説明

放射線画像撮影装置及びその制御方法

【課題】放射線検出部の使用寿命を延ばし、ランニングコストを低減する。
【解決手段】X線画像撮影システム10のシステムコントローラ13は、欠陥領域検出部37、及び判定部38として機能する。欠陥領域検出部37は、X線検出部20の欠陥画素に対応する欠陥領域41を検出する。判定部38は、欠陥領域41の面積及び個数と所定の閾値を比較する。判定部38の比較結果に応じて、X線検出部20に印加するバイアス電圧が設定される。閾値以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が閾値以上の個数であった場合、バイアス電圧が10kVから9kVに下げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を透過した放射線を放射線検出器で検出して放射線画像を得る放射線画像撮影装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断や工業用検査等の分野で、放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が各種提案、実用化されている。放射線画像撮影装置は、被検体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、その電荷を蓄積することにより被検体に関する放射線画像を記録する放射線検出器を有する。近年、放射線検出器として、被検体を透過した放射線をリアルタイムで電気信号に変換するFPD(フラットパネルディテクタ)が普及しつつある。
【0003】
FPD等の放射線検出器は、放射線を電荷に変換する放射線変換層、及び放射線変換層で変換された電荷を読み出すTFTアレイ等の読み出し回路からなる。放射線検出器は、バイアス電源から印加されるバイアス電圧によって駆動し、放射線を変換した電荷を放射線変換層で蓄積し、蓄積した電荷を読み出し回路から撮像信号として出力する(例えば、特許文献1)。
【0004】
FPDには、放射線を直接電気信号に変換する直接変換方式と、放射線を一端可視光に変換し、それを電気信号に変換する間接変換方式とがある。直接変換方式の放射線変換層の材料としては、アモルファスセレンが一般的に使用される。
【0005】
放射線変換層には、製造工程上の問題から、あるいは使用環境の温度によって、入射された放射線に応じた電荷を正常に出力しない欠陥画素が発生する場合がある。欠陥画素がある部分は、画像化が適正に行われないため、放射線画像の画質劣化、ひいては誤診の原因となる。そこで、従来の放射線画像撮影装置では、欠陥画素に対応する放射線画像の領域(以下、欠陥領域という)の位置や面積を検出し、欠陥領域の画素値を周囲の画素値から補完していた(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−267781号公報
【特許文献2】特開2008−245049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直接変換方式のFPDの放射線変換層として使用されるアモルファスセレンは、経時的に欠陥画素が拡大、及びその個数が増加することが知られている。欠陥画素が拡大すると画像処理では補完ができなくなり、また、欠陥画素の個数が増大すると補完をしても画質劣化は否めないため、欠陥画素の面積及びその個数が限界まで達した場合は、FPDを新しいものと交換しなくてはならない。
【0008】
FPDは高価であるため、なるべく長く、何度も繰り返して使用することが要望されているが、従来は、欠陥画素の成長抑制に関する対策を何ら講じていないため、FPDの交換時期が早まり、結果としてランニングコストの増大を招いていた。
【0009】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、放射線検出部の使用寿命を延ばし、ランニングコストを低減することが可能な放射線画像撮影装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の放射線画像撮影装置は、曝射された放射線に応じた電荷を画素毎に出力する変換層を有する放射線検出部と、前記放射線検出部にバイアス電圧を印加して駆動させる電圧印加手段と、前記電圧印加手段によるバイアス電圧を切り替える切替手段と、前記変換層の欠陥画素を検出する欠陥画素検出手段と、制御手段とからなることを特徴とする。
【0011】
