポリマー、エチレン、1-ブテン、プロピレン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1- ペンテン、置換α−オレフィン等のコポリマー、主としてエチレン、1-ブテン、プロピレン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1- ペンテン、置換α−オレフィン等のコポリマーを含んでなるターポリマーである。
【0013】
概して、文献「Volume 18 of the Encyclopedia of Chemical Technology, KIRK-OTHMER, (1982), page 328 and page 887」、及び「Modern Plastics Encyclopedia '98, pages B-3 to B-210」は、本願でも全体的に参考にして取り入れており、本発明のポリマー生産品のポリマーとして使用可能である。
本発明のポリマー生産品に使用されるポリマーは、当業者に公知のいろいろな仕方で調製することができる。上記の文献は、これらのポリマーが調製可能な方法も記載している。
【0014】
また、ポリマー生産品中に存在する改質カーボン生産品に関し、一般に、以降で説明するような3種の部類の改質カーボン生産品がある。
本発明の目的のため、カーボン生産品は、ジアゾニウム塩と反応して上記の改質カーボン生産品を生成することができるカーボンでよい。このカーボンは、結晶質又はアモルファスタイプのものでよい。例としては、限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、ガラス質カーボン、活性チャーコール、炭素繊維、及び活性炭が挙げられる。これらの微細に分割した形態が好ましく、また、種々のカーボンの混合物を使用することもできる。
【0015】
また、本発明の目的に関し、カーボン生産品は、カーボン相とケイ素含有種層を有する凝集体にも及ぶ。この凝集体の説明、及びこの凝集体の製造方法は、PCT国際出願WO96/37547、米国特許出願第08/446141号、同08/446142号、同08/528895号、同08/750017号に記載されている。これらの特許、特許出願は、本願で全体的に参考にして取り入れられている。
【0016】
また、本発明の目的に関し、カーボン生産品は、カーボン相と金属含有種相を含む凝集体であることができ、ここで、金属含有種相は、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、錫、アンチモン、クロム、ネオジウム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、アルミニウム、亜鉛、及びこれらの組み合わせのような各種の金属であることができる。カーボン相と金属含有種相を含む凝集体は、米国特許出願第08/828785号(1997年3月27日出願)に記載されており、この出願もまた本願でも全体的に参考にして取り入れられている。
また、本発明の目的に関し、カーボン生産品には、PCT国際出願WO96/37547(1996年11月28日公開)に記載のようなシリカ被覆カーボンブラックも含まれ、この出願もまた本願でも全体的に参考にして取り入れられている。
【0017】
第1のタイプの改質カーボン生産品は、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基が結合したカーボン生産品を含む改質カーボン生産品である。有機基は、芳香族基又はアルキル基であることができる。
ポリマー基は、カーボン生産品に結合可能な任意のポリマー基であることができる。ポリマー基は、ポリオレフィン基、ポリスチレン基、ポリアクリレート基、ポリアミド基、ポリエステル基、又はこれらの組み合わせであることができる。モノマー基は、ポリマー基のモノマー変種である。
また、有機基は、オレフィン基、スチレン基、アクリレート基、アミド基、エステル、又はこれらの組み合わせであることができる。また、有機基は、芳香族基又はアルキル基でよく、これらの基は、オレフィン基、スチレン基、アクリレート基、アミド基、エステル基、又はこれらの組み合わせを有することができ、好ましくは、芳香族基、又はC1 〜C12基のようなアルキル基がカーボン生産品に直接結合する。
【0018】
ポリマー基は、芳香族基、又はC1 〜C12基のようなアルキル基を含むことができ、これらの基は、ポリオレフィン基、ポリスチレン基、ポリカーボネート基、ポリアミド基、ポリエステル基、又はこれらの組み合わせを有することができる。
また、有機基は、アラルキル基又はアルキルアリール基を含むことができ、これらは好ましくはカーボン生産品に直接結合する。その他の有機基の例には、C13〜C100 アルキル基、より好ましくはC20〜C60アルキル基が挙げられる。
【0019】
より好ましい有機基の例は、下記の式を有する有機基である(端部の−は、カーボン生産品又は別な基に結合していることを表す)。
−Ar−CO2 (Cm2m+1)、m=0〜約20
−Ar−(Cn2n+1)、n=0〜約50
−Ar−Cp2pAr−、p=0〜約10
−Ar−CX3 、Xはハロゲン原子
−Ar−O−CX3 、Xはハロゲン原子
−Ar−SO3 -
−Ar−SO2 (Cq2q+1)、q=約2〜約10
−Ar−S2 −Ar−NH2
−Ar−S2 −Ar−、
−ArSO2 H、
又はこれらの混合物。
【0020】
有機基の好ましい混合物には、下記のものが挙げられる。
−Ar−SO3 - と−Ar−(Cn2n+1)、n=0〜約50
−Ar−S2 −Ar−NH2 と−Ar−Cp2pAr−、p=0〜約10
−Ar−S2 −Ar−と−Ar−Cp2pAr−、p=0〜約10
少なくとも2種の−Ar−CO2 (Cm2m+1)、m=0〜約20
【0021】
改質カーボン生産品の一部である上記の種々の有機、モノマー、及びポリマー基は、置換又は未置換のいずれでもよく、枝分かれ又は線状のいずれでもよい。
【0022】
有機基をカーボン生産品に結合させる1つのプロセスは、ジアゾニウム塩を還元するのに十分な外的印加電流なしに少なくとも1種のジアゾニウム塩をカーボン生産品と反応させることが挙げられる。即ち、ジアゾニウム塩とカーボン生産品の間の反応は、ジアゾニウム塩を還元するのに十分な外的電子源の存在なしに進行する。種々のジアゾニウム塩の混合物が本発明のプロセスに使用可能である。このプロセスは、このプロセスは、種々の反応条件下で、プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の双方、又はスラリー等の任意のタイプの反応媒体中で行うことができる。
【0023】
別なプロセスにおいて、少なくとも1種のジアゾニウム塩が、プロトン性反応媒体中でカーボン生産品と反応する。種々のジアゾニウム塩の混合物が、この本発明のプロセスで使用可能である。また、このプロセスは、種々の反応条件下で行うことができる。
双方のプロセスにおいて、ジアゾニウム塩は、その場所で生成させることができる。所望により、いずれかのプロセスにおいて、当業者に公知の仕方でカーボン生産品を分離・乾燥することができる。また、得られたカーボン生産品を、公知の技術で処理し、不純物を除去することもできる。これらのプロセスの種々の特定の態様を下記で説明する。
【0024】
これらのプロセスは、広くいろいろな条件下で行うことができ、一般に、特定条件に限定されない。反応条件は、特定のジアゾニウム塩が十分に安定で、カーボン生産品と反応できるようでなければならない。即ち、本プロセスは、ジアゾニウム塩が短命の反応条件下で行うことができる。ジアゾニウム塩とカーボン生産品の間の反応は、例えば、広範囲な温度とpHの範囲にわたって生じる。本プロセスは、酸性、中性、及び塩基性のpHで生じることができる。好ましくは、pHは1〜9の範囲である。反応温度は0〜100℃の範囲でよい。
ジアゾニウム塩は、当該分野で公知なように、第1アミンと亜硝酸水溶液の反応によって生成させることができる。ジアゾニウム塩とその製造方法の概説は、「Morrison and Boyd, Organic Chemistry 5th Ed., pp.973-983, (Allyn and Bacon, Inc. 1987)」、「March, Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed., (Wiley, 1992)」に見ることができる。本発明によると、ジアゾニウム塩は、1つ以上のジアゾニウム基を有する有機化合物である。
