放射性廃棄物の放射能測定方法
【課題】放射能の測定精度をさらに向上することができる放射性廃棄物の放射能測定方法を提供する。
【解決手段】被検体21が回転テーブル9上に載置される。回転テーブル9を回転させて、放射線検出器4により、回転する被検体21から放出される放射線を検出し、放射線計数率を求める。この放射線計数率は駆動制御装置14の記憶装置に記憶される。その後、被検体21を回転させながら放射線検出器2で被検体21から放出される放射線を検出する。放射線検出器2で得られた放射線計数率は波高分析装置15に入力される。放射線検出器2での放射線計測時に、回転テーブル制御装置14Cは、記憶装置から読み出した放射線計数率(デッドタイム量)を用いて第3駆動装置13を制御し、回転テーブル9の回転速度を制御する。すなわち、被検体21の回転速度が調節される。
【解決手段】被検体21が回転テーブル9上に載置される。回転テーブル9を回転させて、放射線検出器4により、回転する被検体21から放出される放射線を検出し、放射線計数率を求める。この放射線計数率は駆動制御装置14の記憶装置に記憶される。その後、被検体21を回転させながら放射線検出器2で被検体21から放出される放射線を検出する。放射線検出器2で得られた放射線計数率は波高分析装置15に入力される。放射線検出器2での放射線計測時に、回転テーブル制御装置14Cは、記憶装置から読み出した放射線計数率(デッドタイム量)を用いて第3駆動装置13を制御し、回転テーブル9の回転速度を制御する。すなわち、被検体21の回転速度が調節される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の放射能測定方法に係り、特に、ドラム缶などの放射性廃棄物貯蔵容器(以下、単に貯蔵容器という)内の放射能強度を非破壊的に測定するのに好適な放射性廃棄物の放射能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物を充填した貯蔵容器から放出された放射線を測定して、貯蔵容器内の放射能強度を求める放射能測定方法が、特公平7−11573号公報に記載されている。
【0003】
この従来の放射能測定方法を詳細に説明する。放射性廃棄物が充填された貯蔵容器の外側に配置された放射線検出器によって、貯蔵容器の内部で放射性廃棄物に含まれている放射性核種から放出され貯蔵容器を透過して外部に達した非散乱線(以下、直接線という)、及び貯蔵容器の内部で一旦散乱した後に貯蔵容器を透過して外部に達した散乱線が、それぞれ検出される。検出された直接線及び散乱線のそれぞれの強度が求められ、スペクトル指標である散乱線の強度と直接線の強度の比が求められる。得られたスペクトル指標に基づいて、貯蔵容器の或る横断面における、内部に充填された放射性廃棄物の平均密度を求める。さらに、この平均密度及び直接線の計数率に基づいてその横断面における放射能を求める。軸方向における全横断面における放射能を加算することによって、貯蔵容器内の総放射能が求められる。
【0004】
特開平6−258496号公報は、放射性廃棄物を充填した貯蔵容器内の放射能を測定する際に、貯蔵容器を、水平方向における1つの直線方向、及びその直線方向に垂直な方向に移動させ、さらに水平面内で回転させることを記述している。さらに、それらの移動及び回転を可能にする装置の構成が説明されている。
【0005】
【特許文献1】特公平7−11573号公報
【特許文献2】特開平6−258496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特公平7−11573号公報に記載された放射能測定方法は、直接線及び散乱線のそれぞれを測定し、これらの計測値に基づいて得られたスペクトル指標を用いて平均密度を求め、この平均密度及び直接線の計数率を用いて貯蔵容器内の放射能を求めているので、その放射能を測定する時間を短縮することができる。
【0007】
このような放射能測定においては、貯蔵容器内の放射能強度が強い場合であっても放射能の測定精度の更なる向上が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、放射能の測定精度をさらに向上することができる放射性廃棄物の放射能測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している貯蔵容器から放出される放射線を第1放射線検出器で検出して放射線計数率を求め、回転している貯蔵容器から放出される放射線を第2放射線検出器で検出し、第2放射線検出器による放射線検出時に、放射線検出率に基づいて、貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御し、第2放射線検出器からの放射線検出信号に基づいて前記貯蔵容器の放射能強度を求めることにある。
【0010】
本発明は、第1放射線検出器で得られた放射線計数率に基づいて貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御するので、第2放射線検出器の出力の計数落ちが著しく減少する。このため、放射線の計測位置が変わっても放射線の検出感度を実質的に同じにすることができ、貯蔵容器の放射能計測の精度をさらに向上させることができる。特に、貯蔵容器内に存在する放射性核種の濃度が高い場合でも、第2放射線検出器の出力の計数落ちが著しく減少する。
【0011】
上記の目的は、放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している貯蔵容器から放出される放射線を放射線検出器で検出し、波高分析装置が放射線検出時の放射線検出器の出力に基づいて放射線検出器のデッドタイム情報を求め、放射線検出器による放射線検出時に、そのデッドタイム情報に基づいて、貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御し、放射線検出器の出力に基づいて貯蔵容器の放射能強度を求めることによっても、達成することができる。
【0012】
放射線検出器の出力に基づいて波高分析装置で求められた、放射線検出器のデッドタイム情報を用いて、貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御するので、放射線検出器の出力の計数落ちが著しく減少する。このため、放射線の計測位置が変わっても放射線の検出感度を実質的に同じにすることができ、貯蔵容器の放射能計測の精度をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貯蔵容器の放射能の測定精度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明者らは、特公平7−11573号公報に記載されている放射能測定方法を検討した結果、外部に配置された放射線検出器による貯蔵容器の測定位置によって検出感度が異なることを新たに見出した。すなわち、発明者らは、貯蔵容器の周方向及び軸方向の異なる位置で放射線検出器により放射線を検出した場合、放射線の検出感度が異なるという現象を見出した。この様な現象が生じる原因は、貯蔵容器に充填された放射性廃棄物に含まれる放射性核種の濃度が高いので、放射線検出器において放射線検出信号のパルスを処理するためのデッドタイムが生じることである。このデッドタイムが放射能の測定位置すなわち、貯蔵容器の外面において放射線検出器が面している位置で変化することが、その測定位置によって放射線の検出感度が変わる原因であることを、発明者らは突き止めた。放射能の測定位置が変わるとデッドタイムが変化するのは、貯蔵容器内の放射能濃度が不均一であるからである。例えば、点状の放射性核種が貯蔵容器の外周部に局在している場合に、デッドタイムの変化は顕著に現れる。すわなち、貯蔵容器内の局在放射性核種と放射線検出器の間の距離が近くなると、放射線検出器での計数率が大きくなるので、デッドタイムが大きくなる。本発明は、以上の検討により得られた新たな知見に基づいて、成されたのである。
【0015】
以上のようにして得られた本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の好適な一実施例である放射性廃棄物の放射能測定方法を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例の放射能測定方法に用いる放射性廃棄物の放射能測定装置を、まず、説明する。この放射能測定装置1は、放射線検出器2,4、コリメータ3,5、貯蔵容器移動装置6、駆動制御装置14、波高分析装置15、光電ピーク演算装置16、スペクトル指標演算装置17及び放射能演算装置18を備えている。放射能測定装置1は、放射線遮へい壁及び放射線遮へい体で構成された天井で取り囲まれた放射線計測室(図示せず)内に設置される。
【0017】
貯蔵容器移動装置6は、移動台車7、昇降台8、回転テーブル9、第1駆動装置11、第2駆動装置12及び第3駆動装置13を有する。移動台車7は、放射線計測室の床面上に設置された一対のガイドレール10の上に移動可能に設置される。移動台車7は、第1駆動装置11の駆動によってガイドレール10に沿って水平方向における一つの直線方向(図1に示すL方向)に移動される。支持部材20が移動台車7の上面に垂直に設置される。昇降台8が、上下方向に移動可能に支持部材20に取り付けられ、第2駆動装置12の駆動によって上下方向(移動台車7の上面に垂直な方向)(図2に示すH方向)に移動される。回転テーブル9は、昇降台8に回転可能に取り付けられ、第3駆動装置13によってR方向(図1参照)に回転される。回転テーブル9は、放射能計測時において、放射性廃棄物を充填した貯蔵容器(以下、被検体という)21を支持する。駆動制御装置14は、第1駆動装置11を制御する移動台車制御装置14A、第2駆動装置12を制御する昇降台制御装置14B及び第3駆動装置13を制御する回転テーブル制御装置14Cを有する。
【0018】
放射線検出器2として、例えば、Ge半導体検出器を用いる。コリメータ3が放射線検出器2の前面、すなわち、貯蔵容器移動装置6側に配置されている。放射線検出器4は、貯蔵容器移動装置6を間に挟んで放射線検出器2と対向する位置に配置され、例えば、高計数率に対応できるプラスチックシンチレ−ション検出器を用いる。コリメータ5が放射線検出器4の前面、すなわち、貯蔵容器移動装置6側に配置されている。放射線検出器2,4及びコリメータ3,5は上記の床面上に設置される。コリメータ3は、被検体21の軸方向において幅Δhを有する一つの横断面26内の放射性核種から放出される放射線のみを測定できるように設けられた垂直コリメータ3B、及び横断面26内の任意の位置22に対する幾何学的効率を補正するための水平コリメータ3Aを有する。コリメータ4も、同様に、水平コリメータ5A及び垂直コリメータ5Bを有する。
【0019】
放射線検出器2は波高分析装置15に接続される。光電ピーク演算装置16は波高分析装置15に接続され、スペクトル指標演算装置17は光電ピーク演算装置16に接続される。放射能演算装置18は光電ピーク演算装置16及びスペクトル指標演算装置17に接続される。表示装置19は放射能演算装置18に接続される。放射線検出器4は回転テーブル制御装置14Cに接続される。
【0020】