前記制御手段は、前記欠陥画素検出手段で検出された欠陥画素の面積及び個数と所定の閾値を比較し、閾値以上の面積を有する欠陥画素が一つでもあった場合、又は欠陥画素が閾値以上の個数となった場合、前記バイアス電圧を下げるように前記切替手段を作動させる。
【0012】
前記閾値は複数個用意されている。前記制御手段は、前記欠陥画素の面積が閾値以上となる毎に、又は前記欠陥画素が閾値以上の個数となる毎に、複数段階で前記バイアス電圧を下げるように前記切替手段を作動させる。なお、前記閾値は一つでもよい。
【0013】
前記バイアス電圧を下げたときに、前記放射線検出部で得られる放射線画像に感度補正処理を施す感度補正手段を備えることが好ましい。
【0014】
前記放射線検出部に異なる前記バイアス電圧を印加する複数の撮影メニューが選択可能に設定されていることが好ましい。この場合、前記撮影メニュー毎に、下げるバイアス電圧が設定されていることが好ましい。
【0015】
また、前記撮影メニュー毎に、前記バイアス電圧の下限値が設定されており、前記バイアス電圧を下げたときに下限値を下回り、実行不可能になる前記撮影メニューを選択したときに、警告を表示する、又は実行不可能になる前記撮影メニューを選択不可とすることが好ましい。
【0016】
前記変換層は、アモルファスセレンからなることが好ましい。
【0017】
本発明の放射線画像撮影装置の制御方法は、放射線検出部の変換層の欠陥画素を検出するステップと、検出された欠陥画素の面積及び個数と所定の閾値を比較するステップと、閾値以上の面積を有する欠陥画素が一つでもあった場合、又は欠陥画素が閾値以上の個数となった場合、前記放射線検出部に印加するバイアス電圧を下げるステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、欠陥画素の状態が放射線検出部の使用限界に至る前に、バイアス電圧を下げるので、放射線検出部の使用寿命が延びる。従って、ランニングコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】X線画像撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】電源ユニットの構成の一例を示す説明図である。
【図3】欠陥領域を示す説明図である。
【図4】欠陥領域の状態と各部の動作状態の関係を示す図である。
【図5】X線画像撮影システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】X線画像撮影システムの撮影手順を示すフローチャートである。
【図7】実行不可能な撮影メニューの扱いの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、X線画像撮影システム10は、被検体HにX線を照射して、被検体Hの体内の様子を撮影する立位式のシステムであり、X線源11、X線画像撮影装置12、システムコントローラ13、コンソール装置14等から構成されている。
【0021】
X線源11は、陰極のフィラメントからタングステンやモリブデン等のターゲットに電子を加速して入射させることによりX線を発生させる。X線源11から照射されるX線の線質や線量は、陰極に流す電流(管電流)や加速電圧(管電圧)を調節することにより、撮影する被検体Hや被検体Hの撮影部位に応じて適宜調節される。
【0022】
コンソール装置14は、一般的なパーソナルコンピュータであり、内蔵したネットワーク回路によって、システムコントローラ13の通信インターフェース(I/F)34に接続している。コンソール装置14には、X線源11、システムコントローラ13及びFPD18を操作するためのX線画像撮影システム用操作プログラムがインストールされている。
【0023】
X線画像撮影装置12は、床に据え付けられた支柱部17と、この支柱部17に上下動できるように取り付けられたFPD18等から構成されている。FPD18は、入射したX線を可視光に変換せずに、直接的に電荷に変換する直接変換型フラットパネルディテクタである。FPD18は、X線源11に対面するX線入射面19aが設けられた筐体19と、筐体19内に組み込まれたX線検出部20と、X線検出部20を駆動させる電源ユニット21と、切替スイッチ22と、増幅器23と、A/D変換器24とを備えている。X線入射面19aには、撮影時に被検体Hの胸等の撮影部位が接触される。
【0024】
