放射線画像撮影装置
【課題】少なくとも増幅部毎又は処理部毎の特性を良好に補完することができ、高精度な放射線画像情報を得ることを可能にする。
【解決手段】電荷検出回路57は、信号線56から供給される電荷情報を積分し電圧信号として検出するもので、増幅部であるオペアンプ66、積分コンデンサ68及びスイッチ70と、前記電荷検出回路57の温度を検出する温度センサ72と、検出された温度に基づいて、予め設定された補完値により電荷検出回路57の出力値を補完する制御回路74と、前記出力値に補完値を加算する加算回路76とを備える。
【解決手段】電荷検出回路57は、信号線56から供給される電荷情報を積分し電圧信号として検出するもので、増幅部であるオペアンプ66、積分コンデンサ68及びスイッチ70と、前記電荷検出回路57の温度を検出する温度センサ72と、検出された温度に基づいて、予め設定された補完値により電荷検出回路57の出力値を補完する制御回路74と、前記出力値に補完値を加算する加算回路76とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の放射線画像情報を電気信号に変換して撮影する放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療分野においては、放射線源から放射線を被写体(患者)に照射し、被写体を透過した放射線を放射線画像検出器で検出して放射線画像情報を取得する放射線画像撮影装置が広汎に使用されている。
【0003】
放射線画像検出器としては、複数の光電変換素子及び薄膜トランジスタ(TFT)が配設される方式や光読み出し方式の他、光変換方式又は直接変換方式の放射線固体検出器等が使用されている。
【0004】
特に、最近注目されているDR(Digital Radiography)方式では、放射線を感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質を用いたフラットパネル型放射線検出器(FPD:Flat Panel Detector)(以下、デバイスという)と、前記デバイスから出力された微小な電気信号(電荷)を増幅する増幅器(以下、ASICという)と、増幅された前記電気信号を処理する処理部(例えば、A/D変換器)とを備えている。
【0005】
上記の方式は、従来のCR(Computed Radiography)方式と比較して、扱われる電荷が微小であるため、デバイスやASICのわずかな温度変化が出力画像に影響を与えてしまう。このため、デバイスやASICの温度変化に対して、安定した出力画像を得ることが望まれている。
【0006】
そこで、特に増幅器の温度変化に対して安定した画像信号の取得を図るために、例えば、特許文献1に開示された放射線撮像装置が知られている。この放射線撮像装置は、図9に示すように、光電変換素子とTFTとを内包する変換手段である画素が複数形成されたガラスを材質とするセンサ基板1を備えており、このセンサ基板1には、蛍光体2が積層されている。
【0007】
センサ基板1に接続されるフレキシブル基板3には、増幅手段である検出用集積回路ICが実装されるとともに、前記フレキシブル基板3が信号処理回路基板4に接続されている。ICには、このIC自体が発する熱量を放熱する冷却フィン5が熱伝達部材6を介装して配設されている。冷却フィン5は、フレキシブル基板3のICを実装した面とは逆の面に弾性体7及び固定板8を配設した状態で、スリーブ9によって保持されている。
【0008】
また、特許文献2に開示された放射線検出器では、FPD本体の温度を検出する温度センサと、この温度センサの検出温度に応じて、前記FPD本体を所望の温度とするように制御する温度コントローラと、この温度コントローラの制御下で、前記FPD本体を冷却あるいは加熱する温度保持部と、前記温度保持部による冷却あるいは加熱の効果を促進させるためのファンとを備えている。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された放射線撮影装置では、放射線を発生する放射線発生手段と、該放射線発生手段から発生し被写体を透過した放射線を検出する放射線検出手段と、該放射線検出手段からの出力を前記被写体の放射線画像として表示する画像表示手段とを備え、前記放射線検出手段は複数の光電変換素子を二次元的に配置してなる放射線検出面と、該放射線検出面からの出力を増幅する検出用集積回路と、該検出用集積回路からの出力を処理する信号処理手段とを有する放射線撮影装置において、前記放射線検出面の周辺には、前記検出用集積回路又は前記信号処理手段で発生した熱が前記放射線検出面に伝達することを遮断する断熱手段を設けている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−22841号公報
【特許文献2】特開2003−14860号公報
【特許文献3】特開2000−116633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の特許文献1〜3では、温度を一定化することにより、検出特性の安定化を図ることを目的としている。しかしながら、通常、デバイスには、複数のASIC及び前記ASICの配列状態に応じて対をなすA/D変換器等が取り付けられており、上記の特許文献1〜3では、安定した画像を得ることができない。
【0012】
例えば、特許文献1に開示された放射線撮像装置は、図10に示すように、センサ基板1の一方の端部に複数のフレキシブル基板3が接続されるとともに、前記センサ基板1の他方の端部には、複数のフレキシブル基板3aが接続されている。各フレキシブル基板3、3aには、ICが実装され、さらに、各フレキシブル基板3が一方の信号処理回路基板に接続されるとともに、各フレキシブル基板3aが他方の信号処理回路基板に接続されている。
【0013】
その際、各ASIC(IC)のゲイン量及び各A/D変換器(信号処理回路基板4)の特性の絶対値は、それぞれ異なるとともに、前記ASICのゲイン量及び前記A/D変換器の変換の特性は、それぞれ温度によって変化している。このため、A/D変換後の信号を画像として表示すると、ASIC毎、すなわちIC毎にゼブラ状のアーチファクトが形成されてしまい、良好な画像を得ることができないという問題がある。
【0014】
