説明

改質EUOゼオライトを含む触媒の存在下で芳香族C8化合物を異性化する方法

【課題】EUOタイプ構造の少なくとも1つの改質ゼオライトと、少なくとも1つのバインダと、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属とからなる少なくとも1つの触媒の存在下で実行される、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる供給原料を異性化する新規方法を提供する。
【解決手段】前記触媒は、少なくとも以下の連続する工程、a)少なくとも1個のシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下でEUOタイプ構造のゼオライトを処理する工程であって、前記ゼオライト中の最大気孔の大きさよりも大きい直径を有する前記化合物を、前記ゼオライトの外表面上に気相で析出させる工程、b)少なくとも1つの熱処理工程、c)バインダを用いて前記ゼオライトを成形すること、d)前記改質かつ成形されたゼオライトをベースとする支持体上に、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属を導入する少なくとも1つの工程、からなる方法を用いて作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる芳香族供給原料を異性化することに関する。本発明において使用するために意図される前記供給原料は、エチルベンゼン、キシレンの混合物、あるいはキシレンとエチルベンゼンの混合物を含む原料である。この供給原料は、通常「芳香族C8留分」と呼ぶ。
【0002】
より詳細には、本発明は、パラキシレンの生成を最大化することを目指す、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる芳香族供給原料を異性化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エチルベンゼンをキシレンに異性化する触媒反応では、VIII族金属の存在が必要である。モルデン沸石とVIII族金属に基づいて最適化される配合物は、副反応が依然として無視できない触媒を生成する。引用する例としては、C8芳香族のクラッキングあるいは不均化およびトランスアルキル化が続いて起きることもあり起きないこともある、ナフテン環の開環である。C8芳香族のクラッキングあるいは不均化およびトランスアルキル化により、不要な芳香族化合物が形成される。そのため、新規で、より選択的な触媒を発見することは特に興味深いことである。
【0004】
C8芳香族留分を異性化するために用いるゼオライトは、単独でまたはモルデン沸石などのその他のゼオライトと混合して用いられるZSM−5を含む。前記触媒は、特許文献1〜3に記載されている。主にモルデン沸石をベースとするその他の触媒は、例えば、特許文献4〜6に記載されている。例えば、本出願人の特許文献7に記載されているように、モルデン沸石の選択性の欠如は、配合物を最適化することによりおよび/または特定の脱アルミニウム処理により弱めることができる。これらの技法により、不要な不均化反応を減らすことができる。
【0005】
さらに近年、EUOタイプ構造のゼオライトをベースとする触媒(特許文献8)が提案されている。特許文献9には、MTW型構造のゼオライトを用いてキシレンとエチルベンゼンを異性化することが記載されている。
【0006】
さらに、多数の特許が、すでにゼオライトを改質して異なる接触プロセスに対する触媒の活性や選択性を向上させる方法を取り扱っている。特に、特許文献10には、ゼオライトの気孔中に少なくとも重量で0.3%のアモルファスシリカを水相で析出させる工程からなる、ゼオライトに基づいて触媒を作製する方法が記載されている。特許文献11には、シリコン原子を有するゼオライトフレームワーク中に存在するアルミニウム原子を置換する方法であって、フルオロ珪酸塩を用い水媒体中で1つの工程で実行される方法が記載されている。特許文献12には、気相または液相中で有機シリコン物質を析出させる工程からなるゼオライトであって、目標のゼオライトは、幅の広い気孔のゼオライト、特にYゼオライトである触媒の作製が記載されている。
【特許文献1】米国特許第4467129号
【特許文献2】米国特許第4482773号、
【特許文献3】欧州特許第0013617号
【特許文献4】フランス特許出願公開第2477903号
【特許文献5】米国特許第4723051号
【特許文献6】米国特許第4665258号
【特許文献7】フランス特許第2691914号
【特許文献8】欧州特許出願公開第0928987号
【特許文献9】国際特許出願公開第2005/065380号
【特許文献10】米国特許第4402867号
【特許文献11】米国特許第4996034号
【特許文献12】米国特許A第4451572号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、EUOタイプ構造の少なくとも1つの改質ゼオライトと、少なくとも1つのバインダと、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属とからなる少なくとも1つの触媒の存在下で実行される、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる供給原料を異性化する新規方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、EUOタイプ構造の少なくとも1つの改質ゼオライトと、少なくとも1つのバインダと、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属とからなる少なくとも1つの触媒の存在下で実行される、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる供給原料を異性化する方法に関する。
