説明

改質装置および燃料電池システム

【課題】改質装置において伝熱板の受ける熱応力に伴う伝熱板の面に沿う方向への変形による耐久性能低下を抑制することにより、改質装置の寿命を長く維持する技術を提供すること。
【解決手段】伝熱板40の一側面側に改質室41が設けられ、伝熱板40の他側面側に、燃焼室42が設けられ、燃焼室42で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、起動動作時における伝熱板40の温度と改質室形成部材41aの温度との許容温度差との関係指標を備え、実際の改質装置の発停回数を求め、対応する許容温度差を関係指標から求め、起動動作時に、求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、伝熱板40の温度と改質室形成部材41aの温度との温度差を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱板の一側面側に触媒が装入された改質室が設けられ、前記伝熱板の他側面側に、内部で発生する燃料の燃焼熱で前記伝熱板を介して前記改質室を加熱する燃焼室が設けられ、
前記改質室が、皿状の改質室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成され、前記燃焼室が、皿状の燃焼室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成された改質装置の運転方法、改質装置および、このような改質装置を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような改質装置は、バーナの燃焼ガスを燃焼室に通流させて、伝熱板を介して改質室内の改質触媒を加熱する状態で、改質室に、改質処理用の水蒸気を混合させた炭化水素系またはアルコール系の原燃料を供給して、原燃料を改質処理する。このような改質処理により、原燃料から水素含有ガスを得ることができ、例えば、燃料電池システムにて発電反応用として用いられる燃料ガスを生成する。
通常、改質触媒は粒状に構成され、多数の粒状の改質触媒が改質室内に装入されることになる。
【0003】
従来の改質装置は、単に、平板状の伝熱板の両面に改質室と燃焼室とを設けて構成していた。つまり改質室は、皿状の室形成部材の周縁部を伝熱板の一側面側に溶接接続等により固着して構成し、燃焼室は、皿状の室形成部材の周縁部を伝熱板の他側面側に溶接接続により固着して構成し、燃焼室内に、その燃焼室内にてガス燃料を燃焼させるガスバーナを設けて、そのガスバーナの燃焼ガスを加熱用流体として燃焼室内に通流させるようになっていた。
【0004】
しかしながら、前記伝熱板は、直接ガスバーナにより加熱される構成をとるため、特に、改質装置の起動時には、大きな熱変形が発生する。この熱変形は、燃焼室および改質室を備えた構造体全体に熱ひずみを発生することとなり、改質装置を含む構造体全体の耐久性能を決める要因となる。そのため、前記伝熱板の変形を防ぐためにその伝熱板の変形防止部材を設けることが考えられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4183448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の技術により伝熱板の面に交差する方向への変形による問題を低減することはできても、伝熱板の面に沿う方向への変形による問題は解消しえていない。
【0007】
すなわち、前記伝熱板がその伝熱板の面に沿う方向に変形(膨張)すると、その伝熱板と溶接接続されている改質室形成部材や燃焼室形成部材との温度差に基く膨張変形度合いの違いに基き、その溶接接続部分に応力が集中する。この応力は、前記改質室形成部材や燃焼室形成部材の皿状の部分の弾性変形により吸収することにより形状を維持し、破壊につながらないように作用するものの、長期にわたって繰り返し応力を受けると、溶接接続により固着してある部分の疲労破壊が生じ易くなるという問題がある。このような問題については、特に考慮されていないというのが現状である。
【0008】
したがって、本発明は、改質装置において、その起動、停止時のような、伝熱板と改質装置を構成する改質室形成部材との温度差に基づいて発生する、伝熱板の面に沿う方向への変形による改質装置全体の耐久性能が低下するのを抑制することにより、改質装置の寿命を長く設定できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明に係る、
伝熱板の一側面側に触媒が装入された改質室が設けられ、前記伝熱板の他側面側に、内部で発生する燃料の燃焼熱で前記伝熱板を介して前記改質室を加熱する燃焼室が設けられ、