【0025】
ジアゾニウム塩は、当該分野で公知な技術を用い、カーボン生産品と反応させる前に調製し、又はその場所で生成させることができる。また、その場所の生成は、アルキルジアゾニウム塩のような不安定なジアゾニウム塩の使用を許容し、ジアゾニウム塩の不必要なハンドリングと操作を回避する。亜硝酸とジアゾニウム塩の双方をその場所で生成させることができる。
ジアゾニウム塩は、当該分野で公知なように、第1アミン、ニトリット、及び酸を反応させることによって生成させることができる。ニトリットは、任意の金属亜硝酸塩の例えば亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又は亜硝酸亜鉛、あるいは、任意の有機ニトリットの例えばイソアミル亜硝酸エステル、又はエチル亜硝酸エステルであることができる。酸は、ジアゾニウム塩の生成に有効な無機又は有機の任意の酸でよい。酸には、硝酸HNO3 、塩酸HCl、硫酸H2 SO4 が挙げられる。
【0026】
また、ジアゾニウム塩は、第1アミンに二酸化窒素水溶液を反応させることによって生成させることもできる。二酸化窒素水溶液NO2 /H2 Oは、ジアゾニウム塩を生成させるのに必要な亜硝酸を提供する。
過剰なHClの存在中でジアゾニウム塩を生成させるのは、HClがステンレス鋼に腐食性であるため、そうではない態様よりも好ましくないことがある。NO2 /H2 Oを用いたジアゾニウム塩の生成は、反応容器に一般に使用されるステンレス鋼その他の金属に対して腐食性が低いといった付加的な利益を有する。また、H2 SO4 /NaNO2 又はHNO3 /NaNO2 を用いた生成は、割合に腐食性でない。
【0027】
一般に、第1アミン、ニトリット、及び酸からジアゾニウム塩を生成させるには、使用されるアミンの量を基準に2当量の酸を必要とする。その場所プロセスにおいて、ジアゾニウム塩は、1当量の酸を用いて生成させることができる。第1アミンが強酸基を含む場合、別な酸を添加することは必要ないことがある。第1アミンの1つ以上の酸基は、必要な酸の当量の一方又は双方を供給することができる。第1アミンが強酸基を含む場合、好ましくは、その場所でジアゾニウム塩を生成させるため、本発明のプロセスに、付加的な酸を添加しないか又は1当量以下の付加的な酸を添加する。若干過剰の付加的な酸を使用することができる。このような第1アミンの1つの例は、パラ−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)である。
【0028】
一般に、ジアゾニウム塩は、熱的に不安定である。これらは、一般に、0〜5℃のような低い温度の溶液中で調製され、塩の分離は行わない。あるジアゾニウム塩の溶液を加熱すると、窒素を遊離し、酸性媒体中で相当のアルコール、又は塩基性媒体中で有機フリーラジカルを生成する。
ここで、ジアゾニウム塩は、カーボン生産品との反応を可能にするのに十分な安定性のみを必要とする。即ち、このプロセスは、不安定で分解されると思われるジアゾニウム塩を用いて行うことができる。ある分解プロセスは、カーボン生産品とジアゾニウム塩の間の反応で完了し、カーボン生産品に結合した有機基の全数を減らすことができる。また、反応は、多くのジアゾニウム塩が分解を受けることがある高温で行うことができる。また、高温は、反応媒体中のジアゾニウム塩の溶解性を有利に高め、プロセス中のハンドリングを改良することがある。ここで、高温は、別な分解過程によりジアゾニウム塩の若干の損失をもたらすことがある。
【0029】
ジアゾニウム塩をその場所で生成させるため、反応媒体の例えば水の中のカーボン生産品のサスペンションに、薬剤を添加することができる。即ち、使用されるべきカーボン生産品のサスペンションは、ジアゾニウム塩の生成させるために既に1種以上のジアゾニウム塩を含むことができ、残りの薬剤を添加することによってプロセスを完了することができる。
ジアゾニウム塩を生成させる反応は、有機化合物に一般に見られる極めて各種の官能基との競合である。即ち、カーボン生産品との反応のためのジアゾニウム塩の利用性のみが本発明のプロセスを制限する。
【0030】
本プロセスは、ジアゾニウム塩とカーボン生産品の反応の進行を可能にする反応媒体中で行うことができる。反応媒体は、溶媒を主成分とした系であることができる。溶媒は、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒の双方、又は混合溶媒であることができる。プロトン性溶媒は、水やメタノールのように、酸素又は窒素に結合した水素を有する溶媒であり、このため、水素結合を形成するのに十分な酸性である。非プロトン性溶媒は、上記のような酸性水素を有しない溶媒である。非プロトン性溶媒には、例えば、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、及びベンゾニトリルのような溶媒が挙げられる。プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の説明は、「Morrison and Boyd, Organic Chemistry 5th Ed., pp.228-231, (Allyn and Bacon, Inc. 1987)」に見られる。
本プロセスは、プロトン性反応媒体、即ち、プロトン性溶媒のみ又は少なくとも1種のプロトン性溶媒を含む混合溶媒の中で行うことができる。好ましいプロトン性媒体には、限定されるものではないが、水、水とその他の溶媒を含む水系媒体、アルコール、アルコールを含む任意の媒体、及びこれら混合媒体が挙げられる。
【0031】
ジアゾニウム塩とカーボン生産品の間の反応は、任意のタイプのカーボン生産品、例えばルーズ状(fluffy)又はペレット状を用いて行うことができる。製造コストを下げる目的の1つの態様において、反応は、カーボン生産品のペレットを作成するプロセスの際に行う。例えば、本発明のカーボンブラック生産品は、ジアゾニウム塩の溶液をスラリーをカーボンブラックの上に噴霧することにより、乾燥用ドラム中で調製することができる。あるいは、カーボン生産品は、ジアゾニウム塩を含む又はジアゾニウム塩をその場所で生成する薬剤を含む水のような溶媒系の存在下でカーボン生産品をペレット化することによって調製することができる。水系の溶媒系が好ましい。このように、別な態様は、カーボン生産品とジアゾニウム塩の水系スラリー又は溶液を造粒機に導入し、ジアゾニウム塩をカーボン生産品と反応させて有機基をカーボン生産品に結合させ、結合した有機基を有する得られたカーボン生産品をペレット化することを含む。ペレット化したカーボン生産品は、次いで、通常の技術を用いて乾燥させることができる。
【0032】
一般に、本プロセスは、塩のような無機副生物を生成する。以降で説明するようなある末端用途において、これらの副生物が不都合なことがある。不都合な無機副生物又は塩を含まない改質カーボン生産品を生成させるいくつかの可能な仕方は下記の通りである。
第1に、当該分野で公知な手段を用い、不都合な無機副生物を除去することにより、使用の前にジアゾニウム塩をきれいにする。第2に、ジアゾ化薬剤として、無機塩ではなくアルコールを生成する有機亜硝酸エステルを使用してジアゾニウム塩を発生させる。第3に、酸性基を有するアミンと水系NO2 からジアゾニウム塩を生成させると、無機塩は生成しない。その他の仕方は、当業者に公知であろう。
【0033】
無機副生物の他に、本プロセスは、有機副生物を生成することもある。それらは、例えば、有機溶媒を用いて抽出することにより除去することができる。不都合な有機副生物のない生産品を得る別な仕方は、当業者に公知であり、逆浸透によってイオンを洗浄又は除去することが挙げられる。
ジアゾニウム塩とカーボン生産品の間の反応は、カーボン生産品に結合した有機基を有する改質カーボン生産品を生成する。ジアゾニウム塩は、カーボン生産品に結合する有機基を含むことができる。当業者に公知な別な手段により、本発明で使用される改質カーボン生産品を調製することもできる。
【0034】