【0009】
前記触媒は、少なくとも以下の連続する工程、
a)少なくとも1個のシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下でEUOタイプ構造のゼオライトを処理する工程であって、前記ゼオライト中の最大気孔の大きさよりも大きい直径を有する前記化合物を、前記ゼオライトの外表面上に気相で析出させる(deposit)工程、
b)少なくとも1つの熱処理工程、
c)バインダを用いて前記ゼオライトを成形すること、
d)前記改質かつ成形されたゼオライトをベースとする支持体上に、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属を導入する少なくとも1つの工程、
からなる方法を用いて作製される。
【0010】
本発明の異性化方法を実行するために用いる前記触媒は、押出し品またはビーズの形状である。有利に、前記触媒は、周期律表のIIIA、IVA、およびVIIB族の元素からなるグループから選択される少なくとも1つの追加金属を含む。
【0011】
驚くことに、少なくとも1つのEUOタイプ構造のゼオライトからなる押出し品またはビーズ形状の触媒であって、アモルファスシリカ層が前記ゼオライト結晶、少なくとも1つのバインダ、および周期律表のVIII族の少なくとも1つの金属の外表面上に析出するように改質した触媒は、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる供給原料を異性化する方法において用いると、活性に関して触媒性能を向上させるということが発見された。特に、そのような触媒は、少なくとも1個のシリコン原子からなる少なくとも1つの分子化合物の存在下で液相において実行される処理工程により改質された、EUOタイプ構造のゼオライトをベースとする触媒よりもより活性である。また、そのような触媒は、所望の生産物、すなわちキシレン、特にパラキシレンに関して特に選択的である。活性であり選択的である触媒を利用することは、特に有利であり、それにより所望の産物の歩留りを増加させる。気相処理を用いて外表面に析出させるシリカの層は、高い活性であり選択性を示す。
【発明を実施するための最良の方法】
【0012】
本発明は、EUOタイプ構造の少なくとも1つの改質ゼオライトと、少なくとも1つのバインダと、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属とからなる少なくとも1つの触媒の存在下で実行される、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる供給原料を異性化する方法に関する。
【0013】
前記触媒は、少なくとも以下の連続する工程、
a)少なくとも1個のシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下でEUOタイプ構造のゼオライトを処理する工程であって、前記ゼオライト中の最大気孔の大きさよりも大きい直径を有する前記化合物を、前記ゼオライトの外表面上に気相で析出させる(deposit)工程、
b)少なくとも1つの熱処理工程、
c)バインダを用いて前記ゼオライトを成形すること、
d)前記改質かつ成形されたゼオライトをベースとする支持体上に、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属を導入する少なくとも1つの工程、
からなる方法を用いて作製される。
【0014】
本発明によれば、本発明の異性化方法を実行するために用いる前記触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金から選択される少なくとも1つのVIII族金属、好適には貴金属から選択される少なくとも1つのVIII族金属、より好適にはパラジウムと白金から選択される少なくとも1つのVIII族金属、さらにより好適には白金である少なくとも1つのVIII族金属を含む。例えばH−O滴定による化学吸着や一酸化炭素の化学吸着により決まる、VIII族金属の分散度は、50%〜100%の範囲、好適には60%〜100%の範囲、より好適には70%〜100%の範囲である。キャスティングマイクロプローブにより決まるその分布から得られた、粒子のエッジに対する粒子コアでのVIII族金属濃度の比として定義される、VIII族金属の巨視的な分配係数は、0.7〜1.3の範囲、好適には0.8〜1.2の範囲である。1に近いこの比の値は、触媒中でVIII族金属が均一に分布している証拠である。
【0015】
有利に、前記触媒は、周期律表のIIIA、IVA、およびVIIB族の元素からなるグループから選択される少なくとも1つの追加金属、好適にはガリウム、インジウム、すず、およびレニウムから選択される少なくとも1つの追加金属を含む。前記追加金属は、インジウム、すず、およびレニウムから好適に選択される。
【0016】
有利に、前記触媒は硫黄を含む。
【0017】
より詳細には、本発明の異性化方法を実行するために用いる前記触媒は、
・重量で1%〜90%、好適には3%〜80%、より好適には4%〜60%のEUOタイプ構造の前記改質ゼオライト、
・重量で0.01%〜4%、好適には0.05%〜2.0%の周期律表VIII族の少なくとも1つの金属、
