放出パターンの放出領域を選択するための装置及び方法
【課題】不連続的放出パターンを有する荷電粒子エミッタによる荷電粒子装置及び方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子ビーム装置及び方法。装置は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタ(102)と、ガンレンズ(119、519、919)と、ダイヤフラム(120)とを含み、ガンレンズは、デフレクタ・ユニット(110)を含み、デフレクタ・ユニットは、少なくとも2つの放出ピークのうちの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向け、それによって少なくとも2つの放出パターンから放出ピークのうちの放出ピークを選択するようになっている。
【解決手段】荷電粒子ビーム装置及び方法。装置は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタ(102)と、ガンレンズ(119、519、919)と、ダイヤフラム(120)とを含み、ガンレンズは、デフレクタ・ユニット(110)を含み、デフレクタ・ユニットは、少なくとも2つの放出ピークのうちの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向け、それによって少なくとも2つの放出パターンから放出ピークのうちの放出ピークを選択するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に荷電粒子装置に関し、より具体的には、不連続的放出パターンを有する荷電粒子エミッタによる荷電粒子装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、荷電粒子ビーム装置、放出パターンを測定する方法、及び放出パターンの放出ピークを選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置は、以下に限定されるものではないが、製造中の半導体素子の検査、リソグラフィ用露光システム、検出装置、及び試験システムを含む多くの産業分野で使用されている。マイクロメートル及びナノメートルスケールでの試料の構造化、試験、及び検査において多くの需要がある。マイクロメートル及びナノメートルスケールでのプロセス制御、検査、又は構造化は、しばしば荷電粒子ビーム、例えば電子ビームを用いて行われる。荷電粒子ビームは、波長が短いため、例えば光子ビームと比較して優れた空間解像度が得られる。
【0003】
このような装置では、解像度の他に、処理能力(throughput)が問題となる。基板の広い領域をパターニングし又は検査することから、処理能力は、例えば10cm2/minを超えることが望ましい。荷電粒子ビーム装置では、処理能力は、荷電粒子のビーム電流に依存する。そのため、ビーム電流を増大することが必要となる。以下の説明では、一般に、二次電子、後方散乱電子、及びオージェ電子を区別する必要はない。そこで以下では簡単化するために、この三種類をまとめて「二次電子」と称する。
【0004】
荷電粒子のビーム電流の増大に対する要望に鑑みて、電界放出エミッタのような荷電粒子ビームエミッタは、輝度が高いために非常に大きな可能性を有する。更に、これらのエミッタは、放出源のサイズが小さく、エネルギの広がりも小さい。一般的な(冷)電界エミッタは、非常に細い点状に形成されたタングステンの結晶を含んでおり、これはタングステンワイヤのループに取り付けられる。この非常に細い点状のタングステンは、しばしばエミッタ先端(emitter tip)と呼ばれる。冷電界エミッタ(cold field emitter)に電圧を印加すると、その曲率半径が小さいことから、エミッタ先端には非常に高い電界が形成される。この高電圧によって、電子は、金属と冷電界エミッタが配置されている真空との間のポテンシャル障壁を通ることができる。この電界は、エミッタ先端から電子を「抽出」することから、しばしば抽出電界(electric extractor field)と呼ばれる。
【0005】
一般に、結晶からなる電界エミッタは、小さな先端上の異なる結晶の表面又は方位に対応する異なる放出領域を有する。電界放出ガン(field emission gun)のビーム電流及び放出の安定性は、電界エミッタの放出領域に強く依存する。図1は、電界電子顕微鏡(FEM)を用いて得られた、単結晶タングステンからなるエミッタの<110>方位における典型的な放出パターンを示している。結晶面が異なれば仕事関数が異なることから、放出領域によって輝度が大きく異なっている。更に、放出電流の安定性は、結晶方位に対応する放出に応じて異なる。ある結晶面の仕事関数を下げるためにカバレージを付加することによって、電界エミッタの輝度を高めることができる。例えば、W(100)−ZnOショットキーエミッタなどである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の装置では、位置と結晶方位を機械的に粗くアラインメントすることによって放出領域が決定されている。
荷電粒子ビーム電流の輝度と安定性を最適化することが、特に冷電界放出の場合において望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に鑑みて、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、少なくとも2つの放出ピークを含んだ放出パターンを有するエミッタ(102)と、ガンレンズ(119、519、919)と、ダイヤフラム(120)とを含み、ガンレンズは、デフレクタ・ユニット(deflector unit)(110)を含み、デフレクタ・ユニットは、少なくとも2つの放出ピークのうちの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向け、それによって少なくとも2つの放出パターンから放出ピークのうちの放出ピークを選択するようになっている。
【0008】
更に、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタ(102)と、ガンレンズ(119、519、919)と、デフレクタ・ユニット(110)と、ダイヤフラム(120)とを含み、ガンレンズ及びデフレクタ・ユニットは、エミッタから約50mm又はそれ未満の距離内に配置される。
【0009】
更に、エミッタの放出パターンを測定する方法を提供する。当該方法は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタ(102)を設けるステップと、ダイヤフラム(120)の開口部の上の荷電粒子ビームの放出パターンを偏向するステップと、ダイヤフラムを通過する電流に相関付けられた値を測定するステップと、偏向の関数としてその値を求めるステップとを含む。
【0010】
更に、放出パターンの放出ピークを選択する方法を提供する。当該方法は、請求項25から請求項30のいずれかによって得られる放出パターンを準備するステップと、放出パターンの放出ピークを選択するステップと、選択された放出ピークをダイヤフラム(120)の開口部に通すために荷電粒子ビームを偏向するステップとを含む。
【0011】
更に別の利点、特徴、態様、及び詳細は、従属請求項、説明、及び図面から明らかである。
【0012】
別の態様により、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、不規則的又は不連続的な放出パターンを有するエミッタと、ガンレンズと、デフレクタ・ユニットと、ダイヤフラムとを含み、デフレクタ・ユニットは、ガンレンズに一体化され、デフレクタ・ユニットはまた、放出パターンの一部をダイヤフラムの開口部に向け、それによってエミッタの放出領域の放出を選択するようになっている。
【0013】
別の態様により、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、放出ピークを有する不規則的又は不連続的な放出パターンを備えたエミッタ、例えば電界エミッタと、ガンレンズと、ダイヤフラムとを含み、ガンレンズは、デフレクタ・ユニットを含み、デフレクタ・ユニットは、放出ピークのうちの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向け、それによって少なくとも2つの放出パターンから放出ピークのうちの放出ピークを選択するようになっている。
【0014】
更に別の態様によれば、デフレクタ・ユニット及び/又はガンレンズは、エミッタから約50mm又はそれ未満の距離内、例えば典型的には、エミッタから約30mm又はそれ未満のところに配置される。それによってガンレンズの位置は、中間電極によって規定される。
【0015】
更に別の態様により、荷電粒子ビーム装置を提供する。装置は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタと、ガンレンズと、デフレクタ・ユニットと、ダイヤフラムとを含み、ガンレンズ及びデフレクタ・ユニットは、エミッタから約50mm又はそれ未満の距離内、例えば典型的には、エミッタから約30mm又はそれ未満の距離内に配置される。
【0016】
別の態様により、エミッタの放出パターンを測定する方法を提供する。当該方法は、不規則的又は不連続的放出パターンを有するエミッタを設けるステップと、ダイヤフラムの開口部の上の荷電粒子ビームの放出パターンを偏向するステップと、ダイヤフラムを通過する荷電粒子ビームの電流に相関付けられた値を測定するステップと、偏向量の関数として値を求めるステップを含む。
【0017】
更に別の態様により、放出パターンの放出ピークを選択する方法を提供する。当該方法は、不規則的又は不連続的放出パターンを有するエミッタの放出パターンを準備する又は測定するステップと、放出パターンの放出ピークを選択するステップと、選択された放出ピークをダイヤフラムの開口部に通すために荷電粒子ビームを偏向するステップとを含む。
【0018】
本発明の態様には、開示される方法を実行するための装置、記載された方法の各ステップを実行するために装置の構成部品も含まれる。これらの方法の各ステップは、ハードウエア要素、適切なソフトウエアでプログラムされたコンピュータ、又はこれら二つのあらゆる組合せ、その他の任意の仕方で実行することができる。更に、本発明の態様には、記載された装置が作動する方法も含まれる。その方法には、装置の全ての機能を実行するか又は装置の全ての部品を製造するためのステップが含まれる。
【0019】
上述の一部及び本発明の他のより詳細な態様を以下の説明で解説し、図面を参照して部分的に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】印でマーク付けされた異なる結晶面の輝度が異なっている電界放出先端の典型的な放出パターンを示す図である。
