説明

改質用ペロブスカイト担持Ni触媒材料及びこれを用いる合成ガス製造方法

【課題】結晶化度が高いカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒からなる炭化水素改質触媒及びこれを用いた合成ガスの製造方法を提供する。
【解決手段】超臨界もしくは亜臨界の水熱合成反応により、ストロンチュウムと鉄がそれぞれカルシウムとチタンの格子サイトに部分的に置換されており、1次粒子径が50nm以下のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持体を製造するとともに、一次粒子径が10nm以下であるニッケル触媒を製造し、これを前記担持体に担持し、表面積が70平方メートル/g以上で、凝集のない、結晶化度が高いチタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造する。
【効果】超臨界水熱合成法により、一段で、高表面積なペロブスカイト担持Ni触媒を調製し、提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒及びその製造方法、また、この触媒を用いた合成ガスの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、メタンの部分酸化反応用の触媒として適用できる、粒子径50nm以下で、表面積が70平方メートル/g以上の高表面積で、凝集のない、斜方晶構造を有するカチオン部分置換型チタン酸カルシウム(Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ)微粒子に、簡単にニッケル触媒を担持する方法、及び該ニッケル触媒により一酸化炭素と水素の混合ガスからなる合成ガスを製造する方法に関するものである。
【0002】
本発明は、簡単なプロセスで、微粒子化による高表面積を特徴としたカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造し、提供することを可能とする、新しいニッケルを担持したカチオン部分置換型チタン酸カルシウム触媒の製造方法、及びこの触媒を用いた一酸化炭素と水素との混合ガスからなる合成ガスの製造方法に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
石油資源の枯渇に由来して、エネルギー資源としての天然ガスの利用技術に期待が高まっている。天然ガスの利用技術の中でも、特に、天然ガスの有効利用技術として、天然ガスからエタノールやガソリンなどの液体燃料化する技術の主反応である、メタンから合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)へ酸化的に変換する触媒の開発が緊急の課題となっている。特に、触媒として、混合導電性セラミックス担持ニッケル触媒が、触媒活性だけでなく、高い炭素析出抑制能を有することで注目されている。
【0004】
上記触媒に用いられる混合導電性セラミックスでは、主にペロブスカイト型構造を有した酸化物(一般式;ABO)の構成金属の一部を、より低原子価の金属で部分的に置換することで、酸化物中に酸素空孔を導入し、これにより発現した電子と酸素イオン導電性を利用して、耐炭素析出の機能を発現させる。混合導電性ペロブスカイト酸化物で、高い組成均質性や結晶化度とともに、焼結温度の低温化による微粒子(ナノサイズ)化と高表面積化をすることができれば、高い触媒反応速度とともに、炭素析出を抑制する高活性触媒が実現できると考えられる。
【0005】
これまでに、チタン酸カルシウム(CaTiO)をベースに、Caの一部をSrで部分置換した、カチオン部分置換型チタン酸カルシウム(Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ)は、メタンの部分酸化反応触媒の触媒担体として、高い活性を示すことが知られている(非特許文献1)。
【0006】
また、チタン酸カルシウム(CaTiO)をベースに、Caの一部をSrで、また、Tiの一部をFeで部分置換した、カチオン部分置換型チタン酸カルシウム(Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ)は、酸素と電子の混合導電性を示し、この特性が、メタンの部分酸化反応において、触媒上での炭素析出を抑制する機能の発現に大きく寄与しているものと考えられている(非特許文献2)。
【0007】
上記カチオン部分置換型チタン酸カルシウム(以下、部分置換型チタン酸カルシウムと記載することがある。)は、主にゾルゲル法により調製することが検討されている。そこで、混合導電性を有し、高結晶性の微粒子を用いることができれば、高い触媒活性を得ることができることが期待される。そのためには、高結晶性で、かつ粒子径が50nm以下の微粒子で、表面積が60平方メートル/g以上のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム微粒子が必要とされる。
【0008】
上記部分置換型チタン酸カルシウムをニッケル触媒担体として利用した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒は、主にゾルゲル法によって製造されている。ゾルゲル法では、原料に、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチュウム、オルトチタン酸テトライソプロピル、クエン酸鉄、クエン酸ニッケルを用いる。
【0009】
ゾルゲル法では、それぞれの原料を、クエン酸とエチレングリコールの混合溶液に混合し、これを、所定量混合させ、空気中で加熱することで、徐々に塩との加水分解反応によって、アモルファス又は部分的に結晶化した部分置換型チタン酸カルシウムとニッケル前駆体のプレカーサを得て、それを、850℃で熱処理している(非特許文献2)。しかし、当該方法で得られる粒子は、結晶性は高いが、粒子径が数10μmであり、そのため、得られた粒子は、粉砕、分級操作により微粒化されるが、高々、数100nm程度であり、また、表面積は、1平方メートル/g程度でしかない。
