説明

放射標識された微粒子、その製造方法及びその使用

本発明は、テクネチウム同位元素99mTcで放射標識された微粒子、その製造方法及び活性成分として標識された微粒子を含む粉末吸入薬を製造するための前記微粒子の使用に関し、前記粉末吸入薬は、例えば沈着研究に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテクネチウム同位元素99mTcで放射標識された微粒子、その製造方法、及び例えば、活性成分として標識された微粒子を含む、沈着研究に適した粉末吸入薬を調製するためのそれらの使用に関する。
本発明の方法によって製造された放射性粉末吸入薬は、その物理化学的及び技術的性質又はその医薬用途において、医薬組成物として工業スケールで製造される対応する非標識/類似の粉末吸入薬(市販製品)と異ならない。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
「粉末吸入薬」製剤において、適したカプセル(inhalettes)に詰められる吸入可能な粉末は、例えば粉末吸入器によって投与される。あるいは、例えば噴霧剤ガスとしてHFA134a、HFA227又はその混合物を含む適した粉末の吸入可能なエアロゾルを用いて吸入によっても投与される。
通常は、粉末吸入薬は、例えばDE-A-1792207に記載されるような一般的な技術に基づいて、吸入用カプセルの形態で製造される。吸入による活性成分の投与の重要な特徴は、ある特定の空気力学的サイズの粒子のみが標的器官(肺)に達することである。これらの肺結合粒子の粒子サイズ(吸入可能な画分)は数μmの範囲である。そのような粒子は、通常微粉化(例えば、エアジェット粉砕)によって製造される。ジェット粉砕法に加えて、代替法によって適当に微粉化された生成物を製造することも可能である。噴霧乾燥によって吸入可能な微粒子を製造することは文献から公知である。通常は、医薬用途(吸入)において十分な分散性を示す産業上使用可能な製剤は、上述の方法(DE-A-1792207)を用いるこの種の噴霧乾燥粒子から製造される(Y.-F. Maa, P.-A. Ngyuyen, J.D. Andya, N. Dasovich, T.D. Sweeny, S.J. Shire, C.C. Hsu, Pharmaceutical Research, 15, No. 5 (1998), 768-775; M.T. Vidgren, P.A. Vidgren, T.P. Paronen, Int. J. Pharmaceutics, 35 (1987), 139-144; R.W. Niven, F.D. Lott, A.Y. Ip, J.M. Cribbs, Pharmaceutical Research, 11, No. 8 (1994), 1101-1109)。この種の処方において、粉末混合物(処方物)における医薬組成物の一様分布は重要な因子の1つである。
【0003】
医薬組成物の活性の効果及び部位は、特に吸入される場合、活性成分が放射標識され、次いで人体におけるその分布がシンチグラフィによって決定される沈着研究を用いて決定できる。活性成分分布と放射能分布との間の明確な定量的相関を保証するために、肺における活性成分の定量的沈着が放射能の定量的な分布と正確に一致するように標識方法及び処方物を設計する必要がある。
超微細液滴の形態で吸入される液体エアロゾルについて、一様な活性成分の分布を仮定する技術的な必要条件は、放射性物質が噴霧される溶液において同様に一様に分布されなければならないことである。通常、これは、活性成分溶液に放射性物質を一様に溶解することによって達成される(K.P. Steed, L.J. Towse, B. Freund, S.P. Newman; Eur. J. Pharm. Sci. (1997), 5 (2), 55-61)。
噴霧剤誘導MDIの放射標識における理論上の手順は、噴霧器処方物についての標識方法と、固形微粒子の形態で存在する微粉化活性成分及び液体相に存在する加圧噴霧剤ガスからなる懸濁剤処方物において、放射性物質が噴霧剤ガス液体媒体中に一様に溶解している点でのみ、わずかに異なっている。利用(噴霧)の間、噴霧剤ガスは、噴霧工程によって生成される微細液滴に自発的に噴霧され、微細液滴は噴霧剤ガス(液体)、放射性物質(溶解)及び微粉化活性成分(懸濁)からなり、放射性物質は活性成分の微粒子上に沈着される。この手順においても、活性成分と放射標識の間の直接の定量的な相関は保証される(S.P. Newman, A.R. Clark, N. Talaee, S.W. Clarke; Thorax (1989), 44, 706-710; R. Pauwels, S. Newman, L. Bergstrom; Eur.Respiratory J. (1997), 10 (9), 2127-2138)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の活性成分を放射標識する方法は、粉末化処方物が少なくとも1つの薬理学的に不活性な担体材料(固体)及び少なくとも1つの微粉化活性成分(固体)との粉末混合物からなる場合、これらの処方物に適用できない。この種の系について、上述の放射能と活性成分との定量的な相関に加えて、粒子のサイズ及び質量に基づいて、さらにラジオマーカーが担体材料を標識することなしに活性成分を選択的/特異的に標識することを保証することが不可欠である。
