説明

放出制御医薬組成物

【課題】通常製剤と有効性は同等以上であり、食餌摂取の制限が無い(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩を含有する放出制御医薬組成物を提供する。
【解決手段】前記放出制御医薬組成物は、(1)(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩、(2)一種以上の、1gを溶解する水の量が10mL以下の溶解性を示す製剤内部に水を浸入させるための添加剤、および(3)平均分子量が約10万以上、または5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上の、ハイドロゲルを形成する高分子物質を含有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分と配合成分を組み合わせ、有効成分の放出速度を制御することにより、通常錠で見られた食餌の影響の低減した放出制御医薬組成物に関する。
詳細には、本発明は、(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩、製剤内部に水を浸入させるための添加剤(以下、親水性基剤と称することがある)、およびハイドロゲル形成高分子物質を含有する医薬組成物において、有効成分の放出速度を制御することにより、食餌摂取によるAUCやCmaxの変動を低減した放出制御医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドは、アステラス製薬により創製され、インスリン分泌促進作用とインスリン感受性増強作用を併せ持ち、さらに選択的β3受容体刺激作用に基づく抗肥満作用及び抗高脂血症作用を有し、糖尿病の治療に有用な化合物であることが報告されている(例えば特許文献1参照)。
また、同化合物は、過活動膀胱の治療剤として使用することができ、例えば、前立腺肥大に伴う過活動膀胱の他、尿意切迫感、尿失禁や頻尿を伴う過活動膀胱の治療剤として有用であることが報告されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドの通常製剤を使用して臨床試験を実施したところ、予想外にも食餌摂取の有無で、薬物動態データ(Pharmacokinetic data)が食餌の有無で大きく変化する等、問題点が判明した(非公表)。例えば、絶食下に比べ、飽食下でのCmaxの減少率が67%、AUCの減少率が47%であった。また、絶食時のCmaxは飽食時と比較して3倍も高かった。これは、食餌によって体内動態が変動する等が要因であり、食餌摂取の影響を回避した製剤の開発が要望される。
【0004】
放出制御製剤を調製する技術として、製剤内部に水を浸入させるための添加剤、およびハイドロゲルを形成する高分子物質を配合してなるハイドロゲル徐放性錠剤が開示されている(例えば特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3には(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドに関する記載が無く、医薬組成物を製するための更なる改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO99/20607号パンフレット(実施例41)
【特許文献2】国際公開第WO2004/041276号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO94/06414号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、通常製剤と有効性は同等以上であり、食餌摂取の制限が無い(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩を含有する放出制御医薬組成物、並びに該組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドの消失半減期T1/2は約18〜24時間と長いことから、血中濃度を維持するための放出制御製剤は必ずしも必要とされない。前記臨床試験の結果に鑑み、製剤設計としては放出制御を付与するというより、食餌摂取等の影響を受けない程度に、製剤からの薬物放出速度をコントロールすることに着目して、鋭意検討した。
通常製剤(速放製剤)投与時の絶食/食後の血中濃度プロファイルより、食後における薬物吸収速度をデコンボリューション(deconvolution)法により算出したところ、およそ4時間まで持続的な吸収が予測された。この結果から、4時間以上の持続的薬物放出が可能な製剤であれば、製剤からの薬物放出が吸収の律速となるため、食餌の影響を低減し得るものと考察した。
薬物の放出速度をコントロールした3種類の製剤(単位製剤からの薬物放出率が80%である時間T80%=4時間、6時間、10時間)でヒト臨床試験を実施したところ、いずれの製剤も食餌の影響を低減できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
放出制御製剤は摂食の有無により、胃内での製剤滞留時間及び放出速度が変化することが一般的に知られており、その結果、血中濃度プロファイルも変化する可能性がある。ところが、驚くべきことに、本製剤では摂食の有無により血中濃度プロファイルの変化は少なかった。
本発明の特徴は、食餌摂取の影響を受けず、AUCまたはCmaxの変化の低減された放出制御医薬組成物を提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1](1)(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩、(2)一種以上の、1gを溶解する水の量が10mL以下の溶解性を示す製剤内部に水を浸入させるための添加剤、および(3)平均分子量が約10万以上、または5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上の、ハイドロゲルを形成する高分子物質を含有してなる、放出制御医薬組成物、
[2]製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フルクトース、デキストラン、ブドウ糖、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リジン、およびメグルミンからなる群より選択される一種または二種以上である、[1]に記載の放出制御医薬組成物、
[3]製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールからなる群より選択される一種または二種以上である、[2]に記載の放出制御医薬組成物、
[4]製剤内部に水を浸入させるための添加剤の量が製剤全体の重量に対して5重量%以上75重量%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の放出制御医薬組成物、
[5]製剤内部に水を浸入させるための添加剤の量が製剤全体の重量に対して5重量%以上70重量%以下である、[4]に記載の放出制御医薬組成物、
[6]ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される一種または二種以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の放出制御医薬組成物、
[7]ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される一種または二種以上である、[6]に記載の放出制御医薬組成物、
