説明

放射線検出装置及び放射線画像撮影システム

【課題】可撓性を有する放射線変換パネルにおいて、該放射線変換パネルを積層させて保管する場合に検出面を確実に保護する。
【解決手段】放射線検出カセッテ10において、可撓性を有するスクリーン30は、同じく可撓性を有するグリッド34、センサ基板36及び鉛シート38と、放射線の照射される照射面40とは反対側の面42に設けられる保護シート44とを備え、該保護シート44は、例えば、不織布から可撓性を有したシート状に形成される。そして、放射線検出カセッテ10を重ね合わせて保管する際、該保護シート44が下側となる別の放射線検出カセッテ10aの照射面40を傷つけることが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を透過した放射線を検出し、検出した前記放射線を放射線画像情報に変換する放射線変換パネルを備えた放射線検出装置及び該放射線検出装置を有する放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、被写体に放射線を照射し、該被写体を透過した前記放射線を放射線変換パネルに導いて放射線画像情報を撮影する放射線画像撮影システムが広汎に使用されている。前記放射線変換パネルとしては、前記放射線画像情報が露光記録される従来からの放射線フイルムや、蛍光体に前記放射線画像情報としての放射線エネルギを蓄積し、励起光を照射することで前記放射線画像情報を輝尽発光光として取り出すことのできる蓄積性蛍光体パネルが知られている。
【0003】
これらの放射線変換パネルは、前記放射線画像情報が記録された放射線フイルムを現像装置に供給して現像処理を行い、あるいは、前記蓄積性蛍光体パネルを読取装置に供給して読取処理を行うことで、可視画像を得ることができる。
【0004】
一方、手術室等においては、患者に対して迅速且つ的確な処置を施すため、撮影後の放射線変換パネルから直ちに放射線画像情報を読み出して表示できることが必要である。このような要求に対応可能な放射線変換パネルとして、放射線を直接電気信号に変換し、あるいは、放射線をシンチレータで可視光に変換した後、電気信号に変換して読み出す固体検出素子を用いた放射線検出器が開発されている。
【0005】
放射線検出器(放射線変換パネル)を収納する放射線検出装置に関し、特許文献1には、可撓性を有する放射線検出器を患者の表面形状に合わせて配置することが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、筐体の内部に設けられたシンチレータが保護樹脂層によって覆われた放射線検出器が開示されている。この保護樹脂層は、シンチレータの上面側を覆うように設けられるため、検出面となるシンチレータに対して付与される外力から保護することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−70776号公報
【特許文献2】特開2006−337184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に係る従来技術においては、このような放射線検出器を保管する際、該放射線検出器同士を積層することが想定されるが、保護樹脂層の上部側に重ね合わせた別の放射線検出器によって該保護樹脂層に傷等が生じてしまう懸念があり、この場合、傷等に起因した散乱が生じて放射線画像にノイズが発生するという問題がある。
【0009】
本発明は、前記の課題に鑑みなされたものであり、可撓性を有する放射線変換パネルにおいて、該放射線変換パネルを積層させて保管する場合に検出面を確実に保護することが可能な放射線検出装置及び放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像情報に変換し、且つ、可撓性を有する放射線変換パネルにおいて、
前記放射線が照射される照射面とは反対側の面に、前記照射面に対して摩擦係数の小さく設定された保護部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、可撓性を有した放射線変換パネルにおいて、被写体を間として放射線の照射される照射面とは反対側の面に、該照射面に対して摩擦係数が小さく設定された保護部を設けることにより、例えば、放射線画像の撮影前や撮影後に、複数の放射線検出装置を積層させて保管する場合でも、該放射線検出装置において照射面とは反対側に設けられ、摩擦係数の小さく設定された保護部が、隣り合う別の放射線検出装置の照射面に当接することとなるため、該照射面が積層された放射線検出装置によって傷つけられることが防止される。その結果、照射面が確実に保護された状態で複数の放射線検出装置を積層させて保管することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、可撓性を有する放射線変換パネルにおいて、放射線の照射される照射面とは反対側の面に設けられ、該照射面に対して摩擦係数の小さな保護部を設けることにより、複数の放射線検出装置を積層させて保管する際、照射面とは反対側となる摩擦係数の小さな保護部が、隣り合う別の放射線検出装置の照射面に当接することとなるため、該照射面が積層された放射線検出装置によって傷つけられることが確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本実施の形態に係る放射線検出装置(以下、放射線検出カセッテともいう。)10を適用した放射線画像撮影システム12の構成ブロック図である。