前記改質室が、皿状の改質室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成され、前記燃焼室が、皿状の燃焼室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成された改質装置の運転方法の特徴構成は、
前記燃焼室で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、前記起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差との関係指標を備え、
所定期間における実際の改質装置の発停回数を求めるとともに、実際の改質装置の発停回数に対応する、許容温度差を前記関係指標から求め、
前記起動動作時に、前記求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との温度差を維持することを特徴とする。
【0010】
〔作用効果1〕
この改質装置の運転方法においては、燃焼室で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、起動動作時における伝熱板温度と改質室形成部材温度との許容温度差との関係指標があらかじめ準備される。
ここで、この種の関係指標の例は、図4に示すような関係指標であり、この関係指標は、許容温度差と発停限界回数との間に一定の関係があるとの発明者らの新知見により、鋭意、実験の結果、求めた関係指標である。このような関係指標が成立する理由は、伝熱板の一方に皿状の改質室形成部材を配置し、その伝熱板と改質室形成部材の周縁部を溶接により一体固定化する構造を有し、起動時には当該伝熱板が燃焼室側から主に熱を受けるため、伝熱板の面方向に沿った膨張変形が発生し、皿状の改質室形成部材が歪むためであると発明者らは考えている。
【0011】
図4からも判明するように、発停限界回数(y)は許容温度差(x)に対してy=F(x)の線形関数として表されることが読み取れる。この関係から許容温度差を大きくとった場合は、発停限界回数は小さく制限される。一方、許容温度差を小さくとった場合は、発停限界回数は大きくできる。
【0012】
一方、本願方法にあっては、所定期間における実際の改質装置の発停回数を求め、この求められた実際の改質装置の発停回数に対応する、許容温度差を前記関係指標から求める。このようにすることで、その改質装置が実用に供されている実際の改質装置の発停回数に基づき、目標稼働期間中における(寿命までの)予想発停回数に対応する許容温度差を知ることができる。
そして、このようにして求まる許容温度差となるように、次回の起動動作時には、求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、伝熱板温度と改質室形成部材温度との温度差を維持する。
【0013】
結果、改質装置を、個々の運転状態に適合する状態で、合理的な基準に基づいて使用できる。
【0014】
〔構成2〕
上記改質装置の運転方法を実施することができる改質装置は、以下の構成とすることができる。
即ち、
伝熱板の一側面側に触媒が装入された改質室が設けられ、前記伝熱板の他側面側に、内部で発生する燃料の燃焼熱で前記伝熱板を介して前記改質室を加熱する燃焼室が設けられ、
前記改質室が、皿状の改質室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成され、前記燃焼室が、皿状の燃焼室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成された改質装置を構成するに、その特徴構成として、
前記燃焼室で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、前記起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差との関係指標を備え、
実際の改質装置の発停回数を求める発停回数積算手段と、前記発停回数積算手段に基づいて目標稼働期間中の予想発停回数を推算する予想発停回数推算手段を備えるとともに、
前記予想発停回数推算手段により予想される予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて許容温度差を前記関係指標から求める許容温度差導出手段を備え、
前記起動動作時に、前記求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との温度差を維持する起動動作時温度維持手段を備えた構成とする。
【0015】
〔作用効果2〕
この改質装置にあっても、先に説明した関係指標を備える点において、変わるところはない。
