放射線モニタ
【課題】簡素な構成で3つの線種の放射線を個別に測定でき、α線スペクトルとγ線スペクトルにより指示上昇の原因を容易に特定でき、測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種によるバックグラウンド計数値を補償する高感度で高安定な放射線モニタを提供する。
【解決手段】放射線モニタは、測定対象から放射される放射線を検出してパルス信号を発する放射線検出器、パルス信号の波高に係わるスペクトルに基づき測定対象核種の放射能を測定する測定部を備える放射線モニタにおいて、放射線検出器は、線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、測定部は、パルス幅に基づき線種を弁別し、パルス信号の波高を測定し、パルス信号を該波高に対応するチャンネルに割り当てて計数してスペクトルとしてメモリに格納し、所定の時限に亘るパルス信号のスペクトルを分析することにより測定対象核種の放射能を測定する。
【解決手段】放射線モニタは、測定対象から放射される放射線を検出してパルス信号を発する放射線検出器、パルス信号の波高に係わるスペクトルに基づき測定対象核種の放射能を測定する測定部を備える放射線モニタにおいて、放射線検出器は、線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、測定部は、パルス幅に基づき線種を弁別し、パルス信号の波高を測定し、パルス信号を該波高に対応するチャンネルに割り当てて計数してスペクトルとしてメモリに格納し、所定の時限に亘るパルス信号のスペクトルを分析することにより測定対象核種の放射能を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所、核燃料再処理施設、核燃料施設、粒子線利用施設、放射性同位元素使用施設などで使用する放射線モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、核燃料再処理施設などでは、測定対象物の放射線量または放射能量を測定線種毎に測定するため、複数の放射線検出器を搭載した放射線モニタまたは複数の放射線モニタを使用している。複数の放射線検出器を搭載した放射線モニタとして、核分裂生成物および放射化生成物を測定対象とする放射性ダストモニタがある。
従来の放射性ダストモニタは、測定対象から放射されるα線とβ線とを同時に検出するαβ検出器、γ線を検出するγ検出器、環境γ線を検出する環境γ検出器、それぞれの検出器に対応する測定部、環境γ線の影響を軽減するための鉛遮蔽体、サンプル空気をサンプリングするポンプと測定対象である粒子状放射性物質を捕集する濾紙を搭載したサンプリング部を備える。
【0003】
測定点の空気をサンプリングして濾紙に通して、そのサンプル空気に浮遊しているダストを濾紙に捕集し、そのダストから放出されるβ線を放射線検出器で検出し、濾紙を通過したサンプル空気量と放射線検出器から出力されるパルス信号の計数して、測定点の空気中に存在する粒子状測定対象核種の濃度を測定・監視している。
核分裂生成物および放射化生成物のβ線を測定する場合、天然放射性核種であるラドンおよびトロンの娘核種のβ線およびγ線がバックグラウンドとして混入するため、測定対象のβ線を高感度で計測しようとする時には、その影響が無視できなくなり、ラドンおよびトロンの娘核種の影響を補償することが不可欠となる。
また、環境のγ線がバックグラウンドとして混入するため、その影響を補償することも必要となり、放射性ダストモニタは、3台の放射線検出器、それに対応する測定部および鉛遮蔽体を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ラドンおよびトロンの娘核種のα線を測定して、バックグラウンドとして混入するラドンおよびトロンの娘核種のβ線とγ線を補償しようとした場合、ラドンおよびトロンの娘核種が捕集される濾紙の深さがサンプリング時間、サンプリング空気湿度、サンプル空気中のダスト量等により複雑に変化してバックグラウンド補償誤差として無視できないため、予め、一定時間、実使用条件で予備ダスト収集したものを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、放射線検出器の放射線入射面側からZnS(Ag)シンチレータ、次にプラスチックシンチレータまたはスチルベンゼンシンチレータ、次にBGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータの順に配置し、ZnS(Ag)シンチレータでα線を検出し、プラスチックシンチレータまたはスチルベンゼンシンチレータで主にβ線を検出し、BGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータでγ線を検出し、それぞれのシンチレータで蛍光減衰蒔間が違うことを利用してパルス幅弁別を行うことにより、1台の放射線検出器で線種毎に放射線を測定する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−64529号公報
【特許文献2】特許第3374600号公報
【特許文献3】特開平5−341047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の放射性ダストモニタは、搭載する放射線検出器の台数が複数となり、また検出部に対応して測定部の設置が必要となり、装置の構成が複雑となる。
また、放射線検出器は鉛遮蔽体を備えるので、重量が重くなるために小型化、機動性、コストに問題がある。
また、指示上昇時には、測定対象を捕集する濾紙を外して分析室に持って行って核種を確認する運用が行われており、核種の確認作業に時間がかかるという問題がある。
また、ラドンおよびトロンの娘核種を濾紙の表面で捕集するために、予め、一定時間、実使用条件で予備ダスト収集したものを使用する方法は、予備ダスト収集にコストがかかる問題がある。
また、1台で3つの線種の放射線を識別して検出する従来の放射線検出器において、α線を検出するZnS(Ag)シンチレータは半透明でエネルギー分解能が良くないため、α線のスペクトルを測定する用途には適さないという問題がある。
【0008】
この発明の目的は、簡素な構成で3つの線種の放射線を個別に測定でき、α線スペクトルとγ線スペクトルにより指示上昇の原因を容易に特定でき、測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種によるバックグラウンド計数値を補償する高感度で高安定な放射線モニタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係わる放射線モニタは、測定対象から放射される放射線を検出してパルス信号を発する放射線検出器、上記パルス信号の波高に係わるスペクトルに基づき測定対象核種の放射能を測定する測定部を備える放射線モニタにおいて、上記放射線検出器は、上記放射線の線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、上記測定部は、上記パルス信号のパルス幅に基づき上記パルス信号に係わる放射線の線種を弁別し、上記パルス信号の波高を測定し、上記パルス信号を該波高に対応するチャンネルに割り当てて計数して上記スペクトルとして上記線種に対応したメモリに格納し、所定の時限に亘る上記パルス信号のスペクトルを分析することにより測定対象核種の放射能を測定する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係わる放射線モニタの効果は、1台の放射線検出器と1台の測定部という簡素な構成で、3つの線種の放射線をそれぞれ測定できるとともに、α線スペクトルとγ線スペクトルを同時に測定できる。
また、α線スペクトルとγ線スペクトルを分析することにより、測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種のバックグラウンド計数値を正確に補償し、測定対象のβ線を高感度で測定できる。
また、測定対象に含まれるα線を放射する放射性核種及びγ線を放射する放射性核種を同時に確認できる。
また、機能を搭載した小型で機動性がある放射線モニタを低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる放射線モニタのブロック図である。図2は、入力されるパルス信号をパルス幅により線種を弁別する様子を示す図である。図3は、α線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。図4は、β線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。図5は、γ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【0012】
実施の形態1に係わる放射線モニタ1は、図1に示すように、表面が放射性物質により汚染された測定対象物2に近接して、測定対象物2から放射される放射線を検出して電気信号に変換し、線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力する放射線検出器3、放射線検出器3から出力されるパルス信号から測定対象核種の放射能を測定する測定部4を備える。
放射線検出器3は、入射面を薄い反射膜で防湿処理したタリウム活性ヨウ化セシウム(以下、CsI(Tl)と記す。)シンチレータを、その裏側に光学面をガラスで防湿処理したタリウム活性ヨウ化ナトリウム(以下、NaI(Tl)と記す。)シンチレータを配置するCsI(Tl)シンチレータは、自身がα線とβ線で蛍光減衰時間が異なるため、パルス幅が異なるパルスを出力する。
また、CsI(Tl)シンチレータとNaI(Tl)シンチレータがγ線に対してパルス幅が異なる。このような構成の放射線検出器3を用いるので、検出する放射線の線種(α線、β線、γ線)によりパルス幅が異なるパルス信号が出力される。この実施の形態1に係わる放射線検出器3では、出力するパルス信号のパルス幅は、大きい方からα線、β線、γ線の関係にある。
【0013】
測定部4は、図1に示すように、パルス信号を増幅してA/D変換器12とパルス幅弁別器13に出力する主増幅器11、入力されるパルス信号をディジタル信号に変換するA/D変換器12、パルス信号をパルス幅の大中小により3つの線種に弁別するパルス幅弁別器13、A/D変換器12から出力される当該パルス信号の波高値とパルス幅弁別器13から出力される当該パルス信号の線種が入力され、線種に基づき波高値をα線、β線、γ線の3線種に仕分けして、それぞれのスペクトルデータとしてメモリ15に格納し、メモリ15に格納されたスペクトルデータを定周期に演算処理し、測定対象核種の放射能に対応した工学値に変換して表示器16に表示する演算器14から構成されている。
【0014】
パルス幅弁別器13は、図2に示すように、放射線検出器3からのパルス信号をパルス幅に関して大中小の3段階に弁別して3つの線種に識別する。2つのパルス幅弁別閾値T1、T2をT2がT1より小さいように設定されている。そして、入力されたパルス信号のパルス幅Tをパルス幅弁別閾値T1と比較してTがT1がより大ならば線種をα線と判断し、同様にしてTがT2より大でT1より小ならば線種をβ線と判断し、TがT2より小ならば線種をγ線と判断する。
なお、使用する放射線検出器3の選定によっては、線種とパルス幅の関係が異なるので各線種のパルス幅およびパルス幅弁別閾値T1、T2の大小は逆転することがある。
【0015】
メモリ15には、検出された放射線にともなって発生するパルス信号を波高毎にカウントした計数値を線種毎に格納するαエリヤ21、βエリヤ22、γエリヤ23が設けられている。パルス信号の波高は、例えば、最小波高0Vから最大波高5Vの範囲が1024等分されて得られる1チャンネルから1024チャンネルのうちの該当するチャンネルに割り当てられる。そして、所定の時限に入力される放射線に係わるパルス信号がそれぞれの波高に対応するチャンネルに計数されることにより、各線種の波高スペクトルがαエリヤ21、βエリヤ22、γエリヤ23に格納されている。
演算器14は、それぞれのパルス信号の波高をチャンネルに対応させ、線種毎に仕分けして、該当するチャンネルの計数値をインクリメントして各エリヤに格納する。なお、演算器14は、図2に示すように、第1波高閾値D1以下の波高のパルス信号をノイズとして取り扱ってメモリ15に格納されている計数値をインクリメントしない。
また、第2波高閾値D2、第3波高閾値D3は、メモリ15に格納されたスペクトルデータから測定領域の積算計数を求めるときの波高閾値の例を示すもので、例えば、β線スペクトルでは第1波高閾値D1から第2波高閾値D2までの計数を積算し、γ線スペクトルでは第1波高閾値D1から第3波高閾値D3までの計数を積算し、α線スペクトルでは第3波高閾値D3以上の計数を積算する。
【0016】
次に、演算器14において行われる測定対象核種の放射能の算出について図3、図4、図5を参照して説明する。
