説明

放射線治療用動体追跡装置

【課題】動体追跡を正確に行うことができる放射線治療用動体追跡装置を提供することを目的とする。
【解決手段】動体追跡を処理する動体追跡処理部5と、映像系2を支持して自身が可動する可動台座31,41を司り、映像系2の移動を制御するシーケンス制御装置6とを通信可能に構成する。このように構成することで、動体追跡処理部5およびシーケンス制御装置6の双方が情報を共有することができる。その結果、動体追跡処理部5およびシーケンス制御装置6の双方が互いの情報の状況を把握することができ、動体追跡を正確に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、治療部位に放射線を照射するために、治療部位に関する動体をX線透視撮影により追跡する放射線治療用動体追跡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動かない頭部を対象とした頭部の定位放射線治療が先ず開発され、次に、全身を対象として体幹部を固定した状態で治療部位の腫瘍も動かないと見なして放射線治療を行う体幹部の定位放射線治療が開発されてきた。しかし、全身を対象として体幹部を固定した状態で放射線治療を行う場合には、被検体に対して肉体的苦痛や精神的苦痛を強いることになる。また、体幹部を固定したとしても、治療部位の腫瘍が実際に動かずに定位置にあるとは限らない。
【0003】
そこで、被検体の体表面にマーカを置いて、被検体の呼吸同期を利用して体表面に置かれたマーカを追跡して、呼吸により所定位置に来たとき(例えば呼期)に治療部位に放射線を照射して放射線治療を行う定位放射線治療が近年開発されてきている。しかし、体表面に置かれたマーカの動きと体内の腫瘍の動きとが必ずしも一致しない。
【0004】
そこで、体内の腫瘍の近くにマーカを埋め込んで、そのマーカをX線透視撮影により追跡することにより、治療部位の腫瘍も追跡する放射線治療用動体追跡装置が近年開発されてきている。この放射線治療用動体追跡装置では、マーカが所定位置に来たときに治療部位に放射線を照射して放射線治療を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来の放射線治療用動体追跡装置では、動体追跡を行うためのX線透視撮影として映像系を備え、映像系は、X線を照射するX線管およびそのX線を検出するX線検出器(例えばイメージインテンシファイアまたはフラットパネル型X線検出器)からなる。映像系を動かして所望の位置でX線透視撮影を行う場合には、レールを敷設して、そのレールに沿って映像系を移動させる方式の他に、映像系を円形の可動台座に載せて移動させる方式がある。
【0006】
可動台座を司るシーケンス制御装置は、映像系の位置設定(セットアップ)情報に基づいて映像系の移動を制御して、可動台座自身が可動して映像系を移動させる。一方、放射線治療用動体装置は、操作室と治療室とに区分される。操作室には、動体追跡を処理する動体追跡処理部を配置しており、専用のコンソールからなる。そして、映像系によるX線透視撮影によって得られたX線画像に対するパターン認識や腫瘍の座標位置の計算などのような処理を動体追跡処理部が行う。このような専用のコンソールからなる動体追跡処理部の他に、操作室には、動体追跡処理部にコマンドや命令等を入力する操作卓(入力部)などを配置している。また、治療室には、映像系や可動台座の他に、治療部位に放射線を照射する放射線治療装置(例えばリニアックあるいはライナック)などを配置している。
【0007】
透視撮影用のX線が、放射線治療装置のガントリやベッドに遮られないようにするために、動体追跡を行う前に可動台座を動かして映像系の位置設定(セットアップ)を行う。一方、動体追跡処理部側には、映像系の位置によって変更されるパラメータがある。これは、X線管やX線検出器が有する3次元の位置情報(3次元位置計算用パラメータ)である。
【0008】
従来は、先ず、治療室内で映像系の位置設定情報を入力して、シーケンス制御装置を介して可動台座に送り込んで、可動台座を動かして映像系の位置設定(セットアップ)を行う。その後で、操作室内に戻り、専用のコンソールからなる動体追跡処理部で現在の映像系の位置に応じた3次元位置計算用パラメータを選択する、あるいは操作卓により入力して専用のコンソールからなる動体追跡処理部に送り込む。
【0009】
具体的に説明すると、装置の据え付け時に映像系あるいは可動台座の位置毎にパラメータを割り当てて、装置校正(キャリブレーション)にそのパラメータを用いる。例えば、位置#1にパラメータαを割り当て、位置#2にパラメータβを割り当て、位置#3にパラメータγを割り当てるというようにして、各々のパラメータを各々の位置毎に対応付ける。これら対応付けられたパラメータを動体追跡処理部側で記憶・保存しておくことで、これら保存された各パラメータの中から、オペレータ(操作者)は、動かしたい位置に対応付けられたパラメータを選択・入力する。例えば、動かしたい位置が位置#2の場合には、オペレータは、位置#2に対応付けられたパラメータβを選択・入力する。
