放射線撮影装置、及び放射線撮影システム
【課題】ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合の画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる放射線撮影装置、及び放射線撮影システムを提供する。
【解決手段】ステレオ撮影を行う場合、撮影面に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線を照射して放射線画像をそれぞれ撮影する。
【解決手段】ステレオ撮影を行う場合、撮影面に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線を照射して放射線画像をそれぞれ撮影する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、及び放射線撮影システムに係り、特にステレオ撮影を行う放射線撮影装置、及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行なう放射線撮影装置が知られている。この種の放射線撮影装置として、例えば、乳がんの早期発見などを目的として被験者の乳房を撮影するマンモグラフィが挙げられる。
【0003】
このマンモグラフィを用いた検診では、被験者の左右の乳房をそれぞれ個別に撮影する。読影者は、撮影された左右の乳房の放射線画像を胸壁側が向かい合うように並べて表示させ、左右の乳房を比較するのが一般的である。特許文献1には、左右の乳房の放射線画像の一方を180度回転させて左右の乳房の放射線画像を胸側の辺を合わせて合成し、合成された合成画像を表示する技術が開示されている。
【0004】
ところで、放射線撮影装置による撮影によって得られる放射線画像は、2次元画像であるため、病変等の立体的分布が判断しずらい。
【0005】
そこで、診断精度を向上させる技術として被験者の撮影対象部位に対して所定の視差角で放射線を2回照射して放射線画像を撮影するステレオ撮影を行い、撮影された2つの放射線画像を読影者の右目と左目で個別に視認させて立体視を行う方法が提案されている。
【0006】
ところで、ステレオ撮影によって撮影された2つの放射線画像は、画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にしたり、2つの放射線画像でそれぞれ左右を反転させたり、2つの放射線画像をそれぞれ180度回転させることより、立体視される画像の突出方向が反転し、逆方向から視認しているように見える。
【0007】
このため、マンモグラフィにおいて左右の乳房に対してそれぞれステレオ撮影を行って右乳房と左乳房でそれぞれ2つの放射線画像を撮影し、撮影された左右の乳房の放射線画像を比較しながら立体視で検査するため、右乳房又は左乳房の何れか一方の2つの放射線画像を180度回転させて他方の2つの放射線画像とそれぞれ合成した場合、一方を180度回転させたことにより、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が逆となってしまう。
【0008】
この問題を解決する技術として、特許文献2には、表示される画像の左右方向を反転させた場合、これに連動させて左右の画像を互いに入れ替えて常に適切な奥行き感を持たせる技術が開示されている。
【0009】
この特許文献2に記載された技術を用いて、胸側を合わせるために右乳房又は左乳房の何れか一方の2つの放射線画像を180度回転させると共に、2つの放射線画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にしたり、2つの放射線画像で左右を反転させることによって立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向を一致させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−97830号公報
【特許文献2】特開平10−80418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ステレオ撮影する際に、放射線画像を撮影する撮影面に対して放射線源を傾けた場合、撮影面に対して放射線が傾斜して入射し、撮影面に対して放射線を垂直方向から入射させた場合に比べて撮影される放射線画像の画質が劣化する。特に撮影面にグリッドが設けられている場合、傾斜して入射した放射線がグリッドによりけられてしまい、撮影される放射線画像の画質が低下する。
【0012】
このため、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合、画質が劣化する。
【0013】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合の画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる放射線撮影装置、及び放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の放射線撮影装置は、撮影対象部位を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段と、前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源と、前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段と、ステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して前記正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段と、を備えている。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、生成手段により、撮影対象部位を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像がそれぞれ撮影され、当該撮影された放射線画像を示す画像情報がそれぞれ生成され、移動手段により、撮影面に対して放射線を照射する放射線源が撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように移動される。
【0016】
そして、本発明によれば、撮影制御手段により、ステレオ撮影を行う場合、撮影面に対して正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段が制御される。
【0017】
このように、請求項1に記載の発明によれば、ステレオ撮影を行う場合、撮影面に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線を照射して放射線画像をそれぞれ撮影するので、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合に画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる。
【0018】
なお、請求項1記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、前記撮影対象部位を、乳房とし、前記撮影制御手段が、右乳房及び左乳房のステレオ撮影を行う場合、それぞれ前記撮影面に対して正面方向及び前記所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御し、右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示手段に、右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段をさらに備えてもよい。
【0019】
また、請求項2記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記撮影制御手段が、右乳房を撮影する際と左乳房を撮影する際で前記所定角度を前記正面方向に対して逆方向としてもよい。
【0020】
また、請求項2又は請求項3記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記表示制御手段が、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成した合成画像が表示されるように制御してもよい。
【0021】
一方、請求項5に記載の発明の放射線撮影システムは、右乳房又は左乳房を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段、前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源、前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段、及びステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段を有する放射線撮影装置と、右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示装置と、右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段と、を備えている。
【0022】
