放熱材およびそれからなる車両用内装材
【課題】 高性能の放熱性能を有する構成の放熱材および車両用内装材を提供する。
【解決手段】 積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を最裏層に用いる少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【解決手段】 積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を最裏層に用いる少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車等の車両用内装材として適用することの出来る、特に放熱性能が著しく改善された放熱材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の自動車等の車両用フロアカーペットのような車内用内装材の構成を図面を用いて説明する。
【0003】図1は、従来の2層からなる車内用内装材を示す側断面模式図である。また、図2は、従来の3層からなる車内用内装材を示す側断面模式図である。図3は、図1の内装材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。図4は、図2の3層からなる内装材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。
【0004】従来の自動車等の車両用フロアカーペットなどに用いられる車内用内装材の構成は、図1に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部および基布層13が形成されてなる最裏層の基布部からなる2層構造の内装材1、あるいは図2に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部、該立毛層11の直下層の基布層13が形成されてなる基布部、さらに該基布層13の直下層の基材層14が形成されてなる最裏層の基材部からなる3層構造の内装材2があり、これら各部の繊維構成により、クッション性や車室内の静粛性を向上するべく、性能向上、改善が行なわれてきた。
【0005】例えば、立毛層11は、可視光線および近赤外線の吸収がある材料12aからできている。そして、基布層13は、これらの立毛層11を安定して固定している。さらに、基材層15は、主に繊維やウレタンなどの吸音性の従来の材料16aからなる。
【0006】しかしながら、現存の構成では、図3に示すように、内装材1における立毛層11の表面や内部で可視光線や近赤外線20が吸収され、遠赤外線21として放射されるか、あるいは図4に示すように、内装材2における立毛層11の表面や内部で可視光線や近赤外線20が吸収され、遠赤外線21として放射されることになる。このように、現存の構成では、特に基材層の断熱効果が大きいため、また、表皮材の吸熱、車室内への再放射による温度上昇を招き、例えば、真夏の炎天下駐車時には車室内が著しい温度上昇をしてしまうという問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述の従来技術の問題点を解決し、高性能の放熱性能を有する構成の放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材を提供せんとするものである。
【0008】また、本発明の目的は、最表層の表皮材の吸熱を抑え、かつ車室内への再放射を抑制し、さらに室外との断熱効果を大幅に低減し、効率よく室外に放熱し得る構造とすることで、車室内の温度上昇を格段に低減することのできる放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、従来の内装材の構成では、図3や図4に示すように、可視光線および近赤外線の透過性のない最表層の存在により、一旦内装材に入射した光線、熱線は最表層表面で熱に変化し、車室内側に熱を放射することになっていることを見出したものである。また、内装材の基材層は断熱層として働き、車室内の熱を保持することで、より車室内に熱をこもらせることとなっていることをも見出したものである。かかる知見に基づき、放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材を新規な構成とすることにより、優れた放熱性能、詳しくは放熱材ないし内装材に入射する光線や熱線を、内装材の裏層側で吸収ないし吸熱し、最表層側(車室内)に放射または放熱することなく、裏層側から室外に放射または放熱(排熱)し得る性能を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、上記目的を達成するための本発明は、請求項毎に次のように構成される。
【0010】請求項1に記載の発明は、積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いてなる最裏層と、の少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材である。
【0011】請求項2に記載の発明は、積層された構造からなる放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材である。
【0012】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。
【0013】請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練してなることを特徴とするものである。
【0014】請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対し、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを0.1〜30質量%混練してなることを特徴とするものである。
【0015】請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の放熱材において、常温遠赤外線放射性充填材として、無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が含まれることを特徴とするものである。
【0016】請求項7に記載の発明は、請求項6項に記載の放熱材において、常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対して1〜40質量%混練してなることを特徴とするものである。
【0017】請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱材を用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0018】請求項9に記載の発明は、請求項8項に記載の車両用内装材をフロアカーペット部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0019】請求項10に記載の発明は、請求項8項に記載の車両用内装材をリアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部の少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0020】請求項11に記載の発明は、請求項8項に記載の車両用内装材を車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0021】
【発明の効果】以上のように構成された本発明によれば、請求項ごとに次のような効果を奏する。
【0022】請求項1に記載の発明にあっては、積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料を最表層に用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることが出来、またその下層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。また、最裏層に可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いることで、最表層を通過した可視光線、近赤外線を吸収することができ、また放射される遠赤外線を効率良く裏面へと放射することが可能となる。そのため、最裏層での断熱効果を大幅に低減でき、効率よく最裏層から裏面側に放熱することができ、放熱効率を向上することができ、最表層上方雰囲気の温度上昇を低減することができるものである。
【0023】請求項2に記載の発明にあっては、積層された構造からなる放熱材において、最表層に透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層を用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることができ、温度の上昇を防ぐことができる。また立毛層とすることで、車両用内装材として用いる際には見栄えも確保される。また、この立毛層が透明であること、すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、最表層での熱の発生を抑えられる。次に、この立毛層の直下層に透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層を用いることで、可視光線、近赤外線は立毛層、透過性基布層を透過して、基材層で吸収されることになる。すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、基布層での熱の発生を抑え、また、その下層が基材層であることで、直接、基材層での吸収、放射が行われる。これにより、価格的にも低減された効率の良い放熱性の放熱材とすることができる。さらに下層の基材層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。さらに透過性基布層の下層に常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層を用いることで、最表層および透過性基布層を通過した可視光線、近赤外線より放射される遠赤外線を効率良く裏面へと放射することが可能となる。また、上記したそれぞれの層に、上記の機能を持たせた3層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層側から吸収し裏面側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。
【0024】請求項3に記載の発明にあっては、請求項1または2に記載の放熱材において、最表層に透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層を用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることが出来、またその下層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。また立毛層とすることで、車両用内装材として用いる際には見栄えも確保される。また、この立毛層が透明であること、すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、最表層での熱の発生を抑えられる。次に、この立毛層の直下層に明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層を用いることで、表面の見栄え、意匠性も確保される。さらにまた、この吸収性基布層がこの明度の範囲で着色されていることで、効率の良い可視光線、近赤外線の吸収が可能となる。この吸収性基布層で吸収された可視光線および近赤外線は、遠赤外線として放射されるが、立毛層側では遠赤外線の透過性が小さいため、さらに下層である基材層に吸収されることになる。さらに吸収性基布層の下層に常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層を用いることで、効率良く裏面へと放射(放熱)することが可能となる。また、基材層が熱可塑性繊維からなることで、クッション性を持たせることが出来、また、リサイクルの点でも、開繊することでの再利用も可能となる。また、上記したそれぞれの層に、上記の機能を持たせて3層以上が積層されてなる放熱材にあっては、あたかも熱を立毛層側から吸収し裏面側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。