有機基は、脂肪族基、環状有機基、又は脂肪部分と環状部分を有する有機化合物であることができる。上記のように、本プロセスで使用されるジアゾニウム塩は、これらの基の1つを有し、一時的であってもジアゾニウム塩を形成可能なアミンから誘導することができる。有機基は、置換されていても置換されていなくてもよく、枝分かれしていても枝分かれしていなくてもよい。脂肪族基には、例えば、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸から誘導されたものが挙げられる。環状有機基には、限定されるものではないが、環状炭化水素基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケン)、複素環式炭化水素基(例えば、ピロリジニル、ピロニリル、ピペリジニル、モルホニル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル等)、ヘテロアリール基(イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チエニル、チアゾリル、フリル、インドリル等)が挙げられる。置換された有機基の立体障害が高まるにつれ、ジアゾニウム塩とカーボン生産品の間の反応によるカーボン生産品に結合した有機基の数が減少することがある。
【0035】
有機基が置換されると、ジアゾニウム塩の生成と適合する官能基を含むことができる。官能基には、限定されるものではないが、R,OR,COR,COOR,OCOR,カルボキシレート塩の例えばCOOLi,COONa,COOK,COO- NR+ 、ハロゲン、CN,NR2 、SO3 H、スルホネート塩の例えばSO3 Li,SO3 Na,SO3 K,SO3 - NR4 + 、OSO3 H,OSO3 - 塩、NR(COR)、CONR2 、NO2 、PO32 、ホスホネート塩の例えばPO3 HNaとPO3 Na2 、N=NR,NR3 +- ,PR3 +- ,Sk R,SSO3 H,SSO3 - 塩、SO2 NRR′,SO2 SR,SNRR′,SNQ,SO2 NQ,CO2 NQ,S−(1,4−ピペラジンジイル)−SR,2−(1,3−ジチアニル)2−(1,3−シチオラニル),SOR、及びSO2 Rが挙げられる。RとR′は、同じでも異なってもよく、独立して、水素、枝分かれ又は枝分かれしていないC1 〜C20の置換又は未置換、飽和又は不飽和の炭化水素、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、置換又は未置換のアルキルアリール、又は置換又は未置換のアリールアルキルである。整数kは1〜8、好ましくは2〜4である。アニオンX- は、ハライド、又は無機酸又は有機酸から誘導されるアニオンである。Qは(CH2w ,(CH2x O(CH2z ,(CH2x NR(CH2z 、又は(CH2x S(CH2x であり、wは2〜6の整数、xとzは1〜6の整数である。
【0036】
有機基は、式Ay Ar−の芳香族基であることができ、これは、式Ay ArNH2 の第1アミンに対応する。この式において、変数は次の意味を有し、即ち、Arはアリール基又はヘテロアリール基のような芳香族基である。好ましくは、Arは、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニル、ピリジニル、ベンゾチアジアゾイル、ベンゾチアゾリルからなる群より選択され、Aは、上記の好ましい官能基から独立して選択された芳香族基上の置換基であり、Aは、未置換又はこれらの官能基の1種以上で置換された、線状、枝分かれ、又は環状炭化水素基(好ましくは、1〜20の炭素原子を含む)であり、yは、1から芳香族基の−CH基の合計数までの整数である。例えば、yは、Arがフェニルのときは1〜5の整数、Arがナフチルのときは1〜7の整数、Arがアントラセニル、フェナントレニル、又はビフェニルのときは1〜9、Arがピリジニルのときは1〜4である。上記の式において、RとR′の特定の例は、NH2 −C64 −,CH2 CH2 −C64 −NH2 ,CH2 −C64 −NH2 、及びC65 である。
【0037】
カーボン生産品に結合できる有機基のもう1つの部類は、官能基としてイオン基又はイオン性基に置換された有機基である。イオン性基は、使用媒体中でイオン基を形成することができる基である。イオン基は、アニオン基又はカチオン基であることができ、イオン性基はアニオン又はカチオンを形成することができる。
【0038】
アニオンを形成するイオン性官能基は、例えば、酸性基又は酸性基の塩である。有機基は、したがって、有機酸から誘導された基を含む。有機基が、アニオンを形成するイオン性基を含む場合、こうした有機基は、(a)芳香族基、及び(b)11未満のpKaを有する少なくとも1種の酸性基、11未満のpKaを有する酸性基の少なくとも1種の塩、又は11未満のpKaを有する少なくとも1種の酸性基と11未満のpKaを有する酸性基の少なくとも1種の塩の混合物、を有することができる。酸性基のpKaとは、全体としての有機のpKaを指称し、酸性置換基のみではない。より好ましくは、pKaは10未満であり、最も好ましくは9未満である。有機基の芳香族基は、カーボン生産品に直接結合することができる。芳香族基は、さらに置換され又は置換されなくてもよく、例えば、アルキル基を有することもできる。有機基は、フェニル基又はナフチル基であることかでき、酸性基はスルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基である。酸性基とそれらの塩の例は、上記に説明した。有機基は、置換又は未置換のスルホフェニル基又はその塩、置換又は未置換の(ポリスルホ)フェニル基又はその塩、置換又は未置換のスルホナフチル基又はその塩、置換又は未置換の(ポリスルホ)ナフチル基又はその塩であることができる。置換されたスルホフェニル基の例は、ヒドロキシスルホフェニル基又はその塩である。
【0039】
アニオン(及びその対応する第1アミン)を形成するイオン性官能基を有する特定の有機基は、p-スルホフェニル(p-スルファニル酸)、4-ヒドロキシ-3- スルホフェニル(2-ヒドロキシ-5- アミノ- ベンゼンスルホン酸)、及び2-スルホエチル(2-アミノエタンスルホン酸)である。アニオンを形成するイオン性官能基を有するその他の有機基もまた使用可能である。
アミンは、カチオン基を生成するイオン性官能基の例である。例えば、アミンは、酸性媒体中でプロトン化してアンモニウム基を生成することができる。アミン置換基を有する有機基は、5未満のpKbを有することができる。第4アンモニウム基(−NR3 + )と第4ホスホニウム基(−PR3 + )もまたカチオン基の例である。有機基は、フェニル基又はナフチル基のような芳香族基、及び第4アンモニウム又は第4ホスホニウム基を含むことができる。芳香族基は、カーボン生産品に直接結合することができる。4級化環状アミン、さらには4級化芳香族アミンもまた有機基として使用可能である。即ち、N-置換ピリジニウム化合物の例えばN-メチル- ピリジルはこの目的に使用可能である。有機基の例は、限定されるものではないが、(C54 N)C25 + ,C64 (NC55+ ,C64 COCH2 N(CH33 + ,C64 COCH2 (NC55+ ,(C54 N)CH3 + 、及びC64 CH2 N(CH33 + が挙げられる。
【0040】
イオン基又はイオン性基で置換された結合有機基を有する改質カーボン生産品の長所は、その改質カーボン生産品が、同じ未処理のカーボン生産品に比較して高い水分散性を有することである。改質カーボン生産品の水分散性は、イオン性基を有するカーボンブラックに結合した有機基の数、又は所与の有機基に結合したイオン性基の数が増すにつれて増加する。即ち、改質カーボン生産品に結合したイオン性基の数が増すと、その水分散性を高め、所望のレベルまでの水分散性のコントロールを可能にする。カーボン生産品に結合した有機基としてアミンを含む改質カーボン生産品の水分散性は、水系媒体を酸性にすることによって高められることに注目することができる。
【0041】
改質カーボン生産品の水分散性は、電荷安定性にある程度依存するため、水系媒体のイオン強度は0.1モル未満であることができる。イオン強度は0.01モル未満であることもできる。
このような水分散性改質カーボン生産品を調製する場合、イオン基又はイオン性基は、反応媒体中でイオン化することができる。得られた生産品の溶液又はスラリーは、そのままで又は使用前に希釈して使用することができる。あるいは、改質カーボン生産品は、通常のカーボンブラックに使用される技術によって乾燥させることもできる。これらの技術には、限定されるものではないが、炉やロータリーキルン中での乾燥が挙げられる。ここで、過度に乾燥すると、水分散性のレベルを低下させることがある。
【0042】
