説明

放射線測定器

【課題】放射線の強度が弱い場合や汚染範囲が小さい場合でも、測定対象物から放出される放射線を確実に検出することができる放射線測定器を提供する。
【解決手段】放射線測定器の演算部21は、第1積算値を第1計測時間で除して第1計数率を算出する第1計数率算出手段と、第1計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第1検出限界値を所定の信頼度に基づいて算出する第1検出限界値算出手段と、第2積算値を第2計測時間で除して第2計数率を算出する第2計数率算出手段と、第2計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第2検出限界値を第1検出限界値よりも高い信頼度に基づいて算出する第2検出限界値算出手段とを有する。演算部21は、第1計数率が第1検出限界値以上であるときに表示部22に第1警告信号を発信させ、第2計数率が第2検出限界値以上であるときに表示部22に第2警告信号を発信させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物から放出される放射線を時系列で測定する放射線測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光体による視覚表示手段が形成された検出部と、あらかじめ基準値が設定された演算部とを有し、測定対象物の表面に検出部を近づけ、測定対象物の表面に沿って検出部を所定の速度で移動させることで測定対象物から放出される放射線を時系列で検出するサーベイメータがある(特許文献1参照)。このサーベイメータは、放射線が検出部に入射すると放射線のパルスに同期して発光体が点滅するとともに、検出部に入射した放射線が基準値を超えると発光体が連続点灯する。基準値は、測定対象物から放出される放射線の許容値を示す。
【特許文献1】特開2001−228256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放射性原子の壊変や放射線と物質との反応は、量子論によって支配される現象であり、確率的法則に従って起こる。放射線を測定する場合、放射線の偶発的な発生に特有の統計的揺らぎが存在するため、統計的に決まる不確かさが生じる。ゆえに、測定対象物から放出される放射線を一定時間測定したとしても、確率分布に従って測定値がその平均値の付近に分布し、測定値が常時一定の値を示すことはなく、平均値を含むその近傍の値として測定される。レートメータ方式の測定器において放射線測定に対する時定数が短い場合は、放射線に対して素早く反応するが、測定値の変動が大きく、安定した測定値を得ることができない。一方、時定数が長い場合は、測定値の変動は小さいが、正確な測定値を得るまでに所定の時間を要する。なお、測定対象物の放射能汚染を測定する測定場所には、特定の汚染源から放出される放射線の他に、特定の汚染源を除く自然または人工の線源から放出されるバックグラウンド放射線がある。放射線強度がきわめて弱い放射線場を測定すると、対象とする放射線の計数率がバックグラウンド放射線の計数率の統計的揺らぎに埋もれてしまう場合がある。
【0004】
前記特許文献1に開示のサーベイメータは、測定対象物が特定の汚染源によって放射能汚染されていたとしても、汚染が基準値をわずかに超える強さであってかつ汚染面積が小さいと、時系列的に表示される測定値が正確な値を示す前に減衰し、測定値が基準値を超えることがなく、発光体が点灯することがないので、その汚染を許容範囲として見落としてしまう場合がある。また、このサーベイメータは、測定場所におけるバックグラウンド放射線と特定の汚染源から放出された放射線とを区別する手段がなく、バックグラウンド放射線の異なる場所に移動した場合やバックグラウンド放射線が変動した場合、常にバックグラウンド放射線を考慮して基準値を設定しなければならない。このサーベイメータは、放射線測定器の測定条件における検出限界値を管理基準とする施設で使用する場合、バックグラウンド放射線や測定条件によって変動する検出限界値をあらかじめ算出し、それを基準値として設定しなければならず、迅速かつ確実な放射線検出を行うことが難しい。
【0005】
本発明の目的は、放射線の強度が弱い場合や汚染範囲が小さい場合でも、測定対象物から放出される放射線を確実に検出することができる放射線測定器を提供することにある。また、測定場所におけるバックグラウンド放射線と特定の汚染源から放出された放射線とを区別することができ、バックグラウンド放射線をわずかに超えるきわめて弱い放射線を迅速かつ確実に検出することができる放射線測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、測定対象物から放出される放射線を時系列で検出し、検出した放射線を電気的なパルスに変換する検出部と、検出部から入力されたパルスに基づいて放射線の計数率を算出する演算部と、測定対象物における放射能汚染を外部に警告する表示部とを備えた放射線測定器である。
【0007】