本発明の目的は、吸入によって使用するための粉末処方物において使用でき、かつ、上記要求を満足する放射標識された微粒子を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は、テクネチウム同位元素99mTcで放射標識された微粒子、前記微粒子の製造方法及び適した粉末処方物を製造するための前記微粒子の使用に関する。本発明の微粒子は上記要求を満足する。
「テクネチウム同位元素99mTc」という用語に代えて、略語Tc*を以下で用いる。
本発明の処方物は、その医薬の性質、例えばその空気力学的特性及び分散性の点で、活性成分が標識されていない医薬用途の処方物と異ならない。
本発明の方法によって製造される放射標識された微粒子及びそれから製造される吸入用粉末処方物は、いわゆる沈着研究がこれを用いて行えるようにするのに十分に安定であることが分かった。
微粒子とは、本発明の範囲内において、固体、好ましくは結晶形の医薬活性成分を意味し、その平均粒子サイズは、約0.5〜約10μm、好ましくは約1〜約6μm、特に好ましくは約1.5〜約5μmである。本明細書で使用される意味では、平均粒子サイズとは、容量分布の50%値を意味し、その容量は乾式分布法を用いるレーザー回折によって測定される。平均粒子サイズを決定する方法は、従来技術から公知である。例えば、WO02/30389の実験セクションにおけるこれに関連する記載が参照される。上記平均粒子サイズの粒子は、例えばより大きい粒子サイズの結晶を粉砕すること(いわゆる微粉化)によって、特別の結晶化方法によって、又は噴霧乾燥方法によって得られる。これらのすべての方法は技術的に公知である。
【0006】
抗コリン作用薬、β刺激薬、ドーパミン作用薬、抗アレルギー薬、ロイコトリエン拮抗薬及び副腎皮質ステロイドから選ばれる医薬活性成分、並びに活性成分の任意の組み合わせは、放射標識された微粒子を製造するために、本発明の範囲内で好ましい。
好ましい抗コリン作用薬の例としては、チオトロピウム塩、イプラトロピウム塩、オキシトロピウム塩、
WO02/32899から公知の化合物
トロペノール(tropenol)N-メチル-2,2-ジフェニルプロピオナート、
スコピン N-メチル-2,2-ジフェニルプロピオナート、
スコピン N-メチル-2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート及び
トロペノール(tropenol)N-メチル-2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート
トロペノール N-メチル-3,3',4,4'-テトラフルオロベンジラート、
スコピン N-メチル-3,3',4,4'-テトラフルオロベンジラート、
スコピン N-メチル-4,4'-ジクロロベンジラート、
スコピン N-メチル- 4,4'-ジフルオロベンジラート、
トロペノール N-メチル-3,3'-ジフルオロベンジラート、
スコピン N-メチル- 3,3'-ジフルオロベンジラート及び
トロペノール N-エチル-4,4'-ジフルオロベンジラートの塩から選択される化合物であり、必要によりそれらの水和物及び溶媒和化合物の形態であってもよい。塩とは、上記陽イオンに加えて、対イオンとして、塩素イオン、臭素イオン及びメタンスルホン酸イオンから選択される1つの負電荷を有する陰イオンを含む化合物を意味する。本発明の範囲内で特に好ましい活性成分は上記構造のブロミド又はメタンスルホナートである。
【0007】