また、図11に示すように、センサ基板1の一辺側に複数のフレキシブル基板3が接続されるとともに、前記センサ基板1の前記一辺に直交する他辺側に複数のフレキシブル基板3bが接続される場合がある。このセンサ基板1では、互いに交差するASIC毎に格子状のアーチファクトが形成されてしまう。これにより、良好な画像が得られないという問題がある。
【0015】
本発明は、前記の不具合に鑑みなされたものであり、少なくとも増幅部毎又は処理部毎の特性を良好に補完することができ、高精度な放射線画像情報を得ることが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、被写体の放射線画像情報を電気信号に変換する放射線画像検出器と、前記放射線画像検出器により変換された前記電気信号を増幅する増幅部と、増幅された前記電気信号を処理する処理部と、少なくとも前記増幅部又は前記処理部の温度を検出する温度検出部とを備える放射線画像撮影装置に関するものである。
【0017】
この放射線画像撮影装置は、少なくとも増幅部又は処理部から得られる出力値を、温度検出部の検出温度に基づいて、予め設定された補完値により補完する制御部を備えている。
【0018】
また、制御部は、少なくとも増幅部又は処理部の温度に対する特性を、当該特性を示す一次関数の傾き及び切片を用いて記憶するテーブルを有することが好ましい。
【0019】
さらに、補完値による補完は、15℃〜45℃の範囲内の温度条件下で行われることが好ましい。
【0020】
さらにまた、放射線画像検出器は、被写体を透過した放射線を電荷情報として蓄積する放射線固体検出器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、少なくとも増幅部又は処理部から得られる出力値を、温度検出部の検出温度に基づいて、予め設定された補完値により補完している。このため、各増幅部毎又は各処理部毎の特性の絶対値及び温度による変化を、良好に補完することができる。これにより、得られる画像にアーチファクトが形成されることがなく、高品質な画像を確実に得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る放射線画像撮影装置20の構成ブロック図である。
【0023】
放射線画像撮影装置20は、放射線Xを発生させて被写体22に照射する放射線発生装置24と、前記被写体22を透過した放射線Xを検出する放射線固体検出器26(放射線画像検出器)と、前記放射線発生装置24及び前記放射線固体検出器26を制御する制御装置28と、前記被写体22に対する放射線Xの照射線量等の撮影条件を前記制御装置28に設定するコンソール30と、前記放射線固体検出器26から読み出した該被写体22の放射線画像情報に対して所定の画像処理を施す画像処理装置32と、処理された放射線画像情報を表示する表示装置34とを備える。
【0024】
図2は、放射線固体検出器26の概略構成斜視図である。放射線固体検出器26は、保護ケース36に収納され、被写体22を透過した放射線Xに係る放射線画像情報を二次元の電荷情報として蓄積するセンサ基板38と、前記センサ基板38を構成する各画素50に接続されるゲート線を駆動するゲート線駆動回路を構成する複数の駆動用IC40と、駆動状態にあるゲート線が接続される各画素50より信号線を介して電荷情報を読み出す信号読出回路を構成する複数の読出用IC42とを備える。
【0025】
図3は、放射線固体検出器26の回路構成ブロック図である。放射線固体検出器26は、センサ基板38と、複数の駆動用IC40からなるゲート線駆動回路44と、複数の読出用IC42からなる信号読出回路46と、前記ゲート線駆動回路44及び前記信号読出回路46を制御するタイミング制御回路48とを備える。
【0026】
センサ基板38は、放射線Xを感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる光電変換層51を行列状の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)52のアレイの上に配置した構造を有し、発生した電荷を蓄積容量53に蓄積した後、各行毎に前記TFT52を順次オンにして、電荷を画像信号として読み出す。図3では、光電変換層51及び蓄積容量53からなる1つの画素50と1つのTFT52との接続関係のみを示し、その他の画素50の構成については省略している。
【0027】
なお、アモルファスセレンは、高温になると構造が変化して機能が低下してしまうため、所定の温度範囲内で使用する必要がある。各画素50に接続されるTFT52には、行方向と平行に延びるゲート線54と、列方向と平行に延びる信号線56とが接続される。各ゲート線54は、ゲート線駆動回路44に接続され、各信号線56は、信号読出回路46に接続される。
【0028】
図4は、複数の読出用IC42によって構成される信号読出回路46の詳細ブロック図である。信号読出回路46は、センサ基板38の各信号線56に接続される電荷検出回路57を備える。複数の電荷検出回路57は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に基づき、信号線56の1つに接続されている画素50を選択するマルチプレクサ60と、選択された画素50から読み出した放射線画像情報をデジタル信号としての画像信号に変換し、画像処理装置32に送信するA/D変換器(処理部)62とに接続される。
【0029】
電荷検出回路57は、信号線56から供給される電荷情報を積分し電圧信号として検出するもので、増幅部であるオペアンプ66(積分アンプ)、積分コンデンサ68及びスイッチ70と、前記電荷検出回路57の温度を検出する温度センサ(温度検出部)72と、検出された温度に基づいて、予め設定された補完値により電荷検出回路57の出力値を補完する制御回路(制御部)74と、前記出力値に補完値を加算(減算も含む)する加算回路(補正回路)76とを備える。
【0030】
オペアンプ66の反転入力端子には、信号線56が接続され、オペアンプ66の非反転入力端子には、基準電圧Vbが供給される。温度センサ72によって検出された各電荷検出回路57の温度は、制御回路74に供給される。制御回路74は、温度センサ72により検出された電荷検出回路57の温度に基づいて、温度変動による各電荷検出回路57の出力値の変動を補完するために、予め設定された補完値を、後述するように、ルックアップテーブル(LUT)に記憶しておく。
