説明

放射線硬化性組成物及びインクジェット用インク

【課題】 粘度や硬化性や平滑性に優れると共に安全性の高い放射線硬化性組成物を用い、硬化性、ノズルにおける吐出安定性、記録媒体への付着性に優れ、良好なプリントが行えると共に、安全性にも優れたインクジェット用インクが得られるようにする。
【解決手段】 オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物とを含む液状成分に重合開始剤が添加され、液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、オキセタン環含有化合物が29.4〜90.0重量%、エポキシ化植物油化合物が5.6〜46.20重量%、ビニルエーテル化合物が0〜44.4重量%の範囲で含まれる放射線硬化性組成物をインクジェット用インクに用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク及びこのインクジェット用インクに用いる放射線硬化性組成物に係り、特に、インクジェット用インクに用いる放射線硬化性組成物として、粘度や硬化性や平滑性に優れると共に安全性の高い放射線硬化性組成物を用い、硬化性、ノズルからの吐出安定性、記録媒体への付着性に優れて、良好なプリントが行えると共に、安全性にも優れたインクジェット用インクが得られるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からインクジェット用インクとしては、様々な種類のものが用いられており、例えば、着色剤に油溶性染料を用い、この油溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解したものや、油溶性染料を揮発性の溶剤に溶解したものが用いられているが、染料は耐光性等の諸耐性で顔料に劣るという問題があった。
【0003】
また、着色剤に顔料を用いたインクジェット用インクの場合、この顔料を安定して有機溶剤に分散させることが困難であり、このインクをインクジェット記録装置の記録ヘッドに設けられたノズルから適切に吐出させることが困難になったり、濃度ムラ等が発生して適切なプリントが行えなくなったりする等の問題があった。
【0004】
このため、近年においては、放射線硬化性組成物に顔料を分散させたインクジェット用インクを用い、このインクジェット用インクをインクジェット記録装置の記録ヘッドに設けられたノズルから記録媒体に吐出させ、このように吐出されたインクジェット用インクに紫外線等の放射線を照射させて、インクジェット用インクにおける上記の放射線硬化性組成物を硬化させるようにしたものが用いられるようになった。
【0005】
ここで、このような放射線硬化性組成物を用いたインクジェット用インクにおいては、このインクジェット用インクの粘度が低くて、記録ヘッドのノズルから適切に吐出され、放射線硬化性組成物が紫外線等の放射線によって速やかに硬化されると共に、記録媒体に適切に付着されることが要求される。
【0006】
そして、近年においては、放射線硬化性組成物を用いたインクジェット用インクにおける上記のような特性を向上させるため、特許文献1,2に示されるように、オキシラン基含有化合物とオキセタン環含有化合物とビニルエーテル化合物とを適当な割合で配合させた液状成分に放射線重合開始剤を添加させた放射線硬化性組成物を用い、この放射線硬化性組成物に顔料を分散させるようにしたインクジェット用インクが提案されている。
【0007】
さらに、近年においては、インクジェット用インクにおける上記のような特性に加えて、人体に悪影響を及ぼさないように、インクジェット用インクの安全性が要望されるようになった。
【0008】
しかし、上記の特許文献1,2に示されるインクジェット用インクは、必ずしも安全性の高いものであるといえず、安全性の点において問題があった。
【特許文献1】特許第4061876号公報
【特許文献2】特開2005−105191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明においては、インクジェット用インク及びこのインクジェット用インクに用いる放射線硬化性組成物における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、粘度や硬化性や平滑性に優れると共に安全性の高い放射線硬化性組成物を用い、硬化性、ノズルからの吐出安定性、記録媒体への付着性に優れて、良好なプリントが行えると共に、安全性にも優れたインクジェット用インクが得られるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る放射線硬化性組成物においては、上記のような課題を解決するため、オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物とを含む液状成分に重合開始剤が添加され、上記の液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、オキセタン環含有化合物が29.4〜90.0重量%、エポキシ化植物油化合物が5.6〜46.2重量%、ビニルエーテル化合物が0〜44.4重量%の範囲で含まれるようにした。