【0015】
放射線画像撮影システム12は、撮影条件に従った線量からなる放射線14を被写体としての患者16に照射するための放射線源18と、患者16を透過した放射線14を検出する放射線検出器(放射線変換パネル)20を備える放射線検出カセッテ10と、放射線検出器20によって検出された放射線14に基づく放射線画像情報を表示する表示装置22と、放射線検出カセッテ10、放射線源18及び表示装置22を制御するコンソール(制御装置)24とを備える。このコンソール24と、放射線検出カセッテ10、放射線源18及び表示装置22との間は、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.11.a/g/n等の無線LAN又はミリ波を用いた無線通信による信号の送受信が行われる。
【0016】
なお、コンソール24には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像情報やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)26が接続され、また、RIS26には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)28が接続される。
【0017】
図2〜図5に示すシート状の放射線検出カセッテ10において、放射線14を透過させる材料からなる筐体としてのスクリーン30は、可撓性を有し、患者16に対する放射線14の非照射時(非撮影時)には、例えば、複数枚を積層させて保管箱32(図6参照)に収納され、一方で、患者16に対する放射線14の照射時(撮影時)に患者16に対して略平面状に展開される(図3及び図4参照)。
【0018】
このスクリーン30は、例えば、可撓性を有する樹脂であるポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、ポリエステル、ABS樹脂(ABS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)や、薄厚状の金属であるアルミニウム、酸化アルミ、ステンレス等で形成される。
【0019】
スクリーン30の内部には、患者16による放射線14の散乱線を除去するグリッド34、患者16を透過した放射線14を検出する放射線検出器20を構成するセンサ基板36、及び、放射線14のバック散乱線を吸収する鉛シート38が、患者16側の照射面(撮影面)40に対して順に配設される。なお、これらグリッド34、放射線検出器20及び鉛シート38も可撓性を有する。また、スクリーン30の照射面40をグリッド34として構成してもよい。
【0020】
一方、スクリーン30には、患者16側となる照射面40とは反対側の面42に保護シート(保護部)44が装着される。この保護シート44は、例えば、不織布からなり所定厚さを有し、且つ、可撓性を有したシート状に形成され、前記スクリーン30の面42に対して貼着される。詳細には、保護シート44は、ガラス繊維、ナイロン繊維等の繊維を織ることなく絡み合わせて形成される。
【0021】
また、保護シート44は、スクリーン30の面42を全体的に覆うように設けられ、その摩擦係数が前記スクリーン30の摩擦係数より小さく設定される。
【0022】
図5に示すように、センサ基板36は、患者16を透過した放射線14を一旦可視光に変換するGOS(Gd22S)又はCsI等の蛍光体からなるシンチレータ46と、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)48(図7参照)のアレイが形成され、放射線14及び可視光を透過可能なTFT層50と、アモルファスシリコン(a−Si)等の物質からなる固体検出素子(以下、画素ともいう。)52を用いて前記可視光を電気信号に変換する光電変換層54とを、基板55上に順に積層することにより形成される。
【0023】
また、スクリーン30の内部には、図3に示すように、放射線検出カセッテ10の電源であるバッテリ56と、バッテリ56から供給される電力により放射線検出器20を駆動制御するカセッテ制御部58と、放射線検出器20によって検出した放射線14の情報を含む信号をコンソール24との間で送受信する送受信機(無線通信手段)60とが収容される。
【0024】
なお、カセッテ制御部58及び送受信機60には、放射線14が照射されることによる損傷を回避するため、スクリーン30の照射面40側に鉛板等を配設しておくことが好ましい。また、バッテリ56は、放射線検出カセッテ10内の放射線検出器20、カセッテ制御部58及び送受信機60に電力を供給する。
【0025】
