説明

放射線硬化性ポリウレタン分散液

ポリウレタン分散液が提供される。ポリウレタン分散液は、高分子ポリオール 10〜60重量%と、イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物少なくとも1つ 5〜40重量%(但し、前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレートを1〜30重量%含む)と、イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含む化合物少なくとも1つ 1〜15重量%と、イソシアネート官能基少なくとも1つ 10〜50重量%とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下の米国仮出願、即ち2005年6月17日に提出されたU.S.特許仮出願No.60/691727の利益を主張し、その開示は、全体として、参照することにより本明細書の一部を構成する。
【0002】
発明分野
本発明は、放射線硬化性ポリウレタン水性分散液に関する。そのような分散液は、多種多様な基材、例えばプラスチック、金属及び木材、へのコーティングとして使用することができる。本発明は、放射線硬化性ポリウレタン水性分散液を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタン分散液は広い用途を有する。それらは、木材のような柔軟でない基材及びレザーのような柔軟な基材の両方へのコーティングを製造するのに使用することができる。ポリウレタン分散液は、例えばペイント及びワニス、コーティング、シーラント及び接着剤等の対建築物用途においても、重要度をますます増してきている。対建築物用途では、ポリウレタンポリマー又は充填剤の固体含有率が高い、溶剤不含ポリウレタン分散液が特に求められており、これは、効率的で、同時に一般的な製造工程により提供することができる。
【0004】
ポリウレタン分散液の慣用の製法は、種々の問題を抱えている。これらは、著しい量の高沸点及び水溶性溶剤を添加してポリウレタンプレポリマーの粘度を減じる、プレポリマー混合プロセスに付随する問題を含むこともある。これらの溶剤は、製造プロセス後に、ポリウレタン分散液中に残留する。ポリウレタン分散液又はこれから製造された生成物を乾燥させると、これらの溶剤が、環境中に排出される。
【0005】
一部の、公知の溶剤プロセス又はアセトンプロセスでは、ポリウレタンポリマーの全生成が、大量の低沸点及び水溶性溶剤、例えばアセトン又はメチルエチルケトン、の存在下に実施される。生じたポリウレタン分散液をほぼ溶剤不含とするために、ポリウレタン分散液の製造後、コストのかかる再蒸留により溶剤を更に除去せねばならない。溶剤不含、即ち高い固体含分、優れた材料特性及びポリウレタン分散液の安定化に必要な親水基が少量であることは、有利である。しかしながら、溶剤プロセスは、複雑であり、かつ一般に、経済的に最適な生産プロセスではなく、空時収率が低く、不都合なこともある。更に、プレポリマー混合プロセス及び溶剤プロセスの種々の組み合わせもあるが、これらは、同様の問題を抱える。
【0006】
最近になって、ポリウレタン分散液の製造者の側に、N−メチルピロリドンなどの溶剤を、品質表示法に従わない、生態学的に認容できるグリコールエーテル、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル、で置き換える取り組みが増してきている。しかしながら、そのような交換は、プレポリマー混合プロセスの費用を増加させることになる。従って、新しいタイプのポリウレタン分散液が必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、放射線硬化性ポリウレタン水性分散液に関する。ポリウレタン分散液は、a)高分子ポリオール 10〜60重量%、b)イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物 5〜40重量%、但し、前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレートを1〜30重量%含む、c)イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含有する化合物 1〜15重量%、d)イソシアネート官能基 10〜50重量%、及びe)アミンエキステンダー化合物 0.1〜10重量%を含み、場合により、f)少なくとも1つのイソシアネート反応基を含有する光重合開始剤少なくとも1つ 0.1〜10重量%を含むことができる。
【0008】
そのような分散液は、例えば、プラスチック、金属及び木材等の多種多様な基材へのコーティングとして使用することができる。これらのコーティングは、自己開始性(self−initiating)及び溶剤不含であってよい。一般に、本発明開示のポリウレタン分散液は、溶剤を必要としない。その代わりに、著しく少量の希釈剤を利用するか又は全く希釈剤を利用しない。反応性希釈剤を使用でき、かつこれは、アクリレートモノマーを含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、以下に、更に完全に記述され、本発明の好ましい実施形態が説明される。しかしながら、本発明は種々の形態で実現でき、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底かつ完全にし、また当業者に本発明の範囲を完全に伝えるために提供される。
