説明

放射線撮影システム及び放射線撮影方法

【課題】放射線撮影システム及び放射線撮影方法において、位相イメージングの精度向上を図る。
【解決手段】放射線撮影システムは、X線源11と、第1の透過型格子31と、第2の透過型格子32と、第2の透過型格子32の走査機構と、X線像を検出するフラットパネル検出器30と、位相コントラスト画像を生成する演算処理部と、透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントム60とを備え、演算処理部は、ファントム60が放射線に与える屈折角φとファントム60を撮影した際に演算で求められるフラットパネル検出器30の各画素40に入射する放射線の屈折角φとに基づいて、画素40間で感度を一様にする補正係数をこれらの画素40毎に求め、被写体を撮影して演算される各画素40に入射する放射線の屈折角に対して、その画素40の補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の放射線を用いて被写体の撮影を行う放射線撮影システム及び放射線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線は、物質を構成する元素の原子番号と、物質の密度及び厚さとに依存して減衰するといった特性を有することから、被写体の内部を透視するためのプローブとして用いられている。X線を用いた撮影は、医療診断や非破壊検査等の分野において広く普及している。
【0003】
一般的なX線撮影システムでは、X線を放射するX線源とX線を検出するX線画像検出器との間に被写体を配置して、被写体の透過像を撮影する。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射された各X線は、X線画像検出器までの経路上に存在する物質の特性(原子番号、密度、厚さ)の差異に応じた量の減衰(吸収)を受けた後、X線画像検出器の各画素に入射する。この結果、被写体のX線吸収像がX線画像検出器により検出され画像化される。X線画像検出器としては、X線増感紙とフイルムとの組み合わせや輝尽性蛍光体のほか、半導体回路を用いたフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)が広く用いられている。
【0004】
しかし、X線吸収能は、原子番号が小さい元素からなる物質ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線吸収像としての十分な画像の濃淡(コントラスト)が得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線の吸収量の差が少ないため、濃淡差が得られにくい。
【0005】
このような問題を背景に、近年、被写体によるX線の強度変化に代えて、被写体によるX線の位相変化(角度変化)に基づいた画像(以下、位相コントラスト画像と称する)を得るX線位相イメージングの研究が盛んに行われている。一般に、X線が物体に入射したとき、X線の強度よりも位相のほうが高い相互作用を示すことが知られている。このため、位相差を利用したX線位相イメージングでは、X線吸収能が低い弱吸収物体であっても高コントラストの画像を得ることができる。このようなX線位相イメージングの一種として、近年、2枚の透過回折格子(位相型格子及び吸収型格子)とX線画像検出器とからなるX線タルボ干渉計を用いたX線撮影システムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
X線タルボ干渉計は、被写体の背後に第1の回折格子(位相型格子あるいは吸収型格子)を配置し、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長で決まる特定距離(タルボ干渉距離)だけ下流に第2の回折格子(吸収型格子)を配置し、その背後にX線画像検出器を配置することにより構成される。上記タルボ干渉距離とは、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ干渉効果によって自己像を形成する距離であり、この自己像は、X線源と第1の回折格子との間に配置された被写体とX線との相互作用(位相変化)により変調を受ける。
【0007】
X線タルボ干渉計では、第1の回折格子の自己像と第2の回折格子との重ね合わせにより生じるモアレ縞を検出し、被写体によるモアレ縞の変化を解析することによって被写体の位相情報を取得する。モアレ縞の解析方法としては、たとえば、縞走査法が知られている。この縞走査法によると、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面にほぼ平行で、かつ第1の回折格子の格子方向(条帯方向)にほぼ垂直な方向に、格子ピッチを等分割した走査ピッチで並進移動させながら複数回の撮影を行い、X線画像検出器で得られる各画素の信号値の変化から、被写体で屈折したX線の角度分布(位相シフトの微分像)を取得し、この角度分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を得ることができる。
【0008】
なお、タルボ干渉計を用いた画像撮影による位相イメージングは、X線と同様に干渉性の高い可視光(例えば、He−Neレーザー等)を対象に、X線位相イメージングより以前に考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第04/058070号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】へクター・カナバル(Hector Canabal)、他2名、「インプルーブド・フェーズ−シフティング・メソッド・フォー・オートマティック・プロセッシング・オブ・モアレ・ディフレクトグラムス(Improved phase-shifting method for automatic processing of moire deflectograms)」、アプライド・オプティクス(APPLIED OPTICS)、1998年9月、Vol.37, No.26, p.6227-6233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の位相イメージングにおいて、第2の回折格子を所定の走査ピッチで並進移動させて得られるX線画像検出器の各画素の信号値は、特許文献1によれば、次式(1)で与えられる。
【0012】
【数1】

【0013】
ここで、A(k=0,1,…)は回折格子の形状により決まる定数、dは第2の回折格子の格子パターンの周期、δ(x,y)は回折格子の歪や製作誤差や配置誤差によって発生するオフセット値、Zは第1の回折格子と第2の回折格子との距離、φ(x,y)は被写体によるX線の屈折角、ξは第2の回折格子の並進移動量である。
【0014】
第1の回折格子の自己像は、被写体でのX線の屈折により、その屈折角φに応じた量だけ変位することになる。ここで、屈折角φ(x,y)は、X線波長λと被写体の位相シフト分布Φ(x、y)を用いて、次式(2)で表される。
【0015】
【数2】

【0016】
このように、被写体でのX線の屈折による第1の回折格子の自己像の変位量は、被写体の位相シフト分布Φ(x、y)に関連している。この変位量をΔとして、変位量Δは、第2の回折格子を走査して得られる、画像検出器の各画素の強度変調信号の位相ズレ量ψ(被写体がある場合とない場合とでの各画素の強度変調信号の位相のズレ量)に、次式(3)のように関連している。
【0017】
【数3】