【0031】
図5に示すように、センサ基板38の両端には、信号線56を有する複数のフレキシブル基板77が接続される。一方(図5中、右側)の各フレキシブル基板77は、一方のA/D変換器62に接続されるとともに、他方(図5中、右側)の各フレキシブル基板77は、他方のA/D変換器62に接続される。各フレキシブル基板77には、電荷検出回路57が配設される。
【0032】
センサ基板38の近傍、前記センサ基板38と電荷検出回路57との間、前記電荷検出回路57の近傍、前記電荷検出回路57とA/D変換器62との間、及び前記A/D変換器62の近傍には、温度検出部として温度センサ78a、78b、72、78c及び78dが配設される。
【0033】
図6は、読出用IC42毎(具体的には、電荷検出回路57毎)の温度に対する出力の関係、すなわち、温度特性が示されている。なお、便宜上、3つの電荷検出回路57a、57b及び57cを用いて説明する。
【0034】
電荷検出回路57a、57b及び57cでは、θmin〜θmaxの温度範囲で各出力の特性が、温度に対して略線形に変化する。各電荷検出回路57a〜57cは、基準温度θ2では、それぞれ異なる出力値(絶対値)を有するとともに、検出温度範囲θ1(15℃)〜θ3(45℃)間で、それぞれ所定の傾きを有する一次関数で表すことができる。
【0035】
そこで、基準温度θ2における基準出力値bIDEALを設定し、この基準出力値bIDEALからの各電荷検出回路57a〜57nの出力値の差分ΔbASIC_A、ΔbASIC_B、ΔbASIC_C、…ΔbASIC_N(すなわち、切片)をルックアップテーブルに記憶しておく。これにより、実画像取得時には、温度に関係なく、上記の差分ΔbASIC_Nを各電荷検出回路57(a〜n)毎の出力値に加算することにより、絶対値のずれが補完される。
【0036】
次に、上記のように、絶対値のずれが補完されると、図7に示すように、各電荷検出回路57(a〜n)は、それぞれ温度によって変化する一次関数で表される。そして、温度θ1及びθ3の2点の代表温度における各出力値を測定し、各電荷検出回路57(a〜n)毎の一次関数の傾きaASIC_Nをルックアップテーブルに記憶する。すなわち、各電荷検出回路57(a〜n)の温度に対する特性は、当該特性を示す一次関数の傾きaASIC_N及び切片を用いてルックアップテーブルに記憶される。
【0037】
温度θでの実画像取得時には、各電荷検出回路57(a〜n)毎の出力値に対して、aASIC_N(θ2−θ)の値を加算させることで、特性による各出力値のずれが補完される。
【0038】
従って、ルックアップテーブルに記憶する値は、各電荷検出回路57(a〜n)毎にaASIC_NとΔbASIC_Nとなり、実画像取得時の温度(θ)検出結果に対して、aASIC_N(θ2−θ)+ΔbASIC_Nを加算させることにより、各電荷検出回路57(a〜n)毎のずれを補完した出力値が得られる。なお、対をなすA/D変換器62では、それぞれ温度センサ78dを設け、上記の電荷検出回路57と同様に、前記A/D変換器62の温度に対する補完を行うことができる。
【0039】
さらにまた、読出用IC42とA/D変換器62との間に配置されている温度センサ78cにより、電荷検出回路57及び前記A/D変換器62を一体として1つの1次関数で補完してもよい。また、便宜上、温度θ1と温度θ2とを個別の温度として説明したが、測定回数を減少させるために、温度θ1=温度θ2であってもよい。
【0040】
本実施形態の放射線画像撮影装置20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0041】
先ず、図1に示すように、コンソール30を用いて、被写体22に係るID情報、撮影条件等の設定を行う。この場合、ID情報には、被写体22の氏名、年齢、性別等の情報があり、被写体22が所持するIDカードから取得することもできる。また、撮影条件としては、医師によって指示された撮影部位、撮影方向等の情報に加え、撮影部位に応じた放射線Xの照射線量があり、ネットワークに接続された上位の装置から取得し、あるいは、コンソール30から放射線技師が入力することが可能である。
【0042】
次に、放射線固体検出器26に対して被写体22の撮影部位を位置決めした後、制御装置28は、設定された撮影条件に従って放射線発生装置24を制御し、放射線Xを被写体22に照射する。被写体22を透過した放射線Xは、放射線固体検出器26のセンサ基板38を構成する各画素50の光電変換層51によって電気信号に変換され、蓄積容量53に電荷として蓄積される(図3)。
【0043】
次いで、各蓄積容量53に蓄積された被写体22の放射線画像情報である電荷情報は、タイミング制御回路48からゲート線駆動回路44及び信号読出回路46に供給されるタイミング制御信号に従って、読み出される。
【0044】
すなわち、ゲート線駆動回路44は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に従ってゲート線54の1つを選択し、選択されたゲート線54に接続されている各TFT52のベースに駆動信号を供給する。一方、信号読出回路46は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に従い、電荷検出回路57に接続されている信号線56をマルチプレクサ60により行方向に順次切り替えながら選択する。
【0045】
選択されたゲート線54及び信号線56に対応する画素50の蓄積容量53に蓄積された放射線画像情報に係る電荷情報は、図4に示すように、オペアンプ66及び積分コンデンサ68によって積分された後、加算回路76及びマルチプレクサ60を介してA/D変換器62に供給され、デジタル信号である画像信号として画像処理装置32に供給される。
【0046】
行方向に配列された各画素50から画像信号が読み出された後、ゲート線駆動回路44は、列方向の次のゲート線54を選択して駆動信号を供給し、信号読出回路46は、選択されたゲート線54に接続されたTFT52から同様にして画像信号を読み出す。以上の動作を繰り返すことにより、センサ基板38に蓄積された二次元の放射線画像情報が読み出され、画像処理装置32に供給される。
【0047】
