説明

放射線撮影装置

【課題】トレイ上におけるカセッテのホルダの位置及び姿勢を簡単に変更できる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】カセッテホルダ30の短辺がトレイ20の上側の辺に沿う固定位置(第1の固定位置)と、カセッテホルダ30の長辺がトレイ20の上側の辺に沿う固定位置(第2の固定位置)との間でカセッテホルダ30を移動させる際、可動連結部によってカセッテホルダ30の軌道と姿勢が案内される。従って、従来のようにカセッテホルダを外して付け直すような手間が要らず、簡単にカセッテホルダ30の姿勢を変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像の撮像体を内包するカセッテが装着されたホルダをトレイ上に固定して撮影を行う放射線撮影装置に係り、特に、トレイ上における撮像体の固定位置と姿勢を変更可能な放射線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光フィルムや撮像素子等が内包されたカセッテと称される検出媒体を装着してX線画像を撮像するX線撮影装置が医療分野で広く用いられている。この種のX線撮影装置では、例えば、カセッテが装着されたトレイを装置本体に収容し、撮影部位に合わせて装置本体の位置を調節し、X線源と装置本体の間に被写体(人体)を位置させた状態でX線を放射し、被写体を透過したX線の画像をカセッテの感光フィルム等により撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−148398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用のX線撮影装置で用いられるカセッテのサイズは規格により定められており、被写体に応じてサイズを選択することが可能である。しかしながら、被写体の体格が大きい場合などにおいては、所望の部位を撮影できるようにするため、トレイ上に装着するカセッテの向きを変更することがある。例えば、被写体の人体を立たせた状態で撮影する立位型のX線撮影装置では、長方形状のカセッテの長手方向を垂直に向ける装着位置と水平に向ける装着位置の2通りが用意されていることがある。通常、トレイ上におけるそれぞれの装着位置は固定されているため、カセッテの向きを変更する場合には、一方の装着位置で固定されたカセッテのホルダをトレイから一旦取り外して、他方の装着位置に付け直す必要がある。すなわち、カセッテの向きを変更するために、ホルダの取り外し・取り付け作業が必要となる。そのため、多数の撮影を円滑に行わなければならない放射線検査の現場では、このような作業が大きな負担となっている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トレイ上におけるカセッテのホルダの位置及び姿勢を簡単に変更できる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放射線撮影装置は、放射線の画像を撮像する撮像体を内包した長方形の板状のカセッテが装着されるカセッテホルダと、前記カセッテホルダが載せられたトレイと、前記トレイを出し入れ自在に収容するトレイ収容部と、前記カセッテホルダの一辺が上記トレイ上の所定の基準線に沿う第1の固定位置と、前記カセッテホルダの前記一辺に直交する他の一辺が前記所定の基準線に沿う第2の固定位置との間で、前記カセッテホルダが姿勢を変えながら移動することを可能にしつつ、前記カセッテホルダを前記トレイに連結するとともに、当該移動時の前記カセッテホルダの軌道と姿勢を案内する可動連結部と、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置または前記第2の固定位置にあるとき、前記カセッテホルダを前記トレイ上において解除可能にロックするロック部とを含む。
【0007】
好適に、前記可動連結部は、複数の回転体と、前記回転体が転がりながら係合する走行路を備えた回転体案内部とを含み、前記複数の回転体及び前記回転体案内部の一方が前記トレイに、他方が前記カセッテホルダに設けられている。
【0008】
好適に、前記回転体の周回方向に沿って凹条が形成され、前記回転体案内部の前記走行路が前記凹条に嵌った状態で前記回転体が前記走行路を転がる、又は、前記回転体案内部の前記走行路に沿って凹条が形成され、前記回転体が前記凹条に嵌った状態で前記走行路を転がる。
【0009】
好適に、前記回転体案内部の外周において前記走行路がループ状に形成され、任意の一の前記回転体とこれに隣接する他の前記回転体との間隔が、前記走行路によって形成される前記ループの外形の最小幅より狭い間隔となるように、前記複数の回転体が配置される。
【0010】
