説明

放射線を発するデバイスおよび該デバイスの製造方法

【課題】放射線を発するデバイスおよび該デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】該デバイスは、基板、基板上の放射線を発する機能領域、放射線を発する機能領域の光路中に配置された、ポシシルセスキオキサンと無機ナノ粒子とを含有する放射線アウトカプリング材料、を有する。
【効果】該デバイスはアウトカプリングされる放射線の増大に基づいて放射線アウトカプリング材料を有していないデバイスと比較して、より高い輝度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を発するデバイスおよび該デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
刊行物の"Organic light emitting device with an ordered monolayer of silica microspheres as a scattering medium"、Applied Physics Letters、第76巻、第10号(2000年3月6日)は、ガラス基板と、該ガラス基板に結合されたサブミクロンサイズを有するシリカ球の六方最密配列の単相とを有する有機薄膜をベースとし、該ガラス基板を通って全ての表面放射が放出される有機発光デバイスである「OLED」を開示している。このシリカ微小球の配列は、ガラス基板内に導かれる波である光を散乱し、かつ観察者に対する発光量の増加に寄与する。
【非特許文献1】Organic light emitting device with an ordered monolayer of silica microspheres as a scattering medium"、Applied Physics Letters、第76巻、第10号(2000年3月6日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題はデバイスにより発生する放射線のアウトカプリング効率が改善された、放射線を発する電子デバイスおよび該デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は本発明により、
基板、
基板上の放射線を発する機能領域、
放射線を発する機能領域の光路中に配置された、ポシシルセスキオキサンと無機ナノ粒子とを含有する放射線アウトカプリング材料
を有する、放射線を発する電子デバイスにより解決されることが判明した。
【0005】
本発明の有利な実施態様および放射線を発する電子デバイスを製造する方法はさらなる独立請求項および従属請求項の対象である。
【0006】
このようなデバイスは、放射線アウトカプリング材料に基づいて、該放射線アウトカプリング材料を有していない同様のデバイスと比較してより高い外部の放射線効率を有する。無機ナノ粒子は特に放射線アウトカプリング材料中に散乱中心を有し、このことにより該デバイス中でのアウトカプリングされる放射線のフラクションが増大する。ポリシルセスキオキサン(POSS)材料は無機ナノ粒子がその中に分散しているマトリックスを形成することができ、これによりいわゆるゲスト・ホスト系(ゲスト=POSS、ホスト=無機ナノ粒子)が形成される。
【0007】
ポリシルセスキオキサンという用語は一般式Si2n2n3n[式中、指数nは負でない整数であり、かつ全ての置換基Rは相互に無関係に任意の置換基、たとえば無機置換基、たとえば水素または有機置換基、たとえばアルキル基であってよく、該基は潜在的に別の官能基を有していてよい]の高分子シリカ−酸素化合物を表す。有機置換基はたとえばSi原子のような無機原子を有していてもよい。指数nは、かご型POSS材料については、任意の数、有利にはn=10〜12であってよい。
【0008】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線アウトカプリング材料は、放射線アウトカプリング材料の放出された放射線に対してほぼ透過性である。「ほぼ透過性」という用語は放射線アウトカプリング材料が放出された放射線に関して少なくとも50%、又は70%、有利には90%より大、最も有利には95%より大の透過性を有することを意味する。放射線アウトカプリング材料の透過性はたとえばデンシトメーター又は透過分光光度計を使用して測定することができる。また、透過性を、試料の吸光度の測定により測定することも可能である。
【0009】
ナノ粒子は約100nm〜1μm、有利には200nm〜500nmの寸法を有していてもよく、または1の次元において100nmより小さい寸法を有していてもよい。その小さい寸法に基づいて、ナノ粒子は発された放射線を吸収しすぎることなく機能領域により生じた放射線を効果的に散乱することができる(たとえば図4を参照のこと)。
【0010】
その他の高分子材料、たとえばポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリカーボネートと比較して、ポリシルセスキオキサンはより高いガラス転移温度Tgを有し、かつ該材料の老化の温度依存性が低減していることに基づいて耐久性が向上するという利点を有する。