【0025】請求項4に記載の発明にあっては、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練することで、可視光線および近赤外線の吸収効率が大きく、この吸収性基布層で十分に吸収された可視光線および近赤外線は、遠赤外線として放射されるが、立毛層側では遠赤外線の透過性が小さいため、より効率良くその下面に放射(放熱)することができるものであり、とりわけ、吸収性基布層の下層に基材層が設けられている場合には、遠赤外線が基材層に十分に吸収されることになり、この基材層の常温遠赤外線放射性充填材により、その下面により効率良く放熱をすることが可能になる点で有利である。
【0026】請求項5に記載の発明にあっては、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対し、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを0.1〜30質量%混練することで、シート状加工、紡績等の加工性を維持するための物性を確保し、かつ明度を充分に下げることが出来、可視光線および近赤外線の吸収を充分に行うことが出来る点で有利である。
【0027】請求項6に記載の発明にあっては、常温遠赤外線放射性充填材として、無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が含まれていることで、これらの持つ理想黒体に対して80%以上という高い遠赤外線放射率により、常温で非常に効率よく放射することが可能となる点で有利である。
【0028】請求項7に記載の発明にあっては、請求項6項に記載の放熱材において、常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対して1〜40質量%混練および/または固定するこで、赤外線放射性能、製品での洗濯耐久性、風合い等に優れた基材層とすることができる点で有利である。さらに混練する場合、1〜15質量%の範囲とすることで、シート状加工、紡績等の加工性を維持するための物性を確保することができる点でより一層有利である。
【0029】請求項8に記載の発明にあっては、車両用内装材として、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱材を用いることで、熱的条件の特に厳しい車両において、車室内の温度上昇を低減することができる点で有用である。
【0030】請求項9に記載の発明にあっては、請求項8項に記載の車両用内装材を、窓ガラスからの可視光線、近赤外線の入射により暖められる部位として、面積が大きい部位であるフロアカーペット部の全面、若しくは一部に用いることで、一番効率良く放熱をさせることが出来る点で有利である。また、従来のフロアカーペットに比してクッション性や車室内の静粛性を損なうことなく、効率良く放熱できる点で有用である。
【0031】請求項10に記載の発明にあっては、請求項8項に記載の車両用内装材を、車室内で日射を受け高温になり易い部分であるリアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部の少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることで、これらの車両の部位につき効率的に放熱することが可能である点で有用である。
【0032】請求項11に記載の発明にあっては、請求項8項に記載の車両用内装材を、車室内で日射を受け高温になり易い部分である車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることで、効率的に放熱することが可能である点で有用である。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】本発明の第1の解決手段は、積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いてなる最裏層との少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。
【0035】上記最表層を構成する可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料としては、下記透過率を満足するものであればよく、特に制限されるべきものではないが、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴムなどの熱可塑性材料が挙げられる。また、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料の形態(形状)としては、特に制限されるべきものではなく、粉体形状、繊維形状、あるいはシート形状等の各種成形形状が挙げられる。可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料として好ましくは熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維であり、より好ましくは透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維である。なお、熱可塑性樹脂では、特に断らない限り形態は問わないものとし、また、熱可塑性繊維では、特にに断らない限り材質は問わないものとする。
【0036】ここで、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料の可視光線および近赤外線の透過率としては、好ましくは60%以上であるが、後述するように最表層として有効に機能するためには、30%を超えるものであればよい。一方、遠赤外線の透過率は、低いほど好ましく、60%未満、好ましくは30%以下である。
【0037】また、上記最表層の形状は、使用用途や使用部位に応じて、見栄え、クッション性、リサイクル性等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂を用いてなるシート形状等の各種成形形状であってもよいし、あるいは熱可塑性繊維をシート形状加工した織物、編物あるいは不織布等であってもよい。さらにこれら織物、編物、あるいは不織布には、立毛加工してなるものを含んでいてもよいなど、各種の繊維加工処理したものが含まれるものである。立毛加工してなるものとしては、例えば、実験例1のタフト表皮のように、立毛層の下層の基布層や基材層に立毛層の繊維(糸)を植毛してカーペット状にしたものや、同じく立ち毛になる繊維(糸)を下層の基布層や基材層の織物、編物、あるいは不織布などの編成中に大きなループとして、基布層や基材層の生地の表面上に突出させ、必要に応じてカットしたものなど、立毛層とその下層を一緒に加工する方法等が挙げられる(図5参照のこと)。
【0038】上記最表層には、上記の性質を阻害しない範囲での着色も可能である。かかる着色には、従来公知の顔料や染料等の着色剤を用いることができる。さらに上記最表層には、上記の性質を阻害しない範囲で従来公知の他の添加剤を用いていてもよい。
【0039】上記最表層では、可視光線および近赤外線の透過率が共に30%を超えるものであり、遠赤外線の透過率が30%未満となるものであればよい。なお、該最表層について、より詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0040】次に、最裏層に吸収性基布層および/または基材層を用いることで、吸収性基布層では、最表層を通過した可視光線および近赤外線を可視光線吸収性および赤外線吸収性材料により吸収し熱に変化させて効率良く裏面へと放射(放熱)することが可能となり、また基材層では、最表層を通過した可視光線および近赤外線を受けた常温遠赤外線放射性充填材より放射される遠赤外線を効率良く裏面へと放射することが可能となる。ここで、最裏層に吸収性基布層と基材層とを併用する場合には、吸収性基布層と基材層とが一体化されて1つの層を形成してもよいし、2層化されていてもよい。2層化されている場合には、吸収性基布層よりも基材層が、より最裏層側になるように形成するのが望ましい。
【0041】ここで、上記吸収性基布層の形成に用いられる上記可視光線および赤外線吸収性材料としては、カーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素類を混練した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴムなどの熱可塑性材料が挙げられる。また、可視光線および赤外線吸収性材料の形態(形状)としては、特に制限されるべきものではなく、粉体形状、繊維形状、あるいはシート形状等の各種成形形状が挙げられる。該吸収性基布層については、詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0042】また、上記基材層の形成に用いられる上記常温遠赤外線放射性充填材としては、遷移金属元素酸化物系のセラミック、天然鉱石および天然炭化物等が知られている。本発明では、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0043】上記遷移金属元素酸化物系のセラミックスとしては、TiO2、SiO2、ZrO2、Al2O3、MgO、BaSO4、MnO2、Fe2O3、ZrSiO2、CoO、CuO、CrO3、TiO、TiN、ZrC、TiC、SnO2等の金属酸化物の微粒子、2MgO・2Al2O3・5SiO2(コージライト)などのこれらの複合金属酸化物の微粒子、さらにネオジウム、ランタン、イットリウム等の希土類金属の酸化物を含むものであり、更に少量のシリカ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、第8族金属酸化物、燐化合物等が含まれていてもよい。上記天然鉱石としては雲母、トルマリン(電気石)、オーラストン等が知られている。上記天然炭化物としては海藻を炭化し微粉末にしたもの及び備長炭に代表される炭類、カーボンブラック、カーボンファイバー等が知られている。
【0044】これらのなかでも、理想黒体に対して80%以上の高い遠赤外線放射率を持つ無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含むものが望ましく、より好ましくはこれらの少なくとも1種からなるものである。
【0045】このような常温遠赤外線放射性充填材は、4〜20μm以上の広い波長範囲にわたる遠赤外線を効率よく放射することができる。ここで、4〜20μm以上としたのは、4μm以上の波長範囲を遠赤外線とする場合と、20μm以上の波長範囲を遠赤外線とする場合があるが、上記常温遠赤外線放射性充填材は、いずれであってもよいためである。なお、本明細書中の遠赤外線放射率は、2000〜100000nmの波長範囲にわたる遠赤外線を測定するものとする。
【0046】また、上記基材層としては、常温遠赤外線放射性充填材を含むものであればよく、基材層が常温遠赤外線放射性充填材からなるものも本発明の範囲に含まれるものとする。基材層への常温遠赤外線放射性充填材の含有のし方としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、基材層の主原料である熱可塑性材料に常温遠赤外線放射性充填材を混練してもよいし、熱可塑性材料、特に熱可塑性繊維表面に常温遠赤外線放射性充填材を固着してもよいし、熱可塑性材料を用いて基材層の形に形成した後、該基材層表面に常温遠赤外線放射性充填材を固着してもよいが、均一分散性、耐久性等の観点からは、熱可塑性材料に混練するのが望ましい。さらに、上記基材層が常温遠赤外線放射性充填材からなる場合としては、例えば、常温遠赤外線放射性充填材の1種であるカーボンファイバーを不織布化した不織布を基材層として用いる場合などが挙げられるが、これらに制限されるものはない。こうすることで、該充填材の高い常温遠赤外線放射性を何ら損なうことなく、放熱用途に優れた基材層とすることも可能である。
【0047】また、基材層には、遠赤外線放射性能を高めるため、常温遠赤外線放射性充填材を1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、基材層の主原料である熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴムなどが挙げられる。熱可塑性材料の形態(形状)としては、粉体形状、繊維形状、あるいはシート形状等の各種成形形状が挙げられる。熱可塑性材料として、好ましくは熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維である。
【0048】上記基材層の形状は、使用用途や使用部位に応じて、見栄え(意匠性)、クッション性、リサイクル性、吸音性等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、シート形状等の各種成形形状であってもよいし、あるいは繊維をシート形状加工した織物、編物あるいは不織布等であってもよい。さらにこれら織物、編物、あるいは不織布は、各種加工処理を施したものが含まれるものである。