そして、発停回数積算手段が実際の改質装置の発停回数を求め、許容温度差導出手段が、発停回数積算手段により積算される実際の改質装置の発停回数から目標稼働期間中における(寿命までの)予想発停回数を推定し、この予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて許容温度差を関係指標から求める。したがって、この改質装置においても、実際の改質装置の発停回数に対応する合理的な許容温度差が求まる。
起動動作時温度維持手段は、起動動作時に、求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、伝熱板温度と改質室形成部材温度との温度差を維持することにより、改質装置を、個々の運転状態に適合する状態で、合理的な基準に基づいて使用できる。
【0016】
〔構成3〕
また、伝熱板温度を測定する第一温度センサを設けるとともに、前記改質室の改質ガス出口部温度を測定する第二温度センサを設け、前記起動動作時温度維持手段が、前記第一温度センサと前記第二温度センサとの測定温度に基づいて、起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差を前記許容温度差以下に維持する制御部を備えることが好ましい。
【0017】
〔作用効果3〕
この構成では、第一温度センサにより測定される温度で伝熱板温度を代表し、第二温度センサにより測定される温度で改質室形成部材温度を代表して、比較的温度測定が容易な位置で、代表温度の測定を行って、改質装置を、個々の運転状態に適合する状態で、合理的な基準に基づいて使用できる。
【0018】
〔構成4〕
また、改質装置の目標稼働期間中における所定の期間にわたって前記発停回数積算手段により発停回数を積算し、前記発停回数に基づいて予想発停回数推算手段により目標稼働期間中の予想発停回数を推算するとともに、許容温度差を前記予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて前記関係指標から求め、起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差を前記許容温度差以下に維持する制御部を備えることが好ましい。
【0019】
〔作用効果4〕
この構成によると、予想発停回数は、目標稼働期間中における(寿命までの)所定の期間における発停回数から推算することができるから、許容温度差をその予想発停回数に基き前記予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて前記関係指標から求めることができる。従って、簡易的に求められる予想発停回数に基き改質装置を、個々の運転状態に適合する状態で、合理的な基準に基づいて使用できる。
【0020】
〔構成5〕
また本発明の燃料電池システムの特徴構成は、上記改質装置を備え、前記許容温度差に基き、前記改質装置の起動時の前記燃焼室に対する供給燃料量または空燃比を変更可能に構成してある点にある。
【0021】
〔作用効果5〕
すなわち、上記改質装置を備え、前記許容温度差を設定してあるから、前記改質装置の寿命を、発停頻度によらず、ほぼ一定に設定することができ、燃料電池システム全体としての寿命が、前記改質装置の寿命によって大きく異なってしまうのを防止することができる。この許容温度差に基く改質装置の起動条件は、前記燃焼室に対する供給燃料量または空燃比を変更することによって行えるから、確実に前記改質装置の疲労度合いを制御して、適切な改質装置寿命を設定することができる。
【発明の効果】
【0022】
したがって、改質装置の寿命を、その使用形態の相違に基く発停頻度によらず一定に設定することができるので、前記改質装置として安定した実績を示すことができるようになり、その改質装置を組み込んだ燃料電池システムとしても、使用形態の相違に基く寿命のばらつきを少なく抑制することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の燃料電池システムの概略図である。
【図2】本発明の改質装置の斜視図である。
【図3】本発明の改質装置の縦断面図である。
【図4】改質装置の寿命までの発停回数と許容温度差との関係を示す図である。
【図5】本発明のその他の実施形態における燃料電池システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の改質装置および燃料電池システムを説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0025】
〔燃料電池システム〕