【0010】
【非特許文献1】Angrew.Chem.Int.Ed.Engle.,35,192,(2006)
【非特許文献2】Catal.Today,117,297,(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、結晶化度が高く、単一の結晶性を有し、70平方メートル/g以上の高表面積化した、部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を、効率よく、簡単なプロセスで、かつ短時間で製造できる新しい技術を開発することを目標として鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、カルシウムイオン、ストロンチュウムイオン、チタンイオン、鉄イオンとニッケルイオンとを、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応させることにより、所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、表面積が70平方メートル/g以上の高表面積の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を、短時間で、かつ効率よく製造することのできる、部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法、及びその触媒製品を提供することを目的とするものである。
【0013】
また、本発明は、天然ガスなどの炭化水素と、水、二酸化炭素、酸素、空気などの改質ガス化剤とから、水素と一酸化炭素との混合物である合成ガスを得るための炭化水素の改質用触媒として、当該触媒を用いた合成ガスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒であって、
上記Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δは、一次粒子径が0超〜50nmの小さい微粒子の担持体であり、該担持体に、一次粒子径が0超〜10nmで、原子比Ni/(Ca+Sr)が0.2〜1.0であるNi触媒を担持し、少なくとも表面積が70平方メートル/gの高表面積で、凝集がなく、結晶化度が高い、高結晶性のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒。
(2)Ni触媒を担持したカチオン部分置換型チタン酸カルシウムが、単一の結晶構造を有している、前記(1)に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒。
(3)Ni触媒の一次粒子径が、0超〜10nmである、前記(1)に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒。
(4)チタニウム化合物水溶液、カルシウム塩水溶液、ストロンチュウム塩水溶液、及び、鉄塩水溶液を混合し、アルカリ水溶液を添加した後、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応する工程により、基本構造が、一般式
Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム微粒子を製造し、その後、ニッケル塩水溶液を添加し、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応することにより、基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することを特徴とするカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
(5)チタニウム化合物水溶液、カルシウム塩水溶液、ストロンチュウム塩水溶液、鉄塩水溶液、及び、ニッケル塩水溶液を混合し、アルカリ水溶液を添加した後、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応する工程により、基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することを特徴とするカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
(6)水熱反応の水熱処理温度が、高くても400℃で、反応圧力が、高くても35MPaである、前記(4)又は(5)に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
(7)水熱反応の水熱処理時間が、0超〜20秒である、前記(4)又は(5)に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
(8)前記(1)から(3)のいずれかに記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を用いて、炭化水素と、改質ガス化剤から、一酸化炭素と水素の混合ガスからなる合成ガスを得ることを特徴とする合成ガスの製造方法。
【0015】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、基本構造が、一般式 Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒であって、上記Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δは、一次粒子径が0超〜50nmの小さい微粒子の担持体であり、該担持体に、一次粒子径が0超〜10nmで、原子比Ni/(Ca+Sr)が0.2〜1.0であるNi触媒を担持し、少なくとも表面積が70平方メートル/gの高表面積で、凝集がなく、結晶化度が高い、高結晶性のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒、であることを特徴とするものである。ここで、一次粒子径が0超〜50nm、あるいは0超〜10nmとは、一次粒子径が0超以上で50nm以下、あるいは0超以上で10nm以下であることを意味する。