[8]ハイドロゲルを形成する高分子物質の量が製剤全体の重量に対して1重量%以上70重量%以下である、[1]〜[7]のいずれかに放出制御医薬組成物、
[9]更に抗酸化剤を含有してなる、[1]〜[8]のいずれかに記載の放出制御医薬組成物、
[10]抗酸化剤がブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、およびアスコルビン酸ナトリウムからなる群より選択される一種または二種以上である、[9]に記載の放出制御医薬組成物、
[11]抗酸化剤がブチルヒドロキシトルエンである、[10]に記載の放出制御医薬組成物、
[12]抗酸化剤の配合量が0.025重量%以上0.25重量%以下である、[9]〜[11]のいずれかに記載の放出制御医薬組成物、
[13]更に安定化剤を含有してなる、[1]〜[12]のいずれかに記載の放出制御医薬組成物、
[14]安定化剤が黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、および黒色酸化鉄からなる群より選択される一種または二種以上である、[13]に記載の放出制御医薬組成物、
[15]安定化剤が黄色三二酸化鉄及び/又は赤色三二酸化鉄である、[14]に記載の放出制御医薬組成物、
[16]安定化剤の配合量が0.05重量%以上1重量%以下である、[13]〜[15]のいずれかに記載の放出制御医薬組成物、
[17](1)(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩に、(2)一種以上の、1gを溶解する水の量が10mL以下の溶解性を示す製剤内部に水を浸入させるための添加剤を製剤全体に対し5%以上75%以下、および(3)平均分子量が約10万以上、または5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上であるハイドロゲルを形成する高分子物質を製剤全体の重量に対して1重量%以上70重量%以下を配合することを特徴とする、放出制御医薬組成物の製造方法、
[18]製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フルクトース、デキストラン、ブドウ糖、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン恒久脂肪酸エステル、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リジン、およびメグルミンからなる群より選択される一種または二種以上である、[17]に記載の放出制御医薬組成物の製造方法、
[19]ハイドロゲルを形成する高分子物質がポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される一種または二種以上である、[17]または[18]に記載の放出制御医薬組成物の製造方法
を提供するものである。
【0009】
なお、食餌摂取に伴うAUCやCmax等の薬物動態変化を低減あるいは回避した製剤技術として、塩酸タムスロシンを含有する徐放性医薬組成物に関する製剤技術が開示されている(特開2005-162736号公報、特開2005-162737号公報参照)。当該製剤技術は、薬物がタムスロシンに限定され、かつ薬物用量の低い(1単位製剤当たり0.4mg)製剤に適用されたものであり、製剤中その殆どが徐放性基剤であることによって、製剤からのタムスロシン溶出を制御することを達成したものである。これに対し、本発明の医薬組成物では、薬物用量が多く、1単位製剤あたりに含まれる薬物量が多く、徐放性基剤の割合が少ない薬物の溶出速度を制御するのは困難と考えていることから、技術的には全く相違するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食餌摂取の制限が無く、経時的な溶出プロファイルの変化の低減など安定な放出制御医薬組成物を提供することができる。
また、AUCの低下のない放出制御医薬組成物を提供することができる。
放出制御医薬組成物にすることにより、通常製剤は、絶食下に比べ、飽食下でのCmaxの減少率が67%であったのに対し、本発明の放出制御製剤は絶食下に比べ、飽食下でのCmaxの減少率が42%と有意に食餌によるCmaxの低減を改善できた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例11で得られた本発明の放出制御医薬組成物の溶出プロファイルとその経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の放出制御医薬組成物を説明する。
本明細書における「速放性製剤(通常製剤)」とは、米国薬局方溶出試験法(パドル法)により、適当な試験液900mL(例えばUSP buffer pH6.8)を用いてパドルの回転数100回転/分の条件で溶出試験を実施した場合の、試験開始30分後における製剤からの薬物溶出率が85%以上である製剤を意味する。または、日本薬局方溶出試験第2法で、適当な試験液(例えばpH6.8のMc.Ilvain緩衝液)900mLを用いて回転数50回転/分で実施した場合、30分での溶出率が85%以上である製剤を意味する。
【0013】
本明細書における「放出制御医薬組成物」とは、上記条件で試験開始30分後における製剤からの薬物溶出率が85%未満である製剤であり、食餌の影響を低減する程度に薬物の放出をコントロールした製剤である。具体的には、製剤内部に水を浸入させるための添加剤(親水性基剤)とハイドロゲルを形成する高分子物質を組み合わせた製剤である。
【0014】
本明細書における「食餌の影響の低減」とは、通常製剤のCmaxに対して、例えば10%低減すること、他の態様として20%低減すること、更なる態様として30%低減することを意味する。または、絶食投与時と比べ、食後投与時におけるCmaxおよびAUCの減少率を、例えば10%低減すること、他の態様として20%低減すること、更なる態様として30%低減することを意味する。
CmaxおよびAUCの減少率は、以下の式で表される。
Cmaxの減少率(%)=(絶食投与時のCmax−食後投与時のCmax)×100/絶食投与時のCmax
AUCの減少率(%)=(絶食投与時のAUC−食後投与時のAUC)×100/絶食投与時のAUC
【0015】
本明細書における「食餌の影響を低減した製剤」とは、上記条件[米国薬局方溶出試験法(パドル法)を、適当な試験液900mL(例えばUSP buffer pH6.8)を用いてパドルの回転数50回転/分以上200回転/分以下の条件]で、1.5時間での製剤からの薬物溶出率が75%以下、かつ4時間での製剤からの薬物溶出率が100%以下である製剤である。他の態様として、1.5時間での製剤からの薬物溶出率が75%以下、かつ7時間での製剤からの薬物溶出率が75%以上100%以下である製剤である。
【0016】
本明細書における「安定な」とは、例えば、熱、温度、湿度あるいは光に対して安定であることを意味する。具体的には、例えば、医薬組成物をプラスチックボトルに充填、密栓後、40℃75%または60℃の条件下で3ヶ月保存したとき、50%の溶出率を示す時点での溶出率変化が±5%以下に抑えられたことを意味する。または、例えば、医薬組成物を120万Lux・hr以上に曝光したとき、50%の溶出率を示す時点での溶出率変化が±5%以下に抑えられたことを意味する。
【0017】
本発明で用いられる(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリド(以下、化合物Aと略記することもある)は、以下の構造式で表される。
【化1】

【0018】
化合物Aは塩を有さないフリー体の態様以外に、他の態様として、酸と塩を形成する。かかる塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸等との有機酸との酸付加塩を挙げることができる。