前記前提における本発明の特徴は、演算部が、所定の第1計測時間(秒単位)に基づいてパルスを集計して第1積算値を順次算出し、第1積算値を第1計測時間で除して第1計数率を順次算出する第1計数率算出手段と、第1計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第1検出限界値を確率分布における所定の信頼度に基づいて算出する第1検出限界値算出手段と、第1計測時間よりも長い所定の第2計測時間(秒単位)に基づいてパルスを集計して第2積算値を順次算出し、第2積算値を第2計測時間で除して第2計数率を順次算出する第2計数率算出手段と、第2計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第2検出限界値を第1検出限界値よりも高い信頼度に基づいて算出する第2検出限界値算出手段とを有し、第1計数率と第1検出限界値とを比較して第1計数率が第1検出限界値以上であるときに表示部に第1警告信号を発信させ、第2計数率と第2検出限界値とを比較して第2計数率が第2検出限界値以上であるときに表示部に第2警告信号を発信させることにある。
【0008】
本発明の実施態様の一例として、測定器では、第1計測時間を1〜6秒の範囲で設定可能であり、第2計測時間を7〜30秒の範囲で設定可能である。
【0009】
本発明の実施態様の他の一例として、測定器では、第1検出限界値を算出するときの信頼度を68.26〜95.44%の範囲で設定可能であり、第2検出限界値を算出するときの信頼度を95.44〜99.73%の範囲で設定可能である。
【0010】
本発明の実施態様の他の一例としては、演算部が第1検出限界値以上であるときの第1計数率と第2検出限界値以上であるときの第2計数率とを記憶する記憶手段を有する。
【0011】
本発明の実施態様の他の一例としては、第1警告信号と第2警告信号とが可視光信号と可聴音信号とのうちの少なくとも該可視光信号である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる放射線測定器によれば、第1計数率が第1計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第1検出限界値以上であるときに表示部に第1警告信号を発信させるので、測定対象物の放射能汚染が弱い場合や放射能の汚染範囲が小さい場合でも、測定対象物から放出される放射線を確実に検出することができる。この測定器は、測定場所におけるバックグラウンド放射線をわずかに超えるきわめて弱い放射線をバックグラウンド放射線と区別して検出することができるので、測定対象物から放出される放射線がバックグラウンド放射線の統計的揺らぎに埋もれてしまうことはなく、測定対象物におけるわずかな放射能汚染を見落としてしまうことはない。
【0013】
この測定器は、第1測定時間よりも長い第2測定時間で測定対象物から放出される放射線を測定し、第1計数率よりも変動が少ない安定した第2計数率を算出することができ、さらに、第2計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第2比較計数率を第1比較計数率よりも高い信頼度で算出し、第2計数率が第2検出限界値以上であるときに表示部に第2警告信号を発信させるので、第1計測時間に比較して測定対象物から放出される放射線を高い確率および高い信頼度で検出することができる。この測定器では、測定対象物から放出される放射線を第1計測時間で測定すると測定器が直ちに反応するので、測定対象物における放射能汚染を素早く検出することができ、さらに、放射線を第2計測時間で測定するので、変動が少ない安定した第2計数率を得ることができ、迅速かつ高い信頼度で放射線の検出を行うことができる。
【0014】
第1計測時間が1〜6秒の範囲で設定可能であり、第2計測時間が7〜30秒の範囲で設定可能である測定器は、測定対象物における放射能汚染の強弱や測定対象物における放射能の汚染範囲の大小によって最適な第1計測時間と第2計測時間とを設定することができるので、迅速かつ正確な放射線検出を行うことができる。
【0015】
第1検出限界値を算出するときの信頼度を68.26〜95.44%の範囲で設定可能であり、第2検出限界値を算出するときの信頼度を95.44〜99.73%の範囲で設定可能である測定器は、測定対象物における放射能汚染の強弱や測定対象物における放射能の汚染範囲の大小によって第1および第2検出限界値を算出するときの最適な信頼度を設定することができ、高い確率および高い信頼度で放射線の検出を行うことができる。
【0016】
演算部が第1検出限界値以上であるときの第1計数率と第2検出限界値以上であるときの第2計数率とを記憶する記憶手段を有する測定器は、測定対象物の放射能汚染測定後に演算部に格納された第1および第2計数率を分析することで、測定対象物における放射能の汚染レベルを知ることができる。
【0017】
第1警告信号と第2警告信号とが可視光信号と可聴音信号とのうちの少なくとも該可視光信号である測定器は、第1および第2警告信号を介して測定対象物の放射能汚染を外部に確実に伝えることができ、放射能汚染の見落としを確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面を参照し、本発明に係る放射線測定器の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0019】
図1,2は、一例として示す放射線測定器1の外観斜視図と、測定器1のハードウェアの一例を示す概略ブロック図とである。測定器1は、図1に示すように、正面に検出窓4を有するプローブ2と、プローブ2に一連につながるハンドル3とから形成されている。プローブ2の背面には、2つの発光部5,6と1つの発音部7とが形成され、液晶パネル8とスイッチ9とが取り付けられている。ハンドル3の背面には、測定条件の変更を行うテンキーパネル10が取り付けられている。ただし、測定器1を図示の形状に限定するものではない。