・随意的に、重量で0.01%〜2%、好適には0.05%〜1%の、IIIA、IVA、およびVIIB族の元素からなるグループから選択される少なくとも1つの追加金属、
・随意的に、VIII族金属の原子数に対する硫黄の原子数の比が0.3:1〜2:1の範囲であるような硫黄含有量、
・ 触媒が100%となるように補完する少なくとも1つのバインダ
を含む。
【0018】
前記触媒は、ビーズまたは押出し品の形状、好適には押出し品の形状である。
【0019】
本発明によれば、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒中の含有物(inclusion)について、改質をまだ行っていないEUOタイプ構造の当初のゼオライトは、4.1×5.4Å(1Å=1オングストローム=10−10m)の気孔直径の微孔質1次元フレームワークを有する (「Atlas of Zeolite framework types」,Ch Baerlocher,WM Meier and D H Olson,5th edition,2001)。さらに、N A Briscoeらは、ゼオライト(Zeolite)のレビュー(1988,8,74)に関する記事において、これらの1次元流路(channel)が、深さが8.1Åで直径が6.8×5.8Åのサイドポケットを有することを開示している。EUOタイプ構造の前記ゼオライトは、EU−1、ZSM−50、およびTPZ−3ゼオライトから選択される。好適には、EUOタイプ構造の前記ゼオライトは、EU−1ゼオライトである。
【0020】
EU−1ゼオライトの合成および物理化学的特性は、欧州特許B1第0042226号に既に記載されている。米国特許A第4640829号には、ZSM−50ゼオライトおよび作製方法が記載されている。TPZ−3ゼオライトおよび作製方法は、欧州特許A1第0051318号に記載されている。
【0021】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の種々の工程を用いて改質したEUOタイプ構造のゼオライトは、当初、すなわち、工程a)において改質する前に、原子比率Si/T、好適には原子比率Si/Alが、好適に2:1〜100:1の範囲、より好適に5:1〜80:1の範囲、さらにより好適には5:1〜50:1の範囲の比率であるように、少なくともシリコンおよび少なくとも1つの元素Tを含む。少なくとも1つの元素Tは、アルミニウム、鉄、ガリウム、およびボロンからなるグループから選択され、好適にはアルミニウムおよびボロンからなるグループから選択され、より好適にはアルミニウムが選択される。本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の前記工程a)を実行するために用いる、好適には前記EU−1ゼオライトであるEUOタイプ構造の前記ゼオライトは、焼成された状態であり、ゼオライト上のカチオンの合計数に関して、H以外のカチオン量がカチオンの合計数30%より少なく、好適には20%より少なく、より好適には15%より少ないプロトン化型(水素型H)であるように、少なくとも1つのプロトンを含む。触媒作製方法の前記工程a)を実行する前に、改質すべきゼオライトが合成したままの状態であり、作製するために用いた有機テンプレートをまだ含有している場合には、300℃〜700℃の範囲、好適には400℃〜600℃の範囲の温度で、前記ゼオライトを焼成してもよい。ゼオライトが1つ以上のアルカリ金属/アルカリ土類金属を含む場合には、例えば硝酸アンモニウムNHNOなどの少なくとも1つのアンモニウム塩を含む溶液を用いて1つ以上のイオン交換工程を実行して、ゼオライト中に存在するアルカリカチオンの少なくとも一部、好適にはほぼすべてを除去してもよい。約400℃〜500℃の範囲の温度で乾燥空気の流れ中で焼成する工程は、アンモニアの離脱によりゼオライト中にプロトンが形成され、それにより、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の前記工程a)が実行可能な、ゼオライトの水素を発生させる。
【0022】
触媒作製方法の前記工程a)を実行するために用いる、好適には前記EU−1ゼオライトであるEUOタイプ構造の前記ゼオライトは、70%〜100%、好適には80%〜100%、より好適には85%〜100%のプロトン型Hの補償カチオンを含む酸性ゼオライトである。残りのカチオンは、周期律表のIAおよびIIA族の金属から好適に選択され、より詳細には前記カチオンは、Na、Li、K、Rb、Cs、Ba2+、およびCa2+のカチオンから選択される。詳細には、原子比率Na/T、好適には比Na/Alが0.5:1より小さく、好適には0.1:1より小さく、より好適には0.02:1より小さくなるように、ナトリウム含有量を決める。
【0023】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒の組成である、例えばEU−1ゼオライトであるEUOタイプ構造のゼオライトは、BET法を用いて窒素の化学吸着により測定する比表面積が、一般に300m/gより大きい。好適に、その比表面積は、400m/gよりも大きい。