【0018】
そして、被写体が球状の場合に、そのエッジ部分でのφ(x,y)は、次式(4)で与えられる。
【0019】
【数4】

【0020】
ここで、Dは第2の回折格子の走査方向に関する画像検出器の各画素の幅、Δnは被写体とその周囲の媒質との屈折率差である。
【0021】
式(1)〜式(4)より、画像検出器の各画素の強度変調信号から取得される位相ズレ量ψから、屈折角φを求めようとすると、第2の回折格子の格子パターンの周期dや、第1の回折格子と第2の回折格子との距離Zや、X線画像検出器の各画素の幅Dの影響を受ける。
【0022】
第2の回折格子の格子パターンの周期dについて、第2の回折格子の歪や製作誤差によって、その格子パターンの周期dにも誤差が生じ、周期dの誤差によって屈折角φは変化する。
【0023】
また、第1の回折格子と第2の回折格子との距離Zについて、X線源から放射されるX線がコーンビームであって、第1及び第2の回折格子をいずれも平板状に構成した場合に、X線に沿った第1及び第2の回折格子の距離が各部で異なる。図21に示すように、例えば、第1及び第2の回折格子G1,G2の中央部をこれらの回折格子に略垂直にX線が透過する場合に、そのX線に沿った第1及び第2の回折格子の距離、即ちX線の経路長Zは最も短くなる。一方、第1及び第2の回折格子の周辺部では、X線は傾斜して第1及び第2の回折格子を透過し、そのX線の経路長Zは周辺に行くほどに長くなり、経路長Zの変化によって屈折角φも変化する。
【0024】
また、X線画像検出器の各画素の幅Dについて、X線源から放射されるX線がコーンビームである場合に、X線画像検出器は典型的には平面であるため、X線画像検出器の各画素におけるX線入射角は、X線画像検出器の各部で異なる。図22に示すように、例えば、X線画像検出器30の中央部の画素40においてX線が略垂直に入射する(X線入射角が深い)場合に、周辺部の画素40では、周辺に行くほどにX線が傾いて入射する(X線入射角が浅くなる)。よって、各画素40の実効幅、即ち、各画素を、そこに入射するX線の中心線に直交する平面に垂直投影した場合の投影幅が、X線画像検出器の各部で異なる。各画素の実効幅が異なると、入射X線の位相シフトが同じであっても各画素の信号値が異なってしまう。
【0025】
特許文献1では、上記の誤差要因は何ら考慮されておらず、屈折角の分布に基づいて生成される位相コントラスト画像において、本来あるべきコントラストが形成されず、あるいは無用なコントラストが形成されることとなる。
【0026】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、被写体の位相イメージングを行う放射線撮影システム及び放射線撮影方法において、位相イメージングの精度向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(1) 被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影システムであって、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算し、この屈折角の分布に基づいて位相コントラスト画像を生成する演算部と、透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて求められる、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を記憶した記憶部と、を備え、前記演算部は、前記被写体を撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、前記記憶部に記憶されたその画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影システム。
(2)被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法であって、透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を求め、被写体を撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、その画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、位相イメージングにおいて、撮影系に含まれる複数の誤差要因に起因した複数のイメージング誤差を補正することができる。更に、各誤差要因に起因したイメージング誤差を個別に補正するのではなく、複数の誤差要因に起因した複数のイメージング誤差を複合的に補正することができるので、容易かつ正確な補正が可能となる。それにより、位相イメージングの精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線撮影システムの一例の構成を示す模式図である。
【図2】図1の放射線撮影システムの制御構成を示すブロック図である。
【図3】放射線画像検出器の構成を示す模式図である。
【図4】第1及び第2の透過型格子の構成を示す斜視図である。
【図5】第1及び第2の透過型格子の構成を示す側面図である。
【図6】第1及び第2の透過型格子の重ね合わせによるモアレ縞の周期を変更するための機構を示す模式図である。
【図7】被写体による放射線の屈折を説明するための模式図である。
【図8】縞走査法を説明するための模式図である。
【図9】縞走査に伴う放射線画像検出器の画素の信号を示すグラフである。
【図10】図1の放射線撮影システムの感度補正に用いるファントムの一例を示す模式図である。
【図11】図10のファントムの変形例を示す模式図である。
【図12】図11のファントムを用いた補正方法を示す模式図である。
【図13】図1の放射線撮影システムの変形例を示す模式図である。
【図14】図1の放射線撮影システムの変形例を示す模式図である。
【図15】本発明の実施形態を説明するための、放射線撮影システムの一例の構成を示す模式図である。
【図16】図15の放射線撮影システムの感度補正に用いるファントムの一例を示す模式図である。
【図17】図16のファントムの変形例を示す模式図である。
【図18】図17のファントムを用いた補正方法を示す模式図である。
【図19】本発明の実施形態を説明するための、放射線撮影システムの一例の構成を示す模式図である。
【図20】本発明の実施形態を説明するための、放射線撮影システムの一例の構成を示す模式図である。
【図21】位相イメージングにおける誤差要因の一例を示す模式図である。
【図22】位相イメージングにおける誤差要因の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び図2に示すX線撮影システム10は、被写体(患者)Hを立位状態で撮影するX線診断装置であって、被写体HにX線を放射するX線源11と、X線源11に対向配置され、X線源11から被写体Hを透過したX線を検出して画像データを生成する撮影部12と、操作者の操作に基づいてX線源11の曝射動作や撮影部12の撮影動作を制御するとともに、撮影部12により取得された画像データを演算処理して位相コントラスト画像を生成するコンソール13とに大別される。
【0031】
X線源11は、天井から吊り下げられたX線源保持装置14により上下方向(x方向)に移動自在に保持されている。撮影部12は、床上に設置された立位スタンド15により上下方向に移動自在に保持されている。
【0032】
X線源11は、X線源制御部17の制御に基づき、高電圧発生器16から印加される高電圧に応じてX線を発生するX線管18と、X線管18から発せられたX線のうち、被写体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する可動式のコリメータ19aを備えたコリメータユニット19とから構成されている。X線管18は、陽極回転型であり、電子放出源(陰極)としてのフィラメント(図示せず)から電子線を放出して、所定の速度で回転する回転陽極18aに衝突させることによりX線を発生する。この回転陽極18aの電子線の衝突部分がX線焦点18bとなる。
【0033】
X線源保持装置14は、天井に設置された天井レール(図示せず)により水平方向(z方向)に移動自在に構成された台車部14aと、上下方向に連結された複数の支柱部14bとからなる。台車部14aには、支柱部14bを伸縮させて、X線源11の上下方向に関する位置を変更するモータ(図示せず)が設けられている。
【0034】
立位スタンド15は、床に設置された本体15aに、撮影部12を保持する保持部15bが上下方向に移動自在に取り付けられている。保持部15bは、上下方向に離間して配置された2つのプーリ15cの間に掛架された無端ベルト15dに接続され、プーリ15cを回転させるモータ(図示せず)により駆動される。このモータの駆動は、操作者の設定操作に基づき、後述するコンソール13の制御装置20により制御される。
【0035】
また、立位スタンド15には、プーリ15c又は無端ベルト15dの移動量を計測することにより、撮影部12の上下方向に関する位置を検出するポテンショメータ等の位置センサ(図示せず)が設けられている。この位置センサの検出値は、ケーブル等によりX線源保持装置14に供給される。X線源保持装置14は、供給された検出値に基づいて支柱部14bを伸縮させ、撮影部12の上下動に追従するようにX線源11を移動させる。
【0036】
コンソール13には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置20が設けられている。制御装置20には、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置21と、撮影部12により取得された画像データを演算処理してX線画像を生成する演算処理部22と、X線画像を記憶する記憶部23と、X線画像等を表示するモニタ24と、X線撮影システム10の各部と接続されるインターフェース(I/F)25とがバス26を介して接続されている。制御装置20のROMには、バス26を介して接続される各部を制御するための制御プログラム及び各種処理プログラムが記憶されており、CPUは、この制御プログラム及び各種処理プログラムの協働により各部の動作を統括的に制御し、X線撮影を行う。
【0037】
入力装置21としては、例えば、スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード等を用いることが可能であり、入力装置21の操作により、X線管電圧やX線照射時間等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。モニタ24は、液晶ディスプレイ等からなり、制御装置20の制御により、X線撮影条件等の文字やX線画像を表示する。
【0038】
撮影部12には、半導体回路からなるフラットパネル検出器(FPD)30、被写体HによるX線の位相変化(角度変化)を検出し位相イメージングを行うための第1の透過型格子31及び第2の透過型格子32が設けられている。FPD30は、検出面がX線源11から照射されるX線の光軸Aに直交するように配置されている。詳しくは後述するが、第1及び第2の透過型格子31,32は、FPD30とX線源11との間に配置されている。また、撮影部12には、第2の透過型格子32を上下方向に並進移動させることにより、第1の透過型格子31に対する第2の透過型格子32の相対位置関係を変化させる走査機構33が設けられている。この走査機構33は、例えば、圧電素子等のアクチュエータにより構成される。
【0039】
図3に示すように、FPD30は、X線を電荷に変換して蓄積する複数の画素40が、アクティブマトリクス基板上にxy方向に2次元配列されてなる受像部41と、受像部41からの電荷の読み出しタイミングを制御する走査回路42と、各画素40に蓄積された電荷を読み出し、電荷を画像データに変換して記憶する読み出し回路43と、画像データをコンソール13のI/F25を介して演算処理部22に送信するデータ送信回路44とから構成されている。なお、走査回路42と各画素40とは、行毎に走査線45によって接続されており、読み出し回路43と各画素40とは、列毎に信号線46によって接続されている。
【0040】
各画素40は、アモルファスセレン等の変換層(図示せず)でX線を電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタ(図示せず)に蓄積する直接変換型の素子として構成することができる。各画素40には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線45、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線46に接続される。TFTスイッチが走査回路42からの駆動パルスによってON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線46に読み出される。
【0041】
なお、各画素40は、酸化ガドリニウム(Gd)やヨウ化セシウム(CsI)等からなるシンチレータ(図示せず)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオード(図示せず)で電荷に変換して蓄積する間接変換型のX線検出素子として構成することも可能である。また、X線画像検出器としては、TFTパネルをベースとしたFPDに限られず、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子をベースとした各種のX線画像検出器を用いることも可能である。
【0042】
読み出し回路43は、積分アンプ回路、A/D変換器、補正回路、及び画像メモリ(いずれも図示せず)により構成されている。積分アンプ回路は、各画素40から信号線46を介して出力された電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換して、A/D変換器に入力する。A/D変換器は、入力された画像信号をデジタルの画像データに変換して補正回路に入力する。補正回路は、画像データに対して、オフセット補正、ゲイン補正、及びリニアリティ補正を行い、補正後の画像データを画像メモリに記憶させる。なお、補正回路による補正処理として、X線の露光量や露光分布(いわゆるシェーディング)の補正や、FPD30の制御条件(駆動周波数や読み出し期間)に依存するパターンノイズ(例えば、TFTスイッチのリーク信号)の補正等を含めてもよい。
【0043】
図4及び図5に示すように、第1の透過型格子31は、基板31aと、この基板31aに配置された複数のX線遮蔽部31bとから構成されている。同様に、第2の透過型格子32は、基板32aと、この基板32aに配置された複数のX線遮蔽部32bとから構成されている。基板31a,31bは、いずれもX線を透過させるガラス等のX線透過性部材により形成されている。
【0044】
X線遮蔽部31b,32bは、いずれもX線源11から照射されるX線の光軸Aに直交する面内の一方向(図示の例では、x方向及びz方向に直交するy方向)に延伸した線状の部材である。各X線遮蔽部31b,32bの材料としては、X線吸収性に優れるものが好ましく、例えば、金、白金等の金属であることが好ましい。これらのX線遮蔽部31b,32bは、金属メッキ法や蒸着法によって形成することが可能である。
【0045】
X線遮蔽部31bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(図示の例では、x方向)に一定の周期pで、互いに所定の間隔dを空けて配列されている。同様に、X線遮蔽部32bは、X線の光軸Aに直交する面内において、上記一方向と直交する方向(本実施形態では、x方向)に一定の周期pで、互いに所定の間隔dを空けて配列されている。このような第1及び第2の透過型格子31,32は、入射X線に位相差を与えるものでなく、強度差を与えるものであるため、透過型格子のなかでも特に吸収型格子ないし振幅型格子と称される。なお、スリット部(上記間隔d,dの領域)は空隙でなくてもよく、高分子や軽金属等のX線低吸収材で該空隙を充填してもよい。
【0046】
第1及び第2の透過型格子31,32は、タルボ干渉効果の有無に係らず、スリット部を通過したX線を幾何学的に投影するように構成されている。具体的には、間隔d,dを、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とすることで、照射X線に含まれる大部分のX線をスリット部で回折させずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。例えば、前述の回転陽極18aとしてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は、約0.4Åである。この場合には、間隔d,dを、1〜10μm程度とすれば、スリット部で大部分のX線が回折されずに幾何学的に投影される。
【0047】
X線源11から放射されるX線は、平行ビームではなく、X線焦点18bを発光点としたコーンビームであるため、第1の透過型格子31を通過して射影される投影像(以下、この投影像をG1像と称する)は、X線焦点18bからの距離に比例して拡大される。第2の透過型格子32の格子ピッチpは、そのスリット部が、第2の透過型格子32の位置におけるG1像の明部の周期パターンとほぼ一致するように決定されている。すなわち、X線焦点18bから第1の透過型格子31までの距離をL、第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離をLとした場合に、格子ピッチpは、次式(5)の関係を満たすように決定される。
【0048】
【数5】