【0011】
無機ナノ粒子を含有するポリシルセスキオキサンマトリックスは放射線の屈折により電子デバイスによって発生する放射線の、より高いアウトカプリングを提供することもできる(たとえば図4を参照のこと)。
【0012】
放射線アウトカップリグ材料のポリシルセスキオキサンは以下の一般式
【化1】

[式中、置換基Rは有機エポキシド、水素、アルキル基、アルコール、アルコキシ基及びエステル基から選択され、かつ
置換基R′は相互に無関係にアルキル=C1〜C12−アルキル基を有する−O−Si(アルキル)2−グリシドキシ−アルキル−基を表し、従って以下の一般式
【化2】

の分子が生じるか、
あるいは3つのR′基は一緒になって、架橋基を形成し、以下の一般式
【化3】

を有する分子が生じてもよい]の分子を反応させることにより得られる。
【0013】
上記の一般式を有する分子はポリシルセスキオキサンと無機ナノ粒子との異なった組み合わせのために、たとえば置換基RまたはR′を異なった適用のためにふさわしくするために変更することによって、容易に適合させることができる。たとえば置換基RまたはR′としての有機エポキシドを上記の分子に導入して、これらの分子が重合して最終的なポリシルセスキオキサンが得られるために重要な側鎖を生じることができる。上記の一般式を有するシルセスキオキサンモノマーは有利には、重合のために使用される官能基、たとえばエポキシド基を有する1もしくは2の置換基Rを有する。これらの基はモノマーをポリマーの網状構造へ組み込むために使用することができる。モノマーがポリマー鎖の末端を形成するか、またはより大きな鎖の内部に存在するかに依存して、1、2、3またはそれ以上の置換基Rが重合可能な基を有していてもよい。2より多くの重合可能な基を有するモノマーはたとえばポリシルセスキオキサンの高度に架橋した網状構造を形成するために使用することができ、このことによりそれほど高度に架橋していないポリシルセスキオキサンと比較してこのポリマーの化学的性質も変化させる。
【0014】
置換基Rは良好な可溶化および無機ナノ粒子との相容性を保証するために、未反応の有機基を有していてもよい。また置換基Rは、粘度の調整をも可能にする。たとえばRは直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、有機エポキシド、水素、アルコール、アルコキシ基およびエステル基からなる群から選択することができる。さらに、1もしくは複数の置換基Rは重合、たとえば共重合または単独重合のための1もしくは複数の反応性の基を有していてもよい。このような一般式を有する分子は熱的におよび化学的に丈夫なハイブリッドの有機/無機ポリシルセスキオキサンフレームワークへと容易に組み込むことができる。上記の一般式を有する分子の反応により得られるポリシルセスキオキサン材料は、放射線アウトカプリング材料の無機ナノ粒子のためのマトリックスとして容易に使用することができる。上記の式および無機ナノ粒子を有するシスセスキオキサンモノマーは有利に混合され、かつ次いで熱または紫外線を使用して重合して放射アウトカプリング材料を形成する。
【0015】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線を発する電子デバイスはOLEDを含んでいてよい。OLEDデバイスは基板上配置された機能性スタックを有する。機能性スタックは2の導電性の第一の層および第二の層の間にサンドイッチ状に挟まれた少なくとも1もしくは複数の有機機能層を有する。導電層は電極(陰極および陽極)として機能する。電極に電圧が印加されると、電荷キャリアがこれらの電極を通過して機能層へと注入され、かつ電荷キャリアが再結合する際に可視光線が放射されうる(エレクトロルミネセンス)。基板上の有機機能性スタックは、たとえばガラスまたはセラミックからなっていてよいキャップにより包囲されていてもよい。このようなOLEDデバイスにより発される放射線はたとえば約400nm〜約800nmの可視領域であってもよいし、または赤外線または紫外線領域で発光される光であってもよい。第一の導電層はたとえば透過性材料、たとえばスズ・インジウム・オキシドITO/酸化亜鉛を有し、かつ第二の導電層はたとえばCa、Mg、Ba、Ag、Alのような金属またはこれらの混合物を含有していてもよく、あるいは上記の第一の導電層の透過性材料を含有していてもよい。また第二の導電層は、例えばLiF又はCsFの薄層を含んでもよい。
【0016】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線を発する電子デバイスはたとえばZnSを機能性材料として含むたとえば無機発光LEDを含んでいてもよい。
【0017】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線アウトカプリング材料はポリシルセスキオキサンを30〜70質量%および無機ナノ粒子を70〜30質量%含有していてよい。このような質量%範囲のポリシルセスキオキサンおよび透過性無機ナノ粒子内で、放射線を発する電子デバイスにより発生する放射線の大部分は、屈折および散乱によってデバイスの外部へと結合され、かつデバイスの内部へと逆散乱または逆反射しない。有利には放射線アウトカプリング材料は約30質量%のポリシルセスキオキサン、約70質量%の無機ナノ粒子または50質量%のPOSSおよび50質量%の無機ナノ粒子を含有する。