放射線検出器2、水平コリメータ3A、垂直コリメータ3B及び被検体21のそれぞれの相対的位置関係で決まる被検体21の走査範囲Sは、水平コリメータ3Aの開口の角度25、及び放射線検出器2と被検体21の距離によって決定される。被検体21の回転計測を考慮した走査範囲Sでの直接線23(図1参照)に対する幾何学的効率が、図3に示すように、被検体21の半径方向における放射性核種の位置にあまり依存しないように選定される。図3に示す幾何学的効率の変化範囲が大きくなれば、放射性核種の放射能濃度の定量精度が悪くなるので、目標とする放射能濃度の定量精度に応じて、幾何学的効率の変化範囲が決定される。図3に示す幾何学的効率は、図4に示すように、被検体(貯蔵容器)21のガイドレール10に沿った移動速度を変化させることにより実現する。この移動速度は、被検体21の回転速度、放射線検出器2が被検体21の中心を見込む半径方向の位置及び開口角度25の関数であり、駆動制御装置14の記憶装置(図示せず)に予め記憶されている。
【0021】
測定対象である被検体21に含まれている放射性核種の濃度が高いので、放射線検出器2では、放射線検出信号のパルスの計数処理を行うときにデッドタイムが生じる。このデッドタイムは、放射性核種の濃度が高濃度であるため放射線検出器2に入ってくる放射線強度が高くなり、放射線により放射線検出器2内で生成される放射線信号のパルスの処理が追いつかなくなり、放射線検出信号のパルスを数え落としている時間に対応する量である。すなわち、デッドタイムは、実質的に、放射線検出器2が機能していない時間である。そのデッドタイムが長いことは、実質的に、放射線の検出感度が低いことに相当する。そのデッドタイムの長さは、被検体21内での放射性核種濃度分布が不均一である場合に、放射線検出器2の測定位置で大きく変化する。そこで、被検体21の任意の測定位置でのパルスの計数時間をほぼ一定にするために、前述したデッドタイム量に応じて被検体21の回転速度を変化させることが必要である。図5に示すように、デッドタイム量が大きい場合には、被検体21、すなわち、回転テーブル9の回転速度は、デッドタイム量がゼロと見なせる場合のその回転速度よりも遅くする。
【0022】
本実施例の放射能計測方法について説明する。放射性廃棄物を充填している被検体21が、放射線計測室内に搬入され、回転テーブル9上に配置され、回転テーブル9に取り付けられる。オペレータが操作盤(図示せず)上のボタンを操作することによって出力される操作指令が移動台車制御装置14A、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cに入力される。移動台車制御装置14A、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cは、第1駆動装置11、第2駆動装置12及び第3駆動装置13を、被検体21が放射線検出器2に対して計測開始位置に位置決めされるように駆動させる。このため、最も下方に位置する幅Δhを有する横断面26が放射線検出器2の高さ方向の位置に合わせられ、被検体21の周方向の測定開始点が放射線検出器2に対向される。移動台車7の移動によって、L方向の計測開始点に被検体21が位置決めされる。
【0023】
その後、被検体21の放射線計測が開始される。最も下方に位置(図3を満足するように事前に決定された走査範囲Sの最も下方の位置)する一つの横断面26でL方向において最初に測定を開始する幅ΔLを放射線検出器2に対向させた状態で、オペレータは、操作盤から回転テーブル制御装置14Cに放射能計測開始指令を出力する。回転テーブル制御装置14Cは第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を例えば365°回転させる。放射線検出器2は、その回転の間、被検体21から放出される放射線を検出する。回転テーブル制御装置14Cは、第3駆動装置13に設けられて周方向の位置を検出する第3エンコーダ(図示せず)の出力を入力しており、被検体21が365°回転されたとき回転テーブル9の回転を停止させる。これによって、最初の状態での一つの横断面26における放射線計測が終了する。第3エンコーダの出力を入力する移動台車制御装置14Aは、被検体21が365°回転された後、第1駆動装置11を駆動して移動台車7を移動させ、被検体21を幅ΔLだけL方向に移動させる。第1駆動装置11に設けられてL方向の位置を検出する第1エンコーダの出力は、移動台車制御装置14A及び回転テーブル制御装置14Cに入力される。移動台車制御装置14Aは、第1エンコーダの出力に基づいて被検体21の幅ΔLの移動が完了したことを検知したとき、移動台車7を停止させる。回転テーブル制御装置14Cは、移動台車7の停止後に、第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を再び365°回転させる。このように、移動台車7の幅ΔL毎の移動及び回転テーブル9の回転が一つの横断面26に対して繰り返され、その都度、放射線検出器2による放射線計測が実施される。幅ΔLの移動による、その一つの横断面26での放射線検出が終了したとき(図3を満足するように事前に決定された走査範囲Sの最も上方の位置までの放射線検出が終了したとき)、第1エンコーダの出力を入力する昇降台車制御装置14Bが、第2駆動装置12を駆動して昇降台8を下方に移動させ、被検体21を幅Δhだけ下方に移動させる。第2駆動装置12に設けられて上下方向の位置を検出する第2エンコーダの出力を入力する昇降台車制御装置14Bは、昇降台8の幅Δhの移動を検出したとき第2駆動装置12の駆動を停止させる。このとき、他の一つの横断面26が放射線検出器2に対向する。第2エンコーダの出力を入力する回転テーブル制御装置14Cは、昇降台8の下方への移動が停止された後、第3駆動装置13を駆動させ、被検体21を365°回転させる。このようにして、他の一つの横断面26に対する放射線検出器2による放射線計測が開始される。他の一つの横断面26に対しても、上記したような幅ΔL毎の被検体21の移動及び回転が繰り返され、放射線検出器2による放射線検出が行われる。さらに、被検体21の最も上方の幅Δhに対する放射線計測が終了するまで、放射線検出器2による放射線検出が継続される。
【0024】
昇降台8を上下方向に幅Δhずつ移動させて被検体21の軸方向の全長に亘って放射線計測を行う際における被検体21の軸方向の走査範囲hは、垂直コリメータ4の開口角度27を考慮し、被検体21の軸方向の全体を含んだ領域となる(図6参照)。走査範囲hを対象に放射線計測を行うことによって、被検体21の軸方向における放射能分布を求めることができる。図6において、Cは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の下端よりも下方に位置する状態を示し、Dは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の上端よりも上方に位置する状態を示している。
【0025】
本実施例は、上記したように、移動台車制御装置14Aが第3エンコーダの出力を入力することによって被検体21の幅ΔLの移動を行い、昇降台車制御装置14Bが第1エンコーダの出力を入力することによって被検体21の幅Δhの移動を行っている。しかしながら、オペレータの操作により操作盤から出力された移動台車移動指令を移動台車制御装置14Aに入力することによって、被検体21の幅ΔLの移動を行い、オペレータの操作により操作盤から出力された昇降台移動指令を昇降台制御装置14Bに入力することによって、被検体21の幅Δhの移動を行ってもよい。
【0026】
本実施例では、放射線検出器2のデッドタイム量として、放射線検出器2と被検体21を間に挟んで対向する放射線検出器4で検出された放射線検出信号(直接線23及び散乱線24のそれぞれに対する放射線検出信号)に基づいて得られた放射線計数率を用いる。この放射線計数率を求めるための放射線計測は、放射線検出器2による放射線検出の前に、上記した貯蔵容器移動装置6によって被検体21の移動及び回転させて行われる。このような放射線検出器4による放射線計測は、放射線検出器2による放射線計測よりも粗く行われる。この放射線計数率は、デッドタイム量を表す状態量であり、回転テーブル制御装置14Cに入力され、駆動制御装置14の記憶装置に記憶される。
【0027】
上記した放射線検出器2による放射線計測において、回転テーブル9の回転速度は、回転テーブル制御装置14Cによって以下のように制御される。回転テーブル制御装置14Cは、第3エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向している周方向の位置を、第1エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向しているL方向の位置をそれぞれ求め、両者の位置に対応する、放射線検出器4で得られた放射線計数率を記憶装置から読み出す。この時、放射線検出器4と放射線検出器2は被検体21を挟んで対向しているので、周方向位置は180°回転した位置の情報を読み出す。さらに、回転テーブル制御装置14Cは、その放射線計数率、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。このようにして、放射線検出器2による放射線計測時に、被検体21の回転速度が制御される。
【0028】
本実施例は、放射線検出器4で得られる放射線計数率に基づいて回転テーブル9の回転速度を制御しているが、放射線検出器2で得られた放射線計数率に基づいて回転テーブル9の回転速度を制御することも可能である。すなわち、放射線検出器2を用いて360°+180°の回転位置で被検体21からの放射線を測定すれば、1パスでの回転テーブル9の回転制御が可能になる。例えば、放射線検出器4が周方向のA位置で測定した放射線計数率は、被検体21がさらに180°回転した時には、放射線検出器2での計数率になる。
【0029】
本実施例では、移動台車7をL方向に移動させて回転テーブル9を回転させているので、放射線検出器2は、例えば、位置22に存在する放射性核種から放射された被検体21を透過してきた直接線(非散乱線)23、及びこの直接線23が被検体21内の放射性廃棄物により散乱されて被検体21を透過してきた散乱線24を検出する。図1において、位置Bの放射線検出器2は、移動台車7のL方向での移動により位置Aの放射線検出器2から測定位置がずれた状態を表している。
【0030】
直接線23または散乱線24を検出した放射線検出器2からの出力は、波高分析装置15に入力される。波高分析装置15は、直接線23及び散乱線24に起因するエネルギースペクトルを求める。このエネルギースペクトルの波高値分布は、被検体21に含まれる放射性廃棄物の密度に依存して変化する。一般的に、その密度が大きくなると直接線23の強度が小さくなり、直接線23の強度に対する散乱線24の強度の相対値は大きくなる。波高分析装置15で求められたエネルギースペクトルの情報は光電ピ−ク演算装置16に入力される。光電ピ−ク演算装置16は、そのエネルギースペクトルの情報を用いて散乱線強度C及び直接線強度Pを求める。光電ピ−ク演算装置16で得られた散乱線強度C及び直接線強度Pはスペクトル指標演算装置17に入力される。スペクトル指標演算装置17は、それらの強度に基づいて放射性核種毎にスペクトル指標である散乱線強度Cと直接線強度Pの比C/Pを求める。放射能演算装置18は、スペクトル指標演算装置17から出力された放射性核種毎のスペクトル指標C/P、及び光電ピ−ク演算装置16から出力された散乱線強度C及び直接線強度Pに基づいて、直接線23の被検体21内での減衰を補正し、被検体21内で横断面26毎に放射性核種の放射能強度を演算する。さらに、放射能演算装置18は、これらの横断面26の放射能強度を加算することによって、被検体21の軸方向の全長に亘る総放射能強度を算出する。放射能演算装置18で得られた各放射能強度の情報は、放射能演算装置18から表示装置19に出力され、表示装置19に表示される。その放射能強度は、プリンタ(図示せず)によって記録紙にプリントされる。
