説明

放射線撮影装置、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラム

【課題】二つの光検出器で検出された放射線画像の合成画像の画質を向上させることができる。
【解決手段】放射線検出器12は、被写体を透過した放射線を可視光に変換するシンチレータ層28と、シンチレータ層28により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する光検出器20Aと、シンチレータ層28により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する光検出器20Bと、を備える。光検出器20Aと光検出器20Bとの面方向における位置ずれが解消するように、光検出器20Aから読み出された画像信号と、光検出器20Bから読み出された画像信号と、が合成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線等の放射線を検出し、検出された放射線により表わされる放射線画像を示す電気信号を出力するFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器は、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがある。
【0003】
この放射線検出器を内蔵し、放射線画像を撮影する可搬型放射線撮影装置(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。手術では、患者に対して迅速かつ的確な処置を施すため、撮影後直ちに放射線画像を表示できることが重要である。電子カセッテは、速やかに画像の確認を行うことが可能でき、この要望を満たすことができる。
【0004】
このような放射線検出器を用いて放射線画像を撮影する放射線撮影装置では、放射線検出の感度を高めることが望ましい。
【0005】
このため、特許文献1には、放射線が照射される側に光検出器を配置し、放射線が照射される側とは反対側にシンチレータを配置した放射線画像検出器が記載されている。
【0006】
この放射線画像検出器は、図11(A)に示すように、支持体100及びフォトダイオード102から成る光検出器104が放射線Xの入射側に配置され、シンチレータ106が放射線Xの透過側に配置されている。なお、図11(A)では、発光強度の大きさを判りやすくするため、発光強度マーク108を記載している。同図(B)に示すように、発光強度マーク108の大きさが大きいほど発光強度が大きいことを示す。
【0007】
従来は、図12(A)に示すように、シンチレータ106が放射線Xの入射側に配置されるのが一般的であった。この構成では、シンチレータ106で放射線が減衰して光検出器104で検出されるため、シンチレータ106の放射線入射側の発光強度が大きい光の検出効率が悪いのに対し、図11(A)に示した構成では、シンチレータ106の放射線入射側に光検出器104が配置されているため、放射線入射側の発光強度の大きい光の検出効率は良い。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、シンチレータ106の放射線出射側は光検出器104から遠くなるため、シンチレータ106の放射線出射側の発光強度が小さい光の検出効率は、図12(A)に示した従来構成と同様に悪い、という問題があった。
【0009】
また、特許文献2には、図13に示すように、2つのシンチレータ106A、106B間に2つの光検出器104A、104Bを重ねて配置した放射線画像検出器が記載されている。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、一方のシンチレータ106Aから入射した放射線が2つの光検出器104A、104Bでさらに減衰して他方のシンチレータ106Bに入射するため、他方のシンチレータ106Bにおける光の検出効率が悪い、という問題があった。
【0011】
また、特許文献3には、入射した放射線の強度に応じて光を出力するシンチレータの両面に、入射した光を電気エネルギーに変換する光検出器を各々設けた構成の放射線画像検出器が記載されている。
【0012】
また、特許文献4には、重ね合わせて撮影を行った2枚の蓄積性蛍光体シートにおいて、1枚目の画像の複数の特徴点と2枚目の画像での対応する点の位置を検出して画像の位置合わせを行う放射線画像の位置合わせ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3333278号公報
【特許文献2】特許第3717530号公報
【特許文献3】特開2010−185882号公報
【特許文献4】特開平7−264483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献3に記載された技術では、2つの光検出器に位置ずれがあった場合、2つの光検出器の各々で検出された画像を重ね合わせた場合に、位置ずれにより画質が劣化する場合がある、という問題があった。
【0015】
また、特許文献4に記載された技術では、1枚目の画像の複数の特徴点と2枚目の画像での対応する点の位置を検出する必要があるため、画像処理の負荷が大きく、特徴点の検出が適切でない場合には、重ね合わせた画像の画質が劣化する場合がある、という問題があった。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑み、二つの光検出器で検出された放射線画像の合成画像の画質を向上させることができる放射線撮影装置、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の放射線撮影装置は、被写体を透過した放射線を可視光に変換する波長変換層と、前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第一の光検出器と、前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第二の光検出器と、前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する合成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、第一の光検出器と第二の光検出器との位置ずれが解消するように、第一の光検出器から読み出された画像信号と、第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するので、合成画像の画質を向上させることができる。なお、請求項6に記載したように、前記位置ずれは、面方向の位置ずれとすることができる。