【0024】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒は、第1の工程において、EUOタイプ構造の前記ゼオライト、好適にはEU−1ゼオライトを選択化すること(selectivisation)からなる少なくとも1つの工程a)を含む方法を用いて作製される。本発明において用いる「選択化すること」という用語は、ゼオライト結晶それぞれの外表面の酸性を中和することを意味する。酸性は、当該分野の技術者に公知の任意の方法を用いて、中和してよい。ゼオライトの外表面上の酸性サイトを具体的に選択化する従来の方法では、ゼオライトの気孔直径より大きな動的分子直径を有する分子を一般に用いる。より正確には、前記選択化する工程a)は、工程a)において処理すべきEUOタイプ構造のゼオライト、好適にはEU−1ゼオライト中の最大気孔の直径よりも大きな直径を有する少なくとも1個のシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下で、プロトン化型でのEUOタイプ構造の前記ゼオライトを処理することからなる。好適に、触媒作製方法は、単一の工程a)からなる。
【0025】
EUOタイプ構造のゼオライト、好適にはEU−1ゼオライトの外表面を不動態化または選択化させるために一般に用いる分子は、ゼオライト結晶のそれぞれの外表面サイトと相互作用する原子を含む化合物である。本発明により使用される分子は、1個以上のシリコン原子を含む有機または無機分子である。従って、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の前記工程a)において、プロトン化ゼオライトは、少なくとも1個のシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下で処理する工程を受ける(undergo)。前記工程a)により、工程b)の後にゼオライト結晶それぞれの外表面上のアモルファスシリカの層に変形される、少なくとも1つのシリコン原子を含む前記分子化合物の層を、EUOタイプ構造の前記ゼオライトの外表面に析出させることが可能になる。好適に、少なくとも1つのシリコン原子を含む分子化合物は、Si−RおよびSi−Rの式を有する化合物から選択される。ここで、Rは、水素、アルキル、アリール、またはアシル基、アルコキシ基(O−R’)、水酸基(−OH)、あるいはハロゲンのいずれかであり、好適にはアルコキシ基(O−R’)である。1つのおよび同じ分子Si−RおよびSi−Rにおいて、Rは同一または異なるもののいずれかである。一例として、SiまたはSi(C(CH)の式を持つ分子化合物は、上記の式に適合する。このように、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の工程a)で用いる少なくとも1つのシリコン原子を含む分子化合物は、シラン、ジシラン、アルキルシラン、アルコキシシラン、あるいはシロキサン型化合物であってよい。特に好適に、前記分子化合物は、一般式Si−(OR’)の組成を有する。ここで、R’は、アルキル、アリール、またはアシル基であり、好適にはアルキル基であり、より好適にはエチル基である。前記工程a)を実行するために用いる前記分子化合物は、EUOタイプ構造のゼオライト、好適にはEU−1ゼオライトの気孔の最大直径より大きな直径を有し、好適に分子あたり多くても2個のシリコン原子からなる。Si(OCHCHの式を有する、直径9.6Åのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)である分子化合物は、本発明の異性化方法を実行するために用いる前記触媒を作製する方法の前記工程a)を実行するのに、非常に有利性がある。
【0026】
本発明の異性化方法を実行するために用いる前記触媒を作製する方法の、プロトン化ゼオライトを処理することからなる、前記工程a)は、少なくとも1つのシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下で、ゼオライトの外表面上に前記化合物を析出させることにより、実行される。本発明によれば、前記工程a)は、少なくとも1つのシリコン原子を含む前記分子化合物を、気相中で析出させることにより実行される。
【0027】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する工程a)は、固定床型反応器において実行される。前記固定床型反応器中での気相析出反応(CVD)の前に、EUOタイプ構造のゼオライト、好適にはEU−1ゼオライトを好適に活性化させる。固定床型反応器中での前記ゼオライトの活性化は、酸素中、空気中、不活性ガス中、空気と不活性ガスの混合物、または酸素と不活性ガスの混合物中で実行される。ゼオライトの活性化温度は、有利に100℃〜600℃の範囲であり、極めて有利に300℃〜550℃の範囲である。ゼオライト結晶のそれぞれの外表面上に析出させる必要がある少なくとも1つのシリコン原子を含む分子化合物は、気相反応器に送られる。前記分子化合物は、水素(H)、空気、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、あるいは窒素(N)のいずれかである搬送(vector)ガスで希釈される。好適に、搬送ガスは、Ar、He、およびNから選択される不活性ガスである。少なくとも1個のシリコン原子を含む前記分子化合物を、任意の炭化水素化合物の不存在下で、前記ゼオライトの外表面上に気相中で析出させる。EUOタイプ構造のゼオライトの外表面上において最適な品質のアモルファスシリカ層を得るために、少なくとも1個のシリコン原子を含む分子化合物を析出させるための操作条件を注意深く選択する必要がある。特に、析出中のゼオライト床の温度は、好適に10℃〜300℃の範囲であり、より好適には50℃〜200℃の範囲である。ゼオライトの外表面に析出すべき分子化合物の気相中の分圧は、好適に0.001〜0.5バールの範囲であり、より好適には0.01〜0.2バールの範囲である。析出時間は、好適に10分〜10時間の範囲であり、より好適には30分〜5時間の範囲であり、さらにより好適には1〜3時間の範囲である。
