説明

放射線画像撮影用のカセッテ

【課題】内蔵する部材を衝撃等に起因する破壊から保護し、且つCRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)及びFPDシステムに互換して使用可能な放射線画像撮影用のカセッテの提供。
【解決手段】側面から外側に突き出した複数の突起を有し放射線検出パネルを支持する基台と、
前記突起に対向する位置に配置される緩衝材と、
前記放射線検出パネルと前記基台と前記緩衝材とを内部に配置するフレームと、
前記フレームの開口部を閉じる蓋と、を有し、
前記突起は前記緩衝材と前記蓋とを介して、前記基台を前記フレームの内部の所定位置に支持することを特徴とする放射線画像撮影用カセッテ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影用のカセッテに関し、特に、耐衝撃、耐振動特性を向上させた放射線画像撮影用のカセッテに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療診断の場において、対象物に放射線を照射し、該対象物を透過した放射線を検出して放射線画像を得る装置が利用されており、このような放射線画像を得る方法として、放射線に対するフィルム/スクリーンを利用したものが挙げられる。
【0003】
これは、放射線を照射すると可視光を発光する蛍光体を感光性フィルムの両面に密着させておき、対象物を透過した放射線を蛍光体で可視光に変換し、この可視光を感光性フィルムで捉えて化学処理で現像することにより、感光性フィルム上に形成された潜像を可視化して放射線画像を得るものである。
【0004】
近年、デジタル技術の進歩により、放射線画像をデジタルデータとして取り扱うことのできるCR(Computed Radiography)システムが実用化されている。
【0005】
このシステムに用いるCRカセッテは輝尽性蛍光体層が形成された蛍光体プレートを内蔵し、撮影時に対象物を透過した放射線を輝尽性蛍光体層に吸収させ、放射線エネルギーとして蓄積させることができる。
【0006】
そして撮影後に、別装置で蛍光体プレートを励起光で走査することにより輝尽性蛍光体層に蓄積された放射線エネルギーを輝尽発光光として放射させ、放射した輝尽発光光を光電変換することにより、放射線量に応じた電気信号を得ることができる。
【0007】
次いでこの電気信号に対して画像処理を行い、CRTなどの表示装置に表示することにより、高画質の放射線画像を得ることができるものである。
【0008】
しかし、更に撮影作業の円滑化の要望があり、近年の半導体製造技術の発展によって前述したCRカセッテに代わりFPD(Flat Panel Detector)システムが開発された。
【0009】
このFPDシステムに使用するFPDカセッテは、基板上に複数の放射線検出素子を2次元的に配列させたものを内蔵し、放射線検出素子に照射された放射線量に応じた電気信号を出力するものである。このFPDカセッテを用いれば、励起光を走査して輝尽発光光を放射させる仕組みを必要とせず、直接的に放射線画像のデータを得ることができるので、CRカセッテを用いた場合より撮影作業が円滑にすることが可能となる。
【0010】
FPDカセッテは当初放射線室に設置されていたが、近年、より迅速且つ広範囲な部位の撮影を可能にするため、CRカセッテと同等の使い勝手の可搬型のものが求められてきている。
【0011】
しかしながら、FPDカセッテはガラスなどの脆弱な材料により構成された基板を内蔵しているため、医療現場等で実際に持ち運んで使用するには、落下等の衝撃に対する耐衝撃性や移動時等の振動に対する耐振動性が不足していた。
【0012】
このため従来、緩衝材を基板とフレームとの間に設け、耐振動性と耐衝撃性を高めたFPDカセッテが開発された。
【0013】
図8は従来のFPDカセッテの説明図である。
【0014】
従来のFPDカセッテ100において、フレーム101は蓋102により密閉されており、フレーム101内にはスペーサ104を介して金属製の基台105が取り付けられている。
【0015】
この基台105上にはガラス板により構成された基板106、半導体プロセスにより二次元配列的に形成された光電変換素子107、金属化合物から成る蛍光体を樹脂板に塗布した蛍光板108が積層されたX線パネル109が設けられている。
【0016】
