説明

放出制御ファムシクロビル医薬組成物

ファムシクロビルの放出制御医薬組成物は少なくとも60重量%のファムシクロビルと、少なくとも5重量%の放出遅延剤を含む。とりわけ有用な放出遅延剤には、ポリマー、とりわけポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物が含まれる。押出機を使用してかかる医薬組成物を製造する方法および造粒法は、とりわけ有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はファムシクロビルの新規医薬組成物、とりわけ放出制御組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ファムシクロビル、または化合物2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9−イル)エチル]−1,3−プロパンジオールアセテートは、抗ウイルス性薬剤ペンシクロビルの経口的に投与されるプロドラッグである。ペンシクロビルは単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、2型(HSV−2)および水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV)に対する阻害活性を有する。
【0003】
現在市販されているように、ファムシクロビルは125、250、500および750mgの治療化合物を含む即時放出錠剤の形態で投与される。錠剤は固体経口投与形態で使用される常套の賦形剤、例えばラクトース、デンプングリコレートナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを含む。錠剤は1日3回まで投与される。
【0004】
ファムシクロビルは即時放出製剤の経口投与後速やかに吸収される。これはその高い溶解性のためであり、その結果迅速吸収が起こる。同時に、その比較的短い半減期は血漿からの速やかな排出に寄与する。結果として、長期間にわたってファムシクロビルの治療レベルを維持するために、患者は1日3回までの投与が必要であり得る。このような場合には、患者のコンプライアンスが問題となり得る。さらに、嘔吐のようないくつかの有害反応は即時放出投与形態の高いCmaxに関係しているかもしれない。
【0005】
放出制御投与形態は、ピーク対トラフの比を低下させることによって通常の即時放出投与形態よりも、安全かつ効果的な範囲でより長期間にわたって治療化合物を送達することができ、したがってより少ない頻度で投与することができる。したがって、患者は医師によるレジメンにより一層従い易い。
【0006】
上記の利点にも拘わらず、かかる製剤には高い治療化合物負荷が必要であるため、ファムシクロビルの放出制御製剤を開発することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許第6,765,007号(’007特許、出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)は、ファムシクロビルを含有する即時放出錠剤を開示し、錠剤におけるファムシクロビルの重量パーセントは85%以上である。例えば、錠剤にはファムシクロビルと共に、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコレートナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよび無水ラクトースを含む。しかし、ファムシクロビルの放出制御製剤は’007特許には開示されていない。したがって、ファムシクロビルの治療上有効血漿濃度を提供する、1日1回の経口投与形態でファムシクロビルを投与する方法に対する必要が存在する。本発明はかかる必要に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
第1の局面において、本発明は治療化合物、例えばファムシクロビルと放出遅延剤を含む放出制御医薬組成物を特徴とする。
【0009】
本発明の具体的な局面において、医薬組成物には少なくとも60重量%のファムシクロビルと、少なくとも5重量%の放出遅延剤が含まれる。放出遅延剤は、例えば水溶性、水膨潤性または水不溶性ポリマーおよびその混合物であり得る。本発明の他の局面において、ポリマーはファムシクロビルの融解範囲よりも低いガラス転移温度を有する。本発明の放出遅延剤としてとりわけ有用なものは、ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物である。
【0010】
本発明の他の局面において、放出遅延剤は非ポリマー性疎水性放出遅延剤である。非ポリマー性疎水性放出遅延剤は、例えばファムシクロビルの融解範囲よりも低い融点を有する。