【0020】
測定器1は、図2に示すように、検出部20および演算部21と、表示部22とから構成されている。測定器1を使用して測定対象物11から放出される放射線を測定するには、操作者がハンドル3を把持し、測定対象物11に検出部20(検出窓4)を対向させた状態で検出部20を測定対象物11の表面に近づけ、測定対象物11の表面に沿って測定器1を矢印Lの方向へ所定の速度で移動させる。または、測定対象物11の表面近傍に検出部20(検出窓4)を対向位置させた状態で測定器1を固定し、測定対象物11を矢印Lの方向へ所定の速度で移動させる。測定器1や測定対象物11の移動速度は、3〜7cm/secである。
【0021】
検出部20は、放射線を時系列で検出し、検出した放射線を電気的なパルスに変換して演算部21に出力する。検出部20は、検出器23と、検出器23に接続された高圧電源24と、検出器23に接続されたプリ増幅器25と、プリ増幅器25に接続された比例増幅器26と、比例増幅器26に接続されたA/Dコンバータ27とから形成されている。検出器20には、シンチレーションヘッドや半導体検出器ヘッド、比例計数管、GM計数管のうちのいずれかを使用することができる。検出部20から出力されたパルスは、プリ増幅器25と比例増幅器26とで増幅された後、A/Dコンバータ27でデジタル信号に変換される。検出部20は、デジタル信号を演算部21に出力する。
【0022】
シンチレーションヘッドは、シンチレータと光電子増倍管とから形成されている。シンチレーションヘッドでは、放射線のエネルギーがシンチレータ内で光電効果、コンプトン散乱、電子対生成の各反応によって電子に移り、その電子が吸収されてシンチレータが励起され、シンチレータが光を放出する。放出された光が光電子倍増管に達すると、光電面から光電子が放出されて管内で倍増され、電気的なパルスとして出力される。このパルスの波高値(発光量)がシンチレータ内に吸収された放射線のエネルギースペクトルに相当する。シンチレータには、無機シンチレータや有機シンチレータが使用される。
【0023】
半導体検出器ヘッドでは、半導体の空乏層に放射線が入射すると、その飛跡に沿って価電子バンドから伝導バンドに電子が励起され、価電子バンドに電子・正孔対が生ずる。ここで、半導体に逆方向電圧を印加すると、半導体内に電場が生じ、電子と正孔とがドリフト速度でn側電極とp側電極とに集められ、半導体に放射線のエネルギー損失に比例した電流が流れ、この電流をパルスとして計測する。半導体検出器ヘッドには、Ge(Li)検出器やSi(Li)検出器、CdTe検出器、CdZnTe検出器等を使用することができる。また、半導体検出器ヘッドには、印加電圧によって空乏層の厚みが変化する障壁型や印加電圧に依存しない均一電場の均一型を使用することができる。
【0024】
比例計数管は、不活性ガスを封入した管内に架設された芯線に高電圧を印加し、イオンと電子とがガスに衝突して増幅作用が起こる比例領域で動作させる計数管であり、増幅して生じる二次電子数が一次電子数に比例するように、印加する電圧の値が設定されている。比例計数管では、入射した放射線がガスに光電吸収され、放射線のエネルギーに比例した数の一次電子が生じ、一次電子が電場によって芯線に移動する。一次電子が芯線近傍の電場が強い領域に達すると、加速された電子がガスを電離し、増幅作用によって二次電子が増加し、電子が芯線に達して電気的なパルスが発生する。このパルスの波高値(発光量)が比例計数管内に入射した放射線のエネルギースペクトルに相当する。比例計数管には、反跳陽子比例計数管やHe比例計数管を使用することができる。
【0025】
GM計数管は、一次イオン対の数に無関係に一定の出力電流が得られるガイガー領域で動作させる計数管である。GM計数管では、不活性ガスを封入した管内に同軸の互いに絶縁された陰極と陽極とを有する電極を設置し、電極間に一定の電圧を印加して入射した放射線によって生じた一次イオン対をガス増幅し、ガス増幅されたイオンを電離電流として取り出し、電離電流を電圧パルスとして計測する。GM計数管には、外部消滅計数管や内部消滅計数管を使用することができる。
【0026】
演算部21は、検出部20から入力されたパルスに基づいて第1および第2計数率C1,C2を算出するとともに、第1および第2検出限界値n1,n2を算出する。演算部21は、A/Dコンバータ27にインターフェイスを介して接続されたコントローラ28と、コントローラ28に接続されたキャッシュメモリ29(主記憶装置)とから形成されたマイクロコンピュータである。コントローラ28は、マイクロプロセッサと入出力処理装置とから形成されている(図示せず)。マイクロプロセッサは、メモリ29に記憶されたオペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリ29からアプリケーションプログラムを起動し、プログラムに従って後記する各手段を実行する。マイクロプロセッサは、実行する各手段に対応するプログラムをメモリ29から随時取り込んで解読し、必要なコマンドを検出部20や入出力処理装置を介して表示部22に出力する。メモリ29は、マイクロプロセッサから出力された各データを内部アドレスファイルに記憶することができる。なお、演算部21には、マイクロプロセッサの他に、ゲートアレイやフィールドプログラマブルゲートアレイ、専用ハードウェアのうちのいずれかを使用することもできる。
【0027】