なお、図3に表されたα線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトル(以下、α線スペクトルと称す。)において、b1はラドンおよびトロンの娘核種に起因するα線のバックグラウンドスペクトル、m(α)はα線測定領域、斜線が描かれている領域の面積は、そのα線測定領域のα線バックグラウンド積算計数値である。α線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてα線積算計数値として測定される。
【0017】
天然放射性核種ラドンおよび卜ロンの娘核種であるポロニウム218(Po−218)、ビスマス212(Bi−212)、ポロニウム214(Po−214)、ポロニウム212(Po−212)は、そのピーク位置がα線測定領域より高エネルギー側にある。しかし、ピークの低エネルギー側に立ち下がるテールがα線測定領域にかかるため、演算器14は、α線測定領域を超える所定のエネルギー範囲のラドンおよびトロンα線積算計数値に基づき、α線測定領域に混入するα線バックグラウンド計数値を推定し、α線積算計数値からα線バックグラウンド計数値を引き算してα線正味計数値を求める。このα線正味計数値に基づき、α線測定対象核種の放射能に対応した工学値を求める。
【0018】
図4に表されたβ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトル(以下、β線スペクトルと称す。)において、b2はラドンおよびトロンの娘核種に起因するβ線のバックグラウンドスペクトル、m(β)はβ線測定領域、斜線が描かれている領域の面積は、そのβ線測定領域のβ線バックグラウンド積算計数値である。β線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてβ線積算計数値として測定される。ラドンおよびトロンの娘核種は、α線の他にβ線を放射するため、β線測定領城にはラドンおよびトロンの娘核種のβ線が混入する。演算器14は、図3に表されたα線スペクトルから求めたラドンおよび卜ロンα線積算計数値に基づき、β線測定領域に入り込む部分のβ線バックグラウンド計数値を推定し、β線積算計数値からβ線バックグラウンド計数値を引き算してβ線正味計数値を求める。このβ線正味計数値に基づき、β線測定対象核種の放射能に対応した工学値を求める。
【0019】
図5に表されたγ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトル(以下、γ線スペクトルと称す。)において、b3はラドンおよびトロンの娘核種に起因するγ線のバックグラウンドスペクトル、m(γ)はγ線測定領域、斜線が描かれた領域の面積はそのγ線測定領域のγ線バックグラウンド積算計数値である。γ線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてγ線積算計数値として測定される。ラドンおよびトロンの娘核種は、α線、β線の他にγ線を放射するため、γ線測定領域にはラドンおよびトロンの娘核種のγ線が混入する。演算器14は、図3に表されたα線スペクトルから求めたラドンおよびトロンα線積算計数値に基づき、γ線測定領域に入り込む部分のγ線バックグラウンド計数値を推定し、γ線積算計数値からγ線バックグラウンド計数値を引き算してγ線正味計数値を求める。このγ線正味計数値に基づき、γ線測定対象核種の放射能に対応した工学値を求める。
【0020】
図1の測定対象物2が、例えば、表面汚染を測定しようとする物品の場合、図3に表されたα線スペクトルから核燃料に関係するα線放出核種の判定と放射能量の測定を行うことができる。また、図4に表されたβ線スペクトルから核分裂生成物および放射化生成物についてβ線放出核種の放射能量の測定を行うことができる。また、図5に表されたγ線スペクトルから放射性ヨウ素を含む核分裂生成物および放射化生成物について核種の判定と放射能量の測定を行うことができる。
【0021】
このような放射線モニタ1では、放射線検出器3が測定対象から放射される放射線の線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、測定部4がパルス信号のパルス波高を測定し、パルス信号のパルス幅により線種を弁別し、測定したパルス波高データを、弁別したパルス幅に基づき仕分けしてスペクトルデータの形でメモリに格納し、格納したスペクトルデータを分析することにより測定対象核種の放射能を測定するので、1台の放射線検出器3と1台の測定部4という簡単な構成で実現でき、α線、β線とγ線のスペクトルを同時に測定できる高機能の放射線モニタ1を安価に提供できる。
また、スペクトルによる核種の確認ができ、スペクトル確認のためにサンプルを持ち帰って分析する必要がなくなるため、現場の作業性が向上する。
【0022】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係わる放射線モニタのブロック図である。図7は、入力されるパルス信号をパルス幅により弁別する様子を示す図である。図8は、αβ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
実施の形態2に係わる放射線モニタ1Bは、実施の形態1に係わる放射線モニタ1と測定部4Bが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
また、実施の形態2に係わる測定部4Bは、図6に示すように、実施の形態1に係わる測定部4とパルス信号のパルス幅の弁別が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0023】
実施の形態2に係わるパルス幅弁別器13Bは、パルス信号をパルス幅の大小により弁別するための線種として1つにまとめられたα線およびβ線(以下、αβ線と称す。)とγ線とに弁別する。そのために、パルス幅弁別器13Bには、予めパルス幅弁別閾値T2が定められている。そして、図7に示すように、パルス信号のパルス幅Tをパルス幅弁別閾値T2と比較してTがT2より大ならば線種をαβ線と判断し、TがT2より小ならば線種をγ線と判断する。なお、使用する放射線検出器3の選定によっては、線種とパルス幅の関係が異なるのでパルス幅Tとパルス幅弁別閾値T2の大小は逆転することがある。
【0024】
そして、演算器14Bは、パルス信号が入力される度に、そのパルス信号が弁別された線種に対応するαβエリヤ24またはγエリヤ23に格納されているそのパルス信号の波高に対応するチャンネルの計数値をインクリメントして格納する。
メモリ15Bには、αβ線に弁別されたパルス信号が入力されたときパルス信号の波高に対応するチャンネルの計数値がインクリメントされて格納されるαβエリヤ24、γ線に弁別されたパルス信号が入力されたときパルス信号の波高に対応するチャンネルの計数値がインクリメントされて格納されるγエリヤ23の2つのエリヤが設けられている。
【0025】
次に、実施の形態2に係わる放射線モニタ1Bの動作について図8を参照して説明する。
なお、図8に表されたスペクトルにおいて、i1はαβ線スペクトル、m(α)はα線測定領域、斜線が描かれた領域の面積は、そのα線測定領域のα線積算計数値を示す。また、m(β)はβ線測定領域、横線が描かれた領域の面積は、そのβ線測定領域のβ線積算計数値を示す。図8に表されたαβ線スペクトルは、図3に表されたα線スペクトルと図4に表されたβ線スペクトルが合わされたスペクトルである。そして、α線測定対象核種またはβ線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてα線積算計数値またはβ線積算計数値として測定される。
図8から分かるように、β線測定領域m(β)はα線測定領域m(α)よりも低エネルギー側に設定されるので、パルス信号の波高により検出された放射線の線種をα線またはβ線と区別することができる。
【0026】
このような放射線モニタ1Bは、波高データが線種毎に格納されるメモリ15Bにおいてα線とβ線のパルス信号の波高データを1つのαβエリヤ24に格納するので、メモリ15Bの構成が簡素になり、コスト低減できる。
【0027】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係わる放射線モニタのブロック図である。
実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cは、実施の形態1に係わる放射線モニタ1と測定対象が異なり、それにともない測定対象を濾紙26上に捕集するサンプリング部25が追加されているが、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わるサンプリング部25は、図9に示すように、測定対象の空気から粒子状放射性物質6を捕集する濾紙26がサクションヘッド27上に載置されている気密ボックス28、気密ボックス28内を減圧して送気管29を通して測定対象の空気を気密ボックス28に吸引し、濾紙26を通し、流量計30を通して排気系に送るポンプ31を備えている。
そして、放射線検出器3は、濾紙26上に捕集された粒子状放射性物質6から放射される放射線を検出して電気信号に変換し、線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力する。また、測定部4Cは、放射線検出器3から出力されるパルス信号から測定対象核種の放射能を測定する。
流量計30は、濾紙26を通過する空気量を計測し、測定対象の空気中のダスト濃度を求めるために使われる。
サクションヘッド27は、網目状に通気孔が空けられており通気中の濾紙26がたわまないように固定する。
【0028】
実施の形態1では、測定対象物2が表面汚染物などの場合について述べたが、実施の形態3では、図9に示すように、測定点の空気をサンプリングして濾紙26上に捕集されたサンプル空気に含まれる粒子状放射性物質6である。図9において、送気管29から吸入されたサンプル空気は気密ボックス28に導入され、濾紙26によりサンプル空気に含まれる粒子状放射性物質6が捕集される。粒子状放射性物質6が除去されたサンプル空気は、気密ボックス28から排出されて流量計30で流量が測定され、ポンプ31から排気される。
濾紙26が粒子状放射性物質6を捕集する深さは、粒子径の大きさに依存する。
【0029】
図10は、ラドンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。濾紙に捕集されたラドンの娘核種のうちで、α線を放出する短半減期核種はポロニウム218(Po−218)とポロニウム214(Po−214)である。また、β線とγ線を放出する短半減期核種は鉛214(Pb−214)とビスマス214(Bi−214)である。
図11は、トロンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。濾紙に捕集されたトロンの娘核種のうちで、α線を放出する短半減期核種はビスマス212(Bi−212)とポロニウム212(Po−212)である。β線とγ線を放出する短半減期核種は鉛212(Pb−212)とビスマス212(Bi−212)である。
【0030】
ラドンおよびトロンの娘核種は、崩壊してガスから粒子が生成された直後は粒子径が小さいが、生成からの時間が経過するとともに空気中に浮遊するダストに付着して粒子径が大きくなる。粒子径が小さいものは、濾紙26の深いところまで分布するように捕集されるが、表面に粒子状放射性物質6の層が形成されるにしたがって次第に表面で捕集されるようになる。
【0031】
また、ラドンおよびトロンの娘核種では、濾紙26における捕集深さにより、α線のエネルギーの一部が濾紙26に吸収され、放射線検出器3が検出するエネルギーが変化するため、測定したスペクトルピークのテールの形状が変化する。
また、ラドンおよびトロンの娘核種は、ラドン(Rn−222)から崩壊するものとトロン(Rn−220)から崩壊するもので存在比が異なり、降雨等の気象条件でその存在比が変化する。
【0032】
図12は、ラドンおよびトロンの娘核種の放射するγ線のエネルギーとそのエネルギーの放出割合を示す図である。このように、娘核種により放射されるγ線のエネルギーが異なるとともに放出割合も異なっている。
【0033】
図13は、ラドンおよびトロンの娘核種のα線スペクトルである。但し、横軸にチャンネル番号(エネルギー)、縦軸に計数を対数で表している。
Po−214スペクトルピークのテール(スペクトルピークから低エネルギー側に立ち下がる直線部)、Po−212スペクトルピークのテールおよび重なっているPo−218およびBi−212のスペクトルピークのテールの傾きは概ね平行である。なお、実線と点線のα線スペクトルは、異なる時点での測定によるものであり、異なる時点での低エネルギー側のテールの傾きには違いが見られる。