【0011】
本発明はまた、放出制御医薬組成物の製造法を含む。例えば、治療化合物と放出遅延剤の造粒を、押出成形機を使用して行うことができる。得られた顆粒は続く処理、例えば錠剤への直接圧縮またはカプセルによるカプセル化のための内相を構成することができる。
【0012】
図面の簡単な説明
添付の図面は本発明の例示的態様を示す(本明細書の一部とし、明細書の一部を構成する)。
【0013】
図1は実施例1、2、3、4および5に開示された本発明の例示的態様に関する溶解プロファイルを示すチャートである。
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書において使用するとき、「医薬組成物」なる用語は哺乳類、例えばヒトに、当該哺乳類が有する特定の疾患または状態を予防、処置または制御するために投与される、治療化合物を含む混合物または溶液を意味する。
【0015】
本明細書において使用するとき、「治療化合物」なる用語は治療または薬理学的効果を有し、治療または薬理効果を有するあらゆる化合物、物質、薬剤、医薬または有効成分を意味し、哺乳類、とりわけヒトに組成物で投与するのに、とりわけ経口投与に適している。
【0016】
治療化合物の治療クラスの例には、これらに限定されないが、抗高血圧剤、抗不安剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、血中グルコース低下剤、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、抗ウイルス剤、抗新生物剤、ベータ遮断剤、抗炎症剤、抗精神病剤、認知増強剤、抗アテローム性動脈硬化剤、コレステロール低下剤、抗肥満剤、自己免疫性障害剤、抗インポテンス剤、抗菌剤および抗真菌剤、催眠剤、抗生物質、抗うつ剤、抗ウイルス剤およびそれらの組合せを含む。
【0017】
治療化合物は本発明の医薬組成物において治療上有効量または濃度で存在する。かかる治療上有効量または濃度は、使用される治療化合物および取り扱う適応症で変化する量または濃度として当業者に知られている。例えば、本発明において、治療化合物は医薬組成物の約60重量%〜約95重量%;例えば医薬組成物の約90重量%〜約95重量%で存在し得る。
【0018】
本発明で使用する具体的な興味のある治療化合物は、2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9−イル)エチル]−1,3−プロパンジオールであるファムシクロビルである。ファムシクロビルは米国特許第5,250,688号の実施例2として開示されている(出典明示により本明細書の一部とする)。ファムシクロビルは下記構造
【化1】

を有する。
【0019】
結晶化合物であるファムシクロビルは、約102℃〜約104℃(すなわち、約104℃)の比較的低い融解範囲を有し、酸性媒体中に溶解度約300mg/mL、そして塩基性媒体中に約22mg/mLであり高度に水溶性である。本明細書において使用するとき、「融解範囲」なる用語は、固体相から液体の最初の一滴が形成し始める低い温度から、固体物質の全質量が液体物質になる高い温度までの温度範囲を意味する。
【0020】
本明細書において使用するとき、「即時放出」なる用語は、インビボで速やかに溶解し、完全に溶解して胃または消化管上部で吸収されることが意図される単位製剤または単位投与形を意味する。例えば、即時放出製剤は少なくとも90%の治療化合物を投与の30分以内に放出する。
【0021】
逆に、本明細書において使用するとき、「放出制御」なる用語は、緩やかにかつ継続して溶解し、約2時間またはそれ以上の時間にわたって胃および消化管で吸収される本発明の単位製剤または単位投与形を意味する。放出制御はまた、医薬組成物が胃に到達したときには治療化合物の放出が直ちには開始されず、例えばpHの上昇を医薬組成物から治療化合物が放出される引き金として使用する場合には、医薬組成物が腸に到達するまで、治療化合物の放出がある時間遅延される。本発明の放出制御プロファイルは、ゼロオーダーの放出プロファイルであり得る。
【0022】
本明細書において使用するとき、「放出遅延剤」なる用語は、経口的に摂取したとき医薬組成物から治療化合物の放出を遅延させるあらゆる材料または物質を意味する。当業者が知るように、様々な徐放系を放出遅延成分、例えば分散系、溶解系および/または浸透系の使用によって達成することができる。放出遅延剤は本来ポリマー性または非ポリマー性であってもよい。本発明の医薬組成物には少なくとも組成物の5重量%の放出遅延剤が含まれる。
【0023】