【0019】
化合物Aの投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常経口投与の場合成人1日当たり0.01mg/kg以上100mg/kg以下であり、これを1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。
化合物Aの配合量は、例えば、1製剤あたり1重量%以上70重量%以下、他の態様として、5重量%以上70重量%以下、更なる態様として5重量%以上50重量%以下である。または、1製剤あたり1mg以上500mg以下、他の態様として、10mg以上200mg以下である。
【0020】
本発明で用いられるハイドロゲルを形成する高分子物質は、薬物の血中濃度プロファイルが食餌摂取の有無の影響を受けない程度に、薬物の放出速度をコントロールすることが必要である。
ハイドロゲルを形成する高分子物質の分子量は、例えば、10万以上、他の態様として10万以上800万以下、更なる態様として10万以上500万以下、更に他の態様として10万以上200万以下である。または、ハイドロゲルを形成する高分子物質の粘度は、例えば5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上、他の態様として5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上、1%水溶液25℃の粘度が40000mPa・s以下、更なる態様として、2%水溶液25℃の粘度が400mPa・s以上1%水溶液25℃の粘度が7500mPa・s以下、更に他の態様として2%水溶液25℃の粘度が400mPa・s以上1%水溶液25℃の粘度が5500mPa・s以下である。
本発明の放出制御医薬組成物においては、ハイドロゲルを形成する高分子物質として用いられる高分子物質の粘度を調節することによって、該製剤からの薬物の放出期間を任意にコントロール可能である。
【0021】
本発明で用いられるハイドロゲル形成高分子物質としては、化合物Aの食餌の影響を低減する程度に放出をコントロールし得るものであれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーが挙げられる。他の態様として、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0022】
ポリエチレンオキサイド(以下、PEOと略記する場合がある)としては、例えば、商品名Polyox WSR−308[平均分子量:800万、粘度:10000−15000mPa・s(1%水溶液25℃)]、Polyox WSR−303[平均分子量:700万、粘度:7500−10000mPa・s(1%水溶液25℃)]、Polyox WSR Coagulant[平均分子量:500万、粘度:5500−7500mPa・s(1%水溶液25℃)]、Polyox WSR−301[平均分子量:400万、粘度:1650−5500mPa・s(1%水溶液25℃)]、Polyox WSR−N−60K[平均分子量:200万、粘度:2000−4000mPa・s(2%水溶液25℃)]、Polyox WSR−N−12K[平均分子量:100万、粘度:400−800mPa・s(2%水溶液25℃)]、Polyox WSR−1105[平均分子量:90万、粘度:8800−17600mPa・s(5%水溶液25℃)]、Polyox WSR−205[平均分子量:60万、粘度:4500−8800mPa・s(5%水溶液25℃)]、Polyox WSR−N−750[平均分子量:30万、粘度:600−1200mPa・s(5%水溶液25℃)]、Polyox WSR−N−80[平均分子量:20万、粘度:55−90mPa・s(5%水溶液25℃)]、Polyox WSR−N−10[平均分子量:10万、粘度:12−50mPa・s(5%水溶液25℃)](DOW社製)が挙げられる。
【0023】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略記する場合がある)としては、例えば、商品名メトローズ90SH50000[20℃における2%水溶液の粘度:2900−3900mPa・s]、メトローズSB−4(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4mPa・S)、TC−5RW(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約6mPa・S)、TC−5S(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約15mPa・S)、TC−5R(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約6mPa・S)、TC−5M(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4.5mPa・S)、TC−5E(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約3mPa・S)、メトローズ60SH−50(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約50mPa・S)、メトローズ65SH−50(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約50mPa・S)、メトローズ90SH−100(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約100mPa・S)、メトローズ90SH−100SR(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約100mPa・S)、メトローズ65SH−400(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約400mPa・S)、メトローズ90SH−400(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約400mPa・S)、メトローズ65SH−1500(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約1500mPa・S)、メトローズ60SH−4000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4000mPa・S)、メトローズ65SH−4000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4000mPa・S)、メトローズ90SH−4000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4000mPa・S)、メトローズ90SH−4000SR(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4000mPa・S)、メトローズ90SH−15000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約15000mPa・S)、メトローズ90SH−15000SR(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約15000mPa・S)、メトローズ90SH−30000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約30000mPa・S)が挙げられる。