【0019】
なお、請求項2に記載したように、前記波長変換層が、前記第一の光検出器と、前記第二の光検出器と、により挟まれた構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、光の検出効率を向上させることができる。
【0020】
また、請求項3に記載したように、前記合成手段は、予め記憶手段に記憶された前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれ量に基づいて、前記位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する構成としてもよい。
【0021】
また、請求項4に記載したように、前記合成手段は、予め定めた画像を前記第一の光検出器で検出した画像信号と、前記予め定めた画像を前記第二の光検出器で検出した画像信号と、で信号値が異なる画素の位置に基づいて、前記位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する構成としてもよい。
【0022】
また、請求項5に記載したように、前記合成手段は、被写体を撮影したときの、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、のパターン認識結果に基づいて、前記位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するようにしてもよい。
【0023】
また、請求項7に記載したように、前記波長変換層は、CsI:Tl、CsI:Na、及びNaI:Tlの何れかから成る柱状結晶で構成され、前記第一の光検出器及び前記第二の光検出器の一方を支持体として蒸着により形成された構成としてもよい。
【0024】
また、請求項8に記載したように、前記柱状結晶の先端側に、前記第一の光検出器及び前記第二の光検出器の他方が配置され、かつ当該他方の光検出器が前記放射線の入射側に配置された構成としてもよい。
【0025】
また、請求項9に記載したように、前記第一の光検出器は、前記第一の光検出器を駆動するための第一の駆動回路と、前記第一の光検出器から前記画像信号を読み出すための第一の読み出し回路と、を備え、前記第二に光検出器は、前記第二の光検出器を駆動するための第二の駆動回路と、前記第二の光検出器から前記画像信号を読み出すための第二の読み出し回路と、を備え、前記第一の駆動回路及び前記第一の読み出し回路が、前記第二の駆動回路及び前記第二の読み出し回路と対向しないように配置された構成としてもよい。
【0026】
請求項10記載の発明の放射線撮影方法は、被写体を透過した放射線を可視光に変換する波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第一の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第二の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、第一の光検出器と第二の光検出器との位置ずれが解消するように、第一の光検出器から読み出された画像信号と、第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するので、合成画像の画質を向上させることができる。
【0028】
請求項11記載の発明の放射線撮影プログラムは、被写体を透過した放射線を可視光に変換する波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第一の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第二の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させるための放射線撮影プログラムであることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、第一の光検出器と第二の光検出器との位置ずれが解消するように、第一の光検出器から読み出された画像信号と、第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するので、合成画像の画質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の放射線撮影装置は、二つの光検出器で検出された放射線画像の合成画像の画質を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図2】放射線検出器の構成を示した平面図である。
【図3】放射線検出器の構成を示した断面図である。
【図4】放射線検出器の構成を示した断面図である。
【図5】平板状の電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図6】平板状の電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図7】電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】放射線検出器とゲート線ドライバ及び信号処理部との接続構成を示す斜視図である。
【図9】電子カセッテで実行される処理のフローチャートである。
【図10】光検出器の位置ずれについて説明するための図である。
【図11】従来の放射線検出器における発光強度について説明するための図である。
【図12】従来の放射線検出器における発光強度について説明するための図である。
【図13】従来の放射線検出器における発光強度について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0033】
まず、本実施の形態に係る放射線検出器12の構成について説明する。
【0034】
図1には、本実施形態に係る放射線検出器12の構成を模式的に示した断面図が示されており、図2には、放射線検出器12の構成を示す平面図が示されている。
【0035】