よって、請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明と同様に作用するので、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合の画質の劣化を抑えつつ右乳房及び左乳房を立体視で観察することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合に画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係る撮像装置の構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る撮像装置のCC撮影時における構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る撮像装置のMLO撮影時における構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る撮影台の概略構成を示す構成図である。
【図5】実施の形態に係る放射線撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態に係るステレオ表示装置の構成を示す斜視図である。
【図7】実施の形態に係るステレオ表示装置の画像を立体視する場合を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係るステレオ撮影を行う際の放射線照射部の位置を示す図である。
【図9】第1の実施の形態に係る右乳房及び左乳房をステレオ撮影する際の放射線照射部の位置と放射線画像の関係を示す図である。
【図10】実施の形態に係る画像合成処理プログラムの処理の流れ示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態に係る画像合成処理の流れ示す模式図である。
【図12】第2の実施の形態に係るステレオ撮影を行う際の放射線照射部の位置を示す図である。
【図13】第2の実施の形態に係る右乳房及び左乳房をステレオ撮影する際の放射線照射部の位置と放射線画像の関係を示す図である。
【図14】第2の実施の形態に係る画像合成処理の流れ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を乳房のステレオ撮影を行い、撮影した放射線画像のステレオ表示を行なう放射線撮影システムに適用した場合について説明する。
【0026】
最初に、図1〜図3を参照して放射線画像を撮影する放射線撮影装置10について説明する。
【0027】
本実施の形態に係る放射線撮影装置10は、被験者が立った立位状態において、その被験者Wの乳房Nを放射線(例えば、X線)により撮影する装置であり、例えば、マンモグラフィと称される。なお、以下では、撮影の際に放射線撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wに近い手前側を放射線撮影装置10の装置前方側とし、放射線撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wから離れた奥側を放射線撮影装置10の装置後方側とし、放射線撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wの左右方向を放射線撮影装置10の装置左右方向として説明する(図2の矢印参照)。
【0028】
放射線撮影装置10は、図1に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状(コの字状)の測定部12と、測定部12を装置後方側から支える基台部14と、を備えている。
【0029】
測定部12は、図1及び図2に示すように、立位状態にある被験者Wの乳房Nに当接する平面状の撮影面20が形成された撮影台22と、乳房Nを撮影面20に押し付ける圧迫板26と、撮影台22と圧迫板26とを保持する保持部28と、を備えている。
【0030】
また、測定部12は、管球などの放射線源30(図5参照。)が設けられその放射線源30から撮影面20に向けて放射線を照射する放射線照射部24と、保持部28とは分離され放射線照射部24を支持する支持部29とを備えている。
【0031】
測定部12には、基台部14に回動可能に支えられている回動軸16が設けられている。回動軸16は、支持部29に対して固定されており、回動軸16と支持部29は一体に回動するようになっている。
【0032】
保持部28に対しては、回動軸16が連結されて一体に回動する状態と、回動軸16が分離されて空転する状態とに切り替え可能とされている。具体的には、回動軸16及び保持部28にそれぞれギアが設けられ、このギア同士の噛合状態・非噛合状態を切替えるようになっている。
【0033】
なお、回動軸16の回動力の伝達・非伝達の切替えは、種々の機械要素を用いることができる。
【0034】
保持部28は、撮影面20と放射線照射部24とが所定間隔離れるように撮影台22と放射線照射部24とを保持するとともに、圧迫板26と撮影面20との間隔が可変であるように圧迫板26をスライド移動可能に保持している。
【0035】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、少なくとも、乳房NをCC撮影(頭尾方向の撮影)とMLO撮影(内外斜位方向の撮影)との両者を行うことができる装置とされている。図1及び図2は、CC撮影時における放射線撮影装置10の姿勢を示し、図3は、撮影装置のMLO撮影時における放射線撮影装置10の姿勢を示している。
【0036】
図1に示すように、CC撮影時においては、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢が調整されると共に、放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被験者Wの頭側から足側に向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、CC撮影(頭尾方向の撮影)がなされる。
【0037】
また、MLO撮影時では、図3に示すように、一般的に、CC撮影時に比べて撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に保持部28の姿勢が調整され、撮影台22の装置前方側の側壁角部22Aに被験者Wの腋窩を当てるようにポジショニングされる。これにより、被験者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、MLO撮影(内外斜位方向の撮影)がなされる。
【0038】
放射線撮影装置10では、図2、図3に示すように、ステレオ撮影を行う場合、保持部28に対して回動軸16が空転して撮影台22と圧迫板26が動かず、支持部29が回動することにより放射線照射部24のみが円弧状に移動する。
【0039】
このように、放射線照射部24のみを回動させることにより、撮影面20に対して様々な角度に放射線照射部24を位置させることが可能となり、撮影面20に対して正対する正面方向を含む様々な方向から放射線を照射することができる。
【0040】
図4には、本実施の形態に係る撮影台22の概略構成が示されている。
【0041】
同図に示すように、撮影台22は、撮影の際に乳房Nが配置される撮影面20が形成された天板23と、天板23と対向するようにセンサ面42Aが配置され、当該センサ面42Aで受像された放射線を直接デジタルデータに変換するFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器42と、センサ面42Aの天板23側に配置され、放射線が乳房Nを透過した際に発生する当該放射線の散乱成分を除去するグリッド40と、センサ面42Aと並んだ平面内でグリッド40を往復移動させる移動機構43と、を備えている。
【0042】
グリッド40は、放射線の吸収率が大きい吸収部(所謂はく)と放射線の吸収率が小さい透過部とが所定のピッチで交互に設けられており、乳房N内で散乱してグリッド40に斜めに入射した放射線を吸収部で吸収することにより散乱線を除去する。
【0043】
放射線照射部24から放射された放射線は、乳房Nを透過しさらにグリッド40を透過して放射線検出器42に到達する。放射線検出器42は、センサ面42Aに放射線に対して感度を有する複数のセンサ部が2次元状に設けられ、当該センサ面42Aで受像された放射線画像を撮像する。
【0044】
移動機構43は、モータが内蔵されており、モータの駆動力によりグリッド40をセンサ面42Aに対して水平方向に往復移動させものとされており、また、グリッド40を往復移動させる周期を変更させることが可能とされている。なお、グリッド40を往復移動させる駆動源としては、圧電素子等の他の駆動手段を用いてもよい。
【0045】
図5には、本実施の形態に係る放射線撮影システム5の詳細な構成を示すブロック図が示されている。
【0046】
放射線撮影システム5は、上述した放射線撮影装置10と、撮影した放射線画像の再構成を行なう画像処理装置50と、再構成した画像のステレオ表示を行なうステレオ表示装置80と、を備えている。
【0047】
放射線撮影装置10は、曝射条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示が入力される操作パネル44と、装置全体の動作を制御する撮像装置制御部46と、LAN等のネットワーク56に接続され、当該ネットワーク56に接続された他の機器との間で各種情報を送受信する通信I/F部48と、さらにを備えている。
【0048】
撮像装置制御部46は、CPU、ROM及びRAMを含むメモリ、HDDやフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部を備えている。撮像装置制御部46は、放射線照射部24、放射線検出器42、移動機構43、操作パネル44、及び通信I/F部48と接続されている。従って、撮像装置制御部46は、放射線照射部24からの放射線の放射の制御と、放射線検出器42の撮影動作の制御と、移動機構43を介したグリッド40の往復移動の動作の制御と、通信I/F部48を介した他の機器との各種情報を送受信の制御を各々行える。また、撮像装置制御部46は、操作パネル44に対して入力された操作指示の把握することができる。
【0049】