【0011】
ここで、上記のエポキシ化植物油化合物は、一般に用いられているオキシラン基含有化合物に比べて安全性が高い化合物であり、このエポキシ化植物油化合物としては、例えば、Ames試験の結果が陰性で、塩ビ食品衛生協議会(JHPA)に登録されているエポキシ化大豆油化合物や、米国FDA§178−3740において食品包装材等の食品と接触して使用される全樹脂に添加できる可塑剤として認可されているエポキシ化亜麻仁油化合物等を用いることができ、具体的には、エポキシ化大豆油[(株)アデカ製:O−130P]、エポキシ化亜麻仁油[(株)アデカ製:O−180A]、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチルエステル[(株)アデカ製:D−178]等を用いることができる。
【0012】
そして、上記の放射線硬化性組成物において、オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、オキセタン環含有化合物の量を29.4〜90.0重量%の範囲にするのは、オキセタン環含有化合物の量が上記の範囲より少ないと、この放射線硬化性組成物の硬化性が悪くなる一方、上記の範囲より多くなると、硬化膜の平滑性が低下し、インクジェット用インクに使用した場合、記録媒体への均一な付着性が低下して外観が悪くなるためである。
【0013】
また、上記の放射線硬化性組成物において、オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、エポキシ化植物油化合物の量を5.6〜46.2重量%の範囲にするのは、エポキシ化植物油化合物の量が上記の範囲より少ないと、硬化膜の平滑性が低下し、インクジェット用インクに使用した場合、記録媒体への均一な付着性が低下して外観が悪くなる一方、上記の範囲より多くなると、放射線硬化性組成物の粘度が高くなり、インクジェット用インクに使用した場合、ノズルからの吐出性が悪くなるためである。
【0014】
また、上記の放射線硬化性組成物において、オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、ビニルエーテル化合物が0〜44.4重量%の範囲にするのは、ビニルエーテル化合物を添加させることにより、放射線硬化性組成物の粘度を低下させることができるが、ビニルエーテル化合物の量が上記の範囲より多くなると、硬化膜の平滑性が低下し、インクジェット用インクに使用した場合、記録媒体への均一な付着性が低下して外観が悪くなるためである。
【0015】
そして、上記の放射線硬化性組成物において、その粘度を低下させると共に、その硬化性を向上させ、さらに硬化膜の平滑性を向上させるためには、上記の液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対するオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との重量比率が、これらの重量比率を示した図において、オキセタン環含有化合物の重量比率X1と、エポキシ化植物油化合物の重量比率X2と、ビニルエーテル化合物の重量比率X3とした(X1,X2,X3)の点における(90.0,10.0,0.0)の点Y1と、(80.0,20.0,0.0)の点Y2と、(54.5,36.4,9.1)の点Y3と、(30.8,46.2,23.1)の点Y4と、(29.4,29.4,41.2)の点Y5と、(33.3,22.4,44.4)の点Y6と、(50.0,5.6,44.4)の点Y7とを結んで囲まれた領域内であることが好ましく、さらに(72.7,18.2,9.1)の点Y8と、(38.5,38.5.23.1)の点Y9と、(31.3,31.3,37.5)の点Y10と、(47.1,11.8,41.2)の点Y11とを結んで囲まれた領域内であることがより好ましい。なお、オキセタン環含有化合物の重量比率X1、エポキシ化植物油化合物の重量比率X2及びビニルエーテル化合物の重量比率X3の値は、これらの配合組成から換算し、0.1%未満の値を四捨五入した値であるため、これらの合計量(X1+X2+X3)が100.0にならない場合も存在する。
【0016】
そして、本発明のインクジェット用インクにおいては、上記のような放射線硬化性組成物に顔料を分散させるようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の放射線硬化性組成物においては、上記のように液状成分にエポキシ化植物油化合物を用いるようにしたため、この放射線硬化性組成物における安全性が向上した。
【0018】