本発明の範囲内で、格別興味深いものは、例えば抗コリン作用薬臭化チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、2,2-ジフェニルプロピオナート トロペノール-メトブロミド、スコピン 2,2-ジフェニルプロピオナート-メトブロミド、スコピン 2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート-メトブロミド、トロペノール 2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート-メトブロミド、トロペノール 3,3',4,4'-テトラフルオロベンジラート-メトブロミド、スコピン 3,3',4,4'-テトラフルオロベンジラート-メトブロミド; スコピン 4,4'-ジクロロベンジラート-メトブロミド、スコピン 4,4'-ジフルオロベンジラート-メトブロミド、トロペノール 3,3'-ジフルオロベンジラート-メトブロミド、スコピン 3,3'-ジフルオロベンジラート-メトブロミド及びトロペノール 4,4'-ジフルオロベンジラート-エチルブロミドであり、臭化チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、トロペノール 2,2-ジフェニルプロピオナート -メトブロミド、スコピン 2,2-ジフェニルプロピオナート-メトブロミド、スコピン 2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート-メトブロミド及びトロペノール 2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート-メトブロミドは特に重要である。特に重要なものは、臭化チオトロピウム、特にWO02/30928から公知であるその結晶一水和物の形態である。
【0008】
本発明に従って使用できるβ刺激薬の例としては、好ましくはバンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、サルブタモール、サルメテロール、スルホンテロール、テルブタリン、ツロブテロール、4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン、1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンゾイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンゾイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、5-ヒドロキシ-8-(1-ヒドロキシ-2-イソプロピルアミノブチル)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3-(4H)-on、1-(4-アミノ-3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル)-2-tert.-ブチルアミノ)エタノール及び1-(4-エトキシカルボニルアミノ-3-シアノ-5-フルオロフェニル)-2-(tert.-ブチルアミノ)エタノールから選択される化合物であり、必要によりそれらのラセミ体、それらの境像異性体、それらのジアステレオマーの形態であってもよく、さらに必要によりそれらの薬理学的に容認できる酸付加塩及び水和物であってもよい。β刺激薬として、フェノテロール、フォルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンゾイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノールから選択されるこの種の活性成分を使用することが特に好ましく、必要によりそれらのラセミ体、それらの境像異性体、それらのジアステレオマーの形態であってもよく、さらに必要によりそれらの薬理学的に容認できる酸付加塩及び水和物であってもよい。上記β刺激薬の中で、化合物フォルモテロール及びサルメテロール(必要によりそれらのラセミ体、それらの境像異性体、それらのジアステレオマーの形態であってもよく、さらに必要によりそれらの薬理学的に容認できる酸付加塩及び水和物であってもよい)は特に重要である。例えば、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、スルファート、ホスファート、フマラート、メタンスルホナート及びキシナホアートから選択されるβ刺激薬の酸付加塩は好ましい。フォルモテロールの場合に特に好ましいものは、ヒドロクロリド、スルファート及びフマラートから選択される塩であり、中でもヒドロクロリド及びフマラートは特に好ましい。本発明によれば、フマル酸フォルモテロールは格別重要である。サルメテロールの場合に特に好ましいものは、ヒドロクロリド、スルファート及びキシナホアートから選択される塩であり、中でもキシナホアートは特に好ましい。
【0009】