【0031】
被検体21内にCo−60及びCs−137の2種類の放射性核種が存在し、両者の放射能分布が同じである場合における、放射線検出器2の出力に基づいて求められたエネルギースペクトルの一例を、図7に示す。Co−60は2種類の放射線エネルギーを放出し、Cs−137の放出する放射線エネルギーよりも高いので、本測定例で求められた、Co−60に対するスペクトル指標は、Co−60の放射線に起因した散乱線強度C1と直接線強度(P11+P12)の比率C1/(P11+P12)になる。
【0032】
Co−60及びCs−137の放射能分布が同じである場合におけるスペクトル指標と被検体21内での放射線の減衰率の関係を示す特性の一例を、図8に示す。この特性は校正試験により容易に求めることができる。したがって、スペクトル指標を図7に示す測定エネルギースペクトルから求めることができれば、図8に示す特性からCo−60及びCs−137から放出される各放射線の被検体21内での減衰割合を算出することができる。このため、それらの放射性核種の被検体21内での放射能強度を精度良く求めることができる。図7に示す散乱線強度C1には、直接線23がコリメータ3,4及び放射線検出器2のそれぞれの内部で一旦散乱した散乱線も影響している。したがって、図8に示す各特性は、図7に示す測定エネルギースペクトルに基づいて得られるスペクトル指標から被検体21が存在しない時のスペクトル指標を差分した値をスペクトル指標C/Pとして示している。
【0033】
本実施例は、回転テーブル9の回転速度を放射線検出器4から出力された放射線計数率を用いて制御しているので、被検体1の任意の測定位置でのパルスの計数時間をほぼ一定にすることができる。放射線検出器4から出力された放射線計数率が低いときには回転テーブル9の回転速度は速くなり、その放射線計数率が高いときにはその回転速度は遅くなる。このため、被検体21内の放射性核種の濃度が高く、上記の放射線計数率が高くなる、すなわち、放射線検出器2のデッドタイムが長くなる場合でも、放射線検出器2から出力される放射線検出信号のパルスの数え落としを著しく低減することができる。放射線検出器2から出力される放射線検出信号のパルスを、実質的に全て計測することができ、放射線検出器2の測定位置が変わっても放射線の検出感度が、実質的に同じになる。このため、被検体21の放射能計測の精度をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0034】
本発明の他の実施例である実施例2の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図9を用いて説明する。本実施例は、放射線検出器2が被検体21から充分に離れた位置に配置されており、コリメータ3が無い状態での幾何学的効率が、被検体21内の放射性核種の位置にほとんど依存しない場合での放射能測定例である。本実施例でも放射能測定装置1が用いられる。ただし、放射線検出器2及びコリメータ3は、実施例1におけるよりも被検体21から離れていおり、コリメータ3の開口角度25が非常に小さい場合である。本実施例では、移動台車7をL方向に移動させる放射線検出器2の走査範囲Sは、水平コリメータ3の開口角度25を考慮して、被検体21の一つの横断面26全体を含んだ範囲になる。図9において、Eは移動台車7の移動によって放射線検出器2が水平方向において被検体21の外周よりも外側に位置する状態を示し、Fは移動台車7の移動によって放射線検出器2がEの状態と180°反対側で被検体21の外周よりも外側に位置する状態を示している。
【0035】
本実施例も、実施例1と同様に、回転テーブル制御装置14Cが、放射線検出器4で得られた放射線計数率を用いて第3駆動装置13を制御し、回転テーブル9の回転速度、すなわち、被検体21の回転速度を調節する。
【0036】
本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0037】
本発明の他の実施例である実施例3の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図10を用いて説明する。本実施例は、一横断面26での放射線計測を、実施例1のように移動台車7をL方向に移動させるのではなく、放射線検出器2及び放射線検出器4の水平方向における向きを、それぞれ変えることによって行われる。本実施例に用いられる放射能測定装置1Aは、移動台車7、第1駆動装置11及び移動台車制御装置14Aを放射能測定装置1から削除し、放射線検出器2を水平面内で回転させる第1回転装置(図示せず)及び放射線検出器4を水平面内で回転させる第2回転装置(図示せず)を付加した構成を有する。第1回転装置は第1回転制御装置(図示せず)によって制御され、第2回転装置は第1回転制御装置(図示せず)によって制御される。放射能測定装置1Aは、移動台車7の替りに床面上に据え付けられた支持基盤(図示せず)を有し、回転テーブル9及び支持部材20をその支持基盤に設置している。放射線検出器2及びコリメータ3は、コリメータ3に形成された、放射線を通過させる開口の軸心(放射線検出器2の軸心)を水平面内において回転角度θの範囲で回転される。このような回転は、図示されていない第1回転装置の駆動により行われる。放射線検出器2及びコリメータ3は、具体的には、水平面内において、コリメータ3の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線を中心にこの直線の両側でそれぞれ回転角度θ/2の範囲で回転される。放射線検出器4及びコリメータ5は、コリメータ5に形成された、放射線を通過させる開口の軸心(放射線検出器4の軸心)を水平面内において回転角度θの範囲で回転される。このような回転は、第2回転装置の駆動により行われる。放射線検出器4及びコリメータ5は、具体的には、水平方向において、コリメータ5の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線を中心にこの直線の両側でそれぞれ回転角度θ/2の範囲で回転される。これらの回転角度θは水平コリメータ3A,5Aの開口角度に依存している。この場合でも、被検体21がR方向に回転することを考慮した幾何学的効率は、回転角度θを最適化することにより、図3に示す特性と同様にすることができる。本実施例では、コリメータ3の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線とコリメータ5の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線が90℃である場合を示している。
【0038】
本実施例の放射能計測方法を具体的に説明する。放射性廃棄物を充填している被検体21が、回転テーブル9に取り付けられる。オペレータが操作盤(図示せず)上のボタンを操作することによって出力される操作指令が第1回転制御装置、第2回転制御装置、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cに入力される。第1回転制御装置、第2回転制御装置、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cは、第1回転装置、第2回転装置、第2駆動装置12及び第3駆動装置13を、被検体21が放射線検出器2に対して計測開始位置に位置決めされるように駆動させる。このため、最も下方に位置する幅Δhを有する横断面26が放射線検出器2の高さ方向の位置に合わせられ、被検体21の周方向の測定開始点が放射線検出器2,4に対向される。第1回転装置による第1回転台(図示せず)の回転、及び第2回転装置による第2回転台(図示せず)の回転によって、被検体21の、θ方向における計測開始点に放射線検出器2,4が位置決めされる。放射線検出器2が第1回点台に設置され、放射線検出器4が第2回転台に設置されている。
【0039】
その後、被検体21の放射線計測が開始される。-θ/2の位置(図3を満足するように事前に決定された走査範囲θの最も小さい位置)に位置する一つの横断面26でθ方向において最初に測定を開始する幅Δθを放射線検出器2に対向させた状態で、オペレータは、操作盤から回転テーブル制御装置14Cに放射能計測開始指令を出力する。回転テーブル制御装置14Cは第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を例えば365°回転させる。放射線検出器2は、その回転の間、被検体21から放出される放射線を検出する。回転テーブル制御装置14Cは、第3駆動装置13に設けられて周方向の位置を検出する第3エンコーダ(図示せず)の出力を入力しており、被検体21が365°回転されたとき回転テーブル9の回転を停止させる。これによって、最初の状態での一つの横断面26における放射線計測が終了する。第3エンコーダの出力を入力する第1回転制御装置及び第2回転制御装置は、被検体21が365°回転された後、第1回転装置及び第2回転装置を駆動して第1回転台車及び第2回転台車を回転させ、被検体21をΔθだけθ方向に回転させる。第1回転装置に設けられて放射線検出器2のθ方向の位置を検出する第1回転エンコーダ(図示せず)の出力は、第1回転制御装置に入力される。第2回転装置に設けられて放射線検出器4のθ方向の位置を検出する第2回転エンコーダ(図示せず)の出力は、第2回転制御装置に入力される。第1回転制御装置及び第2回転制御装置は、第1回転エンコーダ及び第2回転エンコーダの出力に基づいて被検体21の幅Δθの移動が完了したことを検知したとき、第1回転台車及び第2回転台車の回転を停止させる。回転テーブル制御装置14Cは、第1回転台車及び第2回転台車の回転が停止された後に、第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を再び365°回転させる。このように、第1回転台車及び第2回転台車の幅Δθ毎の回転及び回転テーブル9の回転が一つの横断面26に対して繰り返され、その都度、放射線検出器2,4による放射線計測が実施される。幅Δθの回転による、その一つの横断面26での放射線検出が終了したとき(図3を満足するように事前に決定された走査範囲θの最も小さい位置(+θ/2の位置)までの放射線検出が終了したとき)、第1回転エンコーダ及び第2回転エンコーダの各出力を入力する昇降台車制御装置14Bが、第2駆動装置12を駆動して昇降台8を下方に移動させ、被検体21を幅Δhだけ下方に移動させる。第2駆動装置12に設けられて上下方向の位置を検出する第2エンコーダの出力を入力する昇降台車制御装置14Bは、昇降台8の幅Δhの移動を検出したとき第2駆動装置12の駆動を停止させる。このとき、他の一つの横断面26が放射線検出器2に対向する。第2エンコーダの出力を入力する回転テーブル制御装置14Cは、昇降台8の下方への移動が停止された後、第3駆動装置13を駆動させ、被検体21を365°回転させる。このようにして、他の一つの横断面26に対する放射線検出器2による放射線計測が開始される。他の一つの横断面26に対しても、上記したような幅Δθ毎の放射線検出器2,4の回転及び被検体21の回転が繰り返され、放射線検出器2,4による放射線検出が行われる。さらに、被検体21の最も上方の幅Δhに対する放射線計測が終了するまで、放射線検出器2による放射線検出が継続される。
【0040】