【0049】上記基材層の形成において、常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性材料へ混練する場合の総量は、シート状加工、紡績等の加工性を維持するための物性を確保する必要があり、熱可塑性材料の全質量に対して1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%を混練する。熱可塑性材料のうち、熱可塑性繊維表面に固着剤等を用いて固定(固着)する場合は、特に制約される条件はなく、遠赤外線放射性能、製品での洗濯耐久性、風合い等を考慮して繊維質量に対して1〜40質量%、好ましくは、3〜20質量%を固定する。
【0050】基材層に用いる常温遠赤外線放射性充填材として用いる材料の遠赤外線放射率は、理想黒体に対して70%以上の遠赤外線放射率を持つものが好ましい。より好ましくは80%以上とすることで、非常に効率良く遠赤外線を放射することが可能になる。遠赤外線放射量は、温度が高い程放射量は多く放射されるが、繊維製品の場合は低温近くの温度、即ち30〜40℃で高い放射能力を持つものが良いがここでは特に限定は行わない。なお、該基材層について、より詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0051】一般にこれらのような常温遠赤外線放射性充填材は、手袋、靴下といった衣類等の繊維に混練され保温素材として用いられることが多い。この場合は、熱源側での温度を保持することが目的で遠赤外線放射物質を用いる。
【0052】本発明では、これらの素材を放熱材の最裏層の基材層の充填材として、熱源からの放熱用途として用いることで、効率良く放熱をすることが可能となることを見出したものである。なお、該基材層について、より詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0053】次に、本発明の第1の解決手段の好適な実施形態としては、最表層が透明な熱可塑性樹脂または繊維からなる立毛層からなり、その直下層が明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなり、さらにその下層に常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層とからなる少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。かかる好適な実施形態とすることで、さらに放熱性能が向上する。
【0054】先述のとおり最表層では、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料を用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることが出来、またその下層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。また、好適な実施形態では、該最表層を立毛層とすることで、車両用内装材として用いる際には見栄えも確保される。また、好適な実施形態では、透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維を用いることで、この立毛層が透明であること、すなわち可視光線および近赤外線に対して吸収性を示さないことで、最表層での熱の発生を抑えられる。ここで言う透明とは、JIS K 7105で定義される全光線透過率が60%以上あることを言う。この透過率以上である立毛層を組み合わせることで、放熱性能はより向上する。
【0055】これらの熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に用いる代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂(ポリアクリロニトリル系樹脂)、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に好適な実施形態では、透明な材質のものを用いればよい。
【0056】また、リサイクル性を考慮すれば熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることが望ましい。
【0057】これらの熱可塑性樹脂からなる繊維は、機械強度、加工性、流通性の点からは、ポリエステルを主成分とすることが望ましい。本発明でいうポリエステルとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリεカプロラクトン(PCL)等のほか、PETのエチレングリコール成分を他の異なるグリコール成分で置換したもの(例えばポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT))、またはテレフタル酸成分を他の異なる2塩基酸成分で置換したもの(ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN))等である。また、これらポリエステルを構成ユニットとした共重合ポリエステル、例えば、PBTとポリテトラメチレングリコール(PTMG)のブロック共重合体、PETとPEIの共重合体、PBTとPBIの共重合体、PBTとPCLの共重合体など主たる繰返し単位がポリエステルからなる共重合体でも構わない。
【0058】これらの熱可塑性樹脂からなる繊維を用いて最表層、特に立毛層を形成する上で、必要に応じて、該最表層は接着成分を含んでいてもよい。かかる接着成分としては、芯鞘型、サイドバイサイド型等のバインダー繊維を用いるのが好適であるが、特に限定は行なわない。接着成分を用いることで、最表層、特に立毛層の腰や張り、クッション性などの復元力や耐久力を向上することができる。
【0059】また、最表層を構成する熱可塑性繊維材としてフェルト(著しくもつれた繊維で構成されているシート状のものを言う)を用いた場合には、接着成分は、主に熱硬化性樹脂が用いられるが特に問題は無く、熱可塑性樹脂、バインダー繊維を用いることも可能である。なお、立毛層以外にも、後述する基布層や基材層などにも、同様の接着成分を含んでいてもよい。
【0060】なお、最表層の厚さは、車内用内装材などその使用用途や使用部位等に応じて、クッション性、意匠性、見栄えなどを考慮して適宜決定されるものであり、特に制限されるべきものではなく、図1や図2に示すような従来の車内用内装材に使われていた最表層(立毛層)と同程度の厚さであれば十分であるが、特に可視光線および近赤外線の透過に適した厚さは、3〜5mm程度である。
【0061】次に、上記最表層(立毛層)の直下層は、明度0.1〜6の熱可塑製樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなるものである。最表層の直下層が明度0.1〜6の吸収性基布層であることで、表面の見栄え、意匠性も確保される。さらにまた、この吸収性基布層がこの明度の範囲で着色されていることで、先述のとおり、効率の良い可視光線および近赤外線の吸収が可能となる。ここで言う明度とは、JIS Z 8721に定義されるマンセル表色系の中の明度を示している。ここで、色相、クロマ(彩度)に特に触れていないのは、明度がこの値の範囲内であれば、どの色相、クロマでも十分な可視光線および近赤外線の吸収が行われる。また、有彩色、無彩色についても特に限定を行わないのも同様の理由である。
【0062】この吸収性基布層を上記明度の範囲に着色する方法としては、(吸収性基布層またはその材料の)表面に塗料を塗布する、原着(原液着色の略称であり、原料樹脂に紡糸段階で有機顔料や染料を添加して着色する方法をいう)、染色、粒体の混練等のどの手段でもかまわない。可視光線および赤外線吸収性材料として、明度0.1〜6となるように着色された熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維を用いることで、可視光線および近赤外線を効率良く吸収することが可能となる。好ましくは、吸収性基布層が明度0.1〜6の熱可塑性繊維からなることで形状自由度、成形性が向上する。また、リサイクルの点でも、開繊することでの再利用も可能となる。
【0063】なお、明度0.1〜6となるように着色される前の熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維には、上記最表層(立毛層)を構成する熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維と同様のものが利用可能である。
【0064】なお、吸収性基布層の厚さは、車内用内装材などその使用用途や使用部位等に応じて、クッション性、意匠性、見栄えなどを考慮して適宜決定されるものであり、特に制限されるべきものではなく、図1や図2に示すような従来の車内用内装材に使われていた基布層と同程度の厚さであれば十分である。
【0065】この吸収性基布層で吸収された可視光線および近赤外線は、遠赤外線として放射される(これは、好適な可視光線および赤外線吸収材料であるカーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素系の材料は、常温遠赤外線放射性充填材でもあるため、可視光線および近赤外線を吸収して発生した熱により遠赤外線を放射することができるためである。)が、最表層(立毛層)側では遠赤外線の透過性が小さいため、さらに下層である基材層に吸収されることになる。そこでこの基材層に常温遠赤外線放射性充填材を含ませておくことで、裏面側への効率の良い放熱が可能となる。
【0066】好ましくは、基材層が繊維からなることで、内装材にクッション性を持たせることが出来、また、リサイクルの点でも、開繊することでの再利用も可能となる。
【0067】それぞれの層に、上記の機能を持たせた3層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層側から吸収し裏面側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。
【0068】好ましくは、上記吸収性基布層は、明度0.1〜6となるように、熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなること、さらに好ましくは熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維にカーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練して着色されたものを用いることである。かかる構成とすることで、より効率良く放熱をすることが可能になる。
【0069】また、上記吸収性基布層が明度0.1〜6となるように着色するのに用いる材料としては、カーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素からなるものを用いることが好ましい。これは、炭素系の材料の可視光線および近赤外線の吸収効率が良いためであり、少量の混練、例えば、吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維質量に対して0.1質量%程度の混練でも吸収効率が大きく向上される。混練量の上限としては30質量%が目安となる。これ以下の量の混練で明度は充分に下げることが出来、可視光線および近赤外線の吸収を充分に行うことが出来る。
【0070】なお、発明の第1の解決手段による放熱材は、上記最表層および最裏層の2層以上、好ましくは上記立毛層、吸収性基布層および基材層の3層以上を有するものであればよく、本発明の作用効果を損なわない範囲でさらに他の層を積層してなるものであってもよい。
【0071】以上が本発明の第1の解決手段の実施形態の構成要件ごとの説明である。以下、かかる実施の形態を図面を用いて説明する。
【0072】図5は、本発明の第1の解決手段の代表的な一つの実施形態である2層からなる放熱材による車内用内装材を示す側断面模式図である。また、図6は、本発明の第1の解決手段の好適な実施形態である3層からなる放熱材による車内用内装材を示す側断面模式図である。図7は、図5の放熱材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。図8は、図6の放熱材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。
【0073】自動車等の車両用フロアカーペットなどに用いられる車内用内装材等として使われる、本発明の第1の解決手段による放熱材の構成としては、図5に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部および基布層13が形成されてなる最裏層の基布部からなる2層構造の放熱材5、あるいは図2に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部、基布層13が形成されてなる最表層の直下層である基布部、さらに基材層15が形成されてなる基布層の下層の最裏層である基材部からなる3層構造の放熱材6などが例示できる。これら各部の構成により、従来と同様に、クッション性や車室内の静粛性(吸音性)を向上することができる。