そして、基台105の下面には光電変換された電気信号を処理するための電子部品を搭載した回路基板110が突起111を介して基台105に固定され、この回路基板110と光電変換素子107間は、フレキシブル回路基板112によって接続されている。
【0017】
フレキシブル回路基板112には光電変換素子107からの電気信号を読み出すための信号線及び制御線が配線されており、フレキシブル回路基板112は基板106の外周に対して複数枚配置され、基台105の側方を通り、基台105の裏面に配置された回路基板110まで引き回されている。
【0018】
そして、突起113を有する緩衝材114が基台105の外周部、且つ各フレキシブル回路基板の間に配置されており、蓋102が変形した際には緩衝材114の突起113が基台105の側面に当接し、蓋102の変形を抑制するようになっており、FPDカセッテ100側方からの衝撃に対する安全性をより向上させることができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−346788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記特許文献1に記載のFPDカセッテ100は、基台105を支持するフレーム101に取り付けたスペーサ104と、基台105を衝撃から保護する基台105の外周部に配置され突起113を有する緩衝材114と、が別部材として設けられている。
【0021】
スペーサ104と緩衝材114が別部材として設けられているため、FPDカセッテ100のX線入射方向の厚みが厚くなったり、FPDカセッテ100の外形寸法が大きくなったりしてしまうという問題点があった。
【0022】
また、FPDカセッテは可搬型のCRカセッテの使用形態で利用され始めているため、CRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)にも流用できることが望ましい。
【0023】
しかし、FPDカセッテ100は、例えばフレキシブル回路基板112や回路基板110等の電子部品をフレーム101の内部に配置する必要があるため、CRカセッテより外形寸法が大きくなってしまう。そして、CRカセッテより寸法が大きくなったFPDカセッテ100は、CRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)に流用できないという問題点があった。
【0024】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、内蔵する部材を衝撃等に起因する破壊から保護し、且つCRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)及びFPDシステムに互換して使用可能な放射線画像撮影用のカセッテの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的は、下記の発明により達成される。
【0026】
1.側面から外側に突き出した複数の突起を有し放射線検出パネルを支持する基台と、
前記突起に対向する位置に配置される緩衝材と、
前記放射線検出パネルと前記基台と前記緩衝材とを内部に配置するフレームと、
前記フレームの開口部を閉じる蓋と、を有し、
前記突起は前記緩衝材と前記蓋とを介して、前記基台を前記フレームの内部の所定位置に支持することを特徴とする放射線画像撮影用のカセッテ。
【0027】
2.前記蓋は前記緩衝材が嵌合する緩衝材嵌合部を有することを特徴とする前記1に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0028】
3.前記緩衝材嵌合部は前記蓋に設けられた凹部であることを特徴とする前記2に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0029】
4.前記緩衝材は前記突起が嵌合する突起嵌合部を有することを特徴とする前記2又は3に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0030】
5.前記突起嵌合部は前記緩衝材に設けられた凹部であることを特徴とする前記4に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0031】