【0049】
第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離Lは、タルボ干渉計では、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とで決まるタルボ干渉距離に制約されるが、本X線撮影システム10の撮影部12では、第1の透過型格子31が入射X線を回折させずに投影させる構成であって、第1の透過型格子31のG1像が、第1の透過型格子31の後方のすべての位置で相似的に得られるため、該距離Lを、タルボ干渉距離と無関係に設定することができる。
【0050】
上記のように撮影部12は、タルボ干渉計を構成するものではないが、第1の透過型格子31でX線を回折したと仮定した場合のタルボ干渉距離Zは、第1の透過型格子31の格子ピッチp、第2の透過型格子32の格子ピッチpX線波長(ピーク波長)λ、及び正の整数mを用いて、次式(6)で表される。
【0051】
【数6】

【0052】
式(6)は、X線源11から照射されるX線がコーンビームである場合のタルボ干渉距離を表す式であり、「Atsushi Momose, et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.10, 2008年10月, 8077頁」により知られている。
【0053】
本X線撮影システム10では、撮影部12の薄型化を目的とし、上記距離Lを、m=1の場合の最小のタルボ干渉距離Zより短い値に設定する。すなわち、上記距離Lは、次式(7)を満たす範囲の値に設定される。
【0054】
【数7】

【0055】
なお、X線源11から照射されるX線が実質的に平行光とみなせる場合のタルボ干渉距離Zは次式(8)となり、上記距離Lを、次式(9)を満たす範囲の値に設定する。
【0056】
【数8】

【0057】
【数9】

【0058】
X線遮蔽部31b,32bは、コントラストの高い周期パターン像を生成するためには、X線を完全に遮蔽(吸収)することが好ましいが、上記したX線吸収性に優れる材料(金、白金等)を用いたとしても、吸収されずに透過するX線が少なからず存在する。このため、X線の遮蔽性を高めるためには、X線遮蔽部31b,32bのそれぞれの厚みh1,h2を、可能な限り厚くすることが好ましい。例えば、X線管18の管電圧が50kVの場合に、照射X線の90%以上を遮蔽することが好ましく、この場合には、厚みh1,h2は、金(Au)換算で30μm以上であることが好ましい。
【0059】
一方、X線遮蔽部31b,32bの厚みh1,h2を厚くし過ぎると、第1及び第2の透過型格子31,32に斜めに入射するX線がスリット部を通過しにくくなり、いわゆるケラレが生じて、X線遮蔽部31b,32bの延伸方向(条帯方向)に直交する方向(x方向)の有効視野が狭くなるといった問題がある。このため、視野確保の観点から、厚みh,hの上限を規定する。FPD30の検出面におけるx方向の有効視野の長さVを確保するには、X線焦点18bからFPD30の検出面までの距離をLとすると、厚みh,hは、図5に示す幾何学的関係から、次式(10)及び(11)を満たすように設定する必要がある。
【0060】
【数10】

【0061】
【数11】

【0062】
例えば、d=2.5μm、d=3.0μmであり、通常の病院での検査を想定して、L=2mとした場合には、x方向の有効視野の長さVとして10cmの長さを確保するには、厚みhは100μm以下、厚みhは120μm以下とすればよい。
【0063】
以上のように構成された第1及び第2の透過型格子31,32では、第1の透過型格子31のG1像と第2の透過型格子32との重ね合わせにより、強度変調された像が形成され、FPD30によって撮像される。第2の透過型格子32の位置におけるG1像のパターン周期p’と、第2の透過型格子32の実質的な格子ピッチp’(製造後の実質的なピッチ)とは、製造誤差や配置誤差により若干の差異が生じる。このうち、配置誤差とは、第1及び第2の透過型格子31,32が、相対的に傾斜や回転、両者の間隔が変化することによりx方向への実質的なピッチが変化することを意味している。
【0064】
G1像のパターン周期p’と格子ピッチp’との微小な差異により、画像コントラストはモアレ縞となる。このモアレ縞の周期Tは、次式(12)で表される。
【0065】
【数12】

【0066】
このモアレ縞をFPD30で検出するには、画素40のx方向に関する配列ピッチPは、少なくとも次式(13)を満たす必要があり、更には、次式(14)を満たすことが好ましい(ここで、nは正の整数である)。
【0067】
【数13】