【0074】さらに、本実施形態の放熱材5、6の最表層の立毛層11は、可視光線および近赤外線を透過する材料12bからできている。また、本実施形態の放熱材5、6の基布層13は、可視光線および近赤外線を吸収する材料14bからなる吸収性基布層であり、立毛層11を安定して固定している。また、放熱材6の最裏層の基材層15は、常温遠赤外線放射性充填材を添加した材料16bからできている。
【0075】本実施形態の放熱材5の構成では、図7に示すように、立毛層11を透過した可視光線および近赤外線20は、吸収性基布層13の表面で吸収され、遠赤外線21として放射されるが、立毛層11での遠赤外線21の透過性が小さいため、主に裏面側へと放射される。また、本実施形態の放熱材6の構成では、図8に示すように、立毛層11を透過し吸収性基布層13で吸収された可視光線および近赤外線20は、図7と同様に、遠赤外線21として放出される。さらにその下層に遠赤外線放射性充填材を添加した基材層15が存在することで、ここでの放射性能も大きくなり、より裏面側へと放射される。このように、本実施形態の放熱材5、6の構成では、それぞれの層に、上記の機能を持たせた2層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層11側から吸収し裏面層の吸収性基布層13や基材層15側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。そのため、例えば、本実施形態の放熱材5、6を用いた車内用内装材等では、従来の構成の内装材に比べ、表皮材の立毛層11での吸熱、車室内への再放射による温度上昇を防止でき、大幅に室外へと放熱する性能が向上される。そのため、真夏の炎天下駐車時の車室内の著しい温度上昇を緩和するのに大いに貢献し得るものである。
【0076】次に、本発明の第2の解決手段は、積層された構造からなる放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維、好ましくは熱可塑性樹脂製の繊維からなる立毛層からなり、その直下層が透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。かかる構成によっても、従来の構成の内装材に比べ、大幅に室外へと放熱する性能を大きく向上することが可能である。
【0077】本発明の第2の解決手段による放熱材では、先述の第1の解決手段による放熱材の構成とは異なり、最表層の直下層に透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維を用いて可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の透過性基布層とすることで、放熱性能の向上を図るものである。かかる透過性基布層を用いることで、可視光線、近赤外線は立毛層、透過性基布層を透過して、基材層で吸収されることになる。ここで吸収された熱線は、もちろん遠赤外線として放射されるので、立毛層、基布層での遠赤外線の非透過性が必要となる。
【0078】最表層の直下層である透明性基布層が透明であること、すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、該透明性基布層での熱の発生を抑え、また、その下層が基材層であることで、直接、基材層(放射層)での吸収、放射が行われる。これにより、価格的にも低減された、効率の良い放熱性の内装材が得られる。ここで言う透明とは、先述と同様にJIS K 7105で定義される全光線透過率が60%以上あることを言う。この透過率以上である透過性基布層を組み合わせることで、放熱性能は向上する。
【0079】なお、本発明の第2の解決手段による放熱材の立毛層および基材層については、先述した本発明の第1の解決手段による放熱材の立毛層および基材層と同様である。よって、重複を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0080】また、本発明の第2の解決手段による放熱材の透明性基布層に用いる透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維については、先述した本発明の第1の解決手段による放熱材の立毛層に用いる透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維(さらに言えば、最表層の可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料)と同様である。よって、重複を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0081】なお、発明の第2の解決手段による放熱材は、上記立毛層、透明性基布層および基材層の3層以上を有するものであればよく、本発明の作用効果を損なわない範囲でさらに他の層を積層してなるものであってもよい。
【0082】以上が本発明の第2の解決手段の実施形態の構成要件ごとの説明である。以下、かかる実施の形態を図面を用いて説明する。
【0083】図9は、本発明の第2の解決手段の代表的な一つの実施形態である3層からなる放熱材(による車内用内装材)を示す側断面模式図である。図10は、図9R>9の放熱材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。
【0084】自動車等の車両用フロアカーペットなどに用いられる車内用内装材等として使われる、本発明の第2の解決手段による放熱材の構成としては、図9に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部、基布層13が形成されてなる最表層の直下層である基布部、さらに基材層15が形成されてなる基布層の下層の最裏層である基材部からなる3層構造の放熱材9が例示できる。これら各部の構成により、従来と同様に、クッション性や車室内の静粛性(吸音性)を向上することができる。
【0085】さらに、本実施形態の放熱材9の最表層の立毛層11は、可視光線および近赤外線を透過する材料12bからできている。また、本実施形態の放熱材9の基布層13は、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料14cからなる透過性基布層であり、立毛層11を安定して固定している。また、放熱材9の最裏層の基材層15は、常温遠赤外線放射性充填材を添加した材料16bからできている。
【0086】本実施形態の放熱材9の構成では、図10に示すように、立毛層11および透過性基布層13を透過した可視光線および近赤外線20は、さらにその下層に遠赤外線放射性充填材を添加した基材層15が存在することで、基材層15の表面で吸収され遠赤外線21として裏面側へと放射される。このように、本実施形態の放熱材9の構成では、それぞれの層に、上記の機能を持たせた3層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層11側から吸収し裏面層の基材層15側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。そのため、例えば、本実施形態の放熱材9を用いた車内用内装材等では、従来の構成の内装材に比べ、表皮材の立毛層11での吸熱、車室内への再放射による温度上昇を防止でき、大幅に室外へと放熱する性能が向上される。そのため、真夏の炎天下駐車時の車室内の著しい温度上昇を緩和するのに大いに貢献し得るものである。
【0087】また、本発明の放熱材の各層の厚みについては、上述した各実施形態によらず、各層の機能を果たすパラメータは、透過率などで決まるものであるが、適当な厚さとしては、・可視光線および近赤外線の透過に適した厚さ:3〜5mm程度、・可視光線および近赤外線の吸収に適した厚さ:1mm以下、・遠赤外線の放射に適した厚さ:5〜30mm程度、が適当であるが、使用用途や他の特性付与(例えば、意匠性、吸音性、クッション性等)なども考慮して適宜、各層の最適な厚さを決定すればよい。
【0088】また、本発明の放熱材の各層の固定(積層)方法としては、特に制限されるべきものではなく、各層の材質や形態などに応じて、従来公知の固定(積層)方法より適宜最適な方法を利用することができる。例えば、繊維からなる層同士の固定の場合には、織編加工や不織布加工などの繊維加工技術により異なる種類の繊維を多層に積層することもできるなど、特に接着が必須ではないが、固定のためには、■熱可塑性のポリエチレンパウダーを用いる、■熱硬化性のフェノール樹脂系接着剤を用いる、■各層の熱可塑性樹脂(繊維、フィルムなど)の熱融着により接着するなどの方法が挙げられるが、決してこれらに限定されるべきものではない。
【0089】次に、本発明に係る車両用内装材は、上記した本発明の放熱材を用いることを特徴とするものである。本発明の放熱材を車両用内装材に用いることは有効であるといえる。これは、熱的条件の特に厳しい車両においては、特に車室内の熱を低減することが困難であり、本発明の放熱材を車両用内装材に用いることで効果的に車室外への放熱性能を向上させることが出来るからである。
【0090】本発明の車両用内装材は、フロアカーペット部に用いることが有効である。窓ガラスからの可視光線、近赤外線の入射により暖められる部位として、面積が大きい部位がフロアカーペット部であり、一番効率良く放熱をさせることが出来る部位である。このとき車両用内装材はフロアカーペット部の全面、若しくは一部分に設定することができる。これは、入射光が特定部位にのみ当たる場合は、本発明の車両用内装材を特定部位のみに設定することが経済的であり、効率的な放熱効果が得られるためである。
【0091】また、車両では車室内側が高温になると、非常に若干ではあるが車室内からフロアカーペットを通して、熱が室外に流れていく。本発明の車両用内装材を用いることで、この熱流を大きくすることが出来、また、このことから非常に効率良く室外へと放熱することが可能になる。
【0092】本発明の車両用内装材は、リアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部のの少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることが有効である。
【0093】また、車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることも有効である。
【0094】これらの車両の部位は車室内で日射を受け高温になり易い部分であり、これらの部位に本発明を用いることで効率的に室外に放熱することが可能である。
【0095】本発明に係る車両用内装材を用いることのできる車両の部位の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0096】図11は、本発明に係る車両用内装材を自動車用内装材として用いる場合に、適用し得る車両の部位を説明するための自動車の室内斜視図である。図11に示すように、本発明に係る車両用内装材を自動車用内装材として用いる場合には、ダッシュインシュレータ51、フロアカーペット52、フロアパネルのトンネル部53、リアパーセル部54、インストルメントパネル上部55、ピラー部56、ルーフパネル部57、シート部58等に好適に用いることができる。
【0097】
【作用】本発明の内装材により、従来の構成の内装材に比べ、大幅に室外へと放熱する性能が向上される。
【0098】
【実施例】以下に本発明の実験例を示す。
【0099】実験例1立毛層は、高透過率の無着色のポリエステル繊維(直径70μm)を用いたタフト表皮(その下層の不織布を作成する際に、立毛層の繊維(糸)を植毛してカーペット状としたもの;タフト表皮厚さ(繊維長)3〜10mm程度)とし、基布層は、繊維原料の無着色のポリエステルに、カーボンブラック(粒子径25nm)を2質量%混練し、紡糸してポリエステル繊維(直径40μm)にしたものを不織布化して不織布(目付600g/m2、厚さ5mm)を作成して明度0.2の吸収性基布層とし、立毛層と吸収性基布層とが積層された2層構造の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0100】なお、基布層の繊維原料には、可視光線・近赤外線透過率が82%で、遠赤外線透過率が23%である無着色のポリエステルを使用した。
