説明

改質装置およびその制御装置

【課題】改質器の起動昇温時における改質器バーナの失火および着火に伴う温度変化に伴って、改質器やバーナ収容部に発生する熱疲労を防止する。
【解決手段】原燃料ガスを水蒸気改質するための改質器3と、改質器3を加熱する改質器バーナ3aと、改質器温度を計測する改質器温度計測手段3bと、改質器3に接して設けられるバーナ収容部3dと、改質器バーナ3aの失火を検出する失火検出手段Sと、改質器バーナ3aを着火させる着火手段3cと、失火検出手段Sが改質器バーナ3aの失火を検出すると、再着火させる着火リトライ動作を着火手段3cに実施させる着火制御手段Gとを備え、着火制御手段Gは、着火リトライ動作の許容回数を、改質器バーナ3aの失火が検出されたときの改質器3の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定し、着火リトライ動作の回数を許容回数以下の回数に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、改質器を加熱するための改質器バーナと、改質器の温度を計測する改質器温度計測手段と、改質器に接して設けられ、改質器バーナを収容するバーナ収容部と、改質器バーナの失火を検出する失火検出手段と、改質器バーナを着火させる着火手段と、失火検出手段が改質器バーナの失火を検出すると、改質器バーナを再着火させる着火リトライ動作を着火手段に実施させる着火制御手段とを備える改質装置およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の改質装置として、例えば、特許文献1には、燃料電池に改質ガスを供給する改質装置において、その改質器に備えられたバーナ等の失火を、バーナ収容部の下流の排気ガスの酸素濃度を酸素センサによって検出することで判定し、失火している場合には、着火手段による着火動作が行なわれる改質装置が開示されている。
【0003】
このように、酸素濃度を検出して失火の判定を行なうと、酸素濃度変化の検出が温度変化の検出と比べて速いため、温度変化に基づいて失火を検出する場合に比べて応答性よく失火の判断をして着火動作ができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−14302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、特許文献1に開示の改質器は、バーナ収容部での燃焼熱を効率的に改質器へ伝達するため、改質ガスが生成される改質器と燃焼領域であるバーナ収容部とが隣接されて一体となって設けられている。従って、特許文献1に開示の改質器において、昇温時に発生した失火に対して再度の着火動作を行なう場合、例えば、改質温度に近い温度にまで昇温された状態で失火が発生すると、バーナ収容部や改質器の外壁面の温度が、大気中への放熱により急速に低下する。この温度低下状態においてバーナ収容部に再度着火されると、特に、バーナ収容部における燃焼熱の影響を直接受けるバーナ収容部の外壁面や、バーナ収容部に接する改質器の外壁面などの温度が急速に上昇する状態となる。
【0006】
このように、バーナ収容部や改質器の外壁面において、そのような急激な温度の低下および上昇が繰り返されると、改質器を構成する構成材の温度分布の高低差が激しくなり、構成材にとって大きな熱疲労の原因となる。特に、このような部材の温度変化を伴った熱疲労は、昇温過程においては、部材が高温状態にある程、顕著である。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、改質器の起動昇温時における改質器バーナの失火および着火に伴う温度変化によって改質器やバーナ収容部に発生する熱疲労を防止することができる改質装置およびその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る改質装置は、
原燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、
前記改質器を加熱するための改質器バーナと、
前記改質器の温度を計測する改質器温度計測手段と、
前記改質器に接して設けられ、前記改質器バーナを収容するバーナ収容部と、
前記改質器バーナの失火を検出する失火検出手段と、
前記改質器バーナを着火させる着火手段と、
前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出すると、前記改質器バーナを再着火させる着火リトライ動作を前記着火手段に実施させる着火制御手段とを備える改質装置であって、