【0010】
なお、実際にオペレータは、パラメータ数値を選択するわけでなく、数値の羅列からなるパラメータをオペレータが即座に認識できるように、パラメータと位置の表象(例えばラベルやアイコン図)とが互いに対応付けられている。したがって、オペレータがパラメータを選択・入力する際には、パラメータに対応付けられたラベルやアイコン図などの位置の表象を選択・入力するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3053389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来では、治療室に配置された可動台座と、操作室に配置された動体追跡処理部とが連動していないので、上述したように3次元位置計算用パラメータを選択あるいは入力する必要があり、3次元位置計算用パラメータの選択・入力が、実際の映像系の位置設定(セットアップ)の状況と異なる場合には、3次元位置計算を正確に行うことができず、ひいては動体追跡を行うことができない。
【0013】
より具体的に課題について説明すると、オペレータが手動で入力する(手入力する)ことにより誤操作が生じて、パラメータの選択・入力が、実際の映像系の位置設定(セットアップ)の状況と異なる場合が生じる。例えば、オペレータが複数人いたときに、治療室内にいたオペレータが可動台座を動かして映像系の位置設定(セットアップ)を行い、操作室内にいた別のオペレータが動体追跡処理部にて、可動台座を動かしたことに気づかない場合がある。
【0014】
例えば、治療室内にいたオペレータが可動台座を動かして位置#2にセットアップし、操作室内にいた別のオペレータが気づかずに動体追跡処理部にて位置#3に対応したパラメータγを選択・入力したとする。パラメータγを選択・入力するために、パラメータγに対応付けられた位置#3に関するラベルやアイコン図などを選択することにより誤操作が生じる。そのような場合には、操作室内にいた別のオペレータによって選択・入力されたパラメータγと、治療室内にいたオペレータによってセットアップされた位置#2との間に食い違いが生じる。
【0015】
また、操作室内にいた別のオペレータが仮に気づいたとしても、先に選択・入力してしまったパラメータγから、治療室内にいたオペレータがセットアップした位置#2に対応付けられたパラメータβに設定し直さなければならないという煩わしさがある。
【0016】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、動体追跡を正確に行うことができる放射線治療用動体追跡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る放射線治療用動体追跡装置は、治療部位に放射線を照射するために、前記治療部位に関する動体をX線透視撮影により追跡する放射線治療用動体追跡装置であって、動体追跡を処理する動体追跡処理手段と、前記X線透視撮影を行うためにX線を照射するX線管、および前記X線透視撮影を行うために前記X線を検出するX線検出手段からなる映像系と、前記映像系の移動を制御する移動制御手段とを備え、前記動体追跡処理手段と前記移動制御手段とを通信可能に構成することを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]この発明に係る放射線治療用動体追跡装置によれば、動体追跡を処理する動体追跡処理手段と、映像系の移動を制御する移動制御手段とを通信可能に構成することで、動体追跡処理手段および移動制御手段の双方が情報を共有することができる。その結果、動体追跡処理手段および移動制御手段の双方が互いの情報の状況を把握することができ、動体追跡を正確に行うことができる。
【0019】
上述した発明において、移動制御手段からの映像系に関する情報を動体追跡処理手段が受信するのが好ましい。移動制御手段からの映像系に関する情報を動体追跡処理手段が受信して、動体追跡処理手段が当該情報を把握することができるので、位置計算を正確に行うことができ、ひいては動体追跡を正確に行うことができる。
【0020】
上述したこれらの発明において、動体追跡処理手段から位置情報を移動制御手段に送信して、その位置情報に基づいて映像系を移動させるのが好ましい。動体追跡処理手段から移動制御手段を介して映像系の移動を制御することができる。
【0021】
上述したこれらの発明において、移動制御手段の一例は、映像系を支持して自身が可動する可動台座である。この一例の場合には、動体追跡処理手段と可動台座とを通信可能に構成するので、動体追跡処理手段および可動台座の双方が情報を共有することができる。その結果、動体追跡処理手段および可動台座の双方が互いの情報の状況を把握することができ、動体追跡を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る放射線治療用動体追跡装置によれば、動体追跡を処理する動体追跡処理手段と、映像系の移動を制御する移動制御手段とを通信可能に構成することで、動体追跡処理手段および移動制御手段の双方が情報を共有し、互いの情報の状況を把握することができ、動体追跡を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例に係る放射線治療用動体追跡装置の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】実施例に係る放射線治療用動体追跡装置のブロック図である。