好適に、前記ロック部は、係止片と、前記カセッテホルダにおいて、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合に前記係止片と係合可能な位置に固定された第1係合部と、前記カセッテホルダにおいて、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合に前記係止片と係合可能な位置に固定された第2係合部と、前記トレイに対して前記係止片を相対的に移動させる係止片移動機構であって、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合、前記第1係合部に係合する位置と当該係合が外れる位置との間で前記係止片を移動させ、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合、前記第2係合部に係合する位置と当該係合が外れる位置との間で前記係止片を移動させる係止片移動機構とを有する。
【0011】
好適に、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合の前記第1係合部の前記トレイに対する相対位置と、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合の前記第2係合部の前記トレイに対する相対位置とが等しくなるように、前記カセッテホルダ上に前記第1係合部及び前記第2係合部が配置される。
【0012】
好適に、前記係止片移動機構は、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合に前記第1係合部と係合する位置へ向かって前記係止片を付勢するとともに、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合に前記第2係合部と係合する位置へ向かって前記係止片を付勢する付勢手段を含み、前記第1係合部は、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置へ到達する手前で前記係止片が摺動する壁部を有し、前記第2係合部は、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置へ到達する手前で前記係止片が摺動する壁部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トレイ上におけるカセッテのホルダの位置及び姿勢を簡単に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影装置の一例を示す第1の図である。
【図2】カセッテホルダが第1の固定位置にある場合の装置本体を例示する図である。
【図3】カセッテホルダが第1の固定位置と第2の固定位置の中間にある場合の装置本体を例示する図である。
【図4】カセッテホルダが第2の固定位置にある場合の装置本体を例示する図である。
【図5】カセッテホルダとトレイの切断端面の一例を示す図であり、滑車とカムリングの係合状態を示す。
【図6】カセッテホルダとトレイの切断端面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る放射線撮影装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線撮影装置の一例を示す図であり、正面側から見た外観を示す。
図1に示す放射線撮影装置は、底面の基台2がボルト4によって床に固定された直立型の架台1と、カセッテ5を内蔵した装置本体3を有する。装置本体3は、図示しない移動機構によって架台1に取り付けられており、上下に移動可能となっている。
【0016】
図2〜4は、装置本体3の一例を示す図であり、トレイ20が引き出された状態でカセッテホルダ30がトレイ20上を回転する様子を示す。
図2〜4に示す装置本体3は、カセッテ5と、カセッテ5が装着されるカセッテホルダ30と、カセッテホルダ30が固定されるトレイ20と、トレイ20を出し入れ自在に収容するトレイ収容部10と、可動連結部(41,42)と、ロック部(51〜57)とを有する。
【0017】
カセッテ5は、長方形の板状の形態を有しており、放射線(例えばX線)の画像を撮像するための撮像体を内包する。撮像体は、例えば、X線を受けて蛍光発光する蛍光板と感光フィルムを組み合わせたアナログ式のものや、フォトダイオード等の光電変換素子をアレイ状に配列したデジタル式の撮像デバイスなどを含む。
【0018】
カセッテホルダ30は、カセッテ5を取り外し自在に装着する枠体であり、カセッテ5とほぼ同形の底板と、その四隅に立設された固定板を有する。固定板は、底板上に載置されたカセッテ5の四隅の形に合わせてL型に曲がっており、底板に対するカセッテ5の位置を固定する。底板はトレイ20に面して配置される。
【0019】