【0010】
他に規定がなければ、本明細書中に使用される全ての専門用語と科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の専門家により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載の全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、全体として、参照することにより本明細書の一部を構成する。
【0011】
本発明の実施形態は、ポリウレタン分散液を含んでよい。これらの分散液は、放射線硬化性水性分散液であってよい。ポリウレタン分散液は、a)高分子ポリオール 10〜60重量%、しばしば10〜50重量%、b)イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物 5〜40重量%、但し、前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレートを1〜30重量%含む、c)イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含有する化合物 1〜15重量%、d)イソシアネート官能基 10〜50重量%、場合によりe)少なくとも1つのアミン化合物を含有するエキステンダー化合物 0.1〜10重量%、及び/又は場合によりf)少なくとも1つのイソシアネート反応基を含有する光重合開始剤少なくとも1つ 0.1〜10重量%を含むことができる。
【0012】
本発明の分散液は、例えば紙、厚紙又はレザーなどの柔軟で、場合により吸収性の基材、又は金属もしくはプラスチックの柔軟でない基材へのコーティングを製造するのに好適である。このようにして、それらは、コーティング組成物を形成することができる。それらは、一般に、木材上に耐引掻き性及び耐薬品性仕上げを製造するのに利用することができる。
【0013】
使用高分子ポリオールとして、炭素原子2〜18個、一般に2〜10個を有するジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールを挙げることができる。より高い官能性のトリオール及びポリオールには、炭素原子3〜25個、一般に3〜18個、特に3〜6個を有する化合物がある。使用できるトリオールの例は、グリセロール又はトリメチロールプロパンである。高官能性ポリオールとして、例えばエリトリトール、ペンタエリトリトール及びソルビトールを使用することが可能である。ポリオールの低分子量反応生成物、例えば、トリメチロールプロパンとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、との反応生成物も好適である。これらの低分子量ポリオールを個々に又は混合物として使用することができる。
【0014】
好適なイソシアネート反応基の例として、α,β−エチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸並びにこれらの無水物と、ポリエステルポリオールとの重縮合生成物が挙げられる。使用できるα,β−エチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸並びにこれらの無水物の例には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等々がある。一般に、アクリル酸及びメタクリル酸を使用する。ポリエステルオールは、末端ヒドロキシル基を有する線状及び/又は分岐ポリマーであってよく、例えば、少なくとも2つのヒドロキシル末端基を有するものである。ポリエステルオールは、脂肪族、脂環式及び芳香族のジ−、トリ−及び/又はポリカルボン酸を、ジ−、トリ−及び/又はポリオールでエステル化することで簡単に製造することができる。カルボン酸の例には、炭素原子2〜20個、一般に4〜15個を有するジカルボン酸があり、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等である。スルホコハク酸及びスルホイソフタル酸も利用することができる。ジカルボン酸は、個々に又は混合物として使用することができる。ジオールの例には、一般に炭素原子2〜25個を有するグリコールがある。グリコールの例は、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,6−ジメチロールシクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)のエトキシル化/プロポキシル化生成物等である。トリオール及びポリオールは、例えば、炭素原子3〜25個、一般に3〜18個を有する。例として、グリセロール、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ソルビトール及びそれらのアルコキシレート等がある。ポリエステルオールは、ラクトン、例えば、炭素原子3〜20個を有するラクトン、を重合させることにより製造することもできる。ポリエステルオールの製造に好適なラクトンの例は、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン等である。
【0015】