X線検出部20は、その撮像面20aをX線入射面19aに向けて配置されている。X線検出部20は、被検体Hの胸部全体をカバーする程度の面積を持つ。X線検出部20は、X線を電荷に変換する変換層としての光導電膜25と、光導電膜25の撮像面20a側に積層され、X線に対して透過性を有するバイアス電極層26と、光導電膜25の撮像面20aと反対側に積層され、光導電膜25で変換された電荷を画素毎に読み出して出力するTFT基板27とを備える。
【0025】
光導電膜25は、アモルファスセレン等からなり、X線の入射により、X線の線質や線量に応じた電荷を発生する。なお、光導電膜の材料としては、アモルファスセレンの他、PbO、PbI2、HgI2、BiI3、Cd(Zn)Te等を使用することができる。
【0026】
TFT基板27には、TFTアレイが形成され、撮像面20a側の面に画素電極(図示せず)が設けられている。バイアス電極層26と画素電極との間には、電源ユニット21からバイアス電圧が印加される。バイアス電圧によって光導電膜25内に電界が生じ、光導電膜25内で発生した電荷が画素電極に収集される。画素電極は、収集した電荷を蓄積するコンデンサ上部の電極を構成する。画素電極はTFTに接続されており、コンデンサに蓄積された電荷はTFTを介して読み出される。TFTで読み出された電荷は、増幅器23によって増幅され、A/D変換器24によってデジタルな撮像信号に変換されてシステムコントローラ13に出力される。
【0027】
電源ユニット21は、切替スイッチ22に接続されている。切替スイッチ22の切り替えに応じてX線検出部20に印加するバイアス電圧が変更、又はバイアス電圧の印加が停止(オフ)される。
【0028】
図2に示すように、電源ユニット21は、それぞれ単独の通常電源28、低電圧電源29、及びアース30が並列に設けられている。切替スイッチ22は、システムコントローラ13からの入力により切り替えられるスイッチ素子で、出力端子22a、22b、22cに通常電源28、低電圧電源29、及びアース30の一端がそれぞれ接続されている。
【0029】
通常電源28及び低電圧電源29は、他端がバイアス電極層26に接続される。本実施形態では、通常電源28が10kV、低電圧電源29が9kVのバイアス電圧をそれぞれ供給可能であり、切替スイッチ22の入力端子22dが出力端子22a〜22cとそれぞれ接続することで、10kV(通常電圧)、9kV(低電圧)のバイアス電圧がX線検出部20に印加、又はオフのいずれかに切り替えられる。以下では、通常、低電圧のバイアス電圧がX線検出部20に印加される状態をそれぞれ通常モード、低電圧モードと称する。なお、電源ユニット21の構成としては、これに限るものではなく、例えば1つの電源を分圧抵抗で分圧した出力側を切替スイッチに接続して、通常、低電圧のバイアス電圧、又はオフのいずれかに切り替えてもよい。
【0030】
システムコントローラ13は、キーボードやマウス、モニタ等を備えたコンソール装置14からの入力を受けて、X線画像撮影システム10の動作を統括的に制御する。システムコントローラ13は、CPU31(制御手段)、画像処理部32、メモリ33、通信I/F34、感度補正部35、ストレージデバイス36等から構成される。
【0031】
画像処理部32には、A/D変換器24から撮像信号が入力される。画像処理部32は、入力された撮像信号に、階調変換、ガンマ補正等の各種画像処理を施し、放射線画像を生成する。また、画像処理部32は、FPD18の欠陥画素に対応する放射線画像の領域(以下、欠陥領域という)に対して、その周囲の画素の画素値を用いて画素値を生成する、補完処理を施す。画像処理部32で生成された放射線画像は、HDD等で構成されたストレージデバイス36に記憶される。
【0032】
CPU31は、データバス39を介してシステムコントローラ13の各部と制御信号やデータ等を送受信し、各種演算処理を行うことにより、システムコントローラ13の各部を統括的に制御する。CPU31は、ストレージデバイス36に記憶された制御プログラムをメモリ33にロードして実行することで、欠陥領域検出部37、判定部38として機能する。
【0033】
X線画像撮影システム10では、光導電膜25の欠陥画素の状態を調べるため、例えば毎日の始業時等に、被検体Hがいない状態でX線を曝射せずに撮影を行い、これにより得られた図3に示す放射線画像(いわゆる暗画像)40を欠陥領域検出部37で解析する。欠陥画素はX線に感応しないため、欠陥画素に対応する放射線画像40の画素値は、正常な画素の画素値よりも異常に低く、あるいは高くなる。欠陥領域検出部37は、この画素値の相違に着目して、例えばある基準値に満たない画素値を欠陥画素によるものと判断し、これが所定個数集まった領域を欠陥領域41として検出する。なお、放射線画像40を取得する際に、X線を曝射してもよい。