【図3】変形例に係る放射線治療用動体追跡装置のブロック図である。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る放射線治療用動体追跡装置の概略図であり、図2は、実施例に係る放射線治療用動体追跡装置のブロック図である。
【0025】
図1に示すように、放射線治療用動体追跡装置は、映像系2(図1(a)の平面図を参照)を備え、放射線治療装置1と組み合わせて使用される。放射線治療装置1は、リニアックあるいはライナックと呼称される直線加速器タイプや、陽子線や炭素線などの粒子線装置タイプであり、X線や粒子線などの放射線を治療部位に照射する放射線源11と、その放射線源11を内部に有して図1(c)に示すy軸心周りに図1(b)に示す方向に回転可能なガントリ12と、そのガントリ12を支持して床面や壁面に配置される基台13と、治療の対象となる被検体(図示省略)を載置するベッド14とを備えている。ベッド14は、鉛直方向に昇降可能な昇降台14Aと、その昇降台14Aに対して水平方向にスライド可能で、被検体を載置する天板14Bとを備えている。映像系2は、この発明における映像系に相当する。
【0026】
図1(a)の平面図に示すように、映像系2は、X線透視撮影を行うためにX線を照射するX線管21と、X線透視撮影を行うためにX線を検出するX線検出器22とを備えている。図1に示すように、X線管21は、治療のアイソセンターに相当する腫瘍中心に向けてX線を照射し、X線検出器22は、アイソセンターから通ったX線を検出する。なお、X線検出器22については、イメージインテンシファイアやフラットパネル型X線検出器などに例示されるように、通常において用いられる検出器であれば、特に限定されない。X線管21は、この発明におけるX線管に相当し、X線検出器22は、この発明におけるX線検出手段に相当する。
【0027】
図1では、映像系2(図1(a)の平面図を参照)を2セット分備えている。具体的には、2つのX線管21を備えるとともに、2つのX線検出器22を備えている。映像系2のセット数については特に限定されない。
【0028】
その他に、放射線治療用動体追跡装置は、床面に配置された円形(図1(a)の平面図を参照)の可動台座31を備えている。X線管21を可動台座31に載せて移動させる。また、放射線治療用動体追跡装置は、天井面に配置された円形(図1(a)の平面図を参照)の可動台座41を備えている。X線検出器22を可動台座41に載せて移動させる。
【0029】
その他に、図2に示すように、放射線治療動体追跡装置は、動体追跡を処理する動体追跡処理部5を備えている。動体追跡処理部5は、画像収集部51とパターン認識部52と腫瘍座標計算部53と照射可能位置判断部54と照射指示部55とを備えている。動体追跡処理部5は、この発明における動体追跡処理手段に相当する。
【0030】
その他に、図2に示すように、放射線治療動体追跡装置は、映像系2を制御するシーケンス制御装置6を備えている。上述した動体追跡処理部5やシーケンス制御装置6は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、上述した可動台座31,41はCPUを搭載している。本実施例では、シーケンス制御装置6は可動台座31,41の移動を同期させつつ制御する。このように制御することで、可動台座31,41を介してシーケンス制御装置6は映像系2の移動を制御する。したがって、シーケンス制御装置6は、この発明における移動制御手段に相当する。
【0031】
動体追跡処理部5の画像収集部51は、映像系2のX線管21から照射されてX線検出器22で検出されたX線に基づくX線透視撮影によって得られたX線画像を収集する。動体追跡処理部5のパターン認識部52は、予め撮影されたマーカの画像情報と対象となるX線画像とのマッチングを行って、マッチング結果に基づいて当該対象となるX線画像にマーカが映り込んでいるか否かのパターン認識を行う。動体追跡処理部5の腫瘍座標計算部53は、埋め込まれたマーカと腫瘍との位置関係に基づいて腫瘍の座標を演算により求める。動体追跡処理部5の照射可能位置判断部54は、腫瘍の座標が所定位置(例えば呼期の位置)にあるか否かで照射可能位置を判断する。動体追跡処理部5の照射指示部55は、腫瘍の座標が所定位置に来たとき(例えば呼期)に、放射線治療装置1の放射線源11(図1を参照)から放射線を照射するコマンドを、放射線治療装置1に送り込む。
【0032】