さらに、イソシアネートとして、少なくとも1つの二価アルコールとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのヒドロキシル含有エステルに基づく縮合生成物を挙げることができる。ヒドロキシル含有エステルの例には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルアクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパン又はグリセロールのジ(メタ)アクリル酸エステルがある。これらのヒドロキシル含有エステルを、末端カルボキシル基を有するポリエステルオールと重縮合させるか、又はこれらのポリエステルオールを形成するグリコール及びジカルボン酸と重縮合させて、ポリエステルアクリレートを得ることができる。
【0016】
イソシアネートの例には、前記α,β−エチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸並びにそれらの無水物と、ポリエーテルオールとの重縮合生成物がある。使用できるポリエーテルオールは、エーテル結合含有末端ヒドロキシル基を有し、かつ例えば約500〜10000、一般に600〜5000の範囲の分子量を有する線状又は分岐状物質であってよい。好適なポリエーテルオールは、テトラヒドロフランなどの環状エーテルを重合させるか、又はアルキルラジカルに炭素原子2〜4個を有するアルキレンオキシド1つ以上と、アルキレンラジカルに結合する活性水素原子2個を有するスターター分子(starter molecule)とを反応させることにより容易に製造することができる。アルキレンオキシドの例には、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、1,2−及び2,3−ブチレンオキシドがある。アルキレンオキシドは、単独で、交互に連続して、又は混合物として使用することができる。好適なスターター分子の例は、水、前記のグリコール、ポリエステルオール、トリオール及びポリオール、アミン、例えばエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタン、並びにまたアミノアルコール、例えばエタノールアミン、である。ポリエステルオールと同様に、ポリエーテルオールも単独又は混合物で使用することができる。
【0017】
メタクリレートの例には、ポリウレタンアクリレートがあり、これは、アクリル及び/又はメタクリル酸と少なくとも二価アルコールとによる前記ヒドロキシル含有エステルと、後記ポリイソシアネートとの重付加生成物である。ポリイソシアネートとして、ジイソシアネート、例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)及びその異性体混合物、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びその三量体、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12 MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を挙げることができる。アクリル酸及び/又はメタクリル酸のヒドロキシル含有エステルは、前記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、一般にヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0018】
他のメタクリレートの例には、ジグリシジルエーテルと前記α,β−エチレン性不飽和モノ−及び/又はジカルボン酸並びにそれらの無水物との反応生成物を含むエポキシアクリレートがある。アクリル酸及び/又はメタクリル酸が一般に使用される。アルコール成分と、エポキシ基に対しα位に適切な離脱基を有するエポキシ化合物とを反応させて、グリシジルエーテルが得られる。ジグリシジルエーテルは、一般に、脂肪族、脂環式又は芳香族ジオール及びエポキシ成分としてのエピクロロヒドリンから製造される。グリシジルエーテルを製造するのに使用できる脂肪族ジオールは、前記のグリコール、一般に1,4−ブタンジオールである。ビスフェノールAは、芳香族ジオールとして一般に使用される。ジオール成分に対するエポキシ化合物のモル比に依存して、この反応で、ジグリシジルエーテル又は(ジオールの量を増やすと)高分子量のヒドロキシル含有ジエポキシドを得ることが可能である。
【0019】
ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリウレタンアクリレート及びエポキシアクリレートは、例えばN.S.Allen,M.A.Johnson,P.Oldring(ed.) and M.S.Salim,Chemistry & Technology of UV & EB−Curing Formulations for Coatings,Inks & Paints,Vol.2,SITA Technology,London 1991に記載される。
【0020】