表示部22は、演算部21からの指令に基づいて測定対象物11における放射能汚染を外部に警告する。表示部22は、テンキーパネル10につながるテンキーモジュール30(入力装置)と、液晶パネル8を介して放射線の計数率C1,C2や検出限界値n1,n2をリアルタイムで表示する液晶ディスプレイ31(表示装置)と、放射能汚染を外部に警告する可視光発生装置32および可聴音発生装置33とから形成されている。テンキーモジュール30やディスプレイ31、可視光発生装置32、可聴音発生装置33は、インターフェイスを介してコントローラ28に接続されている。測定器1は、放射線の計数率C1,C2を印字情報として出力するプリンタ(出力装置)を装備することもできる。
【0028】
可視光発生装置32は、異なる色調の光を点灯または点滅させる2つの発光ダイオード(図示せず)から形成され、発光部5,6に取り付けられている。それら発光ダイオードは、一方が第1警告信号を示す黄色に発光し、他方が第2警告信号を示す赤色に発光する。ただし、それら発光ダイオードの発光色が異なる色調であればよく、発光ダイオードの発光色を黄色や赤色に限定するものではない。可聴音発生装置33は、発音部7に取り付けられ、黄色の発光に同調して所定の第1音響を所定の間隔で発生し、赤色の発光に同調して第1音響と異なる所定の第2音響を所定の間隔で発生する。第1音響は第1警告信号を示し、第2音響は第2警告信号を示す。
【0029】
図3,4は、測定対象物11から放出される放射線を測定したときの放射線の時間的変化の一例を示すイメージ図であり、図5,6は、演算部21における処理の一例を示すフローチャート図と、放射線の計数率C1,C2の変動を示す確率分布曲線を示す図とである。図3,4では、縦軸に計測されたパルスP(単位:Sec−1、以下S−1と略す)を表し、横軸に経過時間(単位:sec)を表す。図3では、測定器1が測定対象物11の表面に沿って図の左方から右方へ向かって所定の速度で移動する。図4では、測定器1が測定対象物11の汚染源12に向かって図の左方から右方へ所定の速度で移動し、汚染源12上で測定器1を所定時間静止させた後、リセットされた測定器1が再び汚染源12から図の右方へ向かって所定の速度で移動する。
【0030】
測定器1では、第1計測時間t1(秒単位)と第2計測時間t2(秒単位)との2つの計測時間で放射線を測定する。第1計測時間t1はテンキーパネル10を介して1〜6秒の範囲で設定することができ、第2計測時間t2はテンキーパネル10を介して7〜30秒の範囲で設定することができる。この測定器1では、測定対象物11を測定する前に、測定場所におけるバックグラウンド放射線を測定する(S−1)。バックグラウンド放射線は、自然または人工の線源から放出される放射線である。バックグラウンド放射線を測定するには、測定器1のスイッチ9をONにし、テンキーパネル10を介して第1計測時間t1と第2計測時間t2と設定する。次に、テンキーパネル10のB/G(バックグラウンド)キー(図示せず)を押し、テンキーパネル10を介してバックグラウンド放射線の計測時間tbを設定した後、測定器1を測定対象物11から離した状態で測定場所に一定時間放置する。
【0031】
バックグラウンド放射線の計測時間tbが経過すると、可聴音発生装置32を介して発音部7から測定終了を示す所定の音が発生する。測定器1では、測定場所におけるバックグラウンド放射線が検出部20に入射すると、検出部20が放射線を電気的なパルスPaに変換してパルスPaを演算部21に出力する。バックグラウンド放射線のパルスPaは、1秒間隔で計数されている。パルスPaが入力された演算部21では、第1計測時間t1に対応したバックグラウンド放射線とみなす第1検出限界値n1を確率分布における所定の第1信頼度に基づいて算出し(第1検出限界値算出手段)、第2計測時間t2に対応したバックグラウンド放射線とみなす第2検出限界値n2を確率分布における所定の第2信頼度に基づいて算出する(第2検出限界値算出手段)(S−2)。第2信頼度は、その信頼率が第1信頼度のそれよりも高い。
【0032】
なお、この実施の形態では、第1計測時間t1が2秒、第2計測時間t2が8秒であり、バックグラウンド放射線の計測時間tbが30秒である。バックグラウンド放射線の計測時間tbは、テンキーパネル10を介して10〜60秒の範囲で設定することができる。バックグラウンド放射線の計数率を含む第1検出限界値n1の算出式とバックグラウンド放射線の計数率を含む第2検出限界値n2の算出式とを以下の数1に示す。
【数1】

k:標準偏差(σ)の倍数
t1:第1計測時間
t2:第2計測時間
tb:バックグラウンド放射線の計測時間
Nb:バックグラウンド放射線の計数率
i:バックグラウンド放射線の測定開始からの経過時間(秒)
Pa(i):経過時間i秒におけるバックグラウンド放射線の1秒間のパルス数
【0033】
kは、バックグラウンド放射線の揺らぎの幅を決める数値で、統計上の信頼率に基づいて選択される。第1検出限界値n1ではkの値が2であり、第2検出限界値n2ではkの値が3である。第1検出限界値n1の算出式におけるkの値は、テンキーパネル10を介して1〜2の範囲で設定可能である。第2検出限界値n2の算出式におけるkの値は、テンキーパネル10を介して2〜3の範囲で設定可能である。
【0034】