水分散性の他に、イオン基又はイオン性基で置換された有機基を有する改質カーボン生産品は、ジメチルスルホキシド(DMSO)やホルムアミドのような極性有機溶媒中に分散させることもできる。メタノールやエタノールのようなアルコール中でクラウンエーテルのような錯生成剤を使用すると、酸性基の金属塩を含む有機基を有するカーボン生産品の分散性が増加する。
芳香族スルフィドは、有機基のもう1つの部類である。芳香族スルフィド基を有する改質カーボン生産品は、ゴム組成物に特に有用である。これらの芳香族スルフィドは、式Ar(CH2qk (CH2 )rAr′又はA−(CH2qk (CH2 )rAr″で表すことができ、ここで、ArとAr′は、独立した置換又は未置換のアリーレン又はヘテロアリーレン基であり、Ar″はアリール基又はヘテロアリール基、kは1〜8、qとrは0〜4である。置換されたアリール基は、置換されたアルキルアリール基を含むことができる。アリーレン基は、フェニレン基、とりわけP−フェニレン基又はベンゾチアゾリレン基を含むことができる。アリール基は、フェニル、ナフチル、ベンゾチアゾリルを含むことができる。kで表わされる硫黄の存在数は、好ましくは2〜4である。改質カーボン生産品は、式−(C64 )−Sk −(C64 )−の結合した芳香族スルフィド有機基を有することができ、kは1〜8の整数、より好ましくはkは2〜4である。芳香族スルフィド基は、ビス−パラ−(C64 )−S2 −(C64 )−とパラ−(C64 )−S2 −(C65 )であることができる。これらの芳香族スルフィド基のジアゾニウム塩は、それらの対応する第1アミンのH2 N−Ar−Sk −Ar′−NH2 又はH2 N−Ar−Sk Ar″から首尾よく調製することができる。その部類は、ジチオジ−4,1−フェニレン、テトラチオジ−4,1−フェニレン、フェニルジチオフェニレン、ジチオジ−4,1−(3−クロロフェニレン)、−(4−C64 )−S−S−(2−C74 NS),−(4−C64 )−S−S−(4−C64 )−OH,−6−(2−C73 NS)−SH,−(4−C64 )−CH2 CH2 −S−S−CH2 CH2 −(4−C64 )−,−(4−C64 )−CH2 CH2 −S−S−S−CH2 CH2 −(4−C64 )−,−(2−C64 )−S−S−(2−C64 )−,−(3−C64 )−S−S−(3−C64 )−,−6−(C632 S),−6−(2−C73 NS)−S−NRR′、ここで、RR′は−CH2 CH2 OCH2 CH2 −,−(4−C64 )−S−S−S−S−(4−C64 )−,−(4−C64 )−CH=CH2 ,−(4−C64 )−S−SO3 H,−(4−C64 )−SO2 NH−(4−C64 )−S−S−(4−C64 )−NHSO2 −(4−C64 )−,−6−(2−C73 NS)−S−S−2−(6−C73 NS)−,−(4−C64 )−S−CH2 −(4−C64 )−,−(4−C64 )−SO2 −S−(4−C64 )−,−(4−C64 )−CH2 −S−CH2 −(4−C64 )−,−(3−C64 )−CH2 −S−CH2 −(3−C64 )−,−(4−C64 )−CH2 −S−S−CH2 −(4−C64 )−,−(3−C64 )−CH2 −S−S−CH2 −(3−C64 )−,−(4−C64 )−S−NRR′、ここで、RR′は−CH2 CH2 OCH2 CH2 −,−(4−C64 )−SO2 NH−CH2 CH2 −S−S−CH2 CH2 −NHSO2 −(4−C64 )−,−(4−C64 )−2−(1,3−ジチアニル)、及び−(4−C64 )−S−(1,4−ピペリジンジル)−S−(4−C64 )−が挙げられる。
カーボン生産品に結合可能な有機基のもう1つの組は、(C64 )−NH2 ,(C64 )−CH2 −(C64 )−NH2 ,(C64 )−SO2 −(C64 )−NH2 のようなアミノフェニルを有する有機基である。また、有機基には式Ar−Sn −Ar′or Ar−Sn −Ar″で表わされる芳香族スルフィドが挙げられ、ここで、ArとAr′は、独立してアリーレン基、Ar″はアリール、nは1〜8である。このような有機基をカーボン生産品に結合させる方法は、米国特許出願08/356660号、同08/572525号、同08/356459号に記載されており、これらの開示事項は本願でも全体的に参考にして取り入れられている。
ポリマーに併用されるポリマー生産品の一部であることができる改質カーボン生産品の第2のタイプは、式−Ar−CO2 −Rを有する基が結合したカーボン生産品であり、ここで、Rは有機基、モノマー基、又はポリマー基である。改質カーボン生産品の第1のタイプに関して上述した有機基、モノマー基、及びポリマー基は、この態様についても同じであることができる。もう1つの式はCn2n−CO2 −Rであり、nは、好ましくは1〜12の整数である。特定のR基の例はC20〜C50アルキル基である。
【0043】
これらの改質カーボン生産品は、4−アミノ安息香酸のジアゾニウム塩のようなジアゾニウム塩で最初に官能化されたカーボン生産品を用いて調製することができる。この最初の処理のため、その処理が結合したカルボン酸基を生成するように、当量の酸が使用される。次いで、下記に示すように、酸性基が、例えば、触媒としてp−トルエンスルホン酸を用いて長鎖脂肪族アルコールのR含有基でエステル化され、ここで、この式のRは、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基である。
【0044】
【化1】

【0045】
第3のタイプの改質カーボン生産品は、(a)カーボン生産品に直接結合した少なくとも1種の有機基、(b)有機基に結合したその少なくとも1種のイオン基、イオン性基、又は組み合わせ、及び(c)少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基を有する少なくとも1種の対イオン基、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基を有する少なくとも1種の対イオン性基、又はこれらの組み合わせ、が結合したカーボン生産品であり、ここで、対イオン基又は対イオン性基は、イオン基及び/又はイオン性基に結合する。
上記の態様において説明した有機基又はポリマー基は、この態様においては同じであることができる。モノマー基は、単に、上記のポリマー群のモノマー態様である。例えば、モノマー基の例は、限定されるものではないが、オレフィン基、スチレン基、アクリレート基、アミド基、エステル基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
イオン基又はイオン性基の例は、上記と同じである。イオン基又はイオン性基は、アニオン基又はカチオン基であることができる。対イオン基又は対イオン性基の好ましい例には、窒素ベース基と燐ベース基が挙げられる。
有機基の別な例には、C1 〜C50アルキル基、より好ましくは、C1 〜C30アルキル基が挙げられる。有機基の別な例には、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。有機基の別な例には、2−ジテトラデシルグルタレート基又はヘキサデシル基が挙げられる。
これらの改質カーボン生産品は、前述のように、例えば、スルファニル酸のジアゾニウム塩を用い、スルホン酸ナトリウム基のような少なくとも1種の官能基で先ず官能化したカーボン生産品を用いて調製することができる。これらのプロセスは、カーボン生産品の化学的解凝集をもたらす。解凝集の程度は、粒子サイズ分布と325メッシュ残留分によってこの段階で測定することができる。
次いで、スルホン化カーボン生産品のような結合官能基を有する水系ディスパージョンが、アルキルアンモニウム塩のような塩で処理される。例えば、アルキルアンモニウム塩は、第1、第2、第3、又は第4アンモニウム塩であることができる。例えば、アンモニウム塩のような塩を含む分散したカーボン生産品の処理は、ナトリウムイオンのアンモニウムイオンとの交換をもたらす。アンモニウム塩のアルキル基が大きい場合、カーボン生産品の凝集が生じる。この仕方で処理したカーボン生産品は、極めて疎水性であり、水の表面上で浮遊する。このアプローチは、カーボン生産品の初期ディスパージョンにおいて、カーボン生産品の各粒子が疎水性基で首尾よく処理されるといった特長を有する。この好ましい反応を下記に示しており、この式のRは、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基である。米国特許出願第08/663694号(1996年6月14日出願)に記載のプロセスが使用可能であり、本願でも全体的に参考にして取り入れられている。