【0024】
ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと略記する場合がある)としては、例えば、HPC−SSL(商品名、日本曹達(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:2.0−2.9mPa・S)、HPC−SL(商品名、日本曹達(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:3.0−5.9mPa・S)、HPC−L(商品名、日本曹達(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:6.0−10.0mPa・S)、HPC−M(商品名、日本曹達(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:150−400mPa・S)、HPC−H(商品名、日本曹達(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:1000−4000mPa・S)などのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を挙げることができる。
【0025】
メチルセルロース(以下、MCと略記する場合がある)としては、例えば、メトローズSM15(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約15mPa・S)、メトローズSM25(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約25mPa・S)、メトローズSM100(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約100mPa・S)、メトローズSM400(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約400mPa・S)、メトローズSM1500(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約1500mPa・S)、メトローズSM4000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:約4000mPa・S)が挙げられる。
【0026】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMCNaと略記することがある)としては、例えば、商品名サンローズF−30MC[粘度:250−350mPa・s(1%水溶液25℃)]、サンローズF−150MC[平均分子量:20万、粘度:1200−1800mPa・s(1%水溶液25℃)]、サンローズF−600MC[粘度:6000−8000mPa・s(1%水溶液25℃)]、サンローズF−1000MC[平均分子量:42万、粘度:8000−12000mPa・s(同)]、サンローズF−1400MC[粘度:12000−15000mPa・s(1%水溶液25℃)]、サンローズF−300MC[平均分子量:30万、粘度:2500−3000mPa・s(同)](日本製紙社製)が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシエチルセルロース(以下、HECと略記することがある)としては、例えば、商品名HECダイセルSE850[平均分子量:148万、粘度:2400−3000MPA・S(1%水溶液25℃)]、HECダイセルSE900[平均分子量:156万、粘度:4000−5000mPa・s(1%水溶液25℃)](ダイセル化学工業社製)が挙げられる。
【0028】
カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、カーボポール71G(粘度:4000−11000mPa・s)、カーボポール971P(粘度:4000−11000mPa・s)、カーボポール981(粘度:4000−10000mPa・s)、カーボポール941(粘度:4000−10000mPa・s)、カーボポール934(粘度:30500−39400mPa・s)、カーボポール934P(粘度:29400−39400mPa・s)(B.F.Goodrich Chemical社製)が挙げられる。
【0029】
これらのハイドロゲル形成高分子物質は、1種または2種以上適宜組合せて使用可能である。また、異なるロットを組み合わせて使用しても良い。
ハイドロゲル形成高分子物質の配合量は、薬物の血中濃度プロファイルが食餌摂取の有無の影響を受けない程度の量であれば特に制限されないが、例えば、製剤全体の重量に対して1重量%以上70重量%以下、他の態様として3重量%以上70重量%以下である。または製剤全体の重量に対して5重量%以上70重量%以下、他の態様として10重量%以上60重量%以下、更なる態様として10重量%以上40重量%以下である。また、ハイドロゲル形成高分子物質の配合量は、薬物の重量に対して0.1重量%以上1000重量%以下、他の態様として1重量%以上500重量%以下、更なる態様として5重量%以上300重量%以下である。
なお、混合前の粘度が本発明における所定の粘度範囲から外れるものであっても、複数組み合わせて混合することにより、使用前に粘性を測定して当該粘度範囲内の粘度を示す場合には、適宜組み合わせて使用しても良い。
【0030】
本発明医薬組成物の製剤内部まで水を浸入させるための添加剤(親水性基剤)としては、この親水性基剤1gが溶解するのに必要な水の量が20±5℃下で10mL以下、別の態様として6mL以下、更なる態様として5mL以下、更に他の態様として4mL以下のものであり、水への溶解性が高い程、製剤中に水を浸入させる効果が高い。
【0031】
このような親水性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール[PEG;例えば、商品名PEG400、PEG1500、PEG4000、PEG6000、PEG20000(日本油脂社製)]、ポリビニルピロリドン[PVP;例えば、商品名PVP K30(BASF社製)]等の水溶性高分子;D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール類;乳糖、白糖、無水マルトース、D−フルクトース、デキストラン(例えばデキストラン40)、ブドウ糖等の糖類;ポリオキシエチレン硬化ひまし油[HCO;例えば、CremophorRH40(BASF社製)、HCO−40、HCO−60(日光ケミカルズ社製)]、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール[例えばプルロニックF68(旭電化社製等)]、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル[Tween;例えばTween80(関東化学社製)]等の界面活性剤;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の塩類;クエン酸、酒石酸等の有機酸;グリシン、β−アラニン、塩酸リジン等のアミノ酸類;メグルミン等のアミノ糖類を用いることができる。
他の態様として、PEG、PVP、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フルクトース、デキストラン、ブドウ糖、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リジン、メグルミンを用いることが出来る。更なる態様として、PEG、PVP、D−マンニトール、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0032】