前記着火制御手段は、前記改質器バーナの失火に応じて行われる前記着火リトライ動作の許容回数を、前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出したときに前記改質器温度計測手段によって計測される前記改質器の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定し、前記着火手段に実施させる前記着火リトライ動作の回数を前記許容回数以下の回数に制限する点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、改質器の昇温時において、改質器バーナに繰り返し失火が発生しても、それらの失火に対して再度着火する着火リトライ動作を行なうことができる。また、改質器やバーナ収容部においては、その温度が高くなるほど失火による温度低下および着火リトライ動作による着火による温度上昇に伴う局所的な温度差が大きくなり、それに伴って発生する熱ひずみも大きくなるが、本特徴構成によれば、着火リトライ動作の許容回数を、改質器バーナの失火を検出したときの改質器の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定されるので、高温における大きな熱ひずみの発生回数を少なくすることができる。また、着火リトライ動作の回数が許容回数以下の回数に制限されるので、失火および着火リトライ動作に伴って生じる温度変化が許容回数以下に制限され、改質器やバーナ収容部に発生する熱ひずみを抑制して、改質器やバーナ収容部の熱疲労を低減することができる。
【0010】
本発明に係る改質装置の更なる特徴構成は、前記着火制御手段は、前記改質器温度計測手段によって計測される温度の範囲を複数の温度範囲に分け、当該複数の温度範囲のうち、高い方の温度範囲ほど前記許容回数を少なく設定する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、改質器温度の温度範囲を複数に分けることによって、明確かつ簡単に許容回数を設定することができる。さらに、高い方の温度範囲ほど許容回数を少なく設定するので、設定された許容回数によって温度が高くなるほど着火リトライ動作の回数が制限され、失火および着火によって改質器やバーナ収容部に繰り返して発生する熱ひずみを抑制し、改質器やバーナ収容部の熱疲労を低減することができる。
【0012】
本発明に係る改質装置の更なる特徴構成は、前記着火制御手段は、所定の期間内における前記着火リトライ動作の回数を、前記許容回数以下の回数に制限する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、所定の期間内における着火リトライ動作の回数を許容回数以下の回数に制限するので、所定の期間内における失火および着火によって繰り返される温度変化に伴って、改質器やバーナ収容部に発生する熱ひずみの発生回数を制限して、改質器やバーナ収容部の熱疲労を低減することができる。一方で、所定の期間が経過したときには、新たな所定の期間内において着火リトライ動作を許容回数以下の回数で、繰り返し発生する失火に対して実行できる。
【0014】
本発明に係る改質装置の更なる特徴構成は、前記失火検出手段は、前記改質器の温度が、所定の温度降下速度以上となったときに失火を検出する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、改質器が所定の温度降下速度以上となったときに失火を検出するので、改質器バーナの燃焼状態を確認することなく、改質器の温度変化によって失火を直接検出することができる。また、所定の温度降下速度未満の場合は失火が検出されないので、失火によらない温度変化の範囲における温度変化を許容しつつ、失火の発生時のみに失火が検出されることを可能にしている。これにより正確に改質器バーナの失火を検出することができる。
【0016】
本発明に係る改質装置の更なる特徴構成は、前記改質器温度計測手段は、前記改質器と前記改質器バーナとの間の前記改質器側に設けられる点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、改質器温度計測手段が、特に改質器バーナの燃焼による温度変化の影響を受ける改質器と改質器バーナの間に設けられるので、その温度に基づいて着火リトライ動作の許容回数を設定することができる。例えば、改質器温度計測手段を、改質器バーナの燃焼による温度変化の影響を受ける改質器と改質器バーナの間の壁面に設けることで、この壁面の温度によって許容回数が設定される。従って、特に温度変化の影響を受ける壁面において大きな熱ひずみの発生回数を抑制して、改質器やバーナ収容部の熱疲労破壊を防止することができる。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る改質装置の制御装置の特徴構成は、原燃料ガスを水蒸気改質するための改質器を加熱するための改質器バーナと、前記改質器の温度を計測する改質器温度計測手段と、前記改質器バーナの失火を検出する失火検出手段と、前記改質器バーナを着火させる着火手段と、