【0047】
【化2】

【0048】
ポリマー生産品中(ポリマー生産品はマスターバッチではない)に存在する改質カーボン生産品の量は、カーボンブラックのような未改質カーボン生産品について従来使用された量でよい。例えば、約0.01〜約50重量%、より好ましくは約0.01〜約20重量%、最も好ましくは約0.01〜約5重量%の改質カーボン生産品が、ポリマー生産品の重量を基準に存在することができる。
本発明の改質カーボン生産品は、マスターバッチとして使用することもできる。この態様において、改質カーボン生産品は、通常のマスターバッチを製造するのと同様にマスターバッチの中に混和することができる。したがって、改質カーボン生産品は、ワックス、ポリマー、及び他の随意の成分を含むことができる標準的マスターバッチ成分に加えることができる。本発明の改質カーボン生産品を、マスターバッチを作成するのに使用する場合、一般に、存在する改質カーボン生産品の量は、マスターバッチ中にカーボンブラックのような未改質カーボン生産品に従来使用されてきた量であることができる。ここで、本発明の改質カーボン生産品を用いると、より多い充填量のカーボン生産品を含むマスターバッチが可能であり、即ち、本発明のマスターバッチは、マスターバッチの重量を基準に、約10〜約95重量%又はそれ以上の改質カーボン生産品、より好ましくは、約50〜90重量%の改質カーボン生産品を含むことができる。
本発明の改質カーボン生産品は、カーボンブラックのような強化材、フィラー、又は着色剤の導入を可能にする任意の手段を用い、ポリマー生産品を作成するためにポリマー中に混和又は分散させることができる。例えば、単軸又は多軸押出機又は射出成形機のような押出機の中に改質カーボン生産品のホッパー供給が挙げられる。改質カーボン生産品をポリマーに導入するその他の手段には、バンバリーミキサー又はブラベンダーミキサー等の内部ミキサーのようなミキサーが挙げられる。その他の導入手段、好ましくは、ポリマー中に改質カーボン生産品を分散させる手段には、限定されるものではないが、長連続ミキサー、連続配合ミキサー(バスニーダー)、反転ブレンダー、造粒機等が挙げられる。
本発明のポリマー生産品は、通常のポリマーと同様に、任意の所望の物品又は形状に作成又は成形することができる。
また、本発明のポリマー生産品は、ポリマーコーティングやポリマーフォームにも及ぶ。ポリマーコーティングに関し、一般に、水系又は非水系溶媒が、通常のポリマーコーティングについて一般に見られる量で存在することができる。ポリマーフォームに関し、一般に、発泡剤が、通常のポリマーコーティングについて一般に見られる量で存在することができる。
本発明のポリマー生産品は、酸化防止剤、安定剤(例えば、光/紫外線や熱)、可塑剤、フィラー、衝撃改質剤、潤滑剤、殺菌剤、難燃剤、プロセス改良剤、帯電防止剤、ブロー剤(発泡剤)、着色剤、滅菌剤、ブロック防止剤、有機過酸化物、光沢剤、カップリング剤、相溶化剤、プロセス助剤、離型剤、粘着剤、減粘剤、反応性添加剤、繊維、防曇剤、ヘージング防止剤、抗バクテリア剤、導電剤、架橋剤、艶消剤、分散剤、軟化剤、流量制御剤、蛍光剤、融合促進剤、殺カビ剤、核形成剤、有機キレート化剤、表面処理剤等のようなポリマーに一般に見られる通常の成分、さらには、本願でも参考にして取り入れている「Plastic Additives and Modifiers Handbook, Jesse Edenbaun, Ed., pp.193-1086」に記載のようなその他の材料を、付加的な成分として含むことができる。
【実施例】
【0049】
本発明は、以下の例によってさらに明らかにするが、この例は、本発明の例示に過ぎない。
全ての例において、特に明記がない限り、90m2 /g(CTAB)と98cc/100gのDBPAを有する、キャボット社から入手のELFTEX(商標)TPのカーボンブラックを使用した。
【0050】
例1
カーボンブラック(225g)を、オーバーヘッドミキサーを用い、2リットルの室温脱イオン水の中でスラリーにした。エチル−4−アミノベンゾエート(4.5g)を2.7gの37%塩酸の中に溶解した。脱イオン水(100ml)を添加して、得られた塩を溶解した。次いで、この溶液を、カーボンブラックのスラリーを攪拌しながら添加した。亜硝酸ナトリウム(1.7g)を50mlの脱イオン水に溶かし、次いでカーボンブラックのスラリーを攪拌しながら添加した。数時間の混合の後、混合を止めた。静置すると、この混合物は、無色の水層によって分離された上層と下層のカーボンブラックからなる3層に分離した。この混合物を濾過し、真空濾過を用い、改質カーボンブラック生産品をブフナー漏斗上に収集した。生産品を2リットルの脱イオン水で洗浄した後、一定の重量になるまで70℃で乾燥した。
【0051】
例2
バッチのピン式造粒機の中で、ルーズカーボンブラック(5kg)をスルファニル酸(310g)を用いて70℃で処理した。造粒機にカーボンブラックとスルファニル酸を充填し、モーター速度を約200rpmに設定した。造粒機を70℃に加熱した。亜硝酸ナトリウム(125g)を1リットルの水に溶かした。この亜硝酸ナトリウム溶液を、加圧搬送システムを介して造粒機に添加した。同様にして、3リットルの水を添加した。全ての水を添加した後、そのバッチを3分間混合した。次いで、スルホン化カーボンブラックのペレットを収集した。このペレットは42重量%の水を含んでいた。この湿りペレットを、例2A〜2Dの以下のイオン交換反応のために、乾燥せずに使用した。
【0052】
例2A
湿ったスルホン化カーボンブラック(387g)を混ぜながら、室温の2リットルの脱イオン水に添加した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(29.5g)を500mlの脱イオン水に溶かした。カーボンブラックのスラリーを攪拌しながら、得られた溶液を添加した。数時間の混合の後、攪拌を止めた。この混合物は、ゆっくりと3層に分離した。上層は黒い発泡体からなり、中間層は透明であり、下層は沈降したカーボンブラックからなった。この改質カーボン生産品をブフナー漏斗上に収集し、2リットルの脱イオン水で洗浄し、一定の重量になるまで70℃で乾燥した。
【0053】
例2B
Armeen SD(21.4g、アクゾノベル社より)を室温の1.7リットルの10%酢酸に添加した。アミンを完全に溶かした後、387gの湿りスルホン化カーボンブラックを、オーバーヘッドミキサーを用いて混入した。混合を16時間にわたって続けた。セチルトリメチルアンモニウムブロミドとの反応が観察され、混合物が3層に分離した。この改質カーボンブラック生産品をブフナー漏斗上に収集し、エタノールと水の2リットルの50/50混合液で洗浄し、次いで2リットルの水で洗浄した。改質カーボンブラックを一定の重量になるまで70℃で乾燥した。この手順を、オレイルアミンとヘキサデシルアミンを用いて繰り返した。
【0054】
例2C
Soyaアルキルアミン(28.6g、ウィトコ社より入手の Adogen 172D)に、150mlの脱イオン水と50mlのエタノールで希釈した6.49gの酢酸を添加した。アミンを溶解させた後、攪拌しながら、2リットルの室温の脱イオン水に分散させた172gの湿りスルホン化カーボンブラックに添加した。約2時間後、攪拌を止めると、この混合物は3層に分離した。ブフナー漏斗を用いて全ての混合物を濾過し、改質カーボンブラック生産品を分離した。次いで、3リットルの脱イオン水を用いて洗浄した。この改質カーボンブラックを一定の重量になるまで終夜にわたって70℃で乾燥した。
【0055】
例2D
1リットルのビーカーに、800mlの脱イオン水と50gのカーボンブラックを入れた。強く攪拌しながら、温度を70℃まで上げた。スルファニル酸(1.56g)をこのスラリーに添加した。次いで、水3mlの中の亜硝酸ナトリウム(0.62g)の溶液を、スラリーを攪拌しながら添加した。この混合物を終夜にわたって70℃で攪拌した。得られた処理後のカーボンブラックサスペンションを真空オーブンの中に入れ、70℃で数日間乾燥し、殆どの水を蒸発させた。この生産品は、約40重量%の水を含んだ。
【0056】