【0016】
また、本発明は、上記カチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造する方法であって、チタニウム化合物水溶液、カルシウム塩水溶液、ストロンチュウム塩水溶液、及び、鉄塩水溶液を混合し、アルカリ水溶液を添加した後、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応する工程により、基本構造が、一般式 Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム微粒子を製造し、その後、ニッケル塩水溶液を添加し、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応することにより、基本構造が、一般式 Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δで表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明は、上記カチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造する方法であって、チタニウム化合物水溶液、カルシウム塩水溶液、ストロンチュウム塩水溶液、鉄塩水溶液、及び、ニッケル塩水溶液を混合し、アルカリ水溶液を添加した後、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応する工程により、基本構造が、一般式 Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することを特徴とするものである。
【0018】
更に、本発明は、上記カチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を用いて、一酸化炭素と水素の混合ガスからなる合成ガスを製造する方法であって、炭化水素と、炭化水素を部分酸化して改質するための酸素源となる、水蒸気、二酸化炭素、酸素、空気などの酸化剤として用いられる通常の改質ガス化剤から、一酸化炭素と水素の混合ガスからなる合成ガスを製造することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造する方法としては、二つの製造法がある。本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の第一の製造法は、まず、カルシウムイオン、ストロンチュウムイオン、チタンイオンと鉄イオンとを、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応させ、一次粒子径が50nm以下であり、その粒子は、残存水酸イオンが少なく、凝集がなく、結晶化度が高い、斜方晶部分置換型チタン酸カルシウム酸化物を製造し、次に、反応ラインに、ニッケルイオンを添加し、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応させ、一次粒子径が10nm以下である、ニッケル触媒を製造することにより、部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料を製造するものである。
【0020】
本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の第二の製造法は、カルシウムイオン、ストロンチュウムイオン、チタンイオン、鉄イオンとニッケルイオンとを、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応させることにより、一次粒子径が50nm以下であり、その粒子は、残存水酸イオンが少なく、凝集がなく、担持体微粒子の中に触媒が混ざりあった、部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料を製造するものである。これらの特徴を有する部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料を製造するには、反応により生成する核の凝集を抑制するとともに、結晶表面における2次核発生を抑制する必要がある。
【0021】
一般に、金属酸化物の結晶化度を上げるためには、高温処理することが望ましいが、高温、高圧の亜臨界ないし超臨界状態では、水は、非極性のガス状となり、非極性を有する部分置換型チタン酸カルシウム酸化物と、ニッケル触媒の生成速度が著しく大きくなるとともに、溶存するイオン濃度が極めて低くなることから、2次核発生や、過度の結晶成長が生じ難く、生成する粒子径も、小さくなる。
【0022】
本発明において、チタン源には、チタンアルコキシドが用いられる。チタン源は、水溶性であることが好適であるが、例えば、適当なTi化合物を加水分解させて得られる固体生成物のチタン水酸化物(TiOxHO)を含むスラリーが望ましい。カルシウム源、ストロンチウム源、鉄源及びニッケル源には、水溶性であることが好ましく、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチュウム、硝酸鉄、硝酸ニッケルを用いることが好ましい。上記のカルシウムイオン、ストロンチュウムイオン、チタンイオンと鉄イオンの個々の溶液又は混合溶液に、アルカリを加えて、中性よりも高いpHの溶液とすることが必要である。ここで、アルカリは、NaOHや、KOHなどが好適であるが、KOHを用いることが望ましい。
【0023】
本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法では、急速昇温による水熱合成反応を、水酸イオンを適宜添加した条件下で行うことが好ましい。このようにすれば、前記カルシウムイオン、ストロンチュウムイオン、チタンイオンと鉄イオンの混合水溶液と、ニッケル水溶液に、水酸イオンを適宜添加して、アルカリ性にすることで、昇温過程で結晶化しやすい、水酸化チタンが、溶解され易くなる。