前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出すると、前記改質器バーナを再着火させる着火リトライ動作を前記着火手段に実施させる着火制御手段とを備える改質装置の制御装置であって、
その特徴構成は、前記改質器バーナの失火に応じて行われる前記着火リトライ動作の許容回数を、前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出したときに前記改質器温度計測手段によって計測される前記改質器の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定し、前記着火手段に実施させる前記着火リトライ動作の回数を前記許容回数以下の回数に制限する点にある。
【0019】
改質器においては、その温度が高くなるほど改質器バーナの失火による温度低下および着火リトライ動作による着火による温度上昇に伴う局所的な温度分布が大きくなり、それに伴って大きな熱ひずみが発生するが、上記特徴構成によれば、着火リトライ動作の許容回数を、改質器の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定するので、高温における許容回数を少なく設定して、大きな熱ひずみの発生回数を少なくすることができる。また、着火リトライ動作の回数を許容回数以下の回数に制限されるので、失火および着火リトライ動作に伴って生じる温度変化が許容回数以下に制限され、改質器やバーナ収容部に発生する熱ひずみを抑制して、改質器やバーナ収容部の熱疲労を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態における改質装置を適用した燃料電池システムを示す図である。
【図2】本実施形態における着火リトライ動作を実施するプログラムのフローチャートを示す図である。
【図3】本実施形態における基準失火検出温度と許容回数の関係を示す図である。
【図4】失火の発生がない場合の改質器の昇温履歴の一例を示す図である。
【図5】失火の発生がない場合の改質器の昇温履歴の一例を示す図である。
【図6】失火が発生した場合の改質器の昇温履歴の一例を示す図である。
【図7】別実施形態における基準失火検出温度と許容回数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明に係る改質装置について説明する。
図1に示すのは、本願発明に係る改質装置を適用した改質システムの実施の形態を示す図である。本発明に係る改質装置は、温度センサ3b(改質器温度計測手段に相当)が設けられた改質器3と、改質器3を加熱するための改質器バーナ3aを収容するバーナ収容部3dと、改質器バーナ3aを着火させる点火プラグ3c(着火手段に相当)とが設けられ、さらに、制御部Hにおいて、改質器バーナ3aの失火を検出する失火検出手段Sと、改質器バーナ3aが失火したときに着火させる着火リトライ動作を点火プラグ3cに実行させる着火制御手段Gとが設けられて構成されている。また、本発明に係る改質装置の制御装置は、改質器3に設けられた温度センサ3bと、改質器バーナ3aと、改質器バーナ3aを着火させる点火プラグ3cと、制御部Hに備えられた失火検出手段Sと着火制御手段Gより構成されている。
【0022】
そして、図1に示した本願発明に係る改質装置が適用された改質システムの実施の形態においては、上述の本願発明に係る改質装置の構成に加えて、都市ガスなどの原燃料ガスの脱硫を行って改質器3に供給する脱硫器1と、改質器3における水蒸気改質反応で使用される水蒸気を改質器3に供給する水蒸気生成器5と、改質器3によって改質された改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成する一酸化炭素変成器6と、一酸化炭素変成器6を通過した改質ガス中に微量に含まれる一酸化炭素を選択酸化又は選択メタン化して、改質ガスに含まれる一酸化炭素濃度を更に低減させる一酸化炭素除去器7とが設けられている。また、この改質システムには原燃料バルブV1及び改質水蒸気バルブV2が設けられ、それらの動作を制御部Hが制御して、改質システムによる改質ガスの生成量を調整するように構成されている。
【0023】
改質器3において、温度センサ3bは改質器3内の改質触媒(図示せず)の温度を計測可能(検出可能)とするように構成されている。また、改質器3に接触する状態でバーナ収容部3dが設けられており、改質器バーナ3aによって発生する熱を効率よく改質器に伝えることができるとともに、改質器3によって原燃料の水蒸気改質を行なう改質温度にまで加熱することができる改質器バーナ3aがバーナ収容部3dに収容されている。
【0024】
改質器バーナ3aは、制御部Hによって、バーナ燃料バルブV3の開度が調整されることで流量が調整される原燃料と、バーナ空気バルブV4の開度が調整されつつブロア10を介して供給される空気(酸素)とを含む混合気を燃焼させる構成とされている。また、点火プラグ3cは図示しない電源に接続されており、制御部Hによって制御される点火タイミングで火花を発生させることができ、これにより、改質器バーナ3aに点火することが可能である。