操作パネル44で指定される曝射条件には、管電圧、管電流、照射時間等の情報が含まれており、姿勢情報には、撮影姿勢がCC撮影かMLO撮影かを表す情報が含まれている。なお、この曝射条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示は、他の制御装置から得るようにしてもよい。
【0050】
一方、画像処理装置50は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや各種情報等を表示するディスプレイ52と、複数のキーを含んで構成され、各種情報や操作指示が入力される操作入力部54と、を備えている。
【0051】
また、画像処理装置50は、装置全体の動作を司るCPU60と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM62と、各種データを一時的に記憶するRAM64と、各種データを記憶して保持するHDD66と、ディスプレイ52への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ68と、操作入力部54に対する操作状態を検出する操作入力検出部70と、ネットワーク56を介して放射線撮影装置10に接続され、放射線撮影装置10との間で各種情報の送受信を行う通信I/F部72と、ディスプレイケーブル58を介してステレオ表示装置80に対して画像信号を出力する画像信号出力部74と、を備えている。
【0052】
CPU60、ROM62、RAM64、HDD66、ディスプレイドライバ68、操作入力検出部70、通信I/F部72、及び画像信号出力部74は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU60は、ROM62、RAM64、HDD66へのアクセスを行うことができる。また、CPU60は、ディスプレイドライバ68を介したディスプレイ52への各種情報の表示の制御、通信I/F部72を介した放射線撮影装置10との各種情報の送受信の制御、及び画像信号出力部74を介したステレオ表示装置80に表示される画像の制御、を行うことができる。さらに、CPU60は、操作入力検出部70を介して操作入力部54に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0053】
図6には、本実施の形態に係るステレオ表示装置80の構成の一例が示されている。
【0054】
同図に示すように、ステレオ表示装置80は、2つの表示部82が上下に並んで配置されており、上側に表示部82が前方に傾斜させて固定されている。2つの表示部82は、表示光の偏光方向が直交しており、上側の表示部82が右目用の画像を表示する表示部82Rとされ、下側の表示部82が左目用の画像を表示する表示部82Lとされている。この表示部82L、82Rの間には、表示部82Lからの表示光を透過し、表示部82Rからの表示光を反射するビームスプリッターミラー84が設けられている。ビームスプリッターミラー84は、医師などの読影者が正面からステレオ表示装置80を見た際に、表示部82Lに表示される画像と表示部82Rに表示される画像が重なるように角度が調整されて固定されている。
【0055】
読影者は、図7に示すように、右のレンズと左のレンズで偏光方向を直交させた偏光メガネ85をかけてステレオ表示装置80を見ることにより、右目と左目で表示部82Lに表示された画像と表示部82Rに表示された画像を別々に見ることができる。
【0056】
次に、本実施の形態に係る放射線撮影システム5の作用について説明する。
【0057】
放射線画像のステレオ撮影を行なう場合、放射線撮影装置10は、操作パネル44に対して曝射条件や姿勢情報が入力される。
【0058】
放射線撮影装置10は、姿勢情報で指定された撮影姿勢がCC撮影の場合、図2に示すように、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢を調整すると共に放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢を調整し、姿勢情報で指定された撮影姿勢がMLO撮影の場合、図3に示すように、撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に保持部28の姿勢を調整すると共に放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢を調整する。
【0059】
放射線撮影装置10では、各被験者Wの左右の乳房Nに対して個別にステレオ撮影を行う。
【0060】
被験者Wは、撮影を行う際、放射線撮影装置10の撮影面20に左右何れか一方の乳房Nを当接させる。放射線撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して圧迫開始の操作指示が行なわれると、圧迫板26が撮影面20に向けて移動する。圧迫板26が乳房Nに当接して更に押圧し、圧迫板26の押圧力が設定押圧力に到達すると、撮像装置制御部46の制御により圧迫板26の移動が停止する。
【0061】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して曝射開始の操作指示が行なわれると、移動機構43によりグリッド40を往復移動させ、図8に示すように、右乳房の場合と左乳房の場合で支持部29のみを同じ方向へ回動させて撮影面20に対して正対する正面方向となる位置25A及び当該正面方向に対して所定角度(例えば、−4°)の位置25Bで個別に放射線照射部24の放射線源30から放射線を個別に照射する。この所定角度は、固定値としてもよく、また、例えば、撮影対象部位や観察する病変部、撮影対象部位の厚さなど応じて変更するようにしてもよい。放射線照射部24から個別に照射された放射線は、それぞれ乳房Nを透過した後に放射線検出器42に到達する。
【0062】
放射線検出器42は、放射線が照射されると、照射された放射線画像を示す画像情報をそれぞれ撮像装置制御部46へ出力する。
【0063】
放射線撮影装置10では、被験者Wの左右何れか一方の乳房Nに対する撮影が完了すると他方の乳房Nに対しても同様のステレオ撮影を行う。以下、右乳房及び左乳房を撮影対象としてそれぞれ撮影された4つの放射線画像を区別する場合、図9に示すように、左乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第1放射線画像と称し、左乳房に対して位置25Bから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第2放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第3放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Bから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第4放射線画像と称する。各放射線画像に付された「L」「R」は撮影時の画像の左(L)及び右(R)を表わしている。本実施の形態では、第1放射線画像及び第3放射線画像は正面方向から放射線が照射されているため第2放射線画像及び第4放射線画像よりも画質がよい。
【0064】
撮像装置制御部46は、被験者W毎に、左右の乳房Nでそれぞれ撮影された計4つの放射線画像(第1〜第4放射線画像)を示す画像情報を通信により画像処理装置50へ送信する。
【0065】
画像処理装置50は、通信I/F部72で受信された画像情報に対してシェーディング補正などの各種の画像補正処理を行ない、補正後の画像情報を被験者Wに対する1回の撮影で得られた撮影情報としてHDD66に記憶する。
【0066】
画像処理装置50は、左右の乳房を比較するため、左右の乳房の放射線画像を胸壁側が向かい合うように並べてステレオ表示装置80に並列表示させることが可能とされている。画像処理装置50は、操作入力部54に対して左右の乳房の並列表示を指示する所定の操作指示が行なわれると、左右の乳房の放射線画像を胸壁側が向かい合うように合成する画像合成処理を行ない、ステレオ表示装置80に合成されたステレオ画像を表示させる。
【0067】
図10には本実施の形態に係るCPU60により実行される画像合成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM62の所定の領域に予め記憶されている。
【0068】
同図のステップS10では、HDD66に撮影情報として記憶された被験者Wの右乳房又は左乳房の何れか一方の2つ放射線画像(第1、第2放射線画像又は第3、第4放射線画像)を180度回転させる。
【0069】
次のステップS12では、上記ステップS10で回転させた2つ放射線画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にする。
【0070】
次のステップS14では、上記ステップS12で左右を反転させた一方の乳房の2つの放射線画像と他方の乳房の2つの放射線画像をそれぞれ胸側の辺を合わせて合成し、合成された合成画像をステレオ表示し、処理終了する。
【0071】
これにより、医師などの読影者は、放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる 図11には本実施の形態に係る画像合成処理の流れが模式に示されている。
【0072】
図11では、右乳房の第3、第4放射線画像を180度回転させている。
【0073】
ここで、180度回転させた第3放射線画像を第1放射線画像と合成し、第4放射線画像を第2放射線画像と合成した場合、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が逆となってしまう。
【0074】
そこで、上記ステップS12において、右乳房の2つの放射線画像(第3放射線画像、第4放射線画像)を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にする。
【0075】