【図2】本発明による荷電粒子ビーム装置のガン領域の第1の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【図4a】本発明によるガン領域に配置されるデフレクタ・ユニットの実施形態を示す図である。
【図4b】本発明によるガン領域に配置されるデフレクタ・ユニットの実施形態を示す図である。
【図4c】本発明によるガン領域に配置されるデフレクタ・ユニットの実施形態を示す図である。
【図5】デフレクタ・ユニット及びダイヤフラムを有する電極がガンレンズに一体化されている本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図6】デフレクタ・ユニット及びダイヤフラムを有する電極がガンレンズに一体化され、かつビームアラインメントのための二重デフレクタが設けられた本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図7】デフレクタ・ユニット及びダイヤフラムを有する電極がガンレンズに一体化され、かつエミッタのための変位ユニットが設けられた本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図8】デフレクタ・ユニット及び抽出装置がガンレンズに一体化され、かつビームアラインメントのための二重デフレクタ及びエミッタのための変位ユニットが設けられた本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図9】デフレクタ・ユニットがガンレンズに一体化された本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、図面に実施例を示した種々の実施形態について詳細に説明する。図面及び以下の説明において、同一の符号は、同一又は類似のエレメントを示す。実施例は、説明を目的として与えられるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。例えば、一実施形態の一部として例示され又は記載される特徴部分を、別の実施形態について又は別の実施形態と協働して、更に別の実施形態をもたらすために使用することができる。本発明には、このような修正及び変形も含むことを意図されている。
【0022】
以下の実施形態は、特に、電子ビーム及び電界エミッタ、特に冷電界エミッタを参照して説明される。これは、本発明を限定するものと理解すべきではない。本発明は、他の荷電粒子及び不連続的放出パターンを有する他の形式のエミッタにも適用することができる。例えば、ナノチューブや、輝度は極めて高いが放出パターンは連続的ではない他の機能的材料も、本発明に使用することができる。更に、荷電粒子としての電子の代わりに、本発明は、イオンにも、そして異なる個別の放出領域を備えた放出パターンを有する種々のイオンエミッタにも使用することができる。
【0023】
ここで、図2を参照して第1の実施形態について説明する。図2は、電界エミッタ102を示しており、これは実質的に光軸101上に位置している。電界エミッタ102は、図1に示すパターンに類似した放出特性を有する。エミッタ102の放出は、エミッタと抽出装置(extractor)114との間の電位差並びに放出先端の非常に小さな半径に基づくものであり、これにより、エミッタ102の放出先端から電子を抽出することができる高い電界が発生する。
【0024】
エミッタ102の放出パターンの1つの放出領域からの放出を選択するために、デフレクタ・ユニット110が設けられている。デフレクタ・ユニット110は多重極エレメントであり、静電エレメント、磁気エレメント、又は磁気−静電気を組合せたエレメントなどとすることができる。デフレクタ・ユニット110は、エミッタ102の近くに設けられている。これは、デフレクタ・ユニットが、エミッタ先端から25mm又はそれ未満の距離内、好ましくは20mm又はそれ未満の距離内に設けられることを意味するものとする。したがって、デフレクタ・ユニットは、電界エミッタに必要とされる同じ超高真空(UHV)内に配置されることになり、その真空度は約1*10-8mbar(0.75*10-8Torr)又はそれ未満の範囲である。電界エミッタからそこそこに安定した放出を得るためには、超高真空としては典型的には1.33*10-7Pa(10-9Torr)よりも良いことが、望ましくは1.33*10-9Pa(10-11Torr)よりも良いことが必要とされる。原理的には、圧力が低いほど真空は良くなる。特定の実施形態に限定されるものではないが、デフレクタ・ユニットが置かれるこれのような真空条件のため、デフレクタ・ユニット110は典型的には静電多重極エレメントであることが好ましい。
【0025】
多重極エレメントは、少なくとも3つの電極を含み、一般には、4つの電極を有する四重極の形態とされる。また、8つの電極を有する八重極を用いることもできるが、これについては、図4a〜図4cとの関連で説明する。
【0026】
多重極エレメントは、デフレクタに、光軸101に垂直な平面内で二次元的に電子ビームを走査することを可能にする。それによって例えば冷電界エミッタのようなエミッタ102の放出パターンの放出領域を、電極116に一体化されたダイヤフラム120の上で走査させることができる。小さいアパーチャ絞りを形成するダイヤフラム120の上で放出領域を走査させることにより、放出パターンの異なる放出領域の1つを柔軟に選択することができる。ダイヤフラム又はアパーチャは開口部を有し、その直径は例えば約1μmから50μmである。
【0027】
異なる放出領域は、不規則であるが、各々は、干渉性の高い単原子電界放出をもたらす。図1で例示的に見ることができるこれらの放出スポットのそれぞれは、独特の特性を有する。これらのうちのいくつかは、非常に高い輝度(これは高ビーム電流である)、非常に良好なビーム電流安定性、あるいは有利なビーム形状を持っている。エミッタの特定の放出領域に対応する放出スポットの1つを柔軟に選択することができれば、具体的な用途に対し必要に応じて個々の電子ビームを選択することができる。一般には、高い輝度及び高い安定性を有する放出領域が選択されるだろう。
【0028】
部品114、115、及び116はガンレンズ119を構成し、これは典型的には集光レンズとして使用することができる。それによって3つの電極のこの配置は、アインツェルレンズ(Einzel lens)として又は界浸レンズ(immersion lens)として適用することができる。また、他の図に関して説明する他の実施形態には、異なる形式のレンズを使用することもできる。
【0029】
図2に示した実施形態では、抽出装置114、デフレクタ・ユニット110、ダイヤフラム120を含む電極116は、ガンレンズ119に一体化されている。図2から図9に示した全ての実施形態では、ガンレンズは、デフレクタ・ユニット及び他の構成部品を含んでいる。構成部品が、ガンレンズに一体化されている。他の典型的な選択肢として、デフレクタ・ユニットと他の構成部品の一部とが、ガンレンズの電極を形成するようにすることもできる。このようにするとこれらの構成部品も同じように一体化されるが、ガンレンズのある構成要素を置き換えることになろう。
【0030】
上記の点を考慮すると、ガンレンズ及びそのデフレクタ・ユニット110を電界エミッタ102の近くに配置することができる。本明細書で説明する具体的な実施形態からは離れて、典型的には、ガンレンズ/集光レンズ及びデフレクタ・ユニットを、エミッタ先端に対して25mm又はそれ未満の距離内、好ましくは20mm又はそれ未満の距離内に配置することができる。
【0031】
ガンレンズ119とそのデフレクタ・ユニット110をエミッタの近くに置くことによって、以下の2つの利点を達成することができる。第1に、高電流での応用では、1次電子ビームにおいて電子間相互作用という問題がある。電子間相互作用は、荷電粒子ビームのエネルギ幅を増大させ、それによって色収差が大きくなる。更に、電子間の確率過程散乱は、電子ビームを不鮮明にする。したがって、放出電子のうちエミッタに近い部分のものをできるだけブロックすることが有利だと考えられる。こうすれば、その後の電子ビーム経路に沿った電子間相互作用は低減される。
【0032】
第2に、冷電界エミッタのように先端が非常に小さい荷電粒子供給源や、CFE SEM又はFIBといった小さな仮想寸法を有する供給源有する構成では、一般に、電子ビームの小さな縮小化が行われて、試料上を走査する。したがって、仮想寸法が小さい荷電粒子供給源を用いる用途では、倍率1:1又は倍率<10のテレセントリック構成が普及している。これらの構成では、必ずしもそうとは限らないが、しばしば例えばガンレンズの後のクロスオーバーを回避する。クロスオーバーを回避することによって、電子間相互作用を低減することができる。一例として、荷電粒子ビームが試料に集束されるまで、エミッタ先端の後にクロスオーバーをなくす。小さな縮小化の場合、集光レンズによってもたらされる収差が与える影響が大きくなる。このため、集光レンズの短い焦点距離によってこれらの収差の低減を図ろうとする。これは、上述のエミッタ102近くの位置に設けることによって実現される。
【0033】
更に、本発明によって、一般には高輝度且つ高安定性というそれぞれのニーズに適した放出領域の位置を正確に特定することができる。また、システムの電子ビームのアラインメントが単純化される。更に、異なる輝度の放出スポットを選択することができ、それによって用途に応じてビーム電流を変えることができる。その結果、複数のアパーチャを有するプレートなどの他の構成を省略することができる。更なる利点として、低価格の多結晶電界エミッタを利用することができる。例えば、多結晶タングステンワイヤをエッチングして得られる電界エミッタの先端は、ほとんどの場合、図1に示すパターンと類似の放出パターンを生じる。既に述べた、ナノチューブからの放出、及び輝度が極めて高いが連続的放出パターンがない機能材料の放出も、本発明と共に使用することができる。
【0034】
ここで図2の実施形態に戻る。ダイヤフラム120の下に、検出器130が示されている。この実施形態では、小さな絞りの後にファラデーカップ状の検出器を用いており、ファラデーカップは、この小さな絞りを通過する電子の量を検出する。ファラデーカップは、光軸上にあるビーム経路内に移動させることができるようになっており、以下の方法を実行することができる。
【0035】
電界エミッタの放出パターンは、アパーチャ120の平面に投射される。デフレクタ・ユニットは、ダイヤフラムであるアパーチャを通じてパターン全体を(連続的に)走査する。検出器130は、電荷又は電流をそれぞれ測定する。走査信号及び測定した電流を用いて、放出パターンの画像が取得される。更に、ガンレンズを使用して測定パターンの解像度及び/又は倍率を変えることが可能である。測定されたパターンは、輝度又は安定性などの所望のニーズに関して、評価することができる。試験目的、検査目的その他の目的で通常の条件で荷電粒子ビーム装置を動作させているときに、デフレクタ・ユニット110を使用して一定の放出領域を選択することができる。