6.前記基台の前記突起が前記緩衝材の前記突起嵌合部に嵌合し、前記緩衝材が前記蓋の前記緩衝材嵌合部に嵌合し、前記蓋が前記フレームに固定されることにより、前記基台を前記フレームの内部の所定位置に支持することを特徴とする前記5に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0032】
7.前記突起と前記緩衝材とは、前記基台の側面と前記フレームの側面との間に空間を形成し、前記空間に電気部品を配置することを特徴とする前記1〜6の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0033】
8.前記空間に配置する前記電気部品は、前記複数の突起の間に配置されることを特徴とする前記7に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0034】
9.前記基台の一方の側面に設けられた前記突起と、前記一方の側面と反対側の他方の側面に設けられた前記突起は、前記基台において線対称の位置に設けられていることを特徴とする前記1〜8の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0035】
10.前記基台の一方の側面に設けられた前記突起と、前記一方の側面と反対側の他方の側面に設けられた前記突起とは、前記基台において線対称の位置に設けられていないことを特徴とする前記1〜8の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【0036】
11.Computed Radiographyシステムに用いるISO4090:2001に準拠したCRカセッテの外形寸法と同じ外形寸法を有することを特徴とする前記1〜10の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【発明の効果】
【0037】
前記1〜11項に記載の発明により、内蔵する部材を衝撃等に起因する破壊から保護し、且つCRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)及びFPDシステムに互換して使用可能な放射線画像撮影用のカセッテの提供ができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】可搬型の放射線画像撮影用のカセッテの外観斜視図である。
【図2】図1に示す放射線カセッテのX部分の概略断面図である。
【図3】基台7、突起7a、緩衝材10、蓋3、及びフレーム2の関係を示す説明図である。
【図4】突起7aと緩衝材10との取り付け位置の説明図である。
【図5】基台7、突起7a、緩衝材10、蓋3の関係を示す説明図である。
【図6】放射線カセッテの電気的な構成を示すブロック図である。
【図7】画素Gabと出力回路23−bの回路構成を示す説明図である。
【図8】従来のFPDカセッテの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本実施の形態の説明における記載により、本発明の技術的範囲が限定されることはない。
【0040】
図1は、可搬型の放射線画像撮影用のカセッテの外観斜視図である。
【0041】
可搬型の放射線画像撮影用のカセッテ1(以下放射線カセッテ1と記す。)は、断面が矩形の筒型をしたフレーム2と、フレーム2両端の開口部をふさぐ棒状の1対の蓋3とを有し、蓋3はフレーム2にネジ等で固定されている。なお、一点鎖線はフレーム2から蓋3を外した状態を示している。
【0042】
そして、放射線は矢印Z方向から入射される。
【0043】
図2は、図1に示す放射線カセッテのX部分の概略断面図である。
【0044】
放射線カセッテ1は、放射線カセッテ1の内部(フレーム2と蓋3とに囲まれた空間)に、放射線を光に変換するシンチレータ5、後述するTFTを積層したガラス基板6、可堯可能なフレキシブル基板8、各種電気部品を有する電気回路9、弾性体からなる緩衝材10及び、シンチレータ5とガラス基板6と電気回路9等を支持する基台7を有している。そして、放射線の入射する矢印Z方向に対して、シンチレータ5、TFTが積層されたガラス基板6、基台7、電気回路9が、その順番に配置されている。
【0045】
以下、上述した放射線カセッテ1の内部である、フレーム2と蓋3とに囲まれた空間4をカセッテ内部4と記す。
【0046】
また、シンチレータ5とガラス基板6との組み合わせを放射線検出パネルPと称す。
【0047】