また、ラドンおよびトロンの娘核種が濾紙26の表面で捕集されるとテールの傾きは大きく、濾紙26の内部で捕集されるとテールの傾きは小さい。したがって、ラドンおよびトロンの娘核種が濾紙26の表面で捕集されるか、内部で捕集されるかにより、ラドンおよびトロンα線積算計数値が変化する。そして、このラドンおよびトロンα線積算計数値の変化は、ラドンおよびトロンα線積算計数値に基づきバックグラウンド計数値を推定し、測定対象領域の積算計数からバックグラウンド計数値を引き算して正味計数値を求めるときの誤差になる。この誤差を解消するために、演算器14Cはテールの傾きを求め、それに基づきバックグラウンド計数値を補正する。正味計数値は、測定対象領域の積算計数値から補正されたバックグラウンド計数値を引き算して求められる。
【0034】
次に、演算器14Cにおけるバックグラウンド計数値の推定値の補正動作について図14を参照して説明する。なお、図14は、バックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
S1で、テール上の2点における計数の対数を求める。すなわち、図13に示す、Po−214のスペクトルピークの低エネルギー側のテールにおいて、所定のチャンネル番号x1、x2に対する計数N1、N2の2点(x1,N1)、(x2,N2)について、N1の対数y1=logN1、N2の対数y2=logN2を求める。チャンネル番号x1とx2は、ピークの近くの計数が大きくて、直線性が良好な範囲から、適切な間隔離間している2点を実験的に選定し設定する。
S2で、テールの2点を結ぶ直線の傾きkを求める。すなわち、(x1,logN1)、(x2,logN2)の2点を結ぶ直線の傾きkを、k=(logN1−logN2)/(x1−x2)に基づいて求める。
S3で、α線ハッククラウンド計数補正値を求める。すなわち、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、α線測定領域に混入するα線バックグラウンド計数値jα1ΣN(α)を推定し、これに傾きkの関数f(k)を掛け算してα線バックグランド計数補正値jα1f(k)ΣN(α)を求める。
なお、ラドンおよびトロンの娘核種の中からPo−214を選択して傾きkを求めたのは、高い検出効率が得られ、統計誤差を小さくできるためである。また、jα1は定数であり、関数f(k)はkの関数として、実験的に求める。
【0035】
また、β線バックグランド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、β線測定領域に混入するβ線バックグラウンド計数値jβ1ΣN(α)を推定し、これに傾きkの関数g(k)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jβ1g(k)ΣN(α)を求める。また、jβ1は定数であり、関数g(k)はkの関数として、実験的に求める。
【0036】
さらに、γ線バックグラウンド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、γ線測定領域に混入するγ線バックグラウンド計数値jγ1ΣN(α)を推定し、これに上記傾きkの関数p(k)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jγ1p(k)ΣN(α)を求める。また、jγ1は定数であり、関数p(k)はkの関数として、実験的に求める。
【0037】
このような放射線モニタ1Cは、スペクトルを横軸にエネルギー、縦軸に計数を対数で表すと、ラドンおよびトロンの娘核種のα線スペクトルピークの低エネルギー側に立ち下がるテールが概ね直線で、それぞれの娘核種のテールの傾きが平行であり、ラドンおよびトロンの娘核種が濾紙26の表面で捕集されるとテールの傾きは大きく、濾紙26の内部で捕集されるとテールの傾きは小さいという性質を利用し、相対的に計数の大きいポロニウム214(Po−214)のスペクトルピークの低エネルギー側のテールの傾きを求め、その傾きに基づきバックグラウンド計数値の推定値を補正するので、濾紙26に捕集されたラドンおよびトロンの娘核種の深さ方向分布により発生するバックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することができ、目的とする測定対象核種の放射線を高感度かつ高安定で測定できる。
【0038】
実施の形態4.
図15は、この発明の実施の形態4に係わる放射線モニタでのバックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
実施の形態4に係わる放射線モニタは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cとα線バックグラウンド計数値の推定値の補正に用いるラドンおよびトロンの娘核種が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分には同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3では、ポロニウム214のα線スペクトルピークを用いてバックグランド計数値の推定値の補正を行っているが、実施の形態4では、γ線測定領域よりエネルギーの高いビスマス214(Bi−214)のγ線を用いてα線バックグラウンド計数値の推定値の補正を行う。
【0039】
次に、演算器14Cにおけるバックグラウンド計数値の推定値の補正動作について図15を参照して説明する。
S4で、Bi−214γ線積算計数値を求める。すなわち、図5に示すように、γ線測定領域よりエネルギーの高いBi−214のγ線1.764MeVに注目し、そのスペクトルピーク領域について計数を積算してBi−214γ線積算計数値ΣN(γ)を求める。
S5で、ラドンおよびトロンα線積算計数値とBi−214γ線積算計数値との比sを求める。すなわち、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)が濾紙26の捕集深さに顕著に影響を受けることに対し、Bi−214γ線積算計数値ΣN(γ)は、濾紙26によるγ線の吸収が無視できる程度に小さいため、濾紙26の捕集深さの影響を受けない。したがって、その比sは濾紙26の捕集深さに関係した値になる。
S6で、α線バックグラウンド計数値の推定値の補正値を求める。すなわち、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、α線測定領域に混入するα線バックグラウンド計数値jα2ΣN(α)を推定し、これに比sの関数f(s)を掛け算してα線バックグラウンド計数補正値jα2f(s)ΣN(α)を求める。なお、jα2は定数であり、関数f(s)は比sの関数として、実験的に求める。
【0040】
また、β線バックグラウンド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、β線測定領域に混入するβ線バックグラウンド計数値jβ2ΣN(α)を推定し、これに比sの関数g(s)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jβ2g(s)ΣN(α)を求める。なお、jβ2は定数であり、関数g(s)は比sの関数として、実験的に求める。
【0041】
さらに、γ線バックグラウンド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、γ線測定領域に混入するγ線バックグラウンド計数値jγ2ΣN(α)を推定し、これに比sの関数p(s)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jβ2p(s)ΣN(α)を求める。なお、jγ2は定数であり、関数p(s)は比sの関数として、実験的に求める。
【0042】
このような放射線モニタは、ラドンおよびトロンα線積算計数値とBi−214γ線積算計数値の比が濾紙26の捕集深さに関係することを利用して、その比に基づきバックグラウンド計数値の推定値を補正するので、濾紙26において捕集されたラドンおよびトロンの娘核種の深さ方向分布により発生するバックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することができ、実施の形態3と同様に、目的とする測定対象核種の放射線を高感度かつ高安定で測定できる。
【0043】
実施の形態5.
図16は、この発明の実施の形態5に係わる放射線モニタのブロック図である。
実施の形態5に係わる放射線モニタ1Dは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cと気密ボックス28内に装着されている濾紙26に活性炭捕集材が追加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0044】
気密ボックス28内のサンプル空気の流れの途中に、図16に示すように、濾紙26と、その裏面に配置した放射性ヨウ素を捕集する活性炭捕集材、例えば、活性炭カートリッジ32とを濾紙26と活性炭カートリッジ32の取り外しが容易なフィルタケース33の中に装着している。
このような放射線モニタ1Dは、粒子状放射性物質6と同時に、I−131(ヨウ素131)、I−133(ヨウ素133)等の放射性ヨウ素を測定することができる。
【0045】
実施の形態6.
図17は、この発明の実施の形態6に係わる放射線モニタのブロック図である。図18は、実施の形態6に係わるイオントラップの断面図である。
実施の形態6に係わる放射線モニタ1Eは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cと気密ボックス28内にサンプル空気を取り込む送気管29の途中に粒子径増大手段としてのイオントラップ35が追加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
イオントラップ35は、図18に示すように、サンプル空気を通す容器である陰極37、陰極37の中心に配置された陽極38、陽極38を陰極37の容器から電気的に絶縁して固定する陽極絶縁物39、送気管29と気密ボックス28から陰極37としての容器を絶縁する陰極絶縁物40、陰極37と陽極38の間に高電圧を印加する高圧電源41から構成される。
【0046】
高圧電源41は、容器である陰極37がマイナスに、中心電極である陽極38がプラスになるように接続され、さらに、容器はアース(図示せず)に接続される。サンプル空気に含まれる帯電粒子は、高電圧による電界の作用で、プラス粒子は容器側に、マイナス粒子は中心電極側に吸引、収集される。容器及び中心電極に収集された帯電粒子は放電してそれぞれの表面に付着し、粒子径が成長して大きくなると離脱してサンプル空気に放出される。ラドンおよびトロンの娘核種は、崩壊直後はプラスに帯電して単独で存在しているため、効率よく収集するためには電界強度を大きくする必要がある。実験の結果、高圧電源41の電圧を1000V程度することにより良好の結果が得られる。ラドンおよびトロンの娘核種は容器の内面に収集され、同様に収集されて付着した他の浮遊粒子により粒子径が成長するとサンプル空気に放出される。
【0047】
イオントラップ35を通過したサンプル空気は、気密ボックス28に導入され、濾紙26にサンプル空気に含まれるダストとともに粒子状放射性物質6が捕集される。このとき、十分に粒子径が成長したラドンおよびトロンの娘核種は濾紙26の表面に捕集される。
【0048】
このような放射線モニタ1Eは、濾紙26の上流にイオントラップ35が設けられ、ラドンおよびトロンの娘核種がプラスに帯電している性質を利用し、粒子径の小さいラドンおよびトロンの娘核種を電気的に集塵して粒子径を増大させて濾紙26の表面で捕集できるようにしたので、サンプリング時間の経過および粒子状放射性物質6の量で表面捕集の割合が変化することがなくなり、ラドンおよびトロンの娘核種が常に濾紙26の表面で捕集されるようになり、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cより正確にバックグラウンド計数値の推定値が求められ、測定対象核種を高感度かつ高精度で測定できる。
【0049】
実施の形態7.
図19は、この発明の実施の形態7に係わる活性炭繊維からなる濾紙の表面付近の拡大断面図である。
実施の形態7に係わる放射線モニタは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cと濾紙26Bが活性炭繊維からできていることだけが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分の説明は省略する。
実施の形態7に係わる濾紙26Bは、図19に示すように、活性炭繊維44を使用し、活性炭繊維44の表面45に1〜2nm程度の細孔46が形成されている。
そして、この細孔46にラドンおよびトロンの娘核種を捕集するようにしたので、活性炭繊維44がイオントラップ35と同等に粒子径増大手段となる。
このような放射線モニタは、イオントラップ35を設けることなく簡素な構成となるので、効率よく測定できる放射線モニタを低コストで提供できる。
【0050】
実施の形態8.