図7は、放射線検出器20の回路構成ブロック図である。放射線検出器20は、可視光を電気信号に変換するa−Si等の物質からなる各画素52が形成された光電変換層54を、行列状のTFT48のアレイ(TFT層50)の上に配置した構造を有する。この場合、各画素52では、可視光を電気信号に変換することにより発生した電荷が蓄積され、各行毎にTFT48を順次オンにすることにより前記電荷を画像信号として読み出すことができる。
【0026】
各画素52に接続されるTFT48には、行方向と平行に延びるゲート線62と、列方向と平行に延びる信号線64とが接続される。各ゲート線62は、ライン走査駆動部66に接続され、各信号線64は、マルチプレクサ68に接続される。ゲート線62には、行方向に配列されたTFT48をオンオフ制御する制御信号Von、Voffがライン走査駆動部66から供給される。この場合、ライン走査駆動部66は、ゲート線62を切り替える複数のスイッチSW1と、スイッチSW1の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ70とを備える。アドレスデコーダ70には、カセッテ制御部58からアドレス信号が供給される。
【0027】
また、信号線64には、列方向に配列されたTFT48を介して各画素52に保持されている電荷が流出する。この電荷は、増幅器72によって増幅される。増幅器72には、サンプルホールド回路74を介してマルチプレクサ68が接続される。マルチプレクサ68は、信号線64を切り替える複数のスイッチSW2と、スイッチSW2の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ76とを備える。アドレスデコーダ76には、カセッテ制御部58からアドレス信号が供給される。マルチプレクサ68には、A/D変換器78が接続され、A/D変換器78によってデジタル信号に変換された放射線画像情報がカセッテ制御部58に供給される。なお、増幅器72、サンプルホールド回路74、マルチプレクサ68及びA/D変換器78は、読出回路部80を構成する。
【0028】
さらに、放射線検出カセッテ10のカセッテ制御部58は、図1に示すように、アドレス信号発生部82と、画像メモリ84と、カセッテIDメモリ86とを備える。
【0029】
アドレス信号発生部82は、放射線検出器20を構成するライン走査駆動部66のアドレスデコーダ70及びマルチプレクサ68のアドレスデコーダ76に対してアドレス信号を供給する。画像メモリ84は、放射線検出器20によって検出された放射線画像情報を記憶する。カセッテIDメモリ86は、放射線検出カセッテ10を特定するためのカセッテID情報を記憶する。
【0030】
送受信機60は、カセッテIDメモリ86に記憶されたカセッテID情報及び画像メモリ84に記憶された放射線画像情報を無線通信によりコンソール24に送信する。
【0031】
本実施の形態に係る放射線検出カセッテ10及び放射線画像撮影システム12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0032】
撮影対象である患者16の患者情報は、撮影に先立ち、コンソール24に予め登録される。撮影部位や撮影方法が予め決まっている場合には、これらの撮影条件も予め登録しておく。
【0033】
手術室、検診又は病院内での回診等において、放射線画像情報の撮影を行う場合、医師又は放射線技師は、例えば、保管箱32から未使用の放射線検出カセッテ10を1枚取り出し、例えば、患者16とベッドとの間の所定位置に、照射面40を放射線源18側とした状態で放射線検出カセッテ10を設置する。
【0034】
次に、放射線源18を放射線検出カセッテ10に対向する位置に適宜移動させた後、医師又は放射線技師は、放射線源18の撮影スイッチを操作して撮影を行う。前記撮影スイッチの操作に起因して、放射線源18は、無線通信により、コンソール24に対して撮影条件の送信を要求し、コンソール24は、受信した前記要求に基づいて、当該患者16の撮影部位に係る撮影条件を、放射線源18に送信する。放射線源18は、前記撮影条件を受信すると、当該撮影条件に従って、所定の線量からなる放射線14を患者16に照射する。
【0035】
患者16を透過した放射線14は、放射線検出カセッテ10のグリッド34によって散乱線が除去された後、放射線検出器20に照射される。放射線検出器20を構成するシンチレータ46は、放射線14の強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層54を構成する各画素52は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する。次いで、各画素52に保持された患者16の放射線画像情報である電荷情報は、カセッテ制御部58を構成するアドレス信号発生部82からライン走査駆動部66及びマルチプレクサ68に供給されるアドレス信号に従って読み出される。
【0036】
すなわち、ライン走査駆動部66のアドレスデコーダ70は、アドレス信号発生部82から供給されるアドレス信号に従って選択信号を出力してスイッチSW1の1つを選択し、対応するゲート線62に接続されたTFT48のゲートに制御信号Vonを供給する。一方、マルチプレクサ68のアドレスデコーダ76は、アドレス信号発生部82から供給されるアドレス信号に従って選択信号を出力してスイッチSW2を順次切り替え、ライン走査駆動部66によって選択されたゲート線62に接続された各画素52に保持された電荷情報である放射線画像情報を信号線64を介して順次読み出す。