【0025】
改質器バーナ3aが点火プラグ3cにより着火されると、改質器バーナ3aに燃料供給管8によって供給されたバーナ燃焼用燃料は燃焼して高温の燃焼ガスが発生し、この燃焼ガスによって改質器3が加熱される。また、図中においては示されていないが、改質器3が加熱した後の燃焼ガスを水蒸気生成器5に供給可能に構成することで、水蒸気生成器5において燃焼ガスと水との熱交換を行なって水蒸気を発生させることができる。
【0026】
制御部Hには、温度センサ3b、点火プラグ3c、および各バルブV1〜V4が接続されている。各バルブV1〜V4の開度を調整可能であるように構成されており、原燃料バルブV1、改質水蒸気バルブV2を制御することで改質器3に導入する原燃料ガスおよび水蒸気の流量を調整することができ、バーナ燃料バルブV3およびバーナ空気バルブV4の開度を調整することで改質器バーナ3aにおける燃焼状態を調整して、改質器3内の温度を調整することが可能である。
また、制御部Hは、点火プラグ3cを制御して火花を発生させることができ、これによって改質器バーナ3aを着火させる着火動作を行なうことができる。また、制御部Hには、温度センサ3bによって計測された改質器3の温度を記録する記録部を有するマイクロコンピュータ(図示せず)を備えている。そして、制御部Hは、温度センサ3bによる計測温度Tに基づいて失火を検出できる構造とされている。このように、温度センサ3bと制御部Hによって失火検出手段Sが構成されている。従って、制御部Hによって、失火検出手段Sによる失火検出の後に、改質器バーナ3aに着火させる着火リトライ動作を行なうことができる。ここで、着火リトライ動作とは、点火プラグ3cによって改質器バーナ3aへの着火が完了して、燃焼が開始されるまでの動作をいう。
【0027】
そして、制御部Hの着火制御手段Gは失火検出手段Sによる失火検出時に、温度センサ3bによって計測された改質器3の温度に基づいて、その改質器3の昇温過程において繰り返して発生する可能性のある失火に対して着火リトライ動作を繰り返すことを許容する許容回数Nmを設定する。また、着火制御手段Gは、前記改質器バーナの失火に応じて行われる前記着火リトライ動作の許容回数Nmを、失火検出手段Sが改質器バーナ3aの失火を検出したときに温度センサ3bによって検出される改質器3の温度が高くなるにつれて小さくする関係で設定される。これによって、改質器3の温度が高くなるにつれて、失火および着火リトライ動作に伴う、過大な熱ひずみの発生回数を制限することができ、改質器3やバーナ収容部3dに発生する熱ひずみを抑制して、それらの熱疲労を抑制することができる。
【0028】
また、制御部Hは、図3に示すように、改質器3の昇温過程において、後述する基準となる失火(基準失火という)が検出されたときの温度センサ3bによる計測温度T(基準失火検出温度という)が、所定の温度(許容回数変更温度という)未満の場合は、着火リトライを繰り返す許容回数Nmを予め定められた基準許容回数Nmsと設定し、一方、許容回数変更温度Ta以上であるときの許容回数Nmを基準許容回数Nmsよりも少なく設定された高温許容回数Nmaとして、それぞれの場合において許容回数Nmまで失火に対する着火リトライが繰り返されるように制御する。
【0029】
上記のような構成とされた改質装置によって、失火検出手段Sにより改質器バーナ3aの失火を検出する失火検出動作が行なわれ、その失火検出動作によって失火が検出された場合に、点火プラグ3cにより改質器バーナ3aに着火させる着火リトライ動作を実行することが可能となっており、また、着火リトライ動作によって着火した後において、失火検出動作によって再び失火が検出された場合には、許容回数Nmの範囲内であれば、繰り返し着火リトライ動作が実行されるように構成されている。
【0030】
以下に本実施形態における改質装置の制御装置の動作について、図2および図3を参照して詳細に説明する。制御部Hは、図示しない起動スイッチをONにすると、図2に示す処理工程を実施する。
【0031】
まず、図2の処理フローに示すように、失火検出手段Sにより改質器バーナ3aの失火を検出する失火検出動作が行なわれる。本実施形態においては、制御部Hにおいて温度センサ3bによる計測温度Tを記録しつつ温度履歴を解析して、計測温度Tの計測温度低下速度Trmと予め設定された設定温度低下速度Trsとを比較して、計測温度低下速度Trmが設定温度低下速度Trs以上である場合は失火状態にあることを検出する失火検出動作が行なわれる(#101)。
例えば、設定温度低下速度Trsは30℃/minとされ、この設定温度低下速度Trs以上の計測温度低下速度Trmが確認されたときは、改質器バーナ3aが失火状態にあるとして、改質器バーナ3aの失火を検出することとされる。また、この処理工程によって最初に検出された失火を基準失火とする。