【0068】
【数14】

【0069】
式(13)は、配列ピッチPがモアレ周期Tの整数倍でないことを意味しており、n≧2の場合であっても原理的にモアレ縞を検出することが可能である。式(14)は、配列ピッチPをモアレ周期Tより小さくすることを意味している。
【0070】
FPD30の画素40の配列ピッチPは、設計的に定められた値(一般的に100μm程度)であり変更することが困難であるため、配列ピッチPとモアレ周期Tとの大小関係を調整するには、第1及び第2の透過型格子31,32の位置調整を行い、G1像のパターン周期p’と格子ピッチp’との少なくともいずれか一方を変更することによりモアレ周期Tを変更することが好ましい。
【0071】
図6に、モアレ周期Tを変更する方法を示す。モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aを中心として相対的に回転させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aを中心として相対的に回転させる相対回転機構50を設ける。この相対回転機構50により、第2の透過型格子32を角度θだけ回転させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p’」→「p’/cosθ」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する(FIG.6A)。
【0072】
別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aに直交し、かつy方向に沿う方向の軸を中心として相対的に傾斜させる相対傾斜機構51を設ける。この相対傾斜機構51により、第2の透過型格子32を角度αだけ傾斜させると、x方向に関する実質的な格子ピッチは、「p’」→「p’×cosα」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する(FIG.6B)。
【0073】
更に別の例として、モアレ周期Tの変更は、第1及び第2の透過型格子31,32のいずれか一方を光軸Aの方向に沿って相対的に移動させることにより行うことができる。例えば、第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との間の距離Lを変更するように、第1の透過型格子31に対して、第2の透過型格子32を、光軸Aの方向に沿って相対的に移動させる相対移動機構52を設ける。この相対移動機構52により、第2の透過型格子32を光軸Aに移動量δだけ移動させると、第2の透過型格子32の位置に投影される第1の透過型格子31のG1像のパターン周期は、「p’」→「p’×(L+L+δ)/(L+L)」と変化し、この結果、モアレ周期Tが変化する(FIG.6C)。
【0074】
本X線撮影システム10において、撮影部12は、上述のようにタルボ干渉計ではなく、距離Lを自由に設定することができるため、相対移動機構52のように距離Lの変更によりモアレ周期Tを変更する機構を、好適に採用することができる。モアレ周期Tを変更するための第1及び第2の透過型格子31,32の上記変更機構(相対回転機構50、相対傾斜機構51、及び相対移動機構52)は、圧電素子等のアクチュエータにより構成することが可能である。
【0075】
X線源11と第1の透過型格子31との間に被写体Hを配置した場合には、FPD30により検出されるモアレ縞は、被写体Hにより変調を受ける。この変調量は、被写体Hによる屈折効果によって偏向したX線の角度に比例する。したがって、FPD30で検出されたモアレ縞を解析することによって、被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。
【0076】
次に、モアレ縞の解析方法について説明する。
【0077】
図7は、被写体Hのx方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つのX線を例示している。符号55は、被写体Hが存在しない場合に直進するX線の経路を示しており、この経路55を進むX線は、第1及び第2の透過型格子31,32を通過してFPD30に入射する。符号56は、被写体Hが存在する場合に、被写体Hにより屈折されて偏向したX線の経路を示している。この経路56を進むX線は、第1の透過型格子31を通過した後、第2の透過型格子32より遮蔽される。
【0078】
被写体Hの位相シフト分布Φ(x)は、被写体Hの屈折率分布をn(x,z)、zをX線の進む方向として、次式(15)で表される。
【0079】
【数15】

【0080】
第1の透過型格子31から第2の透過型格子32の位置に投射されたG1像は、被写体HでのX線の屈折により、その屈折角φに応じた量だけx方向に変位することになる。この変位量Δxは、X線の屈折角φが微小であることに基づいて、近似的に次式(16)で表される。
【0081】
【数16】

【0082】
ここで、屈折角φは、X線波長λと被写体Hの位相シフト分布Φ(x)を用いて、次式(17)で表される。
【0083】
【数17】

【0084】
このように、被写体HでのX線の屈折によるG1像の変位量Δxは、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)に関連している。そして、この変位量Δxは、FPD30の各画素40から出力される強度変調信号の位相ズレ量ψ(被写体Hがある場合とない場合とでの各画素40の強度変調信号の位相のズレ量)に、次式(18)のように関連している。
【0085】
【数18】

【0086】
したがって、各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψを求めることにより、式(18)から屈折角φが求まり、式(17)を用いて位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まるから、これをxについて積分することにより、被写体Hの位相シフト分布Φ(x)、すなわち被写体Hの位相コントラスト画像を生成することができる。本X線撮影システム10では、上記位相ズレ量ψを、下記に示す縞走査法を用いて算出する。
【0087】
縞走査法では、第1及び第2の透過型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向にステップ的に並進移動させながら撮影を行う(すなわち、両者の格子周期の位相を変化させながら撮影を行う)。本X線撮影システム10では、前述の走査機構33により第2の透過型格子32を移動させているが、第1の透過型格子31を移動させてもよい。第2の透過型格子32の移動に伴って、モアレ縞が移動し、並進距離(x方向への移動量)が、第2の透過型格子32の格子周期の1周期(格子ピッチp)に達すると(すなわち、位相変化が2πに達すると)、モアレ縞は元の位置に戻る。このようなモアレ縞の変化を、格子ピッチpを整数分の1ずつ第2の透過型格子32を移動させながら、FPD30で縞画像を撮影し、撮影した複数の縞画像から各画素40の強度変調信号を取得し、演算処理部22で演算処理することにより、各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψを得る。
【0088】
図8は、格子ピッチpをM(2以上の整数)個に分割した走査ピッチ(p/M)ずつ第2の透過型格子32を移動させる様子を模式的に示している。走査機構33は、k=0,1,2,・・・,M−1のM個の各走査位置に、第2の透過型格子32を順に並進移動させる。なお、同図では、第2の透過型格子32の初期位置を、被写体Hが存在しない場合における第2の透過型格子32の位置でのG1像の暗部が、X線遮蔽部32bにほぼ一致する位置(k=0)としているが、この初期位置は、k=0,1,2,・・・,M−1のうちいずれの位置としてもよい。
【0089】
まず、k=0の位置では、主として、被写体Hにより屈折されなかったX線が第2の透過型格子32を通過する。次に、k=1,2,・・・と順に第2の透過型格子32を移動させていくと、第2の透過型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されたX線の成分が増加する。特に、k=M/2では、主として、被写体Hにより屈折されたX線のみが第2の透過型格子32を通過する。k=M/2を超えると、逆に、第2の透過型格子32を通過するX線は、被写体Hにより屈折されたX線の成分が減少する一方で、被写体Hにより屈折されなかったX線の成分が増加する。
【0090】
k=0,1,2,・・・,M−1の各位置で、FPD30により撮影を行うと、各画素40について、M個の画素データが得られる。以下に、このM個の画素データから各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψを算出する方法を説明する。第2の透過型格子32の位置kにおける各画素40の画素データ(信号値)をI(x)と標記すると、I(x)は、次式(19)で表される。
【0091】
【数19】

【0092】
ここで、xは、画素のx方向に関する座標であり、Aは入射X線の強度であり、Aは強度変調信号のコントラストに対応する値である(ここで、nは正の整数である)。また、φ(x)は、上記屈折角φを画素40の座標xの関数として表したものである。
【0093】
次いで、次式(20)の関係式を用いると、上記屈折角φ(x)は、式(21)のように表される。
【0094】
【数20】

【0095】
【数21】

【0096】
ここで、arg[ ]は、偏角の抽出を意味しており、各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψに対応する。したがって、各画素40で得られたM個の画素データから、式(21)に基づいて各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψを算出することにより、屈折角φ(x)が求められる。
【0097】
具体的には、各画素40で得られたM個の画素データは、図9に示すように、第2の透過型格子32の位置kに対して、格子ピッチpの周期で周期的に変化する。同図中の破線は、被写体Hが存在しない場合の画素データの変化を示しており、同図中の実線は、被写体Hが存在する場合の画素データの変化を示している。この両者の波形の位相差が各画素40の強度変調信号の位相ズレ量ψに対応する。
【0098】
そして、屈折角φ(x)は、上記式(17)で示したように微分位相値に対応する値であるため、屈折角φ(x)をx軸に沿って積分することにより、位相シフト分布Φ(x)が得られる。
【0099】
上記の説明では、画素40のy方向に関するy座標を考慮していないが、各y座標について同様の演算を行うことにより、x方向及びy方向における2次元的な位相シフト分布Φ(x,y)が得られる。
【0100】
次に、X線撮影システム10における位相シフト分布Φ(x)の補正方法について説明する。
【0101】
図10に、X線撮影システム10の感度補正に用いるファントムの一例を示す。
【0102】
ファントム60は、x方向に沿った断面において、X線源11のX線焦点18bを中心とした円弧となる入射面61を有している。X線源11から放射されるX線は、コーンビームであって、x方向に関してX線焦点18bを中心に放射状に広がるが、入射面61がX線焦点18bを中心とした円弧であることで、入射面61の各部に垂直に入射する。
【0103】
そして、ファントム60は、X線焦点18bまわりの中心角度θに関して線形に肉厚dが変化しており、中心角度θと肉厚dとは次式(22)を満たしている。
【0104】
【数22】