昇降台8を上下方向に幅Δhずつ移動させて被検体21の軸方向の全長に亘って放射線計測を行う際における被検体21の軸方向の走査範囲hは、垂直コリメータ4の開口角度27を考慮し、被検体21の軸方向の全体を含んだ領域となる(図6参照)。走査範囲hを対象に放射線計測を行うことによって、被検体21の軸方向における放射能分布を求めることができる。図6において、Cは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の下端よりも下方に位置する状態を示し、Dは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の上端よりも上方に位置する状態を示している。
【0041】
本実施例では、放射線検出器2のデッドタイム量として、コリメータ3の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線とコリメータ5の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線が90℃の位置に設置された放射線検出器4で検出された放射線検出信号に基づいて得られた放射線計数率を用いる。この放射線計数率を求めるための放射線計測は、放射線検出器2による放射線検出の前に、上記した第1回転装置及び第2回転装置によって放射線検出器2及び放射線検出器4を回転させ、回転テーブル9によって被検体21を回転させて行われる。このような放射線検出器4による放射線計測は、放射線検出器2による放射線計測よりも粗く行われる。この放射線計数率は、デッドタイム量を表す状態量であり、回転テーブル制御装置14Cに入力され、駆動制御装置14の記憶装置に記憶される。
【0042】
上記した放射線検出器2による放射線計測において、回転テーブル9の回転速度は、回転テーブル制御装置14Cによって以下のように制御される。回転テーブル制御装置14Cは、第3エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向している周方向の位置を、第1回転エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向している周(θ)方向の位置をそれぞれ求め、両者の位置に対応する、放射線検出器4で得られた放射線計数率を記憶装置から読み出す。この時、放射線検出器4と放射線検出器2は被検体21に対して90°の位置に設置されているので、被検体21の周方向位置は90°回転した位置の情報を読み出す。さらに、回転テーブル制御装置14Cは、その放射線計数率、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。このようにして、放射線検出器2による放射線計測時に、被検体21の回転速度が制御される。
【0043】
本実施例において、放射線検出器2でのデッドタイム量を予測するために設けられた放射線検出器4は、第1回転装置により水平面内で回転される放射線検出器2の回転角度に同期するように第2回転装置により水平面内で回転される。このように、放射線検出器2,4を回転させるので、実施例1におけるL方向での被検体21の幅ΔL毎の移動は不要になる。
【0044】
本実施例は、放射線検出器4で得られた放射線計数率を用いて実施例1と同様に回転テーブル制御装置14Cにより回転テーブル9の回転速度、すなわち、被検体21の回転速度を制御する。
【0045】
このような本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、移動台車7及び第1駆動装置11が不要になるので、放射能測定装置1Aの構成を単純化できる。
【実施例4】
【0046】
本発明の他の実施例である実施例4の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図11を用いて説明する。本実施例の放射能計測方法に用いられる放射能測定装置1Bは、放射線検出器4及びコリメータ5を放射能測定装置1から削除し、波高分析装置15で求めたデッドタイム量の情報を回転テーブル制御装置14Cに入力する構成となっている。波高分析装置15は、放射線検出器2で得られた放射線計数率に基づいて、直接線23及び散乱線24に起因するエネルギースペクトル、及び放射線検出器2のデッドタイム量を求める。このデッドタイム量は、リアルタイムに求められ、回転テーブル制御装置14Cに入力される。
【0047】
回転テーブル制御装置14Cは、そのデッドタイム量、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。このようにして、放射線検出器2による放射線計測時に、被検体21の回転速度が制御される。
【0048】
本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例で用いられる放射能測定装置1Bは、放射線検出器4及びコリメータ5を設ける必要が無いので、放射能測定装置1よりも構造が単純化される。
【実施例5】
【0049】
本発明の他の実施例である実施例5の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図12を用いて説明する。本実施例の放射能測定方法に用いる放射能測定装置1Cは、放射能測定装置1Bに計数率分布記憶装置30を付加した構成を有する。
【0050】
本実施例の放射能測定方法は、実施例1の放射能計測方法を実施する前に、放射線検出器2で被検体21から放出される放射線を検出し、放射線検出器2で得られる放射線計数率を入力する波高分析装置15でデッドタイム量を求める。事前に求められた幅ΔL毎のデッドタイム量は計数率分布記憶装置30に記憶される。
【0051】
実施例1と同様な放射線検出器2を用いた放射線計測で得られた情報により被検体21の放射能計測を行う際、計数率分布記憶装置30に記憶されたデッドタイム量の情報を幅ΔL毎に用いて被検体21の回転速度の制御が行われる。すなわち、回転テーブル制御装置14Cは、計数率分布記憶装置30に記憶されたデッドタイム量、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。
【0052】
本実施例は、実施例4で生じる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図2】図1に示す回転テーブル上に被検体を置いた高さ方向の状態を示す説明図である。
【図3】被検体(貯蔵容器)の回転を考慮した幾何学的効率の、被検体の半径方向における放射性核種の位置の依存性を模式的に示した説明図である。
【図4】被検体と放射線検出器の相対的な移動速度の一例を示す説明図である。
【図5】被検体の回転速度と放射線検出器のデッドタイム(または放射線計数率)との関係を示した特性図である。
【図6】被検体の軸方向の走査範囲を示す説明図である。
【図7】被検体内にCo−60及びCs−137が同じ分布で存在する場合における測定スペクトル、散乱線強度及び直接線強度を示す特性図である。
【図8】被検体内にCo−60及びCs−137が同じ分布で存在する場合におけるスペクトル指標と直接線の貯蔵容器内での減衰との関係を示す特性図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例2の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例3の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例4の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例5の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C…放射能測定装置、2,4…放射線検出器、3,5…コリメータ、6…貯蔵容器移動装置、7…移動台車、8…昇降台、9…回転テーブル、11…第1駆動装置、12…第2駆動装置、13…第3駆動装置、14…駆動制御装置、14A…移動台車制御装置、14B…昇降台制御装置、14C…回転テーブル制御装置、15…光電ピ−ク演算装置、17…スペクトル指標演算装置、18…放射能演算装置、23…直接線、24…散乱線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の放射能測定方法に係り、特に、ドラム缶などの放射性廃棄物貯蔵容器(以下、単に貯蔵容器という)内の放射能強度を非破壊的に測定するのに好適な放射性廃棄物の放射能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物を充填した貯蔵容器から放出された放射線を測定して、貯蔵容器内の放射能強度を求める放射能測定方法が、特公平7−11573号公報に記載されている。
【0003】
この従来の放射能測定方法を詳細に説明する。放射性廃棄物が充填された貯蔵容器の外側に配置された放射線検出器によって、貯蔵容器の内部で放射性廃棄物に含まれている放射性核種から放出され貯蔵容器を透過して外部に達した非散乱線(以下、直接線という)、及び貯蔵容器の内部で一旦散乱した後に貯蔵容器を透過して外部に達した散乱線が、それぞれ検出される。検出された直接線及び散乱線のそれぞれの強度が求められ、スペクトル指標である散乱線の強度と直接線の強度の比が求められる。得られたスペクトル指標に基づいて、貯蔵容器の或る横断面における、内部に充填された放射性廃棄物の平均密度を求める。さらに、この平均密度及び直接線の計数率に基づいてその横断面における放射能を求める。軸方向における全横断面における放射能を加算することによって、貯蔵容器内の総放射能が求められる。
【0004】
特開平6−258496号公報は、放射性廃棄物を充填した貯蔵容器内の放射能を測定する際に、貯蔵容器を、水平方向における1つの直線方向、及びその直線方向に垂直な方向に移動させ、さらに水平面内で回転させることを記述している。さらに、それらの移動及び回転を可能にする装置の構成が説明されている。
【0005】
【特許文献1】特公平7−11573号公報
【特許文献2】特開平6−258496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特公平7−11573号公報に記載された放射能測定方法は、直接線及び散乱線のそれぞれを測定し、これらの計測値に基づいて得られたスペクトル指標を用いて平均密度を求め、この平均密度及び直接線の計数率を用いて貯蔵容器内の放射能を求めているので、その放射能を測定する時間を短縮することができる。
【0007】
このような放射能測定においては、貯蔵容器内の放射能強度が強い場合であっても放射能の測定精度の更なる向上が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、放射能の測定精度をさらに向上することができる放射性廃棄物の放射能測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している貯蔵容器から放出される放射線を第1放射線検出器で検出して放射線計数率を求め、回転している貯蔵容器から放出される放射線を第2放射線検出器で検出し、第2放射線検出器による放射線検出時に、放射線検出率に基づいて、貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御し、第2放射線検出器からの放射線検出信号に基づいて前記貯蔵容器の放射能強度を求めることにある。
【0010】