【0037】
放射線検出器20の選択されたゲート線62に接続された各画素52から読み出された放射線画像情報は、各増幅器72によって増幅された後、各サンプルホールド回路74によってサンプリングされ、マルチプレクサ68を介してA/D変換器78に供給され、デジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された放射線画像情報は、カセッテ制御部58の画像メモリ84に一旦記憶される。
【0038】
同様にして、ライン走査駆動部66のアドレスデコーダ70は、アドレス信号発生部82から供給されるアドレス信号に従ってスイッチSW1を順次切り替え、各ゲート線62に接続されている各画素52に保持された電荷情報である放射線画像情報を信号線64を介して読み出し、マルチプレクサ68及びA/D変換器78を介してカセッテ制御部58の画像メモリ84に記憶させる。
【0039】
画像メモリ84に記憶された放射線画像情報は、送受信機60を介して、無線通信によりコンソール24に送信される。コンソール24は、受信した放射線画像情報に対して所定の画像処理を施した後、登録されている患者16の患者情報と関連付けて該放射線画像情報を記憶する。なお、画像処理の施された放射線画像情報は、コンソール24から表示装置22に送信され、表示装置22は、放射線画像情報を表示する。
【0040】
そして、図6に示されるように、患者16に対する撮影の完了後、この放射線検出カセッテ10を、別の放射線検出カセッテ10a、10bが収容された保管箱32の内部に収容する。この際、放射線検出カセッテ10は、例えば、保管箱32において収容されている別の放射線検出カセッテ10aの上部に積み重ねるように収容されるが、新たに収容される放射線検出カセッテ10の下面には、不織布からなる保護シート44が設けられているため、該放射線検出カセッテ10の下側となる別の放射線検出カセッテ10aの照射面40を傷つけることなく積層された状態で保管される。
【0041】
なお、放射線検出カセッテ10を、患者16に対する撮影前に保管箱32に収容しておく場合にも、その下方に収容されている別の放射線検出カセッテにおける照射面を傷つけることが防止される。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、放射線検出カセッテ10を構成するスクリーン30において、放射線14の照射される照射面40とは反対側の面42(下面)に保護シート44を設け、該保護シート44を、例えば、不織布から形成することにより、複数の放射線検出カセッテ10、10a、10bを上下方向に積層させて収容した場合でも、放射線検出カセッテ10、10aの照射面40が隣り合う別の放射線検出カセッテ10a、10bによって傷つけられることが確実に防止される。すなわち、放射線検出カセッテ10、10aの保護シート44は、該放射線検出カセッテ10、10aを積層させた際に、隣り合うように載置された別の放射線検出カセッテ10a、10bにおける照射面40を保護可能に設けられている。
【0043】
その結果、複数の放射線検出カセッテ10、10a、10bを積層させて保管することが可能となり、該放射線検出カセッテ10、10a、10bを限られたスペースで収容することができる。
【0044】
また、保護シート44は、スクリーン30における照射面40とは反対側となる面42のみに設けられているため、前記スクリーン30で放射線画像の撮影を行う際、放射線14の照射の妨げとなることがなく、前記保護シート44によって放射線画像に影響を与えることが回避される。その結果、放射線14の散乱を生じることがなく、ノイズの発生等が回避された鮮明な放射線画像を得ることが可能となる。
【0045】
さらに、スクリーン30に対して保護シート44を設けることなく、該スクリーン30における照射面40とは反対側の面42を、該照射面40に対して摩擦係数の小さな材質で形成するようにしてもよいし、前記面42を摩擦抵抗の小さい材質でコーティングするようにしてもよい。
【0046】
さらにまた、本実施の形態の放射線画像撮影システム12では、コンソール24と、放射線検出カセッテ10、放射線源18及び表示装置22との間で、無線通信により信号の送受信が行われるので、信号を送受信するためのケーブルが不要となり、医師又は放射線技師の作業に支障を来すおそれがない。従って、医師又は放射線技師は、自己の作業を効率よく行うことが可能となる。
【0047】
またさらに、本実施の形態では、医師又は放射線技師による放射線源18の撮影スイッチの操作に起因して放射線画像情報の撮影が行われるが、医師又は放射線技師によるコンソール24の操作に起因して放射線画像情報の撮影が行われるようにしてもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、放射線検出カセッテ10を図8の構成に代えてもよい。図8では、基板55から照射面40側に向かって、TFT層50、光電変換層54及びシンチレータ46の順に積層されている。この場合でも、シンチレータ46で変換された可視光を光電変換層54にて電気信号に変換することが可能であるので、上述した各効果が得られることは勿論である。