【0105】
ここで、kは定数である。上記のように構成されたファントム60に入射したX線は、x方向に関して一様な屈折角φを与えられてファントム60を透過し、FPD30の各画素40に入射する。
【0106】
ファントム60を用いたX線撮影システム10の感度補正は、まず、第1及び第2の透過型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向にステップ的に並進移動させながら、ファントム60の撮影を行い、各ステップでのFPD30の各画素40の画素データを取得する。そして、取得した各画素40の複数の画素データから、式(21)に基づいて各画素40の屈折角φ(x)を演算する。
【0107】
演算で求められる屈折角φ(x)と、ファントム60がX線に与える屈折角φとの比であるφ/φ(x)を各画素40の補正係数とし、これらを感度補正マップとして記憶部23に保存しておく。そして、被写体を撮影して屈折角φ(x)(ないし位相微分値)の分布像を求め、これを構成する各画素の画素値に対し、記憶部23に記憶された上記感度補正マップを参照してその画素に対応したFPD30の画素40の補正係数φ/φ(x)をかけて補正する。補正して得られた屈折角φ(x)の分布に基づいて位相コントラスト画像を生成する。これにより、第2の透過型格子32の格子ピッチpの誤差や、第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との距離Lの変化や、FPD30の各画素40の実効幅の相違といった撮影系に含まれる誤差要因を反映した補正を行うことができる。
【0108】
各画素40の補正係数を求めるにあたっては、透過するX線に一様な屈折角φを与えるファントム60を用いることが好ましく、それによれば、演算で求められる屈折角φ(x)に対して、一律にφとの比をとることで、各画素40の補正係数を容易に求めることができる。ただし、ファントムとしては、X線に与える屈折角が既知であれば足り、その場合には、各画素40に入射するX線がファントムにより与えられる屈折角をφ´(x)として、各画素40の補正係数をφ´(x)/φ(x)とすればよい。
【0109】
以上の演算は、演算処理部22により行われ、演算処理部22は、生成された位相シフト分布Φ(x,y)を位相コントラスト画像として記憶部23に記憶させる。なお、位相シフト分布Φは、屈折角φより求まる位相シフト分布Φの微分量を積分したものであって、屈折角φ及び位相シフト分布Φの微分量もまた被写体によるX線の位相変化に関連している。よって、屈折角φや位相シフト分布Φの微分量を位相コントラスト画像とすることもできる。
【0110】
上記の縞走査、及び位相コントラスト画像の生成処理は、入力装置21から操作者により撮影指示がなされた後、制御装置20の制御に基づいて各部が連係動作し、自動的に行われ、最終的に被写体Hの位相コントラスト画像がモニタ24に表示される。
【0111】
上述したX線撮影システム10によれば、第2の透過型格子32の格子ピッチpの誤差や、第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との距離Lの変化や、FPD30の各画素40の実効幅の相違といった撮影系に含まれる複数の誤差要因に起因した複数のイメージング誤差を補正することができる。更に、各誤差要因に起因した誤差を個別に補正するのではなく、複数の誤差要因に起因した複数の誤差を複合的に補正することができるので、容易かつ正確な補正が可能となる。それにより、位相イメージングの精度を高めることができる。
【0112】
そして、上述したX線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31で殆どのX線を回折させずに、第2の透過型格子32に幾何学的に投影するため、照射X線には、高い空間的可干渉性は要求されず、X線源11として医療分野で用いられている一般的なX線源を用いることができる。そして、第1の透過型格子31から第2の透過型格子32までの距離Lを任意の値とすることができ、該距離Lを、タルボ干渉計での最小のタルボ干渉距離より小さく設定することができるため、撮影部12を小型化(薄型化)することができる。また、X線撮影システム10によれば、第1の透過型格子31からの投影像(G1像)には、照射X線のほぼすべての波長成分が寄与し、モアレ縞のコントラストが向上するため、位相コントラスト画像の検出感度を向上させることができる。
【0113】
なお、上述したX線撮影システム10は、第1の透過型格子31の投影像に対して縞走査を行って屈折角φを演算するものであって、そのため、第1及び第2の透過型格子31,32がいずれも吸収型格子であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述のとおり、タルボ干渉像に対して縞走査を行って屈折角φを演算する場合にも、屈折角φは、第2の透過型格子32の格子ピッチpや、第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との距離Lや、FPD30の各画素40の実効幅に依存するので、本発明は有用である。よって、第1の透過型格子31は、吸収型格子に限らず位相型格子であってもよい。
【0114】
また、上述したX線撮影システム10では、第1の透過型格子31の投影像と第2の透過型格子32との重ね合わせによって形成されるモアレ縞を縞走査法によって解析するものとして説明したが、モアレ縞の解析方法は、縞走査法に限られず、例えば「J. Opt. Soc. Am. Vol.72,No.1 (1982) p.156」により知られているフーリエ変換/フーリエ逆変換を用いた方法など、モアレ縞を利用した種々の方法も適用可能である。
【0115】
以下に、フーリエ変換/フーリエ逆変換を用いたモアレ縞の解析方法を説明する。X線遮蔽部31b、32bがy方向に延伸している第1及び第2の透過型格子31、32によって形成されるモアレ縞は次式(23)で表すことがで、式(23)は次式(24)に書き換えることができる。
【0116】
【数23】

【0117】
【数24】

【0118】
式(23)において、a(x,y)はバックグラウンドを表し、b(x,y)はモアレの基本周波数成分の振幅を表し、fはモアレの基本周波数を表す。また式(24)において、c(x,y)は次式(25)で表される。
【0119】
【数25】

【0120】
従って、モアレ縞からc(x,y)又はc(x,y)の成分を取り出すことによって屈折角φ(x,y)の情報を得ることができる。ここで、式(24)はフーリエ変換によって次式(26)となる。
【0121】
【数26】