これにより、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が同じとなる。
【0076】
読影者は、偏光メガネ85をかけてステレオ表示装置80を見ることにより、右乳房と左乳房の比較を立体視で行うことができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態によれば、ステレオ撮影を行う場合、撮影面20に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線を照射して放射線画像をそれぞれ撮影したので、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合に正面方向から撮影された放射線画像で画質が劣化が少ないため、立体視した際の画質の劣化を抑えつつ左右の乳房Nを立体視で観察することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成したので、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が同じとなるため、右乳房と左乳房の比較が行い易くなる。
【0079】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0080】
第2の実施の形態に係る放射線撮影装置10、放射線撮影システム5の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜7参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、図12に示すように、右乳房の場合と左乳房の場合で支持部29を逆方向へ回動させて、左乳房の場合は撮影面20に対して正対する正面方向となる位置25A及び当該正面方向に対して所定角度(例えば、−4°)の位置25Bで個別に放射線照射部24の放射線源30から放射線を個別に照射し、右乳房の場合は位置25A及び当該正面方向に対して右乳房の場合と反対に所定角度(例えば、+4°)の位置25Cで個別に放射線照射部24の放射線源30から放射線を個別に照射する。以下、右乳房及び左乳房を撮影対象としてそれぞれ撮影された4つの放射線画像を区別する場合、図13に示すように、左乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第1放射線画像と称し、左乳房に対して位置25Bから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第2放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Cから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第3放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第4放射線画像と称する。各放射線画像に付された「L」「R」は撮影時の画像の左(L)及び右(R)を表わしている。本実施の形態では、第1放射線画像及び第4放射線画像は正面方向から放射線が照射されているため第2放射線画像及び第3放射線画像よりも画質がよい。
【0082】
このように左右の乳房Nでそれぞれ撮影された計4つの放射線画像(第1〜第4放射線画像)に対して第1の実施の形態と同様の画像合成処理を行なった場合、ステレオ表示装置80に合成されたステレオ画像を表示させる。
【0083】
画像処理装置50は、操作入力部54に対して左右の乳房の並列表示を指示する所定の操作指示が行なわれると、このように撮影された左右の乳房の放射線画像に対して第1の実施の形態の画像合成処理を行ない、ステレオ表示装置80に合成されたステレオ画像を表示させる。
【0084】
図14には本実施の形態に係る画像合成処理の流れが模式に示されている。
【0085】
図14では、右乳房の第3、第4放射線画像を180度回転させ、さらに、第3、第4放射線画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にする。
【0086】
これにより、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が同じとなる。
【0087】
また、本実施の形態では、正面方向から放射線が照射された第1放射線画像及び第4放射線画像が合成され、正面方向に対して所定角度で放射線が照射された第2放射線画像及び第3放射線画像が合成される。
【0088】
以上のように、本実施の形態によれば、右乳房を撮影する際と左乳房を撮影する際で前記所定角度を正面方向に対して対称としたので、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成した際に、正面方向から放射線が照射されて撮影された放射線画像(第1放射線画像及び第4放射線画像)同士がを合成されるため、合成画像内での放射線画像の画質の差が感じづらくなる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、マンモグラフィにより撮影された放射線画像に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、2つの表示部82が上下に並んで配置されたステレオ表示装置80を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、奇数ラインと偶数ラインで表示光の偏光方向が直交した1つの表示部の奇数ラインと偶数ラインに右目用の画像と左目用の画像を別々に表示するようにしてもよい。また、右目用の画像と左目用の画像で表示する色を変え、右のレンズと左のレンズで別々の色を透過するメガネを用いて立体視するようにしてもよい。また、1つの表示部に右目用の画像と左目用の画像を交互に時分割で表示し、表示部の時分割の表示に合わせて右のレンズと左のレンズを交互に遮蔽するメガネを用いて立体視するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、放射線検出器42によって放射線画像を示すデジタルの画像情報を直接得る場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、イメージングプレートやX線フィルム等を内蔵したカセットなどに放射線を照射し、カセットに内蔵されたイメージングプレートやX線フィルムを読み取ることにより、デジタルの画像情報を得るようにしてもよい。
【0092】
その他、上記実施の形態で説明した放射線撮影システム5、放射線撮影装置10、画像処理装置50、及びステレオ表示装置80の構成(図1〜5参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0093】
また、上記実施の形態で説明した画像合成処理プログラムの処理の流れ(図10参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
5 放射線撮影システム
10 撮像装置
24 放射線照射部
20 撮影面
29 支持部(移動手段)
30 放射線源
42 放射線検出器(生成手段)
46 撮像装置制御部(撮影制御手段)
50 画像処理装置
54 操作入力部(受付手段)
60 CPU(表示制御手段)
80 ステレオ表示装置(表示手段)
82、82L、82R 表示部
N 乳房(撮影対象部位)
W 被験者
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、及び放射線撮影システムに係り、特にステレオ撮影を行う放射線撮影装置、及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行なう放射線撮影装置が知られている。この種の放射線撮影装置として、例えば、乳がんの早期発見などを目的として被験者の乳房を撮影するマンモグラフィが挙げられる。
【0003】
このマンモグラフィを用いた検診では、被験者の左右の乳房をそれぞれ個別に撮影する。読影者は、撮影された左右の乳房の放射線画像を胸壁側が向かい合うように並べて表示させ、左右の乳房を比較するのが一般的である。特許文献1には、左右の乳房の放射線画像の一方を180度回転させて左右の乳房の放射線画像を胸側の辺を合わせて合成し、合成された合成画像を表示する技術が開示されている。
【0004】
ところで、放射線撮影装置による撮影によって得られる放射線画像は、2次元画像であるため、病変等の立体的分布が判断しずらい。
【0005】
そこで、診断精度を向上させる技術として被験者の撮影対象部位に対して所定の視差角で放射線を2回照射して放射線画像を撮影するステレオ撮影を行い、撮影された2つの放射線画像を読影者の右目と左目で個別に視認させて立体視を行う方法が提案されている。
【0006】
ところで、ステレオ撮影によって撮影された2つの放射線画像は、画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にしたり、2つの放射線画像でそれぞれ左右を反転させたり、2つの放射線画像をそれぞれ180度回転させることより、立体視される画像の突出方向が反転し、逆方向から視認しているように見える。
【0007】
このため、マンモグラフィにおいて左右の乳房に対してそれぞれステレオ撮影を行って右乳房と左乳房でそれぞれ2つの放射線画像を撮影し、撮影された左右の乳房の放射線画像を比較しながら立体視で検査するため、右乳房又は左乳房の何れか一方の2つの放射線画像を180度回転させて他方の2つの放射線画像とそれぞれ合成した場合、一方を180度回転させたことにより、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が逆となってしまう。
【0008】
この問題を解決する技術として、特許文献2には、表示される画像の左右方向を反転させた場合、これに連動させて左右の画像を互いに入れ替えて常に適切な奥行き感を持たせる技術が開示されている。