【0024】
このようにすれば、これらの昇温過程において生成した副反応物質が、反応生成物中に残留して、結晶品質に悪影響を及ぼし、目的とする部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の収率を低下させることを防止することができる。従って、本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法では、水熱反応を、カルシウムイオン、ストロンチュウムイオン、チタンイオンと鉄イオンの混合溶液と、ニッケルイオン溶液を、亜臨界ないし超臨界状態が得られる所定温度に、急速に昇温させて、実施することが好ましい。
【0025】
本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の第一の製造法では、部分置換型チタン酸カルシウム微粒子が生成した後で、ニッケル触媒粒子を、亜臨界ないし超臨界条件下で、所定時間、水熱処理することで、ニッケル触媒粒子と部分置換型チタン酸カルシウム微粒子を成長させずに、それらの結晶化度を向上させることが好ましい。本発明において、結晶化度が高いとは、担体である部分置換型チタン酸カルシウムが目的とする組成で結晶水や水酸基を含まないペロブスカイト構造を形成することを意味するものとして定義される。
【0026】
本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の第二の製造法では、部分置換型チタン酸カルシウム微粒子とニッケル触媒粒子を、亜臨界ないし超臨界条件下で、所定時間、水熱処理することで、これらが同時に生成し、ニッケル触媒粒子と部分置換型チタン酸カルシウム微粒子を成長させずに、分散させることが好ましい。本発明において、亜臨界ないし超臨界状態の水中での水熱反応の水熱処理温度は、亜臨界ないし超臨界水の条件下であって、かつ温度及び圧力条件は、温度は、400℃以下で、反応圧力は、35MPa以下である。また、水熱反応の水熱処理時間は、0超以上で20秒以下の短時間である。
【0027】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1に、本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造に用いる流通式水熱合成装置の一例を示す。この装置は、金属原料である硝酸カルシウム水溶液、硝酸ストロンチュウム水溶液、硝酸鉄水溶液、チタニアゾル溶液の原料混合溶液と、ニッケル水溶液、アルカリ水溶液及び蒸留水、あるいは、硝酸カルシウム水溶液、硝酸ストロンチュウム水溶液、硝酸鉄水溶液、硝酸ニッケル水溶液、チタニアゾル溶液の原料混合水溶液と、アルカリ水溶液及び蒸留水の送液用の液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ(4基)、反応管、及び蒸留水加熱用の電気炉(2基)、反応液冷却用の熱交換器、及び圧力調整器(背圧弁)から構成される。
【0028】
製造法(一)では、ガラス製容器内のチタニアゾル溶液、硝酸カルシウム水溶液、硝酸ストロンチュウム水溶液、硝酸鉄水溶液の原料混合溶液1、水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液3を、高速液体クロマトグラフィー用無脈流ポンプ2と4により、例えば、各流量10ml/minで送液する。硝酸ニッケル水溶液9を、別の高圧ポンプ10により、例えば、流量10ml/minで送液する。一方、蒸留水5は、別の高圧ポンプ6により、例えば、流量55ml/minで、管型電気炉7に送液され、そこで、蒸留水は、原料溶液の加熱に必要な超臨界水とする。金属イオン含有混合水溶液と水酸化カリウム水溶液は、混合点1にて混合され、前記超臨界水と、混合点2にて接触し、急速に反応温度まで昇温され、水熱反応が開始される。
【0029】
反応液は、管状の電気炉によって、一定温度に保持された反応管8に一定時間滞在後、混合点3にて、ニッケル水溶液と接触し、急速に反応温度まで昇温され、ニッケルの水熱反応が開始される。反応管8に一定時間滞在後、反応管出口の2重管型の熱交換器11により冷却した後、背圧弁12にて降圧し、回収容器13に捕集する。
【0030】
製造法(二)では、ガラス製容器内のチタニアゾル溶液、硝酸カルシウム水溶液、硝酸ストロンチュウム水溶液、硝酸鉄水溶液、硝酸ニッケル水溶液の混合溶液1、水酸化カリウム水溶液3を、高速液体クロマトグラフィー用無脈流ポンプ2と4により、例えば、各流量10ml/minで送液する。一方、蒸留水5は、別の高圧ポンプ6により、例えば、流量55ml/minで、管型電気炉7に送液され、そこで、蒸留水は、原料溶液の加熱に必要な超臨界水とする。
【0031】
金属イオン含有混合水溶液と水酸化カリウム水溶液は、混合点1に混合され、前記超臨界水と、混合点2にて接触し、急速に反応温度まで昇温され、水熱反応が開始される。反応液は、管状の電気炉によって、一定温度に保持された反応管8に一定時間滞在後、反応管出口の2重管型の熱交換器11により冷却した後、背圧弁12にて降圧し、回収容器13に捕集する。
【0032】
生成した粒子は、出口より、反応液とともにスラリーとして回収される。回収した溶液を適当なフィルターにより濾別し、生成した粉体を回収する。これらの粒子の特性は、粉末X線回折及び電子線回折像の解析により、結晶構造を同定する。また、組成は、ICP発光分析法によって決定される。粒子径や凝集の程度は、電子顕微鏡観察によって評価される。
【0033】
本発明の触媒を用いて、合成ガスを製造する方法を説明する。先ず、本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持触媒を改質用触媒として使用し、当該改質用触媒の活性化処理を、水素などの還元性気流中に、873〜1373K、好ましくは923〜1323K、更に好ましくは973〜1273Kの温度範囲で、0.1〜10時間触媒を保持することにより行う。還元性気流は、反応に用いる炭化水素、及び改質ガス化剤を含むガス流れでもよい。活性化処理によって、触媒表面が還元され、複合酸化物中に分散していた活性金属種のNiで表される第二成分の酸化物が、金属元素として還元され、触媒活性が得られる。