アミンエキステンダー化合物には、一般に炭素原子約0〜30個を有する直鎖及び/又は分岐の、脂肪族及び脂環式アミンを含むアミン1又は2個を含有する化合物がある。その例には、ヒドラジンエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、ピペラジン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ノルボルナジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、4−アザヘプタメチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミン及びこれらの混合物がある。好適なポリアミンは、一般に数平均分子量約400〜10000を有する。これらの例には、末端第一又は第二アミノ基を有するポリアミド、ポリアルキレンイミン、一般にポリエチレンイミン、及びポリ−N−ビニルアミド(例えばポリ−N−ビニルアセトアミド)の加水分解により得られるビニルアミンがあり、かつアミン化ポリアルキレンオキシドをベースとするα,ジアミンもある。官能基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、例えば、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、(N−メチル)アミノエチルアクリレート、(N−メチル)アミノエチルメタクリレート等、を、共重合した形で含有するコポリマーも、光化学的に又はフリーラジカルにより硬化する二重結合を、ポリウレタンに導入するのに好適である。
【0021】
イソシアネート反応基の例には、ヒドロキシル基又は第一もしくは第二アミノ基がある。他の例として、単官能アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができる。他の好適な成分には、第一又は第二アミノ基を有するアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン等、がある。
【0022】
ポリウレタンは、成分として、共重合した形で少なくとも1つのイソシアネート官能基、例えばポリイソシアネート、を約10〜50重量%の割合で含む。好適なポリイソシアネートには、イソシアネート基2〜5個を有する化合物、イソシアネート基を平均数2〜5個有するイソシアネートプレポリマー及びこれらの混合物がある。これらの例には、脂肪族、脂環式及び芳香族ジ−、トリ−及びポリイソシアネートがある。好適なジイソシアネートの例には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,3,3−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート及びこれらの異性体混合物(例えば2,4異性体が80%で、2,6異性体が20%)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートがある。別の例には、トリイソシアネートがあり、これは、トリフェニルメタン4,4’,4”−トリイソシアネートである。前記イソシアネートを多官能性ヒドロキシル−又はアミノ−含有化合物に添加して得ることができるポリイソシアネート、及びイソシアネートプレポリマーも好適である。さらに、ビウレット又はイソシアヌレート形成から生じるポリイソシアネートが、好適である。一般に、ヘキサメチレンジイソシアネート、三量化ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びこれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0023】
本発明のポリウレタン分散液は、当業者に公知の慣用のプロセスにより製造される。これらのプロセスは、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th ed.,Vol.A21,VCH Weinheim,(1992),pp.678〜680に記載される。例として、アセトンプロセス、プレポリマー混合プロセス、メルトエマルジョンプロセスなどによるポリウレタンイオノマーの自発分散液が挙げられる。ケチミン及びケタジンプロセス並びに親水性オリゴマーが分散される前駆体の分散液も含まれる。
【0024】
分散液において、成分(d)のイソシアネート基の当量に対する、(a)、(b)及び(c)のイソシアネート反応基のモル比は、0.8から1.1の範囲である。
【0025】
本発明の実施形態は、迅速に硬化する表面を備えたコーティングを製造する方法も含み、この方法は、
a)高分子ポリエステルポリオール 10〜60重量%と、b)イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物少なくとも1つ 5〜40重量%と(但し前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレート1〜30重量%を含む)、c)イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含む化合物少なくとも1つ 1〜15重量%と、d)イソシアネート官能基少なくとも1つ 10〜50重量%と、場合によりe)少なくとも1つのアミンエキステンダー化合物 0.1〜10重量%と、場合によりf)少なくとも1つのイソシアネート反応基を含有する光重合開始剤少なくとも1つ 0.1〜10重量%とを反応させるか又は結合させることにより、硬化性コーティング組成物を製造するステップを含む。このコーティングは、希釈剤を含んでも良い。希釈剤の例としては、不活性溶剤、例えばn−メチルピロリドン(NMP)又は反応性希釈剤、例えば慣用のアクリレートモノマーがある。例として、トリメチロール−プロパントリアクリレート(TMPYA)、トリプロピレングリコールジアクリレート又はネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)がある。改良された水混和性及びフィルム一体化特性の理由から、他の好適な希釈剤は、アルコキシル化化合物をベースとする(メタ)アクリレートモノマーである。その例には、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、又はポリプロピレングリコールジアクリレートがある。