【0101】実験例2ポリエステルに、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)の無機粉粒体(直径1μm)を5質量%混練した繊維(直径25μm)を用いて不織布(目付1000g/m2、厚さ30mm)を作成し、基材層とした。この基材層を実験例1の吸収性基布層の変わりに用い、直接立毛層をこの基材層の不織布に植毛して積層することで2層構造の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0102】なお、基材層の繊維原料には、可視光線・近赤外線透過率が82%で、遠赤外線透過率が23%である無着色のポリエステルを使用した。
【0103】実験例3実験例1の車両用内装材の基布層裏面に、実験例2で作成した基材層を積層して3層構造の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0104】実験例4基布層として、無着色のポリエステル繊維(直径40μm)を用いた不織布(目付600g/m2、厚さ5mm)を作成し、透過性基布層としたものを用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0105】実験例5基材層に混練する無機粉粒体をTiO2(直径1μm)とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0106】実験例6基材層に混練する無機粉粒体をAl2O3(直径1μm)とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0107】実験例7基材層に混練する無機粉粒体をMgO(直径1μm)とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0108】実験例8基材層に混練する無機粉粒体をSiO2とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0109】実験例9基布層に、カーボンファイバー(繊維径0.2μm、繊維長1μm)を混練したポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度0.3の吸収性基布層とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0110】実験例10立毛層に、高透過率の着色ポリエステル繊維(直径70μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0111】実験例11基布層に、カーボンブラックを1質量%混練したポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度5.2の吸収性基布層とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0112】実験例12基布層に、着色ポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度4.6の基布層とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0113】なお、本実験例12の基布層は、明度が大きな値を持つと共に、可視光線・近赤外線透過性で、遠赤外線透過非透過性であるので、吸収性基布層と透過性基布層の両方の性質を併せ持つ、中間的に扱うことのできる基布層の例である。
【0114】比較例1立毛層に低透過率の着色ポリエステル繊維(直径70μm)を用い、基布層に着色ポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度6.8とし、基材層に無着色ポリエステル繊維(直径25μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0115】比較例2基材層に無着色ポリエステル繊維(直径25μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0116】比較例3立毛層に低透過率の着色ポリエステル繊維(直径70μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0117】試験例上記の実験例および比較例において得られた車両用内装材について、以下の試験を実施した。
【0118】試験例1(放熱性能評価)
評価箱の一面にサンプル(車両用内装材)を敷設し、箱内を人工太陽灯で加熱、箱内温度とサンプルの箱外側表面温度をとった。雰囲気条件として、箱内気温を40℃、外部気温を30℃をした。
【0119】試験例2(太陽光線透過率測定)
■可視光線・近赤外線透過率測定立毛層、透過性基布層、基材層の可視光線・近赤外線透過率の測定は、各層の材料(詳しくは、各層の繊維原料の無着色ポリエステルまたは着色ポリエステル)に対して、JIS R 3106に準拠して行った。
【0120】■遠赤外線透過率測定立毛層、透過性基布層、基材層の遠赤外線透過率の測定は、各層の材料(詳しくは、各層の繊維原料の無着色ポリエステルまたは着色ポリエステル)に対して、遠赤外線分光光度計(FT−IR)を用いて行った。遠赤外線の評価範囲は、2000〜100000nmとした。
【0121】試験例3(遠赤外線放射率測定)
基材層の遠赤外線放射率の測定は、混練物を含んだ繊維または混練物を含まない繊維を不織布化した不織布に対して、簡易放射率計(D and S AERD)を用いて行った。
【0122】試験例4(遠赤外線放射線量測定)
サンプル(車両用内装材)の遠赤外線放射線量の測定は、B&K製MM0036を用いて、サンプルの裏面層側での放射線量を測定した。
【0123】上記の実験例および比較例において得られた内装材の概要および試験結果を表1、2に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】表2に示す結果において、比較例1の内装材に比較して箱外側表面温度(サンプルの裏面温度)が、3℃以上上昇したものを◎、3℃未満1℃以上上昇したものを○、1℃未満上昇したものを△、温度が同等以下だったものを×で示した。
【0127】表1、2より、実験例で作製した内装材は放熱性能が向上した。
【0128】また、特許請求の範囲から外れる仕様で作製された比較例は、放熱性能が向上しなかった。
【0129】
【発明の効果】本発明の放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材は、従来の構成の内装材に比べ、非常に大きく放熱性能が向上される。そのため、本発明の放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材では、放射材の最表部に受けた日射を、放射材の最表部から最裏層、さらには室外へと放熱することができるものであり、車室内への再放射による温度上昇を大幅に低減することができる。
【0130】本発明では、最表層での可視光線や赤外線吸収による吸熱を抑え、かつ車室内へのこれら光線や熱線の再放射を抑制し、さらに最裏層での断熱効果を大幅に低減し、最裏層に達した可視光線や近赤外線を遠赤外線として裏面側に放射することで、効率よく最裏層から室外に放熱することができ、車室内の温度上昇を低減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の内装材を示す側断面模式図である。
【図2】 従来の内装材を示す側断面模式図である。
【図3】 従来の内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図4】 従来の内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図5】 本発明に関る内装材を示す側断面模式図である。
【図6】 本発明に関る内装材を示す側断面模式図である。
【図7】 本発明に関る内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図8】 本発明に関る内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図9】 本発明に関る内装材を示す側断面模式図である。
【図10】 本発明に関る内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図11】 車両に設置された内装材を車室内側から見た模式図である。
【符号の説明】
1…従来の内装材、 2…従来の内装材、5…本発明の内装材、 6…本発明の内装材、9…本発明の内装材、 11…立毛層、12a…従来の立毛層、12b…可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の立毛層、13…基布層、 14a…従来の基布層、14b…吸収性基布層、 14c…透過性基布層、15…基材層、 16a…従来の基材層、16b…常温遠赤外線放射性充填材を混練した基材層、20…可視光線および近赤外線、 21…遠赤外線、51…ダッシュロアー部、 52…フロアカーペット部、53…フロアパネルのトンネル部、 54…リアパーセル部、55…インストルメントパネル部、 56…ピラー部、57…ルーフパネル部、 58…シート部。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、自動車等の車両用内装材として適用することの出来る、特に放熱性能が著しく改善された放熱材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の自動車等の車両用フロアカーペットのような車内用内装材の構成を図面を用いて説明する。
【0003】図1は、従来の2層からなる車内用内装材を示す側断面模式図である。また、図2は、従来の3層からなる車内用内装材を示す側断面模式図である。図3は、図1の内装材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。図4は、図2の3層からなる内装材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。
【0004】従来の自動車等の車両用フロアカーペットなどに用いられる車内用内装材の構成は、図1に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部および基布層13が形成されてなる最裏層の基布部からなる2層構造の内装材1、あるいは図2に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部、該立毛層11の直下層の基布層13が形成されてなる基布部、さらに該基布層13の直下層の基材層14が形成されてなる最裏層の基材部からなる3層構造の内装材2があり、これら各部の繊維構成により、クッション性や車室内の静粛性を向上するべく、性能向上、改善が行なわれてきた。
【0005】例えば、立毛層11は、可視光線および近赤外線の吸収がある材料12aからできている。そして、基布層13は、これらの立毛層11を安定して固定している。さらに、基材層15は、主に繊維やウレタンなどの吸音性の従来の材料16aからなる。
【0006】しかしながら、現存の構成では、図3に示すように、内装材1における立毛層11の表面や内部で可視光線や近赤外線20が吸収され、遠赤外線21として放射されるか、あるいは図4に示すように、内装材2における立毛層11の表面や内部で可視光線や近赤外線20が吸収され、遠赤外線21として放射されることになる。このように、現存の構成では、特に基材層の断熱効果が大きいため、また、表皮材の吸熱、車室内への再放射による温度上昇を招き、例えば、真夏の炎天下駐車時には車室内が著しい温度上昇をしてしまうという問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述の従来技術の問題点を解決し、高性能の放熱性能を有する構成の放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材を提供せんとするものである。
【0008】また、本発明の目的は、最表層の表皮材の吸熱を抑え、かつ車室内への再放射を抑制し、さらに室外との断熱効果を大幅に低減し、効率よく室外に放熱し得る構造とすることで、車室内の温度上昇を格段に低減することのできる放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、従来の内装材の構成では、図3や図4に示すように、可視光線および近赤外線の透過性のない最表層の存在により、一旦内装材に入射した光線、熱線は最表層表面で熱に変化し、車室内側に熱を放射することになっていることを見出したものである。また、内装材の基材層は断熱層として働き、車室内の熱を保持することで、より車室内に熱をこもらせることとなっていることをも見出したものである。かかる知見に基づき、放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材を新規な構成とすることにより、優れた放熱性能、詳しくは放熱材ないし内装材に入射する光線や熱線を、内装材の裏層側で吸収ないし吸熱し、最表層側(車室内)に放射または放熱することなく、裏層側から室外に放射または放熱(排熱)し得る性能を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、上記目的を達成するための本発明は、請求項毎に次のように構成される。