【0036】
ダイヤフラムを通過する電子の量を直接的に検出するファラデーカップ形式の検出器の代わりに、他の検出器を利用することもできる。例えば、電子量を間接的に測定することもできる。ここで、図3を参照してダイヤフラムを通過する電流の間接的測定の例を説明する。
【0037】
図2と同様に、図3の実施形態にも、エミッタ102、抽出装置114、デフレクタ・ユニット110、アパーチャ/ダイヤフラム120を有する電極116が示されている。検出器、デフレクタ・ユニット、及び電極は、ガンレンズを構成する。図3には更にチューブ132が示されており、これは電子を高い電位まで加速させるのに使用される。このようなビームの増強は、電子間相互作用を低減させる。電子が、例えば界浸レンズであるガンレンズによって既に加速されている場合には、チューブ132は、その電子を高い電位に維持する。
【0038】
荷電粒子ビームは、対物レンズによって試料140に集束される。対物レンズは、一例として、複合的な磁気−静電レンズとして示されており、これは磁気部分136と、減速電極(retarding electrode)137及びチューブ132によって与えられる上述の高い電位とによって構成される静電気部分とを含んでいる。しかし、他のレンズを使用することもできることは理解されるだろう。静電レンズを使用することも可能であり、その典型的なものはアインツェルレンズ、界浸レンズである。更に、磁気レンズや、他の形式の複合的な磁気−静電レンズを使用することもできる。
【0039】
図3には、電子ビームを試料の上で走査するのに使用される走査デフレクタ135も示されている。走査デフレクタ135には、電子ビームの磁気偏向のための走査コイルを含めることができる。放出電子のうちダイヤフラム120を通過した部分が試料140に当たるため、二次電子や、後方散乱電子、オージェ電子、光子、X線などが放出される。電子は、電極137によって対物レンズを通じて加速され、検出器134によって検出される。
【0040】
対物レンズを設けず、ガンレンズを用いて1次荷電粒子ビームを試料140に集束させる場合には、デフレクタ・ユニット135及び検出器134は、ダイヤフラムと試料との間に配置される。
【0041】
上述のダイヤフラムを通過する電子の量の測定に関して言うと、検出される二次電子の量を、ダイヤフラム120を通過する電流の間接的な指標として用いることができる。したがって、上述の方法を以下のように偏向することができる。デフレクタ・ユニット110は、エミッタ102の放出パターンをアパーチャ120上で走査するのに用いられる。電子のうちアパーチャを通過する部分の電子が試料140に衝突して二次電子を生成する際、その二次電子は検出器134によって検出される。デフレクタ・ユニット110の走査信号と検出器134によって検出された信号は、放出パターンの画像を生成するのに用いられる。
【0042】
上述の実施例は、一般的に以下のように説明することができる。以下の方法を、本発明と共に適用することができる。荷電粒子ビームは、エミッタ102、典型的には電界エミッタ、又は不連続的放出パターンを有する別のエミッタ(ナノチューブなど)によって放出される。デフレクタ・ユニットを作動させて、放出荷電粒子をダイヤフラム上で走査させる。ダイヤフラムは、荷電粒子ビームの一部をそこに設けられた開口部を通して通過させ、かつ荷電粒子ビームの残りの部分をブロックする寸法を有している。オプションとして、ダイヤフラム上を走査する荷電粒子ビームの解像度及び/又は倍率を変えるために、ガンレンズを使用することができる。更に別のステップで、ダイヤフラムを通過する電流又は電荷量が測定される。これは、ダイヤフラムの後に設けた検出器で荷電粒子ビームを直接測定するか、あるいは測定すべき荷電粒子ビームの衝突の際に放出される二次粒子の検出といった間接的な測定によって実現することができる。ダイヤフラムを通過した粒子の量をデフレクタ・ユニット110によってなされた偏向量の関数として求めることによって、放射パターンの画像を得ることができる。偏向量の決定には、典型的にはデフレクタ・ユニットの走査信号を利用することができる。
【0043】
得られたこの放出パターンを用い、以下のステップを経て、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法が更に実行される。荷電粒子ビームは、エミッタ102、典型的には電界エミッタ、又は不連続的放出パターンを有する別のエミッタによって放出される。デフレクタ・ユニット110を制御して荷電粒子ビームの一部を選択することによって、所望の荷電粒子がダイヤフラムを通過するようにする。選択された放出領域の荷電粒子は、試験又は検査しようとする試料に集束させ、及び/又は、その上で走査される。試験又は検査しようとする試料から測定結果を得るために、二次荷電粒子及び/又は後方散乱荷電粒子、光子、又はX線が、検出器によって検出される。この方法は、試料を画像化する方法に適用されるだけでなく、荷電粒子ビームを使用してマスクや基板などをパターニングするリソグラフィ方法やリソグラフィ装置にも適用できることが理解されるだろう。集束イオンビーム装置(FIB)は、イオンエミッタを使用するシステムの一例である。
【0044】
所望の用途に応じて、エミッタを、電子エミッタ又はイオンエミッタとすることができる。また、不連続的な放出パターンを有する別の形式のイオンエミッタも存在し、これにも本発明の装置及び方法を使用することができる。本発明は一般に、不連続的な放出パターンを有するエミッタを用いた装置及び方法に関するが、不連続的とは、複数の別個の放出領域、例えば複数の結晶学的な面を有し、それによって別個の放出を別個の放出領域に割り当てることができるものと理解すべきである。異なる複数の放出領域が、放出パターンを形成する。本発明によれば、放出パターン全体から荷電粒子放出の一部が選択される。荷電粒子ビームの残りの部分はブロックされる。
【0045】
不連続的放出パターンとは、エミッタ先端を始点とする普通の「ベル形(bell-shaped)」の放出分布を意味するのではなく、エミッタが、その先端領域を始点とする放出パターンを有し、それが放出特性において少なくとも2つの放出ピークを示すことを意味する。ここで、少なくとも2つのピークとは、先端領域(電界強度が最も高い)から照射される三次元放出特性における少なくとも2つの方向であって、これらの間に放出電流密度がより小さい別の方向が存在するそのような2つの方向を見出すことができることを意味する。放出において少なくとも2つの極大値が存在するので、この不連続的な放出パターンを、一般に断続的な又は散発的なものとみなすことができる。
【0046】
図4aから図4cは、デフレクタ・ユニット110の実施形態を示している。図4aは、3つのセグメント111を有する多重極エレメントを含んでいる実施形態を示している。この3つのセグメントによって、デフレクタ・ユニットは、光軸101に実質的に垂直な平面内で二次元的に電子ビームを偏向させることができる(図3参照)。それによって放出パターンの二次元画像が生成される。
【0047】
セグメントは、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式のいずれかとすることができる。これらのセグメントを含むデフレクタ・ユニットが典型的にエミッタ近くに配置されるという事実を考慮すると、デフレクタ・ユニットは、UHV内にある必要がある。したがって、この場合には、多重極エレメントが静電式であることが有利であると考えられる。
【0048】
図4bに示した別の実施形態では、デフレクタ・ユニット110は、4つのセグメント112を有する多重極エレメントを含む。ここでもまた、この多重極エレメントは、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式のいずれかとすることができる。この四重極エレメントは、放出された電子ビームを、ダイヤフラムの上で2つの方向(z軸が光軸と示された時のx−y平面)に偏向させることができる。図4cは、多重極エレメントとして八重極を有する実施形態を示している。この八重極は、8つのセグメント113を含み、多重極エレメントの各セグメントは、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式とすることができる。
【0049】
図5は、本発明による更に別の構成を示している。エミッタ102は、本質的に光軸101上に配置されている。典型的には電界エミッタとされるエミッタは、抽出装置104との協働作用によって電子を放出する。冷電界エミッタに電圧を印加すると、その小さな曲率半径によって非常に高い電界がエミッタ先端に形成される。この高い電界によって、電子は、金属と、冷電界エミッタが置かれている真空との間のポテンシャル障壁を通過することができる。したがって、確立された電界は、電子をエミッタ先端から「抽出」させるので、抽出電界と呼ぶことが多い。電界エミッタ102及び抽出装置104は、これらを予め組み立てた又は一体化したパッケージとして提供することができる。
【0050】
ガンレンズ519は、構成部品115、110、及び116によって与えられる。この実施形態では、電極115、デフレクタ・ユニット110、及び電極116が、アインツェルレンズを構成する。デフレクタ・ユニット110は、ガンレンズ110に一体化され、これによってエミッタ102の放出パターンをダイヤフラム120上で走査させることができる。この構成によって、ガンレンズ及びデフレクタ・ユニットをエミッタに近づけるも可能である。一方、それによって集光レンズの役割を果たすガンレンズの焦点距離を短くすることができる。他方、電子ビームの部分的な偏向や選択を、エミッタの近くで実現することができる。それによって残りのコラム内のビーム電流が低減される。したがって、電子間相互作用による悪影響も低減される。
【0051】
放出パターンの所望の領域を選択するために、デフレクタ・ユニット11によってビームを偏向して、放射パターンの当該所望の領域がダイヤフラム120を通過するようにする。しかしながらそのために、ビームは、光軸101に関して不適切に偏向される場合がある。そこで、図6に示した実施形態では、デフレクタ151及び152を有する二重デフレクタを更に含んでいる。これらのデフレクタを使用して、ダイヤフラム120を通過する電子ビームを部分的に光軸に対してアラインメント(整列)させることができる。デフレクタ151及び152は、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式のいずれかとすることができる。電子ビームのアラインメントは、第2のデフレクタ152内で電子ビームが光軸上に向けられるように第1のデフレクタ151を制御することによって達成することができる。次に、第2のデフレクタを使用して、光軸に沿って電子ビームの方向を変える。一般に、デフレクタ・ユニット110によって行われる光軸から離れての偏向作用は、光軸に垂直な平面内で二次元となるので、二重デフレクタ・ユニット151及び152も、典型的には、光軸に垂直な2つの方向に電子ビームを偏向できるべきである。偏向が1つ又は2つの方向で起こるか否かは、ダイヤフラム120を通過するように選択した放出パターンの領域に依存する。