本発明の燃料電池システムは、図1に示すように、伝熱板を挟んで2つの皿状室を接続して形成してなる複数の反応器ユニットを有し、これら反応器ユニットから脱硫装置1、水蒸気生成装置2、原燃料ガス用熱交換器3、改質装置4、変成装置5、選択酸化装置6、改質ガス用熱交換器7を形成する。これら複数の反応器ユニットは、適宜、断熱部を介在して、断熱部、水蒸気生成装置2、断熱部、改質装置4、断熱部、改質ガス用熱交換器7、断熱部、脱硫装置1、原燃料ガス用熱交換器3、変成装置5、選択酸化装置6の順に積層配置される。これにより、前記選択酸化装置6から排出される燃料水素ガスを前記燃料電池部8で利用可能に接続されるとともに、燃料電池部8からのオフガスを前記改質装置4の燃焼室42で燃焼させ、その排ガスの排熱を水蒸気生成装置2に利用可能に構成してある。
【0026】
〔ガス処理用流路〕
まず、脱硫装置1から選択酸化装置6に至るガスの流路について説明する。
図1に示すように、原燃料ガス用熱交換器3の原燃料ガス通流部31に原燃料ガス供給路31aを接続して、原燃料ガスを供給する。そして、原燃料ガス通流部31、脱硫装置1、改質ガス用熱交換器7の脱硫ガス通流部71、改質装置4の改質室41、保温用通流部43、改質ガス用熱交換器7の改質ガス通流部72、原燃料ガス用熱交換器3の改質ガス通流部32、変成装置5、選択酸化装置6の順に流れるガス処理経路を形成するように接続している。
【0027】
〔脱硫装置〕
前記脱硫装置1は、例えば、銅−亜鉛系の脱硫触媒1cが内槽された触媒反応器からなり、前記原燃料ガス供給路31aより受入れた燃料ガス中に含まれる硫黄成分を除去し、前記硫黄成分が前記改質装置4における改質反応を阻害しないよう前記燃料ガスを脱硫した脱硫ガスを生成する。
【0028】
前記脱硫装置1は、前記反応器ユニットの皿状室の一方として形成され、他方の皿状室に原燃料ガス用熱交換器3における原燃料ガス通流部31を形成している。
【0029】
〔改質装置〕
前記改質装置4は、矩形の伝熱板40に、矩形板状の偏平な皿状の燃焼室形成部材42aおよび改質室形成部材41aを用いて、改質室41と燃焼室42とを形成して構成してある反応器ユニットからなる。燃焼室形成部材42aおよび改質室形成部材41aは、矩形平板状の伝熱板40の両側に振分け配置した状態で、周縁部をシーム溶接にて接続してある。
つまり、改質室41を、皿状の改質室形成部材41aの周縁部を伝熱板に固着して構成し、燃焼室42を、皿状の燃焼室形成部材42aの周縁部を伝熱板に固着して構成してある。又、伝熱板40を縦向きに設け、改質室41および燃焼室42を、伝熱板40の厚さ方向に薄い偏平状に構成してある。
【0030】
尚、伝熱板40は、ステンレス等の耐熱金属を用いて形成し、燃焼室形成部材42aおよび改質室形成部材41aは、周縁部を接続代として中央部が膨出する皿状に、ステンレス等の耐熱金属製の板材をプレス成形して形成してある。
【0031】
前記改質室41は、前記脱硫装置1を経て供給される脱硫ガスに、前記水蒸気生成装置2から供給される水蒸気を添加混合して、ルテニウム、ニッケル、白金等の触媒をセラミック製の多孔質粒状体に保持させて、粒状に形成してある改質触媒41cにより改質して水素含有ガスを生成する。
【0032】
この際、前記燃焼室42により前記改質室41が加熱される。前記燃焼室42は、前記燃料電池部8からのオフガスと、前記原燃料ガス供給路31aからの燃料ガスとから調整される燃料を、ブロワBから供給される空気を用いて燃焼し、前記改質装置4に設けられる改質触媒41cを所定の温度域に維持するように制御され、改質ガスを生成する。
【0033】
燃焼室42内には、断熱材42bを、燃焼室42における伝熱板40の側に燃焼用空間を形成するように、燃焼室42を形成する燃焼室形成部材42aにおける伝熱板40に対向する部分に当て付けた状態で設けてある。その断熱材42bにおける伝熱板40に対向する部分は、下方側が上方側より低くなる段差状に形成してある。そして、断熱材42bの下方側と伝熱板40との間に形成される下方側燃焼室部分の底部に、長尺状のガスバーナ44を配設し、断熱材42bの上方側と伝熱板40との間に形成されて、前記下方側燃焼室部分よりも幅狭な上方側燃焼室部分に、白金、パラジウム等から成る燃焼触媒42cを設けてある。ガスバーナ44は、多数のガス噴出孔を長手方向に沿って備え、燃料供給路を接続したガス噴出管44gと、多数の空気噴出孔を長手方向に沿って備え、ブロワBにより空気を供給される空気供給路を接続した空気噴出管44aとを、ガス噴出孔から噴出されるガス燃料と空気噴出孔から噴出される燃焼用空気とを衝突させるように並べて構成してある。また、燃焼室42を形成する燃焼室形成部材42aの上部には、ガスバーナ44の燃焼ガスを排出するノズル44cを室内に連通する状態で接続してある。