本発明は、第1放射線検出器で得られた放射線計数率に基づいて貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御するので、第2放射線検出器の出力の計数落ちが著しく減少する。このため、放射線の計測位置が変わっても放射線の検出感度を実質的に同じにすることができ、貯蔵容器の放射能計測の精度をさらに向上させることができる。特に、貯蔵容器内に存在する放射性核種の濃度が高い場合でも、第2放射線検出器の出力の計数落ちが著しく減少する。
【0011】
上記の目的は、放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している貯蔵容器から放出される放射線を放射線検出器で検出し、波高分析装置が放射線検出時の放射線検出器の出力に基づいて放射線検出器のデッドタイム情報を求め、放射線検出器による放射線検出時に、そのデッドタイム情報に基づいて、貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御し、放射線検出器の出力に基づいて貯蔵容器の放射能強度を求めることによっても、達成することができる。
【0012】
放射線検出器の出力に基づいて波高分析装置で求められた、放射線検出器のデッドタイム情報を用いて、貯蔵容器を置いた回転テーブルの回転速度を制御するので、放射線検出器の出力の計数落ちが著しく減少する。このため、放射線の計測位置が変わっても放射線の検出感度を実質的に同じにすることができ、貯蔵容器の放射能計測の精度をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貯蔵容器の放射能の測定精度をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明者らは、特公平7−11573号公報に記載されている放射能測定方法を検討した結果、外部に配置された放射線検出器による貯蔵容器の測定位置によって検出感度が異なることを新たに見出した。すなわち、発明者らは、貯蔵容器の周方向及び軸方向の異なる位置で放射線検出器により放射線を検出した場合、放射線の検出感度が異なるという現象を見出した。この様な現象が生じる原因は、貯蔵容器に充填された放射性廃棄物に含まれる放射性核種の濃度が高いので、放射線検出器において放射線検出信号のパルスを処理するためのデッドタイムが生じることである。このデッドタイムが放射能の測定位置すなわち、貯蔵容器の外面において放射線検出器が面している位置で変化することが、その測定位置によって放射線の検出感度が変わる原因であることを、発明者らは突き止めた。放射能の測定位置が変わるとデッドタイムが変化するのは、貯蔵容器内の放射能濃度が不均一であるからである。例えば、点状の放射性核種が貯蔵容器の外周部に局在している場合に、デッドタイムの変化は顕著に現れる。すわなち、貯蔵容器内の局在放射性核種と放射線検出器の間の距離が近くなると、放射線検出器での計数率が大きくなるので、デッドタイムが大きくなる。本発明は、以上の検討により得られた新たな知見に基づいて、成されたのである。
【0015】
以上のようにして得られた本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の好適な一実施例である放射性廃棄物の放射能測定方法を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例の放射能測定方法に用いる放射性廃棄物の放射能測定装置を、まず、説明する。この放射能測定装置1は、放射線検出器2,4、コリメータ3,5、貯蔵容器移動装置6、駆動制御装置14、波高分析装置15、光電ピーク演算装置16、スペクトル指標演算装置17及び放射能演算装置18を備えている。放射能測定装置1は、放射線遮へい壁及び放射線遮へい体で構成された天井で取り囲まれた放射線計測室(図示せず)内に設置される。
【0017】
貯蔵容器移動装置6は、移動台車7、昇降台8、回転テーブル9、第1駆動装置11、第2駆動装置12及び第3駆動装置13を有する。移動台車7は、放射線計測室の床面上に設置された一対のガイドレール10の上に移動可能に設置される。移動台車7は、第1駆動装置11の駆動によってガイドレール10に沿って水平方向における一つの直線方向(図1に示すL方向)に移動される。支持部材20が移動台車7の上面に垂直に設置される。昇降台8が、上下方向に移動可能に支持部材20に取り付けられ、第2駆動装置12の駆動によって上下方向(移動台車7の上面に垂直な方向)(図2に示すH方向)に移動される。回転テーブル9は、昇降台8に回転可能に取り付けられ、第3駆動装置13によってR方向(図1参照)に回転される。回転テーブル9は、放射能計測時において、放射性廃棄物を充填した貯蔵容器(以下、被検体という)21を支持する。駆動制御装置14は、第1駆動装置11を制御する移動台車制御装置14A、第2駆動装置12を制御する昇降台制御装置14B及び第3駆動装置13を制御する回転テーブル制御装置14Cを有する。
【0018】
放射線検出器2として、例えば、Ge半導体検出器を用いる。コリメータ3が放射線検出器2の前面、すなわち、貯蔵容器移動装置6側に配置されている。放射線検出器4は、貯蔵容器移動装置6を間に挟んで放射線検出器2と対向する位置に配置され、例えば、高計数率に対応できるプラスチックシンチレ−ション検出器を用いる。コリメータ5が放射線検出器4の前面、すなわち、貯蔵容器移動装置6側に配置されている。放射線検出器2,4及びコリメータ3,5は上記の床面上に設置される。コリメータ3は、被検体21の軸方向において幅Δhを有する一つの横断面26内の放射性核種から放出される放射線のみを測定できるように設けられた垂直コリメータ3B、及び横断面26内の任意の位置22に対する幾何学的効率を補正するための水平コリメータ3Aを有する。コリメータ4も、同様に、水平コリメータ5A及び垂直コリメータ5Bを有する。
【0019】
放射線検出器2は波高分析装置15に接続される。光電ピーク演算装置16は波高分析装置15に接続され、スペクトル指標演算装置17は光電ピーク演算装置16に接続される。放射能演算装置18は光電ピーク演算装置16及びスペクトル指標演算装置17に接続される。表示装置19は放射能演算装置18に接続される。放射線検出器4は回転テーブル制御装置14Cに接続される。
【0020】
放射線検出器2、水平コリメータ3A、垂直コリメータ3B及び被検体21のそれぞれの相対的位置関係で決まる被検体21の走査範囲Sは、水平コリメータ3Aの開口の角度25、及び放射線検出器2と被検体21の距離によって決定される。被検体21の回転計測を考慮した走査範囲Sでの直接線23(図1参照)に対する幾何学的効率が、図3に示すように、被検体21の半径方向における放射性核種の位置にあまり依存しないように選定される。図3に示す幾何学的効率の変化範囲が大きくなれば、放射性核種の放射能濃度の定量精度が悪くなるので、目標とする放射能濃度の定量精度に応じて、幾何学的効率の変化範囲が決定される。図3に示す幾何学的効率は、図4に示すように、被検体(貯蔵容器)21のガイドレール10に沿った移動速度を変化させることにより実現する。この移動速度は、被検体21の回転速度、放射線検出器2が被検体21の中心を見込む半径方向の位置及び開口角度25の関数であり、駆動制御装置14の記憶装置(図示せず)に予め記憶されている。
【0021】
測定対象である被検体21に含まれている放射性核種の濃度が高いので、放射線検出器2では、放射線検出信号のパルスの計数処理を行うときにデッドタイムが生じる。このデッドタイムは、放射性核種の濃度が高濃度であるため放射線検出器2に入ってくる放射線強度が高くなり、放射線により放射線検出器2内で生成される放射線信号のパルスの処理が追いつかなくなり、放射線検出信号のパルスを数え落としている時間に対応する量である。すなわち、デッドタイムは、実質的に、放射線検出器2が機能していない時間である。そのデッドタイムが長いことは、実質的に、放射線の検出感度が低いことに相当する。そのデッドタイムの長さは、被検体21内での放射性核種濃度分布が不均一である場合に、放射線検出器2の測定位置で大きく変化する。そこで、被検体21の任意の測定位置でのパルスの計数時間をほぼ一定にするために、前述したデッドタイム量に応じて被検体21の回転速度を変化させることが必要である。図5に示すように、デッドタイム量が大きい場合には、被検体21、すなわち、回転テーブル9の回転速度は、デッドタイム量がゼロと見なせる場合のその回転速度よりも遅くする。
【0022】
本実施例の放射能計測方法について説明する。放射性廃棄物を充填している被検体21が、放射線計測室内に搬入され、回転テーブル9上に配置され、回転テーブル9に取り付けられる。オペレータが操作盤(図示せず)上のボタンを操作することによって出力される操作指令が移動台車制御装置14A、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cに入力される。移動台車制御装置14A、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cは、第1駆動装置11、第2駆動装置12及び第3駆動装置13を、被検体21が放射線検出器2に対して計測開始位置に位置決めされるように駆動させる。このため、最も下方に位置する幅Δhを有する横断面26が放射線検出器2の高さ方向の位置に合わせられ、被検体21の周方向の測定開始点が放射線検出器2に対向される。移動台車7の移動によって、L方向の計測開始点に被検体21が位置決めされる。
【0023】
その後、被検体21の放射線計測が開始される。最も下方に位置(図3を満足するように事前に決定された走査範囲Sの最も下方の位置)する一つの横断面26でL方向において最初に測定を開始する幅ΔLを放射線検出器2に対向させた状態で、オペレータは、操作盤から回転テーブル制御装置14Cに放射能計測開始指令を出力する。回転テーブル制御装置14Cは第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を例えば365°回転させる。放射線検出器2は、その回転の間、被検体21から放出される放射線を検出する。回転テーブル制御装置14Cは、第3駆動装置13に設けられて周方向の位置を検出する第3エンコーダ(図示せず)の出力を入力しており、被検体21が365°回転されたとき回転テーブル9の回転を停止させる。これによって、最初の状態での一つの横断面26における放射線計測が終了する。第3エンコーダの出力を入力する移動台車制御装置14Aは、被検体21が365°回転された後、第1駆動装置11を駆動して移動台車7を移動させ、被検体21を幅ΔLだけL方向に移動させる。第1駆動装置11に設けられてL方向の位置を検出する第1エンコーダの出力は、移動台車制御装置14A及び回転テーブル制御装置14Cに入力される。移動台車制御装置14Aは、第1エンコーダの出力に基づいて被検体21の幅ΔLの移動が完了したことを検知したとき、移動台車7を停止させる。回転テーブル制御装置14Cは、移動台車7の停止後に、第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を再び365°回転させる。このように、移動台車7の幅ΔL毎の移動及び回転テーブル9の回転が一つの横断面26に対して繰り返され、その都度、放射線検出器2による放射線計測が実施される。幅ΔLの移動による、その一つの横断面26での放射線検出が終了したとき(図3を満足するように事前に決定された走査範囲Sの最も上方の位置までの放射線検出が終了したとき)、第1エンコーダの出力を入力する昇降台車制御装置14Bが、第2駆動装置12を駆動して昇降台8を下方に移動させ、被検体21を幅Δhだけ下方に移動させる。第2駆動装置12に設けられて上下方向の位置を検出する第2エンコーダの出力を入力する昇降台車制御装置14Bは、昇降台8の幅Δhの移動を検出したとき第2駆動装置12の駆動を停止させる。このとき、他の一つの横断面26が放射線検出器2に対向する。第2エンコーダの出力を入力する回転テーブル制御装置14Cは、昇降台8の下方への移動が停止された後、第3駆動装置13を駆動させ、被検体21を365°回転させる。このようにして、他の一つの横断面26に対する放射線検出器2による放射線計測が開始される。他の一つの横断面26に対しても、上記したような幅ΔL毎の被検体21の移動及び回転が繰り返され、放射線検出器2による放射線検出が行われる。さらに、被検体21の最も上方の幅Δhに対する放射線計測が終了するまで、放射線検出器2による放射線検出が継続される。