図1に示すように、放射線検出器12は、光検出器20A、21Bによってシンチレータ層28が挟まれた構成となっている。なお、光検出器20A、21Bは同一構成であるので、以下では光検出器20Aについてのみ説明する。また、図1では光検出器20Bの詳細な図示を省略している。
【0036】
光検出器20Aは、絶縁性基板22に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などのスイッチ素子24が形成されたTFT基板26を備えている。
【0037】
このTFT基板26上には、入射される放射線を変換する放射線変換層の一例として、入射される放射線を光に変換するシンチレータ層28が形成されている。
【0038】
シンチレータ層28としては、例えば、CsI:Tl、CsI:Na、NaI:Tl、及びGOS(GdS:Tb)等を用いることができる。なお、シンチレータ層28は、これらの材料に限られるものではない。
【0039】
絶縁性基板22としては、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものあれば何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板22は、これらの材料に限られるものではない。
【0040】
シンチレータ層28とTFT基板26との間には、シンチレータ層28によって変換された光が入射されることにより電荷を発生する光導電層30が配置されている。この光導電層30のシンチレータ層28側の表面には、光導電層30にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極32が形成されている。
【0041】
TFT基板26には、光導電層30で発生した電荷を収集する電荷収集電極34が形成されている。TFT基板26では、各電荷収集電極34で収集された電荷が、スイッチ素子24によって読み出される。
【0042】
TFT基板26には、図2に示すように、バイアス電極32、光導電層30、電荷収集電極34により構成され、光が入射されることにより電荷を発生するフォトダイオードとして機能するセンサ部36、センサ部36に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチ素子24と、を含んで構成される画素37が一定方向(図2の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図2の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0043】
また、TFT基板26には、一定方向(行方向)に延設され各スイッチ素子24をオンオフさせるための複数本のゲート配線40と、交差方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子24を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線42が設けられている。
【0044】
なお、TFT基板26上には、TFT基板26上を平坦化するための平坦化層38(図1参照)が形成されている。また、TFT基板26とシンチレータ層28との間であって、平坦化層38上には、シンチレータ層28をTFT基板26に接着するための接着層39が、形成されている。
【0045】
TFT基板26は、平板状で平面視において外縁に4辺を有する四辺形状をしている。具体的には、矩形状に形成されている。なお、以下では、光検出器20AのTFT基板をTFT基板26A、光検出器20BのTFT基板をTFT基板26Bとする。
【0046】
また、図1では図示は省略したが、光検出器20Bは、センサ部36がシンチレータ層28側となるように、シンチレータ層28上に形成されている。
【0047】
放射線検出器12は、図3に示すように、光検出器20A側から放射線が照射されてもよく、光検出器20B側から放射線が照射されてもよいが、本実施形態では、光検出器20A側を放射線入射側としている。
【0048】
放射線検出器12は、光検出器20A側から放射線が照射された場合には、シンチレータ層28の光検出器20A側でより強く発光し、光検出器20B側では弱く発光する。しかしながら、シンチレータ層28の弱く発光する領域は光検出器20Bに近いため、従来のようにシンチレータ層28の片面にのみ光検出器を設けた構成と比較して、光の検出効率を向上させることができる。
【0049】
光検出器20B側から放射線が照射された場合も同様に、シンチレータ層28の光検出器20A側でより強く発光し、光検出器20B側では弱く発光するが、シンチレータ層28の弱く発光する領域は光検出器20Aに近い。従って、何れの場合でも、シンチレータ層28の片面にのみ光検出器を設けた構成と比較して、光の検出効率を向上させることができる。
【0050】
ところで、前述したように、シンチレータ層28は、CsI:Tl、CsI:Na、及びNaI:Tlで構成することができる。この場合、図4(A)に示すように、シンチレータ層28は、CsI:Tl、CsI:Na、及びNaI:Tlの何れかから成る柱状結晶28Aで構成される。この柱状結晶28Aは、光検出器20Bを支持体として蒸着により形成することができる。その後、同図(B)に示すように、光検出器20Aを柱状結晶28Aの先端側に例えば光学的に接合する。
【0051】
この場合、放射線入射側である光検出器20Aが柱状結晶28Aの先端側に配置されるので、放射線の入射効率が向上し、放射線画像の画質を向上させることができる。
【0052】
また、前述したように、シンチレータ層28は、GOS(GdS:Tb)で構成することもできる。この場合、光検出器20A及び光検出器20Bの一方にGOS(GdS:Tb)を塗布して硬化させた後、光検出器20A及び光検出器20Bの他方を例えば粘着シートで貼り合わせればよい。
【0053】
次に、このような放射線検出器12を内蔵した電子カセッテ10の構成について説明する。
【0054】
図5には、電子カセッテ10の構成を示す斜視図が示されており、図6には、電子カセッテ10の断面図が示されている。
【0055】
電子カセッテ10は、放射線Xを透過させる材料からなる平板状の筐体18を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。筐体18の内部には、上述の放射線検出器12が配設されている。筐体18は、平板状の一方の面及び他方の面の放射線検出器12の配設位置に対応する領域が撮影時に放射線が照射される撮影領域18Aとされている。筐体18の内部には、光検出器20Aが撮影領域18A側となるように放射線検出器12が内蔵されている。