一方で、失火が検出されなかった場合(計測温度低下速度Trmが設定温度低下速度Trs未満である場合)は、改質器バーナ3aが正常に着火していると判断して、この処理工程を終了する。
【0032】
そして、基準失火が検出された基準失火検出時tsに、温度センサ3bによって計測された改質器3の計測温度Tを基準失火検出温度Tsとする(#102)。また、許容回数Nmは、基準失火検出時tsから所定の期間であるリトライ期間P内において検出された失火に対して着火リトライ動作を実行することが許容される回数とされるので、基準失火が検出された基準失火検出時tsにリトライ期間Pを計測するリトライタイマ時間tpを、tp=0にリセットする(#102)。なお、リトライタイマ時間tpは制御部Hが有するクロック機能によってカウントされる。
【0033】
次に、基準失火検出温度Tsを許容回数変更温度Ta(所定の温度に相当:図3参照)と比較して、基準失火検出時tsに検出された失火を含めてそれ以降に検出された失火に対して着火リトライ動作が実行される上限の回数である許容回数Nmが設定される(#103)。ここで、基準失火検出温度Tsが、許容回数変更温度Ta未満の場合は、許容回数Nmを予め定められた基準許容回数Nmsとしつつリトライ期間Pを基準リトライ期間Psに設定する(#104)。一方で、基準失火検出温度Tsが許容回数変更温度Ta以上であるときは、許容回数Nmを、基準許容回数Nmsよりも少ない高温許容回数Nmaとしつつ、リトライ期間Pを高温リトライ期間Paに設定する(#105)。
【0034】
そして、例えば、この許容回数Nmの設定は、図3に示すグラフに基づいて設定される。つまり、許容回数変更温度Taを500℃とすること、基準許容回数Nmsを10回とすること、および、高温許容回数Nmaを3回とすることが予め設定されている。一方、リトライ期間Pについては任意に設定が可能であるが、本実施形態においては、許容回数Nmが小さくなるにつれて、短い期間となるように設定され、例えば、基準許容回数Nmsに対する基準リトライ期間Psを20分とし、高温許容回数Nmaに対する高温リトライ期間Paを6分とすることが予め設定されている。
従って、基準失火検出温度Tsが500℃未満の場合は許容回数Nmを10回としつつリトライ期間Pを基準リトライ期間Psである20分に設定する(#104)。一方で、基準失火検出温度Tsが500℃以上であるときは、許容回数Nmを高温許容回数Nmaである3回としつつリトライ期間Pが高温リトライ期間Paである6分に設定される(#105)。
【0035】
そして、許容回数Nmおよびリトライ期間Pが設定されると、着火リトライ回数カウント値Nを、N=0にリセットした後に、N=1として(#106、#107)、制御部Hの制御によって点火プラグ3cに点火させて1回目の着火リトライ動作を行なう(#108)。
【0036】
着火リトライ動作が行なわれると(#108)、その後に、上記のステップ#101と同様の失火検出動作が行なわれる。つまり、温度センサ3bにより計測された温度の計測温度低下速度Trmと予め設定された設定温度低下速度Trsとを比較して、計測温度低下速度Trmが設定温度低下速度Trs以上である場合は失火状態にあることを検出する失火検出動作が行なわれる(#109)。この失火検出動作(#109)は、着火リトライ動作(#108)による改質器バーナ3aの燃焼回復によって改質器3の温度上昇が確認するまでの時間をおいて行なってもよい。例えば、着火リトライ動作(#108)の一分後に失火検出動作(#109)を行なってもよい。その結果、失火が検出されなかった場合(計測温度低下速度Trmが設定温度低下速度Trs未満である場合)は、改質器バーナ3aが正常に燃焼していると判断して、ステップ#110に進む。一方で、失火が検出された場合(計測温度低下速度Trmが設定温度低下速度Trs以上である場合)は、ステップ#111に進む。
【0037】
改質器バーナ3aが正常に燃焼して、ステップ#110に進んだ場合は、リトライタイマ時間tpがリトライ期間P以内であることが確認されると、再度ステップ#109に戻る。ここで、改質器バーナ3aが正常に燃焼をしている限りは、失火検出動作(#109)とリトライタイマ時間tpがリトライ期間P以内であることの確認(#110)を繰り返すことになるが、この失火検出動作(#109)を繰り返す時間を設定可能に構成されている。例えば、一分間隔で失火検出動作(#109)を行なってもよい。一方で、リトライタイマ時間tpがリトライ期間Pを経過していることを確認すると、この処理工程を終了する。
【0038】