フレーム2は、軽く、放射線を透過する材料、例えばカーボン繊維体で構成され、その剛性によりカセッテ内部4に配置された部材を衝撃等から保護している。
【0048】
蓋3は、断面が矩形の棒状をなしており、特に材料を選ばないが、例えばアルミニウム等の軽い金属又は樹脂等で構成されている。そして蓋3はフレーム2にネジ等で固定されることによりカセッテ内部4を外気から密閉する。
【0049】
シンチレータ5は、撮影対象物を透過した放射線を受けて、可視光領域の蛍光に変換する。
【0050】
ガラス基板6は、半導体素子との化学作用のないこと、半導体プロセスの温度に耐えること、寸法安定性等の観点でその素材(ガラス)が選択されている。そして、ガラス基板6には、シンチレータ5により変換された撮影対象物に応じた蛍光を電気信号に変換する多数のフォトダイオード(不図示)と、フォトダイオードにより得た電気信号を画像信号に変換するための多数のスイッチング素子(不図示)と、を有するTFT(Thin Film Transistor)が積層されている。
【0051】
基台7は、放射線検出パネルP(シンチレータ5、ガラス基板6)、フレキシブル基板8、及び電気回路9等を支持するために高い剛性を有する板状をなし、材質としては金属例えばアルミニウムやアルミニウムの合金、或いはハニカム構造をした樹脂板等で構成されている。
【0052】
また、基台7はその側面から外側に突き出した複数の突起7a(破線)を有し、突起7aは緩衝材10を介して、基台7を放射線カセッテ1の内部の所定位置に支持している。また、緩衝材10は突起7aに対向する位置に配置されている。
【0053】
そして基台7の突起7a(破線)の形状は角柱状例えば4角柱状をなしている。円柱状(円柱、楕円柱)でも良い。
【0054】
また、突起7aは基台7に一体的に形成されている。なお、突起7aを別体の部材としても良く、この場合は突起7aを基台7にネジ等で固定する。
【0055】
電気回路9は各種回路に電源を供給するバッテリー(不図示)と、TFTで取得した画像信号を外部の装置に送信したりする制御素子(不図示)等が配置されている。
【0056】
フレキシブル基板8はガラス基板6のTFTと電気回路9とを接続している。そして、フレキシブル基板8には、TFTと電気回路9とを電気的に接続する信号線及び制御線が配線されており、TFTの外周に複数接続されている。そして、各フレキシブル基板8は基台7の側方且つ突起7aの間を通り、基台7の裏面に配置された電気回路9まで引き回されている。
【0057】
なお、フレキシブル基板8自体に各種の電気回路を設けても良い。こうすることにより基台7とフレーム2の間の空間、または基台7と蓋3との間の空間の利用効率が向上し、ガラス基板6または電気回路9に搭載する電気部品が削減可能となる。
【0058】
緩衝材10はカセッテ内部4に配置された部材を衝撃等から保護するために所定の硬度を持つ弾性体で、例えば硬度が30〜50度のウレタンゴム、又はシリコンゴム等を用いることができる。そして、緩衝材10は突起7aが嵌合する突起嵌合部10aを有し、突起嵌合部10aに突起7aが嵌合することにより、フレーム2の内部即ちカセッテ内部4の所定位置に基台7が配設されるようになっている。
【0059】
又、突起嵌合部10aは緩衝材10に設けられた凹部で、該凹部の断面形状は突起7aの断面形状と同じ形状をし、緩衝材10に突起7aを嵌合可能としている。
【0060】
そして、基台7の突起7aが緩衝材10の突起嵌合部10aに嵌合し、緩衝材10が蓋3の緩衝材嵌合部3aに嵌合し、蓋3がフレーム2に固定されることにより、基台7をフレーム2の内部の所定位置に支持するようになっている。
【0061】
以上説明したように緩衝材10を弾性体で構成し、基台7を突起7a、緩衝材10及び、蓋3を介してフレーム2の内部に支持することにより、フレーム2または蓋3からの衝撃等を吸収し、基台7に支持されるガラス基板6、シンチレータ5、電気回路9等を衝撃等から保護でき、且つ放射線カセッテ1内部の所定の位置に基台7を支持できる放射線カセッテの提供を可能とした。
【0062】
図3は、基台7、突起7a、緩衝材10、蓋3、及びフレーム2の関係を示す説明図である。
【0063】
蓋3は、蓋3の所定位置に緩衝材10が嵌合する緩衝材嵌合部3aを有しており、緩衝材嵌合部3aに緩衝材10が嵌合し、緩衝材10の突起嵌合部10aに突起7aが嵌合することにより、フレーム2の内部の所定位置に基台7が配設される。
【0064】