【0034】
そして、ガス噴出管44gから供給される燃料ガスをガスバーナ44にて燃焼させるとともに、未燃焼のガス燃料を燃焼触媒42cの触媒作用にて燃焼させ、燃焼ガスをノズル44cにて排出するように構成してある。
【0035】
また、前記伝熱板40には、前記伝熱板温度を測定する第一温度センサT1を設けるとともに、前記改質室41の改質ガス出口部には、改質ガス出口部の温度を測定する第二温度センサT2を設けてあり、前記第一、第二温度センサT1,T2からの第一、第二出力は、燃料電池システムの制御部9に入力される。
【0036】
尚、改質装置4には、改質室41から排出された高温の改質ガスを通流させて、改質室41を保温する保温用通流部43が設けられている。また、改質装置4と前記脱硫装置1との間には、前記改質装置4に導入される脱硫ガスを、改質装置4により生成した改質ガスと熱交換して、さらに予熱する上流側の改質ガス通流部72および脱硫ガス通流部71を備えた改質ガス用熱交換器7が接続されている。
【0037】
〔水蒸気生成装置〕
水蒸気生成装置2は、反応器ユニットの一方の皿状室に原料水供給路21aが接続される水蒸気生成室21を形成するとともに、他方の皿状室に、前記燃焼室からの排ガスを流通して前記水蒸気生成室21を加熱する蒸気加熱室22を形成してあり、前記水蒸気生成室21に供給される原料水は、前記燃焼室42からの排ガスの有する排熱により加熱され、改質反応に用いられる温度の水蒸気に変換される。
【0038】
ここで生成した水蒸気は、前記脱硫装置1から、前記脱硫ガス通流部71に脱硫ガスを送る配管経路1aにおいてその脱硫ガスと混合される。
【0039】
〔変成装置〕
前記変成装置5は、酸化鉄、銅系、亜鉛系の変成触媒5cを用いて、前記改質装置4で生成した改質ガス中のCOガスと前記改質装置4に供給された水蒸気の余剰分とを反応させて変成処理することにより、前記改質装置4において得られた水素含有ガス中に含まれる一酸化炭素成分を変成して二酸化炭素に変換する。これにより、前記水素含有ガス中における燃料電池部8の燃料極8aを劣化させる原因となる一酸化炭素濃度を低減させた変成ガスを得る。
【0040】
前記変成装置5は、複数の反応器ユニットの皿状室に前記変成触媒5cを充填して形成される変成室51を備える。前記変成室51は、供給される改質ガスの保有する熱を原燃料ガスに供給して予熱する原燃料ガス用熱交換器3における改質ガス通流部32に隣接してその改質ガス通流部32から受熱可能に配設されている。また、前記水蒸気生成装置2の前記水蒸気生成室21を経た燃焼排ガスにより変成室51を冷却するための燃焼排ガス流通路52、および、変成室51を冷却するために冷却用流体を通流させる変成部冷却用通流部53を備え、熱交換自在に配設されている。
【0041】
〔選択酸化装置〕
前記選択酸化装置6は、前記変成装置5から排出される変成ガス中に残留している一酸化炭素を除去する選択酸化触媒6cが備えられ、前記変成ガスをブロワBから供給される空気により、前記変成ガスは、さらに一酸化炭素ガス濃度の低い(例えば10ppm以下)水素リッチな組成の燃料水素ガスに変換するように構成されている。
【0042】
得られた燃料水素ガスは、前記燃料電池部8の燃料極8aに供給され、電力負荷に対して電力が供給される。また、前記燃料電池部8の燃料極8aにおけるオフガスは前記改質装置4における燃焼室42に循環され、燃焼される。
【0043】
また、前記選択酸化装置6には、選択酸化装置6を変成装置5とともに冷却する冷却用ファン62が設けてある。
【0044】
図1において、一点鎖線矢印にて示すように、ブロワBからの空気を燃焼用空気として、ガスバーナ44に供給するように、ブロワBとガスバーナ44の空気噴出管44aとを燃焼用空気路にて接続してある。尚、図示は省略するが、ブロワBからの空気を変成部冷却用通流部53を通流させてからガスバーナ44に供給する変成部冷却用空気路も設けてあり、変成装置5の冷却能力が不足するとき、例えば、夏期の高気温時には、その変成部冷却用空気路を通じて、燃焼用空気をガスバーナ44に供給するように切り換え可能なように構成してある。
【0045】
又、最後段の変成装置5と選択酸化装置6とを接続するガス処理用流路には、原料水供給路21aを流れる原料水を変成処理ガスにて予熱する原料水予熱用熱交換器54を設けるとともに、変成処理ガスから凝縮水を除去するドレントラップ55を、その原料水予熱用熱交換器54よりも下流側の箇所に設けて、変成処理ガスと原料水とを熱交換させて、原料水を予熱するとともに、変成処理ガスを冷却するようにしてある。
さらに、変成部冷却用通流部53から燃焼ガス路を通じて排出された燃焼ガスと、燃焼用空気路を通じて燃焼室42に供給する燃焼用空気および燃料供給路を通じてガスバーナ44に供給するオフガスとを熱交換させて、燃焼用空気およびオフガスを予熱する排熱回収用熱交換器63を設けてある。