ここで、信号読出回路46を構成する各電荷検出回路57に近接して配設されている温度センサ72は、前記電荷検出回路57の温度を検出して制御回路74に供給する。制御回路74は、検出された温度に基づき、電荷検出回路57の温度による出力変動を補完するために、予め設定された補完値をルックアップテーブルから読み出して、加算回路76に供給する。
【0048】
具体的に、図6及び図7に示す電荷検出回路57aについて説明すると、この電荷検出回路57aは、基準温度θ2における出力値bASIC_Aθ2は、基準出力値bIDEALからΔbASIC_Aの差分を有している。従って、電荷検出回路57aの出力値bASIC_Aθ2に差分ΔbASIC_Aを加算することにより、前記電荷検出回路57aの絶対値のずれが補完される。
【0049】
次いで、温度センサ72により温度θが検出されると、この温度θに対する電荷検出回路57aの出力値bASIC_Aθは、bASIC_Aθ=bASIC_Aθ2−aASIC_A(θ2−θ)となる。このため、電荷検出回路57aでは、基準温度θ2における出力値bASIC_Aθ2に対して、aASIC_A(θ2−θ)だけ減少することになる。このaASIC_A(θ2−θ)を電荷検出回路57aの出力値bASIC_Aθ2に加算することにより、前記電荷検出回路57aの特性による出力値のずれが補完される。
【0050】
結果的に、制御回路74では、電荷検出回路57aの一次関数の傾きaASIC_A(θ2−θ)と、基準出力値bIDEALからの差分ΔbASIC_Aとがルックアップテーブルに記憶されている。そして、温度θにおける電荷検出回路57aの出力値に、aASIC_A(θ2−θ)+ΔbASIC_Aを加算することにより、前記電荷検出回路57aの正確な出力値を得ることが可能になる。
【0051】
一方、他の電荷検出回路57b〜57nにおいても同様に、それぞれの特性の絶対値及び特性の温度に対する一次関数に基づいて設定された各補完値を用い、出力値の補完が行われることにより、正確な出力値を得ることができる。
【0052】
これにより、画像処理装置32に供給された放射線画像情報は、画像にすることによって各電荷検出回路57毎にゼブラ状(又は格子状)のアーチファクトが形成されることがなく、高品質な画像を確実に得ることが可能になるという効果が得られる。
【0053】
以上のようにして補完され、画像処理装置32に供給された放射線画像情報は、所定の画像処理が施された後、診断等のために表示装置34に表示される。この場合、温度変動の影響のない高精度な画像に基づき、診断等の処理を行うことができる。
【0054】
図8は、電荷検出回路57によって検出された電荷情報を、A/D変換器62によってデジタル信号である画像信号に変換し、その画像信号を、温度センサ78dによって検出した前記A/D変換器62の温度に従い、補正回路80で補正する構成を示す。
【0055】
この場合、補正回路80では、検出された温度に対して、A/D変換器62の特性の絶対値及び特性の温度による変化を補完するための補完値(一次関数)を設定したルックアップテーブルを用いて、画像信号を補完することができる。また、補正回路80は、図4に示す制御回路74及び加算回路76と併用することが可能である。これにより、一層高精度な画像を確実に得ることができる。
【0056】
さらにまた、TFT52を用いた放射線固体検出器26に代えて、放射線画像情報を静電潜像として蓄積し、読取用電磁波を照射することで静電潜像が電荷情報として読み出されるセンサ基板を用いた放射線固体検出器を使用することができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0058】
例えば、照射された放射線Xを直接電荷情報に変換する放射線固体検出器26等に代えて、シンチレータによって放射線Xを一旦可視光に変換し、その可視光を電荷情報に変換する構成からなる放射線検出器を利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成ブロック図である。
【図2】図1に示す放射線固体検出器の概略構成斜視図である。
【図3】前記放射線固体検出器の回路構成ブロック図である。
【図4】図3に示す信号読出回路の詳細ブロック図である。
【図5】前記放射線固体検出器に配置される温度センサの説明図である。
【図6】ASIC毎の出力特性の説明図である。
【図7】前記ASIC毎の出力値補完の説明図である。
【図8】図3に示す信号読出回路の他の構成の詳細ブロック図である。
【図9】特許文献1に係る放射線画像検出器の概略構成図である。
【図10】従来の放射線画像検出器のアーチファクトの説明図である。
【図11】他の従来の放射線画像検出器のアーチファクトの説明図である。
【符号の説明】
【0060】
20…放射線画像撮影装置 22…被写体
24…放射線発生装置 26…放射線固体検出器
32…画像処理装置 38…センサ基板
40…駆動用IC 42…読出用IC
44…ゲート線駆動回路 46…信号読出回路
50…画素 51…光電変換層
52…TFT 57、57a〜57n…電荷検出回路
62…A/D変換器 72…温度センサ
74…制御回路 76…加算回路
78a〜78d…温度センサ 80…補正回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の放射線画像情報を電気信号に変換して撮影する放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療分野においては、放射線源から放射線を被写体(患者)に照射し、被写体を透過した放射線を放射線画像検出器で検出して放射線画像情報を取得する放射線画像撮影装置が広汎に使用されている。
【0003】
放射線画像検出器としては、複数の光電変換素子及び薄膜トランジスタ(TFT)が配設される方式や光読み出し方式の他、光変換方式又は直接変換方式の放射線固体検出器等が使用されている。
【0004】
特に、最近注目されているDR(Digital Radiography)方式では、放射線を感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質を用いたフラットパネル型放射線検出器(FPD:Flat Panel Detector)(以下、デバイスという)と、前記デバイスから出力された微小な電気信号(電荷)を増幅する増幅器(以下、ASICという)と、増幅された前記電気信号を処理する処理部(例えば、A/D変換器)とを備えている。