これらの親水性基剤は、1種または2種以上適宜組合せて使用可能である。
親水性基剤の配合割合は、薬物の放出を食餌の影響を受けない程度にコントロールし得る割合であれば特に制限されない。例えば、製剤全体に対して5重量%以上75重量%以下、他の態様として5重量%以上70重量%以下、更なる態様として20重量%以上60重量%以下である。
【0033】
本発明の放出制御医薬組成物の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤(マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、散剤などの経口剤;および坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤など)などの非経口剤が挙げられ、これらはそれぞれ経口的あるいは非経口的に安全に投与可能である。他の態様として錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの経口剤の態様も選択可能である。
【0034】
本発明の放出制御医薬組成物は、薬物とハイドロゲル形成高分子物質と親水性基剤とを混合し、成形することによって製造可能である。ここで、混合および成形は、製剤技術分野において慣用の方法にしたがって行われる。また、上記混合および/または成形の際に、所望により薬理学的に許容される担体を使用可能である。
【0035】
本発明の放出制御医薬組成物には、所望によりさらに各種医薬添加剤が適宜使用され、製剤化される。かかる医薬添加剤としては、製薬学的に許容されるものであれば特に制限されない。製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、フィルムコート剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0036】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0037】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
【0038】
結合剤としては、例えば、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0039】
崩壊剤としては、例えば、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0040】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
【0041】
抗酸化剤としては、例えば、溶出挙動の影響を回避できるものであれば特に制限されない。例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、エデト酸ナトリウムが挙げられ、他の態様としてBHT、PG、およびアスコルビン酸ナトリウムが挙げられ、更なる態様として、BHTである。
【0042】
安定化剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、黒色酸化鉄などが挙げられる。
【0043】
フィルムコート剤としては、例えば、通常製薬学的に使用される基剤、例えば、水溶性高分子、可塑剤、無機物またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0044】
着色剤としては、例えば、水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号などの食用色素)、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラ)などが挙げられる。
【0045】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどが挙げられる。
【0046】
これらの担体又は製剤添加物は、1種または2種以上適宜組合せて使用可能である。
これらの配合量としては、適量を使用することができ、例えば、抗酸化剤は、製剤全体の重量に対して0.025重量%以上0.25重量%以下である。また、安定化剤は、製剤全体の重量に対して0.05重量%以上1重量%以下である。
【0047】
以下に本発明の放出制御医薬組成物の製造法を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本発明の放出制御医薬組成物は、例えば、乾式造粒、湿式造粒、流動層造粒、間歇造粒、攪拌造粒等、自体公知の方法により製造可能である。
【0048】
薬物を解砕または粉砕する方法としては、通常の解砕、粉砕法を採用できる。例えば、衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン社製、ファインインパクトミル)、湿式乾式整粒機(パウレック社製、コーミル)、破砕式造粒機(ダルトン社製、パワーミル)が挙げられる。
【0049】
親水性基剤、ハイドロゲルを形成する高分子物質、または製剤添加物を粉砕する方法としては、通常の粉砕法を採用できる。例えば、衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン社製、ファインインパクトミル、サンプルミル)、気流式粉砕機(ホーコス社製、ジェットミル)が挙げられる。
【0050】
薬物を造粒する方法としては、通常の造粒法を採用できる。例えば、流動層造粒法、間歇造粒法、攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、転動型流動層造粒法、押し出造粒法、破砕造粒法、乾式造粒法などが挙げられる。他の態様として、流動層造粒法、間歇造粒法、攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、転動型流動層造粒法、乾式造粒法であり、造粒することが可能ないずれの方法を用いてもよい。造粒装置としては、例えば流動層造粒機(例えばフローコーター、フロイント産業社製、GPCG、Glatt社製)、平滑な接粉部を有する水平回転円盤を備えた造粒コーティング装置[例えば、遠心流動造粒装置(例えばCFグラニュレーター、フロイント産業社製)]、通気部を有し、かつ表面が平滑な回転円盤を流動層の下部に設けた造粒コーティング装置(例えばスパイラフロー、ローターコンテナー付フローコーター、いずれもフロイント産業社製)、原料粉末をそのまま圧縮・成型・粗砕・整粒する乾式造粒装置(例えばローラーコンパクター、フロント産業社製)などが挙げられる。
【0051】
乾式造粒で薬物を造粒する場合、例えば、乾式造粒機で薬物、ハイドロゲル形成高分子物質、親水性基剤、および賦形剤などの添加剤と共に圧縮・成型し、その後所望のサイズの造粒品が得られるよう粗砕・整粒を行えばよい。
【0052】
湿式造粒で薬物を造粒する場合、例えば、流動層造粒法で、薬物、ハイドロゲル形成高分子物質、親水性基剤、および賦形剤などの添加剤と共に流動させながら、親水性基剤及び結合剤を含有する液または水を必要量噴霧すればよい。親水性基剤を含有する液は、必須成分を水、エタノール、メタノール等の溶媒に溶解または分散して調製される。またこれらの溶媒を適宜混合し用いることも可能である。
【0053】
造粒時の水量としては、結合剤または製剤添加物を均一に溶解および/または懸濁(分散)できる量であれば特に制限されない。親水性基剤が固体状態で使用される場合、ハイドロゲル形成高分子物質を造粒できる量であれば特に制限されない。