【0046】
〔制御部〕
この制御部9は以上説明してきた改質装置4の定常運転時の制御を担う他、改質装置4をその実際の運転状態に即して、運転できるように制御する機能部位を有している。
この制御部9にあっては、改質装置4の使用者が本願にいう「許容温度差」を設定して、その設定が成された以降の改質装置4の運転で、起動動作時における伝熱板40の温度と改質室形成部材41aの温度との間の温度差が設定される許容温度差と同じ若しくはそれ以下となるように運転する設定運転と、燃料電池システム自らが現在の運転状態を判断して、その現在の運転状態に適合する「許容温度差」を自動的に求め、その許容温度差と同じ若しくはそれ以下となるように運転する自動運転とが可能である。
【0047】
以下、図1に示す設定運転が可能な装置構成について説明する。
【0048】
前記制御部9は許容温度差設定部91を備え、前記改質装置4における許容温度差を設定可能にするとともに、実際の発停回数を積算・記憶する発停回数積算手段としての発停回数計数部92を備え、前記改質装置4の発停回数を求めてその発停回数に基づいて後述の関係指標から前記許容温度差を決定可能にし、起動動作時温度維持手段93を備え、前記改質装置4の起動時の伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との温度差が許容温度差以下になるように、改質装置4の起動時の許容温度差維持制御を可能としている。
【0049】
〔関係指標〕
先に説明したように、本願に係る改質装置4では、燃焼室42で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、起動動作時における前記伝熱板40温度と前記改質室形成部材41a温度との許容温度差との関係指標が使用される。
この関係指標の例を図4に示した。同図では、発停限界回数(y)は許容温度差(x)に対してy=F(x)の線形関数として表されることが読み取れる。この関係から許容温度差を大きくとった場合は、発停限界回数は小さく制限される。一方、許容温度差を小さくとった場合は、発停限界回数は大きくできることを示している。この関係指標は、発明者らが改質装置4の加速試験を行い、改質装置4に異常な歪みが発生する温度差と発停限界回数との関係から求めたものである。
設定運転を行う場合、この関係指標は、使用者がこの関係指標を保持して、実際の改質装置4の実際の発停回数から目標稼働期間中における(寿命までの)予想発停回数に対する許容温度差を求め、この許容温度差を設定することで、以降の改質装置4の運転が行われる。
尚、関係指標としては、目標稼働期間中における(寿命までの)予想発停回数と許容温度差の関係として備えるのに代えて、点検作業者が点検作業を行うまでの所定期間内に計数される実際の発停回数と許容温度差の関係として備えてもよく、これらは同等の関係式となることが明らかであるので、いずれも、「実際の改質装置の発停回数」に対応する「許容温度差」を求めているものと考えることとする。
【0050】
〔許容温度差の設定〕
また前記制御部9は燃料電池システムに設けられる前記改質装置4の実際の発停回数を積算・記憶する発停回数計数部92を備え、燃料電池システムに設けられる前記改質装置4の発停回数を計数して記憶するとともに、前記前記燃料電池システムの運用開始から所定期間経過後の点検時期に、点検作業者はその発停回数計数部92に計数された発停回数を読み取り、積算された発停回数より目標稼働期間中における(寿命までの)予想発停回数を求め、目標稼働期間中における(寿命までの)発停回数を推算することが可能に構成してある。
【0051】
前記燃料電池システムの運用開始から所定期間経過後の点検時期に、点検作業者はその発停回数計数部92に計数された発停回数を読み取り、予想発停回数を求め、前記関係指標より前記予想発停回数に基き許容温度差を求め、前記許容温度差設定部に前記許容温度差を設定する。
【0052】
〔起動動作時温度維持制御〕
前記許容温度差設定部91において、許容温度差が設定されると、前記制御部9は、前記第一、第二温度センサT1,T2からの温度出力を入力され、2つの温度出力に基き、前記改質装置4の起動時の前記燃焼室42に対する供給燃料量または空燃比を変更制御する。前記制御部は、前記第一、第二温度センサT1,T2からの温度出力を監視し、前記伝熱板40の温度上昇が改質室形成部材41aの温度上昇に比べて速く、前記許容温度差以上の温度差を生じると予想されるときには、前記燃料ガス供給部に対する燃料ガス供給量および供給空気量を少なく維持あるいは減少させる制御を行い、また、逆に前記許容温度差以上の温度差を生じないと予想されるときには、燃料電池システムの予定出力において必要な燃料供給量まで燃料ガス供給量および供給空気量を徐々に増加させる制御を行う。