トレイ20は、カセッテホルダ30より大きい矩形の板であり、その正面側にカセッテホルダ30が配置される。トレイ20の裏面には、トレイ収容部10の側部のトレイ出入り口11を通ってトレイ20を水平方向にスライドさせる図示しないスライド機構が取り付けられている。トレイ20を引き出した状態でトレイ出入り口11の外側に位置するトレイ20の側縁には、蓋部21が立設される。蓋部21は、トレイ20がトレイ収容部10に収容された状態でトレイ出入り口11を塞ぐ。蓋部21の外側には、トレイ20を出し入れする際に把持する取手22が設けられている。
【0020】
可動連結部(41,42)は、カセッテホルダ30とトレイ20を移動可能に連結する。
すなわち、可動連結部は、カセッテホルダ30の短辺がトレイ20の上側の辺に沿う固定位置(第1の固定位置:図2)と、カセッテホルダ30の長辺がトレイ20の上側の辺に沿う固定位置(第2の固定位置:図4)との間で、カセッテホルダ30が姿勢を変えながら移動することを可能にしつつ、カセッテホルダ30をトレイ20に連結する。また、可動連結部は、トレイ20上を移動する際のカセッテホルダ30の軌道と姿勢を案内する。
【0021】
可動連結部は、具体的には、4つの滑車41とカムリング42を有する。カムリング42は、滑車41が転がりながら係合する走行路を備えている。走行路は、カムリング42の外周においてループ上に形成されている。
ここで、滑車41は、本発明における回転体の一例である。また、カムリング42は、本発明における回転体案内部の一例である。
【0022】
図2〜図4の例において、滑車41はカセッテホルダ30の背面側に設けられ、カムリング42はトレイ20の正面側に設けられる。カムリング42の走行路と滑車41が係合することにより、カセッテホルダ30がトレイ20と連結された状態になる。また、カムリング42の走行路を滑車41が転がることにより、カセッテホルダ30がトレイ20の上を移動する。
【0023】
滑車41はカムリング42の走行路に沿って転がるので、滑車41の位置はカムリング42の走行路上に制限される。すなわち、カセッテホルダ30の各滑車41の位置は、トレイ20に設けられたカムリング42の走行路上に制限される。従って、カセッテホルダ30は、トレイ20の上を移動する場合に、カセッテホルダ30に設けられた各滑車41の位置とトレイ20に設けられたカムリング42の走行路との相対的位置関係によって定まる所定の軌道に案内されながら移動する。
【0024】
また、カセッテホルダ30の2以上の滑車41がカムリング42の走行路と接することにより、トレイ20に対するカセッテホルダ30の相対的な姿勢が定まる。従って、カセッテホルダ30は、トレイ20の上を移動する場合に、カセッテホルダ30に設けられた各滑車41の位置とトレイ20に設けられたカムリング42の走行路との相対的位置関係によって定まる姿勢に案内されながら移動する。
【0025】
更に、本実施形態では、隣接する任意の2つの滑車の間隔が、カムリング42の外周の走行路により形成されるループの外形の最小幅に比べて狭くなるように、4つの滑車41がカセッテホルダ30上に配置されている。これにより、カムリング42は4つの滑車41で囲まれた領域から外側に出ることができないので、図2〜図4に示すようにカセッテホルダ30とトレイ20が垂直に立った状態でも、4つの滑車41とカムリング42の係合が外れてカセッテホルダ30が脱落することはない。
【0026】
図5は、対角に配置された2つの滑車41を通るA−A'線(図3)でカセッテホルダ30とトレイ20を切断した場合の要部を表す切断端面図である。
図5に示すように、滑車41には、その周方向に沿って凹条43が形成される。カムリング42の外周の走行路が凹条43に嵌った状態で、滑車41が走行路の上を転がる。
以上が、可動連結部(41,42)の説明である。
【0027】
次に、ロック部(51〜58)について説明する。
ロック部(51〜58)は、カセッテホルダ30が上述した第1の固定位置(図2)又は第2の固定位置(図4)にあるとき、カセッテホルダ30をトレイ20上において解除可能にロック(固定)する。
【0028】
ロック部は、具体的には、係止ピン51と、第1係合部材57と、第2係合部材58と、係止ピン移動機構(52〜56)を有する。第1係合部材57及び第2係合部材58はカセッテホルダ30に設けられ、係止ピン51と係止ピン移動機構(52〜56)はトレイ20に設けられる。
【0029】
第1係合部材57及び第2係合部材58は、係止ピン51と係合するピン溝をそれぞれ有する。
第1係合部材57のピン溝は、カセッテホルダ30の裏面において、カセッテホルダ30が第1の固定位置(図2)にある場合に係止ピン51と係合可能な位置に固定される。第2係合部材58のピン溝は、カセッテホルダ30の裏面において、カセッテホルダ30が第2の固定位置(図4)にある場合に係止ピン51と係合可能な位置に固定される。
【0030】
また、図2〜図4の例において、カセッテホルダ30が第1の固定位置(図2)にある場合の第1係合部材57のピン溝と、カセッテホルダ30が第2の固定位置(図4)にある場合の第2係合部材58のピン溝とが、トレイ20に対して相対的にほぼ等しい場所に位置する。
【0031】