【0005】
上記の方式は、従来のCR(Computed Radiography)方式と比較して、扱われる電荷が微小であるため、デバイスやASICのわずかな温度変化が出力画像に影響を与えてしまう。このため、デバイスやASICの温度変化に対して、安定した出力画像を得ることが望まれている。
【0006】
そこで、特に増幅器の温度変化に対して安定した画像信号の取得を図るために、例えば、特許文献1に開示された放射線撮像装置が知られている。この放射線撮像装置は、図9に示すように、光電変換素子とTFTとを内包する変換手段である画素が複数形成されたガラスを材質とするセンサ基板1を備えており、このセンサ基板1には、蛍光体2が積層されている。
【0007】
センサ基板1に接続されるフレキシブル基板3には、増幅手段である検出用集積回路ICが実装されるとともに、前記フレキシブル基板3が信号処理回路基板4に接続されている。ICには、このIC自体が発する熱量を放熱する冷却フィン5が熱伝達部材6を介装して配設されている。冷却フィン5は、フレキシブル基板3のICを実装した面とは逆の面に弾性体7及び固定板8を配設した状態で、スリーブ9によって保持されている。
【0008】
また、特許文献2に開示された放射線検出器では、FPD本体の温度を検出する温度センサと、この温度センサの検出温度に応じて、前記FPD本体を所望の温度とするように制御する温度コントローラと、この温度コントローラの制御下で、前記FPD本体を冷却あるいは加熱する温度保持部と、前記温度保持部による冷却あるいは加熱の効果を促進させるためのファンとを備えている。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された放射線撮影装置では、放射線を発生する放射線発生手段と、該放射線発生手段から発生し被写体を透過した放射線を検出する放射線検出手段と、該放射線検出手段からの出力を前記被写体の放射線画像として表示する画像表示手段とを備え、前記放射線検出手段は複数の光電変換素子を二次元的に配置してなる放射線検出面と、該放射線検出面からの出力を増幅する検出用集積回路と、該検出用集積回路からの出力を処理する信号処理手段とを有する放射線撮影装置において、前記放射線検出面の周辺には、前記検出用集積回路又は前記信号処理手段で発生した熱が前記放射線検出面に伝達することを遮断する断熱手段を設けている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−22841号公報
【特許文献2】特開2003−14860号公報
【特許文献3】特開2000−116633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の特許文献1〜3では、温度を一定化することにより、検出特性の安定化を図ることを目的としている。しかしながら、通常、デバイスには、複数のASIC及び前記ASICの配列状態に応じて対をなすA/D変換器等が取り付けられており、上記の特許文献1〜3では、安定した画像を得ることができない。
【0012】
例えば、特許文献1に開示された放射線撮像装置は、図10に示すように、センサ基板1の一方の端部に複数のフレキシブル基板3が接続されるとともに、前記センサ基板1の他方の端部には、複数のフレキシブル基板3aが接続されている。各フレキシブル基板3、3aには、ICが実装され、さらに、各フレキシブル基板3が一方の信号処理回路基板に接続されるとともに、各フレキシブル基板3aが他方の信号処理回路基板に接続されている。
【0013】
その際、各ASIC(IC)のゲイン量及び各A/D変換器(信号処理回路基板4)の特性の絶対値は、それぞれ異なるとともに、前記ASICのゲイン量及び前記A/D変換器の変換の特性は、それぞれ温度によって変化している。このため、A/D変換後の信号を画像として表示すると、ASIC毎、すなわちIC毎にゼブラ状のアーチファクトが形成されてしまい、良好な画像を得ることができないという問題がある。
【0014】
また、図11に示すように、センサ基板1の一辺側に複数のフレキシブル基板3が接続されるとともに、前記センサ基板1の前記一辺に直交する他辺側に複数のフレキシブル基板3bが接続される場合がある。このセンサ基板1では、互いに交差するASIC毎に格子状のアーチファクトが形成されてしまう。これにより、良好な画像が得られないという問題がある。
【0015】
本発明は、前記の不具合に鑑みなされたものであり、少なくとも増幅部毎又は処理部毎の特性を良好に補完することができ、高精度な放射線画像情報を得ることが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、被写体の放射線画像情報を電気信号に変換する放射線画像検出器と、前記放射線画像検出器により変換された前記電気信号を増幅する増幅部と、増幅された前記電気信号を処理する処理部と、少なくとも前記増幅部又は前記処理部の温度を検出する温度検出部とを備える放射線画像撮影装置に関するものである。
【0017】
この放射線画像撮影装置は、少なくとも増幅部又は処理部から得られる出力値を、温度検出部の検出温度に基づいて、予め設定された補完値により補完する制御部を備えている。
【0018】
また、制御部は、少なくとも増幅部又は処理部の温度に対する特性を、当該特性を示す一次関数の傾き及び切片を用いて記憶するテーブルを有することが好ましい。
【0019】
さらに、補完値による補完は、15℃〜45℃の範囲内の温度条件下で行われることが好ましい。
【0020】
さらにまた、放射線画像検出器は、被写体を透過した放射線を電荷情報として蓄積する放射線固体検出器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、少なくとも増幅部又は処理部から得られる出力値を、温度検出部の検出温度に基づいて、予め設定された補完値により補完している。このため、各増幅部毎又は各処理部毎の特性の絶対値及び温度による変化を、良好に補完することができる。これにより、得られる画像にアーチファクトが形成されることがなく、高品質な画像を確実に得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る放射線画像撮影装置20の構成ブロック図である。
【0023】