図20は、この発明の実施の形態8に係わる放射線検出器の構成図である。
実施の形態8に係わる放射線モニタは、実施の形態1に係わる放射線モニタ1と放射線検出器3Bの構成が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0051】
実施の形態8に係わる放射線検出器3Bには、図20に示すように、放射線の入射方向に向かって手前側から順に、遮光膜51、第1のシンチレータ52、第2のシンチレータ53、β線遮蔽体54、第3のシンチレータ55、光電子増倍管56が検出器ハウジング57内に収納されている。
遮光膜51は、放射線の入射側からの光の進入を遮断するとともに、第1のシンチレータ52、第2のシンチレータ53、第3のシンチレータ55で発光した蛍光の内で、光電子増倍管56に向かう方向と反対方向に進む蛍光を反射させる。
第1のシンチレータ52は、測定対象のα線を全て吸収することができ、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みである。
第2のシンチレータ53は、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みである。
β線遮蔽体54は、透明であり、第2のシンチレータ53を透過したβ線を完全に遮蔽する。
第3のシンチレータ55は、γ線を検出する。
このようにして、入射する放射線のうち、第1のシンチレータ52で主にα線を検出し、第2のシンチレータ53で主にβ線を検出し、第3のシンチレータ55でγ線を検出する。
光電子増倍管56は、各シンチレータ52、53、55が放射線を検出したときに発生する蛍光を電流パルスに変換し、前置増幅器58でその電流パルスを電圧パルスに変換して出力する。
検出器ハウジング57は、先端の遮光膜51とともに放射線検出器3B全体を遮光する。
【0052】
第1のシンチレータ52にユウロピウム活性フッ化カルシウム(以下、CaF2(Eu)と記す。)シンチレータを、第2のシンチレータ53にセリウム添加アルミニウム−イットリウムペロブスカイト結晶(以下、YAP(Ce)と記す。)シンチレータを、第3のシンチレータ55にビスマスギャーマネイト結晶(以下、BGOと記す。)シンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータを配置することにより、放射線検出器3Bから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からβ線、γ線、α線の順になり、パルス幅の違いにより測定部4で線種が弁別される。
第1のシンチレータ52にYAP(Ce)シンチレータを、第2のシンチレータ53にCaF2(Eu)シンチレータを配置した場合は、放射線検出器3Bから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からα線、γ線、β線の順になる。NaI(Tl)シンチレータは潮解性があるため密閉した容器に入れられている。また、光学面はガラスのため、β線遮蔽体54は省略できる。
【0053】
このような放射線モニタは、放射線入射面側から、第1のシンチレータ52、第2のシンチレ53、β線遮蔽体54、第3のシンチレータ55を備え、第1のシンチレータ52で主にα線を検出し、第2のシンチレータ53で主にβ線を検出し、第3のシンチレータ55でγ線を検出するように配置し、かつ、第1のシンチレータ52はα線スペクトル測定に必要な最小限の厚みとし、β線及びγ線に対する感度を最小とすることによりα線スペクトルに混入するβ線とγ線のカウントを最小にできるので、線種の識別が確実になり、測定対象核種を高感度に測定できる。
また、第2のシンチレータ53はβ線測定に必要な最小限の厚みとし、γ線に対する感度を極力小さくすることによりβ線スペクトルに混入するγ線のカウントを最小にできるため、線種の識別が確実になり、測定対象核種を高感度に測定できる。
【0054】
実施の形態9.
図21は、この発明の実施の形態9に係わる放射線検出器の断面図である。
実施の形態9に係わる放射線モニタは、実施の形態8に係わる放射線モニタと放射線検出器3Cの構成が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態8では、シンチレータを3種類使用した放射線検出器3Bについて述べたが、実施の形態9では、シンチレータを2種類使用した放射線検出器3Cについて図21を参照して説明する。
実施の形態9に係わる放射線検出器3Cには、図21に示すように、放射線の入射方向に向かって手前から順に、遮光膜51、第4のシンチレータ59、β線遮蔽体54、第3のシンチレータ55、光電子増倍管56が検出器ハウジング57内に収納されている。
第4のシンチレータ59は、測定対象のα線が全て吸収されるように、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みである。
また、第4のシンチレータ59にCaF2(Eu)シンチレータを、第3のシンチレータ55にYAP(Ce)シンチレータを配置することにより、放射線検出器3Cから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からγ線、α線=β線の順になる。
【0055】
また、第4のシンチレータ59にYAP(Ce)シンチレータを、第3のシンチレータ55にCaF2(Eu)シンチレータを配置することにより、放射線検出器3Cから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からα線=β線、γ線の順になる。
測定部4では、パルス幅の違いによりα線およびβ線とγ線が弁別され、αβ線スペクトル分析時に波高値の違いによりα線とβ線が弁別される。
【0056】
第4のシンチレータ59において、α線は全て吸収されるが、β線はノイズレベルに対しては十分な波高レベルを確保し、α線との識別性能を高めるために必要最小限の波高になるような厚みに制限する。また、測定対象のα線エネルギーは測定対象のβ線の3倍以上である。したがって、第4のシンチレータ59の種類として、単位エネルギー当たりの蛍光効率のβ線に対するα線の比が1/3以上のシンチレータを選定し、所望の厚みにすることにより、主要なα線とβ線は波高値で弁別して測定できる。
【0057】
このような放射線モニタは、第4のシンチレータ59でα線およびβ線を、第3のシンチレータ55でγ線を検出するようにし、第3のシンチレータ55に薄く加工し易いシンチレータを使用することにより、γ線スペクトルを求めない用途において放射線検出器3Cの構成が簡素で小型となるため、低コストの放射線モニタが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図2】入力されるパルス信号をパルス幅により弁別する様子を示す図である。
【図3】α線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図4】β線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図5】γ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図6】この発明の実施の形態2に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図7】入力されるパルス信号のパルス幅により弁別する様子を示す図である。
【図8】αβ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図9】この発明の実施の形態3に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図10】ラドンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。
【図11】トロンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。
【図12】ラドンおよびトロンの娘核種の放射するγ線のエネルギーとそのエネルギーの放出割合を示す図である。
【図13】ラドンおよびトロンの娘核種のα線スペクトルである。
【図14】バックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態4に係わる放射線モニタでのバックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態5に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図17】この発明の実施の形態6に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図18】実施の形態6に係わるイオントラップの断面図である。
【図19】この発明の実施の形態7に係わる活性炭繊維からなる濾紙の表面付近の拡大断面図である。
【図20】この発明の実施の形態8に係わる放射線検出器の構成図である。
【図21】この発明の実施の形態9に係わる放射線検出器の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 放射線モニタ、2 測定対象物、3 放射線検出器、4 測定部、6 粒子状放射性物質、11 主増幅器、12 A/D変換器、13 パルス幅弁別器、14 演算器、15 メモリ、16 表示器、21 αエリヤ、22 βエリヤ、23 γエリヤ、24 αβエリヤ、25 サンプリング部、26 濾紙、27 サクションヘッド、28 気密ボックス、29 送気管、30 流量計、31 ポンプ、32 活性炭カートリッジ、33 フィルタケース、35 イオントラップ、37 陰極、38 陽極、39 陽極絶縁物、40 陰極絶縁物、41 高圧電源、44 活性炭繊維、45 表面、46 細孔、51 遮光膜、52、53、55、59 シンチレータ、54 β線遮蔽体、56 光電子増倍管、57 検出器ハウジング、58 前置増幅器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所、核燃料再処理施設、核燃料施設、粒子線利用施設、放射性同位元素使用施設などで使用する放射線モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、核燃料再処理施設などでは、測定対象物の放射線量または放射能量を測定線種毎に測定するため、複数の放射線検出器を搭載した放射線モニタまたは複数の放射線モニタを使用している。複数の放射線検出器を搭載した放射線モニタとして、核分裂生成物および放射化生成物を測定対象とする放射性ダストモニタがある。
従来の放射性ダストモニタは、測定対象から放射されるα線とβ線とを同時に検出するαβ検出器、γ線を検出するγ検出器、環境γ線を検出する環境γ検出器、それぞれの検出器に対応する測定部、環境γ線の影響を軽減するための鉛遮蔽体、サンプル空気をサンプリングするポンプと測定対象である粒子状放射性物質を捕集する濾紙を搭載したサンプリング部を備える。
【0003】
測定点の空気をサンプリングして濾紙に通して、そのサンプル空気に浮遊しているダストを濾紙に捕集し、そのダストから放出されるβ線を放射線検出器で検出し、濾紙を通過したサンプル空気量と放射線検出器から出力されるパルス信号の計数して、測定点の空気中に存在する粒子状測定対象核種の濃度を測定・監視している。
核分裂生成物および放射化生成物のβ線を測定する場合、天然放射性核種であるラドンおよびトロンの娘核種のβ線およびγ線がバックグラウンドとして混入するため、測定対象のβ線を高感度で計測しようとする時には、その影響が無視できなくなり、ラドンおよびトロンの娘核種の影響を補償することが不可欠となる。
また、環境のγ線がバックグラウンドとして混入するため、その影響を補償することも必要となり、放射性ダストモニタは、3台の放射線検出器、それに対応する測定部および鉛遮蔽体を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ラドンおよびトロンの娘核種のα線を測定して、バックグラウンドとして混入するラドンおよびトロンの娘核種のβ線とγ線を補償しようとした場合、ラドンおよびトロンの娘核種が捕集される濾紙の深さがサンプリング時間、サンプリング空気湿度、サンプル空気中のダスト量等により複雑に変化してバックグラウンド補償誤差として無視できないため、予め、一定時間、実使用条件で予備ダスト収集したものを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、放射線検出器の放射線入射面側からZnS(Ag)シンチレータ、次にプラスチックシンチレータまたはスチルベンゼンシンチレータ、次にBGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータの順に配置し、ZnS(Ag)シンチレータでα線を検出し、プラスチックシンチレータまたはスチルベンゼンシンチレータで主にβ線を検出し、BGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータでγ線を検出し、それぞれのシンチレータで蛍光減衰蒔間が違うことを利用してパルス幅弁別を行うことにより、1台の放射線検出器で線種毎に放射線を測定する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−64529号公報