【0034】
判定部38は、欠陥領域検出部37で検出された欠陥領域41の面積及び個数を所定の閾値と比較して、以下の判定を行う。全ての欠陥領域41が第1の閾値Ts1よりも小さい面積である場合、及び欠陥領域41が第1の閾値Tn1よりも少ない個数である場合、判定部38は、通常モードを選択する指令を切替スイッチ22に出力する。切替スイッチ22は出力端子22aを選択して、10kVのバイアス電圧を電源ユニット21からX線検出部20に印加させる。
【0035】
一方、第1の閾値Ts1以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が第1の閾値Tn1以上の個数となった場合、判定部38は、通常モードから低電圧モードに切り替える指令を切替スイッチ22に出力する。さらに、第2の閾値Ts2(>Ts1)以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が第2の閾値Tn2(>Tn1)以上の個数となった場合、判定部38は、使用不可(オフ)の指令を切替スイッチ22に出力する。なお、図3の符号42a、42bは、面積の第1、第2の閾値Ts1、Ts2をそれぞれ例示する矩形である。
【0036】
面積の第2の閾値Ts2は、画像処理部32で補完をすることが不可能となる欠陥領域41の面積の限界値である。また、個数の第2の閾値Tn2は、補完による画質劣化が看過できないレベルに達する欠陥領域41の個数の限界値である。第1の閾値Ts1、Tn1は、補完及び画質劣化が限界となる手前に設定された値であり、このまま放置すれば早晩限界に近付くことを示唆する値である。
【0037】
CPU31は、判定部38の判定結果に基づいて切替スイッチ22へ指令を発するとともに、判定結果と判定日時をストレージデバイス36に記憶する。また、判定部38による判定で低電圧モードとする判定結果が出たとき、CPU31は、感度補正指示を感度補正部35へ送る。さらにまた、判定部38による判定で使用不可の判定結果が出たとき、CPU31は、バイアス電圧をオフにするように切替スイッチ22へ指令を送るとともに、欠陥領域41の面積拡大又は個数増加により、FPD18が使用不可となったことを示す旨の警告を、コンソール装置14のモニタに表示させる。
【0038】
低電圧モードでは、光導電膜25の感度が通常モードよりも劣るため、低電圧モードで得られた放射線画像は通常モードと比べて画質が劣化する。こうした画質劣化を是正するため、感度補正部35は、CPU31からの感度補正指示を受けて感度補正データをストレージデバイス36から読み出し、これに基づいて放射線画像に感度補正処理を施す。これにより、低電圧モードでは感度補正処理を施した放射線画像が、通常モードでは画像処理部32から出力されたままの放射線画像がコンソール装置14のモニタにそれぞれ表示される。
【0039】
感度補正部35は、ストレージデバイス36に記憶された感度補正データに従って感度補正処理を実行する。感度補正データは、例えば、撮像信号の出力レベルの低電圧時と通常電圧時の差、あるいは両者の比率である。感度補正部35は、低電圧モードで得られた放射線画像に差分を加えたり、放射線画像に比率を乗じたりする等して感度を補正する。なお、感度補正の方法としては、上記の感度補正部35による方法に代えて、あるいは加えて、X線源11の管電流を上げて撮影する方法を採用してもよい。
【0040】
以上の説明をまとめると、図4に示す如くである。すなわち、全ての欠陥領域41が第1の閾値Ts1よりも小さい面積である場合、又は欠陥領域41が第1の閾値Tn1よりも少ない個数である場合は、X線画像撮影システム10は通常モードで稼動される。切替スイッチ22は出力端子22aを選択、バイアス電圧は10kVである。感度補正部35はこの場合駆動しない。
【0041】
第1の閾値Ts1以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が第1の閾値Tn1以上の個数となった場合は、低電圧モードで稼動される。切替スイッチ22は出力端子22bを選択、バイアス電圧は9kVである。この場合は感度補正部35によって放射線画像に感度補正が施される。
【0042】
第2の閾値Ts2以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が第2の閾値Tn2以上の個数となった場合は、使用不可となる。切替スイッチ22は出力端子22cを選択、バイアス電圧は0(オフ)である。また、FPD18が使用不可となったことを示す旨の警告がコンソール装置14のモニタに表示される。