【0009】
この特許文献2に記載された技術を用いて、胸側を合わせるために右乳房又は左乳房の何れか一方の2つの放射線画像を180度回転させると共に、2つの放射線画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にしたり、2つの放射線画像で左右を反転させることによって立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向を一致させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−97830号公報
【特許文献2】特開平10−80418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ステレオ撮影する際に、放射線画像を撮影する撮影面に対して放射線源を傾けた場合、撮影面に対して放射線が傾斜して入射し、撮影面に対して放射線を垂直方向から入射させた場合に比べて撮影される放射線画像の画質が劣化する。特に撮影面にグリッドが設けられている場合、傾斜して入射した放射線がグリッドによりけられてしまい、撮影される放射線画像の画質が低下する。
【0012】
このため、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合、画質が劣化する。
【0013】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合の画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる放射線撮影装置、及び放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の放射線撮影装置は、撮影対象部位を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段と、前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源と、前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段と、ステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して前記正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段と、を備えている。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、生成手段により、撮影対象部位を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像がそれぞれ撮影され、当該撮影された放射線画像を示す画像情報がそれぞれ生成され、移動手段により、撮影面に対して放射線を照射する放射線源が撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように移動される。
【0016】
そして、本発明によれば、撮影制御手段により、ステレオ撮影を行う場合、撮影面に対して正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段が制御される。
【0017】
このように、請求項1に記載の発明によれば、ステレオ撮影を行う場合、撮影面に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線を照射して放射線画像をそれぞれ撮影するので、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合に画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる。
【0018】
なお、請求項1記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、前記撮影対象部位を、乳房とし、前記撮影制御手段が、右乳房及び左乳房のステレオ撮影を行う場合、それぞれ前記撮影面に対して正面方向及び前記所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御し、右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示手段に、右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段をさらに備えてもよい。
【0019】
また、請求項2記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記撮影制御手段が、右乳房を撮影する際と左乳房を撮影する際で前記所定角度を前記正面方向に対して逆方向としてもよい。
【0020】
また、請求項2又は請求項3記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記表示制御手段が、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成した合成画像が表示されるように制御してもよい。
【0021】
一方、請求項5に記載の発明の放射線撮影システムは、右乳房又は左乳房を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段、前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源、前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段、及びステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段を有する放射線撮影装置と、右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示装置と、右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段と、を備えている。
【0022】
よって、請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明と同様に作用するので、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合の画質の劣化を抑えつつ右乳房及び左乳房を立体視で観察することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合に画質の劣化を抑えつつ撮影対象部位を立体視で観察することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係る撮像装置の構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る撮像装置のCC撮影時における構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る撮像装置のMLO撮影時における構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態に係る撮影台の概略構成を示す構成図である。
【図5】実施の形態に係る放射線撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態に係るステレオ表示装置の構成を示す斜視図である。
【図7】実施の形態に係るステレオ表示装置の画像を立体視する場合を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係るステレオ撮影を行う際の放射線照射部の位置を示す図である。
【図9】第1の実施の形態に係る右乳房及び左乳房をステレオ撮影する際の放射線照射部の位置と放射線画像の関係を示す図である。
【図10】実施の形態に係る画像合成処理プログラムの処理の流れ示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態に係る画像合成処理の流れ示す模式図である。
【図12】第2の実施の形態に係るステレオ撮影を行う際の放射線照射部の位置を示す図である。
【図13】第2の実施の形態に係る右乳房及び左乳房をステレオ撮影する際の放射線照射部の位置と放射線画像の関係を示す図である。
【図14】第2の実施の形態に係る画像合成処理の流れ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を乳房のステレオ撮影を行い、撮影した放射線画像のステレオ表示を行なう放射線撮影システムに適用した場合について説明する。
【0026】
最初に、図1〜図3を参照して放射線画像を撮影する放射線撮影装置10について説明する。
【0027】
本実施の形態に係る放射線撮影装置10は、被験者が立った立位状態において、その被験者Wの乳房Nを放射線(例えば、X線)により撮影する装置であり、例えば、マンモグラフィと称される。なお、以下では、撮影の際に放射線撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wに近い手前側を放射線撮影装置10の装置前方側とし、放射線撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wから離れた奥側を放射線撮影装置10の装置後方側とし、放射線撮影装置10に被験者Wが対面した場合の被験者Wの左右方向を放射線撮影装置10の装置左右方向として説明する(図2の矢印参照)。
【0028】
放射線撮影装置10は、図1に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状(コの字状)の測定部12と、測定部12を装置後方側から支える基台部14と、を備えている。
【0029】