【0010】請求項1に記載の発明は、積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いてなる最裏層と、の少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材である。
【0011】請求項2に記載の発明は、積層された構造からなる放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材である。
【0012】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。
【0013】請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練してなることを特徴とするものである。
【0014】請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対し、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを0.1〜30質量%混練してなることを特徴とするものである。
【0015】請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の放熱材において、常温遠赤外線放射性充填材として、無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が含まれることを特徴とするものである。
【0016】請求項7に記載の発明は、請求項6項に記載の放熱材において、常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対して1〜40質量%混練してなることを特徴とするものである。
【0017】請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱材を用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0018】請求項9に記載の発明は、請求項8項に記載の車両用内装材をフロアカーペット部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0019】請求項10に記載の発明は、請求項8項に記載の車両用内装材をリアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部の少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0020】請求項11に記載の発明は、請求項8項に記載の車両用内装材を車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする車両用内装材である。
【0021】
【発明の効果】以上のように構成された本発明によれば、請求項ごとに次のような効果を奏する。
【0022】請求項1に記載の発明にあっては、積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料を最表層に用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることが出来、またその下層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。また、最裏層に可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いることで、最表層を通過した可視光線、近赤外線を吸収することができ、また放射される遠赤外線を効率良く裏面へと放射することが可能となる。そのため、最裏層での断熱効果を大幅に低減でき、効率よく最裏層から裏面側に放熱することができ、放熱効率を向上することができ、最表層上方雰囲気の温度上昇を低減することができるものである。
【0023】請求項2に記載の発明にあっては、積層された構造からなる放熱材において、最表層に透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層を用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることができ、温度の上昇を防ぐことができる。また立毛層とすることで、車両用内装材として用いる際には見栄えも確保される。また、この立毛層が透明であること、すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、最表層での熱の発生を抑えられる。次に、この立毛層の直下層に透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層を用いることで、可視光線、近赤外線は立毛層、透過性基布層を透過して、基材層で吸収されることになる。すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、基布層での熱の発生を抑え、また、その下層が基材層であることで、直接、基材層での吸収、放射が行われる。これにより、価格的にも低減された効率の良い放熱性の放熱材とすることができる。さらに下層の基材層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。さらに透過性基布層の下層に常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層を用いることで、最表層および透過性基布層を通過した可視光線、近赤外線より放射される遠赤外線を効率良く裏面へと放射することが可能となる。また、上記したそれぞれの層に、上記の機能を持たせた3層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層側から吸収し裏面側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。
【0024】請求項3に記載の発明にあっては、請求項1または2に記載の放熱材において、最表層に透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層を用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることが出来、またその下層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。また立毛層とすることで、車両用内装材として用いる際には見栄えも確保される。また、この立毛層が透明であること、すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、最表層での熱の発生を抑えられる。次に、この立毛層の直下層に明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層を用いることで、表面の見栄え、意匠性も確保される。さらにまた、この吸収性基布層がこの明度の範囲で着色されていることで、効率の良い可視光線、近赤外線の吸収が可能となる。この吸収性基布層で吸収された可視光線および近赤外線は、遠赤外線として放射されるが、立毛層側では遠赤外線の透過性が小さいため、さらに下層である基材層に吸収されることになる。さらに吸収性基布層の下層に常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層を用いることで、効率良く裏面へと放射(放熱)することが可能となる。また、基材層が熱可塑性繊維からなることで、クッション性を持たせることが出来、また、リサイクルの点でも、開繊することでの再利用も可能となる。また、上記したそれぞれの層に、上記の機能を持たせて3層以上が積層されてなる放熱材にあっては、あたかも熱を立毛層側から吸収し裏面側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。
【0025】請求項4に記載の発明にあっては、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練することで、可視光線および近赤外線の吸収効率が大きく、この吸収性基布層で十分に吸収された可視光線および近赤外線は、遠赤外線として放射されるが、立毛層側では遠赤外線の透過性が小さいため、より効率良くその下面に放射(放熱)することができるものであり、とりわけ、吸収性基布層の下層に基材層が設けられている場合には、遠赤外線が基材層に十分に吸収されることになり、この基材層の常温遠赤外線放射性充填材により、その下面により効率良く放熱をすることが可能になる点で有利である。
【0026】請求項5に記載の発明にあっては、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱材において、前記吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対し、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを0.1〜30質量%混練することで、シート状加工、紡績等の加工性を維持するための物性を確保し、かつ明度を充分に下げることが出来、可視光線および近赤外線の吸収を充分に行うことが出来る点で有利である。
【0027】請求項6に記載の発明にあっては、常温遠赤外線放射性充填材として、無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が含まれていることで、これらの持つ理想黒体に対して80%以上という高い遠赤外線放射率により、常温で非常に効率よく放射することが可能となる点で有利である。
【0028】請求項7に記載の発明にあっては、請求項6項に記載の放熱材において、常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対して1〜40質量%混練および/または固定するこで、赤外線放射性能、製品での洗濯耐久性、風合い等に優れた基材層とすることができる点で有利である。さらに混練する場合、1〜15質量%の範囲とすることで、シート状加工、紡績等の加工性を維持するための物性を確保することができる点でより一層有利である。
【0029】請求項8に記載の発明にあっては、車両用内装材として、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱材を用いることで、熱的条件の特に厳しい車両において、車室内の温度上昇を低減することができる点で有用である。
【0030】請求項9に記載の発明にあっては、請求項8項に記載の車両用内装材を、窓ガラスからの可視光線、近赤外線の入射により暖められる部位として、面積が大きい部位であるフロアカーペット部の全面、若しくは一部に用いることで、一番効率良く放熱をさせることが出来る点で有利である。また、従来のフロアカーペットに比してクッション性や車室内の静粛性を損なうことなく、効率良く放熱できる点で有用である。
【0031】請求項10に記載の発明にあっては、請求項8項に記載の車両用内装材を、車室内で日射を受け高温になり易い部分であるリアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部の少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることで、これらの車両の部位につき効率的に放熱することが可能である点で有用である。
【0032】請求項11に記載の発明にあっては、請求項8項に記載の車両用内装材を、車室内で日射を受け高温になり易い部分である車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることで、効率的に放熱することが可能である点で有用である。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】本発明の第1の解決手段は、積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線吸収性および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いてなる最裏層との少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。