kの値が1の場合は、信頼度が68.26%であって、確率分布する母集団のμ(平均値)±1σ(標準偏差の1倍)の範囲に放射線の測定値(計数率)が68.26%の確率で含まれ、バックグラウンド放射線の計数率が検出限界値n1を超えて計数される確率がプラス側に15.87%となる。kの値が1では、測定した放射線の測定値(計数率)がバックグラウンド放射線の計数率の統計的揺らぎに埋もれてしまう確率が高く、統計的な不確かさが大きい。kの値が2の場合は、信頼度が95.44%であって、確率分布する母集団のμ(平均値)±2σ(標準偏差の2倍)の範囲に放射線の測定値(計数率)が95.44%の確率で含まれ、バックグラウンド放射線の計数率が検出限界値n1,n2を超えて計数される確率がプラス側に2.28%となり、kの値が1の場合よりも統計的な不確かさが小さくなる。kの値が3の場合は、信頼度が99.73%であって、確率分布する母集団のμ(平均値)±3σ(標準偏差の3倍)の範囲に放射線の測定値(計数率)が99.73%の確率で含まれ、バックグラウンド放射線の計数率が検出限界値n2を超えて計数される確率がプラス側に0.135%となる。kの値が3では、測定した放射線の測定値(計数率)がバックグラウンド放射線の計数率の統計的揺らぎに埋もれてしまう確率が低く、統計的な不確かさが最も小さい。
【0035】
第1計測時間t1の場合は、図6に示すように、平均値μは変わらないが、第2計測時間t2の場合よりも標準偏差σが大きくなって確率分布曲線が左右に広がるとともに確率分布曲線の高さが低くなり、第2計測時間t2の場合よりも放射線の測定値(計数率)のばらつきが大きくなる。第2計測時間t2よりも短い第1計測時間t1で放射線を測定すると、放射線の測定値(計数率)を素早く算出することができるが、測定値の変動が大きく、測定値が不安定になる。逆に、第1計測時間t1よりも長い第2計測時間t2で放射線を測定すると、放射線の測定値(計数率)の算出に時間を要するが、測定値の変動が小さく、安定した測定値を得ることができる。
【0036】
算出した第1検出限界値n1と第2検出限界値n2とは、メモリ29の内部アドレスファイルに記憶されるとともに(S−3)、液晶パネル8に表示される。操作者は、液晶パネル8を介して第1および第2検出限界値n1,n2を視認することができる。この実施の形態では、バックグラウンド放射線の計数率の平均値が2.3(S−1)であり、第1計測時間t1に対応したバックグラウンドを含む第1検出限界値n1が2σ(k=2、標準偏差σの2倍):5.7(S−1)、第2計測時間t2に対応したバックグラウンドを含む第2検出限界値n2が3σ(k=3、標準偏差σの3倍):4.6(S−1)である(図3,4参照)。なお、kの値が1のときの検出限界値n1は1σ(標準偏差σの1倍):3.7(S−1)であり、kの値が1.5のときの検出限界値n1は1.5σ(標準偏差σの1.5倍):4.6(S−1)である。kの値が2のときの検出限界値n2は2σ(標準偏差σの2倍):3.8(S−1)である。第1検出限界値n1と第2検出限界値n2とは、テンキーパネル10のBS/R(バックグラウンドリセット)キー(図示せず)を押すことでメモリ29から消去することができる。
【0037】
第1検出限界値n1と第2検出限界値n2とを算出した後は、測定対象物11を測定する(S−4)。測定対象物11から放出される放射線は、検出部20に入射し、検出部20が放射線を電気的なパルスPbに変換してパルスPbを演算部21に出力する。測定対象物11の放射線のパルスPbは、1秒間隔で計数されている。検出部20からパルスPbが入力された演算部21は、第1計測時間t1に基づいてパルスPを集計して時間的に連続する多数の第1積算値W1を順次算出し、第1積算値W1を第1計測時間t1で除して時間的に連続する多数の第1計数率C1を順次算出する(第1計数率算出手段)。演算部21は、第2計測時間t2に基づいてパルスPを集計して時間的に連続する多数の第2積算値W2を順次算出し、第2積算値W2を第2計測時間t2で除して時間的に連続する多数の第2計数率C2を順次算出する(第2計数率算出手段)(S−5)。第1計数率の算出式を以下の数2に示し、第2計数率の算出式を以下の数3に示す。
【数2】

【数3】

t1:第1計測時間
t2:第2計測時間
j:測定対象物の測定開始からの経過時間(秒)
Pb(j):経過時間j秒における計数放射線の1秒間のパルス数
【0038】
図3における第1計数率C1(j)は、測定器1が図3の左端から汚染源12へ向かったときの第1計数率C1(j)が{C1(2)=(2+3)÷2=2.5(S−1)、C1(3)=(3+4)÷2=3.5(S−1)、C1(4)=(4+2)÷2=3.0(S−1)・・・}、測定器1が測定対象物11の汚染源12上を通過するときの第1計数率C1(j)が{C1(20)=(4+5)÷2=4.5(S−1)、C1(21)=(5+7)÷2=6.0(S−1)、C1(22)=(7+2)÷2=4.5(S−1)}、図3の右端の3つ前からの第1計数率C1(j)が{・・・C1(48)=(3+1)÷2=2.0(S−1)、C1(49)=(1+2)÷2=1.5(S−1)、C1(50)=(2+2)÷2=2.0(S−1)}である。
【0039】
図3における第2計数率C2(j)は、測定器1が図3の左端から汚染源12へ向かうときの第2計数率C2(j)が{C2(8)=(2+3+4+2+1+2+3+2)÷8=2.4(S−1)、C2(9)=(3+4+2+1+2+3+2+1)÷8=2.3(S−1)、C2(10)=(4+2+1+2+3+2+1+3)÷8=2.3(S−1)・・・}、測定器1が測定対象物11の汚染源12上を通過するときの第2計数率C2(j)が{C2(20)=(1+2+2+3+1+2+4+5)÷8=2.5(S−1)、C2(21)=(2+2+3+1+2+4+5+7)÷8=3.3(S−1)、C2(22)=(2+3+1+2+4+5+7+2)÷8=3.3(S−1)}、図3の右端の3つ前からの第2計数率C2(j)が{・・・C2(48)=(2+4+2+1+2+4+3+1)÷8=2.4(S−1)、C2(49)=(4+2+1+2+4+3+1+2)÷8=2.4(S−1)、C2(50)=(2+1+2+4+3+1+2+2)÷8=2.1(S−1)}である。
