説明

放熱シート

【課題】コンピュータの回路基板のように凹凸がある複雑形状の箇所にフィットして冷却を行うため使用される放熱シートであって、柔軟性があり、適当な粘着性を有し、かつ引き裂き強度が良好な放熱シートを提供する。
【解決手段】シリコーンゲル100重量部に対し高分子量の液状シリコーンゴムを1〜5重量部添加したことを特徴とする。
【効果】シリコーンゲルに高分子液状シリコーンゴムをブレンドしたため、強度が向上し、粘着性が低下するという利点があり、このため、放熱シートを薄くすることが可能になるとともに取り扱いが容易になり、運搬および使用が簡便になるという大きな利点がある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は放熱シート、特に複雑形状の箇所を覆って放熱を行う柔軟な放熱シートに関する。
【0002】
【従来技術および問題点】たとえば、パソコンなどに使用される半導体装置などは熱を発生することが知られているが、上述のような熱は半導体装置などを誤作動させる恐れがあり、このためデスクトップ型パソコンなどはファンを内蔵し、このファンにより冷却するようになっている。しかしながら、ノート型パソコンのように小形の装置においてはファンを内蔵するのが困難であるため、ケースに放熱性の良好なマグネシウム合金などを使用するとともに、半導体装置などを装着する回路基板を覆うように放熱シートを設けることが行われている。
【0003】このような放熱シートは、回路基板が上述のような半導体装置などを装着したものであるため凹凸があることから、前記回路基板にフィットするように柔軟性があるものが使用されている。このような放熱シートとしては、シリコーンゲルに放熱材、たとえばアルミナ、マグネシア、窒化ほう素などを所定量添加したものが使用されている。
【0004】しかしながら、このような放熱シートはゲル状であるため、強度が小さく、薄いシートの場合、凹凸のある基板表面に貼着すると亀裂を生じたり、ちぎれたりするおそれがり、取り扱いにくいという欠点がある。このため放熱シートを厚くせざるえないという欠点がある。また、シリコーンゲルの場合、粘着性が大きいため、同様に凹凸ある基板表面に貼り付けにくいという欠点があった。
【0005】本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、コンピュータの回路基板のように凹凸がある複雑形状の箇所にフィットして冷却を行うため使用される放熱シートであって、柔軟性があり、適当な粘着性を有し、かつ引き裂き強度が良好な放熱シートを提供することを目的とする。
【0006】
【問題点を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明による放熱シートは、シリコーンゲル100重量部に対し高分子量の液状シリコーンゴムを1〜5重量部添加したことを特徴とする。
【0007】本発明によれば、シリコーンゲルに高分子液状シリコーンゴムをブレンドしたため、強度が向上し、粘着性が低下するという利点があり、このため、放熱シートを薄くすることが可能になるとともに取り扱いが容易になり、運搬および使用が簡便になるという大きな利点がある。
【0008】本発明をさらに詳しく説明すると、本発明による放熱シートは、シリコーンゲルに対し、高分子の液状シリコーンゴムをブレンドしたものが使用される。
【0009】前記シリコーンゲルはシリコーン樹脂(ゴム)のモノマーにシリコーンオイルを白金触媒などの作用によって付加させて通常のシリコーンエラストマーの1/5〜1/10の架橋密度で硬化させた付加重合型シリコーン樹脂である。
【0010】このようなシリコーンゴムに対し、高分子液状のシリコーンゴムをブレンドする。液状シリコーンゴムは、一般にシリコーンオイルと呼ばれるシリコーン樹脂である。
【0011】本発明によれば、上記シリコーンゲル100重量部に対し高分子液状シリコーンゴムを1〜5重量部ブレンドする。1重量部未満であると、強度の向上、粘着性低下の効果が小さく、一方、5重量部を超えると、柔軟性が低下して複雑形状部品の放熱シートとして取り扱いが容易ではなくなる恐れがある。
【0012】上述のようなブレンドに対し、放熱材を添加することができる。放熱材としては前述のようにアルミナ、マグネシア、窒化ほう素などの一種以上の粉体をあげることができる。この添加量は、好ましくは前記ブレンド100重量部に対し、50〜60重量部である。50重量部未満であると、放熱シートが十分な放熱性を発揮できない恐れがあり、一方60重量部を超えると、強度が不足し、脆くなって使用に際して亀裂などを生じる恐れがあるからである。上述のように本発明による放熱シートは強度(特に引張強度)が向上するため、上記放熱材を、従来に比較して多量に添加可能になるという利点がある。
【0013】このような本発明による放熱シートの厚さは100μm〜2mmであるのがよい。100μm未満であると、強度が不足し、また放熱特性が十分でない恐れがあり、一方2mmを超えた場合、放熱特性は向上せず、取り扱いが不便になるという欠点を生じる。特に好ましくは0.5〜1mmである。
【0014】以下本発明による実施例を説明する。
【0015】
【実施例】シリコーンゲル材料(KE1051A/B;商標名;信越化学株式会社製)100重量部に高分子量の液状シリコーンゴム(KE;商標名;信越化学株式会社製)を4重量部ブレンドし、さらにこのブレンド物100重量部にアルミナ粉末を55重量部添加し、架橋して、厚さ0.1mmの放熱シートを作製した。
【0016】比較として上記シリコーンゲル材料にアルミナを同量添加した厚さ0.1mmの従来の放熱シートを作製した。
【0017】本発明の放熱シートによれば、従来のしリコーゲルのみの放熱シートに比較して、放熱特性は同等であるものの、硬度は若干向上し、粘着性が低下しているとともに、このため引張強度は著しく改良されている。すなわち、従来に比較して同等の放熱特性を有し、薄く、取り扱いが容易で、凹凸のある複雑形状の部品に良好にフィットする放熱シートが提供できることが明らかになった。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように本発明による放熱シートによれば、シリコーンゲルに高分子液状シリコーンゴムをブレンドしたため、強度が向上し、粘着性が低下するという利点があり、このため、放熱シートを薄くすることが可能になるとともに取り扱いが容易になり、運搬および使用が簡便になるという大きな利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリコーンゲル100重量部に対し高分子量の液状シリコーンゴムを1〜5重量部添加したことを特徴とする放熱シート。
【請求項2】 前記シリコーンゲルと高分子量の液状シリコーンゴムのブレンド100重量部に対し、アルミナ、マグネシア、窒化ほう素の一種以上を50〜60重量部添加したことを特徴とする請求項1記載の放熱シート。
【請求項3】 前記放熱シートの厚さは100μm〜2mmであることを特徴とする請求項1または2記載のいずれかの放熱シート。

【公開番号】特開2001−7578(P2001−7578A)
【公開日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−175042
【出願日】平成11年6月22日(1999.6.22)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】