【0034】
合成ガスの原料となる炭化水素には、メタンを含有する天然ガス、エタン、LPG、ナフサ、その他原油系留分、及び原油を原料とする予備改質ガス、コークス炉ガス、石炭ガスなどが用いられる。また、メタンをほとんど含有しないエタン、LPG、ナフサ、その他原油系留分を原料としてもよい。改質ガス化剤には、水蒸気、二酸化炭素、酸素、空気などが用いられ、これらの複数種を混合したものでもよい。本発明において、改質ガス化剤とは、合成ガスの原料となる炭化水素を部分酸化する際の酸素源となる酸化剤を意味する。
【0035】
具体的な反応条件は、温度873〜1373K、好ましくは923〜1323K、更に好ましくは973〜1273Kであり、導入ガス全流量F(ml/hr)と触媒重量W(g)との比である、F/Wが0〜500000(ml/g・hr)の範囲内に設定される。触媒配置は、固定床、流動床など周知の形態を任意に選択できる。このようにして得られた合成ガスは、各種工業原料を効率よく合成するのに好適なものとして使用される。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、次のような効果が奏される。
1)結晶水や水酸基を含まない、結晶化度の高い部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することができる。
2)粒子径50nm以下の単結晶性の斜方晶部分置換型チタン酸カルシウム微粒子と粒子径10nm以下のニッケル触媒からなる部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造し、提供することができる。
3)表面積が70平方メートル/g以上の高表面積の触媒を提供することができる。
4)本発明の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒微粒子は、天然ガスなどの炭化水素を改質する際に用いられる改質能にすぐれた実用的な高性能触媒に適用できる。
5)当該部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を用いた効率的な合成ガスの製造技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
(1)流通式水熱合成反応装置
本実施例では、図1に示す流通式水熱合成反応装置を用いた。
まず、製造法(一)としては、図1の流通式水熱合成反応装置において、ガラス製容器内のチタニアゾル溶液、硝酸カルシウム水溶液、硝酸ストロンチュウム水溶液、硝酸鉄水溶液の各金属イオン含有混合水溶液の原料混合溶液(Metal salt solution)1、水酸化カリウム水溶液(Alkali solution)3を、高速液体クロマトグラフィー用無脈流高圧ポンプ2と4により、各流量10ml/minで送液した。硝酸ニッケル水溶液9を、別の液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ10により、流量10ml/minで送液した。
【0039】
一方、蒸留水(Distilled water)槽5の蒸留水は、別の液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ6により、流量55ml/minで、管型電気炉(Heater)7に送液され、そこで、蒸留水は、原料溶液の加熱に必要な超臨界水とした。金属イオン含有混合水溶液と、水酸化カリウム水溶液は、混合点(Mixing point)1にて混合され、前記超臨界水と、混合点(Mixing point)2にて接触し、急速に反応温度まで昇温させ、水熱反応を開始させた。
【0040】
前記反応液は、管状の電気炉によって、一定温度に保持された反応管(Reactor)8に一定時間滞在後、混合点(Mixing point)3にて、硝酸ニッケル水溶液と接触させ、急速に反応温度まで昇温させ、硝酸ニッケル水溶液との水熱反応を開始させた。これらの反応液は、反応管8に一定時間滞在後、反応管出口の2重管型の熱交換器(Cooler)11により冷却した後、背圧弁(Back−pressure regulator)12にて降圧し、回収容器(Collector)13に捕集した。
【0041】
次に、製造法(二)としては、図1の流通式水熱合成反応装置において、ガラス製容器内のチタニアゾル溶液、硝酸カルシウム水溶液、硝酸ストロンチュウム水溶液、硝酸鉄水溶液、硝酸ニッケル水溶液の原料混合溶液1、水酸化カリウム水溶液3を、高速液体クロマトグラフィー用無脈流高圧ポンプ2と4により、各流量10ml/minで送液した。
【0042】
一方、蒸留水槽5の蒸留水は、別の液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ6により、流量55ml/minで、管型電気炉7に送液され、そこで、蒸留水は、原料溶液の加熱に必要な超臨界水とした。金属イオン含有混合水溶液と、水酸化カリウム水溶液は、混合点1にて混合され、前記超臨界水と、混合点2にて接触し、急速に反応温度まで昇温させ、水熱反応を開始させた。
【0043】
前記反応液は、管状の電気炉によって、一定温度に保持された反応管8に一定時間滞在後、反応管出口の2重管型の熱交換器11により冷却した後、背圧弁12にて降圧し、回収容器13に捕集した。
【0044】
(2)触媒の合成
流通式水熱合成反応装置により、チタニアゾル、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチュウム、硝酸鉄、及び、水酸化カリウムの各原料溶液の濃度が、それぞれ、0.045M、0.04M、0.01M、0.005M、1.00Mで、これらの混合塩溶液と、水酸化カリウム溶液を、各流量10ml/minで送液し、反応温度400℃、反応圧力30MPa、滞在時間11秒の条件で、一方、硝酸ニッケルを、原料溶液の濃度として0.025Mで送液し、反応温度362℃、反応圧力30MPa、滞在時間0.2秒の条件で、水熱合成反応を行い、生成物として、構造が、一般式