また、本発明の放射線硬化性組成物においては、上記の液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、オキセタン環含有化合物が29.4〜90.0重量%、エポキシ化植物油化合物が5.6〜46.20重量%、ビニルエーテル化合物が0〜44.4重量%の範囲で含まれるようにしたため、この放射線硬化性組成物の粘度を低下させると共に、その硬化性を向上させ、さらに硬化膜の平滑性を向上させることができた。特に、オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対するオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との重量比率が、上記の点Y1〜点Y7を結んで囲まれた領域内になるようにすると、放射線硬化性組成物の粘度、硬化性及び硬化膜の平滑性がさらに改善され、さらに点Y8〜点Y11を結んで囲まれた領域内になるようにすると、放射線硬化性組成物の粘度、硬化性及び硬化膜の平滑性がより一層改善されるようになった。
【0019】
そして、本発明のインクジェット用インクにおいては、上記のような放射線硬化性組成物に顔料を分散させるようにしたため、硬化性、ノズルからの吐出安定性、記録媒体への付着性に優れて、良好なプリントが行えると共に、安全性にも優れたインクジェット用インクが得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る放射線硬化性組成物及びインクジェット用インクについて具体的に説明する。なお、本発明に係る放射線硬化性組成物及びインクジェット用インクは、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0021】
ここで、本発明に係る放射線硬化性組成物において、上記の液状成分に用いるオキセタン環含有化合物としては、分子中に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることができ、前記の特許文献1等に示されている公知のオキセタン環含有化合物を使用することができる。
【0022】
但し、この放射線硬化性組成物における安全性をさらに向上させるためには、オキセタン環含有化合物として、上記のAmes試験の結果が陰性であるものや、皮膚刺激性が低い等の安全性の高いものを用いることが好ましく、例えば、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス|[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル|ベンゼン、3−エチル−3−|[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル|オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルシクロヘキシルメチル)オキセタン等を用いることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る放射線硬化性組成物において、上記の液状成分に用いるビニルエーテル化合物としては、インクジェット用インクにおいて一般に使用されているビニルエーテル化合物を用いることができ、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等を用いることができる。
【0024】
但し、この放射線硬化性組成物における安全性をさらに向上させるためには、ビニルエーテル化合物として、上記のオキセタン環含有化合物と同様に、上記のAmes試験の結果が陰性であるものや、皮膚刺激性が低い等の安全性の高いものを用いることが好ましく、例えば、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル等を用いることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る放射線硬化性組成物において、上記の液状成分に添加させる重合開始剤としては、一般に使用されているカチオン系放射線重合開始剤を用いることができ、例えば、アリールスルホニウム塩誘導体、アリルヨードニウム塩誘導体、アレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤を用いることができるが、安全性の点からは、ベンゼンの発生が少ない重合開始剤を用いることが好ましい。
【0026】
また、上記のカチオン系放射線重合開始剤による重合を促進させるため、光重合促進剤として、例えば、アントラセン、アントラセン誘導体等を添加させることも可能である。
【0027】
そして、本発明に係るインクジェット用インクにおいては、上記の放射線硬化性組成物に顔料を分散させるようにした。
【0028】
ここで、上記の顔料は、特に限定されるものではないが、インクジェット用インクに一般に使用されているカーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色無機顔料や、有彩色の有機顔料を使用することができる。
【0029】