液体状態として使用する場合、ハイドロゲル形成高分子物質に対し通常10重量%以下であり、他の態様として、8重量%以下であり、更に他の態様として5重量%以下である。造粒時の水添加方法としては、通常粉状の凝集魂と未処理状態の粉末からなる不均一なものにならない方法であれば特に制限されない。例えば、連続添加する連続噴霧法、造粒工程の途中で乾燥工程や更にシェーキング工程を設ける間歇噴霧法などが挙げられる。
造粒時の水添加速度としては、通常粉状の凝集魂と未処理状態の粉末からなる不均一なものにならない速度であれば特に制限されない。例えば流動層造粒の場合、ハイドロゲル形成高分子物質に対し通常0.1重量%/分以上1重量%/分以下であり、他の態様として0.2重量%/分以上0.8重量%/分以下であり、更なる態様として、0.4重量%/分以上0.6重量%/分以下である。
造粒時の粉体の温度としては、ハイドロゲル形成高分子物質の熱変性を誘起しない温度であれば特に制限されない。例えば20℃乃至ハイドロゲル形成高分子物質の融点(62℃以上67℃以下)以下、他の態様として20℃以上50℃以下であり、更なる態様として20℃以上35℃以下であり、更に他の態様として25℃以上30℃以下である。
【0054】
薬物を造粒する際に用いる結合剤液の固形分濃度は、処方量として例えば1%以上20%以下である。製薬学的に許容されるものであれば特に制限されない。
結合剤を固体状態のまま造粒機内に投入し、結合液として水をスプレーしてもよく、溶解して結合剤液として噴霧しても良い。
好ましい結合液の噴霧速度は、製造方法または製造するスケールにより異なるが、流動層造粒法により1kgスケールで製造するとき、2g/min以上20g/min以下であり、他の態様として、5g/min以上15g/min以下である。
造粒する際の好ましい品温は15℃以上50℃以下であり、他の態様として15℃以上40℃以下である。
【0055】
造粒物は、乾燥、熱処理などを施しても良い。
乾燥工程としては、造粒物が乾燥される方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。乾燥装置としては、例えば、流動層造粒機(例えばフローコーター、フロイント産業社製、GPCG、Glatt社製)、平滑な接粉部を有する水平回転円盤を備えた造粒コーティング装置[例えば、遠心流動造粒装置(例えばCFグラニュレーター、フロイント産業社製)]、通気部を有し、かつ表面が平滑な回転円盤を流動層の下部に設けた造粒コーティング装置(例えばスパイラフロー、ローターコンテナー付フローコーター、いずれもフロイント産業社製)などが挙げられる。乾燥条件は通常造粒品が流動層内で乾燥される条件であれば特に制限されない。例えば乾燥吸気温度を50℃とし造粒品温度が40℃、他の態様として例えば乾燥吸気温度を40℃とし造粒品温度が30℃になるまで乾燥を行うと、造粒品の乾燥はほぼ終了する。乾燥方法には通風乾燥法、減圧乾燥法も適用することができる。
造粒後に抗酸化剤を後末添加してもよい。
【0056】
造粒物は、整粒を施しても良い。
整粒工程としては、造粒物が整粒される方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。整粒装置としては、例えば、篩、湿式乾式整粒機(パウレック社製、コーミル)、破砕式造粒機(ダルトン社製、パワーミル)などが挙げられる。整粒条件は、通常造粒物が所望のサイズに整粒される条件であれば特に制限されない。
整粒後に抗酸化剤を後末添加してもよい。
【0057】
打錠方法としては、薬物、親水性基剤、ハイドロゲル形成高分子物質と適当な添加剤を混合後に圧縮成形し錠剤を得る直接打錠法、薬物、親水性基剤、ハイドロゲル形成高分子物質と添加剤を混合後に結合剤液を噴霧し造粒する湿式造粒や、薬物、親水性基剤、ハイドロゲル形成高分子物質、及び適当な低融点物質を混合後に加温し造粒する溶融造粒などの後に打錠する方法が挙げられる。
打錠装置としては、例えばロータリー打錠機、単発打錠機などが挙げられるが、通常製薬学的に圧縮成形物(好適には錠剤)が製造される方法であれば、装置とも特に限定されない。
【0058】
打錠後に錠剤を乾燥しても良い。例えば、錠剤初期水分を2重量%/錠以下、他の態様として1.5重量%/錠以下、他の態様として0.9重量%/錠以下である。
打錠後にパンコーティング機を用いて、例えば1錠当たり1重量%〜5重量%フィルムコーティングしてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
実施例1
化合物A 10g、ポリエチレンオキサイド(Dow chemical社製、商品名WSR N-60K、以下記載がない場合同じ)2.5g、およびポリエチレングリコール(三洋化成社製、PEG6000、以下同じ)7.5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフ(島津製作所製、以下同じ)を用いて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0061】
実施例2
化合物A 10g、ポリエチレンオキサイド3.5g、およびポリエチレングリコール6.5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0062】
実施例3
化合物A 10g、ポリエチレンオキサイド6.25g、およびポリエチレングリコール5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠425mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0063】
実施例4
化合物A 10g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、HPMC90SH-4000SR)5g、およびポリエチレングリコール5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0064】
実施例5
化合物A 10g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、HPMC90SH-100000SR)5g、およびポリエチレングリコール5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0065】
実施例6
化合物A 10g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、HPMC90SH-100SR)7.5g、およびポリエチレングリコール2.5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0066】
実施例7
化合物A 400g、ポリエチレンオキサイド140g、ポリエチレングリコール251.2g、微粉砕したBHT(メルク社製、以下同じ)0.8g、およびステアリン酸マグネシウム8gを秤量し、混合器を用い混合した。混合物をローラーコンパクターミニ(フロイント社製)を用い圧縮成形後、整粒し、本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を得た。得られた顆粒をロータリー打錠機(畑鉄工製、以下同じ)にて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。
【0067】
実施例8
実施例7で得られた錠剤にハイコーター(フロイント社製、HCT-30、以下同じ)を用い、水に分散したフィルムコート剤(カラコン社製、Opadry(安定化剤として黄色三二酸化鉄を含む)、以下記載が無い場合同じ)をコーティングし、本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。
【0068】
実施例9