測定部12は、図1及び図2に示すように、立位状態にある被験者Wの乳房Nに当接する平面状の撮影面20が形成された撮影台22と、乳房Nを撮影面20に押し付ける圧迫板26と、撮影台22と圧迫板26とを保持する保持部28と、を備えている。
【0030】
また、測定部12は、管球などの放射線源30(図5参照。)が設けられその放射線源30から撮影面20に向けて放射線を照射する放射線照射部24と、保持部28とは分離され放射線照射部24を支持する支持部29とを備えている。
【0031】
測定部12には、基台部14に回動可能に支えられている回動軸16が設けられている。回動軸16は、支持部29に対して固定されており、回動軸16と支持部29は一体に回動するようになっている。
【0032】
保持部28に対しては、回動軸16が連結されて一体に回動する状態と、回動軸16が分離されて空転する状態とに切り替え可能とされている。具体的には、回動軸16及び保持部28にそれぞれギアが設けられ、このギア同士の噛合状態・非噛合状態を切替えるようになっている。
【0033】
なお、回動軸16の回動力の伝達・非伝達の切替えは、種々の機械要素を用いることができる。
【0034】
保持部28は、撮影面20と放射線照射部24とが所定間隔離れるように撮影台22と放射線照射部24とを保持するとともに、圧迫板26と撮影面20との間隔が可変であるように圧迫板26をスライド移動可能に保持している。
【0035】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、少なくとも、乳房NをCC撮影(頭尾方向の撮影)とMLO撮影(内外斜位方向の撮影)との両者を行うことができる装置とされている。図1及び図2は、CC撮影時における放射線撮影装置10の姿勢を示し、図3は、撮影装置のMLO撮影時における放射線撮影装置10の姿勢を示している。
【0036】
図1に示すように、CC撮影時においては、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢が調整されると共に、放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被験者Wの頭側から足側に向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、CC撮影(頭尾方向の撮影)がなされる。
【0037】
また、MLO撮影時では、図3に示すように、一般的に、CC撮影時に比べて撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に保持部28の姿勢が調整され、撮影台22の装置前方側の側壁角部22Aに被験者Wの腋窩を当てるようにポジショニングされる。これにより、被験者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線照射部24から乳房Nへ放射線が照射されて、MLO撮影(内外斜位方向の撮影)がなされる。
【0038】
放射線撮影装置10では、図2、図3に示すように、ステレオ撮影を行う場合、保持部28に対して回動軸16が空転して撮影台22と圧迫板26が動かず、支持部29が回動することにより放射線照射部24のみが円弧状に移動する。
【0039】
このように、放射線照射部24のみを回動させることにより、撮影面20に対して様々な角度に放射線照射部24を位置させることが可能となり、撮影面20に対して正対する正面方向を含む様々な方向から放射線を照射することができる。
【0040】
図4には、本実施の形態に係る撮影台22の概略構成が示されている。
【0041】
同図に示すように、撮影台22は、撮影の際に乳房Nが配置される撮影面20が形成された天板23と、天板23と対向するようにセンサ面42Aが配置され、当該センサ面42Aで受像された放射線を直接デジタルデータに変換するFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器42と、センサ面42Aの天板23側に配置され、放射線が乳房Nを透過した際に発生する当該放射線の散乱成分を除去するグリッド40と、センサ面42Aと並んだ平面内でグリッド40を往復移動させる移動機構43と、を備えている。
【0042】
グリッド40は、放射線の吸収率が大きい吸収部(所謂はく)と放射線の吸収率が小さい透過部とが所定のピッチで交互に設けられており、乳房N内で散乱してグリッド40に斜めに入射した放射線を吸収部で吸収することにより散乱線を除去する。
【0043】
放射線照射部24から放射された放射線は、乳房Nを透過しさらにグリッド40を透過して放射線検出器42に到達する。放射線検出器42は、センサ面42Aに放射線に対して感度を有する複数のセンサ部が2次元状に設けられ、当該センサ面42Aで受像された放射線画像を撮像する。
【0044】
移動機構43は、モータが内蔵されており、モータの駆動力によりグリッド40をセンサ面42Aに対して水平方向に往復移動させものとされており、また、グリッド40を往復移動させる周期を変更させることが可能とされている。なお、グリッド40を往復移動させる駆動源としては、圧電素子等の他の駆動手段を用いてもよい。
【0045】
図5には、本実施の形態に係る放射線撮影システム5の詳細な構成を示すブロック図が示されている。
【0046】
放射線撮影システム5は、上述した放射線撮影装置10と、撮影した放射線画像の再構成を行なう画像処理装置50と、再構成した画像のステレオ表示を行なうステレオ表示装置80と、を備えている。
【0047】
放射線撮影装置10は、曝射条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示が入力される操作パネル44と、装置全体の動作を制御する撮像装置制御部46と、LAN等のネットワーク56に接続され、当該ネットワーク56に接続された他の機器との間で各種情報を送受信する通信I/F部48と、さらにを備えている。
【0048】
撮像装置制御部46は、CPU、ROM及びRAMを含むメモリ、HDDやフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部を備えている。撮像装置制御部46は、放射線照射部24、放射線検出器42、移動機構43、操作パネル44、及び通信I/F部48と接続されている。従って、撮像装置制御部46は、放射線照射部24からの放射線の放射の制御と、放射線検出器42の撮影動作の制御と、移動機構43を介したグリッド40の往復移動の動作の制御と、通信I/F部48を介した他の機器との各種情報を送受信の制御を各々行える。また、撮像装置制御部46は、操作パネル44に対して入力された操作指示の把握することができる。
【0049】
操作パネル44で指定される曝射条件には、管電圧、管電流、照射時間等の情報が含まれており、姿勢情報には、撮影姿勢がCC撮影かMLO撮影かを表す情報が含まれている。なお、この曝射条件、姿勢情報などの各種の操作情報や各種の操作指示は、他の制御装置から得るようにしてもよい。
【0050】
一方、画像処理装置50は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや各種情報等を表示するディスプレイ52と、複数のキーを含んで構成され、各種情報や操作指示が入力される操作入力部54と、を備えている。
【0051】
また、画像処理装置50は、装置全体の動作を司るCPU60と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM62と、各種データを一時的に記憶するRAM64と、各種データを記憶して保持するHDD66と、ディスプレイ52への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ68と、操作入力部54に対する操作状態を検出する操作入力検出部70と、ネットワーク56を介して放射線撮影装置10に接続され、放射線撮影装置10との間で各種情報の送受信を行う通信I/F部72と、ディスプレイケーブル58を介してステレオ表示装置80に対して画像信号を出力する画像信号出力部74と、を備えている。
【0052】
CPU60、ROM62、RAM64、HDD66、ディスプレイドライバ68、操作入力検出部70、通信I/F部72、及び画像信号出力部74は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU60は、ROM62、RAM64、HDD66へのアクセスを行うことができる。また、CPU60は、ディスプレイドライバ68を介したディスプレイ52への各種情報の表示の制御、通信I/F部72を介した放射線撮影装置10との各種情報の送受信の制御、及び画像信号出力部74を介したステレオ表示装置80に表示される画像の制御、を行うことができる。さらに、CPU60は、操作入力検出部70を介して操作入力部54に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0053】
図6には、本実施の形態に係るステレオ表示装置80の構成の一例が示されている。
【0054】
同図に示すように、ステレオ表示装置80は、2つの表示部82が上下に並んで配置されており、上側に表示部82が前方に傾斜させて固定されている。2つの表示部82は、表示光の偏光方向が直交しており、上側の表示部82が右目用の画像を表示する表示部82Rとされ、下側の表示部82が左目用の画像を表示する表示部82Lとされている。この表示部82L、82Rの間には、表示部82Lからの表示光を透過し、表示部82Rからの表示光を反射するビームスプリッターミラー84が設けられている。ビームスプリッターミラー84は、医師などの読影者が正面からステレオ表示装置80を見た際に、表示部82Lに表示される画像と表示部82Rに表示される画像が重なるように角度が調整されて固定されている。
【0055】
読影者は、図7に示すように、右のレンズと左のレンズで偏光方向を直交させた偏光メガネ85をかけてステレオ表示装置80を見ることにより、右目と左目で表示部82Lに表示された画像と表示部82Rに表示された画像を別々に見ることができる。