【0018】
放射線アウトカプリング材料の無機ナノ粒子は金属酸化物粒子を含んでいてもよく、たとえば該酸化物粒子は二酸化チタン、酸化亜鉛およびインジウムスズ酸化物から選択されていてもよい。これらの材料は特に電子デバイスから発される散乱放射線のための無機ナノ粒子として使用するために適切である。本発明のこの実施態様の放射線を発する電子デバイスのもう1つの利点は、使用される無機ナノ粒子がすでに酸化された形であり、かつ寸法において均一である。従ってポリシルセスキオキサンおよび無機ナノ粒子の組成は十分に定義されており、かつ均一である。ポリシルセスキオキサンマトリックスの引きつける力のあるファンデルワールス相互作用は類似の極性を生じる無機ナノ粒子の極性に合わせることもできるので、相分離が予測されることなく、かつ長期安定性に関する条件は広く与えられる。
【0019】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線アウトカプリング材料は、その中に分散した無機ナノ粒子を有するポリシルセスキオキサンマトリックスを有し、その際、ナノ粒子はポリシルセスキオキサンマトリックスよりも高い屈折率を有する。このような材料は特にデバイスにより発される放射線を散乱させるために十分に適合されており、従って放射線がデバイスから外側へ放射される。この場合、ポリシルセスキオキサンマトリックスは約1.6の屈折率を有し、かつナノ粒子は約1.7〜2.2、または1.6〜1.7の屈折率を有していてよい。有利には放射線アウトカプリング材料の屈折率はできる限り高い方がよい。
【0020】
放射線アウトカプリング材料はさらに、放射線を発する機能領域上に層状で配置されていてもよい。従って配置は、機能領域により低減された放射線の極めて効果的なアウトカプリング効果を生じうる。
【0021】
さらに、本発明のもう1つの実施態様では、放射線を発する電子デバイスの基板は放出される放射線に対してほぼ透過性であり、かつ放射線アウトカプリング材料は有利には層状で基板の主要な表面領域の1の上に配置されていることが可能である。この場合、機能領域により放出される放射線は透過性の基板を介して効果的にデバイスの外部に放射することができる。
【0022】
基板はさらに、ガラス、金属、ポリマー、シリコンおよびセラミックから選択されていてよい。
【0023】
これらの材料はたとえば放出される放射線に対して該材料がほぼ透過性であるように設計されていてもよく、かつさらに基板がほぼ透過性であるのみではなく、フレキシブルでもあるように設計されていてもよい。このことはたとえばフレキシブルでほぼ透過性の基板を形成するために、透過性のポリマーを使用することにより行うことができる。上記のとおり、「ほぼ透過性」という用語は、基板が、少なくとも70〜80%、有利には90%以上が発される放射線に対して透過性であることを意味する。
【0024】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線を発する電子デバイスは、さらに放射線を発する機能領域をカプセル化するキャップを有していてもよい。このキャップは放出される放射線に対してほぼ透過性であってもよく、かつこの場合、放射線アウトカプリング材料は有利には放射線を発する機能領域と、キャップとの間に配置されて、キャップを通過して放出される放射線のアウトカプリング効率を向上する。このようなキャップを有する放射線を発する電子デバイスは、基板および透過性キャップを同時に通過して放射線を放出するために、透過性基板のみを有するか、または透過性なキャップのみを有するか、または透過性基板と透過性キャップの両方を有していてもよい。
【0025】
透過性な無機ナノ粒子は二酸化チタンのナノ粒子であってよい。二酸化チタンは有利にはルチル変態である。
【0026】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線アウトカプリング材料は、少なくとも1の第一の副層および第二の副層を有しており、該副層はポリシルセスキオキサンと無機ナノ粒子との異なった比率を有する(濃度勾配)。
【0027】
有利には少なくとも2の副層中のポリシルセスキオキサンと無機ナノ粒子との比率は、デバイスの外側により近い第二の副層が、デバイスの内部により近い位置に配置されている第一の副層よりも低い屈折率を有するように変更する。このような屈折率の変更は有利に、第二の副層の屈折率と、空気の屈折率(約1.0)との間の差を低減することができ、従っていわゆる「インデックス・ジャンプ(index jump)」を低減することができ、かつアウトカプリングされる放射線のフラクションを増大することができる。放射線アウトカプリング材料が、デバイスの内部から外部へ向かって次第に減少する屈折率を有する2より多くの副層、たとえば3もしくは4の副層を有していることも可能である。副層の屈折率はポリシルセスキオキサン対無機ナノ粒子の比率を変更することにより(ナノ粒子が多いほど、屈折率は高い)変化させることができる。
【0028】