そして、緩衝材嵌合部3aは蓋3に設けられた凹部で、該凹部の断面形状は緩衝材10の断面形状と同じ形状をしている。なお、前記所定位置とは衝撃発生時に基台7に支持されるシンチレータ5、ガラス基板6、電気回路9等がフレーム2または蓋3に接触しない位置であり、突起7aと対向する蓋3の矢印y方向及び矢印z方向における位置である。
【0065】
蓋3部に緩衝材10と突起7aを介して基台7が支持されるので、フレーム2を大型化することなく、基台7の支持とフレーム2内部部品への衝撃吸収が同時に達成できる。
【0066】
図3(a)は図1に示す放射線カセッテ1(フレーム2の上面を取り除いた状態)を上方から見た断面概念図で、図3(b)は図3(a)に示す放射線カセッテ1のQQ’断面概念図である。
【0067】
図3(a)において放射線カセッテ1は、Computed Radiographyシステムに用いるISO4090:2001に準拠したCRカセッテ(不図示)と互換して使用するため、CRカセッテに対して外形寸法と画像領域の寸法とが同一となっている。
【0068】
具体的には、C1、C2は放射線カセッテ1の外形寸法で、同一サイズ規格のCRカセッテの外形寸法と同一となっている。またB1、B2はシンチレータ5またはガラス基板6〔TFT(フォトダイオード等)〕の外形寸法で、同一サイズ規格のCRカセッテの蛍光体プレートの外形寸法より僅かに大きくなっている。また、A1、A2は放射線カセッテ1の画像領域寸法で、同一サイズ規格のCRカセッテの画像領域寸法と同一となっている。
【0069】
そして図3(a)と(b)において突起7aと緩衝材10とは、基台7をカセッテ内部4の所定の位置に支持することにより基台7の上面とフレーム2の上側内面との間に第1の空間4aを形成し、基台7の側面と蓋3の側面内側との間に第2の空間4b(即ち突起7aと緩衝材10により形成される空間4b)を形成している。
【0070】
また、FPDシステムに使用するFPDカセッテである放射線カセッテ1は、必要な電気部品が多く、空間を効率的に利用するため第1の空間4a及び第2の空間4bのうち、少なくとも何れかの空間に電気部品を配置する。例えば第1の空間4aにシンチレータ5とガラス基板6とTFT等の電気部品を配置し、第2の空間4bに複数のフレキシブル基板8等の部材が配置してある。
【0071】
なお、第2の空間4bに配置する電気部品(フレキシブル基板8)は、それぞれ複数の突起7aの間に配置されている。
【0072】
なお、突起7aと緩衝材10との配設位置及び個数は、矢印x、矢印yまたは矢印z方向の衝撃等からカセッテ内部4に配置された部材の保護ができれば、またカセッテ内部4の所定の位置にカセッテ内部4に配置された部材を支持できれば、何処にいくつ配設しても良い。図3では基台7の一方の側面と反対側の他方の側面にそれぞれ2箇所ずつ突起7aを設けてある場合を示してある。
【0073】
以上説明したように、基台7の上面、下面、及び側面に電気部品を配置可能としたことで放射線カセッテ1の画像領域の寸法及び外形寸法をCRカセッテと同じ大きさにすることを可能とし、放射線カセッテ1の画像領域の寸法及び外形寸法をCRカセッテと同じ大きさにすることでCRシステム又はFPDシステムが設置されている様々な場所に移動させてCRカセッテと互換して放射線カセッテ1を使用することも可能とした。
【0074】
図4は、突起7aと緩衝材10との取り付け位置の説明図である。
【0075】
図4(a)は基台に対して突起と緩衝材とが線対称の位置に設けられている場合を示し、図4(b)は基台に対して突起と緩衝材とが線対称の位置に設けられていない場合を示している。
【0076】
図4(a)において、基台7の一方の側面71に設けられた突起71aと、前記一方の側面と反対側の側面72に設けられた突起72aは、基台7において線対称の位置に設けられている。
【0077】
なお、突起の数はスペース的に許されれば各側面当たり1箇所でも2箇所以上でも良いが、2箇所或いは3箇所程度が好ましい。図では各側面に突起をそれぞれ2箇所個配置した例を示した。
【0078】
図4(b)において、基台7の一方の側面71に設けられた突起71aと、前記一方の側面と反対側の側面72に設けられた突起72aは、基台7において線対称の位置に設けられていない(非対称な位置に設けられている。)。
【0079】