【0026】
本発明の実施形態は、迅速に硬化する表面を備えたコーティングを製造する方法により形成された基材も含み、この方法は、また、硬化性コーティング組成物を基材に塗布するステップと、コーティング組成物を放射線により硬化させるステップとを含む。任意のタイプの放射線を使用でき、例えば紫外線を使用できる。
【0027】
そのような分散液は、例えば、プラスチック、金属及び木材等の、多種多様な基材上へのコーティングとして使用することができる。これらのコーティングは、自己開始性及び溶剤不含であってよい。一般に、本発明開示のポリウレタン分散液は、溶剤を必要としない。その代わりに、極めて少量の希釈剤を使用するか又は全く希釈剤を使用しない。希釈剤の例には、不活性溶剤、例えばn−メチルピロリドン(NMP)又は反応性希釈剤、例えば慣用のアクリレートモノマーがある。反応性希釈剤の例として、トリメチロール−プロパントリアクリレート(TMPYA)、トリプロピレングリコールジアクリレート又はネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)がある。その改良された水混和性及びフィルム一体化特性のために使用できる、他のクラスの反応性希釈剤は、アルコキシル化化合物をベースとする(メタ)アクリレートモノマーである。例には、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、又はポリプロピレングリコールジアクリレートがある。
【0028】
放射線重合(UV、電子、X線又はγ線)の場合には、UV硬化が最も頻繁に使用される。UV硬化は、光重合開始剤の存在下に開始される。光重合開始剤として、例えば、芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アントロン及びハロゲン化ベンゾフェノンを挙げることができる。更に好適な化合物は、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、アントラキノン及びその誘導体、ベンジルケタール及びヒドロキシアルキルフェノンである。他の好適な化合物には、ヒドロキシル基を含有する光重合開始剤、例えば化学種α−ヒドロキシルケトン、がある。例として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、及び2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンが挙げられる。これらの化合物の混合物も使用することができる。そのような光重合開始剤は、少なくとも1つのイソシアネート反応基を含むことが多いので、光重合開始剤はイソシアネート主鎖に直接に組み込むことができる。
【0029】
硬化が、フリーラジカル法により進行する場合は、水溶性過酸化物又は非水溶性開始剤の水性エマルジョンが好適である。これらのフリーラジカル形成剤は、当業者に公知の方法で、促進剤と組み合わせることができる。
【0030】
本発明によるポリウレタン分散液は、吹付け、ロール塗り、ナイフ塗布、流し塗り(pouring)、はけ塗り又は浸漬により、多種多様な基材に施与できる。本発明によるポリウレタン分散液を、木材上に施与する場合、生じた表面は、特に良好な光学特性で際立っている。他の吸収性基材、例えば紙、板紙、レザー等、そしてもちろん金属及びプラスチックでさえ、これらの分散液で塗被することができる。
【0031】
本発明によるポリウレタン分散液を単一のラッカー結合剤としても使用できる。あるいは、これらを、ラッカー技術で公知の、結合剤、添加物及び補助剤、例えば分散剤、顔料、染料又は艶消剤、と混合しても又は組み合わせてもよい。
【0032】
本発明を記述してきたが、説明目的のためにのみ本明細書に含まれ、本発明を限定する意図の無い特定の実施例を参照して、更に説明する。
【実施例】
【0033】
以下の実施例については、以下の情報及び略語が適用される。ポリオール1は、平均ヒドロキシル当量468のポリエステルポリオールであり、Desmophen(登録商標)S1019−120としてBayer Corp.から市販されている。EPCA1は、液体ビスフェノールAエポキシ樹脂とアクリル酸との反応生成物である。これは、Reichold,Inc.からEpotuf(登録商標)91−275として市販されており、平均ヒドロキシル当量257を有する。HEAは、ヒドロキシエチルアクリレートである。NMPは、n−メチルピロリドンである。HPAは、ヒドロキシプロピルアクリレートである。HPMAは、ヒドロキシプロピルメタクリレートである。DMPAは、ジメチロールプロピオン酸であり、分子量134を有する。TPGDAは、トリプロピレングリコールジアクリレートであり、SartomerからSR−306として市販されている。EO−TMPTAは、エトキシル化トリメチロールプロパンのトリアクリレートであり、SartomerからSR−454として市販されている。