本発明の1実施態様における放射線アウトカプリング材料は少なくとも1のレンズを有していてよい。レンズは放射線を焦点し、かつ1つの方向に沿って発することによって放射の主要な方向に沿って発される放射線の強度を改善することができる。図2Aおよび2Bに示されているように、放射線アウトカプリング材料は、たとえば1のレンズ(図2A)からなっていてもよいし、または図2Bに示されているような、小さいマイクロレンズの配列を有していてもよい。
【0029】
本発明のもう1つの実施態様では、放射線を発する電子デバイスにけい光物質が含有されている。これらのけい光物質は放射線を発する機能領域により発された放射線を異なった波長を有する放射線へと変換することができ、このことによりたとえば放射線を発する電子デバイスにより発光される可視光の色が変化する。けい光物質はたとえばセリウム・ドープされたガーネット、窒化物けい光体またはイオンのけい光物質、たとえばSrGa24:Eu2+、SrS:Eu2+、蛍光染料、量子点または共役結合ポリマーまたはこれらの混合物であってよい。けい光物質はまたたとえば短波の放射線(たとえば青色領域に相応する)を長波の白色光へとダウンコンバートするために使用することもできる。放射線を発するデバイスのアウトプットスペクトルはこの場合、変換されていない放射線と変換された白色光との組み合わせであってよい。
【0030】
これらのけい光物質は別の層としてデバイスの光路に配置されていてもよいし、または放射線アウトカプリング材料中に含有されていてもよい。たとえばけい光物質は、放射線アウトカプリング材料を含有する別の層のポリシルセスキオキサンマトリックス中に含有されており、この材料が放射線アウトカプリング層として、およびまた放射線変換層として機能してもよい。
【0031】
本発明のもう1つの実施態様は、放射線を発する電子デバイスを製造する方法も記載し、この方法は次の工程を有する:
A)基板を準備する工程、
B)基板上の放射線を発する機能領域を製造する工程、
C)ポリシルセスキオキサンマトリックスと無機ナノ粒子とを含有する放射線アウトカプリング材料を機能領域の光路に設ける工程。
【0032】
本発明のこの方法の別の実施態様では、シルセスキオキサンモノマーと無機ナノ粒子のブレンドを工程C)で重合することにより放射線アウトカプリング材料を形成する。有利には溶剤、たとえば脂肪族または脂環式の溶剤、たとえばシクロヘキサン中のモノマーおよびナノ粒子の懸濁液を紫外線または熱を使用して重合する。重合工程のための温度は100〜180℃であってよい。シルセスキオキサンモノマーおよび透過性の無機ナノ粒子の懸濁液は有利にはたとえば湿式堆積技術、たとえばスピンキャスティングまたはドクターブレード技術を使用して放射線を発するデバイスの基板上に形成する。基板は、ボトム発光デバイスについては透過性であり、又はトップ発光デバイスの場合には不透明であってよい。
【0033】
本発明の方法のもう1つの実施態様では、放射線アウトカプリング材料を少なくとも1のレンズの形で形成することもできる。この構造化はたとえばホットエンボス法、UVエンボス法、スピンキャスティング、レーザ構造化または射出成形を使用することにより実施することができる。基板、たとえばシリコンウェハはフォトリソグラフィー技術を使用し、これにより形成すべきレンズの「ネガ」型を形成することによって構造化することができる。引き続き、放射線アウトカプリング材料のための材料を構造化されたウェハ上に適用し、かつたとえば重合により硬化させ、このことにより少なくとも1のレンズを形成する。
【0034】
本発明の以下のいくつかの実施態様で図面および実施例に基づいてより詳細に説明する。全ての図面は説明のみを目的とした簡潔な略図である。
【0035】
図1A〜1Cは、OLEDとして形成された、放射線を発する電子デバイスの異なった実施態様を示している。
【0036】
図2A〜2Dは、1のレンズまたは複数のマイクロレンズの配列を有する放射線アウトカプリング材料を有するOLEDの異なった実施態様を示している。
【0037】
図3Aおよび3Bは、放射線アウトカプリング材料が2つの副層を有する本発明のもう1つの実施態様を示している。
【0038】
図4は、アウトカプリング材料の1の可能な作用モードを示す略図である。
【0039】
図5は、本発明の1実施態様によるOLEDおよび通常のOLEDの間のアウトカプリングされた光における差異をグラフで示している。
【0040】
図1Aは本発明の1実施態様による放射線を発する電子デバイスの横断面を示している。放射線を発するデバイス1は、たとえば有機発光ダイオード(OLED)として形成されている。第一の電極10A、第一の電極10A上の少なくとも1の有機機能層15および第二の電極10Bの機能性スタックは透過性基板5上に配置されており、該基板は透過性材料、たとえばガラスまたは透過性ポリマーから形成されている。第一の電極10Aおよび基板5の間に放射線アウトカプリング材料層20が形成されており、該層は有機機能層15中に作成され、アウトカプリングされた光のフラクションを増強する。発光の主な方向は照合番号100で示されている矢印により示されている。放射線アウトカプリング材料層20は発光の主要な方向に、つまり発光有機機能領域15の光路に配置されている。このようなOLEDがその側面1A、1Bを通過して発光するか、またはその第二の電極10Bを通過して発光する場合、付加的な放射線アウトカプリング材料層20を側面または第二の電極に形成することもできる。