【0053】
このように運転制御されている燃料電池システムが、初期設定の許容温度差に基く発停回数を上回る発停回数が点検時に計数されていることが明らかになった場合には、前記許容温度差設定部91において、前記許容温度差を小さく設定する。これにより、次回改質装置4を起動するときに前記燃焼室42における加熱が緩やかに行われるように制御する。すると、発停回数が多くても、前記改質装置4が長期間用いられるように設定変更することができる。また、逆に、点検時に予定されていた発停回数に満たない発停回数が計数されていた場合には、前記許容温度差設定部91において、前記許容温度差を大きく設定する。これにより、次回改質装置4を起動するときに前記燃焼室42における加熱が急激に行われるように制御されることになる。すると、前記改質装置4を応答性速く起動可能となるように設定変更することができる。
【0054】
〔その他の実施形態〕
(1)自動運転制御
上述の例では点検作業者が点検作業時に許容温度差の設定を変更することができるように構成したが、図5に示すように、制御部9に、発停回数計数部92(発停回数積算手段)により積算される実際の改質装置4の発停回数に対応する目標稼働期間中の予想発停回数を推算する予想発停回数推算手段95を備え、予想発停回数推算手段95により予想される予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて許容温度差を関係指標から求める許容温度差導出手段94を備え、以降の改質装置4の起動動作時に、求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、伝熱板40の温度と改質室形成部材41aの温度との温度差を維持する起動動作時温度維持手段93を備えていても良い。
つまり、自動運転構成の場合は、制御部9内において、改質装置の目標稼働期間中における(寿命までの)所定の期間にわたって前記発停回数計数部92により積算される発停回数より、予想発停回数推算手段95が目標稼働期間中における(寿命までの)予想発停回数を推定し、この予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて許容温度差を関係指標から求める。そして、この許容温度差に基き、起動動作時温度維持手段93が、以降の改質装置の運転を行うため、自動的に許容温度差は目標稼働期間に対応する温度差に調整される。
【0055】
(2)温度差の測定
第一、第二温度センサT1,T2を設ける位置は、皿状の改質室形成部材41aの周縁部を伝熱板40に固着している構造における、伝熱板40の温度と改質室形成部材41aとの温度差を代表可能な位置関係に設けられていればよく、例えば、第一温度センサT1を燃焼室42の燃焼触媒42cの温度で代表させることもできるし、第二温度センサT2を改質室形成部材41aの表面温度とすることもでき、適宜変更を行うことができる。
【0056】
(3)起動動作時温度維持制御
起動動作時温度維持制御において、改質装置4の起動時における燃焼室42の燃焼制御は、燃料ガス供給量および燃焼用空気供給量を同時に制御する例を示したが、これに限らず種々公知の方法を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の改質装置4は、製品寿命年数に対応する運転状態に制御されるので、改質装置4の寿命を、その使用形態の相違に基く発停頻度によらず一定に設定することができるとともに、その改質装置4を組み込み、使用形態の相違に基く寿命のばらつきを少なく抑制した燃料電池システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 :脱硫装置
1a :配管経路
2 :水蒸気生成装置
21 :水蒸気生成室
21a :原料水供給路
22 :蒸気加熱室
3 :原燃料ガス用熱交換器
31 :原燃料ガス通流部
31a :原燃料ガス供給路
32 :改質ガス通流部
4 :改質装置
40 :伝熱板
41 :改質室
41a :改質室形成部材
41c :改質触媒
42 :燃焼室
42a :燃焼室形成部材
42b :断熱材
42c :燃焼触媒
43 :保温用通流部
44 :ガスバーナ
44a :空気噴出管
44c :ノズル
44g :ガス噴出管
5 :変成装置
5c :変成触媒
51 :変成室
52 :燃焼排ガス流通路
53 :変成部冷却用通流部
54 :原料水予熱用熱交換器
55 :ドレントラップ
6 :選択酸化装置
6c :選択酸化触媒
62 :冷却用ファン
63 :排熱回収用熱交換器