他方、失火が検出されて、ステップ#111に進んだ場合は、着火リトライ回数カウント値Nが許容回数Nmに到達していないことを確認する。ここで、許容回数Nmに到達していたときは、制御部Hの図示しないモニターに改質器バーナ3aが失火状態にあることを示すエラー表示を行なって(#113)処理を終了する。このとき、改質器の起動は行わないこととなる。一方、許容回数Nmに到達していないときは、ステップ#112に進んで、リトライタイマ時間tpがリトライ期間P以内であるか否かが確認される。そして、リトライ期間P以内であることが確認されると、再度ステップ#107およびステップ#108に進んで再度の着火動作が行なわれる。一方で、リトライタイマ時間tpがリトライ期間Pを経過している場合は、着火動作を行うために再度ステップ107に進むことなく、制御部Hの図示しないモニターに改質器バーナ3aが失火状態にあることを示すエラー表示を行なって(#113)処理を終了する。
【0039】
次に、上述した処理工程を図4〜図6に示す改質器3の起動昇温時の温度履歴に基づいて説明する。図4〜図6は、横軸を改質器3の昇温開始からの時間tとし、縦軸を温度センサ3bによる計測温度Tとして、改質器3の温度履歴が示されている。図4および図5に示すのは、改質器3の起動昇温時に改質器バーナ3aが失火しない場合の昇温履歴の一例である。ここで図4に示すのは昇温過程を1次昇温過程と2次昇温過程との2段階の昇温過程としたものである。一方、図5に示すのは昇温過程を2段階としない場合の昇温履歴である。例えば、図4に示すのは、起動時の温度から300℃未満を1次昇温過程として、300℃以上より改質温度までを2次昇温過程としたものである。そして、1次昇温過程においては温度上昇率を低くして、2次昇温過程において温度上昇率を高くして加熱している。このようにすることで、バーナ収容部3dや改質器3の局所的な加熱を防止することができ、図5に示す昇温過程を分けない場合に比べて、均一な加熱状態を実現することができる。
【0040】
一方、図6に示すのは、図4に示したように昇温過程を1次昇温過程と2次昇温過程に分けて改質器3の起動昇温を行なっている場合に、改質器バーナ3aの失火が発生したときの昇温履歴を示す図である。この場合、予め制御部Hにおいて、許容回数変更温度Taが500℃に設定されて、失火状態であることを判断する設定温度低下速度Trsを30℃/minとして設定されている。また、基準許容回数Nmsは10回、高温許容回数Nmaは3回、基準リトライ期間Psは20分とされている。
【0041】
図6において、横軸の時間t上のある時刻を示す失火検出時t1は、失火を検出した時刻であり、図2のフローチャートで示した処理工程においては、最初の失火である基準失火が検出された時刻を示す。従って、この失火検出時t1は基準失火検出時tsとされる。そして、この基準失火検出時tsにおいて、リトライ期間Pを測定するリトライタイマ時間tpがtp=0にリセットされる。
そして、基準失火検出時tsの改質器3の計測温度Tである基準失火検出温度Tsは500℃(許容回数変更温度Ta)未満であるため、図3に示すグラフに基づいて、許容回数Nmを基準許容回数Nmsの10回に設定されつつ、リトライ期間Pが基準リトライ期間Psとしての20分に設定される。
【0042】
図中、失火検出時t2〜t5は2回目〜5回目の失火が検出された時刻を示している。ここで、5回目の失火t5までのすべての失火は、失火検出時t1(基準失火検出時ts)からリトライ期間Pである20分以内に検出されたものであり、かつ、許容回数Nmである10回以下の失火であるので、これらのすべての失火に対して着火リトライ動作が行なわれる。
【0043】
その後、5回目の失火に対する着火リトライ動作が行われた後は、失火が発生することなく2次昇温過程に移行して520℃程度まで昇温したところで再度の失火が失火検出時t6において検出されている。ここで、失火検出時t1を基準失火検出時tsとした処理工程において設定されたリトライ期間Pである20分がすでに経過しているので、失火検出時t1を基準失火検出時tsとした処理工程はすでに終了している。従って、失火検出時t6の時刻において検出された失火が、新たな処理工程における最初の失火である基準失火となるため、この失火検出時t6を基準失火検出時tsとして新たな処理工程が開始される。そして、この基準失火検出時tsにおいて、リトライ期間Pを測定するリトライタイマ時間tpがtp=0にリセットされる。また、基準失火検出時tsの改質器3の計測温度Tである基準失火検出温度Tsは520℃程度であり、500℃(許容回数変更温度Ta)以上であるため、例えば、図3のグラフに基づいて、許容回数Nmを基準許容回数Nmsの10回より少ない高温許容回数Nmaとして予め決められた3回に設定され、さらに、リトライ期間Pは高温リトライ期間Paとして予め決められた6分に設定される。
【0044】
そして、図中の失火検出時t7およびt8は、この昇温過程においては7回目および8回目の失火が検出された時刻を示しているが、失火検出時t6が基準失火検出時tsとなっている新たな処理工程においては、2回目および3回目に検出された失火となる。