本明細書において使用するとき、「ポリマー」または「ポリマー性」なる用語は、ファムシクロビルの融点(または融解範囲)より低いかあるいはおよそ等しいガラス転移温度(Tg)または軟化温度を有するポリマーまたはポリマーの混合物を意味する。ガラス転移温度は、ポリマーの特性が高粘度のものから比較的低粘度のものへと変化する温度である。ポリマーのタイプには、これらに限定されないが、水溶性、水膨潤性、水不溶性ポリマーおよびそれらの混合物が含まれる。ポリマーのTgがファムシクロビルの溶解範囲を超え、そのポリマーが本発明に使用するのに適していると思われるときには、ポリマーのガラス転移温度を低下させるため、ポリマーに所望により可塑剤を使用することができる。
【0024】
本明細書において使用するとき「可塑剤」なる用語は、ポリマー鎖間の自由体積を増加させてポリマーのTgおよび溶融粘度を減少させるために、医薬組成物に加えることができる物質を意味する。可塑剤には例えば、これらに限定されないが、水;クエン酸エステル、例えばクエン酸トリエチル、トリアセチン;低分子量ポリ(アルキレンオキシド)、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレン/プロピレングリコール)、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテート;プロピレングリコール;ジエチルスルホコハク酸塩ナトリウム;および治療化合物自体が含まれる。可塑剤は医薬組成物の約0〜15重量%、例えば0.5〜5重量%の濃度で存在することができる。可塑剤の例はThe Handbook of Pharmaceutical Additives, Ash et al., Gower Publishing (2000)で見出すこともできる。
【0025】
ポリマーの例には、これらに限定されないが、
・N−ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマー、例えばN−ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、N−ビニルピロリドンとビニルアセテートまたはビニルプロピオネートのコポリマー;
・セルロースエステルおよびセルロースエーテル(例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロース)ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、セルロースフタレート(例えば、セルロースアセテートフタレートおよびヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート)およびセルロースコハク酸塩(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースコハク酸塩またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートコハク酸塩);
・高分子量ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド、ならびにエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;
・ポリアクリレートおよびポリメタクリレート(例えば、メタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、メタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマー、ブチルメタクリレート/2−ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート));
・ポリアクリルアミド;
・ビニルアセテートポリマー、例えばビニルアセテートとクロトン酸のコポリマー、とりわけ加水分解されたポリビニルアセテート;
・ポリビニルアルコール;および
・オリゴ−およびポリサッカライド、例えばカラギーナン、ガラクトマンナンおよびキサンタンガム、またはその1種以上の組合せが含まれる。
【0026】
とりわけ有用な上記ポリマー物質は、ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの、例えば約4:1の比での混合物である。かかるポリマー物質はBASF AG (Ludwigshafen, Germany)からKOLLIDON SRとして商業的に入手可能である。
【0027】
本明細書において使用するとき、「非ポリマー性放出遅延剤」なる用語は、室温(約25℃)で固体または半固体であり、ファムシクロビルの溶解範囲よりも低い融点(または融解範囲)を有する本来非ポリマー性の物質または物質の混合物を意味する。
【0028】