PO−NPGDAは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールのジアクリレートであり、SartomerからSR−9003として市販されている。Darocur1173は、Ciba Specialty Chemicalsから入手できる光重合開始剤である。Irgacur 2959は、Ciba Specialty Chemicalsから入手できる光重合開始剤である。Irgacur 500は、Ciba Specialty Chemicalsから入手できる光重合開始剤である。TEAは、トリエチルアミンであり、MW=101を有する。IPDIは、イソホロンジイソシアネートである。これは、BayerからDesmodur Iとして市販され、イソシアネート当量111を有する。DETAは、ジエチレントリアミンである。T−403は、平均分子量403のポリプロピレンオキシドトリアミンであり、HuntsmenからJeffamine T−403として入手できる。MEHQは、Eastman Chemicalから入手できるヒドロキノンのモノメチルエーテルである。T−12は、Elf Atochemから市販のジブチル錫ジラウレート触媒である。DIWは、脱イオン水である。
【0034】
例1〜4. 2フラスコプロセスを使用するポリウレタン分散液
一般手順:フラスコ1:撹拌器、温度制御器、及びエアースパージ(air sparge)を装備した1lガラス反応容器にポリオール1、EPAC1、DMPA、NMP又はアクリレート希釈剤、及びMEHQを装入した。温度を60〜65℃まで上げ、IPDIを装入した。温度を55〜70℃に約1時間保持し、次いで、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートを装入し、55〜70℃にほぼ1時間保持した。その後、T−12を装入した。反応を、ほぼ140分間65〜75℃で保持した。サンプルをとり、NCOの%を測定した。次いで、TEAを装入し、15分間混合した。
【0035】
フラスコ2:分散ステップのための第二のフラスコをセットアップし、最初のDIWを装入した。次いで、フラスコ1からプレポリマーの指定量をフラスコ2にほぼ5〜10分かけて移した。次いで、アミンエキステンダー、DETA又はT−403(DIWに10%予混合)、をフラスコ2に5〜10分間にわたり移した。フラスコ2をほぼ1時間混合し、DIWで粘度調整した後、流出させて分析した。以下の表がこれらの結果を示す。
【表1】

【0036】
例5〜8. 1フラスコプロセスを使用するポリウレタン分散液
一般手順:撹拌器、温度制御器、及びエアースパージを装備した1lガラス反応容器にポリオール1、EPAC1、DMPA、PO−NPGDA及びMEHQを装入した。温度を60〜65℃まで上げ、IPDIを装入した。温度を55〜70℃に約1時間保持し、次いで、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートを装入し、55〜70℃にほぼ1時間保持した。その後、T−12を装入した。反応を、ほぼ140分間65〜75℃で保持した。サンプルをとり、NCOの%を測定した。その後、TEAを装入し、15分間混合した。最初のDIWを、ほぼ30分かけてフラスコに装入した。次いで、アミンエキステンダー、T−403(DIWに10%予混合)、を5〜10分かけて添加した。分散液をほぼ1時間混合し、DIWで粘度調整した後、流出させて分析した。以下の表がこれらの結果を示す。
【表2】

【0037】
以下の表は、光重合開始剤を装入する手段に対する硬化度を示す。
【表3】

【0038】
例9
3つの異なるポリウレタン分散組成物を、n−メチルピロリドン(NMP)、エトキシル化トリメチロール−プロパントリアクリレート(EO−TMPTA)、又はプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(PO−NPGDA)のいずれかの希釈剤を使用して製造した。更に、この分散液に光重合開始剤を使用した。EO−TMPTAとPO−NPGDAの両方が、MEKダブル磨耗試験について、NMPよりよい結果を示した。MEKダブル磨耗試験は、「溶剤磨耗によりエチルシリケート(無機)亜鉛富裕プライマーのMEK抵抗を測定するための標準テスト法(Standard Test Method for Measuring MEK Resistance of Ethyl Silicate(Inorganic)Zinc−Rich Primers by Solvent Rub)」として公知である、コーティング産業で使用される標準方法である。ASTM D4752−03,“Measuring MEK Resistance of Ethyl Silicate(Inorganic)Zinc−Rich Primers by Solvent Rub”,(West Conshohocken,PA:Annual Book of ASTM:2003)参照。EO−TMPTA及びPO−NPGDAの両方が、PMMA上の鉛筆硬度についても、NMPより、よい結果を示した。
【0039】
前述の実施例は、本発明の例示であり、本発明を限定すると解釈すべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価物が本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン分散液であって、