0.5Ni/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ
(式中のδは0.05〜0.15の数である)で表される本発明製品のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を得た。
【0045】
図2に、得られた生成物の電子顕微鏡像を示す。図より、置換型チタン酸カルシウム粒子径は、50nm以下であり、粒子ひとつひとつが分離しており、凝集していないことが分かる。電子線回折像からも、これらの粒子の結晶構造は、斜方晶チタン酸カルシウムに帰属されるものであり、ストロンチウムと鉄のドーパントが、カルシウムとチタンのサイトに置換されていることが確認された。また、ニッケル触媒の粒子径は、10nm以下であり、置換型チタン酸カルシウム粒子と混ざっていた。また、本発明によって生成した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料の表面積は、91.4平方メートル/gであった。
【実施例2】
【0046】
実施例1において、硝酸ニッケルの原料溶液の濃度を0.05、0.01Mとした以外は、実施例1と同様の条件で水熱合成反応を行った。図3に、硝酸ニッケルの原料溶液の濃度を変化させたときの生成物のXRDチャート(プロファイル)を示す。いずれも、置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料ができていることが確認された。ここで、硝酸ニッケルの原料溶液の濃度を0.05、及び、0.01Mとした条件で水熱合成反応を行って生成した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料の表面積は、それぞれ117.8、及び、75.5平方メートル/gであった。
【実施例3】
【0047】
流通式水熱合成反応装置により、チタニアゾル、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチュウム、硝酸鉄、硝酸ニッケル、及び、水酸化カリウムの各原料溶液の濃度が、それぞれ、0.045M、0.04M、0.01M、0.005M、0.025M、1.00Mで、これらの混合塩溶液と水酸化カリウム溶液を、各流量10ml/minで送液し、反応温度400℃、反応圧力30MPa、滞在時間11秒の条件で、水熱合成反応を行い、生成物として、基本構造が、一般式
0.5Ni/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ
(式中のδは0.05〜0.15の数である)で表される本発明製品のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を得た。
【0048】
図4に、得られた生成物の電子顕微鏡像を示す。図より、置換型チタン酸カルシウム粒子径は、50nm以下であり、粒子ひとつひとつが分離しており、凝集していないことが分かる。電子線回折像からも、これらの粒子の結晶構造は、斜方晶チタン酸カルシウムに帰属されるものであり、ストロンチウムと鉄のドーパントが、カルシウムとチタンのサイトに置換されていることが確認された。また、ニッケル触媒の粒子径は、10nm以下であり、置換型チタン酸カルシウム粒子と混ざっていた。また、本発明によって生成した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料の表面積は、99.02平方メートル/gであった。
【実施例4】
【0049】
実施例3において、硝酸ニッケルの原料溶液の濃度を0.05、0.01Mとした以外は、実施例3と同様の条件で水熱合成反応を行った。図5に、硝酸ニッケルの原料溶液の濃度を変化させたときの生成物のXRDチャート(プロファイル)を示す。いずれも、置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料ができていることが確認された。
【実施例5】
【0050】
実施例1に示した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の19〜150mgを、石英反応管に充填、固定し、流通式水熱合成反応装置により、反応評価を行った。反応評価に先立ち、触媒を、反応に用いる炭化水素(CH)気流中に、1173Kで、7.5〜60分間保持し、触媒の活性化処理を行った。反応評価は、873〜1173Kにおいて、導入ガス全流量F(ml/hr)と、触媒重量W(g)との比であるF/Wが、35000〜280000(ml/g・hr)にて炭化水素を供給した時の、反応管出口ガスの分析から、触媒の活性を評価した。生成物は、一酸化炭素と水素が大部分であり、他は、少量の水と二酸化炭素であった。
【0051】
図6に、F/Wに対する、873〜1173Kにおける、CH転化率を示した。反応中のCH転化率、CO選択率及びH/CO比は、それぞれ7〜100%、94〜99%及び1.8〜2.0であった。ここで、CH転化率は、CHの供給量と排出量の差を、供給量で除したものである。また、1173Kにおいて、6hr、触媒反応の実験を実施した後、回収された触媒サンプルには、反応前の触媒重量の0.9wt%となる、ごく微少な炭素の析出が観察された。
【実施例6】
【0052】
実施例3に示した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の19〜150mgを、石英反応管に充填、固定し、流通式水熱合成反応装置により、反応評価を行った。反応評価に先立ち、触媒を、反応に用いる炭化水素(CH)気流中に、1173Kで、7.5〜60分間保持し、触媒の活性化処理を行った。反応評価は、873〜1173Kにおいて、導入ガス全流量F(ml/hr)と、触媒重量W(g)との比である、F/Wが35000〜280000(ml/g・hr)にて炭化水素を供給した時の、反応管出口ガスの分析から、触媒の活性を評価した。生成物は、一酸化炭素と水素が大部分であり、他は、少量の水と二酸化炭素であった。