非ポリマー性放出遅延剤としてとりわけ有用なものは、疎水性非ポリマー性放出遅延剤である。本明細書において使用するとき、放出遅延剤に関連した「疎水性」なる用語は、水よりも油により混合することを意味する。疎水性特性を有する物質は水に不溶あるいはほぼ不溶であるが、油または他の非極性溶媒に容易に溶解する。
【0029】
疎水性非ポリマー性放出遅延剤の例には、これらに限定されないが、エステル、硬化油、天然ワックス、合成ワックス、炭化水素、脂肪アルコール、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびそれらの混合物が含まれる。
【0030】
グリセリルエステルのようなエステルの例には、これらに限定されないが、例えばグリセリルモノステアリン酸、例えばAbitec Corp. (Columbus, OH)のCAPMUL GMS;グリセリルパルミトステアリン酸、例えばGattefosse, S.A. (St. Priest, France)のPRECIROL ATO 5 (融解範囲53〜57℃);グリセリルベヘネート、例えばGattefosse, S.A.のCOMPRITOL ATO 888 (融解範囲69〜74℃);ラウロイルマクロゴルグリセリド、例えばGattefosse, S.A.のGELUCIRE 44/14 (融解範囲43〜48℃);ステアロイルマクロゴルグリセリド、例えばGattefosse, S.A.のGELUCIRE 50/13 (融解範囲46〜51℃);およびアセチレイテッドグリセロールモノステアレート;ソルビタンモノステアレート、例えばUniqema (New Castle, DE)のARLACEL 60;およびセチルパルミテート、例えばCognis Corp. (Duesseldorf, Germany)のCUTINA CPが含まれる。
【0031】
硬化油の例には、これらに限定されないが、硬化ヒマシ油、例えばCognis CorpのCUTINA HR;硬化綿実油;硬化大豆油;および硬化ヤシ油が含まれる。
【0032】
ワックスの例には、これらに限定されないが、カルナウバワックス、蜜蝋および鯨ロウが含まれる。
【0033】
炭化水素の例には、これらに限定されないが、微結晶ワックスおよびパラフィンが含まれる。
【0034】
脂肪アルコール、すなわち約14〜約31個の炭素原子を有する高分子量不揮発性アルコールの例には、これらに限定されないが、セチルアルコール、例えばCroda Corp. (Edison, NJ)のCRODACOL C-70;ステアリールアルコール、例えばCroda CorpのCRODACOL S 95;ラウリルアルコール;およびミリスチルアルコールが含まれる。約10〜約22個の炭素原子を有し得る脂肪酸の例には、これらに限定されないが、ステアリン酸、例えばCrompton Corp. (Middlebury, CT)のHYSTRENE 5016;デカン酸;パルミチン酸;ラウリン酸;およびミリスチン酸が含まれる。
【0035】
とりわけ有用な本発明の疎水性非ポリマー性放出遅延剤はグリセリルベヘネート、またはCOMPRITOL ATO 888である。
【0036】
本明細書において使用するとき、「溶融造粒」なる用語は、本発明の放出制御医薬組成物を製造する例示的な処理であって、押出機の使用によって達成される処理を意味する。押出機において使用される処理温度はファムシクロビルの融点または融解範囲を超えない。
【0037】
一般的に、押出機は、胴部の一端に位置する任意の押出し成形型を有する静止胴部内に回転スクリューを含む。スクリューの全長に沿って、物質(例えば治療化合物、放出遅延剤、および他のあらゆる必要な添加物)の分配混合が、胴部内のスクリューの回転によって得られる。概念的には、押出機は3つの部分に分割することができる:供給部分;加熱部分および計測部分。供給部分では、原材料を押出機に、例えばホッパーから供給する。原材料を溶媒なしで直接ホッパーに加えることができる。加熱部分では、原材料をファムシクロビルの融解範囲未満であるが、遅延剤のTgおよび/または非ポリマー性放出遅延剤の融点以上の温度に加熱する。加熱部分の後が計測部分である。ここでは混合された物質を所望の押出し成形型を通して特定の形状、例えば顆粒または針状に押し出す。本発明にとりわけ有用な押出機のタイプは、1−または2スクリュー押出機である。押出によって医薬組成物を製造するために使用されるかかる装置および技術は周知である。例えば、Breitenbach, Eur J Pharma Biopharma, Vol. 54, pp. 107-17 (2002)参照(その全体を参照により本明細書の一部とする)。また、例えば、米国特許第4,801,460号;第5,456,923号;第5,700,410号;および第5,945,127号参照。
【0038】