【0041】
図1Bは本発明の別の1実施態様による別の有機電子デバイス1の横断面を示している。図1Aの電子デバイスと比較して、放射線アウトカプリング材料は機能性スタック10A、15、10Bに面した基板5の主要な表面領域上に層20の形で配置されている。この場合、OLED 1からのアウトカプリングされた光の量も向上することができる。
【0042】
図1Cは本発明のもう1つの実施態様を示している。この場合、付加的な透過性カプセル化30が機能性スタック10A、15、10B上に形成されている。このカプセル化は透過性材料、たとえばガラスまたはポリマーを使用して形成されているので、機能性スタックにより生じた光はこのカプセル化30(これは薄膜カプセル化であってもよい)を通過して放出されうる。放射線アウトカプリング層20はカプセル化30と、光路100中の第二の電極10Bとの間に配置されており、発生した光の放出の主な方向を示している。図1CのOLEDデバイスがトップ発光のみではなく、点線の矢印110で示しているように、ボトム発光もするデバイスであることも可能である。この場合、図1Aまたは1Bに示されているように付加的な放射線アウトカプリング材料層20が存在していてもよい。
【0043】
図2Aは放射線アウトカプリング材料20からなるレンズ20Aを有するOLEDデバイス1を示している。図1A〜1Cに示されている層20と比較して、このレンズはOLEDデバイス1の光路100中の発光方向で発された放射線の強度を焦点することもできる。
【0044】
図2Bは本発明のもう1つの実施態様によるOLEDデバイス1の別の横断面を示している。図2Aと比較して1の大きなレンズ20Aではなく、多数のマイクロレンズのマイクロアレイ20Fが放射線アウトカプリング材料から形成されている。このように形成されている層20Fは、アウトカプリングされた光を焦点することもでき、かつアウトカプリングされた光のフラクションを増加する。かかるレンズの配列を有するデバイスは、カプセル化がより容易であり、フレキシブルレンズに使用することができ、そして1つの大きなマイクロレンズを有するLEDと比較してさらに薄い。このマイクロレンズの配列はいわゆる表面レリーフ回折光学素子(surface-relief diffractive optical element:DOE)を形成することもできる。
【0045】
図2Cおよび2Dは、それぞれ図2Aと2Bのデバイスを示しているが、そこでは、機能性スタックの第二の電極10Bの代わりに、大きなレンズ20Aとレンズのマイクロアレイ20Fとの両者が基板5上に配置されている。図2Cと2Dのデバイスは両者ともボトム発光するデバイスであるが、図2Aと2Bのデバイスは、トップ発光するデバイスである。本発明のもう1つの実施態様の放射線を発するデバイスは、トップ発光するデバイスとボトム発光するデバイスの両者であってもよい。
【0046】
図3Aは本発のもう1つの実施態様による有機の放射線を発するデバイス1の横断面を示している。この場合、放射線アウトカプリング層20は2つの副層20Aおよび20Bを有する。上記のとおり、両方の副層20Aおよび20Bは異なった屈折率を有していてもよく、この屈折率は層20Aから20Bへ向かって減少し、このことによってアウトカプリングされる光のフラクションが増大する。このような副層を有する層20は、ポリシルセスキオキサンと、透過性無機ナノ粒子としてのたとえば二酸化チタン粒子との異なった比率を有する薄い副層を堆積することにより容易に形成することができる。
【0047】
図3Bは、ボトム発光するデバイスであって、2つの副層20Aと20Bとを有する放射線アウトカプリング層20が基板5上に配置されているデバイスを示している。
【0048】
図4は放射線アウトカプリング層20の可能な作用モードの1つの横断面を示している。この層20は均一に分散した、たとえば二酸化チタン粒子のような無機透過性ナノ粒子20Cを含有するポリシルセスキオキサンマトリックス20Dからなる。これらの二酸化チタン粒子はポリシルセスキオキサンマトリックス20Dよりも高い屈折率を有する。ナノ粒子20Cは散乱中心として作用することができ、エミッタ25から放出される矢印210により示されている散乱光はさもなければ屈折に基づいてデバイス中にトラップされる。それ以外は放射線アウトカプリング層20が照合番号200により示されている矢印により示される屈折によって光をアウトカプリングする。
【0049】
図1〜4に示されている全ての実施態様において、透過性な無機ナノ粒子は二酸化チタン粒子である。
【実施例】
【0050】
二酸化チタン粒子(粒径300nm)70質量%および以下の式:
【化4】

[式中、Rはイソ−ブチルを表す]のトリス−グリシジルイソプロピル−シルセスキオキサンモノマー30質量%を含有するシクロヘキサン(溶液中の全質量の10質量%)中の分散液をスピンコーティングによりOLEDデバイスの透過性基板上に施与した。引き続き真空を5分間使用して該膜を室温で30分間乾燥させ、かつさらにアルゴン雰囲気下に240℃で重合した。