放射線画像撮影装置20は、放射線Xを発生させて被写体22に照射する放射線発生装置24と、前記被写体22を透過した放射線Xを検出する放射線固体検出器26(放射線画像検出器)と、前記放射線発生装置24及び前記放射線固体検出器26を制御する制御装置28と、前記被写体22に対する放射線Xの照射線量等の撮影条件を前記制御装置28に設定するコンソール30と、前記放射線固体検出器26から読み出した該被写体22の放射線画像情報に対して所定の画像処理を施す画像処理装置32と、処理された放射線画像情報を表示する表示装置34とを備える。
【0024】
図2は、放射線固体検出器26の概略構成斜視図である。放射線固体検出器26は、保護ケース36に収納され、被写体22を透過した放射線Xに係る放射線画像情報を二次元の電荷情報として蓄積するセンサ基板38と、前記センサ基板38を構成する各画素50に接続されるゲート線を駆動するゲート線駆動回路を構成する複数の駆動用IC40と、駆動状態にあるゲート線が接続される各画素50より信号線を介して電荷情報を読み出す信号読出回路を構成する複数の読出用IC42とを備える。
【0025】
図3は、放射線固体検出器26の回路構成ブロック図である。放射線固体検出器26は、センサ基板38と、複数の駆動用IC40からなるゲート線駆動回路44と、複数の読出用IC42からなる信号読出回路46と、前記ゲート線駆動回路44及び前記信号読出回路46を制御するタイミング制御回路48とを備える。
【0026】
センサ基板38は、放射線Xを感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる光電変換層51を行列状の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)52のアレイの上に配置した構造を有し、発生した電荷を蓄積容量53に蓄積した後、各行毎に前記TFT52を順次オンにして、電荷を画像信号として読み出す。図3では、光電変換層51及び蓄積容量53からなる1つの画素50と1つのTFT52との接続関係のみを示し、その他の画素50の構成については省略している。
【0027】
なお、アモルファスセレンは、高温になると構造が変化して機能が低下してしまうため、所定の温度範囲内で使用する必要がある。各画素50に接続されるTFT52には、行方向と平行に延びるゲート線54と、列方向と平行に延びる信号線56とが接続される。各ゲート線54は、ゲート線駆動回路44に接続され、各信号線56は、信号読出回路46に接続される。
【0028】
図4は、複数の読出用IC42によって構成される信号読出回路46の詳細ブロック図である。信号読出回路46は、センサ基板38の各信号線56に接続される電荷検出回路57を備える。複数の電荷検出回路57は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に基づき、信号線56の1つに接続されている画素50を選択するマルチプレクサ60と、選択された画素50から読み出した放射線画像情報をデジタル信号としての画像信号に変換し、画像処理装置32に送信するA/D変換器(処理部)62とに接続される。
【0029】
電荷検出回路57は、信号線56から供給される電荷情報を積分し電圧信号として検出するもので、増幅部であるオペアンプ66(積分アンプ)、積分コンデンサ68及びスイッチ70と、前記電荷検出回路57の温度を検出する温度センサ(温度検出部)72と、検出された温度に基づいて、予め設定された補完値により電荷検出回路57の出力値を補完する制御回路(制御部)74と、前記出力値に補完値を加算(減算も含む)する加算回路(補正回路)76とを備える。
【0030】
オペアンプ66の反転入力端子には、信号線56が接続され、オペアンプ66の非反転入力端子には、基準電圧Vbが供給される。温度センサ72によって検出された各電荷検出回路57の温度は、制御回路74に供給される。制御回路74は、温度センサ72により検出された電荷検出回路57の温度に基づいて、温度変動による各電荷検出回路57の出力値の変動を補完するために、予め設定された補完値を、後述するように、ルックアップテーブル(LUT)に記憶しておく。
【0031】
図5に示すように、センサ基板38の両端には、信号線56を有する複数のフレキシブル基板77が接続される。一方(図5中、右側)の各フレキシブル基板77は、一方のA/D変換器62に接続されるとともに、他方(図5中、右側)の各フレキシブル基板77は、他方のA/D変換器62に接続される。各フレキシブル基板77には、電荷検出回路57が配設される。
【0032】
センサ基板38の近傍、前記センサ基板38と電荷検出回路57との間、前記電荷検出回路57の近傍、前記電荷検出回路57とA/D変換器62との間、及び前記A/D変換器62の近傍には、温度検出部として温度センサ78a、78b、72、78c及び78dが配設される。
【0033】
図6は、読出用IC42毎(具体的には、電荷検出回路57毎)の温度に対する出力の関係、すなわち、温度特性が示されている。なお、便宜上、3つの電荷検出回路57a、57b及び57cを用いて説明する。
【0034】
電荷検出回路57a、57b及び57cでは、θmin〜θmaxの温度範囲で各出力の特性が、温度に対して略線形に変化する。各電荷検出回路57a〜57cは、基準温度θ2では、それぞれ異なる出力値(絶対値)を有するとともに、検出温度範囲θ1(15℃)〜θ3(45℃)間で、それぞれ所定の傾きを有する一次関数で表すことができる。
【0035】
そこで、基準温度θ2における基準出力値bIDEALを設定し、この基準出力値bIDEALからの各電荷検出回路57a〜57nの出力値の差分ΔbASIC_A、ΔbASIC_B、ΔbASIC_C、…ΔbASIC_N(すなわち、切片)をルックアップテーブルに記憶しておく。これにより、実画像取得時には、温度に関係なく、上記の差分ΔbASIC_Nを各電荷検出回路57(a〜n)毎の出力値に加算することにより、絶対値のずれが補完される。
【0036】
次に、上記のように、絶対値のずれが補完されると、図7に示すように、各電荷検出回路57(a〜n)は、それぞれ温度によって変化する一次関数で表される。そして、温度θ1及びθ3の2点の代表温度における各出力値を測定し、各電荷検出回路57(a〜n)毎の一次関数の傾きaASIC_Nをルックアップテーブルに記憶する。すなわち、各電荷検出回路57(a〜n)の温度に対する特性は、当該特性を示す一次関数の傾きaASIC_N及び切片を用いてルックアップテーブルに記憶される。