【0035】上記最表層を構成する可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料としては、下記透過率を満足するものであればよく、特に制限されるべきものではないが、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴムなどの熱可塑性材料が挙げられる。また、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料の形態(形状)としては、特に制限されるべきものではなく、粉体形状、繊維形状、あるいはシート形状等の各種成形形状が挙げられる。可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料として好ましくは熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維であり、より好ましくは透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維である。なお、熱可塑性樹脂では、特に断らない限り形態は問わないものとし、また、熱可塑性繊維では、特にに断らない限り材質は問わないものとする。
【0036】ここで、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料の可視光線および近赤外線の透過率としては、好ましくは60%以上であるが、後述するように最表層として有効に機能するためには、30%を超えるものであればよい。一方、遠赤外線の透過率は、低いほど好ましく、60%未満、好ましくは30%以下である。
【0037】また、上記最表層の形状は、使用用途や使用部位に応じて、見栄え、クッション性、リサイクル性等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂を用いてなるシート形状等の各種成形形状であってもよいし、あるいは熱可塑性繊維をシート形状加工した織物、編物あるいは不織布等であってもよい。さらにこれら織物、編物、あるいは不織布には、立毛加工してなるものを含んでいてもよいなど、各種の繊維加工処理したものが含まれるものである。立毛加工してなるものとしては、例えば、実験例1のタフト表皮のように、立毛層の下層の基布層や基材層に立毛層の繊維(糸)を植毛してカーペット状にしたものや、同じく立ち毛になる繊維(糸)を下層の基布層や基材層の織物、編物、あるいは不織布などの編成中に大きなループとして、基布層や基材層の生地の表面上に突出させ、必要に応じてカットしたものなど、立毛層とその下層を一緒に加工する方法等が挙げられる(図5参照のこと)。
【0038】上記最表層には、上記の性質を阻害しない範囲での着色も可能である。かかる着色には、従来公知の顔料や染料等の着色剤を用いることができる。さらに上記最表層には、上記の性質を阻害しない範囲で従来公知の他の添加剤を用いていてもよい。
【0039】上記最表層では、可視光線および近赤外線の透過率が共に30%を超えるものであり、遠赤外線の透過率が30%未満となるものであればよい。なお、該最表層について、より詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0040】次に、最裏層に吸収性基布層および/または基材層を用いることで、吸収性基布層では、最表層を通過した可視光線および近赤外線を可視光線吸収性および赤外線吸収性材料により吸収し熱に変化させて効率良く裏面へと放射(放熱)することが可能となり、また基材層では、最表層を通過した可視光線および近赤外線を受けた常温遠赤外線放射性充填材より放射される遠赤外線を効率良く裏面へと放射することが可能となる。ここで、最裏層に吸収性基布層と基材層とを併用する場合には、吸収性基布層と基材層とが一体化されて1つの層を形成してもよいし、2層化されていてもよい。2層化されている場合には、吸収性基布層よりも基材層が、より最裏層側になるように形成するのが望ましい。
【0041】ここで、上記吸収性基布層の形成に用いられる上記可視光線および赤外線吸収性材料としては、カーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素類を混練した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴムなどの熱可塑性材料が挙げられる。また、可視光線および赤外線吸収性材料の形態(形状)としては、特に制限されるべきものではなく、粉体形状、繊維形状、あるいはシート形状等の各種成形形状が挙げられる。該吸収性基布層については、詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0042】また、上記基材層の形成に用いられる上記常温遠赤外線放射性充填材としては、遷移金属元素酸化物系のセラミック、天然鉱石および天然炭化物等が知られている。本発明では、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0043】上記遷移金属元素酸化物系のセラミックスとしては、TiO2、SiO2、ZrO2、Al2O3、MgO、BaSO4、MnO2、Fe2O3、ZrSiO2、CoO、CuO、CrO3、TiO、TiN、ZrC、TiC、SnO2等の金属酸化物の微粒子、2MgO・2Al2O3・5SiO2(コージライト)などのこれらの複合金属酸化物の微粒子、さらにネオジウム、ランタン、イットリウム等の希土類金属の酸化物を含むものであり、更に少量のシリカ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、第8族金属酸化物、燐化合物等が含まれていてもよい。上記天然鉱石としては雲母、トルマリン(電気石)、オーラストン等が知られている。上記天然炭化物としては海藻を炭化し微粉末にしたもの及び備長炭に代表される炭類、カーボンブラック、カーボンファイバー等が知られている。
【0044】これらのなかでも、理想黒体に対して80%以上の高い遠赤外線放射率を持つ無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含むものが望ましく、より好ましくはこれらの少なくとも1種からなるものである。
【0045】このような常温遠赤外線放射性充填材は、4〜20μm以上の広い波長範囲にわたる遠赤外線を効率よく放射することができる。ここで、4〜20μm以上としたのは、4μm以上の波長範囲を遠赤外線とする場合と、20μm以上の波長範囲を遠赤外線とする場合があるが、上記常温遠赤外線放射性充填材は、いずれであってもよいためである。なお、本明細書中の遠赤外線放射率は、2000〜100000nmの波長範囲にわたる遠赤外線を測定するものとする。
【0046】また、上記基材層としては、常温遠赤外線放射性充填材を含むものであればよく、基材層が常温遠赤外線放射性充填材からなるものも本発明の範囲に含まれるものとする。基材層への常温遠赤外線放射性充填材の含有のし方としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、基材層の主原料である熱可塑性材料に常温遠赤外線放射性充填材を混練してもよいし、熱可塑性材料、特に熱可塑性繊維表面に常温遠赤外線放射性充填材を固着してもよいし、熱可塑性材料を用いて基材層の形に形成した後、該基材層表面に常温遠赤外線放射性充填材を固着してもよいが、均一分散性、耐久性等の観点からは、熱可塑性材料に混練するのが望ましい。さらに、上記基材層が常温遠赤外線放射性充填材からなる場合としては、例えば、常温遠赤外線放射性充填材の1種であるカーボンファイバーを不織布化した不織布を基材層として用いる場合などが挙げられるが、これらに制限されるものはない。こうすることで、該充填材の高い常温遠赤外線放射性を何ら損なうことなく、放熱用途に優れた基材層とすることも可能である。
【0047】また、基材層には、遠赤外線放射性能を高めるため、常温遠赤外線放射性充填材を1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、基材層の主原料である熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴムなどが挙げられる。熱可塑性材料の形態(形状)としては、粉体形状、繊維形状、あるいはシート形状等の各種成形形状が挙げられる。熱可塑性材料として、好ましくは熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維である。
【0048】上記基材層の形状は、使用用途や使用部位に応じて、見栄え(意匠性)、クッション性、リサイクル性、吸音性等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、シート形状等の各種成形形状であってもよいし、あるいは繊維をシート形状加工した織物、編物あるいは不織布等であってもよい。さらにこれら織物、編物、あるいは不織布は、各種加工処理を施したものが含まれるものである。
【0049】上記基材層の形成において、常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性材料へ混練する場合の総量は、シート状加工、紡績等の加工性を維持するための物性を確保する必要があり、熱可塑性材料の全質量に対して1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%を混練する。熱可塑性材料のうち、熱可塑性繊維表面に固着剤等を用いて固定(固着)する場合は、特に制約される条件はなく、遠赤外線放射性能、製品での洗濯耐久性、風合い等を考慮して繊維質量に対して1〜40質量%、好ましくは、3〜20質量%を固定する。
【0050】基材層に用いる常温遠赤外線放射性充填材として用いる材料の遠赤外線放射率は、理想黒体に対して70%以上の遠赤外線放射率を持つものが好ましい。より好ましくは80%以上とすることで、非常に効率良く遠赤外線を放射することが可能になる。遠赤外線放射量は、温度が高い程放射量は多く放射されるが、繊維製品の場合は低温近くの温度、即ち30〜40℃で高い放射能力を持つものが良いがここでは特に限定は行わない。なお、該基材層について、より詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0051】一般にこれらのような常温遠赤外線放射性充填材は、手袋、靴下といった衣類等の繊維に混練され保温素材として用いられることが多い。この場合は、熱源側での温度を保持することが目的で遠赤外線放射物質を用いる。
【0052】本発明では、これらの素材を放熱材の最裏層の基材層の充填材として、熱源からの放熱用途として用いることで、効率良く放熱をすることが可能となることを見出したものである。なお、該基材層について、より詳しくは後述する好適な実施形態において説明する。
【0053】次に、本発明の第1の解決手段の好適な実施形態としては、最表層が透明な熱可塑性樹脂または繊維からなる立毛層からなり、その直下層が明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなり、さらにその下層に常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層とからなる少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。かかる好適な実施形態とすることで、さらに放熱性能が向上する。
【0054】先述のとおり最表層では、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料を用いることで、表面での遠赤外線の放射を押さえることが出来、またその下層から放射される遠赤外線を透過しないので、温度の上昇を防ぐことが出来る。また、好適な実施形態では、該最表層を立毛層とすることで、車両用内装材として用いる際には見栄えも確保される。また、好適な実施形態では、透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維を用いることで、この立毛層が透明であること、すなわち可視光線および近赤外線に対して吸収性を示さないことで、最表層での熱の発生を抑えられる。ここで言う透明とは、JIS K 7105で定義される全光線透過率が60%以上あることを言う。この透過率以上である立毛層を組み合わせることで、放熱性能はより向上する。
【0055】これらの熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に用いる代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂(ポリアクリロニトリル系樹脂)、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に好適な実施形態では、透明な材質のものを用いればよい。
【0056】また、リサイクル性を考慮すれば熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることが望ましい。