そして、上記の有機顔料としては、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料;イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料;縮合アゾ系有機顔料;ベンズイミダゾロン系有機顔料;キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料;イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。特に、上記の有機顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れている点で好ましい。
【0030】
また、上記の有機顔料としては、レーザ散乱による測定値で平均粒径10〜150nmの微細粒子の有機顔料を用いることが好ましい。これは、有機顔料の平均粒径が10nm未満の場合には、粒径が小さくなって耐光性が低下する一方、平均粒径が150nmを越える場合には、有機顔料の分散安定性が低下して、顔料が沈澱しやすくなるためである。
【0031】
また、本発明のインクジェット用インクにおいて、十分な濃度及び耐光性が得られようにするため、インクジェット用インク中に分散させる上記の顔料の量を3〜15重量%の範囲にすることが好ましい。
【0032】
また、本発明のインクジェット用インクにおいて、上記の顔料が安定した状態で適切に分散されるようにするため、顔料分散剤を添加させることができる。
【0033】
ここで、上記の顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を用いることができる。また、上記の顔料分散剤をインクジェット用インクに添加させるにあたっては、インクジェット用インク中における顔料分散剤の量を0.1〜10重量%の範囲にすることが好ましい。
【0034】
そして、本発明に係るインクジェット用インクにおいて、上記の放射線硬化性組成物に顔料を分散させるにあたっては、一般に用いられているサンドミルや超音波分散機等の各種の分散機を用いて分散させることができる。
【実施例】
【0035】
次に、上記の放射線硬化性組成物を得るにあたり、液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との重量比率を変更させて、それぞれ得られた放射線硬化性組成物における硬化性、皮膜外観及び粘度を調べる実験を行い、本発明の条件を満たす実験例のものにおいては、硬化性、皮膜外観及び粘度において優れた結果が得られることを明らかにする。
【0036】
(実験A1〜A30)
この実験A1〜A30においては、液状成分におけるオキセタン環含有化合物に3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン[東亞合成(株)製:OXT221]を、エポキシ化植物油化合物にエポキシ化大豆油[(株)アデカ製:O−130P]を、ビニルエーテル化合物に1,4−ブタンジオールジビニルエーテル[日本カーバイト工業(株)製:BDVE]を用いるようにした。
【0037】
そして、上記のオキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(BDVE)とを下記の表1に示す重量比率にした各液状成分100重量部に対して、それぞれカチオン系放射線重合開始剤[ランバーティー社製:Esavure1187]を3重量部加えて混合攪拌し、実験A1〜A30の各放射線硬化性組成物を作製した。なお、表1に示したこれらの重量比率も、前記のようにこれらの配合組成から換算し、0.1%未満の値を四捨五入した値であるため、これらの合計量が100.0にならない場合も存在している。
【0038】
次いで、上記のように作製した各放射線硬化性組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にデーバー(D−bar)を用いて約11μmの厚さに塗布し、このように塗布した各放射線硬化性組成物に対して、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気中において、紫外線ランプ[ヘレウス社製:YMC−3200]を所定の速度で移動させながら、この紫外線ランプから160W/cmの出力条件で紫外線を照射させて、各放射線硬化性組成物の硬化性の評価及び皮膜外観の評価を行い、これらの結果を下記の表1に示すと共に、放射線硬化性組成物における硬化性評価の結果を図1に、皮膜外観評価の結果を図2に示した。
【0039】
ここで、硬化性の評価については、放射線硬化性組成物が硬化することができた紫外線ランプの移動速度を求め、紫外線ランプの移動速度が30m/min以上の場合を○、移動速度が25m/min以上30m/min未満の場合を△、移動速度が25m/min未満の場合を×で示した。
【0040】
また、皮膜外観の評価については、皮膜が無色透明であった場合を○、皮膜の一部がまだら又はマットになっていた場合を△、皮膜の全面がまだら又はマットになっていた場合を×で示した。
【0041】
また、上記のように作製した各放射線硬化性組成物の粘度を、粘度計[東機産業(株)製:TVB−22L]を用いて液温45℃、回転速度20rpmの条件で測定し、各放射線硬化性組成物における粘度の評価を行い、その結果を下記の表1及び図3に示した。