【0122】
式(26)において、I(f,f)、A(f,f)、C(f,f)は、それぞれI(x,y)、a(x,y)、c(x,y)に対する二次元のフーリエ変換である。
【0123】
モアレ縞のスペクトルパターンにおいて、通常は3つのピークが生じ、A(f,f)に由来するピークを挟んで、その両脇にC(f,f)及びC(f,f)に由来するピークが生じる。このC(f,f)又はC(f,f)に由来するピークを含む領域を切り出し、切り出したC(f,f)又はC(f,f)に由来するピークを周波数空間の原点に移動させてフーリエ逆変換を行い、得られる複素数情報から屈折角φ(x,y)を得ることができる。
【0124】
更に、上述したX線撮影システム10では、被写体HをX線源11と第1の透過型格子31との間に配置しているが、被写体Hを第1の透過型格子31と第2の透過型格子32との間に配置した場合にも同様に位相コントラスト画像の生成が可能である。
【0125】
図11は、図10のファントムの変形例を示す。図11に示すファントム60´は、x方向に沿った断面において、X線源11のX線焦点18bを中心とした円弧となる入射面61を有している。そして、ファントム60´は、肉厚dの変化を周期的に繰り返しており、1周期の範囲における肉厚dは、X線焦点18bまわりの中心角度θに関して線形に変化している。
【0126】
上記のように構成されたファントム60´のうち、肉厚dが線形に変化する各線形部60Aに入射するX線は、x方向に関して一様な屈折角φを与えられてファントム60´を透過し、FPD30の各画素40に入射する。ファントム60´は、肉厚dの変化を周期的に繰り返すように構成されているので、その厚みを図10に示すファントム60に比べて小さくすることができる。なお、ファントム60´は、全体を一つの部材で構成されてもよいし、肉厚dの周期変化の1周期分にあたる線形部60Aを個々に形成し、これを複数連結して構成されてもよい。
【0127】
ここで、線形部60Aに入射するX線は一様な屈折角φを与えられるが、隣り合う線形部60A、60Aの間の僅かな領域である段状の接続部60Bに入射するX線は、接続部60Bにおける肉厚dの不連続に起因して、線形部60Aで与えられる屈折角φとは異なる屈折角が与えられてファントム60´を透過する場合がある。φとは異なる屈折角が与えられたX線が入射する画素40における補正係数を、他の画素40と同様にφ/φ(x)とすると、補正係数に誤差を含むこととなる。そこで、好ましくは、ファントム60´をX線焦点18bまわりに所定の角度ずつ回転させながらファントム60´を複数回撮影し、各画素40の補正係数を求める。
【0128】
例えば、ファントム60´を2回撮影するとして、まず、1回目の撮影を行い、各画素40で得られる複数の画素データから式(21)に基づいて各画素40の屈折角φ1(x)を演算する。
【0129】
次いで、図12に示すように、肉厚dの周期変化における1周期分(一つの線形部60A)に対応するX線焦点18bまわりの中心角度θの整数倍を除く所定の角度(例えばθ×1/2)だけファントム60´をX線焦点18bまわりに回転させて2回目の撮影を行い、各画素40で得られる複数の画素データから式(21)に基づいて各画素40の屈折角φ2(x)を演算する。
【0130】
1回目の撮影で接続部60Bを透過したX線が入射する画素40については、1回目の撮影で演算されるその画素40の屈折角φ1(x)を破棄し、2回目の撮影で演算されるその画素40の屈折角φ2(x)を用い、φ/φ2(x)をその画素40の補正係数とする。その他の画素40については、1回目の撮影で演算される屈折角φ1(x)を用い、φ/φ1(x)をその画素40の補正係数とする。これにより、線形部60Aと接続部60BとでX線に与える屈折角の非一様の影響を除き、精度よく各画素40の補正係数を求めることができる。
【0131】
また、撮影毎に演算される各画素40の複数の屈折角φ1(x)、φ2(x)、・・・の平均をとり、平均の屈折角φavg(x)を用いて、φ/φavg(x)をその画素40の補正係数としてもよい。これによっても、線形部60Aと接続部60BとでX線に与える屈折角の非一様の影響を低減でき、精度よく各画素40の補正係数を求めることができる。
【0132】
上述のX線撮影システム10の第1及び第2の透過型格子31,32は、X線遮蔽部31b,32bの周期配列方向が直線状(すなわち、格子面が平面状)となるように構成されているが、これに代えて、図13に示すように、格子面を曲面状に凹面化した第1及び第2の透過型格子110,111を用いることもできる。
【0133】
第1の透過型格子110は、X線透過性でかつ湾曲した基板110aの表面に、複数のX線遮蔽部110bが所定のピッチpで周期的に配列されている。各X線遮蔽部110bは、y方向に直線状に延伸しており、第1の透過型格子110の格子面は、X線焦点18bを通りX線遮蔽部110bの延伸方向に延びる直線を中心軸とする円筒面に沿った形状となっている。同様に、第2の透過型格子111は、X線透過性でかつ湾曲した基板111aの表面に、複数のX線遮蔽部111bが所定のピッチpで周期的に配列されている。各X線遮蔽部111bは、y方向に直線状に延伸しており、第2の透過型格子111の格子面は、X線焦点18bを通りX線遮蔽部111bの延伸方向に延びる直線を中心軸とする円筒面に沿った形状となっている。
【0134】
X線焦点18bから第1の透過型格子110までの距離をL、第1の透過型格子110から第2の透過型格子111までの距離をLとした場合に、第1の透過型格子110の格子ピッチp及び第2の透過型格子111の格子ピッチpは、上記式(5)の関係を満たすように決定される。
【0135】
第1及び第2の透過型格子110,111の格子面を円筒面状とすることにより、X線焦点18bから照射されるX線は、被検体Hが存在しない場合、すべて格子面に垂直に入射することになるため、X線遮蔽部110bの厚みhとX線遮蔽部111bの厚みhとの上限の制約が緩和され、上記式(10)及び(11)を考慮する必要がなくなる。
【0136】
上記の第1及び第2の透過型格子110,111を用いたX線撮影システム10では、第1及び第2の透過型格子110,111のいずれか一方を、X線焦点18bを中心として、格子面(円筒面)に沿った方向に移動させることにより上述の縞走査を行い、屈折角φ(x)を演算し、この屈折角φ(x)に基づいて位相シフト分布Φ(x)を得る。上述のファントム60,60´を用いた位相シフト分布Φ(x)の補正において、屈折角φ(x)は第1及び第2の透過型格子110,111の距離Lに依存するが、距離Lは、X線焦点18bまわりの中心角度θで変化せず、一定となる。よって、位相イメージングの誤差要因を少なくすることができる。
【0137】
上記の第1及び第2の透過型格子110,111は、図14に示すように、それぞれ複数の格子片110A、111Aを連結して構成することもできる。
【0138】
第1及び第2の透過型格子の格子ピッチには高い精度が求められ、大型の第1及び第2の透過型格子の製造は困難が伴うが、それぞれ複数の格子片を連結して構成することにより、個々の格子片は比較的小型なものとすることができる。それにより、第1及び第2の透過型格子110,111の大型化と、格子ピッチの精度の維持とを両立することができる。
【0139】
更に、第1及び第2の透過型格子110,111の格子面を円筒面状とする場合に、隣り合う二つの格子片を所定の角度で傾けて連結することで、格子面を容易に円筒面状にすることができる。
【0140】
図15は、X線撮影システムの他の例を示す。図15に示すX線撮影システム100は、X線源101のコリメータユニット102に、マルチキャピラリX線レンズ103を配設した点が、上述のX線撮影システム10と異なる。マルチキャピラリX線レンズ103は、X線焦点18bから放射されるX線を集光し、x方向に関して互いにほぼ平行を維持するX線を放射する。その他の構成については、上述のX線撮影システム10と同一であるので説明は省略する。
【0141】
本X線撮影システム100では、上述のX線撮影システム10と同様に、第1及び第2の透過型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向に移動させることにより上述の縞走査を行い、屈折角φ(x)を演算し、この屈折角φ(x)に基づいて位相シフト分布Φ(x)を得る。
【0142】
次に、X線撮影システム100における位相シフト分布Φ(x)の補正方法について説明する。
【0143】
図16に、X線撮影システム100の感度補正に用いるファントムの一例を示す。
【0144】
ファントム160は、x方向に線形に肉厚dが変化している。X線源101から放射されるX線は、x方向に関して互いにほぼ平行を維持してファントム160に入射する。ファントム160は、その肉厚dがx方向に線形に変化しており、x方向に関して互いにほぼ平行を維持してファントム160に入射したX線は、x方向に関して一様な屈折角φを与えられてファントム160を透過し、FPD30の各画素40に入射する。