【0052】
例えば異なる方向に放出するCFEのような放出源に対しては、先端を画像化して放出の適切な部分を選択するよう意図されている。本発明によれば、放出荷電粒子のうちで放出領域に対応する部分の選択は、ダイヤフラム上での電界エミッタの放出パターンを偏向させることによって行われる。それによってピボット点がエミッタの位置にあれば好ましいだろう。したがって、エミッタ内でデフレクタが必要になるか、あるいはエミッタの直後かつガン/集光レンズの前に2段デフレクタが必要となるだろう。第1の選択肢は実現可能ではなく、第2の選択肢では、エミッタからの集光レンズの距離が長くなる。その結果、焦点距離、したがって集光レンズの収差が大きくなる。以上の点を考慮して、本発明では、ダイヤフラム上で放出パターンを走査させるためのデフレクタ・ユニットを、ガンレンズ内に一体化するか、あるいはエミッタとガンレンズの間に一段のデフレクタを配置することができる。
【0053】
ここで一体化という語は、ガンレンズがデフレクタ・ユニットを含むものとして理解すべきである。すなわち、デフレクタ・ユニットをガンレンズ内に追加の電極として設けるか、あるいはデフレクタを、ガンレンズの一部として形成し、好ましくは例えば中間電極とする。後者の場合、ガンレンズの構成要素がデフレクタ・ユニットに置き換えられる。
【0054】
図6の実施形態では、従来のガンレンズの中間電極が、デフレクタ・ユニットを構成する多重極エレメントで置き換えられている。多重極エレメントは、例えば、静電式とすることができる。電子ビームの望ましい部分を選択することでもたらされる光軸に対するミスアラインメントを補償するために、更に別の偏向システムがダイヤフラムの後に含められている。図7に示す更に別の実施形態では、デフレクタ・ユニット110によってもたらされる電子ビームのシフトと、放出先端の機械的変位によってもたらされる電子ビームのシフトとが組み合わされている。変位ユニット160により、エミッタ102を好ましくは光軸に垂直な2つの方向に移動させることができる。エミッタの機械的シフトと電子ビームの偏向とを組合せて得られる作用によって、放出パターンのある一定の放出領域を正確に選択する性能が向上する。
【0055】
図8に示す更に別の実施形態では、放出先端をシフトする変位ユニット164、デフレクタ・ユニット、及び二重デフレクタ151及び152を組み合わせることができる。これによって、放出先端の機械的シフトとデフレクタ・ユニットの電気的シフトとの組合せ、並びにアパーチャ120以降の光軸101に対するビームアラインメントによる放出パターンの望ましい放出パターンの正確な選択が可能になる。図8では、更に、ガンレンズは、構成要素114、110、及び116によって構成されている。ダイヤフラムを含む電極106は、ガンレンズの(直)後に配置されている。
【0056】
機械的シフト、電気的シフト、及び/又はダイヤフラム後のアラインメントを用いて、本質的にまっすぐ、かつ、本質的に光軸上で、すなわちレンズの中心を通り、ダイヤフラムを通るように、放出パターンの選択された部分をラスタ走査させる。
【0057】
上述の実施形態のアパーチャ/ダイヤフラム120は、典型的には円形の形状を有する。しかしながら、個々の用途に応じて希望する場合は、スリット形状のダイヤフラムを使用することもできる。円形アパーチャの直径は、約1μmから約100μmの範囲、好ましくは、約5μmから50μmの範囲とすることができる。スリット形状のアパーチを使用した場合は、スリット幅は、約1μmから約100μmの範囲、好ましくは、約5μmから50μmの範囲とすることができる。スリットの長さは、数ミリメートル、例えば2mmまでとすることができる。
【0058】
図2から図8に関連して説明した実施形態では、集光レンズを構成するガンレンズは、典型的にはデフレクタ・ユニット110を含むか、あるいはこのデフレクタがガンレンズの一部となっている。更に、これらの実施形態の一部においては、ダイヤフラム120を含む電極116もガンレンズに組み込まれている。同じことが抽出装置114にもあてはまり、一部の実施形態ではガンレンズに組み込まれている。また、電極106及び抽出装置104の両方は、ガンレンズの一部でないように示されている。図9には、抽出装置104及び電極106がガンレンズ919から分離されている実施形態が示してある。ガンレンズ119は、デフレクタ・ユニット110の他に電極114及び116を含んでいる。これにより、電極114を、電界エミッタ102のための第2の抽出装置(陽極)として使用することができる。
【0059】
更に別の実施形態(図示せず)として、デフレクタ・ユニット110を、ガンレンズの上方に設けることもできる。その場合、デフレクタ110は、ガンレンズとエミッタの間に配置される。
【0060】
本発明の実施形態に対して、例えばEP1530229に開示されているような高精度レンズを使用することもできる。2003年11月4日提出の当該出願の全内容は、引用により本明細書に組み込まれているものとする。上記出願にはレンズが開示されており、そのレンズは、荷電粒子ビームに対して作用する第1の開口部を有する第1のエレメントと、前記荷電粒子ビームに対して作用する少なくとも一つの第2のエレメントと、第1のエレメントと第2のエレメントの間に最小距離を与えるために第1のエレメントと第2のエレメントの間に配置された少なくとも1つの離間要素と、第1のエレメントを前記少なくとも1つの離間要素に当接させるための第1の保持要素とを有し、それによって第1の保持要素が前記少なくとも1つの離間要素に取り付けられる。離間要素及び保持要素は、第2の電極又は極片(pole piece)に対する第1の電極又は極片の高精度のアラインメントを考慮したものである。
【0061】
本発明の各実施形態は、更に、以下に詳しく述べる各特徴部分又は特徴部分の組合せを含むことができる。デフレクタ・ユニットは、エミッタ及びガンレンズの間に配置することができる。また、デフレクタ・ユニットをガンレンズと一体化して、デフレクタ・ユニットに、少なくとも2つの放出ピークのうちの1つの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向けさせることによって、放出パターンから少なくとも2つの放出ピークのうちの放出ピークを選択するようにしてもよい。このデフレクタ・ユニットは、エミッタから約30mm又はそれ未満の距離内に配置することができる。このデフレクタは、電界エミッタとすることができる。ダイヤフラムを、デフレクタ・ユニットの後に配置して、デフレクタ・ユニットによって複数の放出領域がダイヤフラムの開口部上で走査されるようにすることもできる。ダイヤフラムは、ガンレンズの最後部分の電極と一体化することもできる。荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子をエミッタから抽出する抽出装置を含むことができる。この抽出装置は、ガンレンズと一体化することができ、更に、ガンレンズの第1の電極を構成するようにもできる。デフレクタ・ユニットは、少なくとも3つのセグメントを有する多重極エレメント、あるいは四重極エレメント又は八重極エレメントのような多重極エレメントとすることができる。この多重極エレメントは、ガンレンズ内に一体化することができ、更に、ガンレンズの中間電極を構成するようにもできる。デフレクタ・ユニットは静電式とすることができるが、一方それとは独立して、ガンレンズを、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式とすることもできる。装置には、更に、エミッタを光軸と本質的に直交する平面内で機械的にシフトするための変位ユニット、及び/又は、ダイヤフラムを通過する荷電粒子電流を測定するための検出器を含めることができる。検出器は、ダイヤフラムの後に配置されるファラデーカップとすることができる。これとは別に又はこれに追加して、エミッタから放出された荷電粒子が当たる際に試料から放出される二次電子を測定する検出器を設けることができる。更に、光軸に沿った荷電粒子ビームのアラインメントのために、ダイヤフラムの後に設けられる二重デフレクタを含むこともできる。
【0062】
更に、以下に述べるステップの1つ又は以下のステップの組合せを、いずれの方法にも適用することができる。アパーチャを通過する電流に対応した測定値を、アパーチャを通過する電流、及び/又は、アパーチャを通過する電荷とすることができる。これとは別に又はこれに追加して、この測定値を、ダイヤフラムを通過する荷電粒子ビームの電流と相関関係を有する間接的な測定結果、特に、固体に荷電粒子が当たる際に放出される二次電子の検出信号とすることができる。更に、荷電粒子ビームは、ガンレンズで集束させることができる。エミッタは、光軸と本質的に垂直な平面内で移動させることができる。荷電粒子ビームは、ガンレンズ内で偏向させることができ、更に、ガンレンズの構成部品を用いて偏向させることができる。更に、ダイヤフラムを通過した荷電粒子ビームを、光軸に対してアラインメントすることができる。荷電粒子ビームは、ガンレンズ内及び/又はエミッタから約30mm又はそれ未満の距離内で偏向させることができる。荷電粒子は、電界エミッタと抽出装置の間に抽出電界を印加することによって放出させることができる。
【0063】
本発明をこのように詳細に説明したが、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく本発明に様々な修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0064】
102 エミッタ
110 デフレクタ・ユニット
120 ダイヤフラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に荷電粒子装置に関し、より具体的には、不連続的放出パターンを有する荷電粒子エミッタによる荷電粒子装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、荷電粒子ビーム装置、放出パターンを測定する方法、及び放出パターンの放出ピークを選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置は、以下に限定されるものではないが、製造中の半導体素子の検査、リソグラフィ用露光システム、検出装置、及び試験システムを含む多くの産業分野で使用されている。マイクロメートル及びナノメートルスケールでの試料の構造化、試験、及び検査において多くの需要がある。マイクロメートル及びナノメートルスケールでのプロセス制御、検査、又は構造化は、しばしば荷電粒子ビーム、例えば電子ビームを用いて行われる。荷電粒子ビームは、波長が短いため、例えば光子ビームと比較して優れた空間解像度が得られる。