係止ピン移動機構は、トレイ20に対して係止ピン51を相対的に移動させる。
カセッテホルダ30が第1の固定位置(図2)にある場合、係止ピン移動機構は、第1係合部材57のピン溝と係合する位置に係止ピン51を移動させることによってカセッテホルダ30を第1の固定位置(図2)にロックし、第1係合部材57のピン溝との係合が外れる位置に係止ピン51を移動させることによってカセッテホルダ30のロックを解除する。
また、カセッテホルダ30が第2の固定位置(図4)にある場合、係止ピン移動機構は、第2係合部材58のピン溝と係合する位置に係止ピン51を移動させることによってカセッテホルダ30を第2の固定位置(図4)にロックし、第2係合部材58のピン溝との係合が外れる位置に係止ピン51を移動させることによってカセッテホルダ30のロックを解除する。
【0032】
係止ピン移動機構は、例えば図2〜図4に示すように、係止ピン51が固定されたリンク54と、リンク54を押して係止ピン51を移動させるための押しボタン56を含む。
リンク54は、トレイ20の裏面において軸53を中心に回転可能に支持される。リンク54に固定された係止ピン51は、円弧状のピン孔52を通ってトレイ20の裏面側から正面側に突き出す。
【0033】
押しボタン56は、蓋部21に設けられた孔に案内されてリンク54の端部へ届く位置に配置される。押しボタン56を押し込むと、これに押されたリンク54が軸53を中心に回転し、これにより係止ピン51が係合部(57,58)のピン溝から離れる方向に移動する。
【0034】
リンク54の一端は、押しボタン56を押し込んだときに回転する方向と反対の方向へ回転力が加わるように、トレイ20に固定されたバネ55によって付勢される。これにより、押しボタン56を離した状態では、係止ピン51が係合部(57,58)のピン溝と係合する方向に移動する。この場合、係止ピン51は、円弧状のピン孔52の左端で止まった状態となる。
【0035】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る放射線撮影装置において、トレイ20上のカセッテホルダ30を第1の固定位置(図2)から第2の固定位置(図4)へ移動させる場合の動作について説明する。
【0036】
カセッテホルダ30が第1の固定位置(図2)にある場合、第1係合部材57のピン溝に係止ピン51が係合している。この場合、バネ55の付勢によって係止ピン51が係合位置に固定されるため、押しボタン56を離しても係合状態が維持される。
この状態で押しボタン56を押し込むと、リンク54の一端が押しボタン56により押され、リンク54が軸53を中心に回転する。これにより、係合ピン51が第1係合部材57のピン溝から離れて、カセッテホルダ30のロックが解除される。
【0037】
ロックが解除されると、カセッテホルダ30は移動可能な状態になる。この状態でカセッテホルダ30を手で持って図の反時計方向へ回すと、カセッテホルダ30が姿勢を変えながら一定の軌道上を移動する。カセッテホルダ30がある程度移動したところで押しボタン56を離すと、係止ピン51はバネ55の付勢によってピン孔52の左端に戻るが、このとき第1係合部材57のピン溝が既に移動しているため、ロック解除の状態が維持される。
【0038】
カセッテホルダ30が第1の固定位置から第2の固定位置へ移動する間、カセッテホルダ30の軌道と姿勢は可動連結部(41,42)によって安定に案内される。すなわち、軌道が変化したり姿勢がぐらついたりすることがなく、使用者が第2の固定位置を捜しながら移動させる必要がない。
【0039】
カセッテホルダ30の隅が蓋部21の側へ最も出っ張った状態でも、図3に示すように、カセッテホルダ30は蓋部21と接触しない。
【0040】
カセッテホルダ30が第2の固定位置に近付くと、係止ピン51が停止するピン孔51の左端に第2係合部材58の壁部が進入し、係止ピン51と当接する。カセッテホルダ30が更に第2の固定位置に近づくと、バネ55によって付勢された係止ピン51がこの壁部を摺動しながらピン溝に近付いていく。カセッテホルダ30が第2の固定位置に到達すると、係止ピン51が壁部からピン溝の中へ落ち込み、カセッテホルダ30がロックされる(図4)。これにより、カセッテホルダ30は、押しボタン56を操作することなく第2の固定位置で自動的にロックされる。
【0041】
カセッテホルダ30を第2の固定位置から第1の固定位置へ移動させる場合は、押しボタン56を押してロックを一旦解除させた後、カセッテホルダ30を時計方向へ回す。その後、押しボタンを離した状態で第1の固定位置まで移動させることにより、上記と同様に係止ピン51が第1係合部材57の壁部を摺動してピン溝の中へ落ち込み、カセッテホルダ30が第1の固定位置で自動的にロックされる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る放射線撮影装置によれば、カセッテホルダ30の短辺がトレイ20の上側の辺に沿う固定位置(第1の固定位置:図2)と、カセッテホルダ30の長辺がトレイ20の上側の辺に沿う固定位置(第2の固定位置:図4)との間でカセッテホルダ30を移動させる際、可動連結部によってカセッテホルダ30の軌道と姿勢が案内される。