【0040】
図4における第1計数率C1(j)は、測定器1が図4の左端から汚染源12へ向かうときの第1計数率C1(j)が{C1(2)=(2+3)÷2=2.5(S−1)、C1(3)=(3+4)÷2=3.5(S−1)、C1(4)=(4+2)÷2=3.0(S−1)・・・}、測定器1が測定対象物11の汚染源12上に静止したときの第1計数率C1(j)が{C1(21)=(5+7)÷2=6.0(S−1)、C1(22)=(7+4)÷2=5.5(S−1)、C1(23)=(4+6)÷2=5.0(S−1)・・・・C1(32)=(5+4)÷2=4.5(S−1)、C1(33)=(4+7)÷2=5.5(S−1)、C1(34)=(7+5)÷2=6.0(S−1)}、リセットした後の第1計数率C1(j)が{C1(36)=(0+1)÷2=0.5(S−1)、C1(37)=(1+3)÷2=2.5(S−1)、C1(38)=(3+2)÷2=2.5(S−1)・・・}、図4の右端の3つ前からの第1計数率C1(j)が{C1(48)=(3+1)÷2=2.0(S−1)、C1(49)=(1+2)÷2=1.5(S−1)、C1(50)=(2+2)÷2=4.0(S−1)}である。
【0041】
図4における第2計数率C2(j)は、測定器1が図4の左端から汚染源12へ向かうときの第2計数率C2(j)が{C2(8)=(2+3+4+2+1+2+3+2)÷8=2.4(S−1)、C2(9)=(3+4+2+1+2+3+2+1)÷8=2.3(S−1)、C2(10)=(4+2+1+2+3+2+1+3)÷8=2.3(S−1)・・・}、測定器1が測定対象物11の汚染源12上に静止したときの第2計数率C2(j)が{C2(21)=(2+2+3+1+2+4+5+7)÷8=3.3(S−1)、C2(22)=(2+3+1+2+4+5+7+4)÷8=3.5(S−1)、C2(23)=(3+1+2+4+5+7+4+6)÷8=4.0(S−1)・・・・C2(32)=(6+4+7+6+7+4+5+4)÷8=5.4(S−1)、C2(33)=(4+7+6+7+4+5+4+7)÷8=5.5(S−1)、C2(34)=(7+6+7+4+5+4+7+5)÷8=5.6(S−1)}、リセットした後の第2計数率C2(j)が{C2(36)=(0+0+0+0+0+0+0+1)÷8=0.1(S−1)、C2(37)=(0+0+0+0+0+0+1+3)÷8=0.5(S−1)、C2(38)=(0+0+0+0+0+1+3+2)÷8=0.8(S−1)・・・}、図4の右端の3つ前からの第2計数率C2(j)が{・・・C2(48)=(2+4+2+1+2+4+3+1)÷8=2.4(S−1)、C2(49)=(4+2+1+2+4+3+1+2)÷8=2.4(S−1)、C2(50)=(2+1+2+4+3+1+2+2)÷8=2.1(S−1)}である。
【0042】
演算部21は、算出した第1検出限界値n1と時系列で測定したそれら第1計数率C1とを順次比較し(S−6)、算出した第2検出限界値n2と時系列で測定したそれら第2計数率C2とを順次比較する(S−7)。演算部21は、第1計数率C1が第1検出限界値n1以上であると判断すると、可視光発生装置32を介して発光部5を黄色に発光させる指令を表示部22に出力し、可聴音発生装置33を介して発音部7に第1音響を所定の間隔で発生させる指令を表示部22に出力する(S−8)。表示部22では、演算部21からの指令に基づいて発光部5を黄色に発光させるとともに、発音部7に第1音響を所定の間隔で発生させる。演算部21は、第2計数率C2が第2検出限界値n2以上である判断すると、可視光発生装置32を介して発光部6を赤色に発光させる指令を表示部22に出力し、可聴音発生装置33を介して発音部7に第2音響を所定の間隔で発生させる指令を表示部22に出力する(S−9)。表示部22では、演算部21からの指令に基づいて発光部6を赤色に発光させるとともに、発音部7に第2音響を所定の間隔で発生させる。なお、演算部21は、それら第1計数率C1が第1検出限界値n1未満であると、発光部5を黄色に発光させる指令や発音部7に第1音響を所定の間隔で発生させる指令を出力することはない。また、それら第2計数率C2が第2検出限界値n2未満であると、発光部6を赤色に発光させる指令や発音部7に第2音響を所定の間隔で発生させる指令を出力することはない。
【0043】
図3では、測定器1が測定対象物11の汚染源12上を通過するときに、第1計数率C1が6.0(S−1)を示し、第1検出限界値n1の5.7(S−1)以上となり、発光部5が黄色に発光し、発音部7が第1音響を所定の間隔で発生する。演算部21は、第1検出限界値n1以上であるときの第1計数率C1をメモリ29の物理アドレス領域に格納する(記憶手段)(S−10)。操作者は、発光部5の黄色の発光と発音部7の第1音響の発生とによって測定対象物11が特定の汚染源12で放射能汚染されていることや測定対象物11の汚染部分を知ることができる。なお、図3では、第2計数率C2が第2検出限界値n2の4.6(S−1)以上となることはないので、発光部6が赤色に発光することはなく、発音部7が第2音響を発生することはない。
【0044】