解砕した化合物A 1500g、ポリエチレンオキサイド1050g、およびポリエチレングリコール1764gを流動層造粒機GPCG-5(フロイント社製、以下同じ)に仕込み、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、HPC−SL、以下同じ)水溶液1350gで造粒し、本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を得た。本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を整粒後、微粉砕したBHT 4gとステアリン酸マグネシウム30gを混合し、ロータリー打錠機で打錠し、1錠300mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。得られた錠剤にハイコーターを用いて、フィルムコート剤の水分散液を噴霧コーティングし、1錠当たり309mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。
【0069】
実施例10
解砕した化合物A 1500g、ポリエチレンオキサイド1050g、ポリエチレングリコール1764g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL)135gを流動層造粒機GPCG-5に仕込み、精製水で造粒し、本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を得た。本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を整粒後、微粉砕したBHT 4gとステアリン酸マグネシウム30gを混合し、ロータリー打錠機で打錠し、1錠300mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。得られた錠剤をハイコーターを用いて、フィルムコート剤の水分散液を噴霧コーティングし、1錠当たり309mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。
【0070】
実施例11
化合物A 400g、ポリエチレンオキサイド100g、ポリエチレングリコール290g、微粉砕したBHT 2g、ステアリン酸マグネシウム8gを秤量し、混合器を用い混合した。混合物をローラーコンパクターミニを用い圧縮成形後、整粒し、本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を得た。得られた顆粒をロータリー打錠機にて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。
【0071】
実施例12
化合物A 10g、ポリエチレンオキサイド(Dow chemical社製、商品名WSR Coagulant)2.5g、およびポリエチレングリコール 12.5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠400mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0072】
実施例13
化合物A 10g、ポリエチレンオキサイド(Dow chemical社製、商品名WSR 301)0.5g、およびポリエチレングリコール 5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠310mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0073】
実施例14
化合物A 5g、ポリエチレンオキサイド 15g、およびポリエチレングリコール 5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠250mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0074】
実施例15
化合物A 10g、ポリエチレンオキサイド(Dow chemical社製、商品名WSR N-12K)10g、およびD−マンニトール(東和化成工業製、商品名マンニットP)5gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠500mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0075】
実施例16
化合物A 2g、ポリエチレンオキサイド 2g、およびポリエチレングリコール 10gを乳鉢でよく混合し、オートグラフを用いて打錠し、1錠350mgの本発明の放出制御医薬組成物を得た。
【0076】
実施例17
解砕した化合物A 400g、ポリエチレンオキサイド1120g、およびポリエチレングリコール2313.6gを流動層造粒機GPCG-5に仕込み、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液1200gで造粒し、本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を得た。本発明の放出制御医薬組成物(顆粒)を整粒後、微粉砕したBHT 6.4gとステアリン酸マグネシウム40gを混合し、ロータリー打錠機で打錠し、1錠250mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。得られた錠剤をハイコーターを用いて、フィルムコート剤(安定化剤として黄色三二酸化鉄および赤色三二酸化鉄を含む)の水分散液を噴霧コーティングし、1錠当たり257.5mgの本発明の放出制御医薬組成物(錠剤)を得た。
【0077】
実施例1〜17の各処方を表1〜3に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
比較例1
粉砕した化合物A 400gとD−マンニトール1200gを混合後、精製水320gを添加し攪拌造粒機(パウレック社製、VG-25)を用いて練合した。篩(目開き:850μm)にて篩過し、整粒し、流動層造粒機(フロイント社製、FLO-1)を用いて乾燥した。篩(目開き:500μm)にて篩過した後、1号カプセルに1カプセル当たり320mg充填し、化合物Aを80mg含む比較例の医薬組成物を得た。
【0082】
試験例
1.溶出試験
実施例2、8、および9の医薬組成物についてUSP溶出試験法(パドル法)に従い溶出試験を行った。試験液はpH6.8リン酸緩衝液900mLを用いた。比較例1は日本薬局方溶出試験法第2法に従い試験を行った。試験液はpH6.8 Mc.Ilvain 緩衝液900mLを用い、回転数は50回転/分で行った。
結果を表4に示す。実施例の放出制御医薬組成物は何れも1.5時間で溶出率が40%未満であった。一方、比較例の組成物は0.5時間で85%以上の高い溶出率を示した。
【0083】
【表4】

【0084】
2.安定性試験
実施例11で得られた放出制御医薬組成物をプラスチックボトルに充填、密栓後、40℃75%RHまたは60℃の条件下でそれぞれ3ヶ月間保存した。保存後、組成物の溶出試験USP溶出試験法(パドル法)に従い溶出試験を行った。試験液はpH6.8リン酸緩衝液900mLを用いた。結果を図1に示す。40℃75%RHまたは60℃の条件下で3ヶ月間保存しても溶出速度の加速が認められず安定であった。
実施例8、9で得られた放出制御医薬組成物をアルミニウム/アルミニウムブリスターに包装後、40℃75%RH条件下でそれぞれ6ヶ月間保存した。保存後、組成物の溶出試験をUSP溶出試験法(パドル法)に従い行った。試験液はpH6.8リン酸緩衝液900mLを用いた。その結果、約50%の溶出率を示す時点での溶出率の変化は、それぞれ2%および3%であり、安定であった。