【0053】
図7に、F/Wに対する、873〜1173Kにおける、CH転化率を示した。反応中のCH転化率、CO選択率及びH/CO比は、それぞれ5〜100%、89〜99%及び1.9〜2.0であった。ここで、CH転化率は、CHの供給量と排出量の差を供給量で除したものである。また、1173Kにおいて、6hr、触媒反応の実験を実施した後、回収された触媒サンプルには、反応前の触媒重量の0.4wt%となる、ごく微少な炭素の析出が観察された。
【0054】
比較例1
ゾルゲル法により、触媒成分の原液を、以下の手順で調製した。クエン酸63gとエチレングリコール56mlを、約350mlの水に溶かし、この水溶液に、炭酸カルシウム10gを徐々に溶解後、全量を水で1,000mlとした溶液を、カルシウム原液とした。クエン酸63gとエチレングリコール56mlを、約350mlの水に溶かし、この水溶液に、炭酸ストロンチュウム14.76gを徐々に溶解後、全量を水で1,000mlとした溶液を、ストロンチュウム原液とした。
【0055】
クエン酸105gとエチレングリコール112mlを、約350mlの水に溶かし、この水溶液に、オルトチタン酸テトライソプロピル28.4gを加えた。溶液を激しく撹拌すると、生じた白色沈殿は、徐々に溶解して、透明な溶液となった。これに、水を加えて、全量を500mlとしたものを、チタン原液とした。クエン酸42gとエチレングリコール84mlを、約200mlの水に溶かし、この水溶液に、クエン酸鉄42.0gを溶解後、全量を水で500mlとした溶液を、鉄原液とした。
【0056】
クエン酸252gとエチレングリコール336mlを、約600mlの水に溶かし、この水溶液に、塩基性炭酸ニッケル4水和物50.0gを溶解後、全量を水で1,000mlとした溶液を、ニッケル原液とした。このようにして得られた原液から、次の手順で、触媒を調製した。カルシウム原液400ml、ストロンチウム原液100ml、チタン原液225ml、鉄原液25ml、及びニッケル原液125mlを、混合し、ロータリエバポレーターで濃縮した後に、ホットプレート上で乾固した。これを、電気炉に入れて、空気中500℃に加熱して、5時間焼成した。
【0057】
ここで得られた固形物を、乳鉢で粉末にし、良く混合した。再度、空気中850℃で、5時間焼成し、基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ
(式中のδは0.05〜0.15の数である)で表される、部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を得た。ゾルゲル法により調製した置換型チタン酸カルシウムの粒子径は、100nm以上と大きく、不定形であった。また、その表面積は、6.13平方メートル/gと、低い値しか得られなかった。
【0058】
比較例2
比較例1に示した部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を用いて、実施例5及び実施例6に示したものと同じ方法により、触媒反応の実験を実施した。図8に、導入ガス全流量F(ml/hr)と、触媒重量W(g)との比であるF/Wに対する、873〜1173Kにおける、CH転化率を示した。反応中のCH転化率、CO選択率及びH/CO比は、それぞれ、5〜99%、79〜99%及び1.7〜2.0であった。
【0059】
本発明製品を用いた実施例5及び実施例6に示したものより、反応温度が、より高温か、あるいは、F/Wがより小さくなければ、充分な改質能を示すことができなかった。また、1173Kにおいて、6hr、触媒反応の実験を実施した後、回収された触媒サンプルには、反応前の触媒重量の0.5wt%となる、ごく微少な炭素の析出が観察された。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を、図面により具体的に説明したが、本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲においてこれらの実施例における変更や追加があっても、本発明の範囲に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述したように、本発明は、部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料及びその製造方法に係るものであり、本発明により、例えば、部分置換型チタン酸カルシウムを担体とした触媒の調製の際に、結晶化度向上のための加熱処理が不要であり、触媒の反応性に大きな影響を及ぼす高表面積化が可能となる。本発明によれば、結晶化度が高く、かつ表面積が75〜120平方メートル/g程度の部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒材料を、比較的低温で、かつ、短時間に、簡単に製造することができる。本発明の部分置換型チタン酸カルシウム微粒子を使用することにより、天然ガスなどの改質用触媒として、ニッケルを担持することで、触媒の表面積が70平方メートル/g以上で粒子サイズが数十ナノメートル程度のものを調製することができる。
【0062】
本発明は、改質用触媒として、本発明による部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を用いた合成ガスの製造方法を提供することを可能とするものであり、本発明によれば、例えば、従来のゾルゲル法より、反応温度がより低温でも、あるいは、導入ガス全流量Fと触媒重量Wとの比である、F/Wがより大きくても、すぐれた改質能を示すことができる。本発明は、各種工業原料を効率よく合成するのに好適な合成ガスを製造することを可能とする改質用触媒を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】流通式水熱合成反応装置を示す。
【図2】実施例1に示した0.5Ni/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ生成物の電子顕微鏡像を示す。