操作者は、発光部5が黄色に発光し、発音部7が第1音響を発生することで判明した汚染部分に戻り、図4に示すように、測定器1を測定対象物11の汚染源12上に静止させて放射線を測定する。汚染源12上における測定器1の静止時間は、第2計測時間t2以上である。図4では、測定器1が汚染源12上で静止しているときに、第1計数率C1が6.0(S−1)を示し、第1計数率C1が第1検出限界値n1の5.7(S−1)以上となり、発光部5が黄色に発光し、発音部7が第1音響を所定の間隔で発生する。また、第2計数率C2が5.4〜5.6(S−1)を示し、第2計数率C2が第2検出限界値n2の4.6(S−1)以上となり、発光部6が赤色に発光し、発音部7が第2音響を所定の間隔で発生する。演算部21は、第1検出限界値n1以上であるときの第1計数率C1をメモリ29の物理アドレス領域に格納し(記憶手段)(S−10)、第2検出限界値n2以上であるときの第2計数率C2をメモリ29の物理アドレス領域に格納する(記憶手段)(S−11)。
【0045】
操作者は、測定対象物11の測定中に測定継続とリセットとを選択することができる(S−12)。操作者が測定継続を選択すると、演算部21は、第1計数率C1と第2計数率C2との算出を継続し、第1計数率C1と第1検出限界値n1とを順次比較するとともに、第2計数率C2と第2検出限界値n2とを順次比較する。
【0046】
操作者は、テンキーパネル10のRS(リセット)キー(図示せず)を押すことで測定中に測定器1をリセットすることができる。図4では、測定器1を測定対象物11の汚染源12上に静止させて放射線を測定した後、測定器1がリセットされている。操作者がリセットを選択すると、演算部21は、リセット前の記憶されたパルス数Pb(j)とリセット時のパルス数とを0とする(S−13)。リセットされた後、演算部21は、検出部20が検出した放射線に基づいて再び第1計数率C1と第2計数率C2との算出を開始し、第1計数率C1と第1検出限界値n1とを順次比較するとともに、第2計数率C2と第2検出限界値n2とを順次比較する。
【0047】
操作者は、測定継続と測定終了とを選択することができる(S−14)。測定対象物11の測定を終了するには、測定器1を測定対象物11から離してスイッチ9をOFFにする。測定を継続すると、演算部21は、第1計数率C1と第2計数率C2との算出を継続し、第1計数率C1と第1検出限界値n1とを順次比較するとともに、第2計数率C2と第2検出限界値n2とを順次比較する。
【0048】
測定器1は、演算部21が時系列で算出した第1計数率C1と第1計測時間t1に対応したバックグラウンド放射線とみなす第1検出限界値n1とを順次比較し、第1計数率C1が第1検出限界値n1以上であるときに表示部22に第1警告信号を発信させるので、放射線の強度が弱い場合や放射能の汚染範囲が小さい場合でも、測定対象物11から放出される放射線を確実に検出することができる。測定器1は、測定場所におけるバックグラウンド放射線をわずかに超えるきわめて弱い放射線をバックグラウンド放射線と区別して検出することができるので、測定対象物11から放出される放射線がバックグラウンド放射線の統計的揺らぎに埋もれてしまうことはなく、測定対象物11におけるわずかな放射能汚染を見落としてしまうことはない。
【0049】
測定器1は、第1測定時間t1よりも長い第2測定時間t2で測定対象物11から放出される放射線を測定し、第1計数率C1よりも変動が少ない安定した第2計数率C2を時系列で算出することができる。測定器1は、演算部21が第2計測時間t2に対応したバックグラウンド放射線とみなす第2検出限界値n2を第1検出限界値n1よりも高い信頼度で算出し、演算部21が算出した第2計数率C2と第2検出限界値n2とを比較し、第2計数率C2が第2検出限界値n2以上であるときに表示部22に第2警告信号を発信させるので、第1計測時間t1で測定する場合と比較し、測定対象物11から放出される放射線を高い確率および高い信頼度で検出することができる。
【0050】
測定器1は、測定対象物11から放出される放射線を第1計測時間t1で測定することによって放射線に直ちに反応するので、放射線に対するレスポンスがよく、測定対象物11における放射能汚染を素早く検出することができる。測定器1は、放射線を第1計測時間t1よりも長い第2計測時間t2で測定することによって変動が少ない安定した第2計数率C2を得ることができるので、高い確率および高い信頼度で放射線検出を行うことができる。測定器1は、反応が速い第1計測時間t1で放射線を迅速に検出しつつ、安定度が高い第2計測時間t2で放射線を測定することで、汚染源を見逃すことなく、正確な放射線検出を行うことができる。
【0051】
測定器1は、第1計測時間t1を1〜6秒の範囲で設定可能であり、第2計測時間t2を7〜10秒の範囲で設定可能であるから、測定対象物11における放射能汚染の強弱や測定対象物11における放射能の汚染範囲の大小によって最適な第1計測時間t1と第2計測時間t2とを設定することができ、迅速かつ確実な放射線検出を行うことができる。測定器1は、kの値を変更することによって、第1検出限界値n1を算出するときの第1信頼度を68.26〜95.44%の範囲で設定可能であり、第2検出限界値n2を算出するときの第2信頼度を95.44〜99.73%の範囲で設定可能であるから、測定対象物11における放射能汚染の強弱や測定対象物11における放射能の汚染範囲の大小によって第1および第2検出限界値n1,n2を算出するときの最適な信頼度を設定することができ、高い確率および高い信頼度で放射線の検出を行うことができる。測定器1は、演算部21が第1検出限界値n1以上であるときの第1計数率C1と第2検出限界値n2以上であるときの第2計数率C2とを記憶可能であるから、測定対象物11の放射能汚染測定後に演算部21に格納された第1および第2計数率C1,C2を分析することで、測定対象物11における放射能の汚染レベルを知ることができる。