【0042】
ここで、粘度の評価については、粘度が10cps以下の場合を○、10cpsを越え16cps未満の場合を△、16cps以上の場合を×で示した。
【0043】
【表1】

【0044】
この結果、オキセタン環含有化合物(OXT221)が29.4〜90.0重量%の範囲、エポキシ化植物油化合物(O−130P)が5.6〜46.20重量%の範囲、ビニルエーテル化合物(BDVE)が0〜44.4重量%の範囲で含まれ、オキセタン環含有化合物(OXT221)とエポキシ化植物油化合物(O−130P)とビニルエーテル化合物(BDVE)との重量比率を示した図1〜図3において、オキセタン環含有化合物(OXT221)の重量比率X1と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)の重量比率X2と、ビニルエーテル化合物(BDVE)の重量比率X3とした(X1,X2,X3)の点における(90.0,10.0,0)の点Y1と、(80.0,20.0,0.0)の点Y2と、(54.5,36.4,9.1)の点Y3と、(30.8,46.2,23.1)の点Y4と、(29.4,29.4,41.2)の点Y5と、(33.3,22.4,44.4)の点Y6と、(50.0,5.6,44.4)の点Y7とを結んで囲まれた領域内に存在する各放射線硬化性組成物は、硬化性、皮膜外観及び粘度の何れの特性も問題のないレベルであった。特に、図1〜図3に示した、(72.7,18.2,9.1)の点Y8と、(38.5,38.5.23.1)の点Y9と、(31.3,31.3,37.5)の点Y10と、(47.1,11.8,41.2)の点Y11とを結んで囲まれた領域内に存在する各放射線硬化性組成物は、硬化性、皮膜外観及び粘度の何れの特性もさらに向上して良好なレベルであった。
【0045】
(実験B1〜B3)
この実験B1〜B3においては、液状成分におけるオキセタン環含有化合物に実験A1〜A30と同じ3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン[東亞合成(株)製:OXT221]を、エポキシ化植物油化合物に実験A1〜A30と同じエポキシ化大豆油[(株)アデカ製:O−130P]を用いる一方、ビニルエーテル化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル[日本カーバイト工業(株)製:DVE−3]を用いるようにした。
【0046】
そして、上記のオキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(DVE−3)とを下記の表2に示す重量比率にした各液状成分100重量部に対して、それぞれカチオン系放射線重合開始剤[ランバーティー社製:Esavure1187]を3重量部加えて混合攪拌し、実験B1〜B3の各放射線硬化性組成物を作製した。なお、表2に示したこれらの重量比率も、表1の場合と同様にして算出した値であるため、これらの合計量が100.0にならない場合も存在している。
【0047】
また、このようにして作製した実験B1〜B3の各放射線硬化性組成物においては、オキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(DVE−3)の重量比率が、図1〜図3に示した上記の点Y8と、点Y9と、点Y10と、点Y11とを結んで囲まれた領域内に存在していた。
【0048】
次いで、このように作製した各放射線硬化性組成物についても、上記の実験A1〜A30の場合と同様にして、各放射線硬化性組成物における硬化性、皮膜外観及び粘度の評価を行い、その結果を下記の表2に示した。
【0049】
【表2】

【0050】
この結果、上記の実験A1〜A30の場合と同様に、オキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(DVE−3)との重量比率が、図1〜図3に示した上記の点Y8と、点Y9と、点Y10と、点Y11とを結んで囲まれた領域内に存在している実験B1〜B3の各放射線硬化性組成物は、硬化性、皮膜外観及び粘度の何れの特性も良好なレベルであった。
【0051】
次に、オキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(BDVE)との重量比率が、(80.0,20.0,0.0)の点Y2にある実験A4の放射線硬化性組成物と、(72.7,18.2,9.1)の点Y8にある実験A5の放射線硬化性組成物と、(61.5,15.4,23.1)の点にある実験A7の放射線硬化性組成物(実験A7の放射線硬化性組成物は、上記の点Y8、点Y9、点Y10、点Y11を結んで囲まれた領域内に存在している)とを用い、上記の各放射線硬化性組成物100重量部に対して、顔料Cyanine Blue4044[山陽色素社製]を2.8重量部、顔料分散剤ソルスパース41000[ルーブリゾール社製]を0.28重量部加え、超音波分散洗浄機[(株)エスエヌティ製:US−2]を用いて、上記の顔料を上記の放射線硬化性組成物中に均一に分散させて、各インクジェット用インクを作製した。