【0003】
このような装置では、解像度の他に、処理能力(throughput)が問題となる。基板の広い領域をパターニングし又は検査することから、処理能力は、例えば10cm2/minを超えることが望ましい。荷電粒子ビーム装置では、処理能力は、荷電粒子のビーム電流に依存する。そのため、ビーム電流を増大することが必要となる。以下の説明では、一般に、二次電子、後方散乱電子、及びオージェ電子を区別する必要はない。そこで以下では簡単化するために、この三種類をまとめて「二次電子」と称する。
【0004】
荷電粒子のビーム電流の増大に対する要望に鑑みて、電界放出エミッタのような荷電粒子ビームエミッタは、輝度が高いために非常に大きな可能性を有する。更に、これらのエミッタは、放出源のサイズが小さく、エネルギの広がりも小さい。一般的な(冷)電界エミッタは、非常に細い点状に形成されたタングステンの結晶を含んでおり、これはタングステンワイヤのループに取り付けられる。この非常に細い点状のタングステンは、しばしばエミッタ先端(emitter tip)と呼ばれる。冷電界エミッタ(cold field emitter)に電圧を印加すると、その曲率半径が小さいことから、エミッタ先端には非常に高い電界が形成される。この高電圧によって、電子は、金属と冷電界エミッタが配置されている真空との間のポテンシャル障壁を通ることができる。この電界は、エミッタ先端から電子を「抽出」することから、しばしば抽出電界(electric extractor field)と呼ばれる。
【0005】
一般に、結晶からなる電界エミッタは、小さな先端上の異なる結晶の表面又は方位に対応する異なる放出領域を有する。電界放出ガン(field emission gun)のビーム電流及び放出の安定性は、電界エミッタの放出領域に強く依存する。図1は、電界電子顕微鏡(FEM)を用いて得られた、単結晶タングステンからなるエミッタの<110>方位における典型的な放出パターンを示している。結晶面が異なれば仕事関数が異なることから、放出領域によって輝度が大きく異なっている。更に、放出電流の安定性は、結晶方位に対応する放出に応じて異なる。ある結晶面の仕事関数を下げるためにカバレージを付加することによって、電界エミッタの輝度を高めることができる。例えば、W(100)−ZnOショットキーエミッタなどである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の装置では、位置と結晶方位を機械的に粗くアラインメントすることによって放出領域が決定されている。
荷電粒子ビーム電流の輝度と安定性を最適化することが、特に冷電界放出の場合において望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に鑑みて、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、少なくとも2つの放出ピークを含んだ放出パターンを有するエミッタ(102)と、ガンレンズ(119、519、919)と、ダイヤフラム(120)とを含み、ガンレンズは、デフレクタ・ユニット(deflector unit)(110)を含み、デフレクタ・ユニットは、少なくとも2つの放出ピークのうちの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向け、それによって少なくとも2つの放出パターンから放出ピークのうちの放出ピークを選択するようになっている。
【0008】
更に、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタ(102)と、ガンレンズ(119、519、919)と、デフレクタ・ユニット(110)と、ダイヤフラム(120)とを含み、ガンレンズ及びデフレクタ・ユニットは、エミッタから約50mm又はそれ未満の距離内に配置される。
【0009】
更に、エミッタの放出パターンを測定する方法を提供する。当該方法は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタ(102)を設けるステップと、ダイヤフラム(120)の開口部の上の荷電粒子ビームの放出パターンを偏向するステップと、ダイヤフラムを通過する電流に相関付けられた値を測定するステップと、偏向の関数としてその値を求めるステップとを含む。
【0010】
更に、放出パターンの放出ピークを選択する方法を提供する。当該方法は、請求項25から請求項30のいずれかによって得られる放出パターンを準備するステップと、放出パターンの放出ピークを選択するステップと、選択された放出ピークをダイヤフラム(120)の開口部に通すために荷電粒子ビームを偏向するステップとを含む。
【0011】
更に別の利点、特徴、態様、及び詳細は、従属請求項、説明、及び図面から明らかである。
【0012】
別の態様により、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、不規則的又は不連続的な放出パターンを有するエミッタと、ガンレンズと、デフレクタ・ユニットと、ダイヤフラムとを含み、デフレクタ・ユニットは、ガンレンズに一体化され、デフレクタ・ユニットはまた、放出パターンの一部をダイヤフラムの開口部に向け、それによってエミッタの放出領域の放出を選択するようになっている。
【0013】
別の態様により、荷電粒子ビーム装置を提供する。当該装置は、放出ピークを有する不規則的又は不連続的な放出パターンを備えたエミッタ、例えば電界エミッタと、ガンレンズと、ダイヤフラムとを含み、ガンレンズは、デフレクタ・ユニットを含み、デフレクタ・ユニットは、放出ピークのうちの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向け、それによって少なくとも2つの放出パターンから放出ピークのうちの放出ピークを選択するようになっている。
【0014】
更に別の態様によれば、デフレクタ・ユニット及び/又はガンレンズは、エミッタから約50mm又はそれ未満の距離内、例えば典型的には、エミッタから約30mm又はそれ未満のところに配置される。それによってガンレンズの位置は、中間電極によって規定される。
【0015】
更に別の態様により、荷電粒子ビーム装置を提供する。装置は、少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを有するエミッタと、ガンレンズと、デフレクタ・ユニットと、ダイヤフラムとを含み、ガンレンズ及びデフレクタ・ユニットは、エミッタから約50mm又はそれ未満の距離内、例えば典型的には、エミッタから約30mm又はそれ未満の距離内に配置される。
【0016】
別の態様により、エミッタの放出パターンを測定する方法を提供する。当該方法は、不規則的又は不連続的放出パターンを有するエミッタを設けるステップと、ダイヤフラムの開口部の上の荷電粒子ビームの放出パターンを偏向するステップと、ダイヤフラムを通過する荷電粒子ビームの電流に相関付けられた値を測定するステップと、偏向量の関数として値を求めるステップを含む。
【0017】
更に別の態様により、放出パターンの放出ピークを選択する方法を提供する。当該方法は、不規則的又は不連続的放出パターンを有するエミッタの放出パターンを準備する又は測定するステップと、放出パターンの放出ピークを選択するステップと、選択された放出ピークをダイヤフラムの開口部に通すために荷電粒子ビームを偏向するステップとを含む。
【0018】
本発明の態様には、開示される方法を実行するための装置、記載された方法の各ステップを実行するために装置の構成部品も含まれる。これらの方法の各ステップは、ハードウエア要素、適切なソフトウエアでプログラムされたコンピュータ、又はこれら二つのあらゆる組合せ、その他の任意の仕方で実行することができる。更に、本発明の態様には、記載された装置が作動する方法も含まれる。その方法には、装置の全ての機能を実行するか又は装置の全ての部品を製造するためのステップが含まれる。
【0019】
上述の一部及び本発明の他のより詳細な態様を以下の説明で解説し、図面を参照して部分的に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】印でマーク付けされた異なる結晶面の輝度が異なっている電界放出先端の典型的な放出パターンを示す図である。
【図2】本発明による荷電粒子ビーム装置のガン領域の第1の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【図4a】本発明によるガン領域に配置されるデフレクタ・ユニットの実施形態を示す図である。
【図4b】本発明によるガン領域に配置されるデフレクタ・ユニットの実施形態を示す図である。
【図4c】本発明によるガン領域に配置されるデフレクタ・ユニットの実施形態を示す図である。
【図5】デフレクタ・ユニット及びダイヤフラムを有する電極がガンレンズに一体化されている本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図6】デフレクタ・ユニット及びダイヤフラムを有する電極がガンレンズに一体化され、かつビームアラインメントのための二重デフレクタが設けられた本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図7】デフレクタ・ユニット及びダイヤフラムを有する電極がガンレンズに一体化され、かつエミッタのための変位ユニットが設けられた本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図8】デフレクタ・ユニット及び抽出装置がガンレンズに一体化され、かつビームアラインメントのための二重デフレクタ及びエミッタのための変位ユニットが設けられた本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【図9】デフレクタ・ユニットがガンレンズに一体化された本発明によるガン領域の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、図面に実施例を示した種々の実施形態について詳細に説明する。図面及び以下の説明において、同一の符号は、同一又は類似のエレメントを示す。実施例は、説明を目的として与えられるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。例えば、一実施形態の一部として例示され又は記載される特徴部分を、別の実施形態について又は別の実施形態と協働して、更に別の実施形態をもたらすために使用することができる。本発明には、このような修正及び変形も含むことを意図されている。