【0052】
液晶パネル8には、第1および第2計数率C1,C2や第1および第2検出限界値n1,n2、第1および第2計測時間t1,t2、バックグラウンド放射線の計測時間tbが数値表示され、さらに、図3,4に示すように、第1および第2計数率C1,C2が時系列でグラフ表示される。メモリ29には、算出した全ての第1および第2計数率C1,C2を記憶させることもできる。測定器1がプリンタを装備する場合は、プリンタを介して第1および第2計数率C1,C2や第1および第2検出限界値n1,n2、第1および第2計測時間t1,t2、バックグラウンド放射線の計測時間tbを印字情報として出力することができる。測定器1では、放射線を測定した日付および時間をメモリ29に記憶することができ、テンキーパネル10を介して測定対象物11を特定する型式や品名を打ち込むことで、それらデータをメモリ29に記憶することもできる。メモリ29に記憶したそれらデータは、測定後にプリンタを介して印字情報として出力することもできる。
【0053】
測定器1には、バイブレータ機能を装備することができる。この場合は、第1計数率C1が第1検出限界値n1以上であると測定器1が第1振動周波数で振動し、第1計数率C1が第1検出限界値n1以上であると測定器1が第2振動周波数で振動する。操作者は、測定器1が振動することで、測定対象物11の放射能汚染を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一例として示す放射線測定器の外観斜視図。
【図2】測定器のハードウェアの一例を示す概略ブロック図。
【図3】放射線の時間的変化の一例を示すイメージ図。
【図4】放射線の時間的変化の一例を示すイメージ図。
【図5】演算部における処理の一例を示すフローチャート図。
【図6】放射線の計数率の変動を示す確率分布曲線を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線測定器
11 測定対象物
12 汚染源
20 検出部
21 演算部
22 表示部
28 コントローラ
29 メモリ
32 可視光発生装置
33 可聴音派生装置
C1 第1計数率
C2 第2計数率
n1 第1検出限界値
n2 第2検出限界値
k 倍数
P パルス
t1 第1計測時間
t2 第2計測時間
μ 平均値
σ 標準偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物から放出される放射線を時系列で検出し、検出した前記放射線を電気的なパルスに変換する検出部と、前記検出部から入力された前記パルスに基づいて前記放射線の計数率を算出する演算部と、前記測定対象物における放射能汚染を外部に警告する表示部とを備えた放射線測定器において、
前記演算部が、所定の第1計測時間(秒単位)に基づいて前記パルスを集計して第1積算値を順次算出し、前記第1積算値を前記第1計測時間で除して第1計数率を順次算出する第1計数率算出手段と、前記第1計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第1検出限界値を確率分布における所定の信頼度に基づいて算出する第1検出限界値算出手段と、前記第1計測時間よりも長い所定の第2計測時間(秒単位)に基づいて前記パルスを集計して第2積算値を順次算出し、前記第2積算値を前記第2計測時間で除して第2計数率を順次算出する第2計数率算出手段と、前記第2計測時間に対応したバックグラウンド放射線とみなす第2検出限界値を前記第1検出限界値よりも高い信頼度に基づいて算出する第2検出限界値算出手段とを有し、
前記演算部は、前記第1計数率と前記第1検出限界値とを比較し、前記第1計数率が前記第1検出限界値以上であるときに前記表示部に第1警告信号を発信させ、前記第2計数率と前記第2検出限界値とを比較し、前記第2計数率が前記第2検出限界値以上であるときに前記表示部に第2警告信号を発信させることを特徴とする前記放射線測定器。
【請求項2】
前記測定器では、前記第1計測時間を1〜6秒の範囲で設定可能であり、前記第2計測時間を7〜30秒の範囲で設定可能である請求項1記載の放射線測定器。
【請求項3】
前記測定器では、前記第1検出限界値を算出するときの信頼度を68.26〜95.44%の範囲で設定可能であり、前記第2検出限界値を算出するときの信頼度を95.44〜99.73%の範囲で設定可能である請求項1または請求項2に記載の放射線測定器。
【請求項4】
前記演算部が、前記第1検出限界値以上であるときの前記第1計数率と、前記第2検出限界値以上であるときの前記第2計数率とを記憶する記憶手段を有する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の放射線測定器。
【請求項5】
前記第1警告信号と前記第2警告信号とが、可視光信号と可聴音信号とのうちの少なくとも該可視光信号である請求項1ないし請求項4いずれかに記載の放射線測定器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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