【図3】実施例1に示したNi/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ生成物のXRDチャートを示す。
【図4】実施例3に示した0.5Ni/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ生成物の電子顕微鏡像を示す。
【図5】実施例3に示したNi/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δ生成物のXRDチャートを示す。
【図6】実施例1に示した本発明のNi/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δを改質触媒として用いたメタンの部分酸化反応におけるCH転化率を示す。
【図7】実施例3に示した本発明のNi/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δを改質触媒として用いたメタンの部分酸化反応におけるCH転化率を示す。
【図8】比較例2に示したゾルゲル法によるNi/Ca0.8Sr0.2Ti0.9Fe0.13−δを改質触媒として用いたメタンの部分酸化反応におけるCH転化率を示す。
【符号の説明】
【0064】
1 原料混合溶液1
2 液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ
3 水酸化カリウム水溶液
4 液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ
5 蒸留水槽
6 液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ
7 電気炉
8 反応管
9 ニッケル水溶液
10 液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ
11 二重冷却管
12 背圧弁
13 収容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒であって、
上記Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δは、一次粒子径が0超〜50nmの小さい微粒子の担持体であり、該担持体に、一次粒子径が0超〜10nmで、原子比Ni/(Ca+Sr)が0.2〜1.0であるNi触媒を担持し、少なくとも表面積が70平方メートル/gの高表面積で、凝集がなく、結晶化度が高い、高結晶性のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒。
【請求項2】
Ni触媒を担持したカチオン部分置換型チタン酸カルシウムが、単一の結晶構造を有している、請求項1に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒。
【請求項3】
Ni触媒の一次粒子径が、0超〜10nmである、請求項1に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒。
【請求項4】
チタニウム化合物水溶液、カルシウム塩水溶液、ストロンチュウム塩水溶液、及び、鉄塩水溶液を混合し、アルカリ水溶液を添加した後、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応する工程により、基本構造が、一般式
Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム微粒子を製造し、その後、ニッケル塩水溶液を添加し、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応することにより、基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することを特徴とするカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
【請求項5】
チタニウム化合物水溶液、カルシウム塩水溶液、ストロンチュウム塩水溶液、鉄塩水溶液、及び、ニッケル塩水溶液を混合し、アルカリ水溶液を添加した後、亜臨界ないし超臨界状態の水中にて水熱反応する工程により、基本構造が、一般式
Ni/Ca0.8Sr0.2Ti1−xFe3−δ
(式中のxは0.1〜0.3、δは0.05〜0.15の数である)で表されるカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を製造することを特徴とするカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
【請求項6】
水熱反応の水熱処理温度が、高くても400℃で、反応圧力が、高くても35MPaである、請求項4又は5に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
【請求項7】
水熱反応の水熱処理時間が、0超〜20秒である、請求項4又は5に記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載のカチオン部分置換型チタン酸カルシウム担持ニッケル触媒を用いて、炭化水素と、改質ガス化剤から、一酸化炭素と水素の混合ガスからなる合成ガスを得ることを特徴とする合成ガスの製造方法。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−110671(P2010−110671A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283741(P2008−283741)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、平成17年度第2回産業技術研究助成事業「同一組成型セラミックスメンブレンリアクターを用いた天然ガスの新規変換システムの提案に関する研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】