本発明の医薬組成物の製造は、治療化合物と放出遅延剤を、溶融造粒を使用して配合し、押出物を形成することから始まる。放出遅延剤は、例えば押出物の組成の約5重量%〜約40重量%、例えば約10重量%〜約35重量%、例えば約25重量%〜約30重量%の量で存在し得る。同様に、治療化合物は押出物の組成の約60重量%〜約99重量%、例えば約70重量%〜約90重量%、例えば約80重量%〜約85重量%の量で存在し得る。
【0039】
押出物を、例えばその後、医薬組成物の内相を形成する顆粒に破砕する。当業者は製剤される具体的な医薬組成物に必要な顆粒の粒度を理解する。例えば、適した粒度には、1000μm、750μm、500μmまたは250μm以下のものが含まれる。あるいは、押出物を直接錠剤に形成し、多粒子に切断し、または当該技術分野において知られている任意の多の形状に加工することができる。
【0040】
得られた顆粒は、例えば、放出遅延剤によって連続的に、または不連続的に、包埋された、実質的に包埋された、被覆された治療化合物の粒子である。
【0041】
顆粒は経口形態、例えば固体経口投与形態、例えば錠剤、ピル、トローチ、カプレット、カプセル剤またはサシェ剤に製剤することができる。かかる経口投与形態には常套の医薬賦形剤を含めることができる。かかる賦形剤の例には、これらに限定されないが、崩壊剤、可塑剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤および希釈剤が含まれる。上記放出遅延剤を含む当業者に既知の任意の放出遅延剤を加えることもできる。当業者は、固体経口投与形態の具体的な所望の特徴に関して、通常の実験によって過度の負担なく、上記賦形剤の1種以上を選択することができる。使用する各賦形剤の量は、当該技術分野において常套の範囲内で変化し得る。下記文献は経口投与形態の製剤に使用する技術および賦形剤について開示している(全て参照により本明細書の一部とする)。The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th edition, Rowe et al., eds., American Pharmaceuticals Association (2003); およびRemington: the Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, Gennaro, ed., Lippincott Williams & Wilkins (2003)参照。顆粒を賦形剤と、例えばV字型混合器を使用することによって混合することができる。その後の処理には錠剤への圧縮または成形、あるいはカプセル剤への封入が含まれ得る。
【0042】
薬学的に許容される崩壊剤の例には、これらに限定されないが、デンプン;粘土;セルロース;アルギン酸塩;ガム;架橋ポリマー、例えば架橋ポリビニルピロリドンまたはクロスポビドン、例えばInternational Specialty Products (Wayne, NJ)のPOLYPLASDONE XL;架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはクロスカルメロースナトリウム、例えばFMCのAC-DI-SOL;および架橋カルボキシメチルセルロースカルシウム;大豆ポリサッカライド;およびグアーガムが含まれる。崩壊剤は、例えば組成物の約0重量%〜約45重量%;例えば0重量%〜約10重量%の量で存在し得る。本発明の例示的な態様において、崩壊剤を使用しない組成物ではモノリシックな固体投与形態が得られる。
【0043】
薬学的に許容される結合剤の例には、これらに限定されないが、デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば微結晶セルロース、例えばFMC (Philadelphia, PA)のAVICEL PH、ヒドロキシプロピルセルロース ヒドロキシルエチルセルロースおよびヒドロキシルプロピルメチルセルロース Dow Chemical Corp. (Midland, MI)のMETHOCEL;ショ糖;デキストロース;コーンシロップ;ポリサッカライド;およびゼラチンが含まれる。結合剤は例えば、組成物の約0重量%〜約45重量%;例えば0重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0044】
薬学的に許容される滑沢剤および薬学的に許容される流動促進剤の例には、これらに限定されないが、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、デンプン、バレルク、三塩基カルシウムホスフェート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、マグネシウムカルボネート、マグネシウムオキシド、ポリエチレングリコール、粉末セルロースおよび微結晶セルロースが含まれる。滑沢剤および/または流動促進剤は、例えば組成物の約0重量%〜約45重量%;例えば0重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0045】