また、放射線治療動体追跡装置は、動体追跡処理部5にコマンドや命令等を入力する入力部7を備えている。入力部7は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成され、本実施例では操作卓からなる。また、本実施例では、操作卓は、例えば「X線透視装置情報取得ボタン」や「X線透視装置設定ボタン」などを設けている。これらのボタンについては詳しく後述する。
【0033】
また、動体追跡処理部5と可動台座31,41を司るシーケンス制御装置6とを通信可能に構成する。ケーブルによって動体追跡処理部5とシーケンス制御装置6とを電気的に接続することによって、動体追跡処理部5とシーケンス制御装置6とを通信可能に構成する。もちろん、有線のケーブル以外に無線により、動体追跡処理部5とシーケンス制御装置6とを通信可能に構成してもよいし、有線と無線とを組み合わせてもよい。
【0034】
続いて、「X線透視装置情報取得ボタン」や「X線透視装置設定ボタン」の具体的なセットアップについて説明する。
【0035】
[X線透視装置情報取得ボタン]
先ず、オペレータ(操作者)は、治療室内で映像系2の位置設定情報を治療室側にある入力部(図示省略)により入力して、シーケンス制御装置6を介して可動台座31,41に送り込んで、可動台座31,41をそれぞれ動かして映像系2の位置設定(セットアップ)を行う。
【0036】
次に、オペレータは操作室へ移動し、入力部7によりコマンドを入力して動体追跡処理部5に送り込むことにより、動体追跡処理部5を操作する。例えば「X線透視装置情報取得ボタン」を押下する。
【0037】
「X線透視装置情報取得ボタン」を押下することにより、動体追跡処理部5とシーケンス制御装置6とがそれぞれ互いに通信する。そして、映像系2に関する情報として、現在の映像系2の位置設定(セットアップ)情報を動体追跡処理部5が受信する。
【0038】
動体追跡処理部5は、受信された位置設定情報に基づいて3次元位置計算用パラメータを自動的に設定して、動体追跡処理部5の画像収集部51やパターン認識部52や腫瘍座標計算部53や照射可能位置判断部54や照射指示部55などの位置演算にこれらのパラメータを用いる。
【0039】
したがって、従来のように動体追跡処理部側でパラメータを選択・入力する必要がなく、受信によってパラメータを自動的に設定することができる。治療室内にいたオペレータが可動台座31,41を動かして映像系2の位置設定(セットアップ)を行ったとしても、操作室内にいる別のオペレータが「X線透視装置情報取得ボタン」を押下することによりパラメータを自動的に設定するので、操作室内にいた別のオペレータによって選択・入力されたパラメータと、治療室内にいたオペレータによってセットアップされた位置との間に食い違いが生じることもない。
【0040】
[X線透視装置設定ボタン]
オペレータは、操作室内で入力部7によりコマンドを入力して動体追跡処理部5に送り込むことにより、動体追跡処理部5を操作する。例えば「X線透視装置設定ボタン」を押下する。
【0041】
「X線透視装置設定ボタン」を押下することにより、動体追跡処理部5とシーケンス制御装置6とがそれぞれ互いに通信する。そして、動体追跡処理部5からの位置情報として、動体追跡処理部5側で選択・入力された位置設定(セットアップ)情報を動体追跡処理部5がシーケンス制御装置6を介して可動台座31,41にそれぞれ送信する。送信と同時に、動体追跡処理部5側で選択・入力された位置設定(セットアップ)情報を3次元位置計算用パラメータとして内部で自動的に設定する。
【0042】
可動台座31,41を司るシーケンス制御装置6は、動体追跡処理部5から送信された位置設定情報に基づいて映像系2の移動を制御する。もし、可動台座31,41で設定された位置設定情報と、動体追跡処理部5から送信された位置設定情報とが違えば、動体追跡処理部5から送信された位置設定情報に基づいて映像系2の移動を制御することで、映像系2の位置変更を、動体追跡処理部5が配置された操作室から遠隔操作することができる。
【0043】
課題でも述べたように、操作室内にいた別のオペレータが仮に気づいたとしても、先に選択・入力してしまったパラメータγから、治療室内にいたオペレータがセットアップした位置#2に対応付けられたパラメータβに設定し直さなければならないという煩わしさがある。この煩わしさを解消するためには、データの流れを逆転させて、操作室内にいた別のオペレータが動体追跡処理部5にて既に入力したパラメータ(位置設定情報)を、治療室内のシーケンス制御装置6に送信して、動体追跡処理部5から送信されたパラメータ(位置設定情報)に基づいて映像系2の移動を制御すればよい。このようにデータの流れを逆転させることで、オペレータがパラメータ(位置設定情報)を設定し直す必要もなくなる。
【0044】
さらに、最初に可動台座31,41で位置設定情報を設定した後に、後で動体追跡処理部5で位置設定情報を設定した場合にも適用できる。この場合には、後で動体追跡処理部5で位置設定情報を設定してから「X線透視装置設定ボタン」を押下すれば、動体追跡処理部5から送信された位置設定情報を優先してセットアップを行うこともできる。
【0045】