【0056】
また、筐体18の内部の一端側には、放射線検出器12と重ならない位置(撮影領域18Aの範囲外)に、後述する制御部50や電源部70を収容するケース31が配置されている。ここで、電子カセッテ10は、撮影領域18Aで放射線画像を撮影可能とするため、撮影領域18A内に回路や素子などの放射線画像に影響を与える部材を配置しないようにしている。
【0057】
また、電子カセッテ10は、筐体18の側面に各種ボタンを備えた操作パネル19が設けられている。
【0058】
図7には、電子カセッテ10の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0059】
光検出器20A、20Bは、それぞれ隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ52A、52Bが配置され、他辺側に信号処理部54A、54Bが配置されている。光検出器20Aの個々のゲート配線40はゲート線ドライバ52Aに接続され、光検出器20Aの個々のデータ配線42は信号処理部54Aに接続されており、光検出器20Bの個々のゲート配線40はゲート線ドライバ52Bに接続されており、光検出器20Bの個々のデータ配線42は信号処理部54Bに接続されている。
【0060】
なお、光検出器20A、20Bは対向して配置されるため、ゲート線ドライバ52A、52B、信号処理部54A、54Bも対向して配置されると、回路同士が干渉する虞がある。そこで、図8(A)〜(C)に示すように、ゲート線ドライバ52A、52B、信号処理部54A、54Bを互いに対向しないように配置することが好ましい。なお、図8では、ゲート線ドライバ52A、52B、信号処理部54A、54Bが各々複数個設けられた場合の例について示した。
【0061】
筐体18の内部には、制御部50として、画像メモリ56と、カセッテ制御部58と、無線通信部60とを備えている。
【0062】
TFT基板26A、26Bの各スイッチ素子24は、ゲート線ドライバ52A、52Bからゲート配線40を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされたスイッチ素子24によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線42を伝送されて信号処理部54A、54Bに入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0063】
図示は省略するが、信号処理部54A、54Bは、個々のデータ配線42毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線42を伝送された電気信号は増幅回路で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0064】
信号処理部54A、54Bには画像メモリ56が接続されており、信号処理部54A、54BのA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。
【0065】
画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。カセッテ制御部58はマイクロコンピュータによって構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROMおよびRAMを含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えており、電子カセッテ10全体の動作を制御する。
【0066】
また、カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、コンソールなどの放射線撮影全体を制御する外部装置と無線通信が可能とされており、コンソールとの間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0067】
カセッテ制御部58は、ゲート線ドライバ52A、52Bの動作を個別に制御しており、光検出器20A、20Bから放射線画像を示す画像情報の読み出しを個別に制御できる。カセッテ制御部58は、コンソールから無線通信部60を介して受信される撮影条件などの各種情報を記憶し、撮影条件に基づいてゲート線ドライバ52A、52Bを制御して光検出器20A、20Bから画像の読み出しを行う。
【0068】
また、カセッテ制御部58は、操作パネル19が接続されており、操作パネル19に対する操作内容を把握することができる。
【0069】
また、電子カセッテ10には、電源部70が設けられており、上述した各種回路や各素子(操作パネル19、ゲート線ドライバ52A、52B、信号処理部54A、54B、画像メモリ56、無線通信部60やカセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図7では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0070】
ところで、放射線検出器12は、前述したように二つの光検出器20A、20Bでシンチレータ層28を挟み込んだ構成であるため、光検出器20Aと光検出器20Bとが面方向に位置ずれする場合がある。この場合、光検出器20Aで読み出した画像情報と光検出器20Bで読み出した画像情報とを合成した場合に、被写体が位置ずれしたままで合成されてしまうため、合成画像の画質が劣化してしまう。また、光検出器20A、20Bを製造時に精密に位置合わせするのもコストが高くなると共に、歩留まりが悪化する。
【0071】
そこで、本実施形態では、詳細は後述するが、光検出器20Aと光検出器20Bの面方向における位置ずれ量に関する位置ずれ量情報に基づいて、当該位置ずれが解消するように、光検出器20Aから読み出された画像情報と、光検出器20Bから読み出された画像情報と、を合成する。なお、位置ずれ量情報は、例えば光検出器20Aに対して光検出器20Bが予め定めたX方向に何画素分ずれているか、X方向と直交するY方向に何画素分ずれているか、の少なくとも一つの情報を含む。この位置ずれ量情報は、例えば放射線検出器12の製造時に測定され、記憶部58Cに予め記憶される。