【0037】
温度θでの実画像取得時には、各電荷検出回路57(a〜n)毎の出力値に対して、aASIC_N(θ2−θ)の値を加算させることで、特性による各出力値のずれが補完される。
【0038】
従って、ルックアップテーブルに記憶する値は、各電荷検出回路57(a〜n)毎にaASIC_NとΔbASIC_Nとなり、実画像取得時の温度(θ)検出結果に対して、aASIC_N(θ2−θ)+ΔbASIC_Nを加算させることにより、各電荷検出回路57(a〜n)毎のずれを補完した出力値が得られる。なお、対をなすA/D変換器62では、それぞれ温度センサ78dを設け、上記の電荷検出回路57と同様に、前記A/D変換器62の温度に対する補完を行うことができる。
【0039】
さらにまた、読出用IC42とA/D変換器62との間に配置されている温度センサ78cにより、電荷検出回路57及び前記A/D変換器62を一体として1つの1次関数で補完してもよい。また、便宜上、温度θ1と温度θ2とを個別の温度として説明したが、測定回数を減少させるために、温度θ1=温度θ2であってもよい。
【0040】
本実施形態の放射線画像撮影装置20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0041】
先ず、図1に示すように、コンソール30を用いて、被写体22に係るID情報、撮影条件等の設定を行う。この場合、ID情報には、被写体22の氏名、年齢、性別等の情報があり、被写体22が所持するIDカードから取得することもできる。また、撮影条件としては、医師によって指示された撮影部位、撮影方向等の情報に加え、撮影部位に応じた放射線Xの照射線量があり、ネットワークに接続された上位の装置から取得し、あるいは、コンソール30から放射線技師が入力することが可能である。
【0042】
次に、放射線固体検出器26に対して被写体22の撮影部位を位置決めした後、制御装置28は、設定された撮影条件に従って放射線発生装置24を制御し、放射線Xを被写体22に照射する。被写体22を透過した放射線Xは、放射線固体検出器26のセンサ基板38を構成する各画素50の光電変換層51によって電気信号に変換され、蓄積容量53に電荷として蓄積される(図3)。
【0043】
次いで、各蓄積容量53に蓄積された被写体22の放射線画像情報である電荷情報は、タイミング制御回路48からゲート線駆動回路44及び信号読出回路46に供給されるタイミング制御信号に従って、読み出される。
【0044】
すなわち、ゲート線駆動回路44は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に従ってゲート線54の1つを選択し、選択されたゲート線54に接続されている各TFT52のベースに駆動信号を供給する。一方、信号読出回路46は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に従い、電荷検出回路57に接続されている信号線56をマルチプレクサ60により行方向に順次切り替えながら選択する。
【0045】
選択されたゲート線54及び信号線56に対応する画素50の蓄積容量53に蓄積された放射線画像情報に係る電荷情報は、図4に示すように、オペアンプ66及び積分コンデンサ68によって積分された後、加算回路76及びマルチプレクサ60を介してA/D変換器62に供給され、デジタル信号である画像信号として画像処理装置32に供給される。
【0046】
行方向に配列された各画素50から画像信号が読み出された後、ゲート線駆動回路44は、列方向の次のゲート線54を選択して駆動信号を供給し、信号読出回路46は、選択されたゲート線54に接続されたTFT52から同様にして画像信号を読み出す。以上の動作を繰り返すことにより、センサ基板38に蓄積された二次元の放射線画像情報が読み出され、画像処理装置32に供給される。
【0047】
ここで、信号読出回路46を構成する各電荷検出回路57に近接して配設されている温度センサ72は、前記電荷検出回路57の温度を検出して制御回路74に供給する。制御回路74は、検出された温度に基づき、電荷検出回路57の温度による出力変動を補完するために、予め設定された補完値をルックアップテーブルから読み出して、加算回路76に供給する。
【0048】
具体的に、図6及び図7に示す電荷検出回路57aについて説明すると、この電荷検出回路57aは、基準温度θ2における出力値bASIC_Aθ2は、基準出力値bIDEALからΔbASIC_Aの差分を有している。従って、電荷検出回路57aの出力値bASIC_Aθ2に差分ΔbASIC_Aを加算することにより、前記電荷検出回路57aの絶対値のずれが補完される。
【0049】
次いで、温度センサ72により温度θが検出されると、この温度θに対する電荷検出回路57aの出力値bASIC_Aθは、bASIC_Aθ=bASIC_Aθ2−aASIC_A(θ2−θ)となる。このため、電荷検出回路57aでは、基準温度θ2における出力値bASIC_Aθ2に対して、aASIC_A(θ2−θ)だけ減少することになる。このaASIC_A(θ2−θ)を電荷検出回路57aの出力値bASIC_Aθ2に加算することにより、前記電荷検出回路57aの特性による出力値のずれが補完される。
【0050】
結果的に、制御回路74では、電荷検出回路57aの一次関数の傾きaASIC_A(θ2−θ)と、基準出力値bIDEALからの差分ΔbASIC_Aとがルックアップテーブルに記憶されている。そして、温度θにおける電荷検出回路57aの出力値に、aASIC_A(θ2−θ)+ΔbASIC_Aを加算することにより、前記電荷検出回路57aの正確な出力値を得ることが可能になる。
【0051】
一方、他の電荷検出回路57b〜57nにおいても同様に、それぞれの特性の絶対値及び特性の温度に対する一次関数に基づいて設定された各補完値を用い、出力値の補完が行われることにより、正確な出力値を得ることができる。
【0052】
これにより、画像処理装置32に供給された放射線画像情報は、画像にすることによって各電荷検出回路57毎にゼブラ状(又は格子状)のアーチファクトが形成されることがなく、高品質な画像を確実に得ることが可能になるという効果が得られる。