上述の構成を備えた本実施例に係る放射線治療用動体追跡装置によれば、動体追跡を処理する動体追跡処理部5と、映像系2の移動を制御する移動制御手段(本実施例ではシーケンス制御装置6)とを通信可能に構成することで、動体追跡処理部5および移動制御手段の双方が情報を共有することができる。その結果、動体追跡処理部5および移動制御手段の双方が互いの情報の状況を把握することができ、動体追跡を正確に行うことができる。
【0046】
本実施例では、好ましくは、移動制御手段(本実施例ではシーケンス制御装置6)からの映像系2に関する情報を動体追跡処理部5が受信している。移動制御手段からの映像系2に関する情報を動体追跡処理部5が受信して、動体追跡処理部5が当該情報を把握することができるので、位置計算を正確に行うことができ、ひいては動体追跡を正確に行うことができる。
【0047】
本実施例では、好ましくは、動体追跡処理部5から位置情報を移動制御手段(本実施例ではシーケンス制御装置6)に送信して、その位置情報に基づいて映像系2を移動させている。動体追跡処理部5から移動制御手段を介して映像系2の移動を制御することができる。
【0048】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0049】
(1)上述した実施例では、移動制御手段は、シーケンス制御装置6であり、移動制御手段の機能と可動台座とを互いに分離させて構成したが、可動台座がCPUを搭載して、可動台座が、映像系の移動を制御する移動制御手段の機能をも搭載してもよい。例えば、図3に示すように、動体追跡処理部5と可動台座31,41とを通信可能に構成してもよい。この変形例(1)の場合には、可動台座31,41は、この発明における可動台座に相当し、この発明における移動制御手段にも相当する。なお、図3では、シーケンス制御装置6を可動台座31,41からそれぞれ独立分離して構成したが、シーケンス制御装置6の機能をも可動台座31,41が搭載してもよい。
【0050】
(2)上述した実施例では、可動台座31,41をX線管21用およびX線検出器22用とに分けたが、X線管21およびX線検出器22を一体的に動かすために、可動台座31,41を一体化させてもよい。その場合において、上述した実施例のように、移動制御手段の機能と可動台座とを互いに分離させて構成してもよい。
【0051】
(3)上述した実施例では、X線管21やX線検出器22を動かすのに可動台座を用いたが、X線管、X線検出器の少なくともいずれか一方を可動台座以外の移動手段(例えばレール)を用いて動かしてもよい。例えばX線管を移動させるのにレールを用いて、そのレールに沿ってX線管を移動させてもよいし、X線検出器を移動させるのにレールを用いて、そのレールに沿ってX線検出器を移動させてもよい。また、X線管またはX線検出器のいずれか一方を動かすのに可動台座を用いて、他方を動かすのに可動台座以外の移動手段(例えばレール)を用いて、可動台座とそれ以外の移動手段とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 … 映像系
21 … X線管
22 … X線検出器
31,41 … 可動台座
5 … 動体追跡処理部
6 … シーケンス制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療部位に放射線を照射するために、前記治療部位に関する動体をX線透視撮影により追跡する放射線治療用動体追跡装置であって、
動体追跡を処理する動体追跡処理手段と、
前記X線透視撮影を行うためにX線を照射するX線管、および前記X線透視撮影を行うために前記X線を検出するX線検出手段からなる映像系と、
前記映像系の移動を制御する移動制御手段と
を備え、
前記動体追跡処理手段と前記移動制御手段とを通信可能に構成することを特徴とする放射線治療用動体追跡装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線治療用動体追跡装置において、
前記移動制御手段からの前記映像系に関する情報を前記動体追跡処理手段が受信することを特徴とする放射線治療用動体追跡装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線治療用動体追跡装置において、
前記動体追跡処理手段から位置情報を前記移動制御手段に送信して、その位置情報に基づいて前記映像系を移動させることを特徴とする放射線治療用動体追跡装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線治療用動体追跡装置において、
前記移動制御手段は、前記映像系を支持して自身が可動する可動台座であることを特徴とする放射線治療用動体追跡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196326(P2012−196326A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62630(P2011−62630)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】