【0024】
昇降台8を上下方向に幅Δhずつ移動させて被検体21の軸方向の全長に亘って放射線計測を行う際における被検体21の軸方向の走査範囲hは、垂直コリメータ4の開口角度27を考慮し、被検体21の軸方向の全体を含んだ領域となる(図6参照)。走査範囲hを対象に放射線計測を行うことによって、被検体21の軸方向における放射能分布を求めることができる。図6において、Cは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の下端よりも下方に位置する状態を示し、Dは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の上端よりも上方に位置する状態を示している。
【0025】
本実施例は、上記したように、移動台車制御装置14Aが第3エンコーダの出力を入力することによって被検体21の幅ΔLの移動を行い、昇降台車制御装置14Bが第1エンコーダの出力を入力することによって被検体21の幅Δhの移動を行っている。しかしながら、オペレータの操作により操作盤から出力された移動台車移動指令を移動台車制御装置14Aに入力することによって、被検体21の幅ΔLの移動を行い、オペレータの操作により操作盤から出力された昇降台移動指令を昇降台制御装置14Bに入力することによって、被検体21の幅Δhの移動を行ってもよい。
【0026】
本実施例では、放射線検出器2のデッドタイム量として、放射線検出器2と被検体21を間に挟んで対向する放射線検出器4で検出された放射線検出信号(直接線23及び散乱線24のそれぞれに対する放射線検出信号)に基づいて得られた放射線計数率を用いる。この放射線計数率を求めるための放射線計測は、放射線検出器2による放射線検出の前に、上記した貯蔵容器移動装置6によって被検体21の移動及び回転させて行われる。このような放射線検出器4による放射線計測は、放射線検出器2による放射線計測よりも粗く行われる。この放射線計数率は、デッドタイム量を表す状態量であり、回転テーブル制御装置14Cに入力され、駆動制御装置14の記憶装置に記憶される。
【0027】
上記した放射線検出器2による放射線計測において、回転テーブル9の回転速度は、回転テーブル制御装置14Cによって以下のように制御される。回転テーブル制御装置14Cは、第3エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向している周方向の位置を、第1エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向しているL方向の位置をそれぞれ求め、両者の位置に対応する、放射線検出器4で得られた放射線計数率を記憶装置から読み出す。この時、放射線検出器4と放射線検出器2は被検体21を挟んで対向しているので、周方向位置は180°回転した位置の情報を読み出す。さらに、回転テーブル制御装置14Cは、その放射線計数率、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。このようにして、放射線検出器2による放射線計測時に、被検体21の回転速度が制御される。
【0028】
本実施例は、放射線検出器4で得られる放射線計数率に基づいて回転テーブル9の回転速度を制御しているが、放射線検出器2で得られた放射線計数率に基づいて回転テーブル9の回転速度を制御することも可能である。すなわち、放射線検出器2を用いて360°+180°の回転位置で被検体21からの放射線を測定すれば、1パスでの回転テーブル9の回転制御が可能になる。例えば、放射線検出器4が周方向のA位置で測定した放射線計数率は、被検体21がさらに180°回転した時には、放射線検出器2での計数率になる。
【0029】
本実施例では、移動台車7をL方向に移動させて回転テーブル9を回転させているので、放射線検出器2は、例えば、位置22に存在する放射性核種から放射された被検体21を透過してきた直接線(非散乱線)23、及びこの直接線23が被検体21内の放射性廃棄物により散乱されて被検体21を透過してきた散乱線24を検出する。図1において、位置Bの放射線検出器2は、移動台車7のL方向での移動により位置Aの放射線検出器2から測定位置がずれた状態を表している。
【0030】
直接線23または散乱線24を検出した放射線検出器2からの出力は、波高分析装置15に入力される。波高分析装置15は、直接線23及び散乱線24に起因するエネルギースペクトルを求める。このエネルギースペクトルの波高値分布は、被検体21に含まれる放射性廃棄物の密度に依存して変化する。一般的に、その密度が大きくなると直接線23の強度が小さくなり、直接線23の強度に対する散乱線24の強度の相対値は大きくなる。波高分析装置15で求められたエネルギースペクトルの情報は光電ピ−ク演算装置16に入力される。光電ピ−ク演算装置16は、そのエネルギースペクトルの情報を用いて散乱線強度C及び直接線強度Pを求める。光電ピ−ク演算装置16で得られた散乱線強度C及び直接線強度Pはスペクトル指標演算装置17に入力される。スペクトル指標演算装置17は、それらの強度に基づいて放射性核種毎にスペクトル指標である散乱線強度Cと直接線強度Pの比C/Pを求める。放射能演算装置18は、スペクトル指標演算装置17から出力された放射性核種毎のスペクトル指標C/P、及び光電ピ−ク演算装置16から出力された散乱線強度C及び直接線強度Pに基づいて、直接線23の被検体21内での減衰を補正し、被検体21内で横断面26毎に放射性核種の放射能強度を演算する。さらに、放射能演算装置18は、これらの横断面26の放射能強度を加算することによって、被検体21の軸方向の全長に亘る総放射能強度を算出する。放射能演算装置18で得られた各放射能強度の情報は、放射能演算装置18から表示装置19に出力され、表示装置19に表示される。その放射能強度は、プリンタ(図示せず)によって記録紙にプリントされる。
【0031】
被検体21内にCo−60及びCs−137の2種類の放射性核種が存在し、両者の放射能分布が同じである場合における、放射線検出器2の出力に基づいて求められたエネルギースペクトルの一例を、図7に示す。Co−60は2種類の放射線エネルギーを放出し、Cs−137の放出する放射線エネルギーよりも高いので、本測定例で求められた、Co−60に対するスペクトル指標は、Co−60の放射線に起因した散乱線強度C1と直接線強度(P11+P12)の比率C1/(P11+P12)になる。
【0032】
Co−60及びCs−137の放射能分布が同じである場合におけるスペクトル指標と被検体21内での放射線の減衰率の関係を示す特性の一例を、図8に示す。この特性は校正試験により容易に求めることができる。したがって、スペクトル指標を図7に示す測定エネルギースペクトルから求めることができれば、図8に示す特性からCo−60及びCs−137から放出される各放射線の被検体21内での減衰割合を算出することができる。このため、それらの放射性核種の被検体21内での放射能強度を精度良く求めることができる。図7に示す散乱線強度C1には、直接線23がコリメータ3,4及び放射線検出器2のそれぞれの内部で一旦散乱した散乱線も影響している。したがって、図8に示す各特性は、図7に示す測定エネルギースペクトルに基づいて得られるスペクトル指標から被検体21が存在しない時のスペクトル指標を差分した値をスペクトル指標C/Pとして示している。
【0033】
本実施例は、回転テーブル9の回転速度を放射線検出器4から出力された放射線計数率を用いて制御しているので、被検体1の任意の測定位置でのパルスの計数時間をほぼ一定にすることができる。放射線検出器4から出力された放射線計数率が低いときには回転テーブル9の回転速度は速くなり、その放射線計数率が高いときにはその回転速度は遅くなる。このため、被検体21内の放射性核種の濃度が高く、上記の放射線計数率が高くなる、すなわち、放射線検出器2のデッドタイムが長くなる場合でも、放射線検出器2から出力される放射線検出信号のパルスの数え落としを著しく低減することができる。放射線検出器2から出力される放射線検出信号のパルスを、実質的に全て計測することができ、放射線検出器2の測定位置が変わっても放射線の検出感度が、実質的に同じになる。このため、被検体21の放射能計測の精度をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0034】
本発明の他の実施例である実施例2の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図9を用いて説明する。本実施例は、放射線検出器2が被検体21から充分に離れた位置に配置されており、コリメータ3が無い状態での幾何学的効率が、被検体21内の放射性核種の位置にほとんど依存しない場合での放射能測定例である。本実施例でも放射能測定装置1が用いられる。ただし、放射線検出器2及びコリメータ3は、実施例1におけるよりも被検体21から離れていおり、コリメータ3の開口角度25が非常に小さい場合である。本実施例では、移動台車7をL方向に移動させる放射線検出器2の走査範囲Sは、水平コリメータ3の開口角度25を考慮して、被検体21の一つの横断面26全体を含んだ範囲になる。図9において、Eは移動台車7の移動によって放射線検出器2が水平方向において被検体21の外周よりも外側に位置する状態を示し、Fは移動台車7の移動によって放射線検出器2がEの状態と180°反対側で被検体21の外周よりも外側に位置する状態を示している。
【0035】
本実施例も、実施例1と同様に、回転テーブル制御装置14Cが、放射線検出器4で得られた放射線計数率を用いて第3駆動装置13を制御し、回転テーブル9の回転速度、すなわち、被検体21の回転速度を調節する。
【0036】
本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0037】