本発明の範囲内で、本発明に従って使用できる副腎皮質ステロイドは、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド(rofleponide)、GW215864、KSR592、ST-126及びデキサメタゾンから選択される化合物である。本発明の範囲内で、好ましい副腎皮質ステロイドは、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド及びデキサメタゾンから選択される化合物であり、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン及びシクレソニド、特にブデソニド及びフルチカゾンは特に重要である。「ステロイド」という用語は、本特許明細書の範囲内で、「副腎皮質ステロイド」という用語に代えて、そのままで使用することができる。また、本発明の範囲内でステロイドへの言及は、すべてステロイドから形成され得る塩又は誘導体への言及を含む。考えられる塩又は誘導体の例としては、ナトリウム塩、スルホベンゾアート、ホスファート、イソニコチナート、アセタート、プロピオナート、二水素 ホスファート、パルミタート、ピバラート又はフロアートが挙げられる。副腎皮質ステロイドは、必要によりその水和物の形態であってもよい。
【0010】
本発明の範囲内で、ドーパミン作用薬という用語は、ブロモクリプチン、カベルゴリン、α-ジヒドロエルゴクリプチン、リスリド、ペルゴリド、プラミペキソール(pramipexol)、ロキシンドール(roxindol)、ロピニロール、タリペキソール、テルグリド及びビオザン(viozan)から選択される化合物を表す。プラミペキソール(pramipexol)、タリペキソール及びビオザン(viozan)から選択されるドーパミン作用薬を使用することは本発明の範囲内で好ましく、プラミペキソール(pramipexol)は特に重要である。また、上記ドーパミン作用薬への言及は、すべて本発明の範囲内で、存在できるそれらのすべての薬理学的に容認できる酸付加塩及び水和物への言及を含む。上記ドーパミン作用薬によって形成できるそれらの薬理学的に容認できる酸付加塩とは、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸及びマレイン酸の塩から選択される薬理学的に容認できる塩を意味する。
【0011】
本発明に従って使用できる抗アレルギー薬の例としては、エピナスチン、セチリジン、アゼラスチン、フェキソフェナジン、レボカバスチン、ロラタジン、ミゾラスチン、ケトチフェン、エメダスチン、ジメチンデン、クレマスチン、バミピン(bamipin)、セスキクロロフェニラミン(cexchloropheniramine)、フェニラミン、ドキシラミン、クロロフェノキシアミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、エバスチン、デスロラタジン及びメクリジンが挙げられる。本発明の範囲内で使用できる好ましい抗アレルギー薬は、エピナスチン、セチリジン、アゼラスチン、フェキソフェナジン、レボカバスチン、ロラタジン、エバスチン、デスロラタジン及びメクリジンから選択され、エピナスチン及びデスロラタジンは特に好ましい。上記抗アレルギー薬への言及は、すべて本発明の範囲内で、存在できるそれらのすべての薬理学的に容認できる酸付加塩への言及を含む。
【0012】
テクネチウム同位元素99mTc(Tc*)で放射標識された本発明の微粒子は、Tc*塩を溶媒に溶解し、懸濁剤に懸濁した微粒子を次いで混合されるこの溶液に加え、最後に懸濁剤及び溶媒を除去する点で、本発明に従って特徴付けられる方法によって製造できる。
本発明の範囲内で、溶媒及び懸濁剤という用語は、標識される活性成分に関しては、溶解特性を参照する。
本発明の放射標識された微粒子は、例えば以下のように製造してもよい。微粒子を放射標識するために、最初に放射性Tc*が公知の方法によって水溶液から得られる。例えば、テクネチウムは、NaCl溶液を有するTcジェネレータから過酸化テクネチウムイオン(TcO4-)の形態で溶出され、水溶液を蒸発乾固したのち調製できる。過酸化テクネチウム塩NaTc*O4は、NaClとの混合物で存在する。
本明細書に記載されるように、微粉化粉末製剤を標識するためのシステムは、放射性Tc*を溶解する手順に基づき、必要により(有機)懸濁剤(上で定義したように、標識される活性成分に基づく)と混合し、この溶液又は溶媒/懸濁剤の混合物中に微粉化活性成分を懸濁してもよい。標識された粒子を得るために、溶媒又は溶媒/懸濁剤の混合物を、例えばTc*塩が微粒子の表面に沈着されるように蒸発により除去する。
本発明の目的に関して、放射標識された微粒子とは、その表面に放射性Tc*が、特にTc*塩の形態で沈着された微粒子を意味する。
本発明の目的に関して、Tc*塩とは、テクネチウム同位元素99mTcの塩を意味し、この塩は、好ましくはNaTc*O499mTc-TPAC(テトラフェニルアルソニウム過酸化テクネチウム)及び99mTc-DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)からなる群より選択され、必要によりNaClと混合されていてもよい。
【0013】