【0028】
本発明の異性化方法を実行するために用いる前記触媒を作製する方法の工程b)によれば、少なくとも1つのシリコン原子を含む分子化合物は、 好適には200℃〜700℃の範囲、より好適には300℃〜500℃の範囲にある温度で実行される熱処理により、分解される。前記熱処理工程は、空気中、酸素中、水素中、窒素中、アルゴン中、あるいは窒素とアルゴンの混合物中で実行される。有利に、この処理時間は、1〜5時間の範囲である。前記熱処理の最後に、EUOタイプ構造のゼオライト結晶のそれぞれの外表面に、アモルファスシリコンの層を析出される。本発明によれば、好適に、EUOタイプ構造のゼオライト結晶の各々の内表面には、シリカのアモルファス層が析出しない。好適に、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒中に存在する改質ゼオライトの気孔の最大直径は、初期の非改質ゼオライトの気孔の最大直径に関して変化しない。
【0029】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の工程c)によれば、前記工程b)からのEUOタイプ構造のゼオライトは、少なくとも1つのバインダと混合され成形される。触媒は、押出し品またはビーズの形状、好適には押出し品の形状となるように、一般に成形される。EUOタイプ構造の改質ゼオライトを成形する条件、バインダの選択、前記ゼオライトの随意的ミリング(milling)、ペプチゼーション方法、気孔形成剤の添加、混合時間、触媒を押出し品の形状に整形する場合の押出し圧力、乾燥速度と時間は、ビーズまたは押出し品の形状、好適には押出し品の形状で触媒を得られるように、当業者には公知の規則に従って、各バインダに対して決定する。
【0030】
バインダは、多孔質のアモルファスまたは不完全な結晶酸化物型の無機成分である。バインダは、粘土、マグネシア、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ボロン、ジルコニア、燐酸アルミニウム、燐酸チタニウム、燐酸ジルコニウム、およびシリカ−アルミナにより構成されるグループから選択される。木炭を用いてもよい。好適にバインダはアルミナである。
【0031】
有利に、成形は、バインダ(少なくとも1つの酸とバインダ粉末を混合することにより一般に得られる)、好適にはアルミナの湿性ゲル中で、均一なペーストを得るのに必要な時間、例えば約10分、EUOタイプ構造の改質ゼオライト、例えば改質EU−1ゼオライトを混合し、得られたペーストを型に通して、例えば0.4〜4mmの直径を有する押出し品を成形することからなる。成形に続いて、例えばオーブン中において約120℃で数時間乾燥を行い、さらに一般に250℃〜600℃の温度で、例えば約400℃で2時間焼成する。EUOタイプ構造の前記改質かつ成形したゼオライトは、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒の支持体を構成する。
【0032】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を作製する方法の工程d)において、改質EUOタイプ構造の前記成形されたゼオライトをベースとする支持体上に、少なくとも1つのVIII族金属を導入する。前記VIII族金属を導入するために用いる方法に依存して、以下に示すように、前記VIII族金属、好適には白金を、改質ゼオライトあるいはバインダのいずれかに主に析出させる。周期律表のVIII族の金属および随意的な追加金属を、全く同じに、あるいは異なる技法を用いて導入する。好適に、周期律表のVIII族の少なくとも前記金属は、当業者には公知の任意の方法を用いて、前記改質ゼオライトをベースとする支持体上に選択的析出により導入されてバインダとともに成形される。前記析出は、例えば、乾式含浸、過剰含浸、あるいはイオン交換により実行される。有利に、化学吸着により決まる前記VIII族金属または金属の分散度が、50%〜100%の範囲、好適には60%〜100%の範囲、より好適には70%〜100%の範囲となるように、さらに粒子のエッジに対する粒子コアでの各VIII族金属濃度の比として定義される、前記VIII族金属または金属の巨視的な分配係数が0.7:1〜1.3:1の範囲、好適には0.8:1〜1.2:1の範囲となるように、析出を実行する。
【0033】
種々の金属を触媒の組成中に導入するために、前記金属の任意の前駆物質が前記元素の析出に好適である。
【0034】
VIII族金属として好適に選択される白金を、改質構造型ゼオライトおよび/またはバインダに一般に導入する。VIII族の任意の貴金属の場合、アンモニア性の化合物や、クロロ白金酸塩アンモニウム、二塩化ジカルボニル白金、ヘキサヒドロキシ白金酸、塩化パラジウム、硝酸パラジウムなどの化合物を用いてもよい。
【0035】
前記VIII族金属の析出の際に、いくつかのパラメータ、特に用いる前記VIII族金属の前駆物質の特性を制御することにより、前記金属は、バインダやゼオライトに向かって主に析出することが可能になる。
【0036】