実施例17で得られた放出制御医薬組成物を120万Lux・hrで曝光した。曝光後、組成物の溶出試験をUSP溶出試験法(パドル法)に従い行った。試験液はpH6.8リン酸緩衝液900mLを用いた。その結果、約50%の溶出率を示す時点での溶出率の変化は1%未満であり、安定であった。
【0085】
3.ヒト薬物動態(PK)試験
実施例8の本発明の放出制御医薬組成物(化合物Aを200mg相当量含有する)を健常人に絶食条件または食後30分後に投与し血漿中に含まれる薬物濃度を測定した。
一方、比較例1の医薬組成物(通常製剤)2カプセル(化合物Aを160mg相当量含有する)を健常人に絶食条件または食後30分後に投与し血漿中に含まれる薬物濃度を測定した。
【0086】
通常製剤は、絶食下に比べ、飽食下でのCmaxの低下率が67%、AUCの低下率が47%であった(絶食時Cmaxは飽食時の約3倍増加した)のに対し、本発明の放出制御製剤は絶食下に比べ、飽食下でのCmaxの低下率が42%、AUCの低下率が25%と有意に食餌によるCmaxやAUCの低減を改善できた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、有効成分の放出速度を制御することにより、食餌摂取によるAUCやCmaxの変動を低減した放出制御医薬組成物を提供することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩、(2)一種以上の、1gを溶解する水の量が10mL以下の溶解性を示す製剤内部に水を浸入させるための添加剤、および(3)平均分子量が約10万以上、または5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上の、ハイドロゲルを形成する高分子物質を含有してなる、放出制御医薬組成物。
【請求項2】
製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フルクトース、デキストラン、ブドウ糖、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リジン、およびメグルミンからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項1に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項3】
製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項2に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項4】
製剤内部に水を浸入させるための添加剤の量が製剤全体の重量に対して5重量%以上75重量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項5】
製剤内部に水を浸入させるための添加剤の量が製剤全体の重量に対して5重量%以上70重量%以下である、請求項4に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項6】
ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項7】
ハイドロゲルを形成する高分子物質が、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項6に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項8】
ハイドロゲルを形成する高分子物質の量が製剤全体の重量に対して1重量%以上70重量%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に放出制御医薬組成物。
【請求項9】
更に抗酸化剤を含有してなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項10】
抗酸化剤がブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、およびアスコルビン酸ナトリウムからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項9に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項11】
抗酸化剤がブチルヒドロキシトルエンである、請求項10に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項12】
抗酸化剤の配合量が0.025重量%以上0.25重量%以下である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項13】
更に安定化剤を含有してなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項14】
安定化剤が黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、および黒色酸化鉄からなる群より選択される一種または二種以上である、請求項13に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項15】
安定化剤が黄色三二酸化鉄及び/又は赤色三二酸化鉄である、請求項14に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項16】
安定化剤の配合量が0.05重量%以上1重量%以下である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の放出制御医薬組成物。
【請求項17】
(1)(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドまたはその製薬学的に許容される塩に、(2)一種以上の、1gを溶解する水の量が10mL以下の溶解性を示す製剤内部に水を浸入させるための添加剤を製剤全体に対し5%以上75%以下、および(3)平均分子量が約10万以上、または5%水溶液25℃の粘度が12mPa・s以上であるハイドロゲルを形成する高分子物質を製剤全体の重量に対して1重量%以上70重量%以下を配合することを特徴とする、放出制御医薬組成物の製造方法。
【請求項18】
製剤内部に水を浸入させるための添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フルクトース、デキストラン、ブドウ糖、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リジン、およびメグルミンからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項17に記載の放出制御医薬組成物の製造方法。
【請求項19】
ハイドロゲルを形成する高分子物質がポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される一種または二種以上である、請求項17または18に記載の放出制御医薬組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−79859(P2011−79859A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276634(P2010−276634)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【分割の表示】特願2010−531838(P2010−531838)の分割
【原出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】