【0145】
第1及び第2の透過型格子31,32の一方を他方に対して相対的にx方向にステップ的に並進移動させながら、ファントム160の撮影を行い、各ステップでのFPD30の各画素40の画素データを取得する。そして、取得した各画素40の複数の画素データから式(21)に基づいて各画素40の屈折角φ(x)を演算し、φ/φ(x)を各画素40の補正係数として、これらを感度補正マップとして記憶部23に保存しておく。そして、被写体を撮影して屈折角φ(x)(ないし位相微分値)の分布像を求め、これを構成する各画素の画素値に対し、記憶部23に記憶された上記感度補正マップを参照してその画素に対応したFPD30の画素40の補正係数φ/φ(x)をかけて補正する。補正して得られた屈折角φ(x)の分布に基づいて位相コントラスト画像を生成する。
【0146】
図17は、図16のファントムの変形例を示す。図17に示すファントム160´は、x方向に、肉厚dの変化を周期的に繰り返しており、1周期の範囲における肉厚dは、x方向に線形に変化している。
【0147】
上記のように構成されたファントム160´のうち、肉厚dが線形に変化する各線形部160Aに入射するX線は、x方向に関して一様な屈折角φを与えられてファントム160´を透過し、FPD30の各画素40に入射する。ファントム160´は、肉厚dの変化を周期的に繰り返すように構成されているので、その厚みを図16に示すファントム160に比べて小さくすることができる。なお、ファントム160´は、全体を一つの部材で構成されてもよいし、肉厚dの周期変化の1周期分にあたる線形部160Aを一つの部材で形成し、これを複数連結して構成されてもよい。
【0148】
ここで、線形部160Aに入射するX線はx方向に関して一様な屈折角φを与えられるが、隣り合う線形部160A、160Aの間の僅かな領域である段状の接続部160Bに入射するX線は、接続部160Bにおける肉厚dの不連続に起因して、線形部160Aで与えられる屈折角φとは異なる屈折角が与えられてファントム160´を透過する場合がある。φとは異なる屈折角が与えられたX線が入射する画素40における補正係数を、他の画素40と同様にφ/φ(x)とすると、補正係数に誤差を含むこととなる。そこで、好ましくは、ファントム160´をx方向に所定の距離ずつ移動させながらファントム160´を複数回撮影し、各画素40の補正係数を求める。
【0149】
例えば、ファントム160´を2回撮影するとして、まず、1回目の撮影を行い、各画素40で得られる複数の画素データから式(21)に基づいて各画素40の屈折角φ1(x)を演算する。
【0150】
次いで、図18に示すように、肉厚dの周期変化における1周期分(一つの線形部160A)の寸法wの整数倍を除く所定の距離(例えばw×1/2)だけファントム160´をx方向に移動させて2回目の撮影を行い、各画素40で得られる複数の画素データから式(21)に基づいて各画素40の屈折角φ2(x)を演算する。
【0151】
1回目の撮影で接続部160Bを透過したX線が入射する画素40については、1回目の撮影で演算されるその画素40の屈折角φ1(x)を破棄し、2回目の撮影で演算されるその画素40の屈折角φ2(x)を用い、φ/φ2(x)をその画素40の補正係数とする。その他の画素40については、1回目の撮影で演算される屈折角φ1(x)を用い、φ/φ1(x)をその画素40の補正係数とする。これにより、線形部160Aと接続部160BとでX線に与える屈折角の非一様の影響を除き、精度よく各画素40の補正係数を求めることができる。
【0152】
また、撮影毎に演算される各画素40の複数の屈折角φ1(x)、φ2(x)、・・・の平均をとり、平均屈折角φavg(x)を用いて、φ/φavg(x)をその画素40の補正係数としてもよい。これによっても、線形部160Aと接続部160BとでX線に与える屈折角の非一様の影響を低減でき、精度よく各画素40の補正係数を求めることができる。
【0153】
上述のX線撮影システム10,100では、第2の透過型格子32を用いているが、特開平2009−133823号公報に開示された構成のX線画像検出器を用いることにより、第2の透過型格子32を排することができる。このX線画像検出器は、X線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを備えた直接変換型のX線画像検出器において、各画素の電荷収集電極が、一定の周期で配列された線状電極を互いに電気的に接続してなる複数の線状電極群を、互いに位相が異なるように配置することにより構成されている。
【0154】
図19は、上記のX線画像検出器(FPD)の構成を例示する。画素70が、x方向及びy方向に沿って一定のピッチで2次元配列されており、各画素70には、X線を電荷に変換する変換層によって変換された電荷を収集するための電荷収集電極71が形成されている。電荷収集電極71は、第1〜第6の線状電極群72〜77から構成されており、各線状電極群の線状電極の配列周期の位相がπ/3ずつずれている。具体的には、第1の線状電極群72の位相を0とすると、第2の線状電極群73の位相はπ/3、第3の線状電極群74の位相は2π/3、第4の線状電極群75の位相はπ、第5の線状電極群76の位相は4π/3、第6の線状電極群77の位相は5π/3である。画素70のy方向への電荷がそれぞれ線状電極群72〜77を通して蓄えられる。
【0155】
更に、各画素70には、電荷収集電極71により収集された電荷を読み出すためのスイッチ群78が設けられている。スイッチ群78は、第1〜第6の線状電極群72〜77のそれぞれに設けられたTFTスイッチからなる。第1〜第6の線状電極群72〜77により収集された電荷を、スイッチ群78を制御してそれぞれ個別に読み出すことによって、一度の撮影により、互いに位相の異なる6種類の縞画像を取得することができ、この6種類の縞画像に基づいて位相コントラスト画像を生成することができる。
【0156】
上述のX線撮影システム10,100において、FPD30に代えて、上記構成のX線画像検出器を用いることにより、撮影部12から第2の透過型格子32が不要となるため、コスト削減とともに、さらなる薄型化が可能となる。また、本実施形態では、一度の撮影により、異なる位相で強度変調が行われた複数の縞画像を取得することが可能であるため、縞走査のための物理的な走査が不要となり、上記走査機構33を排することができる。なお、電荷収集電極71に代えて、特開2009−133823号公報に記載のその他の構成の電荷収集電極を用いることも可能である。
【0157】
更に、第2の透過型格子32を配置しない場合の別の実施形態として、X線画像検出器により得られた縞画像(G1像)を、信号処理によって位相を変えながら周期的にサンプリングすることで、該縞画像に強度変調を与えることも可能である。
【0158】
図20は、本発明の実施形態を説明するための放射線撮影システムの他の例を示す。
【0159】
図20に示すX線撮影システム200は、X線源201のコリメータユニット202に、マルチスリット203を配設した点が、上述したX線撮影システム10と異なる。その他の構成については、X線撮影システム10と同一であるので説明は省略する。
【0160】
上述したX線撮影システム10では、X線源11からFPD30までの距離を、一般的な病院の撮影室で設定されるような距離(1m〜2m)とした場合に、X線焦点18bの焦点サイズ(一般的に0.1mm〜1mm程度)によるG1像のボケが影響し、位相コントラスト画像の画質の低下をもたらす恐れがある。そこで、X線焦点18bの直後にピンホールを設置して実効的に焦点サイズを小さくすることが考えられるが、実効的な焦点サイズを縮小するためにピンホールの開口面積を小さくすると、X線強度が低下してしまう。本X線撮影システム200においては、この課題を解決するために、X線焦点18bの直後にマルチスリット203を配置する。
【0161】
マルチスリット203は、撮影部12に設けられた第1及び第2の透過型格子31,32と同様な構成の透過型格子(吸収型格子)であり、一方向(y方向)に延伸した複数のX線遮蔽部が、第1及び第2の透過型格子31,32のX線遮蔽部31b,32bと同一方向(x方向)に周期的に配列されている。このマルチスリット203は、X線焦点18bから放射される放射線を部分的に遮蔽することにより、x方向に関する実効的な焦点サイズを縮小して、x方向に多数の点光源(分散光源)を形成することを目的としている。
【0162】
このマルチスリット203の格子ピッチpは、マルチスリット203から第1の透過型格子31までの距離をLとして、次式(27)を満たすように設定する必要がある。
【0163】
【数27】