【特許文献2】特許第3374600号公報
【特許文献3】特開平5−341047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の放射性ダストモニタは、搭載する放射線検出器の台数が複数となり、また検出部に対応して測定部の設置が必要となり、装置の構成が複雑となる。
また、放射線検出器は鉛遮蔽体を備えるので、重量が重くなるために小型化、機動性、コストに問題がある。
また、指示上昇時には、測定対象を捕集する濾紙を外して分析室に持って行って核種を確認する運用が行われており、核種の確認作業に時間がかかるという問題がある。
また、ラドンおよびトロンの娘核種を濾紙の表面で捕集するために、予め、一定時間、実使用条件で予備ダスト収集したものを使用する方法は、予備ダスト収集にコストがかかる問題がある。
また、1台で3つの線種の放射線を識別して検出する従来の放射線検出器において、α線を検出するZnS(Ag)シンチレータは半透明でエネルギー分解能が良くないため、α線のスペクトルを測定する用途には適さないという問題がある。
【0008】
この発明の目的は、簡素な構成で3つの線種の放射線を個別に測定でき、α線スペクトルとγ線スペクトルにより指示上昇の原因を容易に特定でき、測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種によるバックグラウンド計数値を補償する高感度で高安定な放射線モニタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係わる放射線モニタは、測定対象から放射される放射線を検出してパルス信号を発する放射線検出器、上記パルス信号の波高に係わるスペクトルに基づき測定対象核種の放射能を測定する測定部を備える放射線モニタにおいて、上記放射線検出器は、上記放射線の線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、上記測定部は、上記パルス信号のパルス幅に基づき上記パルス信号に係わる放射線の線種を弁別し、上記パルス信号の波高を測定し、上記パルス信号を該波高に対応するチャンネルに割り当てて計数して上記スペクトルとして上記線種に対応したメモリに格納し、所定の時限に亘る上記パルス信号のスペクトルを分析することにより測定対象核種の放射能を測定する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係わる放射線モニタの効果は、1台の放射線検出器と1台の測定部という簡素な構成で、3つの線種の放射線をそれぞれ測定できるとともに、α線スペクトルとγ線スペクトルを同時に測定できる。
また、α線スペクトルとγ線スペクトルを分析することにより、測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種のバックグラウンド計数値を正確に補償し、測定対象のβ線を高感度で測定できる。
また、測定対象に含まれるα線を放射する放射性核種及びγ線を放射する放射性核種を同時に確認できる。
また、機能を搭載した小型で機動性がある放射線モニタを低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる放射線モニタのブロック図である。図2は、入力されるパルス信号をパルス幅により線種を弁別する様子を示す図である。図3は、α線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。図4は、β線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。図5は、γ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【0012】
実施の形態1に係わる放射線モニタ1は、図1に示すように、表面が放射性物質により汚染された測定対象物2に近接して、測定対象物2から放射される放射線を検出して電気信号に変換し、線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力する放射線検出器3、放射線検出器3から出力されるパルス信号から測定対象核種の放射能を測定する測定部4を備える。
放射線検出器3は、入射面を薄い反射膜で防湿処理したタリウム活性ヨウ化セシウム(以下、CsI(Tl)と記す。)シンチレータを、その裏側に光学面をガラスで防湿処理したタリウム活性ヨウ化ナトリウム(以下、NaI(Tl)と記す。)シンチレータを配置するCsI(Tl)シンチレータは、自身がα線とβ線で蛍光減衰時間が異なるため、パルス幅が異なるパルスを出力する。
また、CsI(Tl)シンチレータとNaI(Tl)シンチレータがγ線に対してパルス幅が異なる。このような構成の放射線検出器3を用いるので、検出する放射線の線種(α線、β線、γ線)によりパルス幅が異なるパルス信号が出力される。この実施の形態1に係わる放射線検出器3では、出力するパルス信号のパルス幅は、大きい方からα線、β線、γ線の関係にある。
【0013】
測定部4は、図1に示すように、パルス信号を増幅してA/D変換器12とパルス幅弁別器13に出力する主増幅器11、入力されるパルス信号をディジタル信号に変換するA/D変換器12、パルス信号をパルス幅の大中小により3つの線種に弁別するパルス幅弁別器13、A/D変換器12から出力される当該パルス信号の波高値とパルス幅弁別器13から出力される当該パルス信号の線種が入力され、線種に基づき波高値をα線、β線、γ線の3線種に仕分けして、それぞれのスペクトルデータとしてメモリ15に格納し、メモリ15に格納されたスペクトルデータを定周期に演算処理し、測定対象核種の放射能に対応した工学値に変換して表示器16に表示する演算器14から構成されている。
【0014】
パルス幅弁別器13は、図2に示すように、放射線検出器3からのパルス信号をパルス幅に関して大中小の3段階に弁別して3つの線種に識別する。2つのパルス幅弁別閾値T1、T2をT2がT1より小さいように設定されている。そして、入力されたパルス信号のパルス幅Tをパルス幅弁別閾値T1と比較してTがT1がより大ならば線種をα線と判断し、同様にしてTがT2より大でT1より小ならば線種をβ線と判断し、TがT2より小ならば線種をγ線と判断する。
なお、使用する放射線検出器3の選定によっては、線種とパルス幅の関係が異なるので各線種のパルス幅およびパルス幅弁別閾値T1、T2の大小は逆転することがある。
【0015】
メモリ15には、検出された放射線にともなって発生するパルス信号を波高毎にカウントした計数値を線種毎に格納するαエリヤ21、βエリヤ22、γエリヤ23が設けられている。パルス信号の波高は、例えば、最小波高0Vから最大波高5Vの範囲が1024等分されて得られる1チャンネルから1024チャンネルのうちの該当するチャンネルに割り当てられる。そして、所定の時限に入力される放射線に係わるパルス信号がそれぞれの波高に対応するチャンネルに計数されることにより、各線種の波高スペクトルがαエリヤ21、βエリヤ22、γエリヤ23に格納されている。
演算器14は、それぞれのパルス信号の波高をチャンネルに対応させ、線種毎に仕分けして、該当するチャンネルの計数値をインクリメントして各エリヤに格納する。なお、演算器14は、図2に示すように、第1波高閾値D1以下の波高のパルス信号をノイズとして取り扱ってメモリ15に格納されている計数値をインクリメントしない。
また、第2波高閾値D2、第3波高閾値D3は、メモリ15に格納されたスペクトルデータから測定領域の積算計数を求めるときの波高閾値の例を示すもので、例えば、β線スペクトルでは第1波高閾値D1から第2波高閾値D2までの計数を積算し、γ線スペクトルでは第1波高閾値D1から第3波高閾値D3までの計数を積算し、α線スペクトルでは第3波高閾値D3以上の計数を積算する。
【0016】
次に、演算器14において行われる測定対象核種の放射能の算出について図3、図4、図5を参照して説明する。
なお、図3に表されたα線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトル(以下、α線スペクトルと称す。)において、b1はラドンおよびトロンの娘核種に起因するα線のバックグラウンドスペクトル、m(α)はα線測定領域、斜線が描かれている領域の面積は、そのα線測定領域のα線バックグラウンド積算計数値である。α線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてα線積算計数値として測定される。
【0017】
天然放射性核種ラドンおよび卜ロンの娘核種であるポロニウム218(Po−218)、ビスマス212(Bi−212)、ポロニウム214(Po−214)、ポロニウム212(Po−212)は、そのピーク位置がα線測定領域より高エネルギー側にある。しかし、ピークの低エネルギー側に立ち下がるテールがα線測定領域にかかるため、演算器14は、α線測定領域を超える所定のエネルギー範囲のラドンおよびトロンα線積算計数値に基づき、α線測定領域に混入するα線バックグラウンド計数値を推定し、α線積算計数値からα線バックグラウンド計数値を引き算してα線正味計数値を求める。このα線正味計数値に基づき、α線測定対象核種の放射能に対応した工学値を求める。
【0018】
図4に表されたβ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトル(以下、β線スペクトルと称す。)において、b2はラドンおよびトロンの娘核種に起因するβ線のバックグラウンドスペクトル、m(β)はβ線測定領域、斜線が描かれている領域の面積は、そのβ線測定領域のβ線バックグラウンド積算計数値である。β線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてβ線積算計数値として測定される。ラドンおよびトロンの娘核種は、α線の他にβ線を放射するため、β線測定領城にはラドンおよびトロンの娘核種のβ線が混入する。演算器14は、図3に表されたα線スペクトルから求めたラドンおよび卜ロンα線積算計数値に基づき、β線測定領域に入り込む部分のβ線バックグラウンド計数値を推定し、β線積算計数値からβ線バックグラウンド計数値を引き算してβ線正味計数値を求める。このβ線正味計数値に基づき、β線測定対象核種の放射能に対応した工学値を求める。
【0019】
図5に表されたγ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトル(以下、γ線スペクトルと称す。)において、b3はラドンおよびトロンの娘核種に起因するγ線のバックグラウンドスペクトル、m(γ)はγ線測定領域、斜線が描かれた領域の面積はそのγ線測定領域のγ線バックグラウンド積算計数値である。γ線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてγ線積算計数値として測定される。ラドンおよびトロンの娘核種は、α線、β線の他にγ線を放射するため、γ線測定領域にはラドンおよびトロンの娘核種のγ線が混入する。演算器14は、図3に表されたα線スペクトルから求めたラドンおよびトロンα線積算計数値に基づき、γ線測定領域に入り込む部分のγ線バックグラウンド計数値を推定し、γ線積算計数値からγ線バックグラウンド計数値を引き算してγ線正味計数値を求める。このγ線正味計数値に基づき、γ線測定対象核種の放射能に対応した工学値を求める。
【0020】
図1の測定対象物2が、例えば、表面汚染を測定しようとする物品の場合、図3に表されたα線スペクトルから核燃料に関係するα線放出核種の判定と放射能量の測定を行うことができる。また、図4に表されたβ線スペクトルから核分裂生成物および放射化生成物についてβ線放出核種の放射能量の測定を行うことができる。また、図5に表されたγ線スペクトルから放射性ヨウ素を含む核分裂生成物および放射化生成物について核種の判定と放射能量の測定を行うことができる。
【0021】
このような放射線モニタ1では、放射線検出器3が測定対象から放射される放射線の線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、測定部4がパルス信号のパルス波高を測定し、パルス信号のパルス幅により線種を弁別し、測定したパルス波高データを、弁別したパルス幅に基づき仕分けしてスペクトルデータの形でメモリに格納し、格納したスペクトルデータを分析することにより測定対象核種の放射能を測定するので、1台の放射線検出器3と1台の測定部4という簡単な構成で実現でき、α線、β線とγ線のスペクトルを同時に測定できる高機能の放射線モニタ1を安価に提供できる。