【0049】
さらに、本実施の形態では、上述した構成に代えて、例えば、入射した放射線14の線量をアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる固体検出素子を用いた光電変換層54によって直接電気信号に変換してもよい。
【0050】
また、光変換方式の放射線検出器を利用して放射線画像情報を取得することもできる。この光変換方式の放射線検出器では、マトリクス状に配列された各固体検出素子に放射線14が入射すると、その線量に応じた静電潜像が固体検出素子に蓄積記録される。静電潜像を読み取る際には、放射線検出器に可撓性を有する有機EL(Electro−Luminescence)パネル等から読取光を照射し、発生した電流の値を放射線画像情報として取得する。なお、放射線検出器は、消去光を放射線検出器に照射することで、残存する静電潜像である放射線画像情報を消去して再使用することができる(特開2000−105297号公報参照)。
【0051】
さらにまた、本実施の形態では、蛍光体に放射線画像情報としての放射線エネルギを蓄積し、励起光を照射することで前記放射線画像情報を輝尽発光光として取り出すことのできる蓄積性蛍光体パネルを、可撓性を有する放射線変換パネルとして構成してもよい。
【0052】
またさらに、放射線検出カセッテ10は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、放射線検出カセッテ10を防水性、密閉性を有する構造とし、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの放射線検出カセッテ10を繰り返し続けて使用することができる。
【0053】
また、放射線検出カセッテ10と外部機器との間での無線通信は、通常の電波による通信に代えて、赤外線等を用いた光無線通信で行うようにしてもよい。
【0054】
さらに、図9に示すように放射線検出カセッテ500を構成すると、一層好適である。
【0055】
すなわち、放射線検出カセッテ500には、スクリーン502の照射面40側に、撮影領域及び撮影位置の基準となるガイド線504が形成される。このガイド線504を用いて、放射線検出カセッテ500に対する被写体(患者16)の位置決めを行い、また、放射線14の照射範囲を設定することにより、放射線画像情報を適切な撮影領域に記録することができる。
【0056】
放射線検出カセッテ500の撮影領域外の部位には、当該放射線検出カセッテ500に係る各種情報を表示する表示部506を配設する。この表示部506には、放射線検出カセッテ500に記録される患者16のID情報、放射線検出カセッテ500の使用回数、累積曝射線量、放射線検出カセッテ500に内蔵されているバッテリ56の充電状態(残容量)、放射線画像情報の撮影条件、患者16の放射線検出カセッテ500に対するポジショニング画像等を表示させる。
【0057】
この場合、放射線技師は、例えば、表示部506に表示されたID情報に従って患者16を確認すると共に、当該放射線検出カセッテ500が使用可能な状態にあることを事前に確認し、表示されたポジショニング画像に基づいて患者16の所望の撮影部位を放射線検出カセッテ500に位置決めして、最適な放射線画像情報の撮影を行うことができる。
【0058】
また、スクリーン502に孔508を形成し、この孔508に図示しない紐を通して結ぶことにより、当該放射線検出カセッテ500の取り扱い、持ち運びが容易になる。
【0059】
さらに、ACアダプタの入力端子510と、USB(Universal Serial Bus)端子512と、メモリカード514を装填するためのカードスロット516とを配設すると好適である。
【0060】
入力端子510は、放射線検出カセッテ500に内蔵されているバッテリ56の充電機能が低下しているとき、あるいは、バッテリ56を充電するのに十分な時間を確保できないとき、ACアダプタを接続して外部から電力を供給することにより、当該放射線検出カセッテ500を直ちに使用可能な状態とすることができる。
【0061】
USB端子512又はカードスロット516は、放射線検出カセッテ500がコンソール24等の外部機器との間で無線通信による情報の送受信を行うことができないときに利用することができる。すなわち、USB端子512にケーブルを接続することにより、外部機器との間で有線通信による情報の送受信を行うことができる。また、カードスロット516にメモリカード514を装填し、このメモリカード514に必要な情報を記録した後、メモリカード514を取り出して外部機器に装填することにより、情報の送受信を行うことができる。
【0062】
また、手術室や病院内の必要な箇所には、図10に示すように、放射線検出カセッテ10に内蔵されるバッテリ56の充電を行うクレードル518を配置すると好適である。この場合、クレードル518は、バッテリ56を充電するだけでなく、クレードル518の無線通信機能又は有線通信機能を用いて、RIS26、HIS28、コンソール24等の外部機器との間で必要な情報の送受信を行うようにしてもよい。送受信する情報には、クレードル518に充電される放射線検出カセッテ10に記録された放射線画像情報を含めることができる。