【0052】
そして、このように作製した各インクジェット用インクを市販のインクジェットプリンタ[EPSON社製:PM−G730]を改造したものに使用し、記録ヘッドのノズルから各インクジェット用インクをそれぞれ記録紙上に吐出させてプリントを行った。
【0053】
この場合、上記の各インクジェット用インクは記録ヘッドのノズルに詰まることなく適切に記録紙上に吐出され、また記録紙上に吐出された各インクジェット用インクは、インクジェットプリンタに搭載された紫外線ランプによって適切に硬化されると共に、記録紙上に適切に付着され、光沢のある良好なプリントが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実験A1〜A30の各放射線硬化性組成物におけるオキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(BDVE)との重量比率と、各放射線硬化性組成物における硬化性の評価を示した図である。
【図2】本発明の実験A1〜A30の各放射線硬化性組成物におけるオキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(BDVE)との重量比率と、各放射線硬化性組成物における皮膜外観の評価を示した図である。
【図3】本発明の実験A1〜A30の各放射線硬化性組成物におけるオキセタン環含有化合物(OXT221)と、エポキシ化植物油化合物(O−130P)と、ビニルエーテル化合物(BDVE)との重量比率と、各放射線硬化性組成物における粘度の評価を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物とを含む液状成分に重合開始剤が添加され、上記の液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対して、オキセタン環含有化合物が29.4〜90.0重量%、エポキシ化植物油化合物が5.6〜46.2重量%、ビニルエーテル化合物が0〜44.4重量%の範囲で含まれることを特徴とする放射線硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線硬化性組成物において、上記の液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対するオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との重量比率が、これらの重量比率を示した図において、オキセタン環含有化合物の重量比率X1と、エポキシ化植物油化合物の重量比率X2と、ビニルエーテル化合物の重量比率X3とした(X1,X2,X3)の点における(90.0,10.0,0.0)の点Y1と、(80.0,20.0,0.0)の点Y2と、(54.5,36.4,9.1)の点Y3と、(30.8,46.2,23.1)の点Y4と、(29.4,29.4,41.2)の点Y5と、(33.3,22.4,44.4)の点Y6と、(50.0,5.6,44.4)の点Y7とを結んで囲まれた領域内であることを特徴とする放射線硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線硬化性組成物において、上記の液状成分におけるオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との合計量に対するオキセタン環含有化合物とエポキシ化植物油化合物とビニルエーテル化合物との重量比率が、これらの重量比率を示した図において、オキセタン環含有化合物の重量比率X1と、エポキシ化植物油化合物の重量比率X2と、ビニルエーテル化合物の重量比率X3とした(X1,X2,X3)の点における(72.7,18.2,9.1)の点Y8と、(38.5,38.5.23.1)の点Y9と、(31.3,31.3,37.5)の点Y10と、(47.1,11.8,41.2)の点Y11とを結んで囲まれた領域内であることを特徴とする放射線硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線硬化性組成物において、上記のエポキシ化植物油化合物が、エポキシ化大豆油化合物とエポキシ化亜麻仁油化合物とから選択される少なくとも1種であることを特徴とする放射線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した放射線硬化性組成物に顔料が分散されてなることを特徴とするインクジェット用インク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−7000(P2010−7000A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169729(P2008−169729)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000205306)大阪シーリング印刷株式会社 (90)
【Fターム(参考)】