また、スペクトルによる核種の確認ができ、スペクトル確認のためにサンプルを持ち帰って分析する必要がなくなるため、現場の作業性が向上する。
【0022】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係わる放射線モニタのブロック図である。図7は、入力されるパルス信号をパルス幅により弁別する様子を示す図である。図8は、αβ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
実施の形態2に係わる放射線モニタ1Bは、実施の形態1に係わる放射線モニタ1と測定部4Bが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
また、実施の形態2に係わる測定部4Bは、図6に示すように、実施の形態1に係わる測定部4とパルス信号のパルス幅の弁別が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0023】
実施の形態2に係わるパルス幅弁別器13Bは、パルス信号をパルス幅の大小により弁別するための線種として1つにまとめられたα線およびβ線(以下、αβ線と称す。)とγ線とに弁別する。そのために、パルス幅弁別器13Bには、予めパルス幅弁別閾値T2が定められている。そして、図7に示すように、パルス信号のパルス幅Tをパルス幅弁別閾値T2と比較してTがT2より大ならば線種をαβ線と判断し、TがT2より小ならば線種をγ線と判断する。なお、使用する放射線検出器3の選定によっては、線種とパルス幅の関係が異なるのでパルス幅Tとパルス幅弁別閾値T2の大小は逆転することがある。
【0024】
そして、演算器14Bは、パルス信号が入力される度に、そのパルス信号が弁別された線種に対応するαβエリヤ24またはγエリヤ23に格納されているそのパルス信号の波高に対応するチャンネルの計数値をインクリメントして格納する。
メモリ15Bには、αβ線に弁別されたパルス信号が入力されたときパルス信号の波高に対応するチャンネルの計数値がインクリメントされて格納されるαβエリヤ24、γ線に弁別されたパルス信号が入力されたときパルス信号の波高に対応するチャンネルの計数値がインクリメントされて格納されるγエリヤ23の2つのエリヤが設けられている。
【0025】
次に、実施の形態2に係わる放射線モニタ1Bの動作について図8を参照して説明する。
なお、図8に表されたスペクトルにおいて、i1はαβ線スペクトル、m(α)はα線測定領域、斜線が描かれた領域の面積は、そのα線測定領域のα線積算計数値を示す。また、m(β)はβ線測定領域、横線が描かれた領域の面積は、そのβ線測定領域のβ線積算計数値を示す。図8に表されたαβ線スペクトルは、図3に表されたα線スペクトルと図4に表されたβ線スペクトルが合わされたスペクトルである。そして、α線測定対象核種またはβ線測定対象核種が存在するとそれに起因する正味積算計数値が上積みされてα線積算計数値またはβ線積算計数値として測定される。
図8から分かるように、β線測定領域m(β)はα線測定領域m(α)よりも低エネルギー側に設定されるので、パルス信号の波高により検出された放射線の線種をα線またはβ線と区別することができる。
【0026】
このような放射線モニタ1Bは、波高データが線種毎に格納されるメモリ15Bにおいてα線とβ線のパルス信号の波高データを1つのαβエリヤ24に格納するので、メモリ15Bの構成が簡素になり、コスト低減できる。
【0027】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係わる放射線モニタのブロック図である。
実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cは、実施の形態1に係わる放射線モニタ1と測定対象が異なり、それにともない測定対象を濾紙26上に捕集するサンプリング部25が追加されているが、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わるサンプリング部25は、図9に示すように、測定対象の空気から粒子状放射性物質6を捕集する濾紙26がサクションヘッド27上に載置されている気密ボックス28、気密ボックス28内を減圧して送気管29を通して測定対象の空気を気密ボックス28に吸引し、濾紙26を通し、流量計30を通して排気系に送るポンプ31を備えている。
そして、放射線検出器3は、濾紙26上に捕集された粒子状放射性物質6から放射される放射線を検出して電気信号に変換し、線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力する。また、測定部4Cは、放射線検出器3から出力されるパルス信号から測定対象核種の放射能を測定する。
流量計30は、濾紙26を通過する空気量を計測し、測定対象の空気中のダスト濃度を求めるために使われる。
サクションヘッド27は、網目状に通気孔が空けられており通気中の濾紙26がたわまないように固定する。
【0028】
実施の形態1では、測定対象物2が表面汚染物などの場合について述べたが、実施の形態3では、図9に示すように、測定点の空気をサンプリングして濾紙26上に捕集されたサンプル空気に含まれる粒子状放射性物質6である。図9において、送気管29から吸入されたサンプル空気は気密ボックス28に導入され、濾紙26によりサンプル空気に含まれる粒子状放射性物質6が捕集される。粒子状放射性物質6が除去されたサンプル空気は、気密ボックス28から排出されて流量計30で流量が測定され、ポンプ31から排気される。
濾紙26が粒子状放射性物質6を捕集する深さは、粒子径の大きさに依存する。
【0029】
図10は、ラドンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。濾紙に捕集されたラドンの娘核種のうちで、α線を放出する短半減期核種はポロニウム218(Po−218)とポロニウム214(Po−214)である。また、β線とγ線を放出する短半減期核種は鉛214(Pb−214)とビスマス214(Bi−214)である。
図11は、トロンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。濾紙に捕集されたトロンの娘核種のうちで、α線を放出する短半減期核種はビスマス212(Bi−212)とポロニウム212(Po−212)である。β線とγ線を放出する短半減期核種は鉛212(Pb−212)とビスマス212(Bi−212)である。
【0030】
ラドンおよびトロンの娘核種は、崩壊してガスから粒子が生成された直後は粒子径が小さいが、生成からの時間が経過するとともに空気中に浮遊するダストに付着して粒子径が大きくなる。粒子径が小さいものは、濾紙26の深いところまで分布するように捕集されるが、表面に粒子状放射性物質6の層が形成されるにしたがって次第に表面で捕集されるようになる。
【0031】
また、ラドンおよびトロンの娘核種では、濾紙26における捕集深さにより、α線のエネルギーの一部が濾紙26に吸収され、放射線検出器3が検出するエネルギーが変化するため、測定したスペクトルピークのテールの形状が変化する。
また、ラドンおよびトロンの娘核種は、ラドン(Rn−222)から崩壊するものとトロン(Rn−220)から崩壊するもので存在比が異なり、降雨等の気象条件でその存在比が変化する。
【0032】
図12は、ラドンおよびトロンの娘核種の放射するγ線のエネルギーとそのエネルギーの放出割合を示す図である。このように、娘核種により放射されるγ線のエネルギーが異なるとともに放出割合も異なっている。
【0033】
図13は、ラドンおよびトロンの娘核種のα線スペクトルである。但し、横軸にチャンネル番号(エネルギー)、縦軸に計数を対数で表している。
Po−214スペクトルピークのテール(スペクトルピークから低エネルギー側に立ち下がる直線部)、Po−212スペクトルピークのテールおよび重なっているPo−218およびBi−212のスペクトルピークのテールの傾きは概ね平行である。なお、実線と点線のα線スペクトルは、異なる時点での測定によるものであり、異なる時点での低エネルギー側のテールの傾きには違いが見られる。
また、ラドンおよびトロンの娘核種が濾紙26の表面で捕集されるとテールの傾きは大きく、濾紙26の内部で捕集されるとテールの傾きは小さい。したがって、ラドンおよびトロンの娘核種が濾紙26の表面で捕集されるか、内部で捕集されるかにより、ラドンおよびトロンα線積算計数値が変化する。そして、このラドンおよびトロンα線積算計数値の変化は、ラドンおよびトロンα線積算計数値に基づきバックグラウンド計数値を推定し、測定対象領域の積算計数からバックグラウンド計数値を引き算して正味計数値を求めるときの誤差になる。この誤差を解消するために、演算器14Cはテールの傾きを求め、それに基づきバックグラウンド計数値を補正する。正味計数値は、測定対象領域の積算計数値から補正されたバックグラウンド計数値を引き算して求められる。
【0034】
次に、演算器14Cにおけるバックグラウンド計数値の推定値の補正動作について図14を参照して説明する。なお、図14は、バックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
S1で、テール上の2点における計数の対数を求める。すなわち、図13に示す、Po−214のスペクトルピークの低エネルギー側のテールにおいて、所定のチャンネル番号x1、x2に対する計数N1、N2の2点(x1,N1)、(x2,N2)について、N1の対数y1=logN1、N2の対数y2=logN2を求める。チャンネル番号x1とx2は、ピークの近くの計数が大きくて、直線性が良好な範囲から、適切な間隔離間している2点を実験的に選定し設定する。
S2で、テールの2点を結ぶ直線の傾きkを求める。すなわち、(x1,logN1)、(x2,logN2)の2点を結ぶ直線の傾きkを、k=(logN1−logN2)/(x1−x2)に基づいて求める。
S3で、α線ハッククラウンド計数補正値を求める。すなわち、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、α線測定領域に混入するα線バックグラウンド計数値jα1ΣN(α)を推定し、これに傾きkの関数f(k)を掛け算してα線バックグランド計数補正値jα1f(k)ΣN(α)を求める。
なお、ラドンおよびトロンの娘核種の中からPo−214を選択して傾きkを求めたのは、高い検出効率が得られ、統計誤差を小さくできるためである。また、jα1は定数であり、関数f(k)はkの関数として、実験的に求める。
【0035】
また、β線バックグランド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、β線測定領域に混入するβ線バックグラウンド計数値jβ1ΣN(α)を推定し、これに傾きkの関数g(k)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jβ1g(k)ΣN(α)を求める。また、jβ1は定数であり、関数g(k)はkの関数として、実験的に求める。
【0036】
さらに、γ線バックグラウンド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、γ線測定領域に混入するγ線バックグラウンド計数値jγ1ΣN(α)を推定し、これに上記傾きkの関数p(k)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jγ1p(k)ΣN(α)を求める。また、jγ1は定数であり、関数p(k)はkの関数として、実験的に求める。
【0037】
このような放射線モニタ1Cは、スペクトルを横軸にエネルギー、縦軸に計数を対数で表すと、ラドンおよびトロンの娘核種のα線スペクトルピークの低エネルギー側に立ち下がるテールが概ね直線で、それぞれの娘核種のテールの傾きが平行であり、ラドンおよびトロンの娘核種が濾紙26の表面で捕集されるとテールの傾きは大きく、濾紙26の内部で捕集されるとテールの傾きは小さいという性質を利用し、相対的に計数の大きいポロニウム214(Po−214)のスペクトルピークの低エネルギー側のテールの傾きを求め、その傾きに基づきバックグラウンド計数値の推定値を補正するので、濾紙26に捕集されたラドンおよびトロンの娘核種の深さ方向分布により発生するバックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することができ、目的とする測定対象核種の放射線を高感度かつ高安定で測定できる。
【0038】
実施の形態4.