アンモニア性の前駆物質を用いてVIII族金属、特に白金を導入すると、EUOタイプ構造の改質ゼオライト上に前記金属、特に白金が主に導入される。触媒を作製するための前記アンモニア性の前駆物質は、カチオン交換により導入される。特に、前記VIII族金属が白金であると、式Pt(NHを有する白金(II)テトラミン塩、Pt(NHを有する白金(IV)ヘキサミン塩、式(PtX(NH)Xを有する白金(IV)ハロゲノペンタミン塩、および式PtX(NHを有する白金N−テトラハロゲノジアミン塩などのアンモニア性の化合物から、前駆物質を有利に選択する。カチオン交換により白金がEUOタイプ構造の改質ゼオライト上に主に析出するように、式H(Pt(acac)X)を有するハロゲン化化合物を白金前駆物質として有利に選択する。ここで、Xは、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素により構成されるグループから選択されるハロゲンであり、好適にXは塩素であり、「acac」は、アセチルアセトンから誘導されるacetlyacetone基(実験式Cを有する)を表す。
【0037】
アニオン交換によりVIII族金属を導入すると、前記金属が主にバインダ上に析出する。特に、白金またはパラジウムを導入するために、ヘキサクロロ白金酸および/またはヘキサクロロパラジウム酸を用いるアニオン交換を、例えば塩化水素酸などの競合剤の存在下で実行してもよい。析出は、例えば約400℃で約2時間焼成することにより一般に実行される。
【0038】
前記触媒を作製する前記工程d)の際に、当業者には公知の任意の好適な析出手法および前記追加金属に対して任意の好適な前駆物質を用いて、周期律表のIIIA、IVA、およびVIIB族の元素からなるグループから選択される少なくとも1つの追加金属を、触媒に導入してもよい。特に、VIII族金属と、IIIA、IVA、およびVIIB族からの金属から選択される追加金属とを、前記工程d)の際に、個別にあるいは同時に加える。 IIIA、IVA、およびVIIB族の元素の塩化物、臭化物、あるいは硝酸塩などの前駆物質を用いて、追加金属を導入してもよい。一例として、インジウムの場合、硝酸塩や塩化物を有利に用いる。レニウムの場合、過レニウム酸を用いる。前記金属の錯体、特に、金属と、金属アルキル、金属シクロアルキル、金属アリール、金属アルキルアリール、および金属アリールアルキルなどのヒドロカルビル金属とのポリケトン錯体により構成されるグループから選択される少なくとも1つの有機化合物の形態で、追加金属を有利に導入してもよい。後者の場合、有機溶媒中の前記金属の有機金属化合物の溶液を用いて、前記追加金属を有利に導入する。前記追加金属用の前駆物質を、前記金属の有機ハロゲン化合物として用いることも可能である。前記追加金属用の前駆物質として、特に、すずの場合のテトラブチルすず、およびインジウムの場合のトリフェニルインジウムなど、前記追加金属の有機化合物を用いることも有利である。
【0039】
VIII族金属より前に追加金属を導入する場合は、用いる前記追加金属に対する前駆物質は、前記追加金属のハライド、硝酸塩、アセテート、酒石酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩から構成されるグループから一般に選択される。水溶液中で導入を有利に実行する。例えばテトラブチルすずなどの前記金属の有機金属化合物の溶液を用いて、前記追加金属を導入することも有利である。この場合、少なくとも1つのVIII族金属を導入する前に、空気中で焼成を実行する。
【0040】
VIII族金属、好適には白金族の貴金属、および随意的に追加金属を、上記に引用した有機金属化合物の1つの水性または有機溶液を用いて、含浸により好適に導入する。引用可能で使用可能な有機溶媒には、例えば分子あたり6〜12個の炭素原子を含むパラフィン系、ナフテン系、あるいは芳香族炭化水素、や例えば分子あたり1〜12個の炭素原子を含むハロゲン化有機化合物が含まれる。引用可能な例には、n−へプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、およびクロロフォルムがある。溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0041】
さらに、焼成および/または還元などの中間処理は、種々の金属の連続する析出間に行う。
【0042】
室温から250℃までの温度で、好適には40℃〜200℃の範囲の温度で、例えばオーブン乾燥などで乾燥し、そのあと、通常約250℃〜600℃の温度で約0.5〜10時間焼成することにより、本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒の作製を一般に終了させる。前記焼成を実行するために必要な温度上昇の際に、前記乾燥工程を好適に実行する。
【0043】
例えば450℃〜600℃の温度で0.5〜4時間、水素流中において、その場以外で(ex citu)の触媒の事前還元を実行することが有利である。本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒が硫黄を含まない場合、触媒の組成中に存在する金属の水素の還元は、供給原料を投入する前に、その場で(in citu)実行される。
【0044】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒を、異性化反応を実行する反応器中に投入する前に、上記工程a)〜d)に従って作製する。少なくとも上記の作製工程a)〜d)が実行されると、触媒に、8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる前記供給原料が接触する。
【0045】