驚いたことに、懸濁される活性成分が理論的に溶解性である少量の溶媒の添加によって、懸濁剤における微粉化製剤の一様な懸濁が得られ、溶媒及び懸濁剤の混合物の蒸発後、その結晶性において初期微粉化製剤と異ならない微粒子が形成されることを見出した。好ましくは、上述の溶媒は、それが使用されるTc*塩を溶解することができるように選択される。
蒸発乾固したTc*塩、特に塩NaTc*O4/NaClの混合物の形態のものは、Tc*塩に関して良い溶解性によって特徴付けられる溶媒に溶解される。アルコール、エーテル、ケトン、ハロ炭化水素、極性有機溶媒又は上記溶媒の混合物は特に適していることを示した。アルコールが使用される場合、これは、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリコール及びイソプロパノールから選択され、エタノールは特に好ましい。エーテルが使用される場合、これは、好ましくはジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジイソプロピルエーテルから選択される。ケトンが使用される場合、これは、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン及びジエチルケトンから選択される。ハロ炭化水素が使用される場合、これは、好ましくはジクロロメタン又はクロロホルムから選択され、中でもジクロロメタンが好ましい。極性有機溶媒が使用される場合、これは、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びアセトニトリルから選択される。アルコール、特にエタノールを溶媒として使用することが特に好ましい。
【0014】
本方法の次工程で、溶媒に溶かしたTc*塩の溶液に懸濁剤を加え、この懸濁剤は、好ましくは、溶液中に存在する塩の絶対量に応じて、存在するTc*塩が完全に溶解するように選択される。
本発明に従って適した懸濁剤は、パラフィン及びオレフィンからなる非極性非プロトン性溶媒から選択され、好ましくはシクロヘキサン、n-ヘプタン、ペンタン及びn-ヘキサンであり、好ましくはn-ヘキサンである。
特に好ましくは、溶媒と懸濁剤との比が1:50〜1:1000、好ましくは約1:100〜1:500の範囲であるように、所定量の懸濁剤を加える。上記値は2つの成分のそれぞれの容量を参照する。
最初に、液体相を上記溶媒の1つに溶解したTc*塩で調製し、次いで、これに放射標識される微粒子を加える。
あるいは、最初にTc*塩を溶媒に溶解し、次いで一部の懸濁剤をこの溶液に加えることによって、Tc*塩を溶解し、かつ、低濃度で懸濁剤を含む液体層を調製してもよい。次いで、この溶液を、残りの懸濁剤にすでに懸濁されている微粉化製剤と混合する。溶媒及び懸濁剤の混合物は、次いで公知の方法(例えば、減圧下での蒸発)によって除去される。本発明の放射標識された微粒は残る。
【0015】
吸入による投与のための所望の粉末処方物は、次いで技術的に公知の方法によってこれらの微粒子から得られる。これらの粉末処方物は1つ以上の適した生理学的に容認できる賦形剤と混合して本発明の放射標識された微粒子を含む。
本発明に従って、以下の生理学的に容認できる賦形剤を使用することができる:単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ及び多糖類(例えば、デキストラン、スターチ、スターチ誘導体、セルロース、セルロース誘導体)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)又はこれら賦形剤の混合物。好ましくは、単又は二糖類を使用し、ラクトース又はグルコールの使用が好ましく、特にその水和物の形態であるが、これに限られない。本発明の目的に関して、ラクトースが特に好ましい賦形剤であり、ラクトース一水和物は最も特に好ましい。
本発明の吸入可能な粉末の範囲で、賦形剤の最大平均粒子サイズは500μmであり、好ましくは10〜250μmであり、最も好ましくは15〜100μmである。場合によっては、平均粒子サイズが約1〜9μmである、より細かい賦形剤を上述の賦形剤に加えることが適切である。これらのより細かい賦形剤は、また先に列記した、考えられる賦形剤の群から選択される。
【0016】
粉末処方物を製造するために、本発明の放射標識された微粒子を賦形剤(必要により賦形剤混合物であってもよい)に加える。粉砕及び微粉化によって、並びに最後に成分を混合することによって、吸入可能な粉末を製造する方法は、従来技術から公知である。チオトロピウム塩を医薬活性成分として使用する本発明の放射標識された吸入可能な粉末又は粉末混合物の製造に関して、特にWO02/30389、特に5頁29行から6頁39行及び実施例1〜4に列記された実施態様についての記載が参照される。