【0022】
以下の実施形態は、特に、電子ビーム及び電界エミッタ、特に冷電界エミッタを参照して説明される。これは、本発明を限定するものと理解すべきではない。本発明は、他の荷電粒子及び不連続的放出パターンを有する他の形式のエミッタにも適用することができる。例えば、ナノチューブや、輝度は極めて高いが放出パターンは連続的ではない他の機能的材料も、本発明に使用することができる。更に、荷電粒子としての電子の代わりに、本発明は、イオンにも、そして異なる個別の放出領域を備えた放出パターンを有する種々のイオンエミッタにも使用することができる。
【0023】
ここで、図2を参照して第1の実施形態について説明する。図2は、電界エミッタ102を示しており、これは実質的に光軸101上に位置している。電界エミッタ102は、図1に示すパターンに類似した放出特性を有する。エミッタ102の放出は、エミッタと抽出装置(extractor)114との間の電位差並びに放出先端の非常に小さな半径に基づくものであり、これにより、エミッタ102の放出先端から電子を抽出することができる高い電界が発生する。
【0024】
エミッタ102の放出パターンの1つの放出領域からの放出を選択するために、デフレクタ・ユニット110が設けられている。デフレクタ・ユニット110は多重極エレメントであり、静電エレメント、磁気エレメント、又は磁気−静電気を組合せたエレメントなどとすることができる。デフレクタ・ユニット110は、エミッタ102の近くに設けられている。これは、デフレクタ・ユニットが、エミッタ先端から25mm又はそれ未満の距離内、好ましくは20mm又はそれ未満の距離内に設けられることを意味するものとする。したがって、デフレクタ・ユニットは、電界エミッタに必要とされる同じ超高真空(UHV)内に配置されることになり、その真空度は約1*10-8mbar(0.75*10-8Torr)又はそれ未満の範囲である。電界エミッタからそこそこに安定した放出を得るためには、超高真空としては典型的には1.33*10-7Pa(10-9Torr)よりも良いことが、望ましくは1.33*10-9Pa(10-11Torr)よりも良いことが必要とされる。原理的には、圧力が低いほど真空は良くなる。特定の実施形態に限定されるものではないが、デフレクタ・ユニットが置かれるこれのような真空条件のため、デフレクタ・ユニット110は典型的には静電多重極エレメントであることが好ましい。
【0025】
多重極エレメントは、少なくとも3つの電極を含み、一般には、4つの電極を有する四重極の形態とされる。また、8つの電極を有する八重極を用いることもできるが、これについては、図4a〜図4cとの関連で説明する。
【0026】
多重極エレメントは、デフレクタに、光軸101に垂直な平面内で二次元的に電子ビームを走査することを可能にする。それによって例えば冷電界エミッタのようなエミッタ102の放出パターンの放出領域を、電極116に一体化されたダイヤフラム120の上で走査させることができる。小さいアパーチャ絞りを形成するダイヤフラム120の上で放出領域を走査させることにより、放出パターンの異なる放出領域の1つを柔軟に選択することができる。ダイヤフラム又はアパーチャは開口部を有し、その直径は例えば約1μmから50μmである。
【0027】
異なる放出領域は、不規則であるが、各々は、干渉性の高い単原子電界放出をもたらす。図1で例示的に見ることができるこれらの放出スポットのそれぞれは、独特の特性を有する。これらのうちのいくつかは、非常に高い輝度(これは高ビーム電流である)、非常に良好なビーム電流安定性、あるいは有利なビーム形状を持っている。エミッタの特定の放出領域に対応する放出スポットの1つを柔軟に選択することができれば、具体的な用途に対し必要に応じて個々の電子ビームを選択することができる。一般には、高い輝度及び高い安定性を有する放出領域が選択されるだろう。
【0028】
部品114、115、及び116はガンレンズ119を構成し、これは典型的には集光レンズとして使用することができる。それによって3つの電極のこの配置は、アインツェルレンズ(Einzel lens)として又は界浸レンズ(immersion lens)として適用することができる。また、他の図に関して説明する他の実施形態には、異なる形式のレンズを使用することもできる。
【0029】
図2に示した実施形態では、抽出装置114、デフレクタ・ユニット110、ダイヤフラム120を含む電極116は、ガンレンズ119に一体化されている。図2から図9に示した全ての実施形態では、ガンレンズは、デフレクタ・ユニット及び他の構成部品を含んでいる。構成部品が、ガンレンズに一体化されている。他の典型的な選択肢として、デフレクタ・ユニットと他の構成部品の一部とが、ガンレンズの電極を形成するようにすることもできる。このようにするとこれらの構成部品も同じように一体化されるが、ガンレンズのある構成要素を置き換えることになろう。
【0030】
上記の点を考慮すると、ガンレンズ及びそのデフレクタ・ユニット110を電界エミッタ102の近くに配置することができる。本明細書で説明する具体的な実施形態からは離れて、典型的には、ガンレンズ/集光レンズ及びデフレクタ・ユニットを、エミッタ先端に対して25mm又はそれ未満の距離内、好ましくは20mm又はそれ未満の距離内に配置することができる。
【0031】
ガンレンズ119とそのデフレクタ・ユニット110をエミッタの近くに置くことによって、以下の2つの利点を達成することができる。第1に、高電流での応用では、1次電子ビームにおいて電子間相互作用という問題がある。電子間相互作用は、荷電粒子ビームのエネルギ幅を増大させ、それによって色収差が大きくなる。更に、電子間の確率過程散乱は、電子ビームを不鮮明にする。したがって、放出電子のうちエミッタに近い部分のものをできるだけブロックすることが有利だと考えられる。こうすれば、その後の電子ビーム経路に沿った電子間相互作用は低減される。
【0032】
第2に、冷電界エミッタのように先端が非常に小さい荷電粒子供給源や、CFE SEM又はFIBといった小さな仮想寸法を有する供給源有する構成では、一般に、電子ビームの小さな縮小化が行われて、試料上を走査する。したがって、仮想寸法が小さい荷電粒子供給源を用いる用途では、倍率1:1又は倍率<10のテレセントリック構成が普及している。これらの構成では、必ずしもそうとは限らないが、しばしば例えばガンレンズの後のクロスオーバーを回避する。クロスオーバーを回避することによって、電子間相互作用を低減することができる。一例として、荷電粒子ビームが試料に集束されるまで、エミッタ先端の後にクロスオーバーをなくす。小さな縮小化の場合、集光レンズによってもたらされる収差が与える影響が大きくなる。このため、集光レンズの短い焦点距離によってこれらの収差の低減を図ろうとする。これは、上述のエミッタ102近くの位置に設けることによって実現される。
【0033】
更に、本発明によって、一般には高輝度且つ高安定性というそれぞれのニーズに適した放出領域の位置を正確に特定することができる。また、システムの電子ビームのアラインメントが単純化される。更に、異なる輝度の放出スポットを選択することができ、それによって用途に応じてビーム電流を変えることができる。その結果、複数のアパーチャを有するプレートなどの他の構成を省略することができる。更なる利点として、低価格の多結晶電界エミッタを利用することができる。例えば、多結晶タングステンワイヤをエッチングして得られる電界エミッタの先端は、ほとんどの場合、図1に示すパターンと類似の放出パターンを生じる。既に述べた、ナノチューブからの放出、及び輝度が極めて高いが連続的放出パターンがない機能材料の放出も、本発明と共に使用することができる。
【0034】
ここで図2の実施形態に戻る。ダイヤフラム120の下に、検出器130が示されている。この実施形態では、小さな絞りの後にファラデーカップ状の検出器を用いており、ファラデーカップは、この小さな絞りを通過する電子の量を検出する。ファラデーカップは、光軸上にあるビーム経路内に移動させることができるようになっており、以下の方法を実行することができる。
【0035】
電界エミッタの放出パターンは、アパーチャ120の平面に投射される。デフレクタ・ユニットは、ダイヤフラムであるアパーチャを通じてパターン全体を(連続的に)走査する。検出器130は、電荷又は電流をそれぞれ測定する。走査信号及び測定した電流を用いて、放出パターンの画像が取得される。更に、ガンレンズを使用して測定パターンの解像度及び/又は倍率を変えることが可能である。測定されたパターンは、輝度又は安定性などの所望のニーズに関して、評価することができる。試験目的、検査目的その他の目的で通常の条件で荷電粒子ビーム装置を動作させているときに、デフレクタ・ユニット110を使用して一定の放出領域を選択することができる。
【0036】
ダイヤフラムを通過する電子の量を直接的に検出するファラデーカップ形式の検出器の代わりに、他の検出器を利用することもできる。例えば、電子量を間接的に測定することもできる。ここで、図3を参照してダイヤフラムを通過する電流の間接的測定の例を説明する。
【0037】
図2と同様に、図3の実施形態にも、エミッタ102、抽出装置114、デフレクタ・ユニット110、アパーチャ/ダイヤフラム120を有する電極116が示されている。検出器、デフレクタ・ユニット、及び電極は、ガンレンズを構成する。図3には更にチューブ132が示されており、これは電子を高い電位まで加速させるのに使用される。このようなビームの増強は、電子間相互作用を低減させる。電子が、例えば界浸レンズであるガンレンズによって既に加速されている場合には、チューブ132は、その電子を高い電位に維持する。
【0038】
荷電粒子ビームは、対物レンズによって試料140に集束される。対物レンズは、一例として、複合的な磁気−静電レンズとして示されており、これは磁気部分136と、減速電極(retarding electrode)137及びチューブ132によって与えられる上述の高い電位とによって構成される静電気部分とを含んでいる。しかし、他のレンズを使用することもできることは理解されるだろう。静電レンズを使用することも可能であり、その典型的なものはアインツェルレンズ、界浸レンズである。更に、磁気レンズや、他の形式の複合的な磁気−静電レンズを使用することもできる。
【0039】
図3には、電子ビームを試料の上で走査するのに使用される走査デフレクタ135も示されている。走査デフレクタ135には、電子ビームの磁気偏向のための走査コイルを含めることができる。放出電子のうちダイヤフラム120を通過した部分が試料140に当たるため、二次電子や、後方散乱電子、オージェ電子、光子、X線などが放出される。電子は、電極137によって対物レンズを通じて加速され、検出器134によって検出される。
【0040】