【0164】
上記式(27)は、マルチスリット203により分散形成された各点光源から射出されたX線の第1の透過型格子31による投影像(G1像)が、第2の透過型格子32の位置で一致する(重なり合う)ための幾何学的な条件である。
【0165】
また、実質的にマルチスリット203の位置がX線焦点位置となるため、第2の透過型格子32の格子ピッチpは、次式(28)の関係を満たすように決定される。
【0166】
【数28】

【0167】
このように、本X線撮影システム200では、マルチスリット203により形成される複数の点光源に基づくG1像が重ね合わせられることにより、X線強度を低下させずに、位相コントラスト画像の画質を向上させることができる。以上説明したマルチスリット203は、前述したいずれのX線撮影システムにおいても適用可能である。
【0168】
以上、説明したように、本明細書には、被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影システムであって、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算し、この屈折角の分布に基づいて位相コントラスト画像を生成する演算部と、透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて求められる、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を記憶した記憶部と、を備え、前記演算部は、前記被写体を撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、前記記憶部に記憶されたその画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影システムが開示されている。
【0169】
また、本明細書には、前記補正係数が、前記ファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角との比である放射線撮影システムが開示されている。
【0170】
また、本明細書には、第1の格子と、前記第1の格子を通過した放射線によって生成される放射線像の周期パターンに実質的に一致する格子パターンと、を更に備え、前記放射線画像検出器は、前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像を検出し、前記演算部は、前記放射線画像検出器で取得される画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【0171】
また、本明細書には、前記放射線画像検出器が、前記格子パターンと前記放射線像との位相が異なる複数の相対位置関係のもとで前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像をそれぞれ検出し、前記放射線画像検出器によって取得された複数の画像間における各画素の信号値の変化に基づいて該画素の信号の位相ズレ量を算出することによって前記屈折角分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【0172】
また、本明細書には、前記格子パターンが第2の格子であり、前記第1及び第2の格子の少なくともいずれか一方を移動させて前記第2の格子を前記複数の相対位置関係に置く走査手段を更に備える放射線撮影システムが開示されている。
【0173】
また、本明細書には、前記放射線画像検出器が、放射線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極と、を画素毎に備えた放射線画像検出器であって、前記電荷収集電極は、前記放射線像の周期パターンに実質的に一致するパターンを有する複数の線状電極群を含み、前記複数の線状電極群は、互いに位相が異なるように配列されている放射線撮影システムが開示されている。
【0174】
また、本明細書には、前記格子パターンが第2の格子であって、該第2の格子によってマスキングされた前記放射線像がモアレを含み、前記演算部は、前記画像の強度分布に対してフーリエ変換を行うことによって空間周波数スペクトル分布を求め、求めた空間周波数スペクトルから前記モアレの基本周波数に対応するスペクトルを分離し、分離された前記スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことによって前記屈折角の分布を演算する放射線撮影システムが開示されている。
【0175】
また、本明細書には、上記の放射線撮影システムの感度補正に用いられるファントムであって、透過する放射線に一様な屈折角を与えるファントムが開示されている。
【0176】
また、本明細書には、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に沿った断面において前記放射線源の焦点を中心とした円弧となる入射面を有し、前記焦点まわりに線形に肉厚が変化しているファントムが開示されている。
【0177】
また、本明細書には、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に線形に肉厚が変化しているファントムが開示されている。
【0178】
また、本明細書には、上記の放射線撮影システムの感度補正に用いられるファントムであって、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に沿った断面において前記放射線源の焦点を中心とした円弧となる入射面を有し、前記焦点まわりに線形な肉厚変化を周期的に繰り返しているファントムが開示されている。
【0179】
また、本明細書には、上記の放射線撮影システムの感度補正に用いられるファントムであって、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に線形な肉厚変化を周期的に繰り返しているファントムが開示されている。
【0180】
また、本明細書には、被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法であって、透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を求め、被写体を撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、その画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法が開示されている。
【0181】
また、本明細書には、前記補正係数が、前記ファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角との比である放射線撮影方法が開示されている。
【0182】
また、本明細書には、第1の格子を通過させることによって縞状の放射線像を生成し、前記放射線像の周期パターンに実質的に一致する格子パターンを用いて前記放射線像をマスキングし、前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像を前記放射線画像検出器で検出し、前記放射線画像検出器で取得された画像に基づいて、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算する放射線撮影方法が開示されている。
【0183】
また、本明細書には、前記ファントムが、透過する放射線に一様な屈折角を与える放射線撮影方法が開示されている。
【0184】
また、本明細書には、前記ファントムが、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に沿った断面において放射線焦点を中心とした円弧となる入射面を有し、前記放射線焦点まわりに線形な肉厚変化を周期的に繰り返しており、前記ファントムを前記放射線焦点まわりに所定の角度ずつ回転させながら複数回撮影し、撮影毎に演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の複数の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、各画素の前記補正係数を求める放射線撮影方法が開示されている。
【0185】
また、本明細書には、前記ファントムが、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に線形な肉厚変化を周期的に繰り返しており、前記ファントムを前記ピッチ方向に所定の距離ずつ移動させながら複数回撮影し、撮影毎に演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の複数の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、各画素の前記補正係数を求める放射線撮影方法が開示されている。
【0186】
また、本明細書には、被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法において、コンピュータに、下記(1)及び(2)の処理を実行させるプログラムが開示されている。(1)透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影した際に、前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角を演算し、演算された屈折角と前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を求める。(2)被写体を撮影した際に、前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角を演算し、演算された前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、その画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて前記被写体の位相コントラスト画像を生成する。
【符号の説明】
【0187】
10 X線撮影システム(放射線撮影システム)
11 X線源(放射線源)
12 撮影部
13 コンソール
14 X線源保持装置
15 立位スタンド
16 高電圧発生器
17 X線源制御部
18 X線管
19 コリメータユニット
20 制御装置
21 入力装置
22 演算処理部
23 記憶部
24 モニタ
25 I/F
30 フラットパネル検出器(放射線画像検出器)
31 第1の格子
32 第2の格子(強度変調部)
33 走査機構(強度変調部)
40 画素
60 ファントム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影システムであって、
前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算し、この屈折角の分布に基づいて位相コントラスト画像を生成する演算部と、
透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて求められる、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を記憶した記憶部と、
を備え、
前記演算部は、前記被写体を撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、前記記憶部に記憶されたその画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影システム。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影システムであって、
前記補正係数は、前記ファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角との比である放射線撮影システム。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線撮影システムであって、
第1の格子と、
前記第1の格子を通過した放射線によって生成される放射線像の周期パターンに実質的に一致する格子パターンと、
を更に備え、
前記放射線画像検出器は、前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像を検出し、
前記演算部は、前記放射線画像検出器で取得された画像から、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算する放射線撮影システム。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線撮影システムであって、
前記放射線画像検出器は、前記格子パターンと前記放射線像との位相が異なる複数の相対位置関係のもとで前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像をそれぞれ検出し、
前記放射線画像検出器によって取得された複数の画像間における各画素の信号値の変化に基づいて該画素の信号の位相ズレ量を算出することによって前記屈折角分布を演算する放射線撮影システム。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線撮影システムであって、
前記格子パターンは、第2の格子であり、
前記第1及び第2の格子の少なくともいずれか一方を移動させて前記第2の格子を前記複数の相対位置関係に置く走査手段を更に備える放射線撮影システム。
【請求項6】
請求項4に記載の放射線撮影システムであって、
前記放射線画像検出器は、放射線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極と、を画素毎に備えた放射線画像検出器であって、
前記電荷収集電極は、前記放射線像の周期パターンに実質的に一致するパターンを有する複数の線状電極群を含み、
前記複数の線状電極群は、互いに位相が異なるように配列されている放射線撮影システム。
【請求項7】
請求項3に記載の放射線撮影システムであって、
前記格子パターンが第2の格子であって、該第2の格子によってマスキングされた前記放射線像がモアレを含み、
前記演算部は、前記画像の強度分布に対してフーリエ変換を行うことによって空間周波数スペクトル分布を求め、求めた空間周波数スペクトルから前記モアレの基本周波数に対応するスペクトルを分離し、分離された前記スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことによって前記屈折角の分布を演算する放射線撮影システム。
【請求項8】
請求項1に記載の放射線撮影システムの感度補正に用いられるファントムであって、
透過する放射線に一様な屈折角を与えるファントム。
【請求項9】
請求項8に記載のファントムであって、
前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に沿った断面において前記放射線源の焦点を中心とした円弧となる入射面を有し、前記焦点まわりに線形に肉厚が変化しているファントム。
【請求項10】
請求項8に記載のファントムであって、
前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に線形に肉厚が変化しているファントム。
【請求項11】
請求項1に記載の放射線撮影システムの感度補正に用いられるファントムであって、
前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に沿った断面において前記放射線源の焦点を中心とした円弧となる入射面を有し、前記焦点まわりに線形な肉厚変化を周期的に繰り返しているファントム。
【請求項12】
請求項1に記載の放射線撮影システムの感度補正に用いられるファントムであって、
前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に線形な肉厚変化を周期的に繰り返しているファントム。
【請求項13】
被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法であって、
透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を求め、
被写体を撮影して演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、その画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線撮影方法であって、
前記補正係数は、前記ファントムを撮影して前記演算部により演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角との比である放射線撮影方法。
【請求項15】
請求項13に記載の放射線撮影方法であって、
第1の格子を通過させることによって縞状の放射線像を生成し、
前記放射線像の周期パターンに実質的に一致する格子パターンを用いて前記放射線像をマスキングし、
前記格子パターンによってマスキングされた前記放射線像を前記放射線画像検出器で検出し、
前記放射線画像検出器で取得された画像に基づいて、前記放射線画像検出器に入射する放射線の屈折角の分布を演算する放射線撮影方法。
【請求項16】
請求項13に記載の放射線撮影方法であって、
前記ファントムは、透過する放射線に一様な屈折角を与える放射線撮影方法。
【請求項17】
請求項13に記載の放射線撮影方法であって、
前記ファントムは、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に沿った断面において放射線焦点を中心とした円弧となる入射面を有し、前記放射線焦点まわりに線形な肉厚変化を周期的に繰り返しており、
前記ファントムを前記放射線焦点まわりに所定の角度ずつ回転させながら複数回撮影し、撮影毎に演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の複数の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、各画素の前記補正係数を求める放射線撮影方法。
【請求項18】
請求項13に記載の放射線撮影方法であって、
前記ファントムは、前記放射線像の周期パターンのピッチ方向に線形な肉厚変化を周期的に繰り返しており、
前記ファントムを前記ピッチ方向に所定の距離ずつ移動させながら複数回撮影し、撮影毎に演算される前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の複数の屈折角と、前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、各画素の前記補正係数を求める放射線撮影方法。
【請求項19】
被写体を透過した放射線像を放射線画像検出器で検出し、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する放射線撮影方法において、コンピュータに、下記(1)及び(2)の処理を実行させるプログラム。
(1)透過する放射線に既知の屈折角を与えるファントムを撮影した際に、前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角を演算し、演算された屈折角と前記ファントムが放射線に与える屈折角とに基づいて、画素間で感度を一様にする各画素の補正係数を求める。
(2)被写体を撮影した際に、前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角を演算し、演算された前記放射線画像検出器の各画素に入射する放射線の屈折角に対して、その画素の前記補正係数を用いて感度補正を行い、補正された屈折角の分布に基づいて前記被写体の位相コントラスト画像を生成する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−90944(P2012−90944A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9176(P2011−9176)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】