本発明の他の実施例である実施例3の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図10を用いて説明する。本実施例は、一横断面26での放射線計測を、実施例1のように移動台車7をL方向に移動させるのではなく、放射線検出器2及び放射線検出器4の水平方向における向きを、それぞれ変えることによって行われる。本実施例に用いられる放射能測定装置1Aは、移動台車7、第1駆動装置11及び移動台車制御装置14Aを放射能測定装置1から削除し、放射線検出器2を水平面内で回転させる第1回転装置(図示せず)及び放射線検出器4を水平面内で回転させる第2回転装置(図示せず)を付加した構成を有する。第1回転装置は第1回転制御装置(図示せず)によって制御され、第2回転装置は第1回転制御装置(図示せず)によって制御される。放射能測定装置1Aは、移動台車7の替りに床面上に据え付けられた支持基盤(図示せず)を有し、回転テーブル9及び支持部材20をその支持基盤に設置している。放射線検出器2及びコリメータ3は、コリメータ3に形成された、放射線を通過させる開口の軸心(放射線検出器2の軸心)を水平面内において回転角度θの範囲で回転される。このような回転は、図示されていない第1回転装置の駆動により行われる。放射線検出器2及びコリメータ3は、具体的には、水平面内において、コリメータ3の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線を中心にこの直線の両側でそれぞれ回転角度θ/2の範囲で回転される。放射線検出器4及びコリメータ5は、コリメータ5に形成された、放射線を通過させる開口の軸心(放射線検出器4の軸心)を水平面内において回転角度θの範囲で回転される。このような回転は、第2回転装置の駆動により行われる。放射線検出器4及びコリメータ5は、具体的には、水平方向において、コリメータ5の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線を中心にこの直線の両側でそれぞれ回転角度θ/2の範囲で回転される。これらの回転角度θは水平コリメータ3A,5Aの開口角度に依存している。この場合でも、被検体21がR方向に回転することを考慮した幾何学的効率は、回転角度θを最適化することにより、図3に示す特性と同様にすることができる。本実施例では、コリメータ3の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線とコリメータ5の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線が90℃である場合を示している。
【0038】
本実施例の放射能計測方法を具体的に説明する。放射性廃棄物を充填している被検体21が、回転テーブル9に取り付けられる。オペレータが操作盤(図示せず)上のボタンを操作することによって出力される操作指令が第1回転制御装置、第2回転制御装置、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cに入力される。第1回転制御装置、第2回転制御装置、昇降台車制御装置14B及び回転テーブル制御装置14Cは、第1回転装置、第2回転装置、第2駆動装置12及び第3駆動装置13を、被検体21が放射線検出器2に対して計測開始位置に位置決めされるように駆動させる。このため、最も下方に位置する幅Δhを有する横断面26が放射線検出器2の高さ方向の位置に合わせられ、被検体21の周方向の測定開始点が放射線検出器2,4に対向される。第1回転装置による第1回転台(図示せず)の回転、及び第2回転装置による第2回転台(図示せず)の回転によって、被検体21の、θ方向における計測開始点に放射線検出器2,4が位置決めされる。放射線検出器2が第1回点台に設置され、放射線検出器4が第2回転台に設置されている。
【0039】
その後、被検体21の放射線計測が開始される。-θ/2の位置(図3を満足するように事前に決定された走査範囲θの最も小さい位置)に位置する一つの横断面26でθ方向において最初に測定を開始する幅Δθを放射線検出器2に対向させた状態で、オペレータは、操作盤から回転テーブル制御装置14Cに放射能計測開始指令を出力する。回転テーブル制御装置14Cは第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を例えば365°回転させる。放射線検出器2は、その回転の間、被検体21から放出される放射線を検出する。回転テーブル制御装置14Cは、第3駆動装置13に設けられて周方向の位置を検出する第3エンコーダ(図示せず)の出力を入力しており、被検体21が365°回転されたとき回転テーブル9の回転を停止させる。これによって、最初の状態での一つの横断面26における放射線計測が終了する。第3エンコーダの出力を入力する第1回転制御装置及び第2回転制御装置は、被検体21が365°回転された後、第1回転装置及び第2回転装置を駆動して第1回転台車及び第2回転台車を回転させ、被検体21をΔθだけθ方向に回転させる。第1回転装置に設けられて放射線検出器2のθ方向の位置を検出する第1回転エンコーダ(図示せず)の出力は、第1回転制御装置に入力される。第2回転装置に設けられて放射線検出器4のθ方向の位置を検出する第2回転エンコーダ(図示せず)の出力は、第2回転制御装置に入力される。第1回転制御装置及び第2回転制御装置は、第1回転エンコーダ及び第2回転エンコーダの出力に基づいて被検体21の幅Δθの移動が完了したことを検知したとき、第1回転台車及び第2回転台車の回転を停止させる。回転テーブル制御装置14Cは、第1回転台車及び第2回転台車の回転が停止された後に、第3駆動装置13を駆動して回転テーブル9を回転させ、被検体21を再び365°回転させる。このように、第1回転台車及び第2回転台車の幅Δθ毎の回転及び回転テーブル9の回転が一つの横断面26に対して繰り返され、その都度、放射線検出器2,4による放射線計測が実施される。幅Δθの回転による、その一つの横断面26での放射線検出が終了したとき(図3を満足するように事前に決定された走査範囲θの最も小さい位置(+θ/2の位置)までの放射線検出が終了したとき)、第1回転エンコーダ及び第2回転エンコーダの各出力を入力する昇降台車制御装置14Bが、第2駆動装置12を駆動して昇降台8を下方に移動させ、被検体21を幅Δhだけ下方に移動させる。第2駆動装置12に設けられて上下方向の位置を検出する第2エンコーダの出力を入力する昇降台車制御装置14Bは、昇降台8の幅Δhの移動を検出したとき第2駆動装置12の駆動を停止させる。このとき、他の一つの横断面26が放射線検出器2に対向する。第2エンコーダの出力を入力する回転テーブル制御装置14Cは、昇降台8の下方への移動が停止された後、第3駆動装置13を駆動させ、被検体21を365°回転させる。このようにして、他の一つの横断面26に対する放射線検出器2による放射線計測が開始される。他の一つの横断面26に対しても、上記したような幅Δθ毎の放射線検出器2,4の回転及び被検体21の回転が繰り返され、放射線検出器2,4による放射線検出が行われる。さらに、被検体21の最も上方の幅Δhに対する放射線計測が終了するまで、放射線検出器2による放射線検出が継続される。
【0040】
昇降台8を上下方向に幅Δhずつ移動させて被検体21の軸方向の全長に亘って放射線計測を行う際における被検体21の軸方向の走査範囲hは、垂直コリメータ4の開口角度27を考慮し、被検体21の軸方向の全体を含んだ領域となる(図6参照)。走査範囲hを対象に放射線計測を行うことによって、被検体21の軸方向における放射能分布を求めることができる。図6において、Cは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の下端よりも下方に位置する状態を示し、Dは昇降台8の移動によって放射線検出器2が被検体21の上端よりも上方に位置する状態を示している。
【0041】
本実施例では、放射線検出器2のデッドタイム量として、コリメータ3の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線とコリメータ5の開口の軸心と被検体21の軸心を結ぶ直線が90℃の位置に設置された放射線検出器4で検出された放射線検出信号に基づいて得られた放射線計数率を用いる。この放射線計数率を求めるための放射線計測は、放射線検出器2による放射線検出の前に、上記した第1回転装置及び第2回転装置によって放射線検出器2及び放射線検出器4を回転させ、回転テーブル9によって被検体21を回転させて行われる。このような放射線検出器4による放射線計測は、放射線検出器2による放射線計測よりも粗く行われる。この放射線計数率は、デッドタイム量を表す状態量であり、回転テーブル制御装置14Cに入力され、駆動制御装置14の記憶装置に記憶される。
【0042】
上記した放射線検出器2による放射線計測において、回転テーブル9の回転速度は、回転テーブル制御装置14Cによって以下のように制御される。回転テーブル制御装置14Cは、第3エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向している周方向の位置を、第1回転エンコーダの出力に基づいて被検体21の、放射線検出器2が対向している周(θ)方向の位置をそれぞれ求め、両者の位置に対応する、放射線検出器4で得られた放射線計数率を記憶装置から読み出す。この時、放射線検出器4と放射線検出器2は被検体21に対して90°の位置に設置されているので、被検体21の周方向位置は90°回転した位置の情報を読み出す。さらに、回転テーブル制御装置14Cは、その放射線計数率、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。このようにして、放射線検出器2による放射線計測時に、被検体21の回転速度が制御される。
【0043】
本実施例において、放射線検出器2でのデッドタイム量を予測するために設けられた放射線検出器4は、第1回転装置により水平面内で回転される放射線検出器2の回転角度に同期するように第2回転装置により水平面内で回転される。このように、放射線検出器2,4を回転させるので、実施例1におけるL方向での被検体21の幅ΔL毎の移動は不要になる。
【0044】
本実施例は、放射線検出器4で得られた放射線計数率を用いて実施例1と同様に回転テーブル制御装置14Cにより回転テーブル9の回転速度、すなわち、被検体21の回転速度を制御する。
【0045】
このような本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、移動台車7及び第1駆動装置11が不要になるので、放射能測定装置1Aの構成を単純化できる。
【実施例4】
【0046】
本発明の他の実施例である実施例4の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図11を用いて説明する。本実施例の放射能計測方法に用いられる放射能測定装置1Bは、放射線検出器4及びコリメータ5を放射能測定装置1から削除し、波高分析装置15で求めたデッドタイム量の情報を回転テーブル制御装置14Cに入力する構成となっている。波高分析装置15は、放射線検出器2で得られた放射線計数率に基づいて、直接線23及び散乱線24に起因するエネルギースペクトル、及び放射線検出器2のデッドタイム量を求める。このデッドタイム量は、リアルタイムに求められ、回転テーブル制御装置14Cに入力される。
【0047】
回転テーブル制御装置14Cは、そのデッドタイム量、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。このようにして、放射線検出器2による放射線計測時に、被検体21の回転速度が制御される。
【0048】
本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例で用いられる放射能測定装置1Bは、放射線検出器4及びコリメータ5を設ける必要が無いので、放射能測定装置1よりも構造が単純化される。
【実施例5】
【0049】
本発明の他の実施例である実施例5の放射性廃棄物の放射能測定方法を、図12を用いて説明する。本実施例の放射能測定方法に用いる放射能測定装置1Cは、放射能測定装置1Bに計数率分布記憶装置30を付加した構成を有する。
【0050】