【0056】
次に、本実施の形態に係る放射線撮影システム5の作用について説明する。
【0057】
放射線画像のステレオ撮影を行なう場合、放射線撮影装置10は、操作パネル44に対して曝射条件や姿勢情報が入力される。
【0058】
放射線撮影装置10は、姿勢情報で指定された撮影姿勢がCC撮影の場合、図2に示すように、撮影面20が上方を向いた状態に保持部28の姿勢を調整すると共に放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢を調整し、姿勢情報で指定された撮影姿勢がMLO撮影の場合、図3に示すように、撮影台22を45°以上90°未満回転させた状態に保持部28の姿勢を調整すると共に放射線照射部24が撮影面20に対して上方に位置する状態に支持部29の姿勢を調整する。
【0059】
放射線撮影装置10では、各被験者Wの左右の乳房Nに対して個別にステレオ撮影を行う。
【0060】
被験者Wは、撮影を行う際、放射線撮影装置10の撮影面20に左右何れか一方の乳房Nを当接させる。放射線撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して圧迫開始の操作指示が行なわれると、圧迫板26が撮影面20に向けて移動する。圧迫板26が乳房Nに当接して更に押圧し、圧迫板26の押圧力が設定押圧力に到達すると、撮像装置制御部46の制御により圧迫板26の移動が停止する。
【0061】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、この状態で操作パネル44に対して曝射開始の操作指示が行なわれると、移動機構43によりグリッド40を往復移動させ、図8に示すように、右乳房の場合と左乳房の場合で支持部29のみを同じ方向へ回動させて撮影面20に対して正対する正面方向となる位置25A及び当該正面方向に対して所定角度(例えば、−4°)の位置25Bで個別に放射線照射部24の放射線源30から放射線を個別に照射する。この所定角度は、固定値としてもよく、また、例えば、撮影対象部位や観察する病変部、撮影対象部位の厚さなど応じて変更するようにしてもよい。放射線照射部24から個別に照射された放射線は、それぞれ乳房Nを透過した後に放射線検出器42に到達する。
【0062】
放射線検出器42は、放射線が照射されると、照射された放射線画像を示す画像情報をそれぞれ撮像装置制御部46へ出力する。
【0063】
放射線撮影装置10では、被験者Wの左右何れか一方の乳房Nに対する撮影が完了すると他方の乳房Nに対しても同様のステレオ撮影を行う。以下、右乳房及び左乳房を撮影対象としてそれぞれ撮影された4つの放射線画像を区別する場合、図9に示すように、左乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第1放射線画像と称し、左乳房に対して位置25Bから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第2放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第3放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Bから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第4放射線画像と称する。各放射線画像に付された「L」「R」は撮影時の画像の左(L)及び右(R)を表わしている。本実施の形態では、第1放射線画像及び第3放射線画像は正面方向から放射線が照射されているため第2放射線画像及び第4放射線画像よりも画質がよい。
【0064】
撮像装置制御部46は、被験者W毎に、左右の乳房Nでそれぞれ撮影された計4つの放射線画像(第1〜第4放射線画像)を示す画像情報を通信により画像処理装置50へ送信する。
【0065】
画像処理装置50は、通信I/F部72で受信された画像情報に対してシェーディング補正などの各種の画像補正処理を行ない、補正後の画像情報を被験者Wに対する1回の撮影で得られた撮影情報としてHDD66に記憶する。
【0066】
画像処理装置50は、左右の乳房を比較するため、左右の乳房の放射線画像を胸壁側が向かい合うように並べてステレオ表示装置80に並列表示させることが可能とされている。画像処理装置50は、操作入力部54に対して左右の乳房の並列表示を指示する所定の操作指示が行なわれると、左右の乳房の放射線画像を胸壁側が向かい合うように合成する画像合成処理を行ない、ステレオ表示装置80に合成されたステレオ画像を表示させる。
【0067】
図10には本実施の形態に係るCPU60により実行される画像合成処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM62の所定の領域に予め記憶されている。
【0068】
同図のステップS10では、HDD66に撮影情報として記憶された被験者Wの右乳房又は左乳房の何れか一方の2つ放射線画像(第1、第2放射線画像又は第3、第4放射線画像)を180度回転させる。
【0069】
次のステップS12では、上記ステップS10で回転させた2つ放射線画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にする。
【0070】
次のステップS14では、上記ステップS12で左右を反転させた一方の乳房の2つの放射線画像と他方の乳房の2つの放射線画像をそれぞれ胸側の辺を合わせて合成し、合成された合成画像をステレオ表示し、処理終了する。
【0071】
これにより、医師などの読影者は、放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる 図11には本実施の形態に係る画像合成処理の流れが模式に示されている。
【0072】
図11では、右乳房の第3、第4放射線画像を180度回転させている。
【0073】
ここで、180度回転させた第3放射線画像を第1放射線画像と合成し、第4放射線画像を第2放射線画像と合成した場合、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が逆となってしまう。
【0074】
そこで、上記ステップS12において、右乳房の2つの放射線画像(第3放射線画像、第4放射線画像)を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にする。
【0075】
これにより、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が同じとなる。
【0076】
読影者は、偏光メガネ85をかけてステレオ表示装置80を見ることにより、右乳房と左乳房の比較を立体視で行うことができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態によれば、ステレオ撮影を行う場合、撮影面20に対して正対する正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線を照射して放射線画像をそれぞれ撮影したので、ステレオ撮影された放射線画像を立体視した場合に正面方向から撮影された放射線画像で画質が劣化が少ないため、立体視した際の画質の劣化を抑えつつ左右の乳房Nを立体視で観察することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成したので、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が同じとなるため、右乳房と左乳房の比較が行い易くなる。
【0079】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0080】
第2の実施の形態に係る放射線撮影装置10、放射線撮影システム5の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜7参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、図12に示すように、右乳房の場合と左乳房の場合で支持部29を逆方向へ回動させて、左乳房の場合は撮影面20に対して正対する正面方向となる位置25A及び当該正面方向に対して所定角度(例えば、−4°)の位置25Bで個別に放射線照射部24の放射線源30から放射線を個別に照射し、右乳房の場合は位置25A及び当該正面方向に対して右乳房の場合と反対に所定角度(例えば、+4°)の位置25Cで個別に放射線照射部24の放射線源30から放射線を個別に照射する。以下、右乳房及び左乳房を撮影対象としてそれぞれ撮影された4つの放射線画像を区別する場合、図13に示すように、左乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第1放射線画像と称し、左乳房に対して位置25Bから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第2放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Cから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第3放射線画像と称し、右乳房に対して位置25Aから放射線が照射されて撮影された放射線画像を第4放射線画像と称する。各放射線画像に付された「L」「R」は撮影時の画像の左(L)及び右(R)を表わしている。本実施の形態では、第1放射線画像及び第4放射線画像は正面方向から放射線が照射されているため第2放射線画像及び第3放射線画像よりも画質がよい。
【0082】
このように左右の乳房Nでそれぞれ撮影された計4つの放射線画像(第1〜第4放射線画像)に対して第1の実施の形態と同様の画像合成処理を行なった場合、ステレオ表示装置80に合成されたステレオ画像を表示させる。
【0083】