なお、突起の数は両側面にそれぞれ同数(不図示)であっても、図示したように異数であっても良い。しかし同数の場合であっても図4(a)と異なり非対称な位置に設けられている。図では一方の側面に突起を2箇所、他方の側面に突起を1箇所配置した例を示した。
【0080】
図5は、基台7、突起7a、緩衝材10、蓋3の関係を示す説明図である。
【0081】
なお、図5は図3(b)と同方向から見た図である。
【0082】
蓋3には緩衝材嵌合部3aが設けられている。緩衝材嵌合部3aは緩衝材10の断面形状と同じ形及び寸法をした凹部であり、緩衝材10はその弾性により緩衝材嵌合部3aから容易には外れず、外気からカセッテ内部4を密閉できる程度に緩衝材嵌合部3aに嵌っている。
【0083】
なお、蓋3はフレーム2が嵌合する段差部(部番なし)を有し、この段差部にフレーム2が嵌り込むことにより、フレーム2に対して蓋3が前述の矢印x、y、z方向に位置決め且つ固定される。
【0084】
また、緩衝材10には突起嵌合部10aが設けられている。突起嵌合部10aは突起7aの断面形状と同じ形及び寸法をした凹部であり、突起7aが緩衝材10の弾性により緩衝材10に密着する程度に嵌っている。
【0085】
そして突起7aが緩衝材10に密着する程度に嵌まることにより蓋3に対して基台7が位置出し且つ、カセッテ内部4に配置された部材の衝撃からの保護を可能としている。
【0086】
なお、図では緩衝材嵌合部3aと緩衝材10の間、及び突起嵌合部10aと突起7aとの間をそれぞれの関係がよく分かるように隙間をあけて図示したが、実際は上述したように緩衝材嵌合部3aと緩衝材10、及び突起嵌合部10aと突起7aが緩衝材10の弾性により密着しており隙間はない。
【0087】
又、図では蓋3の内面3Cから緩衝材10が飛び出している形態について示したが、蓋3で緩衝材10と突起7aとを介して基台7が支持できれば、蓋3の内面3Cと緩衝材10の端面10Cとは同一平面上に位置しても良く、蓋3の内面3Cより緩衝材10の端面10Cが引っ込んでいても良い。
【0088】
以上、緩衝材嵌合部3aが蓋3の内面3Cから引っ込んでいる形態について説明したが、基台7の突起7aの対向位置に、蓋3の内面3Cから基台7側に突き出した凸部(不図示)を設け、該凸部に緩衝材嵌合部3aを設けても良い。
【0089】
以上説明したように緩衝材10を弾性体で構成し、基台7を突起7a、緩衝材10、及び蓋3を介してフレーム2の内部に支持することにより、フレーム2または蓋3からの衝撃等を吸収し、基台7に支持されるガラス基板6、シンチレータ5、電気回路9等を衝撃等から保護でき、且つ放射線カセッテ1内部の所定の位置に基台7(ガラス基板6、シンチレータ5、電気回路9)を支持できる放射線カセッテの提供を可能とした。
【0090】
そして更に、基台7に対して突起7aの配置位置を線対称或いは非線対称な位置に設けることを可能とすることで、ガラス基板やFTFの設計自由度を上げられ、結果として画像領域の寸法及び外形寸法等をCRカセッテと同じ大きさにすることができた。
【0091】
そしてこれらにより、ガラス基板6、シンチレータ5、電気回路9等を衝撃等から保護可能とし、CRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)及びFPDシステムに互換して使用可能な放射線カセッテを提供できた。
【0092】
本発明の目的の1つはガラス基板の基板(ガラス)そのもの、ガラス基板に積層されたTFT、電気回路9の回路部品等を衝撃等から保護するものであり、以下これらの回路構成について概要を説明する。
【0093】
図6は、放射線カセッテの電気的な構成を示すブロック図である。
【0094】
放射線カセッテ1は、複数の放射線検出素子G(画素G11〜Gmn)と、フレキシブル基板8または電気回路9に設けられた垂直走査回路22と、出力回路23(23−1〜23−n)と、マルチプレクサ24と、A/D変換回路25と、タイミングジェネレータ26と、を備えている。
【0095】
そして、画素G11〜GmnはTFT(図示2)に2次元的に配列されており、電力供給線27から直流電圧VDDを印加され放射線を検出して電気信号に変換する。
【0096】