このようにして調製したスルホン化カーボンブラック(50gの湿りカーボンブラック)を、1リットルのビーカーに入れた室温の650mlの脱イオン水に混入させた。磁気スターラーと攪拌棒を用いて混合を行った。安息香酸(0.66g)とAmine D(1.51g、ヘルキュールズ社より)を150mlのトルエンに溶かした。両方の化合物を溶かした後、この混合物を、スルホン化カーボンブラックのディスパージョンに直接添加した。得られた混合物を終夜にわたって強く攪拌した。この改質カーボンブラック生産品を、70℃の真空オーブン中で水とトルエンを蒸発させることによって分離した。この方法は、Amine Dに代えてForal 85(やはりヘルキュールズ社より)を用いて行うことができる。
【0057】
例3
カーボンブラック(200g)を、オーバーヘッドミキサーを用い、室温の2リットルの脱イオン水の中に分散させた。4−アミノ安息香酸(4.94g)を150mlの脱イオン水で希釈した3.24gの70%硝酸に溶かした。20分間の攪拌の後、4−アミノ安息香酸が溶解し、その溶液をカーボンブラックスラリーに添加した。亜硝酸ナトリウム(2.42g)を50mlの脱イオン水に溶かした。得られた溶液をカーボンブラックのスラリーにゆっくり添加した。ガスが発生し、スラリーの粘度がかなり低下した。4時間の混合の後、オーバーヘッド攪拌機を止めた。改質カーボンブラック生産品をブフナー漏斗上で分離し、2リットルの脱イオン水を用いて洗浄し、一定の重量になるまで70℃で乾燥した。
【0058】
次いで、結合したカルボン酸基を有する改質カーボンブラック(50g)を1リットルの3つ口丸底フラスコの中に入れた。トルエン(200ml)をそのフラスコに添加し、フラスコにDean−Starkトラップを取り付けた。トラップにトルエンを充填した。改質カーボンブラックの残留水分を乾燥させるため、加熱マントルを用い、トルエンと改質カーボンブラックスラリーを加熱して環流させた。4時間後、0.3mlの水がトラップに回収された。スラリーを窒素中で室温まで冷却した。ペトロライト社から入手の、平均C30の長鎖アルキルアルコールであるUniline425(4.15g)、p−トルエンスルホン酸(1.71g)をフラスコに添加した。3時間の環流をしてスラリーを加熱すると、数滴の水がトラップに回収された。スラリーを窒素中で室温まで冷却した。
【0059】
改質カーボンブラックをブフナー漏斗上に収集した。さらに300mlのトルエンを使用し、フラスコからブフナー漏斗に改質カーボンブラックを完全に移した。改質カーボンブラックをエタノールと水の800mlの50/50混合液によってフィルター上で洗浄し、次いで2リットルの水で洗浄した。この改質カーボンブラックを、乾燥前に4時間にわたって空気乾燥し、一定の重量になるまで70℃で乾燥した。
【0060】
例4
実験用バッチ造粒機中で造粒したカーボンブラックと、スラリーから乾燥したカーボンブラックから、比較サンプルを調製した。第2の処理は、化学処理プロセスに類似であるが、反応性化合物を使用しなかった。1.6リットルのバンバリー内部ミキサーと4分間の混合サイクルを用い、高密度ポリエチレン中に2.5重量%のカーボンブラック充填量でカーボンブラックを配合した。両方のデータとも、化学処理を行わないで得られた乏しい分散性を示した。HDPEの中に造粒カーボンブラックを配合した結果を表1に示し、HDPEの中にスラリーから乾燥したカーボンブラックを配合した結果を表2に示す。全平均分散度合は、造粒カーボンブラックについては1.78%の未分散面積で、スラリーから乾燥したカーボンブラックについては1.71%の未分散面積であった。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
例5
例1〜3の改質カーボンブラックを、1.6リットルのバンバリー内部ミキサーと4分間の混合サイクルを用い、高密度ポリエチレン(HDPE)中に2.5重量%のカーボンブラック充填量で配合した。同じ方法で配合した未改質カーボンブラックを含む配合物、及び40%充填率でHDPE中に、カーボンブラックをマスターバッチ配合し、次いで第2処理工程で2.5%にカーボンブラックを希釈して調製した配合物と、改質カーボンブラックを充填した配合物を比較した。前者の配合物は、着色プラスチックにおける現状の技術を代表する。
化学処理がプラスチック中のカーボンブラック分散性を改良しているか否かを評価するため、Kontronプラスチック分散テストを用いた。Kontronプラスチック分散テストは、低レベルのカーボンブラック(例えば、2.5重量%)を含む薄いポリマーフィルムの約100倍のデジタル式顕微鏡に現れる、存在する未分散カーボンブラック凝集体のサイズと数を測定する。薄いフィルムは、スライドガラスの間にカーボンブラック充填ポリマー配合物の小片をサンドイッチし、次いで熱圧下でそれらを溶融させることによって作成した。自動画像解析プログラムを使用し、直径5μmよりも大きい全てのカーボンブラック凝集体を特定し測定した。凝集体で覆われた像の割合である未分散面積%は、ランク付けのための測定結果である。0の未分散面積%は、完全な分散である。10個の像について平均未分散面積%を測定した。
Kontronプラスチック分散テストは、「ASTM D2663, Method B, "Standard Test Method for Carbon Black -- Dispersion in Rubber" 」に基づく。プラスチック中のカーボンブラックの分散性の評価を可能にするように、いくつかの改良をこのASTM試験法に加えている。プラスチックフィルムは、ゴムのミクロトームセクションの約10倍の厚さであり、一方、プラスチック中の一般的カーボンブラック含有率は、ゴム中の一般的カーボンブラック含有率の約1/10である。その結果、光学顕微鏡で見られるカーボンブラック含有率は、2つのテストで同等である。ASTM試験において、カーボンブラック凝集体は、基準グリッドを顕微鏡の光路の中に挿入することによって人により特定・測定される。作業者は、凝集体によって少なくとも半分が覆われた全てのグリッド平方領域を計数する。覆われた平方領域の合計が、配合物中のカーボンブラックの体積%で割算されて、分散度%になる。このプロセスは、Kontronプラスチック分散テストにおいては自動化されている。
分散性は、表3〜5に示すように、改質カーボンブラック生産品を用いると改良された。改質カーボンブラック生産品を、上記と同じ仕方で試験した。表3のサンプル1、2、4〜9、11、12は、表3に記載の処理と処理レベル(mmol/1gのカーボンブラック)を用いて例1のようにして調製した。サンプル3と10は、次のようにして調製した。
50mlの濃硫酸を攪拌しながら、これに亜硝酸ナトリウム(2.8g)を添加した。亜硝酸ナトリウムを添加すると、この溶液はオレンジ色になった。温度を70℃まで上げ、次いでこの溶液を冷却した。表3に示した処理レベルの4−トリフルオロメトキシアニリン(7.2g)又はトリフルオロメチルアニリンを30〜35℃でゆっくり添加した(15分間にわたって)。この溶液を2時間攪拌した。
オーバーヘッドミキサーを用い、2リットルの室温脱イオン水中でカーボンブラック(225g)をスラリーにした。次いで、上記のようにして調製したジアゾニウム塩溶液をスラリーに添加した。数時間にわたって攪拌を続けた。攪拌を止めると、溶液は3層に分離した。上層、中間層、及び下層は、カーボンブラックの小さな泡立った層、透明な水層、及びもう1つのカーボンブラック層からなった。カーボンブラックのまとまりは、底層に含まれた。全混合物をブフナー漏斗に通して濾過することにより、改質カーボンブラック生産品を分離した。改質カーボンブラック生産品を、フィルター上で2リットルの水により洗浄した。洗浄の後、この改質カーボンブラックを終夜にわたって一定の重量になるまで70℃で乾燥した。
【0064】
【表3】

【0065】
表4のサンプルは、一次処理として例2で記載したのと同じ手順を用いて調製し、表4に示した特定の二次処理と二次処理レベルを用いた。表4に示した二次処理は、表4に示したように、例2A、B、C、又はDに記載した手順の1つに基づく。
表5のサンプルは、上記の例3と同じ仕方で調製した。
【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
Foral85とAmineDは、Hercules社から入手したテルペン誘導体である。Adogen172Dはウィトコ社より入手したsoyaアルキルアミンである。Uniline425と700は、ペトロライト社から入手した長鎖第1アミンであり、それぞれC30とC50の平均炭素数を有する。上記の表から分かるように、平均未分散面積は、本発明の改質カーボン生産品を用いると低下する。
本改質カーボン生産品の1種以上を製造するプロセスで使用可能な反応基の例を、下記の表に示している。