【0051】
このOLEDデバイスの輝度を、放射線アウトカプリング材料を有していない通常のOLEDデバイスの輝度と比較した。この比較の結果は図5のグラフに示されている。x軸は観察角度を角度[゜]で示しており、かつy軸は輝度を[Cd/m2]で示している。照合番号300で示されている曲線は、本発明による放射線アウトカプリング領域を有するOLEDデバイスの輝度を示しており、かつ照合番号310で示されている曲線は放射線アウトカプリング層を有していない通常のOLEDデバイスの同一の輝度を示している。放射線アウトカプリング層はOLEDデバイスの輝度を増強することが明らかに見て取れる(0℃で10%の増強)。
【0052】
本発明は上記の実施例に限定されるものではない。本発明は、それぞれの新規の特性およびそれぞれの特性の組み合わせで実施され、これはこの特徴またはこの特徴の組み合わせが特許請求の範囲または実施例に明示的に記載されていないとしても、特に特許請求の範囲に記載された特徴の全ての組み合わせを含むものである。本発明の変法はたとえば無機ナノ粒子の組成および粒径ならびに放射線アウトカプリング材料および基板の形状および層配列に関して可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図1B】本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図1C】本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図2A】1のレンズを有する本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図2B】複数のマイクロレンズ配列を有する本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図2C】1のレンズを有する本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図2D】複数のマイクロレンズ配列を有する本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図3A】放射線アウトカプリング材料が2つの副層を有する本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図3B】放射線アウトカプリング材料が2つの副層を有する本発明による電子デバイスの1実施態様を示す図
【図4】アウトカプリング材料の作用モードを略図で示す図
【図5】本発明によるOLEDおよび通常のOLEDの輝度を示すグラフの図
【符号の説明】
【0054】
1 電子デバイス、 5 基板、 10A 第一の電極、 10B 第二の電極、15 機能層、 100 光路、 20 アウトカプリング材料、 20A 第一の副層、 20B 第二の副層、 20C 無機ナノ粒子、 20D ポリシルセスキオキサンマトリックス、 20E、20F レンズ、 30 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のものを有する放射線を発する電子デバイス(1):
基板(5)、
基板(5)上の放射線を発する機能領域(10A、10B、15)、
放射線を発する機能領域(10A、10B、15)の光路(100)中に配置された、ポリシルセスキオキサン(20D)と無機ナノ粒子(20C)とを含有する放射線アウトカプリング材料(20)。
【請求項2】
前記材料(20)が、ポリシルセスキオキサン(20D)30〜70質量%および無機ナノ粒子(20C)70〜30質量%を含有する、請求項1記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子(20C)が、金属酸化物粒子を含む、請求項1または2記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記無機ナノ粒子(20C)が、二酸化チタン、酸化亜鉛および酸化インジウム亜鉛からなる群から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項5】
前記材料(20)が、放射線を発する機能領域(10A、10B、15)上に層状に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項6】
前記材料(20)が、ポリシルセスキオキサンマトリックス(20D)および該マトリックス中に分散した無機ナノ粒子(20C)を有し、該ナノ粒子はポリシルセスキオキサンマトリックスよりも高い屈折率を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項7】
前記ポリシルセスキオキサンマトリックス(20D)が、約1.6の屈折率を有し、かつ前記ナノ粒子(20C)が約1.7〜1.8の屈折率を有する、請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
機能領域(10A、10B、15)が、第一の電極(10A)、第一の電極(10A)上の少なくとも1の有機機能層(15)および少なくとも1の有機機能層(15)上の第二の電極(10B)のスタックを有する、OLEDとして形成された請求項1から7までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項9】