フレキシブル基板8または電気回路9に設けられた、垂直走査回路22は電気信号の出力時に駆動線28−1〜28−mから信号φV1〜φVmを与えて各画素G11〜Gmnを垂直方向に走査する。そして出力回路23−1〜23−nは信号読出線29−1〜29−nで各画素G11〜Gmnから出力される電気信号を行毎に読み取り保持し、タイミングジェネレータ26のリセット線30から送られるリセット信号φRSTによりリセットされる。そして、マルチプレクサ24は出力回路23−1〜23−nで保持された電気信号を列毎のシリアルな電気信号に変換する。そして、A/D変換回路25はマルチプレクサ24から与えられる電気信号をデジタルデータに変換する。そして、タイミングジェネレータ26は垂直走査回路22、出力回路23−1〜23−n、及びマルチプレクサ24b/D変換回路25の、それぞれの動作タイミングを指定する。
【0097】
以下に、この出力回路23−1〜23−n及び画素G11〜Gmnの構成について、a行b列の画素Gabとb列の出力回路23−bを代表して説明する。
【0098】
図7は、画素Gabと出力回路23−bの回路構成を示す図である。
【0099】
画素Gabは、フォトダイオード31とスイッチング素子32とを有しており、出力回路23−bはオペアンプ231とキャパシタ232とにより構成されるいわゆるチャージセンシングアンプで構成されている。
【0100】
シンチレータ5により変換された撮影対象物に応じた可視光領域の蛍光がフォトダイオード31に入射される。フォトダイオード31は入射光に応じてアノードに電荷を蓄積させ、スイッチング素子32はアノードに蓄積される電荷の充電と放電を行う。
【0101】
前記チャージセンシングアンプは、フォトダイオード31のアノードに蓄積された電荷をキャパシタ232に保持することで積分機能を具備した読み出し回路であり、キャパシタ232がリセットされない限り、出力即ち電気信号を読み出してもその状態は保持される。そしてタイミングジェネレータ26からリセット線30を通じて与えられる信号φRSTによって、スイッチ233のON/OFFが制御される。
【0102】
以下に画素Gabと出力回路23−bの作用について説明する。
【0103】
先ず、画素Gabと出力回路23−bのリセット動作を行うためにタイミングジェネレータ26から信号φRSTが与えられて、出力回路23−bのスイッチ233がONとなりキャパシタ232に蓄積された電荷が放電される。同時に、垂直走査回路22から信号φV1〜φVmが与えられて、画素Gabのスイッチング素子32がONとなりフォトダイオード31の電荷を放電する。
【0104】
撮像動作が行われる時は、一方で信号φVaがOFFとなりスイッチング素子32がOFFとされ、フォトダイオード31により光電変換されて得られた電荷がフォトダイオード31のアノードに蓄積される。
【0105】
又他方で出力回路23−bの信号φRSTがOFFとされてスイッチ233がOFFとなりフォトダイオード31のアノードに蓄積された電荷が電気信号としてキャパシタ232に蓄積される。これによりオペアンプ231の出力端子の電圧値が変更し、このオペアンプ231の出力端子の電圧値が信号読出線29−bによりマルチプレクサ24に与えられる。
【0106】
そして、マルチプレクサ24では、得られた電圧値をシリアルな電気信号に変換してA/D変換回路25に送信し、A/D変換回路25ではこの電気信号をデジタルデータに変換する。このようにして、放射線画像撮影装置1で放射線画像データが作成される。
【0107】
以上説明した放射線カセッテ1においては、対象物を透過した放射線は放射線強度に応じてシンチレータ5により可視光に変換され、可視光はフォトダイオード及びスイッチング素子により電気信号に変換される。そして、このフォトダイオード等により変換された画像信号は電気回路9などを介して放射線画像データとして外部装置に送信され、外部装置(例えばCRTなどの表示装置)により放射線画像が医療従事者に提供される。
【0108】
なお、外部装置への放射線画像データの送信は、有線の通信手段を電気回路9に設けて行っても良く、無線の通信手段を電気回路9に設けて行っても良い。
【0109】
以上説明したように、対象物を透過した放射線の画像データを放射線画像として医療従事者に提供可能とし、CRカセッテ用の放射線撮影装置(ブッキー)及びFPDシステムに互換して使用可能な放射線カセッテを提供できた。
【0110】
以下、放射線カセッテの組み立てについて、図2と3を参照してその1例を説明する。
【0111】
1.基台7に、ガラス基板6、シンチレータ5、電気回路9、及びフレキシブル基板8等を組み付ける。そして、蓋3の緩衝材嵌合部3aにそれぞれ緩衝材10を組み付け、組み付けた一方の蓋3をフレーム2にネジ等で固定する。
【0112】