【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
本発明の改質カーボン生産品は、ポリマー生産品のより経済的な調製を提供することができ(例えば、プロセス工程数又は必要な加工レベルを減らすことによる)、及び/又はポリマー生産品の特性を改良することができる。本発明の改質カーボン生産品の改良された分散性は、ポリマー生産品の改良された分散を可能にし、又は少ない工程又は少ない加工程度を用い、既存の組成又はプロセスによって得られるものと同等な分散レベルを可能にする。ポリマー生産品の特性に関し、本発明の改質カーボン生産品は、硬度、反発、衝撃抵抗、耐変色性、耐磨耗性のような特性を改良することができる。
【0073】
本発明の別な態様は、本願で開示した説明と実施例の考察から当業者には明らかであろう。この説明と実施例は、代表的なものに過ぎなく、本発明の範囲と技術的思想は、請求の範囲に示されているものと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー、及びその中に分散された改質カーボン生産品を含むポリマー生産品であって、前記改質カーボン生産品が、C13以上の炭素数のアルキル基又はポリマー基を有する少なくとも1種の有機基が結合したカーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項2】
前記有機基が芳香族基又は第2アルキル基をさらに有する請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項3】
前記有機基がイオン基又はイオン性基を含む請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項4】
前記有機基が、(a)少なくとも1種の芳香族基、及び(b)少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のイオン性基、又はこれらの組み合わせを含み、前記芳香族基がカーボン生産品に直接結合した請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項5】
前記有機基が、(a)C13〜C100 アルキル基、及び(b)少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のイオン性基、又はこれらの組み合わせを含み、前記C13〜C100 アルキル基がカーボン生産品に直接結合した請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項6】
前記有機基が、オレフィン基、スチレン基、アクリレート基、アミド基、エステル基、又はこれらの組み合わせである請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項7】
前記ポリマー基が、ポリオレフィン基、ポリスチレン基、ポリアクリレート基、ポリアミド基、ポリエステル基、又はこれらの組み合わせである請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項8】
前記有機基が、
−Ar−CO2 (Cm2m+1)、m=0〜約20
−Ar−(Cn2n+1)、n=1〜約50
−Ar−Cp2pAr−、p=1〜約10
−Ar−CX3 、Xはハロゲン原子
−Ar−O−CX3 、Xはハロゲン原子
−Ar−SO3 -
−Ar−SO2 (Cq2q+1)、q=2〜約10
−Ar−S2 −Ar−NH2
−Ar−S2 −Ar−、
−ArSO2 H、
又はこれらの組み合わせ、を含む請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項9】
前記有機基が、
−Ar−SO3 - と−Ar−(Cn2n+1)、n=1〜約50
−Ar−S2 −Ar−NH2 と−Ar−Cp2pAr−、p=1〜約10
−Ar−S2 −Ar−、
−Ar−Cp2pAr−、p=1〜約10、又は
少なくとも2種の異なる−Ar−CO2 (Cm2m+1)、m=0〜約20
を含む請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項10】
前記イオン基又はイオン性基が、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、第4アンモニウム塩、スルホンアミド又はその塩、又はSO2 NHCOR又はその塩(RはC1 〜C20アルキル基、フェニル基、又はこれらの組み合わせ)を含む請求項3に記載のポリマー生産品。
【請求項11】
前記−Ar−(Cn2n+1)が枝分かれアルキルである請求項8に記載のポリマー生産品。
【請求項12】
前記−Ar−(Cn2n+1)が線状である請求項8に記載のポリマー生産品。
【請求項13】
n=4であり、Cn2n+1が枝分かれした請求項8に記載のポリマー生産品。
【請求項14】
前記カーボン生産品が、カーボンブラック、グラファイト、ガラス質カーボン、微細に分割されたカーボン、炭素繊維、活性チャーコール、活性炭、又はこれらの組み合わせである請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項15】
前記カーボン生産品がカーボンブラックである請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項16】
前記ポリマー生産品がマスターバッチの形態である請求項1に記載のポリマー生産品。
【請求項17】
ポリマー、及びその中に分散された改質カーボン生産品を含むポリマー生産品であって、前記改質カーボン生産品が、式:
−Ar−CO2 −R、又はCn2nCO2 −R
(Rは有機基又はポリマー基)
を有する基が結合したカーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項18】
前記Rが有機基である請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項19】
前記Rがポリマー基である請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項20】
前記有機基がアルキル基である請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項21】
前記有機基がアリール基である請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項22】
前記有機基がアラルキル基又はアルキルアリール基である請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項23】
前記有機基が、オレフィン基、スチレン基、アクリレート基、アミド基、エステル基、又はこれらの組み合わせである請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項24】
前記ポリマー基が、ポリオレフィン基、ポリスチレン基、ポリアクリレート基、ポリアミド基、ポリエステル基、又はこれらの組み合わせである請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項25】
前記有機基がC1 〜C100 アルキル基を含む請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項26】
前記有機基がC20〜C60アルキル基を含む請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項27】
前記ポリマー生産品がマスターバッチである請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項28】
前記カーボン生産品が、カーボンブラック、グラファイト、ガラス質カーボン、微細に分割されたカーボン、炭素繊維、活性チャーコール、活性炭、又はこれらの組み合わせである請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項29】
前記カーボン生産品がカーボンブラックである請求項17に記載のポリマー生産品。
【請求項30】
(a)カーボンに直接結合した少なくとも1種の有機基を有するカーボン、
(b)前記有機基に結合した少なくとも1種のイオン基、イオン性基、又はこれらの組み合わせ、及び