放射線アウトカプリング材料(20)が、少なくとも1の第一の電極(10A)および第二の電極(10B)上に層状に配置されている、請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
前記基板(5)が、放出された放射線に対してほぼ透過性であり、かつ放射線アウトカプリング材料が該基板(5)の主要な表面領域の1の上に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項11】
前記無機ナノ粒子(20C)が、二酸化チタン粒子である、請求項1から10までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項12】
前記基板(5)が、ガラス、金属、ポリマーおよびセラミックの材料からなる群から選択されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項13】
さらに放射線を発する機能領域(10A、10B、15)をカプセル化するキャップ(30)を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項14】
前記キャップ(30)が、発される放射線に対してほぼ透過性であり、かつ放射線アウトカプリング材料(20)が放射線を発する機能領域(10A、10B、15)とキャップとの間に配置されている、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
前記放射線アウトカプリング材料が、少なくとも1の第一の副層(20A)および第二の副層(20B)からなる層を有し、該副層(20A、20B)はポリシルセスキオキサンおよび無機ナノ粒子の異なった比率を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項16】
放射線アウトカプリング材料が、少なくとも1のレンズ(20E、20F)を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項17】
次の工程:
A)基板(5)を準備する工程、
B)放射線を発する機能領域(10A、10B、15)を基板上に製造する工程、
C)ポリシルセスキオキサン(20D)および透過性無機ナノ粒子(20C)を含有する放射線アウトカプリング材料(20)を機能領域(10A、10B、15)の光路(100)に設ける工程
を有する、放射線を発する電子デバイス(1)の製造方法。
【請求項18】
工程C)で、シルセスキオキサンモノマーと透過性無機ナノ粒子(20C)のブレンドを重合することにより放射線アウトカプリング材料(20)を形成する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
工程C)で、それぞれの層に関してシルセスキオキサンモノマーと透過性無機ナノ粒子の異なった比率を使用して少なくとも1の第一の層(20A)および第二の層(20B)を形成する、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
工程C)で、湿潤堆積技術を使用して放射線アウトカプリング材料(20)を形成する、請求項17から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
工程C)で、少なくとも1のレンズ(20E、20F)の形で放射線アウトカプリング材料(20)を形成する、請求項17から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
オプトエレクトロニクデバイス(1)から発されるアウトカプリング放射線のためのポリシルセスキオキサン(20D)および透過性無機ナノ粒子(20C)を含有する材料(20)の使用。
【請求項23】
ポリシルセスキオキサンが以下の一般式:
【化1】

[式中、置換基Rは有機エポキシド、水素、アルキル基から選択され、かつ置換基R′は相互に無関係に−O−Si(アルキル)2−グリシドキシ−アルキル基であるか、または3つのR′基は一緒になって架橋基を形成して以下の一般式
【化2】

[式中、Rは上記のものを表す]の分子が生じてもよい]の分子を反応させることにより得られる、請求項1から16までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項24】
さらにけい光物質を含有する請求項1から16までのいずれか1項および請求項23記載のデバイス。
【請求項25】
けい光物質が放射線アウトカプリング材料中に含有されている、請求項24記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−73518(P2007−73518A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239597(P2006−239597)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】