【0072】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ10の作用について説明する。
【0073】
電子カセッテ10は、図6に示すように、放射線を発生する放射線発生装置80と間隔を空けて配置され、撮影領域上に患者の撮影対象部位Bが配置される。放射線発生装置80は予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線を射出する。放射線発生装置80から射出された放射線Xは、撮影対象部位Bを透過することで画像情報を担持した後に電子カセッテ10に照射される。
【0074】
放射線発生装置80から照射された放射線Xは、撮影対象部位Bを透過した後に電子カセッテ10に到達する。これにより、電子カセッテ10に内蔵された放射線検出器12の各電荷収集電極34には照射された放射線Xの線量に応じた電荷が収集されて蓄積される。
【0075】
カセッテ制御部58は、放射線Xの照射終了後に画像を読出す画像読出処理を行う。
【0076】
図9には、CPU58Aにより実行される画像読出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはメモリ58のROMの所定の領域に予め記憶されている。
【0077】
ステップS10では、光検出器20Aからの画像情報の読み出しを実行する。すなわち、ゲート線ドライバ52Aを制御し、ゲート線ドライバ52Aから各ゲート配線40に1ラインずつ順にON信号を出力させて画像情報の読み出しを行う。光検出器20Aから読み出された画像情報は、画像メモリ56に記憶される。
【0078】
ステップS12では、光検出器20Bからの画像情報の読み出しを実行する。すなわち、ゲート線ドライバ52Bを制御し、ゲート線ドライバ52Bから各ゲート配線40に1ラインずつ順にON信号を出力させて画像情報の読み出しを行う。光検出器20Bから読み出された画像情報は、画像メモリ56に記憶される。
【0079】
ステップS14では、記憶部58Cに記憶された位置ずれ量情報に基づいて、光検出器20A及び光検出器20Bの面方向における位置ずれが解消するように、光検出器20Aから読み出された画像情報と、光検出器20Bから読み出された画像情報と、を合成する。
【0080】
図10(A)に示すように、例えば光検出器20Aを基準として光検出器20BがX方向に+a画素分、Y方向に−b画素分位置ずれしている場合には、光検出器20Aから読み出された画像情報に対して、光検出器20Bから読み出した画像情報をX方向に−a画素分、Y方向に+b画素分ずらした上で両者を合成する。
【0081】
これにより、光検出器20Aから読み出された画像情報と光検出器20Bから読み出された画像情報とが、位置ずれすることなく合成される。
【0082】
このように、本実施形態では、予め光検出器20Aと光検出器20Bとの面方向における位置ずれ量情報を測定して記憶しておき、この位置ずれ量情報に基づいて光検出器20Aから読み出された画像情報と光検出器20Bから読み出された画像情報とを合成するので、撮影毎に位置ずれ量を算出する必要がない。このため、簡単な処理で且つ精度良く位置ずれが解消された合成画像を得ることができおる。
【0083】
なお、シンチレータ層の膜厚ムラ等に起因した光検出器の傾きによる位置ずれを解消するために、位置ずれ量情報に、光検出器20Aに対して光検出器20Bが何度傾いているかを示す傾き角度の情報を加えてもよい。この場合、例えば光検出器20Aに対して光検出器20Bがθ度傾いている場合には、光検出器20Aから読み出された画像情報に対して、光検出器20Bから読み出した画像情報を(1−sinθ)1/2倍した上で両者を合成すればよい。
【0084】
また、本実施形態では、位置ずれ量情報は、製造時に測定して予め記憶部58Cに記憶されている場合について説明したが、これに限らず、位置ずれ量情報を算出するようにしてもよい。例えば、予め定めた画像を撮影した場合に光検出器20Aから読み出された画像情報と、光検出器20Aから読み出された画像情報と、のそれぞれにおいて画素値(信号値)が他の画素と異なる画素をマーカーとし、それぞれのマーカーの位置に基づいて位置ずれ量を算出するようにしてもよい。例えば、予め定めた画像は、予め定めた位置にマークが配置された画像とすることができる。この場合、光検出器20Aから読み出された画像情報及び光検出器20Bから読み出された画像情報の各々から前記マークを検出し、検出したマークに基づいて位置ずれ量を算出して記憶しておけばよい。この場合も、撮影毎に位置ずれ量を算出する必要がない。
【0085】
また、予め定めた画像は、何もない画像、すなわちベタ画像としてもよい。この場合、被写体が無い状態で撮影し、光検出器20Aから読み出された画像情報及び光検出器20Bから読み出された画像情報のそれぞれについて、通常ベタ画像を撮影した場合の画素値と異なる画素値を有する画素の位置を検出する。このような画素の位置は、画素欠陥が生じている画素の位置、すなわちシンチレータ層28の欠損位置に相当する。この場合も、画素欠陥の位置をマーカーとして位置ずれ量を算出して記憶しておけば、撮影毎に位置ずれ量を算出する必要はない。
【0086】
また、人間等の通常の被写体を撮影した場合に光検出器20Aから読み出された画像情報と、光検出器20Aから読み出された画像情報と、のそれぞれについて公知のパターン認識処理を実行し、図10(B)に示すように、それぞれの画像情報から抽出された被写体90A、90Bの位置に基づいて位置ずれ量を算出するようにしてもよい。この場合も、算出した位置ずれ量を記憶しておけば、撮影毎に位置ずれ量を算出する必要はない。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0089】
また、上記各実施の形態では、可搬型の放射線撮影装置である電子カセッテ10に適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、放射線としてX線を検出することにより放射線画像を撮影する放射線撮影装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、検出対象とする放射線は、X線の他や可視光、紫外線、赤外線、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0091】
その他、上記実施の形態で説明した電子カセッテ10及び放射線検出器12の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