従って、従来のようにカセッテホルダを外して付け直すような手間が要らず、簡単にカセッテホルダ30の姿勢を変更できる。また、カセッテホルダ30の移動の過程で軌道が変化したり姿勢がぐらついたりすることがなく、最終的な固定位置(第1の固定位置又は第2の固定位置)を捜しながら移動させるような面倒がないため、例えば片手でも容易にカセットホルダ30の姿勢を変更できる。
【0043】
また、本実施形態に係る放射線撮影装置によれば、カセッテホルダ30が第1の固定位置(図2)にある場合、第1係合部材57のピン溝と係合する位置へ向かって係止ピン51が付勢されるとともに、カセッテホルダ30が第2の固定位置(図4)にある場合、第2係合部材58のピン溝と係合する位置へ向かって係止ピン51が付勢される。
そして、カセッテホルダ30が第1の固定位置の手前にあるとき、係止ピン51が第1係合部材57の壁部に当接してこれを摺動し、カセッテホルダ30が第2の固定位置の手前にあるとき、係止ピン51が第1係合部材57の壁部に当接してこれを摺動する。
これにより、カセッテホルダ30が第1の固定位置に到達した場合、その手前で第1係合部材57の壁部を摺動した係止ピン51がピン溝の中に落ちて自動的に係合状態となり、また、カセッテホルダ30が第2の固定位置に到達した場合は、その手前で第2係合部材58の壁部を摺動した係止ピン51がピン溝の中に落ちて自動的に係合状態となる。
従って、ロック解除状態からロック状態へ自動的に移行できるため、カセットホルダ30の姿勢の変更が更に容易となる。
【0044】
更に、本実施形態に係る放射線撮影装置によれば、カセッテホルダ30が第1の固定位置(図2)にある場合の第1係合部材57のピン溝と、カセッテホルダ30が第2の固定位置(図4)にある場合の第2係合部材58のピン溝とが、トレイ20に対して相対的にほぼ等しい場所に位置する。これにより、係合状態にあるときの係止ピン51の停止位置を第1の固定位置と第2の固定位置とで共通化できるので、係止ピン移動機構による係止ピン51の移動範囲を限定できるとともに、移動のストロークを短くできる。従って、係止ピン移動機構の構造を単純化できるとともにサイズを小型化できる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0046】
上述の実施形態では、図5に示すように、滑車41の凹条にカムリング42の走行路を嵌めることによって滑車41とカムリング42を係合させているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば図6の切断端面図において示すように、カムリング42の走行路に沿って形成された凹条に滑車41の周回部分を嵌め合わせることによって、滑車41とカムリング42とを係合させてもよい。この場合も、滑車41は凹条に嵌った状態でカムリング42の走行路を転がることが可能である。
【0047】
上述の実施形態では回転体として滑車を用いる例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。回転体は、カムリングの走行路を転がりながら走行路と係合するものであれば良く、例えば球体や円筒体、円錐体など、任意の形態の回転体を用いることが可能である。
【0048】
上述の実施形態では、滑車41をカセッテホルダ30上に配設し、カムリング42をトレイ20上に配設しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、滑車41をトレイ20に配設し、カムリング42をカセッテホルダ30に配設してもよい。
【0049】
上述の実施形態では、カムリング42の縁部に1本のループ状の走行路が形成されているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、カムリングの縁部に複数本のループ状の走行路を形成し、1つ又は複数の回転体がそれぞれのループの走行路を転がるようにしてもよい。また、走行路はループ状でなくてもよく、例えば、それぞれ1つ又は複数の回転体が転がる複数の走行路を回転体案内部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…架台、2…基台、3…装置本体、4…ボルト、5…カセッテ、10…トレイ収容部、11…トレイ出入り口、20…トレイ、21…蓋部、22…取手、30…カセッテホルダ、41…滑車、42…カムリング、51…係止ピン、52…ピン孔、53…軸、54…リンク、55…バネ、56…押しボタン、57…第1係止部材、58…第2係止部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の画像を撮像する撮像体を内包した長方形の板状のカセッテが装着されるカセッテホルダと、