7 :改質ガス用熱交換器
71 :脱硫ガス通流部
72 :改質ガス通流部
8 :燃料電池部
8a :燃料極
9 :制御部
91 :許容温度差設定部
92 :発停回数計数部(発停回数積算手段)
93 :起動動作時温度維持手段
94 :許容温度差導出手段
B :ブロワ
T1 :第一温度センサ
T2 :第二温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱板の一側面側に触媒が装入された改質室が設けられ、前記伝熱板の他側面側に、内部で発生する燃料の燃焼熱で前記伝熱板を介して前記改質室を加熱する燃焼室が設けられ、
前記改質室が、皿状の改質室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成され、前記燃焼室が、皿状の燃焼室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成された改質装置の運転方法であって、
前記燃焼室で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、前記起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差との関係指標を備え、
所定期間における実際の改質装置の発停回数を求めるとともに、求められた実際の改質装置の発停回数に対応する、許容温度差を前記関係指標から求め、
前記起動動作時に、前記求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との温度差を維持する改質装置の運転方法。
【請求項2】
伝熱板の一側面側に触媒が装入された改質室が設けられ、前記伝熱板の他側面側に、内部で発生する燃料の燃焼熱で前記伝熱板を介して前記改質室を加熱する燃焼室が設けられ、
前記改質室が、皿状の改質室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成され、前記燃焼室が、皿状の燃焼室形成部材の周縁部を前記伝熱板に固着して構成された改質装置であって、
前記燃焼室で燃焼を開始する起動動作と燃焼を終了する停止動作とを繰り返す発停限界回数と、前記起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差との関係指標を備え、
実際の改質装置の発停回数を求める発停回数積算手段と、前記発停回数積算手段に基づいて目標稼働期間中の予想発停回数を推算する予想発停回数推算手段を備えるとともに、
前記予想発停回数推算手段により予想される予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて許容温度差を前記関係指標から求める許容温度差導出手段を備え、
前記起動動作時に、前記求められた許容温度差と同じかより低い温度差に、前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との温度差を維持する起動動作時温度維持手段を備えた改質装置。
【請求項3】
伝熱板温度を測定する第一温度センサを設けるとともに、前記改質室の改質ガス出口部温度を測定する第二温度センサを設け、前記起動動作時温度維持手段が、前記第一温度センサと前記第二温度センサとの測定温度に基づいて、起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差を前記許容温度差以下に維持する制御部を備えた請求項2記載の改質装置。
【請求項4】
改質装置の目標稼働期間中における所定の期間にわたって前記発停回数積算手段により発停回数を積算し、前記発停回数に基づいて予想発停回数推算手段により目標稼働期間中の予想発停回数を推算するとともに、許容温度差を前記予想発停回数に対応する発停限界回数に基づいて前記関係指標から求め、起動動作時における前記伝熱板温度と前記改質室形成部材温度との許容温度差を前記許容温度差以下に維持する制御部を備えた請求項2に記載の改質装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の改質装置を備え、前記許容温度差に基き、前記改質装置の起動時の前記燃焼室に対する供給燃料量または空燃比を変更可能に構成してある燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206903(P2012−206903A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74544(P2011−74544)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】