【0043】
上記実施形態の作用について、図5及び図6のフローチャートに沿って説明する。まず、オペレータがコンソール装置14を操作してX線画像撮影システム10の電源がオンされると、CPU31は、ストレージデバイス36に記憶された判定部38による前回の判定結果・判定日時を読み出し(S10)、読み出した判定日時と内蔵のカレンダーとを比較して、当日に判定部38による判定処理が済んでいるか否かを確認する(S11)。当日に判定部38による判定処理が済んでいない場合(S11でNO)、欠陥領域41の検出、判定部38による判定処理に進む。他方、当日既に判定部38による判定が行われていた場合(S11でYES)は、X線撮影(S24)に進む。
【0044】
当日に判定処理が済んでいない場合(S11でNO)、CPU31は、通常のバイアス電圧を印加するように切替スイッチ22へ指令を送る(S12)。そして、バイアス電圧の印加によって駆動したX線検出部20によって、暗画像の撮影が行われる(S13)。X線検出部20から出力された撮像信号は画像処理部32で画像処理され、これにより欠陥領域41の状態を検出するための放射線画像40が生成される(S14)。画像処理部32で生成された放射線画像40を元に、欠陥領域検出部37で欠陥領域41が検出される(S15)。
【0045】
判定部38は、欠陥領域検出部37で検出された欠陥領域41の面積及び個数と第1の閾値Ts1、Tn1とを比較して判定を行う(S16)。全ての欠陥領域41が第1の閾値Ts1よりも小さい面積、及び第1の閾値Tn1よりも欠陥領域41の個数が少なかった場合(S16でYES)は、通常モードが選択される(S17)。CPU31はこの判定結果に基づき、出力端子22aを選択する指令を切替スイッチ22へ送る。
【0046】
一方、第1の閾値Ts1以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が第1の閾値Tn1以上の個数であった場合(S16でNO)は、S18の判定に進む。
【0047】
S18において、今度は欠陥領域41の面積及び個数と第2の閾値Ts2、Tn2の大小が比較される。第2の閾値Ts2以上の面積を有する欠陥領域41がない場合、又は欠陥領域41が第2の閾値Tn2よりも少ない個数であった場合(S18でNO)は、低電圧モードが選択される(S19)。CPU31はこの判定結果に基づき、出力端子22bを選択する指令を切替スイッチ22へ、感度補正指示を感度補正部35に送る(S20)。
【0048】
第2の閾値Ts2以上の面積を有する欠陥領域41が一つでもあった場合、又は欠陥領域41が第2の閾値Tn2以上の個数であった場合(S18でYES)は、使用不可と判定される(S21)。CPU31は、出力端子22cを選択する指令を切替スイッチ22へ送るとともに、FPD18が使用不可となったことを示す旨の警告をコンソール装置14のモニタに表示させる(S22)。この場合、オペレータはコンソール装置14の表示でFPD18が使用不可になったことを認識して、新品のFPD18に交換する等の処置を実行する。以上の判定処理を行った後、判定結果及び判定日時がストレージデバイス36に記憶される(S23)。
【0049】
X線撮影(S24)では、先ず図6に示すように、オペレータが被検体Hに関するデータ等の撮影条件をコンソール装置14から入力する(S30)。その後、X線入射面19aに被検体Hの撮影部位を接触させる。そして、CPU31は、X線源11を駆動して被検体HにX線を曝射させるとともに、判定部38の判定結果に基づき、通常モード、低電圧モードのいずれかのバイアス電圧をX線検出部20に印加させる(S31)。こうしてX線検出部20で被検体Hを撮像した撮像信号が取得され(S32)、画像処理部32で放射線画像が生成される(S33)。なお、このとき、判定部38の判定結果に応じて、欠陥領域41の画素値を補完する処理が画像処理部32で実行される。
【0050】
ここで、通常モードであった場合(S34でNO)は、放射線画像は感度補正部35に送られず、そのままコンソール装置14へ出力され(S35)、コンソール装置14のモニタに表示される(S36)。一方、低電圧モードであった場合(S34でYES)は、感度補正部35によって放射線画像に感度補正処理が施された後(S37)、S35、S36の処理が実行される。
【0051】