画像処理装置50は、操作入力部54に対して左右の乳房の並列表示を指示する所定の操作指示が行なわれると、このように撮影された左右の乳房の放射線画像に対して第1の実施の形態の画像合成処理を行ない、ステレオ表示装置80に合成されたステレオ画像を表示させる。
【0084】
図14には本実施の形態に係る画像合成処理の流れが模式に示されている。
【0085】
図14では、右乳房の第3、第4放射線画像を180度回転させ、さらに、第3、第4放射線画像を互いに入れ替えて右目と左目で視認する画像を逆にする。
【0086】
これにより、立体視される画像で右乳房と左乳房の突出方向が同じとなる。
【0087】
また、本実施の形態では、正面方向から放射線が照射された第1放射線画像及び第4放射線画像が合成され、正面方向に対して所定角度で放射線が照射された第2放射線画像及び第3放射線画像が合成される。
【0088】
以上のように、本実施の形態によれば、右乳房を撮影する際と左乳房を撮影する際で前記所定角度を正面方向に対して対称としたので、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成した際に、正面方向から放射線が照射されて撮影された放射線画像(第1放射線画像及び第4放射線画像)同士がを合成されるため、合成画像内での放射線画像の画質の差が感じづらくなる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、マンモグラフィにより撮影された放射線画像に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、2つの表示部82が上下に並んで配置されたステレオ表示装置80を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、奇数ラインと偶数ラインで表示光の偏光方向が直交した1つの表示部の奇数ラインと偶数ラインに右目用の画像と左目用の画像を別々に表示するようにしてもよい。また、右目用の画像と左目用の画像で表示する色を変え、右のレンズと左のレンズで別々の色を透過するメガネを用いて立体視するようにしてもよい。また、1つの表示部に右目用の画像と左目用の画像を交互に時分割で表示し、表示部の時分割の表示に合わせて右のレンズと左のレンズを交互に遮蔽するメガネを用いて立体視するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、放射線検出器42によって放射線画像を示すデジタルの画像情報を直接得る場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、イメージングプレートやX線フィルム等を内蔵したカセットなどに放射線を照射し、カセットに内蔵されたイメージングプレートやX線フィルムを読み取ることにより、デジタルの画像情報を得るようにしてもよい。
【0092】
その他、上記実施の形態で説明した放射線撮影システム5、放射線撮影装置10、画像処理装置50、及びステレオ表示装置80の構成(図1〜5参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0093】
また、上記実施の形態で説明した画像合成処理プログラムの処理の流れ(図10参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
5 放射線撮影システム
10 撮像装置
24 放射線照射部
20 撮影面
29 支持部(移動手段)
30 放射線源
42 放射線検出器(生成手段)
46 撮像装置制御部(撮影制御手段)
50 画像処理装置
54 操作入力部(受付手段)
60 CPU(表示制御手段)
80 ステレオ表示装置(表示手段)
82、82L、82R 表示部
N 乳房(撮影対象部位)
W 被験者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象部位を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段と、
前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段と、
ステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して前記正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影対象部位を、乳房とし、
前記撮影制御手段は、右乳房及び左乳房のステレオ撮影を行う場合、それぞれ前記撮影面に対して正面方向及び前記所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御し、
右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示手段に、右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段をさらに備えた請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影制御手段は、右乳房を撮影する際と左乳房を撮影する際で前記所定角度を前記正面方向に対して逆方向とした
請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成した合成画像が表示されるように制御する
請求項2又は請求項3記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
右乳房又は左乳房を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段、前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源、前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段、及びステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して前記正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段を有する放射線撮影装置と、
右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示装置と、
右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段と、
を備えた放射線撮影システム。
【請求項1】
撮影対象部位を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段と、
前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段と、
ステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して前記正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影対象部位を、乳房とし、
前記撮影制御手段は、右乳房及び左乳房のステレオ撮影を行う場合、それぞれ前記撮影面に対して正面方向及び前記所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御し、
右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示手段に、右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段をさらに備えた請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影制御手段は、右乳房を撮影する際と左乳房を撮影する際で前記所定角度を前記正面方向に対して逆方向とした
請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、右乳房又は左乳房の何れか一方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像を180度回転させると共に当該2つの放射線画像を互いに入れ替えて他方の乳房のステレオ撮影された2つの放射線画像とそれぞれ胸側が合うように並べて合成した合成画像が表示されるように制御する
請求項2又は請求項3記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
右乳房又は左乳房を透過して撮影面に個別に照射された放射線により表わされる放射線画像をそれぞれ撮影し、当該撮影した放射線画像を示す画像情報をそれぞれ生成する生成手段、前記撮影面に対して放射線を照射する放射線源、前記放射線源を前記撮影面に対して正対する正面方向を含む異なる方向から放射線の照射が可能なように放射線源を移動させる移動手段、及びステレオ撮影を行う場合、前記撮影面に対して前記正面方向及び当該正面方向に対して所定角度の方向から放射線が照射されるように移動手段を制御する撮影制御手段を有する放射線撮影装置と、
右目と左目で個別に画像を視認させて立体視が可能に表示する表示装置と、
右乳房と左乳房で個別にステレオ撮影された放射線画像を胸側が合うように並べると共に立体視した際に右乳房と左乳房の突出方向を一致させて表示されるように制御する表示制御手段と、
を備えた放射線撮影システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図6】
【公開番号】特開2011−206206(P2011−206206A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76014(P2010−76014)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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