対物レンズを設けず、ガンレンズを用いて1次荷電粒子ビームを試料140に集束させる場合には、デフレクタ・ユニット135及び検出器134は、ダイヤフラムと試料との間に配置される。
【0041】
上述のダイヤフラムを通過する電子の量の測定に関して言うと、検出される二次電子の量を、ダイヤフラム120を通過する電流の間接的な指標として用いることができる。したがって、上述の方法を以下のように偏向することができる。デフレクタ・ユニット110は、エミッタ102の放出パターンをアパーチャ120上で走査するのに用いられる。電子のうちアパーチャを通過する部分の電子が試料140に衝突して二次電子を生成する際、その二次電子は検出器134によって検出される。デフレクタ・ユニット110の走査信号と検出器134によって検出された信号は、放出パターンの画像を生成するのに用いられる。
【0042】
上述の実施例は、一般的に以下のように説明することができる。以下の方法を、本発明と共に適用することができる。荷電粒子ビームは、エミッタ102、典型的には電界エミッタ、又は不連続的放出パターンを有する別のエミッタ(ナノチューブなど)によって放出される。デフレクタ・ユニットを作動させて、放出荷電粒子をダイヤフラム上で走査させる。ダイヤフラムは、荷電粒子ビームの一部をそこに設けられた開口部を通して通過させ、かつ荷電粒子ビームの残りの部分をブロックする寸法を有している。オプションとして、ダイヤフラム上を走査する荷電粒子ビームの解像度及び/又は倍率を変えるために、ガンレンズを使用することができる。更に別のステップで、ダイヤフラムを通過する電流又は電荷量が測定される。これは、ダイヤフラムの後に設けた検出器で荷電粒子ビームを直接測定するか、あるいは測定すべき荷電粒子ビームの衝突の際に放出される二次粒子の検出といった間接的な測定によって実現することができる。ダイヤフラムを通過した粒子の量をデフレクタ・ユニット110によってなされた偏向量の関数として求めることによって、放射パターンの画像を得ることができる。偏向量の決定には、典型的にはデフレクタ・ユニットの走査信号を利用することができる。
【0043】
得られたこの放出パターンを用い、以下のステップを経て、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法が更に実行される。荷電粒子ビームは、エミッタ102、典型的には電界エミッタ、又は不連続的放出パターンを有する別のエミッタによって放出される。デフレクタ・ユニット110を制御して荷電粒子ビームの一部を選択することによって、所望の荷電粒子がダイヤフラムを通過するようにする。選択された放出領域の荷電粒子は、試験又は検査しようとする試料に集束させ、及び/又は、その上で走査される。試験又は検査しようとする試料から測定結果を得るために、二次荷電粒子及び/又は後方散乱荷電粒子、光子、又はX線が、検出器によって検出される。この方法は、試料を画像化する方法に適用されるだけでなく、荷電粒子ビームを使用してマスクや基板などをパターニングするリソグラフィ方法やリソグラフィ装置にも適用できることが理解されるだろう。集束イオンビーム装置(FIB)は、イオンエミッタを使用するシステムの一例である。
【0044】
所望の用途に応じて、エミッタを、電子エミッタ又はイオンエミッタとすることができる。また、不連続的な放出パターンを有する別の形式のイオンエミッタも存在し、これにも本発明の装置及び方法を使用することができる。本発明は一般に、不連続的な放出パターンを有するエミッタを用いた装置及び方法に関するが、不連続的とは、複数の別個の放出領域、例えば複数の結晶学的な面を有し、それによって別個の放出を別個の放出領域に割り当てることができるものと理解すべきである。異なる複数の放出領域が、放出パターンを形成する。本発明によれば、放出パターン全体から荷電粒子放出の一部が選択される。荷電粒子ビームの残りの部分はブロックされる。
【0045】
不連続的放出パターンとは、エミッタ先端を始点とする普通の「ベル形(bell-shaped)」の放出分布を意味するのではなく、エミッタが、その先端領域を始点とする放出パターンを有し、それが放出特性において少なくとも2つの放出ピークを示すことを意味する。ここで、少なくとも2つのピークとは、先端領域(電界強度が最も高い)から照射される三次元放出特性における少なくとも2つの方向であって、これらの間に放出電流密度がより小さい別の方向が存在するそのような2つの方向を見出すことができることを意味する。放出において少なくとも2つの極大値が存在するので、この不連続的な放出パターンを、一般に断続的な又は散発的なものとみなすことができる。
【0046】
図4aから図4cは、デフレクタ・ユニット110の実施形態を示している。図4aは、3つのセグメント111を有する多重極エレメントを含んでいる実施形態を示している。この3つのセグメントによって、デフレクタ・ユニットは、光軸101に実質的に垂直な平面内で二次元的に電子ビームを偏向させることができる(図3参照)。それによって放出パターンの二次元画像が生成される。
【0047】
セグメントは、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式のいずれかとすることができる。これらのセグメントを含むデフレクタ・ユニットが典型的にエミッタ近くに配置されるという事実を考慮すると、デフレクタ・ユニットは、UHV内にある必要がある。したがって、この場合には、多重極エレメントが静電式であることが有利であると考えられる。
【0048】
図4bに示した別の実施形態では、デフレクタ・ユニット110は、4つのセグメント112を有する多重極エレメントを含む。ここでもまた、この多重極エレメントは、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式のいずれかとすることができる。この四重極エレメントは、放出された電子ビームを、ダイヤフラムの上で2つの方向(z軸が光軸と示された時のx−y平面)に偏向させることができる。図4cは、多重極エレメントとして八重極を有する実施形態を示している。この八重極は、8つのセグメント113を含み、多重極エレメントの各セグメントは、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式とすることができる。
【0049】
図5は、本発明による更に別の構成を示している。エミッタ102は、本質的に光軸101上に配置されている。典型的には電界エミッタとされるエミッタは、抽出装置104との協働作用によって電子を放出する。冷電界エミッタに電圧を印加すると、その小さな曲率半径によって非常に高い電界がエミッタ先端に形成される。この高い電界によって、電子は、金属と、冷電界エミッタが置かれている真空との間のポテンシャル障壁を通過することができる。したがって、確立された電界は、電子をエミッタ先端から「抽出」させるので、抽出電界と呼ぶことが多い。電界エミッタ102及び抽出装置104は、これらを予め組み立てた又は一体化したパッケージとして提供することができる。
【0050】
ガンレンズ519は、構成部品115、110、及び116によって与えられる。この実施形態では、電極115、デフレクタ・ユニット110、及び電極116が、アインツェルレンズを構成する。デフレクタ・ユニット110は、ガンレンズ110に一体化され、これによってエミッタ102の放出パターンをダイヤフラム120上で走査させることができる。この構成によって、ガンレンズ及びデフレクタ・ユニットをエミッタに近づけるも可能である。一方、それによって集光レンズの役割を果たすガンレンズの焦点距離を短くすることができる。他方、電子ビームの部分的な偏向や選択を、エミッタの近くで実現することができる。それによって残りのコラム内のビーム電流が低減される。したがって、電子間相互作用による悪影響も低減される。
【0051】
放出パターンの所望の領域を選択するために、デフレクタ・ユニット11によってビームを偏向して、放射パターンの当該所望の領域がダイヤフラム120を通過するようにする。しかしながらそのために、ビームは、光軸101に関して不適切に偏向される場合がある。そこで、図6に示した実施形態では、デフレクタ151及び152を有する二重デフレクタを更に含んでいる。これらのデフレクタを使用して、ダイヤフラム120を通過する電子ビームを部分的に光軸に対してアラインメント(整列)させることができる。デフレクタ151及び152は、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式のいずれかとすることができる。電子ビームのアラインメントは、第2のデフレクタ152内で電子ビームが光軸上に向けられるように第1のデフレクタ151を制御することによって達成することができる。次に、第2のデフレクタを使用して、光軸に沿って電子ビームの方向を変える。一般に、デフレクタ・ユニット110によって行われる光軸から離れての偏向作用は、光軸に垂直な平面内で二次元となるので、二重デフレクタ・ユニット151及び152も、典型的には、光軸に垂直な2つの方向に電子ビームを偏向できるべきである。偏向が1つ又は2つの方向で起こるか否かは、ダイヤフラム120を通過するように選択した放出パターンの領域に依存する。
【0052】
例えば異なる方向に放出するCFEのような放出源に対しては、先端を画像化して放出の適切な部分を選択するよう意図されている。本発明によれば、放出荷電粒子のうちで放出領域に対応する部分の選択は、ダイヤフラム上での電界エミッタの放出パターンを偏向させることによって行われる。それによってピボット点がエミッタの位置にあれば好ましいだろう。したがって、エミッタ内でデフレクタが必要になるか、あるいはエミッタの直後かつガン/集光レンズの前に2段デフレクタが必要となるだろう。第1の選択肢は実現可能ではなく、第2の選択肢では、エミッタからの集光レンズの距離が長くなる。その結果、焦点距離、したがって集光レンズの収差が大きくなる。以上の点を考慮して、本発明では、ダイヤフラム上で放出パターンを走査させるためのデフレクタ・ユニットを、ガンレンズ内に一体化するか、あるいはエミッタとガンレンズの間に一段のデフレクタを配置することができる。
【0053】
ここで一体化という語は、ガンレンズがデフレクタ・ユニットを含むものとして理解すべきである。すなわち、デフレクタ・ユニットをガンレンズ内に追加の電極として設けるか、あるいはデフレクタを、ガンレンズの一部として形成し、好ましくは例えば中間電極とする。後者の場合、ガンレンズの構成要素がデフレクタ・ユニットに置き換えられる。
【0054】