【0063】
また、クレードル518に表示部520を配設し、この表示部520に対して、当該放射線検出カセッテ10の充電状態や、放射線検出カセッテ10から取得した放射線画像情報を含む必要な情報を表示させるようにしてもよい。
【0064】
また、複数のクレードル518をネットワークに接続し、各クレードル518に充電されている放射線検出カセッテ10の充電状態をネットワークを介して収集し、使用可能な充電状態にある放射線検出カセッテ10の所在を確認できるように構成することもできる。
【0065】
なお、本発明に係る放射線検出装置及び放射線画像撮影システムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態に係る放射線画像撮影システムの構成ブロック図である。
【図2】図2A及び図2Bは、図1の放射線検出装置の斜視図である。
【図3】図1の放射線検出装置の一部省略斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図2に示す複数の放射線検出装置が内部に収容された保管箱の一部省略正面図である。
【図7】図1の放射線検出器の回路構成ブロック図である。
【図8】図3のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】放射線検出カセッテの他の構成図である。
【図10】放射線検出カセッテの充電を行うクレードルの構成図である。
【符号の説明】
【0067】
10…放射線検出装置 12…放射線画像撮影システム
14…放射線 18…放射線源
20…放射線検出器 24…コンソール
30…スクリーン 32…保管箱
34…グリッド 36…センサ基板
38…鉛シート 40…照射面
42…面 44…保護シート
46…シンチレータ 50…TFT層
54…光電変換層 56…バッテリ
58…カセッテ制御部 60…送受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出して放射線画像情報に変換し、且つ、可撓性を有する放射線変換パネルにおいて、
前記放射線が照射される照射面とは反対側の面に、前記照射面に対して摩擦係数の小さく設定された保護部を備えることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記放射線変換パネルは、可撓性を有したスクリーンに内蔵され、該スクリーンには、前記照射面と反対側となる面に、前記保護部が設けられることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記保護部は、シート状に形成された不織布からなることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の装置において、
前記放射線変換パネルは、前記放射線を電気信号に変換するセンサ基板を有し、前記センサ基板が、前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を前記電気信号に変換する固体検出素子とからなることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記被写体に対して、前記固体検出素子及び前記シンチレータの順に配置されているか、あるいは、前記シンチレータ及び前記固体検出素子の順に配置されていることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置において、
外部と無線通信が可能な無線通信手段と、前記放射線変換パネルを制御する制御部と、前記放射線変換パネル、前記制御部及び前記無線通信手段を駆動するバッテリとが設けられることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置において、
前記放射線検出装置は、放射線検出カセッテであり、
前記スクリーンは、前記放射線を透過させる材料からなることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線検出装置と、前記放射線を出力する放射線源と、前記放射線源及び前記放射線検出装置を制御する制御装置とを有することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、
前記放射線検出装置は、前記放射線変換パネルにて変換された前記放射線画像情報を、無線通信により前記制御装置に送信することを特徴とする放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−78414(P2010−78414A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245989(P2008−245989)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】