図15は、この発明の実施の形態4に係わる放射線モニタでのバックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
実施の形態4に係わる放射線モニタは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cとα線バックグラウンド計数値の推定値の補正に用いるラドンおよびトロンの娘核種が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分には同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3では、ポロニウム214のα線スペクトルピークを用いてバックグランド計数値の推定値の補正を行っているが、実施の形態4では、γ線測定領域よりエネルギーの高いビスマス214(Bi−214)のγ線を用いてα線バックグラウンド計数値の推定値の補正を行う。
【0039】
次に、演算器14Cにおけるバックグラウンド計数値の推定値の補正動作について図15を参照して説明する。
S4で、Bi−214γ線積算計数値を求める。すなわち、図5に示すように、γ線測定領域よりエネルギーの高いBi−214のγ線1.764MeVに注目し、そのスペクトルピーク領域について計数を積算してBi−214γ線積算計数値ΣN(γ)を求める。
S5で、ラドンおよびトロンα線積算計数値とBi−214γ線積算計数値との比sを求める。すなわち、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)が濾紙26の捕集深さに顕著に影響を受けることに対し、Bi−214γ線積算計数値ΣN(γ)は、濾紙26によるγ線の吸収が無視できる程度に小さいため、濾紙26の捕集深さの影響を受けない。したがって、その比sは濾紙26の捕集深さに関係した値になる。
S6で、α線バックグラウンド計数値の推定値の補正値を求める。すなわち、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、α線測定領域に混入するα線バックグラウンド計数値jα2ΣN(α)を推定し、これに比sの関数f(s)を掛け算してα線バックグラウンド計数補正値jα2f(s)ΣN(α)を求める。なお、jα2は定数であり、関数f(s)は比sの関数として、実験的に求める。
【0040】
また、β線バックグラウンド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、β線測定領域に混入するβ線バックグラウンド計数値jβ2ΣN(α)を推定し、これに比sの関数g(s)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jβ2g(s)ΣN(α)を求める。なお、jβ2は定数であり、関数g(s)は比sの関数として、実験的に求める。
【0041】
さらに、γ線バックグラウンド計数補正値も同様にして、ラドンおよびトロンα線積算計数値ΣN(α)に基づき、γ線測定領域に混入するγ線バックグラウンド計数値jγ2ΣN(α)を推定し、これに比sの関数p(s)を掛け算してβ線バックグラウンド計数補正値jβ2p(s)ΣN(α)を求める。なお、jγ2は定数であり、関数p(s)は比sの関数として、実験的に求める。
【0042】
このような放射線モニタは、ラドンおよびトロンα線積算計数値とBi−214γ線積算計数値の比が濾紙26の捕集深さに関係することを利用して、その比に基づきバックグラウンド計数値の推定値を補正するので、濾紙26において捕集されたラドンおよびトロンの娘核種の深さ方向分布により発生するバックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することができ、実施の形態3と同様に、目的とする測定対象核種の放射線を高感度かつ高安定で測定できる。
【0043】
実施の形態5.
図16は、この発明の実施の形態5に係わる放射線モニタのブロック図である。
実施の形態5に係わる放射線モニタ1Dは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cと気密ボックス28内に装着されている濾紙26に活性炭捕集材が追加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0044】
気密ボックス28内のサンプル空気の流れの途中に、図16に示すように、濾紙26と、その裏面に配置した放射性ヨウ素を捕集する活性炭捕集材、例えば、活性炭カートリッジ32とを濾紙26と活性炭カートリッジ32の取り外しが容易なフィルタケース33の中に装着している。
このような放射線モニタ1Dは、粒子状放射性物質6と同時に、I−131(ヨウ素131)、I−133(ヨウ素133)等の放射性ヨウ素を測定することができる。
【0045】
実施の形態6.
図17は、この発明の実施の形態6に係わる放射線モニタのブロック図である。図18は、実施の形態6に係わるイオントラップの断面図である。
実施の形態6に係わる放射線モニタ1Eは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cと気密ボックス28内にサンプル空気を取り込む送気管29の途中に粒子径増大手段としてのイオントラップ35が追加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
イオントラップ35は、図18に示すように、サンプル空気を通す容器である陰極37、陰極37の中心に配置された陽極38、陽極38を陰極37の容器から電気的に絶縁して固定する陽極絶縁物39、送気管29と気密ボックス28から陰極37としての容器を絶縁する陰極絶縁物40、陰極37と陽極38の間に高電圧を印加する高圧電源41から構成される。
【0046】
高圧電源41は、容器である陰極37がマイナスに、中心電極である陽極38がプラスになるように接続され、さらに、容器はアース(図示せず)に接続される。サンプル空気に含まれる帯電粒子は、高電圧による電界の作用で、プラス粒子は容器側に、マイナス粒子は中心電極側に吸引、収集される。容器及び中心電極に収集された帯電粒子は放電してそれぞれの表面に付着し、粒子径が成長して大きくなると離脱してサンプル空気に放出される。ラドンおよびトロンの娘核種は、崩壊直後はプラスに帯電して単独で存在しているため、効率よく収集するためには電界強度を大きくする必要がある。実験の結果、高圧電源41の電圧を1000V程度することにより良好の結果が得られる。ラドンおよびトロンの娘核種は容器の内面に収集され、同様に収集されて付着した他の浮遊粒子により粒子径が成長するとサンプル空気に放出される。
【0047】
イオントラップ35を通過したサンプル空気は、気密ボックス28に導入され、濾紙26にサンプル空気に含まれるダストとともに粒子状放射性物質6が捕集される。このとき、十分に粒子径が成長したラドンおよびトロンの娘核種は濾紙26の表面に捕集される。
【0048】
このような放射線モニタ1Eは、濾紙26の上流にイオントラップ35が設けられ、ラドンおよびトロンの娘核種がプラスに帯電している性質を利用し、粒子径の小さいラドンおよびトロンの娘核種を電気的に集塵して粒子径を増大させて濾紙26の表面で捕集できるようにしたので、サンプリング時間の経過および粒子状放射性物質6の量で表面捕集の割合が変化することがなくなり、ラドンおよびトロンの娘核種が常に濾紙26の表面で捕集されるようになり、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cより正確にバックグラウンド計数値の推定値が求められ、測定対象核種を高感度かつ高精度で測定できる。
【0049】
実施の形態7.
図19は、この発明の実施の形態7に係わる活性炭繊維からなる濾紙の表面付近の拡大断面図である。
実施の形態7に係わる放射線モニタは、実施の形態3に係わる放射線モニタ1Cと濾紙26Bが活性炭繊維からできていることだけが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分の説明は省略する。
実施の形態7に係わる濾紙26Bは、図19に示すように、活性炭繊維44を使用し、活性炭繊維44の表面45に1〜2nm程度の細孔46が形成されている。
そして、この細孔46にラドンおよびトロンの娘核種を捕集するようにしたので、活性炭繊維44がイオントラップ35と同等に粒子径増大手段となる。
このような放射線モニタは、イオントラップ35を設けることなく簡素な構成となるので、効率よく測定できる放射線モニタを低コストで提供できる。
【0050】
実施の形態8.
図20は、この発明の実施の形態8に係わる放射線検出器の構成図である。
実施の形態8に係わる放射線モニタは、実施の形態1に係わる放射線モニタ1と放射線検出器3Bの構成が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0051】
実施の形態8に係わる放射線検出器3Bには、図20に示すように、放射線の入射方向に向かって手前側から順に、遮光膜51、第1のシンチレータ52、第2のシンチレータ53、β線遮蔽体54、第3のシンチレータ55、光電子増倍管56が検出器ハウジング57内に収納されている。
遮光膜51は、放射線の入射側からの光の進入を遮断するとともに、第1のシンチレータ52、第2のシンチレータ53、第3のシンチレータ55で発光した蛍光の内で、光電子増倍管56に向かう方向と反対方向に進む蛍光を反射させる。
第1のシンチレータ52は、測定対象のα線を全て吸収することができ、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みである。
第2のシンチレータ53は、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みである。
β線遮蔽体54は、透明であり、第2のシンチレータ53を透過したβ線を完全に遮蔽する。
第3のシンチレータ55は、γ線を検出する。
このようにして、入射する放射線のうち、第1のシンチレータ52で主にα線を検出し、第2のシンチレータ53で主にβ線を検出し、第3のシンチレータ55でγ線を検出する。
光電子増倍管56は、各シンチレータ52、53、55が放射線を検出したときに発生する蛍光を電流パルスに変換し、前置増幅器58でその電流パルスを電圧パルスに変換して出力する。
検出器ハウジング57は、先端の遮光膜51とともに放射線検出器3B全体を遮光する。
【0052】
第1のシンチレータ52にユウロピウム活性フッ化カルシウム(以下、CaF2(Eu)と記す。)シンチレータを、第2のシンチレータ53にセリウム添加アルミニウム−イットリウムペロブスカイト結晶(以下、YAP(Ce)と記す。)シンチレータを、第3のシンチレータ55にビスマスギャーマネイト結晶(以下、BGOと記す。)シンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータを配置することにより、放射線検出器3Bから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からβ線、γ線、α線の順になり、パルス幅の違いにより測定部4で線種が弁別される。
第1のシンチレータ52にYAP(Ce)シンチレータを、第2のシンチレータ53にCaF2(Eu)シンチレータを配置した場合は、放射線検出器3Bから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からα線、γ線、β線の順になる。NaI(Tl)シンチレータは潮解性があるため密閉した容器に入れられている。また、光学面はガラスのため、β線遮蔽体54は省略できる。
【0053】
このような放射線モニタは、放射線入射面側から、第1のシンチレータ52、第2のシンチレ53、β線遮蔽体54、第3のシンチレータ55を備え、第1のシンチレータ52で主にα線を検出し、第2のシンチレータ53で主にβ線を検出し、第3のシンチレータ55でγ線を検出するように配置し、かつ、第1のシンチレータ52はα線スペクトル測定に必要な最小限の厚みとし、β線及びγ線に対する感度を最小とすることによりα線スペクトルに混入するβ線とγ線のカウントを最小にできるので、線種の識別が確実になり、測定対象核種を高感度に測定できる。
また、第2のシンチレータ53はβ線測定に必要な最小限の厚みとし、γ線に対する感度を極力小さくすることによりβ線スペクトルに混入するγ線のカウントを最小にできるため、線種の識別が確実になり、測定対象核種を高感度に測定できる。
【0054】
実施の形態9.