2.一方の蓋3の緩衝材10に突起7aが嵌入するように、前工程で組み付けた基台7をフレーム2に挿入する。
【0113】
3.突起7aに他方の蓋3の緩衝材10が嵌入するように、他方の蓋3をフレーム2にネジ等で固定する。
【0114】
以上説明したように、蓋3に予め緩衝材10を組み付けることが可能になり、3工程で放射線カセッテの組み立てが完了できる、組み立て容易な、結果として組み立てに係る不良が少なく、安価な放射線カセッテ1の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0115】
1 放射線カセッテ
2 フレーム
3 蓋
3a 緩衝材嵌合部
5 シンチレータ
6 ガラス基板
7 基台
7a 突起
8 フレキシブル基板
9 電気回路
10 緩衝材
10a 突起嵌合部
31 フォトダイオード
32 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面から外側に突き出した複数の突起を有し放射線検出パネルを支持する基台と、
前記突起に対向する位置に配置される緩衝材と、
前記放射線検出パネルと前記基台と前記緩衝材とを内部に配置するフレームと、
前記フレームの開口部を閉じる蓋と、を有し、
前記突起は前記緩衝材と前記蓋とを介して、前記基台を前記フレームの内部の所定位置に支持することを特徴とする放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項2】
前記蓋は前記緩衝材が嵌合する緩衝材嵌合部を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項3】
前記緩衝材嵌合部は前記蓋に設けられた凹部であることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項4】
前記緩衝材は前記突起が嵌合する突起嵌合部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項5】
前記突起嵌合部は前記緩衝材に設けられた凹部であることを特徴とする請求項4に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項6】
前記基台の前記突起が前記緩衝材の前記突起嵌合部に嵌合し、前記緩衝材が前記蓋の前記緩衝材嵌合部に嵌合し、前記蓋が前記フレームに固定されることにより、前記基台を前記フレームの内部の所定位置に支持することを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項7】
前記突起と前記緩衝材とは、前記基台の側面と前記フレームの側面との間に空間を形成し、前記空間に電気部品を配置することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項8】
前記空間に配置する前記電気部品は、前記複数の突起の間に配置されることを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項9】
前記基台の一方の側面に設けられた前記突起と、前記一方の側面と反対側の他方の側面に設けられた前記突起は、前記基台において線対称の位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項10】
前記基台の一方の側面に設けられた前記突起と、前記一方の側面と反対側の他方の側面に設けられた前記突起とは、前記基台において線対称の位置に設けられていないことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。
【請求項11】
Computed Radiographyシステムに用いるISO4090:2001に準拠したCRカセッテの外形寸法と同じ外形寸法を有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の放射線画像撮影用のカセッテ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164881(P2010−164881A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8649(P2009−8649)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】