本発明の吸入可能な粉末は、従来技術から公知の粉末吸入器を用いて投与してもよい。これに関して、例えばUS4570630、US4524769、US4627432、US5590645、DE3625685又はWO94/28958の吸入器が参照される。
以下の詳細な実験の記載は、本発明の範囲を以下に記載される一例としての実施態様に限定することなく、本発明をより完全に説明するのに役立つ。
【実施例】
【0017】
上記方法によって得ることができる微粒子の製造手順の例(活性成分としての臭化チオトロピウムを有する)
以下の工程は放射標識された微粒子の製造方法を記載する。
1.好ましくは4,500〜5,000MBqの合計放射能を有する数mlの可能な最大濃度の過テクネチウム酸ナトリウム水溶液(=V1)をホッとプレート上で蒸発乾固する。
2.残留物をエタノール(=V2)に溶解し、ホットプレート上でV3以上の容量に濃縮する。
3.不溶部分上の溶液の上澄みを定量的に分離する(=V3)。
4.微粉化結晶性臭化チオトロピウム一水和物(=m1)及び懸濁剤n-ヘキサン(=V4)をフラスコに入れる。
5.エタノール性過テクネチウム酸ナトリウム溶液(=V3)を加える。
6.得られる混合物から液体成分のすべてを、例えば43℃及び約200mbarの減圧下で蒸発乾固する。
フラスコ内に残った残留物は、本発明の放射標識されている微粒子に相当し、さらに放射標識された粉末吸入薬を製造するために処理できる。これを行う方法は従来技術から公知である(例えば、WO02/30390)。
【0018】
好ましくは、前記方法の工程2において、工程3において、より少量のみを(例えば、250μl)溶解することができる程度に溶液を濃縮してもよく、次いで工程2及び3を繰り返すことによって、合計容量V3のTc*-エタノール溶液を上述の通り調製する。本方法の他の代替の実施態様において、純粋な懸濁剤を前記方法の工程3において溶解した溶液V3に加えることによって(例えば、溶液V4の一部(10ml))、Tc*溶液の合計容量を増やすことができる。
同様に、以下の手順は特に有利であることが分かった:懸濁剤V4の一部のみ(例えば、45ml)を用いて、前記方法の工程4の懸濁液を調製する。これに、上述の好ましい方法のTc*溶液を半分加える。この懸濁液を一度濃縮し、残りの量のn-ヘキサン(例えば、45ml)を懸濁液に加え、残りのTc*溶液をこの懸濁液と混合する。この懸濁液を、次いで上述の工程6に従ってさらに処理する。
【0019】
表1:量及び容量の詳細


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクネチウム同位元素99mTc(Tc*)で放射標識された微粒子の製造方法であって、Tc*塩を溶媒に溶解し、この溶液と微粒子を懸濁した懸濁剤とを合わせ、混合し、最後に懸濁剤及び溶媒を除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
微粒子が約0.5〜約10μmの平均粒子サイズを有する固体医薬活性成分である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Tc*塩がNaTc*O499mTc-TPAC(テトラフェニルアルソニウム過酸化テクネチウム)又は99mTc-DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)であり、必要によりNaClと混合されていてもよい、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
溶媒がアルコール、エーテル、ケトン、ハロ炭化水素、極性有機溶媒又は上記溶媒の混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
懸濁剤が非極性非プロトン性溶媒から選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶媒と懸濁剤との比が1:50〜1:1000の範囲であり、好ましくは約1:100〜1:500の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
本発明の放射標識された微粒子を製造するために、抗コリン作用薬、β刺激薬、ドーパミン作用薬、抗アレルギー薬、ロイコトリエン拮抗薬及び副腎皮質ステロイドから選択され、必要によりそれらの活性成分の組み合わせであってもよい医薬活性成分を用いる、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
本発明の放射標識された微粒子を製造するために、チオトロピウム塩、イプラトロピウム塩、オキシトロピウム塩、及び以下の化合物の塩から選ばれ、必要によりそれらの水和物及び溶媒和化合物の形態であってもよい抗コリン作用薬を用いる、請求項7記載の方法:
トロペノール N-メチル-2,2-ジフェニルプロピオナート、
スコピン N-メチル-2,2-ジフェニルプロピオナート、
スコピン N-メチル-2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート及び
トロペノール N-メチル-2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセタート
トロペノール N-メチル-3,3',4,4'-テトラフルオロベンジラート、
スコピン N-メチル-3,3',4,4'-テトラフルオロベンジラート、
スコピン N-メチル-4,4'-ジクロロベンジラート、
スコピン N-メチル- 4,4'-ジフルオロベンジラート、
トロペノール N-メチル-3,3'-ジフルオロベンジラート、
スコピン N-メチル- 3,3'-ジフルオロベンジラート及び
トロペノール N-エチル-4,4'-ジフルオロベンジラート。
【請求項9】
本発明の放射標識された微粒子を製造するために、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、サルブタモール、サルメテロール、スルホンテロール、テルブタリン、ツロブテロール、4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン、1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンゾイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンゾイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、5-ヒドロキシ-8-(1-ヒドロキシ-2-イソプロピルアミノブチル)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3-(4H)-オン、1-(4-アミノ-3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル)-2-tert.-ブチルアミノ)エタノール及び1-(4-エトキシカルボニルアミノ-3-シアノ-5-フルオロフェニル)-2-(tert.-ブチルアミノ)エタノールからなる群から選ばれ、必要によりそれらのラセミ体、それらの境像異性体、それらのジアステレオマーの形態で、及び必要によりそれらの薬理学的に容認できる酸付加塩及び水和物であってもよいβ刺激薬を用いる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
本発明の放射標識された微粒子を製造するために、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド、GW215864、KSR592、ST-126及びデキサメタゾンから選ばれる副腎皮質ステロイドを用いる、請求項7記載の方法。
【請求項11】
本発明の放射標識された微粒子を製造するために、ブロモクリプチン、カベルゴリン、α-ジヒドロエルゴクリプチン、リスリド、ペルゴリド、プラミペキソール、ロキシンドール、ロピニロール、タリペキソール、テルグリド及びビオザンから選ばれるドーパミン作用薬を用いる、請求項7記載の方法。
【請求項12】
本発明の放射標識された微粒子を製造するために、エピナスチン、セチリジン、アゼラスチン、フェキソフェナジン、レボカバスチン、ロラタジン、ミゾラスチン、ケトチフェン、エメダスチン、ジメチンデン、クレマスチン、バミピン、セスキクロロフェニラミン、フェニラミン、ドキシラミン、クロロフェノキシアミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、エバスチン、デスロラタジン及びメクリジンから選ばれる抗アレルギー薬を用いる、請求項7記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の方法によって得ることができるテクネチウム同位元素99mTc(Tc*)で放射標識された微粒子。
【請求項14】
吸入によって投与することができる吸入可能な粉末を製造するための請求項13記載のテクネチウム同位元素99mTc(Tc*)で放射標識された微粒子の使用。

【公表番号】特表2006−523632(P2006−523632A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505014(P2006−505014)
【出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003644
【国際公開番号】WO2004/091581
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】