10 電子カセッテ
12 放射線検出器
20A 光検出器
20B 光検出器
22 絶縁性基板
24 スイッチ素子
26 TFT基板
28 シンチレータ層(波長変換層)
28A 柱状結晶
34 電荷収集電極
36 センサ部
40 ゲート配線
42 データ配線
50 制御部
52A ゲート線ドライバ(第一の駆動回路)
52B ゲート線ドライバ(第二の駆動回路)
54A 信号処理部(第一の読み出し回路)
54B 信号処理部(第二の読み出し回路)
56 画像メモリ
58 カセッテ制御部(合成手段)
58B メモリ
58C 記憶部
60 無線通信部
70 電源部
80 放射線発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を可視光に変換する波長変換層と、
前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第一の光検出器と、
前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第二の光検出器と、
前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する合成手段と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記波長変換層が、前記第一の光検出器と、前記第二の光検出器と、により挟まれた
請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記合成手段は、予め記憶手段に記憶された前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれ量に基づいて、前記位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する
請求項1又は請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記合成手段は、予め定めた画像を前記第一の光検出器で検出した画像信号と、前記予め定めた画像を前記第二の光検出器で検出した画像信号と、で信号値が異なる画素の位置に基づいて、前記位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する
請求項1又は請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記合成手段は、被写体を撮影したときの、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、のパターン認識結果に基づいて、前記位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成する
請求項1又は請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記位置ずれは、面方向の位置ずれである
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記波長変換層は、CsI:Tl、CsI:Na、及びNaI:Tlの何れかから成る柱状結晶で構成され、前記第一の光検出器及び前記第二の光検出器の一方を支持体として蒸着により形成された
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記柱状結晶の先端側に、前記第一の光検出器及び前記第二の光検出器の他方が配置され、かつ当該他方の光検出器が前記放射線の入射側に配置された
請求項7記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記第一の光検出器は、前記第一の光検出器を駆動するための第一の駆動回路と、前記第一の光検出器から前記画像信号を読み出すための第一の読み出し回路と、を備え、
前記第二に光検出器は、前記第二の光検出器を駆動するための第二の駆動回路と、前記第二の光検出器から前記画像信号を読み出すための第二の読み出し回路と、を備え、
前記第一の駆動回路及び前記第一の読み出し回路が、前記第二の駆動回路及び前記第二の読み出し回路と対向しないように配置された
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
被写体を透過した放射線を可視光に変換する波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第一の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、
前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第二の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、
前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するステップと、
を含む放射線撮影方法。
【請求項11】
被写体を透過した放射線を可視光に変換する波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第一の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、
前記波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する第二の光検出器から前記画像信号を読み出すステップと、
前記第一の光検出器と前記第二の光検出器との位置ずれが解消するように、前記第一の光検出器から読み出された画像信号と、前記第二の光検出器から読み出された画像信号と、を合成するステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるための放射線撮影プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−122947(P2012−122947A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275691(P2010−275691)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】