図6の実施形態では、従来のガンレンズの中間電極が、デフレクタ・ユニットを構成する多重極エレメントで置き換えられている。多重極エレメントは、例えば、静電式とすることができる。電子ビームの望ましい部分を選択することでもたらされる光軸に対するミスアラインメントを補償するために、更に別の偏向システムがダイヤフラムの後に含められている。図7に示す更に別の実施形態では、デフレクタ・ユニット110によってもたらされる電子ビームのシフトと、放出先端の機械的変位によってもたらされる電子ビームのシフトとが組み合わされている。変位ユニット160により、エミッタ102を好ましくは光軸に垂直な2つの方向に移動させることができる。エミッタの機械的シフトと電子ビームの偏向とを組合せて得られる作用によって、放出パターンのある一定の放出領域を正確に選択する性能が向上する。
【0055】
図8に示す更に別の実施形態では、放出先端をシフトする変位ユニット164、デフレクタ・ユニット、及び二重デフレクタ151及び152を組み合わせることができる。これによって、放出先端の機械的シフトとデフレクタ・ユニットの電気的シフトとの組合せ、並びにアパーチャ120以降の光軸101に対するビームアラインメントによる放出パターンの望ましい放出パターンの正確な選択が可能になる。図8では、更に、ガンレンズは、構成要素114、110、及び116によって構成されている。ダイヤフラムを含む電極106は、ガンレンズの(直)後に配置されている。
【0056】
機械的シフト、電気的シフト、及び/又はダイヤフラム後のアラインメントを用いて、本質的にまっすぐ、かつ、本質的に光軸上で、すなわちレンズの中心を通り、ダイヤフラムを通るように、放出パターンの選択された部分をラスタ走査させる。
【0057】
上述の実施形態のアパーチャ/ダイヤフラム120は、典型的には円形の形状を有する。しかしながら、個々の用途に応じて希望する場合は、スリット形状のダイヤフラムを使用することもできる。円形アパーチャの直径は、約1μmから約100μmの範囲、好ましくは、約5μmから50μmの範囲とすることができる。スリット形状のアパーチを使用した場合は、スリット幅は、約1μmから約100μmの範囲、好ましくは、約5μmから50μmの範囲とすることができる。スリットの長さは、数ミリメートル、例えば2mmまでとすることができる。
【0058】
図2から図8に関連して説明した実施形態では、集光レンズを構成するガンレンズは、典型的にはデフレクタ・ユニット110を含むか、あるいはこのデフレクタがガンレンズの一部となっている。更に、これらの実施形態の一部においては、ダイヤフラム120を含む電極116もガンレンズに組み込まれている。同じことが抽出装置114にもあてはまり、一部の実施形態ではガンレンズに組み込まれている。また、電極106及び抽出装置104の両方は、ガンレンズの一部でないように示されている。図9には、抽出装置104及び電極106がガンレンズ919から分離されている実施形態が示してある。ガンレンズ119は、デフレクタ・ユニット110の他に電極114及び116を含んでいる。これにより、電極114を、電界エミッタ102のための第2の抽出装置(陽極)として使用することができる。
【0059】
更に別の実施形態(図示せず)として、デフレクタ・ユニット110を、ガンレンズの上方に設けることもできる。その場合、デフレクタ110は、ガンレンズとエミッタの間に配置される。
【0060】
本発明の実施形態に対して、例えばEP1530229に開示されているような高精度レンズを使用することもできる。2003年11月4日提出の当該出願の全内容は、引用により本明細書に組み込まれているものとする。上記出願にはレンズが開示されており、そのレンズは、荷電粒子ビームに対して作用する第1の開口部を有する第1のエレメントと、前記荷電粒子ビームに対して作用する少なくとも一つの第2のエレメントと、第1のエレメントと第2のエレメントの間に最小距離を与えるために第1のエレメントと第2のエレメントの間に配置された少なくとも1つの離間要素と、第1のエレメントを前記少なくとも1つの離間要素に当接させるための第1の保持要素とを有し、それによって第1の保持要素が前記少なくとも1つの離間要素に取り付けられる。離間要素及び保持要素は、第2の電極又は極片(pole piece)に対する第1の電極又は極片の高精度のアラインメントを考慮したものである。
【0061】
本発明の各実施形態は、更に、以下に詳しく述べる各特徴部分又は特徴部分の組合せを含むことができる。デフレクタ・ユニットは、エミッタ及びガンレンズの間に配置することができる。また、デフレクタ・ユニットをガンレンズと一体化して、デフレクタ・ユニットに、少なくとも2つの放出ピークのうちの1つの放出ピークをダイヤフラムの開口部に向けさせることによって、放出パターンから少なくとも2つの放出ピークのうちの放出ピークを選択するようにしてもよい。このデフレクタ・ユニットは、エミッタから約30mm又はそれ未満の距離内に配置することができる。このデフレクタは、電界エミッタとすることができる。ダイヤフラムを、デフレクタ・ユニットの後に配置して、デフレクタ・ユニットによって複数の放出領域がダイヤフラムの開口部上で走査されるようにすることもできる。ダイヤフラムは、ガンレンズの最後部分の電極と一体化することもできる。荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子をエミッタから抽出する抽出装置を含むことができる。この抽出装置は、ガンレンズと一体化することができ、更に、ガンレンズの第1の電極を構成するようにもできる。デフレクタ・ユニットは、少なくとも3つのセグメントを有する多重極エレメント、あるいは四重極エレメント又は八重極エレメントのような多重極エレメントとすることができる。この多重極エレメントは、ガンレンズ内に一体化することができ、更に、ガンレンズの中間電極を構成するようにもできる。デフレクタ・ユニットは静電式とすることができるが、一方それとは独立して、ガンレンズを、静電式、磁気式、又は複合的な磁気−静電式とすることもできる。装置には、更に、エミッタを光軸と本質的に直交する平面内で機械的にシフトするための変位ユニット、及び/又は、ダイヤフラムを通過する荷電粒子電流を測定するための検出器を含めることができる。検出器は、ダイヤフラムの後に配置されるファラデーカップとすることができる。これとは別に又はこれに追加して、エミッタから放出された荷電粒子が当たる際に試料から放出される二次電子を測定する検出器を設けることができる。更に、光軸に沿った荷電粒子ビームのアラインメントのために、ダイヤフラムの後に設けられる二重デフレクタを含むこともできる。
【0062】
更に、以下に述べるステップの1つ又は以下のステップの組合せを、いずれの方法にも適用することができる。アパーチャを通過する電流に対応した測定値を、アパーチャを通過する電流、及び/又は、アパーチャを通過する電荷とすることができる。これとは別に又はこれに追加して、この測定値を、ダイヤフラムを通過する荷電粒子ビームの電流と相関関係を有する間接的な測定結果、特に、固体に荷電粒子が当たる際に放出される二次電子の検出信号とすることができる。更に、荷電粒子ビームは、ガンレンズで集束させることができる。エミッタは、光軸と本質的に垂直な平面内で移動させることができる。荷電粒子ビームは、ガンレンズ内で偏向させることができ、更に、ガンレンズの構成部品を用いて偏向させることができる。更に、ダイヤフラムを通過した荷電粒子ビームを、光軸に対してアラインメントすることができる。荷電粒子ビームは、ガンレンズ内及び/又はエミッタから約30mm又はそれ未満の距離内で偏向させることができる。荷電粒子は、電界エミッタと抽出装置の間に抽出電界を印加することによって放出させることができる。
【0063】
本発明をこのように詳細に説明したが、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく本発明に様々な修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0064】
102 エミッタ
110 デフレクタ・ユニット
120 ダイヤフラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを放出する放出先端を有するエミッタと、
ガンレンズ(119、519、919)と、
ダイヤフラム(120)と、
を含み、
前記ガンレンズは、デフレクタ・ユニット(110)を含み、
前記デフレクタ・ユニットは、前記少なくとも2つの放出ピークのうち荷電粒子ビーム装置での応用に用いられる1つの放出ピークを、前記放出パターン全体を偏向することによって前記ダイヤフラムの開口部に向け、それによって前記少なくとも2つの放出ピークから所望の前記1つの放出ピークを選択するとともに、前記放出パターンの残りの放出ピークをブロックするようになっている、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項1】
少なくとも2つの放出ピークを含む放出パターンを放出する放出先端を有するエミッタと、
ガンレンズ(119、519、919)と、
ダイヤフラム(120)と、
を含み、
前記ガンレンズは、デフレクタ・ユニット(110)を含み、
前記デフレクタ・ユニットは、前記少なくとも2つの放出ピークのうち荷電粒子ビーム装置での応用に用いられる1つの放出ピークを、前記放出パターン全体を偏向することによって前記ダイヤフラムの開口部に向け、それによって前記少なくとも2つの放出ピークから所望の前記1つの放出ピークを選択するとともに、前記放出パターンの残りの放出ピークをブロックするようになっている、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【公開番号】特開2010−118361(P2010−118361A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42672(P2010−42672)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2006−239981(P2006−239981)の分割
【原出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(506147342)イツェーテー インテグレイテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フュール ハルブライタープリュッフテヒニク ミット ベシュレンクテル ハフツング (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2006−239981(P2006−239981)の分割
【原出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(506147342)イツェーテー インテグレイテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フュール ハルブライタープリュッフテヒニク ミット ベシュレンクテル ハフツング (11)
【Fターム(参考)】
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