本実施例の放射能測定方法は、実施例1の放射能計測方法を実施する前に、放射線検出器2で被検体21から放出される放射線を検出し、放射線検出器2で得られる放射線計数率を入力する波高分析装置15でデッドタイム量を求める。事前に求められた幅ΔL毎のデッドタイム量は計数率分布記憶装置30に記憶される。
【0051】
実施例1と同様な放射線検出器2を用いた放射線計測で得られた情報により被検体21の放射能計測を行う際、計数率分布記憶装置30に記憶されたデッドタイム量の情報を幅ΔL毎に用いて被検体21の回転速度の制御が行われる。すなわち、回転テーブル制御装置14Cは、計数率分布記憶装置30に記憶されたデッドタイム量、及び駆動制御装置14の記憶装置に記憶されている図5の特性情報に基づいて得られる回転速度を表す回転制御指令を第3駆動装置13に出力することによって、回転テーブル9の回転速度を制御する。
【0052】
本実施例は、実施例4で生じる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図2】図1に示す回転テーブル上に被検体を置いた高さ方向の状態を示す説明図である。
【図3】被検体(貯蔵容器)の回転を考慮した幾何学的効率の、被検体の半径方向における放射性核種の位置の依存性を模式的に示した説明図である。
【図4】被検体と放射線検出器の相対的な移動速度の一例を示す説明図である。
【図5】被検体の回転速度と放射線検出器のデッドタイム(または放射線計数率)との関係を示した特性図である。
【図6】被検体の軸方向の走査範囲を示す説明図である。
【図7】被検体内にCo−60及びCs−137が同じ分布で存在する場合における測定スペクトル、散乱線強度及び直接線強度を示す特性図である。
【図8】被検体内にCo−60及びCs−137が同じ分布で存在する場合におけるスペクトル指標と直接線の貯蔵容器内での減衰との関係を示す特性図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例2の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例3の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例4の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例5の放射性廃棄物の放射能測定方法に用いられる放射能測定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C…放射能測定装置、2,4…放射線検出器、3,5…コリメータ、6…貯蔵容器移動装置、7…移動台車、8…昇降台、9…回転テーブル、11…第1駆動装置、12…第2駆動装置、13…第3駆動装置、14…駆動制御装置、14A…移動台車制御装置、14B…昇降台制御装置、14C…回転テーブル制御装置、15…光電ピ−ク演算装置、17…スペクトル指標演算装置、18…放射能演算装置、23…直接線、24…散乱線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している前記貯蔵容器から放出される放射線を第1放射線検出器で検出して放射線計数率を求め、回転している前記貯蔵容器から放出される放射線を第2放射線検出器で検出し、前記第2放射線検出器による放射線検出時に、前記放射線計数率に基づいて、前記貯蔵容器を置いた前記回転テーブルの回転速度を制御し、前記第2放射線検出器からの放射線検出信号に基づいて前記貯蔵容器の放射能強度を求めることを特徴とする放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項2】
前記貯蔵容器と前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器の、水平方向における相対位置を変える請求項1に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項3】
前記貯蔵容器のある横断面内での前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器の走査は、前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器のそれぞれを前記ある横断面内で回転させることによって行われる請求項1に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項4】
前記第2放射線検出器からの放射線検出信号に基づいて検出された放射線のエネルギースペクトルを求め、前記エネルギースペクトルに基づいて得られる前記放射線の散乱線強度及び非散乱線強度を求め、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度を用いてスペクトル指標を求め、前記スペクトル指標、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度に基づいて前記貯蔵容器内の放射能強度を求める請求項1または請求項2に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項5】
放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している前記貯蔵容器から放出される放射線を放射線検出器で検出し、波高分析装置が前記放射線検出時の前記放射線検出器の出力に基づいて前記放射線検出器のデッドタイム情報を求め、前記放射線検出器による放射線検出時に、前記デッドタイム情報に基づいて、前記貯蔵容器を置いた前記回転テーブルの回転速度を制御し、前記放射線検出器の出力に基づいて前記貯蔵容器の放射能強度を求めることを特徴とする放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項6】
前記貯蔵容器と前記放射線検出器の、水平方向における相対位置を変える請求項5に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項7】
前記デッドタイム情報は記憶装置に予め記憶し、前記回転テーブルの回転速度の制御は前記記憶装置から読み出した前記デッドタイム情報に基づいて行われる請求項5に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項8】
前記放射線検出器の出力に基づいて検出された放射線のエネルギースペクトルを求め、前記エネルギースペクトルに基づいて得られる前記放射線の散乱線強度及び非散乱線強度を求め、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度を用いてスペクトル指標を求め、前記スペクトル指標、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度に基づいて前記貯蔵容器内の放射能強度を求める請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項1】
放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している前記貯蔵容器から放出される放射線を第1放射線検出器で検出して放射線計数率を求め、回転している前記貯蔵容器から放出される放射線を第2放射線検出器で検出し、前記第2放射線検出器による放射線検出時に、前記放射線計数率に基づいて、前記貯蔵容器を置いた前記回転テーブルの回転速度を制御し、前記第2放射線検出器からの放射線検出信号に基づいて前記貯蔵容器の放射能強度を求めることを特徴とする放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項2】
前記貯蔵容器と前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器の、水平方向における相対位置を変える請求項1に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項3】
前記貯蔵容器のある横断面内での前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器の走査は、前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器のそれぞれを前記ある横断面内で回転させることによって行われる請求項1に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項4】
前記第2放射線検出器からの放射線検出信号に基づいて検出された放射線のエネルギースペクトルを求め、前記エネルギースペクトルに基づいて得られる前記放射線の散乱線強度及び非散乱線強度を求め、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度を用いてスペクトル指標を求め、前記スペクトル指標、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度に基づいて前記貯蔵容器内の放射能強度を求める請求項1または請求項2に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項5】
放射性廃棄物を内蔵する貯蔵容器を置いた回転テーブルを回転させ、回転している前記貯蔵容器から放出される放射線を放射線検出器で検出し、波高分析装置が前記放射線検出時の前記放射線検出器の出力に基づいて前記放射線検出器のデッドタイム情報を求め、前記放射線検出器による放射線検出時に、前記デッドタイム情報に基づいて、前記貯蔵容器を置いた前記回転テーブルの回転速度を制御し、前記放射線検出器の出力に基づいて前記貯蔵容器の放射能強度を求めることを特徴とする放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項6】
前記貯蔵容器と前記放射線検出器の、水平方向における相対位置を変える請求項5に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項7】
前記デッドタイム情報は記憶装置に予め記憶し、前記回転テーブルの回転速度の制御は前記記憶装置から読み出した前記デッドタイム情報に基づいて行われる請求項5に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【請求項8】
前記放射線検出器の出力に基づいて検出された放射線のエネルギースペクトルを求め、前記エネルギースペクトルに基づいて得られる前記放射線の散乱線強度及び非散乱線強度を求め、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度を用いてスペクトル指標を求め、前記スペクトル指標、前記散乱線強度及び前記非散乱線強度に基づいて前記貯蔵容器内の放射能強度を求める請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の放射能測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−69123(P2009−69123A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241000(P2007−241000)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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