薬学的に許容される増量剤および薬学的に許容される希釈剤の例には、これらに限定されないが、製菓用砂糖、圧縮可能な砂糖、デキストレート(dextrate)、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶セルロース、粉末セルロース、ソルビトール、ショ糖およびタルクが含まれる。増量剤および/または希釈剤は、例えば組成物の約0重量%〜約45重量%;例えば0重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0046】
治療化合物および放出遅延剤は、1:1.5〜1:1〜1:19(乾燥重量に基づく)の範囲の、とりわけ1:1〜1:8、例えば1:1〜1:4(乾燥重量に基づく)の範囲の放出遅延剤対治療化合物比で、押出機中で、例えば2スクリュー押出機中で混合されて、押出物を形成する。押出機の中にある間、物質は治療化合物の融解範囲未満であるが非ポリマー性放出遅延剤の融点以上(もし存在すれば)および/またはポリマー性放出遅延剤のガラス転移温度以上(もし存在すれば)の温度に加熱される。混合物は、所望により金型を通して押し出され、押出物に形成する。冷却後、押出物を顆粒に破砕し、続いて篩を通して篩過することができる。
【0047】
錠剤を得ると、それらを所望により当該技術分野で既知の機能性または非機能性コーティングでコーティングすることができる。コーティング技術の例には、これらに限定されないが、糖コーティング、フィルムコーティング、マイクロカプセル化および圧縮コーティングが含まれる。コーティングのタイプには、これらに限定されないが、腸溶性コーティング、徐放性コーティング、放出制御コーティングが含まれる。
【0048】
本発明の全ての医薬組成物の実用性は、標準的な臨床試験において、例えば治療化合物の治療有効血中レベルを与える薬剤用量の既知の指標において、哺乳類、例えば成人に治療化合物2.5〜1000mg/1日の範囲の用量を使用して、および標準動物モデルにおいて、観察することができる。
【0049】
例えば錠剤または錠剤製剤に適した粉末の形態の医薬組成物は、好適には、治療化合物250mg〜1500mg、例えば500、750または1000mgを含む。かかる単位投与形態は、具体的な治療の目的、治療のフェイズ等に依存して1日に1〜2回投与に適している。
【0050】
本発明は治療化合物で処置可能な疾患、状態または障害を有する対象の処置法であって、治療上有効量の本発明の医薬組成物をかかる処置を必要とする対象に投与することを含んでなる方法を提供する。さらに本発明は、HSV−1、HSV−2およびVZVのような状態の処置および/または予防用医薬の製造における、ファムシクロビルを含む本発明の組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0051】
最終的な経口投与形態を製剤すると、放出制御医薬組成物は下記の例示的な溶解プロファイルを有し得る。例えば、治療化合物の50%未満が30分で放出され、差分が4〜24時間に亘って放出される。あるいは、50%未満が30分で放出され、100%以下が4時間で放出される。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を説明するが、本明細書に記載の発明の範囲を限定するために使用しない。実施例は本発明を実施する方法を提案することのみを意味する。
【0053】
各実施例において使用される医薬組成物の重量%で表される成分の量は、各記載の後に位置する各表に説明されている。
【0054】
実施例1
【表1】

【0055】
内相の成分:ファムシクロビル、BASF AG (Ludwigshafen, Germany)からKOLLIDON SRとして商業的に入手可能なPVA/PVP混合物、および二酸化ケイ素を#18メッシュスクリーン(すなわち1mmのスクリーン)を用いてスクリーニングし、前混合物を製造する。内相を2スクリュー押出機の供給部分またはホッパーに入れる。適当な2スクリュー押出機は、Thermo Electron Corp. (Waltham, Massachusetts)から入手可能なPRISM 16 mm 医薬2スクリュー押出機である。
【0056】
2スクリュー押出機は4つの個別の胴部領域または部分で、または第5領域(すなわち押出し成形型)なしで、構成される。ホッパーから開始して、領域はそれぞれ下記温度に加熱される:90℃、90℃、60℃および40℃。物質が押出機を進行していくので、スクリューの速度を150rpmまで徐々に増加させる。
【0057】