前記カセッテホルダが載せられたトレイと、
前記トレイを出し入れ自在に収容するトレイ収容部と、
前記カセッテホルダの一辺が上記トレイ上の所定の基準線に沿う第1の固定位置と、前記カセッテホルダの前記一辺に直交する他の一辺が前記所定の基準線に沿う第2の固定位置との間で、前記カセッテホルダが姿勢を変えながら移動することを可能にしつつ、前記カセッテホルダを前記トレイに連結するとともに、当該移動時の前記カセッテホルダの軌道と姿勢を案内する可動連結部と、
前記カセッテホルダが前記第1の固定位置または前記第2の固定位置にあるとき、前記カセッテホルダを前記トレイ上において解除可能にロックするロック部と、
を含む、
放射線撮影装置。
【請求項2】
前記可動連結部は、
複数の回転体と、
前記回転体が転がりながら係合する走行路を備えた回転体案内部と、
を含み、
前記複数の回転体及び前記回転体案内部の一方が前記トレイに、他方が前記カセッテホルダに設けられている、
請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記回転体の周回方向に沿って凹条が形成され、前記回転体案内部の前記走行路が前記凹条に嵌った状態で前記回転体が前記走行路を転がる、
又は、
前記回転体案内部の前記走行路に沿って凹条が形成され、前記回転体が前記凹条に嵌った状態で前記走行路を転がる、
請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記回転体案内部の外周において前記走行路がループ状に形成され、
任意の一の前記回転体とこれに隣接する他の前記回転体との間隔が、前記走行路によって形成される前記ループの外形の最小幅より狭い間隔となるように、前記複数の回転体が配置される、
請求項3に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記ロック部は、
係止片と、
前記カセッテホルダにおいて、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合に前記係止片と係合可能な位置に固定された第1係合部と、
前記カセッテホルダにおいて、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合に前記係止片と係合可能な位置に固定された第2係合部と、
前記トレイに対して前記係止片を相対的に移動させる係止片移動機構であって、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合、前記第1係合部に係合する位置と当該係合が外れる位置との間で前記係止片を移動させ、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合、前記第2係合部に係合する位置と当該係合が外れる位置との間で前記係止片を移動させる係止片移動機構と、
を有する、
請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合の前記第1係合部の前記トレイに対する相対位置と、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合の前記第2係合部の前記トレイに対する相対位置とが等しくなるように、前記カセッテホルダ上に前記第1係合部及び前記第2係合部が配置された、
請求項5に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記係止片移動機構は、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置にある場合に前記第1係合部と係合する位置へ向かって前記係止片を付勢するとともに、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置にある場合に前記第2係合部と係合する位置へ向かって前記係止片を付勢する付勢手段を含み、
前記第1係合部は、前記カセッテホルダが前記第1の固定位置へ到達する手前で前記係止片が摺動する壁部を有し、
前記第2係合部は、前記カセッテホルダが前記第2の固定位置へ到達する手前で前記係止片が摺動する壁部を有する、
請求項6に記載の放射線撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−65882(P2012−65882A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213759(P2010−213759)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【特許番号】特許第4717155号(P4717155)
【特許公報発行日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(591053889)株式会社大林製作所 (6)
【Fターム(参考)】