以上説明したように、FPD18が使用不可となる状態になる前に、通常よりも低いバイアス電圧で駆動するので、FPD18の使用寿命を延ばすことができる。また、低電圧モードのときは、画素電極に収集される電荷の量が少なくなり、撮像信号の出力レベルが低下するが、感度補正部35で感度を増加させる感度補正を放射線画像に施しているので、撮像信号の出力レベル低下に起因する放射線画像の画質劣化を抑えることができる。
【0052】
上記実施形態では、欠陥領域41の判定で通常電圧、低電圧のいずれかにバイアス電圧が切り替わるようにしているが、本発明はこれに限らず、FPD18が使用限界に至る第2の閾値よりも低い閾値を複数用意し、欠陥領域41の面積や個数が閾値を超えるごとに段階的にバイアス電圧を下げてもよい。例えば通常モードのバイアス電圧を10kV、第2の閾値の直前で設定される最低のバイアス電圧を5kVとし、欠陥領域の面積や個数が閾値を超えるごとに、10、9、8、7、6、5kVと1kV刻みでバイアス電圧を下げる。こうすれば、一度にバイアス電圧を下げるよりも、欠陥画素の成長を効果的に抑制することができ、さらなるFPD18の延命措置に寄与することができる。
【0053】
上記実施形態では、通常モードでバイアス電圧が10kVで一定である場合を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、複数の撮影メニューを有し、それぞれの撮影メニューに応じてバイアス電圧が設定されている放射線撮影装置にも適用することができる。
【0054】
この場合、複数の撮影メニューでそれぞれ、異なるバイアス電圧をX線検出部20に印加し、さらに通常電圧、低電圧をそれぞれ設定する。例えば表1に示すように、通常モードでは、メニューA、メニューBがそれぞれ10kV、8kVのバイアス電圧に設定されており、欠陥領域41の判定に応じて低電圧モードとなったときは、メニューA、メニューBがそれぞれ9kV、7.2kV(通常モードの一割減)のバイアス電圧に変更される。こうした構成を実現するために、例えば1つの電源を分圧抵抗で10、9、8、7.2、0kVに分圧して、撮影メニュー及びモードに相当するバイアス電圧をX線検出部20に印加する。なお、いう迄もないが、この場合に設定される低電圧は、各撮影メニューで許容されるバイアス電圧の下限値(これよりも下げると適正な放射線画像が得られなくなるバイアス電圧)と同じかそれ以上に設定される。
【0055】
【表1】

【0056】
また、撮影メニューに応じて低電圧を設定するのではなく、上記実施形態のように撮影メニューに関係なく一つの低電圧を設定してもよい。この場合、通常モードのバイアス電圧が、設定された低電圧よりも低い撮影メニューは、判定部38の判定結果に関わらず通常モードのバイアス電圧で撮影を行う。逆に通常モードのバイアス電圧が低電圧よりも高い撮影メニューは、低電圧で撮影を行う。例えば表2に示すように、通常モードでは、メニューA、B、Cがそれぞれ10kV、8kV、5kVのバイアス電圧で、低電圧が7kVに設定されていた場合は、メニューA、メニューBは低電圧モードで7kVのバイアス電圧に設定し、メニューCは通常モードのバイアス電圧5kVが常時適用される。
【0057】
【表2】

【0058】
さらには、撮影メニューに応じて低電圧を設定するとともに、撮影メニュー毎に複数の閾値を用意して、二段階以上バイアス電圧を下げてもよい。
【0059】
複数の撮影メニューを有する場合、低電圧の設定の仕方によっては、許容されるバイアス電圧の下限値よりも、設定された低電圧のほうが小さくなり、その低電圧では実行不可能な撮影メニューが出現する可能性がある。例えばバイアス電圧を10〜5kVの間で1kV毎に下げる設定で、バイアス電圧の下限値が7kVの撮影メニューがあった場合、バイアス電圧が6kVに下げられた時点でその撮影メニューは実行不可能となる。
【0060】
この場合は、例えば図7(A)に示すように、実行不可能な撮影メニューを選択したときに、コンソール装置14のモニタに警告ウィンドウ50を表示したり、(B)に示すように、ラジオボタン51で撮影メニューを選択するメニュー選択ウィンドウ52内で、実行不可能な撮影メニュー(ここではメニューB)自体を選択できなくしたりする。こうすれば、実行不可能な撮影メニューを選択して不適正な放射線画像を取得することが防止される。
【0061】
あるいは、(C)に示すように、実行不可能な撮影メニューの選択を許可して撮影は行わせるが、撮影前に適正な放射線画像が得られないおそれがある旨の警告ウィンドウ53を表示してもよい。不適正な放射線画像を取得する可能性は高くなるが、放射線画像の質はある程度目を瞑って、取り敢えず撮影を行いたい場合に適応することができる。