【0053】
以上のようにして補完され、画像処理装置32に供給された放射線画像情報は、所定の画像処理が施された後、診断等のために表示装置34に表示される。この場合、温度変動の影響のない高精度な画像に基づき、診断等の処理を行うことができる。
【0054】
図8は、電荷検出回路57によって検出された電荷情報を、A/D変換器62によってデジタル信号である画像信号に変換し、その画像信号を、温度センサ78dによって検出した前記A/D変換器62の温度に従い、補正回路80で補正する構成を示す。
【0055】
この場合、補正回路80では、検出された温度に対して、A/D変換器62の特性の絶対値及び特性の温度による変化を補完するための補完値(一次関数)を設定したルックアップテーブルを用いて、画像信号を補完することができる。また、補正回路80は、図4に示す制御回路74及び加算回路76と併用することが可能である。これにより、一層高精度な画像を確実に得ることができる。
【0056】
さらにまた、TFT52を用いた放射線固体検出器26に代えて、放射線画像情報を静電潜像として蓄積し、読取用電磁波を照射することで静電潜像が電荷情報として読み出されるセンサ基板を用いた放射線固体検出器を使用することができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0058】
例えば、照射された放射線Xを直接電荷情報に変換する放射線固体検出器26等に代えて、シンチレータによって放射線Xを一旦可視光に変換し、その可視光を電荷情報に変換する構成からなる放射線検出器を利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成ブロック図である。
【図2】図1に示す放射線固体検出器の概略構成斜視図である。
【図3】前記放射線固体検出器の回路構成ブロック図である。
【図4】図3に示す信号読出回路の詳細ブロック図である。
【図5】前記放射線固体検出器に配置される温度センサの説明図である。
【図6】ASIC毎の出力特性の説明図である。
【図7】前記ASIC毎の出力値補完の説明図である。
【図8】図3に示す信号読出回路の他の構成の詳細ブロック図である。
【図9】特許文献1に係る放射線画像検出器の概略構成図である。
【図10】従来の放射線画像検出器のアーチファクトの説明図である。
【図11】他の従来の放射線画像検出器のアーチファクトの説明図である。
【符号の説明】
【0060】
20…放射線画像撮影装置 22…被写体
24…放射線発生装置 26…放射線固体検出器
32…画像処理装置 38…センサ基板
40…駆動用IC 42…読出用IC
44…ゲート線駆動回路 46…信号読出回路
50…画素 51…光電変換層
52…TFT 57、57a〜57n…電荷検出回路
62…A/D変換器 72…温度センサ
74…制御回路 76…加算回路
78a〜78d…温度センサ 80…補正回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の放射線画像情報を電気信号に変換する放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器により変換された前記電気信号を増幅する増幅部と、
増幅された前記電気信号を処理する処理部と、
少なくとも前記増幅部又は前記処理部の温度を検出する温度検出部と、
を備える放射線画像撮影装置であって、
少なくとも前記増幅部又は前記処理部から得られる出力値を、前記温度検出部の検出温度に基づいて、予め設定された補完値により補完する制御部を備えることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像撮影装置において、前記制御部は、少なくとも前記増幅部又は前記処理部の温度に対する特性を、当該特性を示す一次関数の傾き及び切片を用いて記憶するテーブルを有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放射線画像撮影装置において、前記補完値による補完は、15℃〜45℃の範囲内の温度条件下で行われることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、前記放射線画像検出器は、前記被写体を透過した放射線を電荷情報として蓄積する放射線固体検出器であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項1】
被写体の放射線画像情報を電気信号に変換する放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器により変換された前記電気信号を増幅する増幅部と、
増幅された前記電気信号を処理する処理部と、
少なくとも前記増幅部又は前記処理部の温度を検出する温度検出部と、
を備える放射線画像撮影装置であって、
少なくとも前記増幅部又は前記処理部から得られる出力値を、前記温度検出部の検出温度に基づいて、予め設定された補完値により補完する制御部を備えることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像撮影装置において、前記制御部は、少なくとも前記増幅部又は前記処理部の温度に対する特性を、当該特性を示す一次関数の傾き及び切片を用いて記憶するテーブルを有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放射線画像撮影装置において、前記補完値による補完は、15℃〜45℃の範囲内の温度条件下で行われることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、前記放射線画像検出器は、前記被写体を透過した放射線を電荷情報として蓄積する放射線固体検出器であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−207520(P2009−207520A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50477(P2008−50477)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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