本発明の異性化方法を実行するために用いる触媒が硫黄を含むときには、触媒反応の前に、その場であるいは別の場所で、金属または上記に挙げた金属を含む、成形し焼成した触媒上に、硫黄を導入する。すべての硫化は、触媒を還元した後に実行される。その場での硫化の場合、触媒が還元されていないときには、硫化の前に還元が実行される。その場以外での硫化の場合、還元は、硫化の前に行う。当業者には公知の二硫化ジメチルや硫化水素などの任意の硫化剤を用いて、水素の存在下で硫化が実行される。一例として、水素の存在下で、二硫化ジメチルを含む供給原料を用いて触媒を処理して、(硫黄/VIII族金属)比が0.3:1〜2:1の範囲であるような組成を得てもよい。その後、供給原料を投入する前に、水素流中において、約400℃で約3時間、触媒を保持する。
【0046】
本発明の前記異性化方法は、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる少なくとも1つの供給原料を、上記組成を有しかつ上記方法を用いて作製される少なくとも1つの触媒であって、異性化反応が起きる反応器中に存在する触媒に接触させることを含む。分子あたり8つの炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる前記供給原料は、キシレンの混合物単体、エチルベンゼン単体、またはキシレンとエチルベンゼンの混合物のいずれかから構成される。本発明の前記異性化方法は、以下の操作条件を用いて有利に実行される。すなわち、
・300℃〜500℃の範囲、好適には320℃〜450℃の範囲、より好適には340℃〜430℃の範囲の温度、
・0.3〜1.5MPaの範囲、好適には0.4〜1.2MPaの範囲、より好適には0.7〜1.2MPaの範囲の水素分圧、
・0.45〜1.9MPaの範囲、好適には0.6〜1.5MPaの範囲の全圧、および
・時間あたりの触媒キログラムあたりに導入される供給原料キログラムで表わされる、0.25〜30h−1の範囲、好適には1〜10h−1の範囲、より好適には2〜6h−1の範囲の空間速度、
である。
【0047】
以下の実施例において、発明の範囲を限定することなく、本発明を例示する。
【0048】
実施例1:CVDにより改質されたEU−1ゼオライト、アルミナ、および白金からなる触媒Aの作製(本発明による)
出発ゼオライトは、Si/Al原子比率が15である、H型のEU−1ゼオライトであった。気相析出(CVD)を用いて、テトラエトキシシラン(TEOS)の層により外表面の不動態化を行った。
【0049】
40gのEU−1ゼオライトを固定床型反応器に導入し、550℃の窒素の流れにおいて最初に活性化を行った。その後、反応器の温度を150℃に下げ、0.15バールのTEOS (Si(OCHCH)分圧を窒素流に追加した。2時間の反応後、150℃で2時間、窒素中でゼオライトを放散させて未反応TEOSを排出した。空気中で、450℃で3時間、TEOSを分解した。
【0050】
元素分析によれば、Si/Al原子比率(mol/mol)は18であった。このSi/Al原子比率の増加は、EU−1ゼオライト結晶それぞれの外表面上におけるアモルファスシリカ層のゼオライトの初期重量に対して、重量で17%の析出があったことにより説明された。
【0051】
次に、アルミナゲルを用いる押出し(押出し径1.4mm)により改質EU−1を成形し、乾燥空気中での乾燥および焼成後に、水素型においてCVDで改質した重量で10%のEU−1ゼオライトおよび重量で90%のアルミナを含む支持体S1を得た。
【0052】
ヘキサクロロ白金酸を用いて、競合剤(塩化水素酸)の存在下で、前記支持体S1にアニオン交換を行い、触媒重量に関して重量で1%の白金をアルミナ上に析出させた。次に、濡れた固体を120℃で12時間乾燥させて、さらに500℃の温度で1時間、乾燥空気流中で焼成した。
【0053】
得られた触媒Aは 、重量で、10%のCVDにより改質されたEU−1ゼオライト、89%のアルミナ、および1%の白金を含有していた。
【0054】
実施例2:CLDにより改質されたEU−1ゼオライト、アルミナ、および白金からなる触媒Bの作製(本発明による)
出発ゼオライトは、Si/Al原子比率が15である、H型のEU−1ゼオライトであった。液相析出(CLD)を用いて、テトラエトキシシラン(TEOS)の層により外表面の不動態化を行った。
【0055】
40gのEU−1ゼオライトを固定床型反応器に導入し、550℃の窒素の流れにおいて最初に活性化を行った。その後、反応器の温度を室温に下げた。次に、ゼオライトを無水トルエン(V/W=10)中に溶解した。Si/Al(mol/mol)比が18の最終材料を得るために必要な量である50gのTEOSを、還流させながら無水トルエンに追加した。溶液を2時間撹拌した。2時間の反応後、回転型蒸発器を用いて、トルエンを真空排気した。次に、固定床型反応器中において、450℃で3時間、空気中でTEOSを分解した。
【0056】
元素分析によれば、Si/Al原子比率(mol/mol)は18であった。このSi/Al原子比率の増加は、EU−1ゼオライト結晶それぞれの外表面上におけるアモルファスシリカ層のゼオライトの初期重量に対して、重量で17%の析出があったことにより説明された。
【0057】
次に、アルミナゲルを用いる押出し(押出し径1.4mm)により改質EU−1を成形し、乾燥空気中での乾燥および焼成後に、水素型である、CLDで改質した重量で10%のEU−1ゼオライトおよび重量で90%のアルミナを含む支持体S2を得た。
【0058】
ヘキサクロロ白金酸を用いて、競合剤(塩化水素酸)の存在下で、前記支持体S2にアニオン交換を行い、触媒重量に対して重量で1%の白金をアルミナ上に析出させた。次に、濡れた固体を120℃で12時間乾燥させて、さらに500℃の温度で1時間、乾燥空気流中で焼成した。
【0059】