従って、失火検出時t7およびt8における失火は、許容回数Nmである3回以下であり、かつ、基準失火検出時tsからリトライ期間Pである6分以内に検出されたものであるので失火検出時t7およびt8の失火に対して着火動作が行なわれる。
【0045】
また、図6において、破線で示した温度履歴によって失火検出時t9における失火を示しているが、失火検出時t9における失火は、基準失火検出時tsからリトライ期間Pである6分以内に検出されたものであるが、許容回数Nmである3回を超えた4回目の失火であるので、この失火に対しては着火リトライ動作を行なわず、制御部Hの図示しないモニターに改質器バーナ3aに着火が正常になされておらず、失火状態にあることを示すエラー表示を行なって処理工程を終了する。
【0046】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態においては、図3に示すように、基準失火検出温度Tsが許容回数変更温度Ta以上である場合は許容回数Nmを高温許容回数Nmaに設定し、許容回数変更温度Ta未満である場合は許容回数Nmを基準許容回数Nmsに設定して、改質器3が昇温する温度範囲であり、基準失火検出温度Tsが検出される温度範囲を2つの温度範囲に分けた状態で許容回数Nmを設定したが、これに限らず、2以上の許容回数変更温度を設けることで、改質器3が昇温する温度範囲を許容回数変更温度によって3以上の複数の温度範囲に分けて、それぞれの温度範囲ごとに最適な許容回数Nmを設定してもよい。
【0047】
(B)上記実施形態においては、基準失火検出温度Tsが許容回数変更温度Ta以上である場合は許容回数Nmを高温許容回数Nmaに設定したが、これに限らず、高温許容回数Nmaの決定については、図7において破線で示したように、基準失火検出温度Tsが許容回数変更温度Taより高くなるに伴って、高温許容回数Nmaが基準許容回数Nmsより減少する関係となる線図を求めて、その線図によって求められる高温許容回数Nmaの小数部分を切り捨てて、図7において実線で示したように高温許容回数Nmaを決定するように構成してもよい。これにより、詳細に区切られた基準失火検出温度Tsの温度範囲に対して高温許容回数Nmaの設定が可能となり、この場合、図中に示すように、基準失火検出温度Tsが互いに近接する温度としたTs1およびTs2において、例えば、それぞれの高温許容回数Nmaを3回および2回として異なる値に設定することができる。
【0048】
(C)上記実施形態においては、温度センサ3bは改質器3内の改質触媒の温度を計測可能とするように構成されたが、これに限らず、温度センサ3bが改質器3と改質器バーナ3aが収容されているバーナ収容部3dとの間の改質器3の壁面3eに設けられてもよい。
【0049】
(D)上記実施形態においては、温度センサ3bは改質器3の内部の温度を計測可能とするように構成されたが、これに限らず、温度センサ3bは改質器3の外部に設けられていてもよく、例えば、バーナ収容部3dの内部に設けられて、バーナ収容部3d内の温度を計測することによって、改質器3の温度を予測して検出可能に構成されていてもよい。
【0050】
(E)上記実施形態においては、改質器3内の温度を計測可能な温度センサ3bによる計測温度Tの計測温度低下速度Trmによって失火を検出したが、これに限らず、例えば、バーナ収容部3dの内部に温度センサを設け、その温度センサによる計測温度Tによって失火を検出してもよい。
【0051】
(F)上記実施形態においては、設定温度低下速度Trsは30℃/minとされ、この設定温度低下速度Trs以上の計測温度低下速度Trmが確認されたときは、改質器バーナ3aの失火を検出されたが、これに限らず、設定温度低下速度Trsは30℃/min以外の温度に設定することができ、例えば、設定温度低下速度Trsを30℃/minより遅い値(小さい値)とすることで、失火をより早く検出することができる。一方、設定温度低下速度Trsを30℃/minより速い値(大きい値)とすることで、失火が検出されない温度変化範囲を拡大して、失火に基づかない温度変化を許容する範囲を広げ、失火の発生時のみに失火を正確に検出することができる。
【0052】
(G)上記実施形態においては、失火の検出は、温度センサ3bにより計測された温度の計測温度低下速度Trmが予め設定された設定温度低下速度Trs以上である場合は失火状態にあることを検出することとしたが、これに限らず、例えば、改質器バーナ3aにおける火炎を直接検出できる火炎検出装置(フレームロッドなど)をバーナ収容部3d内に設け、これによって失火を検出することとしてもよい。
【0053】
(H)上記実施形態においては、リトライ期間Pが、許容回数Nmが小さくなるにつれて、短い期間となるように設定され、例えば、基準許容回数Nms(10回)に対する基準リトライ期間Psを基準失火検出時tsから20分間とし、高温許容回数Nma(3回)に対する高温リトライ期間Paを基準失火検出時tsから6分間とすることが予め設定されているが、これに限らず、リトライ期間Pが、基準失火検出時tsから改質温度に到達して安定するまでの期間となるように構成されていてよい。