【0062】
なお、複数の撮影メニューを有し、撮影メニューに応じてバイアス電圧が設定される例としては、例えば静止画像を取得するためのメニューや、リアルタイムで画像を取得するためのメニューを有する場合、あるいは、撮影部位が胸部、頭部のように異なる場合、さらにまた、撮影対象が骨、臓器、血管等のように異なる場合に個別のメニューを有する場合が挙げられる。こうした異なる撮影条件では、X線源11の管電流や管電圧も設定変更されるため、これに応じてバイアス電圧も設定される。
【0063】
上記実施形態は、被写体が起立した状態で撮影を行う立位式のX線画像撮影装置を例に説明したが、診察台に横たわった状態で撮影を行う臥位式の放射線画像撮影装置や、乳ガンの検診に用いるマンモグラフィ等にも適用可能である。
【0064】
以上、本発明に係るX線画像撮影システムについて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0065】
10 X線画像撮影システム
12 X線画像撮影装置
13 システムコントローラ
18 FPD
20 X線検出部
21 電源ユニット
22 切替スイッチ
31 CPU
32 画像処理部
35 感度補正部
37 欠陥領域検出部
38 判定部
41 欠陥領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝射された放射線に応じた電荷を画素毎に出力する変換層を有する放射線検出部と、
前記放射線検出部にバイアス電圧を印加して駆動させる電圧印加手段と、
前記電圧印加手段によるバイアス電圧を切り替える切替手段と、
前記変換層の欠陥画素を検出する欠陥画素検出手段と、
前記欠陥画素検出手段で検出された欠陥画素の面積及び個数と所定の閾値を比較し、閾値以上の面積を有する欠陥画素が一つでもあった場合、又は欠陥画素が閾値以上の個数となった場合、前記バイアス電圧を下げるように前記切替手段を作動させる制御手段とからなることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記閾値は複数個用意されており、
前記制御手段は、前記欠陥画素の面積が閾値以上となる毎に、又は前記欠陥画素が閾値以上の個数となる毎に、複数段階で前記バイアス電圧を下げるように前記切替手段を作動させることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記バイアス電圧を下げたときに、前記放射線検出部で得られる放射線画像に感度補正処理を施す感度補正手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記放射線検出部に異なる前記バイアス電圧を印加する複数の撮影メニューが選択可能に設定されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記撮影メニュー毎に、下げるバイアス電圧が設定されていることを特徴とする請求項4記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記撮影メニュー毎に、前記バイアス電圧の下限値が設定されており、
前記バイアス電圧を下げたときに下限値を下回り、実行不可能になる前記撮影メニューを選択したときに、警告を表示する、又は実行不可能になる前記撮影メニューを選択不可とすることを特徴とする請求項4又は5記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記変換層は、アモルファスセレンからなることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
放射線検出部の変換層の欠陥画素を検出するステップと、
検出された欠陥画素の面積及び個数と所定の閾値を比較するステップと、
閾値以上の面積を有する欠陥画素が一つでもあった場合、又は欠陥画素が閾値以上の個数となった場合、前記放射線検出部に印加するバイアス電圧を下げるステップとを備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−233619(P2010−233619A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82174(P2009−82174)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】