得られた触媒Bは、重量で、10%のCLDにより改質されたEU−1ゼオライト、89%のアルミナ、および1%の白金を含有していた。
【0060】
実施例3:エチルベンゼンの異性化における触媒AおよびBの触媒特性の評価
触媒Aその後触媒Bに接触させた、異性化すべき供給原料は、エチルベンゼンのみから構成されていた。
【0061】
異性化反応の操作条件を以下に示す。すなわち、
・温度:385℃、
・全圧:10バール(1バール=0.1MPa)、
・水素分圧:8バール、
・供給原料:エチルベンゼン、および
・時間あたりの触媒キログラムあたりに導入される供給原料キログラムで表わされる、4h−1の空間速度、
であった。
【0062】
触媒AおよびBの触媒特性を、エチルベンゼンの異性化について連続的に評価した。 触媒AおよびBのそれぞれは、供給原料を投入する前に、480℃で4時間、水素中で還元した。
【0063】
エチルベンゼンの転化率に対応する活性において、触媒を評価した。
【0064】
CVEBで表されるエチルベンゼン転化率は、流出液中のエチルベンゼンの100重量%に等しい。
【0065】
流出液中のエチルベンゼンの重量百分率は、流出液のクロマトグラフ分析により得た。
【表1】

【0066】
表1に示す結果によれば、気相処理によりアモルファスシリカの層を析出させることにより改質されるEU−1ゼオライト表面からなる触媒Aは、活性に関して、シリコンを含む分子化合物の存在下で、液相中で実行される処理工程により改質されるEU−1ゼオライトからなる触媒Bを用いて得られたものよりも、良好な触媒性能を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUOタイプ構造の少なくとも1つの改質ゼオライトと、少なくとも1つのバインダと、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属とからなる少なくとも1つの触媒の存在下で実行される、分子あたり8個の炭素原子を含む少なくとも1つの芳香族化合物からなる供給原料を異性化する方法であって、
前記触媒は、少なくとも以下の連続する工程、
a)少なくとも1個のシリコン原子を含む少なくとも1つの分子化合物の存在下でEUOタイプ構造のゼオライトを処理する工程であって、前記ゼオライト中の最大気孔の大きさよりも大きい直径を有する前記化合物を、前記ゼオライトの外表面上に気相で析出させる工程、
b)少なくとも1つの熱処理工程、
c)バインダを用いて前記ゼオライトを成形すること、
d)前記改質かつ成形されたゼオライトをベースとする支持体上に、周期律表VIII族の少なくとも1つの金属を導入する少なくとも1つの工程、
からなる方法を用いて作製される、方法。
【請求項2】
前記触媒中に含まれる前記VIII族金属は白金である請求項1に記載の異性化方法。
【請求項3】
前記触媒は、IIIA、IVA、およびVIIB族の元素からなるグループから選択される少なくとも1つの追加金属を含む請求項1または2に記載の異性化方法。
【請求項4】
前記追加金属は、インジウム、すず、およびレニウムから選択される請求項3に記載の異性化方法。
【請求項5】
前記触媒は、押出し品の形状である請求項1〜4のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項6】
前記工程a)において改質を行う前に、EUOタイプ構造の前記ゼオライトは、原子比率Si/Alが2:1〜100:1の範囲になるように、少なくともシリコンおよびアルミニウムを含む請求項1〜5のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項7】
EUOタイプ構造の前記ゼオライトは、EU−1ゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項8】
前記工程a)において用いる、少なくとも1個のシリコン原子を含む前記分子化合物は、Si−RおよびSi−Rの式を有する化合物から選択され、ここでRは、水素、アルキル、アリール、またはアシル基、アルコキシ基(O−R’)、水酸基(−OH)、あるいはハロゲンのいずれかであり、Rは同一または異なるものである請求項1〜7のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項9】
前記工程a)において用いる前記分子化合物は、一般式Si−(OR’)の式を有し、ここでR’は、アルキル、アリール、またはアシル基である請求項1〜8のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項10】
前記工程a)は、固定床型反応器において実行される請求項1〜9のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項11】
前記工程b)の熱処理は、200℃〜700℃の範囲の温度で実行される請求項1〜10のいずれかに記載の異性化方法。
【請求項12】
300℃〜500℃の範囲の温度、0.3〜1.5MPaの範囲の水素分圧、0.45〜1.9MPaの範囲の全圧、および時間あたりの触媒キログラムあたりに導入される供給原料キログラムで表わされる、0.25〜30h−1の範囲の空間速度、という操作条件で実行される請求項1〜11のいずれかに記載の異性化方法。

【公開番号】特開2008−150373(P2008−150373A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321449(P2007−321449)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】