【0054】
(I)上記実施形態においては、本願発明に係る改質装置と、その改質装置によって改質された改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成する一酸化炭素変成器6と、一酸化炭素変成器6を通過した改質ガス中に微量に含まれる一酸化炭素を更に低減させる一酸化炭素除去器7とを備えた改質システムで、例えば、固体高分子型燃料電池に適用される改質システムとしたが、これに限らず、一酸化炭素除去器7を持たない改質システムを、本願発明に係る改質装置と一酸化炭素変成器6とによって構成して、固体酸化物型燃料電池用の改質システムに採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、改質器の起動昇温時における改質器バーナの失火および着火に伴う温度変化によって改質器やバーナ収容部に発生する熱疲労を防止することができる改質装置およびその制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
3 改質器
3a 改質器バーナ
3b 温度センサ(改質器温度計測手段)
3c 点火プラグ(着火手段)
3d バーナ収容部
G 着火制御手段
Nm 許容回数
P リトライ期間(所定の期間)
S 失火検出手段
Ta 許容回数変更温度(所定の温度)
Trs 設定温度低下速度(所定の温度降下速度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、
前記改質器を加熱するための改質器バーナと、
前記改質器の温度を計測する改質器温度計測手段と、
前記改質器に接して設けられ、前記改質器バーナを収容するバーナ収容部と、
前記改質器バーナの失火を検出する失火検出手段と、
前記改質器バーナを着火させる着火手段と、
前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出すると、前記改質器バーナを再着火させる着火リトライ動作を前記着火手段に実施させる着火制御手段とを備える改質装置であって、
前記着火制御手段は、前記改質器バーナの失火に応じて行われる前記着火リトライ動作の許容回数を、前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出したときに前記改質器温度計測手段によって計測される前記改質器の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定し、前記着火手段に実施させる前記着火リトライ動作の回数を前記許容回数以下の回数に制限する改質装置。
【請求項2】
前記着火制御手段は、前記改質器温度計測手段によって計測される温度の範囲を複数の温度範囲に分け、当該複数の温度範囲のうち、高い方の温度範囲ほど前記許容回数を少なく設定する請求項1に記載の改質装置。
【請求項3】
前記着火制御手段は、所定の期間内における前記着火リトライ動作の回数を、前記許容回数以下の回数に制限する請求項1又は2に記載の改質装置。
【請求項4】
前記失火検出手段は、前記改質器の温度が所定の温度降下速度以上となったときに失火を検出する請求項1〜3の何れか一項に記載の改質装置。
【請求項5】
前記改質器温度計測手段は、前記改質器と前記改質器バーナとの間の前記改質器側に設けられる請求項1〜4の何れか一項に記載の改質装置。
【請求項6】
原燃料ガスを水蒸気改質するための改質器を加熱するための改質器バーナと、前記改質器の温度を計測する改質器温度計測手段と、前記改質器バーナの失火を検出する失火検出手段と、前記改質器バーナを着火させる着火手段と、
前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出すると、前記改質器バーナを再着火させる着火リトライ動作を前記着火手段に実施させる着火制御手段とを備える改質装置の制御装置であって、
前記改質器バーナの失火に応じて行われる前記着火リトライ動作の許容回数を、前記失火検出手段が前記改質器バーナの失火を検出したときに前記改質器温度計測手段によって計測される前記改質器の温度が高くなるにつれて少なくする関係で設定し、前記着火手段に実施させる前記着火リトライ動作の回数を前記許容回数以下の回数に制限する改質装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−201538(P2012−201538A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66397(P2011−66397)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】