押出機から得られた押出物または顆粒を室温に冷却する。冷却後、押出物を30000ミクロン未満に破砕する。
【0058】
外相について、第1にステアリン酸マグネシウムを18メッシュの篩に通す。ステアリン酸マグネシウムを内部ブレンダーから得られた顆粒と、フタ付ブレンダーで約60回転で混合する。得られた最終混合物を錠剤に、常套のロータリー打錠機(例えば、Manesty Beta Press)を使用して打錠する。得られた錠剤はモノリシックである。
【0059】
実施例2
【表2】

【0060】
実施例2を、実施例1の記載と同じ方法を使用して、異なる成分の濃度で製造する。
【0061】
実施例3
【表3】

【0062】
実施例3を、実施例1の記載と同じ方法を使用して、異なる成分の濃度で製造する。
【0063】
実施例4
【表4】

【0064】
実施例4を、実施例1の記載と同じ方法を使用して;グリセリルベヘネートを内相に加えて製造する。
【0065】
実施例5
【表5】

【0066】
実施例5を、実施例1の記載と同じ方法を使用して;グリセリルベヘネートおよびエチルセルロースをPVA/PVP混合物と代えて製造する。
【0067】
図1は5つの実施例の各々の錠剤の溶解プロファイルを示すチャートである。錠剤を0.1N HCl中に置き、USP Apparatus IIを使用して100rpmで、37℃で回転させる。チャートは本発明の実施例が実際に徐放性プロファイルを有することを示す。図1のY軸は放出された治療化合物の割合を示し、そしてX軸は時間を示す。
【0068】
本発明はその詳細な説明と共に記載しているが、上記記載は例示のみを意図しており、特許請求の範囲で定義されている本発明の技術的範囲を限定しないことが理解される。他の局面、利点および修飾は請求項の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1、2、3、4および5に開示された本発明の例示的態様に関する溶解プロファイルを示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファムシクロビルと放出遅延剤を含む医薬組成物であって、少なくとも5重量%の放出遅延剤を含んでなる組成物。
【請求項2】
少なくとも60重量%のファムシクロビルを含む、請求項1の医薬組成物。
【請求項3】
組成物が放出制御溶解プロファイルを有する、請求項1の医薬組成物。
【請求項4】
放出遅延剤がポリマーである、請求項1の医薬組成物。
【請求項5】
ファムシクロビルが約104℃の融点を有し、ポリマーが当該融点未満のガラス転移温度を有する、請求項4の医薬組成物。
【請求項6】
さらに可塑剤を含む、請求項5の医薬組成物。
【請求項7】
放出遅延剤が非ポリマー性放出遅延剤である、請求項1の医薬組成物。
【請求項8】
ファムシクロビルが約104℃の融点を有し、非ポリマー性放出遅延剤が当該融点未満のガラス転移温度を有する、請求項7の医薬組成物。
【請求項9】
組成物が500〜1500mgのファムシクロビルを含む、請求項1の医薬組成物。
【請求項10】
ポリマーがポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物である、請求項4の医薬組成物。
【請求項11】
ファムシクロビルを放出遅延剤と押出機中で、104℃未満の温度に加熱しながら造粒して顆粒を形成させる造粒工程を含む、放出制御医薬組成物の製造法。
【請求項12】
さらに顆粒を錠剤に圧縮することを含む、請求項11の方法。
【請求項13】
押出機が2スクリュー押出機である、請求項11の方法。
【請求項14】
放出遅延剤がポリマーである、請求項11の方法。
【請求項15】
ポリマーがポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物である、請求項14の方法。
【請求項16】
放出制御医薬組成物が当該組成物の少なくとも5重量%の放出遅延剤を含む、請求項11の方法。
【請求項17】
ファムシクロビルをポリマーと押出機中で、ポリマーのTgからファムシクロビルの融解範囲の間の温度に加熱しながら造粒して顆粒を形成させる造粒工程を含む、放出制御医薬組成物の製造法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540541(P2008−540541A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511234(P2008−511234)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017709
【国際公開番号】WO2006/122022
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】