(c)前記イオン基又はイオン性基又はこれらの双方に結合した、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基の対イオン基、又は、少なくとも1種の有機基、モノマー基、又はポリマー基の対イオン性基、
を含んでなる改質カーボン生産品。
【請求項31】
前記モノマー基が、オレフィン基、スチレン基、アクリレート基、アミド基、エステル基、又はこれらの組み合わせである請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項32】
前記ポリマー基が、ポリオレフィン基、ポリスチレン基、ポリアクリレート基、ポリアミド基、ポリエステル基、又はこれらの組み合わせである請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項33】
カーボン生産品に結合した前記有機基が、カーボン生産品に直接結合したC13〜C100 アルキル基を含んでなる請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項34】
前記カーボン生産品に結合した有機基が、カーボン生産品に直接結合した芳香族基を含んでなる請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項35】
前記カーボンに結合した有機基が、カーボンに直接結合したアラルキル基又はアルキルアリール基を含んでなる請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項36】
前記イオン基又はイオン性基が、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、第4アンモニウム塩、スルホンアミド又はその塩、又はSO2 NHCOR又はその塩(RはC1 〜C20アルキル基、フェニル基、又はこれらの組み合わせ)である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項37】
前記対イオン基又は対イオン性基が、窒素ベース基又は燐ベース基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項38】
前記イオン基又はイオン性基がスルホネート基であり、前記対イオン基又はイオン性基が窒素ベース基又は燐ベース基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項39】
前記対イオン基又はイオン性基の有機がC1 〜C50アルキル基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項40】
前記対イオン基又はイオン性基の有機基ががC1 〜C20アルキル基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項41】
前記有機基がオレイル基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項42】
前記有機基がオレイル基、リノレイル基、リノレニル基、又はこれらの組み合わせである請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項43】
前記有機基が2−ジテトラデシルグルタレート又はヘキサデシルである請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項44】
前記カーボン生産品が、カーボンブラック、グラファイト、ガラス質カーボン、微細に分割されたカーボン、炭素繊維、活性チャーコール、活性炭、又はこれらの組み合わせである請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項45】
前記カーボン生産品がカーボンブラックである請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項46】
ポリマーと、その中に分散された請求項30に記載の改質カーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項47】
前記ポリマー生産品がマスターバッチである請求項46に記載のポリマー生産品。
【請求項48】
ポリマーと、請求項31〜45のいずれか1項に記載の改質カーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項49】
ポリマーと、請求項42に記載の改質カーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項50】
ポリマーと、請求項45に記載の改質カーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項51】
前記ポリマー生産品がマスターバッチである請求項50に記載のポリマー生産品。
【請求項52】
前記イオン基又はイオン性基がアニオン基であり、前記対イオン基又は対イオン性基がカチオン基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項53】
前記イオン基又はイオン性基がカチオン基であり、前記対イオン基又は対イオン性基がアニオン基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項54】
前記イオン基又はイオン性基が、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、第4アンモニウム塩、スルホンアミド又はその塩、又はSO2 NHCOR又はその塩(RはC1 〜C20アルキル基、フェニル基、又はこれらの組み合わせ)である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項55】
前記対イオン基又は対イオン性基が、窒素ベース基又は燐ベース基である請求項30に記載の改質カーボン生産品。
【請求項56】
ポリマー中に改質カーボン生産品を分散させることを含むポリマー生産品中のカーボン生産品の分散を改良する方法であって、前記改質カーボン生産品が、前記ポリマーに適合する少なくとも1種の有機基又はポリマー基が結合したカーボン生産品を含んでなる方法。
【請求項57】
ポリマー中に改質カーボン生産品を分散させることを含むポリマー生産品中のカーボン生産品の分散を高める方法であって、前記改質カーボン生産品が、式:
−Ar−CO2 −R、又はCn2nCO2 −R
(Rは有機基又はポリマー基)
を有する基が結合したカーボン生産品を含んでなる方法。
【請求項58】
ポリマー中に請求項30に記載の改質カーボン生産品を分散させることを含む、ポリマー生産品中のカーボン生産品の分散を高める方法であって、前記改質カーボン生産品が前記ポリマーに適合性である分散方法。
【請求項59】
前記カーボン生産品が、炭素相とケイ素含有種相を含む凝集体である請求項1〜13、及び請求項16〜27のいずれか1項に記載のポリマー生産品。
【請求項60】
前記カーボン生産品が炭素相と金属含有種相を含む凝集体、又は前記カーボン生産品がシリカ被覆カーボンブラックである請求項1〜13、及び請求項16〜27のいずれか1項に記載のポリマー生産品。
【請求項61】
前記カーボン生産品が、炭素相とケイ素含有種相を含む凝集体である請求項30〜43のいずれか1項に記載の改質カーボン生産品。
【請求項62】
前記カーボン生産品が炭素相と金属含有種相を含む凝集体、又は前記カーボン生産品がシリカ被覆カーボンブラックである請求項30〜43のいずれか1項に記載の改質カーボン生産品。
【請求項63】
ポリマーと、請求項61に記載の改質カーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。
【請求項64】
ポリマーと、請求項62に記載の改質カーボン生産品を含んでなるポリマー生産品。

【公開番号】特開2009−173944(P2009−173944A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−93326(P2009−93326)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【分割の表示】特願2000−539086(P2000−539086)の分割
【原出願日】平成10年12月11日(1998.12.11)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】