図21は、この発明の実施の形態9に係わる放射線検出器の断面図である。
実施の形態9に係わる放射線モニタは、実施の形態8に係わる放射線モニタと放射線検出器3Cの構成が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態8では、シンチレータを3種類使用した放射線検出器3Bについて述べたが、実施の形態9では、シンチレータを2種類使用した放射線検出器3Cについて図21を参照して説明する。
実施の形態9に係わる放射線検出器3Cには、図21に示すように、放射線の入射方向に向かって手前から順に、遮光膜51、第4のシンチレータ59、β線遮蔽体54、第3のシンチレータ55、光電子増倍管56が検出器ハウジング57内に収納されている。
第4のシンチレータ59は、測定対象のα線が全て吸収されるように、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みである。
また、第4のシンチレータ59にCaF2(Eu)シンチレータを、第3のシンチレータ55にYAP(Ce)シンチレータを配置することにより、放射線検出器3Cから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からγ線、α線=β線の順になる。
【0055】
また、第4のシンチレータ59にYAP(Ce)シンチレータを、第3のシンチレータ55にCaF2(Eu)シンチレータを配置することにより、放射線検出器3Cから出力されるパルス信号のパルス幅は、小さい方からα線=β線、γ線の順になる。
測定部4では、パルス幅の違いによりα線およびβ線とγ線が弁別され、αβ線スペクトル分析時に波高値の違いによりα線とβ線が弁別される。
【0056】
第4のシンチレータ59において、α線は全て吸収されるが、β線はノイズレベルに対しては十分な波高レベルを確保し、α線との識別性能を高めるために必要最小限の波高になるような厚みに制限する。また、測定対象のα線エネルギーは測定対象のβ線の3倍以上である。したがって、第4のシンチレータ59の種類として、単位エネルギー当たりの蛍光効率のβ線に対するα線の比が1/3以上のシンチレータを選定し、所望の厚みにすることにより、主要なα線とβ線は波高値で弁別して測定できる。
【0057】
このような放射線モニタは、第4のシンチレータ59でα線およびβ線を、第3のシンチレータ55でγ線を検出するようにし、第3のシンチレータ55に薄く加工し易いシンチレータを使用することにより、γ線スペクトルを求めない用途において放射線検出器3Cの構成が簡素で小型となるため、低コストの放射線モニタが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図2】入力されるパルス信号をパルス幅により弁別する様子を示す図である。
【図3】α線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図4】β線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図5】γ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図6】この発明の実施の形態2に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図7】入力されるパルス信号のパルス幅により弁別する様子を示す図である。
【図8】αβ線として弁別された放射線に係わるパルス信号の計数値がエネルギーを横軸にして表されたスペクトルである。
【図9】この発明の実施の形態3に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図10】ラドンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。
【図11】トロンの崩壊系列と放射するα線とβ線のエネルギーを示している。
【図12】ラドンおよびトロンの娘核種の放射するγ線のエネルギーとそのエネルギーの放出割合を示す図である。
【図13】ラドンおよびトロンの娘核種のα線スペクトルである。
【図14】バックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態4に係わる放射線モニタでのバックグラウンド計数値の推定値の補正手順を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態5に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図17】この発明の実施の形態6に係わる放射線モニタのブロック図である。
【図18】実施の形態6に係わるイオントラップの断面図である。
【図19】この発明の実施の形態7に係わる活性炭繊維からなる濾紙の表面付近の拡大断面図である。
【図20】この発明の実施の形態8に係わる放射線検出器の構成図である。
【図21】この発明の実施の形態9に係わる放射線検出器の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 放射線モニタ、2 測定対象物、3 放射線検出器、4 測定部、6 粒子状放射性物質、11 主増幅器、12 A/D変換器、13 パルス幅弁別器、14 演算器、15 メモリ、16 表示器、21 αエリヤ、22 βエリヤ、23 γエリヤ、24 αβエリヤ、25 サンプリング部、26 濾紙、27 サクションヘッド、28 気密ボックス、29 送気管、30 流量計、31 ポンプ、32 活性炭カートリッジ、33 フィルタケース、35 イオントラップ、37 陰極、38 陽極、39 陽極絶縁物、40 陰極絶縁物、41 高圧電源、44 活性炭繊維、45 表面、46 細孔、51 遮光膜、52、53、55、59 シンチレータ、54 β線遮蔽体、56 光電子増倍管、57 検出器ハウジング、58 前置増幅器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から放射される放射線を検出してパルス信号を発する放射線検出器、上記パルス信号の波高に係わるスペクトルに基づき測定対象核種の放射能を測定する測定部を備える放射線モニタにおいて、
上記放射線検出器は、上記放射線の線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、
上記測定部は、上記パルス信号のパルス幅に基づき上記パルス信号に係わる放射線の線種を弁別し、上記パルス信号の波高を測定し、上記パルス信号を該波高に対応するチャンネルに割り当てて計数して上記スペクトルとして上記線種に対応したメモリに格納し、所定の時限に亘る上記パルス信号のスペクトルを分析することにより測定対象核種の放射能を測定することを特徴とする放射線モニタ。
【請求項2】
測定点の空気をサンプリングしてサンプル空気に含まれる粒子状放射性物質を濾紙に捕集するサンプリング部を備え、
上記測定部は、α線スペクトルからラドンおよびトロンの娘核種のα線積算計数値を求め、該α線積算計数値に基づき測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種によるバックグラウンド計数値を推定し、ラドンの娘核種ポロニウム214のスペクトルピークの低エネルギー側に立ち下がるテールの形状から上記濾紙におけるラドンおよびトロンの娘核種の捕集深さにともなう上記バックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することを特徴とする請求項1に記載する放射線モニタ。
【請求項3】
上記サンプリング部は、放射性ヨウ素を捕集する活性炭捕集材を備え、
上記測定部は、上記α線スペクトルからラドンおよびトロンの娘核種のα線積算計数値を求め、該α線積算計数値に基づきγ線スペクトルの放射性ヨウ素測定領域に混入するラドンおよびトロンそれぞれの娘核種によるバックグラウンド計数値を推定し、ラドンの娘核種ポロニウム214のスペクトルピークの低エネルギー側に立ち下がるテールの形状から上記濾紙におけるラドンおよびトロンの娘核種の捕集深さに係わる上記バックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することを特徴とする請求項2に記載する放射線モニタ。
【請求項4】
上記測定部は、ラドンおよびトロンの娘核種のα線積算計数値とγ線積算計数値の比に基づいて、上記濾紙におけるラドンおよびトロンの娘核種の捕集深さに係わるバックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することを特徴とする請求項2または3に記載する放射線モニタ。
【請求項5】
上記濾紙の上流側に、ラドンおよびトロンのプラスに帯電した娘核種を電気的に集塵して粒子径を増大させる粒子径増大手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項6】
上記濾紙は、活性炭繊維を含むことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項7】
上記放射線検出器は、放射線が入射すると蛍光を発し、蛍光減衰時間が異なる複数種のシンチレータを備え、
放射線入射面側から順に、入射されるα線が全て吸収され、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みの第1のシンチレータ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みの第2のシンチレータ、透過したβ線を完全に遮蔽する透明なβ線遮蔽体、第3のシンチレータ、光電子増倍管が配列され、
第1のシンチレータで主にα線を検出し、第2のシンチレータで主にβ線を検出し、第3のシンチレータでγ線を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項8】
第1のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータ、第2のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータおよび第3のシンチレータにBGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータを配置、または、第1のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータ、第2のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータおよび第3のシンチレータにBGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータを配置したことを特徴とする請求項7に記載する放射線モニタ。
【請求項9】
上記放射線検出器は、放射線が入射すると蛍光を発し、蛍光減衰時間が異なる複数種のシンチレータを備え、
放射線入射面側から順に、入射されるα線が全て吸収され、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みの第4のシンチレータ、透過したβ線を完全に遮蔽する透明なβ線遮蔽体、第3のシンチレータ、光電子増倍管が配列され、
第4のシンチレータで主にα線とβ線を検出し、第3のシンチレータでγ線を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項10】
第4のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータおよび第3のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータ、または、第4のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータおよび第3のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータを配置したことを特徴とする請求項9に記載する放射線モニタ。
【請求項1】
測定対象から放射される放射線を検出してパルス信号を発する放射線検出器、上記パルス信号の波高に係わるスペクトルに基づき測定対象核種の放射能を測定する測定部を備える放射線モニタにおいて、
上記放射線検出器は、上記放射線の線種によりパルス幅が異なるパルス信号を出力し、
上記測定部は、上記パルス信号のパルス幅に基づき上記パルス信号に係わる放射線の線種を弁別し、上記パルス信号の波高を測定し、上記パルス信号を該波高に対応するチャンネルに割り当てて計数して上記スペクトルとして上記線種に対応したメモリに格納し、所定の時限に亘る上記パルス信号のスペクトルを分析することにより測定対象核種の放射能を測定することを特徴とする放射線モニタ。
【請求項2】
測定点の空気をサンプリングしてサンプル空気に含まれる粒子状放射性物質を濾紙に捕集するサンプリング部を備え、
上記測定部は、α線スペクトルからラドンおよびトロンの娘核種のα線積算計数値を求め、該α線積算計数値に基づき測定領域に混入するラドンおよびトロンの娘核種によるバックグラウンド計数値を推定し、ラドンの娘核種ポロニウム214のスペクトルピークの低エネルギー側に立ち下がるテールの形状から上記濾紙におけるラドンおよびトロンの娘核種の捕集深さにともなう上記バックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することを特徴とする請求項1に記載する放射線モニタ。
【請求項3】
上記サンプリング部は、放射性ヨウ素を捕集する活性炭捕集材を備え、
上記測定部は、上記α線スペクトルからラドンおよびトロンの娘核種のα線積算計数値を求め、該α線積算計数値に基づきγ線スペクトルの放射性ヨウ素測定領域に混入するラドンおよびトロンそれぞれの娘核種によるバックグラウンド計数値を推定し、ラドンの娘核種ポロニウム214のスペクトルピークの低エネルギー側に立ち下がるテールの形状から上記濾紙におけるラドンおよびトロンの娘核種の捕集深さに係わる上記バックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することを特徴とする請求項2に記載する放射線モニタ。
【請求項4】
上記測定部は、ラドンおよびトロンの娘核種のα線積算計数値とγ線積算計数値の比に基づいて、上記濾紙におけるラドンおよびトロンの娘核種の捕集深さに係わるバックグラウンド計数値の推定値の誤差を補償することを特徴とする請求項2または3に記載する放射線モニタ。
【請求項5】
上記濾紙の上流側に、ラドンおよびトロンのプラスに帯電した娘核種を電気的に集塵して粒子径を増大させる粒子径増大手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項6】
上記濾紙は、活性炭繊維を含むことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項7】
上記放射線検出器は、放射線が入射すると蛍光を発し、蛍光減衰時間が異なる複数種のシンチレータを備え、
放射線入射面側から順に、入射されるα線が全て吸収され、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みの第1のシンチレータ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みの第2のシンチレータ、透過したβ線を完全に遮蔽する透明なβ線遮蔽体、第3のシンチレータ、光電子増倍管が配列され、
第1のシンチレータで主にα線を検出し、第2のシンチレータで主にβ線を検出し、第3のシンチレータでγ線を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項8】
第1のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータ、第2のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータおよび第3のシンチレータにBGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータを配置、または、第1のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータ、第2のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータおよび第3のシンチレータにBGOシンチレータまたはNaI(Tl)シンチレータを配置したことを特徴とする請求項7に記載する放射線モニタ。
【請求項9】
上記放射線検出器は、放射線が入射すると蛍光を発し、蛍光減衰時間が異なる複数種のシンチレータを備え、
放射線入射面側から順に、入射されるα線が全て吸収され、かつ、測定下限のβ線エネルギーに対応する飛程以上で、かつ、測定上限のβ線エネルギーに対応する飛程以下の厚みの第4のシンチレータ、透過したβ線を完全に遮蔽する透明なβ線遮蔽体、第3のシンチレータ、光電子増倍管が配列され、
第4のシンチレータで主にα線とβ線を検出し、第3のシンチレータでγ線を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載する放射線モニタ。
【請求項10】
第4のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータおよび第3のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータ、または、第4のシンチレータにYAP(Ce)シンチレータおよび第3のシンチレータにCaF2(Eu)シンチレータを配置したことを特徴とする請求項9に記載する放射線モニタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−329784(P2006−329784A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152867(P2005−152867)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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