a)高分子ポリオール 10〜60重量%、
b)イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物少なくとも1つ 5〜40重量%、但し、前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレートを1〜30重量%含む、
c)イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含む化合物少なくとも1つ 1〜15重量%、及び
d)イソシアネート官能基少なくとも1つ 10〜50重量%
を含む、ポリウレタン分散液。
【請求項2】
a)アミンエキステンダー化合物少なくとも1つ 0.1〜10重量%と、
b)少なくとも1つのイソシアネート反応基を含有する光重合開始剤少なくとも1つ 0.1〜10重量%と
を更に含む、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項3】
更に希釈剤を含む、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項4】
希釈剤は、アルコキシル化化合物の(メタ)アクリレートである、請求項3に記載のポリウレタン分散液。
【請求項5】
前記分散液は、水性分散液の形状である、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項6】
群(a)、(b)及び(c)のイソシアネート基の当量の、成分(d)のイソシアネート反応基の当量に対する比は、0.8:1.1である、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項7】
請求項1に記載のポリウレタン分散液を少なくとも1つ含む、コーティング組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のコーティング組成物を含む、基材。
【請求項9】
ポリウレタン水性分散液であって、
a)高分子ポリオール 10〜60重量%、
b)イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物少なくとも1つ 5〜40重量%、但し、前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレートを1〜30重量%含む、
c)イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含む化合物少なくとも1つ 1〜15重量%、
d)イソシアネート官能基少なくとも1つ 10〜50重量%、及び
e)少なくとも1つのイソシアネート官能基の主鎖に結合した光重合開始剤少なくとも1つ 0.1〜10重量%
を含む、ポリウレタン水性分散液。
【請求項10】
更に、少なくとも1つのアミンエキステンダー化合物を0.1〜10重量%含む、請求項9に記載のポリウレタン水性分散液。
【請求項11】
更に、希釈剤を含む、請求項9に記載のポリウレタン水性分散液。
【請求項12】
希釈剤は、アルコキシル化化合物の(メタ)アクリレートである、請求項11に記載のポリウレタン水性分散液。
【請求項13】
希釈剤は、プロポキシル化ネオペンチルグリコールのジアクリレートである、請求項11に記載の分散液。
【請求項14】
群(a)、(b)及び(c)のイソシアネート基の当量の、成分(d)のイソシアネート反応基の当量に対する比は、0.8:1.1である、請求項9に記載の分散液。
【請求項15】
迅速に硬化する面を、基材にコーティングする方法であって、
a)高分子ポリオール 10〜60重量%と、イソシアネート反応基とメタ(アクリレート)基の両方を含有する化合物少なくとも1つ 5〜40重量%と(但し、前記化合物は、少なくとも1つのヒドロキシルアルキルアクリレートを1〜30重量%含む)、イソシアネート反応基とカルボキシル基の両方を含む化合物少なくとも1つ 1〜15重量%と、イソシアネート官能基少なくとも1つ 10〜50重量%とを含む硬化性コーティング組成物を形成するステップと、
b)コーティング組成物を基材に塗布するステップと、
c)コーティング組成物を硬化させるステップと
を含む、コーティング方法。
【請求項16】
更に希釈剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
希釈剤は、アルコキシル化化合物の(メタ)アクリレートである、請求項18に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化ステップは、放射線を使用して実施する、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546875(P2008−546875A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517143(P2008−517143)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023484
【国際公開番号】WO2006/138557
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507411431)ライヒホールド,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】