【0057】これらの熱可塑性樹脂からなる繊維は、機械強度、加工性、流通性の点からは、ポリエステルを主成分とすることが望ましい。本発明でいうポリエステルとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリεカプロラクトン(PCL)等のほか、PETのエチレングリコール成分を他の異なるグリコール成分で置換したもの(例えばポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT))、またはテレフタル酸成分を他の異なる2塩基酸成分で置換したもの(ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN))等である。また、これらポリエステルを構成ユニットとした共重合ポリエステル、例えば、PBTとポリテトラメチレングリコール(PTMG)のブロック共重合体、PETとPEIの共重合体、PBTとPBIの共重合体、PBTとPCLの共重合体など主たる繰返し単位がポリエステルからなる共重合体でも構わない。
【0058】これらの熱可塑性樹脂からなる繊維を用いて最表層、特に立毛層を形成する上で、必要に応じて、該最表層は接着成分を含んでいてもよい。かかる接着成分としては、芯鞘型、サイドバイサイド型等のバインダー繊維を用いるのが好適であるが、特に限定は行なわない。接着成分を用いることで、最表層、特に立毛層の腰や張り、クッション性などの復元力や耐久力を向上することができる。
【0059】また、最表層を構成する熱可塑性繊維材としてフェルト(著しくもつれた繊維で構成されているシート状のものを言う)を用いた場合には、接着成分は、主に熱硬化性樹脂が用いられるが特に問題は無く、熱可塑性樹脂、バインダー繊維を用いることも可能である。なお、立毛層以外にも、後述する基布層や基材層などにも、同様の接着成分を含んでいてもよい。
【0060】なお、最表層の厚さは、車内用内装材などその使用用途や使用部位等に応じて、クッション性、意匠性、見栄えなどを考慮して適宜決定されるものであり、特に制限されるべきものではなく、図1や図2に示すような従来の車内用内装材に使われていた最表層(立毛層)と同程度の厚さであれば十分であるが、特に可視光線および近赤外線の透過に適した厚さは、3〜5mm程度である。
【0061】次に、上記最表層(立毛層)の直下層は、明度0.1〜6の熱可塑製樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなるものである。最表層の直下層が明度0.1〜6の吸収性基布層であることで、表面の見栄え、意匠性も確保される。さらにまた、この吸収性基布層がこの明度の範囲で着色されていることで、先述のとおり、効率の良い可視光線および近赤外線の吸収が可能となる。ここで言う明度とは、JIS Z 8721に定義されるマンセル表色系の中の明度を示している。ここで、色相、クロマ(彩度)に特に触れていないのは、明度がこの値の範囲内であれば、どの色相、クロマでも十分な可視光線および近赤外線の吸収が行われる。また、有彩色、無彩色についても特に限定を行わないのも同様の理由である。
【0062】この吸収性基布層を上記明度の範囲に着色する方法としては、(吸収性基布層またはその材料の)表面に塗料を塗布する、原着(原液着色の略称であり、原料樹脂に紡糸段階で有機顔料や染料を添加して着色する方法をいう)、染色、粒体の混練等のどの手段でもかまわない。可視光線および赤外線吸収性材料として、明度0.1〜6となるように着色された熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維を用いることで、可視光線および近赤外線を効率良く吸収することが可能となる。好ましくは、吸収性基布層が明度0.1〜6の熱可塑性繊維からなることで形状自由度、成形性が向上する。また、リサイクルの点でも、開繊することでの再利用も可能となる。
【0063】なお、明度0.1〜6となるように着色される前の熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維には、上記最表層(立毛層)を構成する熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維と同様のものが利用可能である。
【0064】なお、吸収性基布層の厚さは、車内用内装材などその使用用途や使用部位等に応じて、クッション性、意匠性、見栄えなどを考慮して適宜決定されるものであり、特に制限されるべきものではなく、図1や図2に示すような従来の車内用内装材に使われていた基布層と同程度の厚さであれば十分である。
【0065】この吸収性基布層で吸収された可視光線および近赤外線は、遠赤外線として放射される(これは、好適な可視光線および赤外線吸収材料であるカーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素系の材料は、常温遠赤外線放射性充填材でもあるため、可視光線および近赤外線を吸収して発生した熱により遠赤外線を放射することができるためである。)が、最表層(立毛層)側では遠赤外線の透過性が小さいため、さらに下層である基材層に吸収されることになる。そこでこの基材層に常温遠赤外線放射性充填材を含ませておくことで、裏面側への効率の良い放熱が可能となる。
【0066】好ましくは、基材層が繊維からなることで、内装材にクッション性を持たせることが出来、また、リサイクルの点でも、開繊することでの再利用も可能となる。
【0067】それぞれの層に、上記の機能を持たせた3層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層側から吸収し裏面側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。
【0068】好ましくは、上記吸収性基布層は、明度0.1〜6となるように、熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなること、さらに好ましくは熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維にカーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練して着色されたものを用いることである。かかる構成とすることで、より効率良く放熱をすることが可能になる。
【0069】また、上記吸収性基布層が明度0.1〜6となるように着色するのに用いる材料としては、カーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素からなるものを用いることが好ましい。これは、炭素系の材料の可視光線および近赤外線の吸収効率が良いためであり、少量の混練、例えば、吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維質量に対して0.1質量%程度の混練でも吸収効率が大きく向上される。混練量の上限としては30質量%が目安となる。これ以下の量の混練で明度は充分に下げることが出来、可視光線および近赤外線の吸収を充分に行うことが出来る。
【0070】なお、発明の第1の解決手段による放熱材は、上記最表層および最裏層の2層以上、好ましくは上記立毛層、吸収性基布層および基材層の3層以上を有するものであればよく、本発明の作用効果を損なわない範囲でさらに他の層を積層してなるものであってもよい。
【0071】以上が本発明の第1の解決手段の実施形態の構成要件ごとの説明である。以下、かかる実施の形態を図面を用いて説明する。
【0072】図5は、本発明の第1の解決手段の代表的な一つの実施形態である2層からなる放熱材による車内用内装材を示す側断面模式図である。また、図6は、本発明の第1の解決手段の好適な実施形態である3層からなる放熱材による車内用内装材を示す側断面模式図である。図7は、図5の放熱材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。図8は、図6の放熱材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。
【0073】自動車等の車両用フロアカーペットなどに用いられる車内用内装材等として使われる、本発明の第1の解決手段による放熱材の構成としては、図5に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部および基布層13が形成されてなる最裏層の基布部からなる2層構造の放熱材5、あるいは図2に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部、基布層13が形成されてなる最表層の直下層である基布部、さらに基材層15が形成されてなる基布層の下層の最裏層である基材部からなる3層構造の放熱材6などが例示できる。これら各部の構成により、従来と同様に、クッション性や車室内の静粛性(吸音性)を向上することができる。
【0074】さらに、本実施形態の放熱材5、6の最表層の立毛層11は、可視光線および近赤外線を透過する材料12bからできている。また、本実施形態の放熱材5、6の基布層13は、可視光線および近赤外線を吸収する材料14bからなる吸収性基布層であり、立毛層11を安定して固定している。また、放熱材6の最裏層の基材層15は、常温遠赤外線放射性充填材を添加した材料16bからできている。
【0075】本実施形態の放熱材5の構成では、図7に示すように、立毛層11を透過した可視光線および近赤外線20は、吸収性基布層13の表面で吸収され、遠赤外線21として放射されるが、立毛層11での遠赤外線21の透過性が小さいため、主に裏面側へと放射される。また、本実施形態の放熱材6の構成では、図8に示すように、立毛層11を透過し吸収性基布層13で吸収された可視光線および近赤外線20は、図7と同様に、遠赤外線21として放出される。さらにその下層に遠赤外線放射性充填材を添加した基材層15が存在することで、ここでの放射性能も大きくなり、より裏面側へと放射される。このように、本実施形態の放熱材5、6の構成では、それぞれの層に、上記の機能を持たせた2層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層11側から吸収し裏面層の吸収性基布層13や基材層15側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。そのため、例えば、本実施形態の放熱材5、6を用いた車内用内装材等では、従来の構成の内装材に比べ、表皮材の立毛層11での吸熱、車室内への再放射による温度上昇を防止でき、大幅に室外へと放熱する性能が向上される。そのため、真夏の炎天下駐車時の車室内の著しい温度上昇を緩和するのに大いに貢献し得るものである。
【0076】次に、本発明の第2の解決手段は、積層された構造からなる放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維、好ましくは熱可塑性樹脂製の繊維からなる立毛層からなり、その直下層が透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とするものである。かかる構成によっても、従来の構成の内装材に比べ、大幅に室外へと放熱する性能を大きく向上することが可能である。
【0077】本発明の第2の解決手段による放熱材では、先述の第1の解決手段による放熱材の構成とは異なり、最表層の直下層に透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維を用いて可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の透過性基布層とすることで、放熱性能の向上を図るものである。かかる透過性基布層を用いることで、可視光線、近赤外線は立毛層、透過性基布層を透過して、基材層で吸収されることになる。ここで吸収された熱線は、もちろん遠赤外線として放射されるので、立毛層、基布層での遠赤外線の非透過性が必要となる。
【0078】最表層の直下層である透明性基布層が透明であること、すなわち可視光線に対して吸収性を示さないことで、該透明性基布層での熱の発生を抑え、また、その下層が基材層であることで、直接、基材層(放射層)での吸収、放射が行われる。これにより、価格的にも低減された、効率の良い放熱性の内装材が得られる。ここで言う透明とは、先述と同様にJIS K 7105で定義される全光線透過率が60%以上あることを言う。この透過率以上である透過性基布層を組み合わせることで、放熱性能は向上する。
【0079】なお、本発明の第2の解決手段による放熱材の立毛層および基材層については、先述した本発明の第1の解決手段による放熱材の立毛層および基材層と同様である。よって、重複を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0080】また、本発明の第2の解決手段による放熱材の透明性基布層に用いる透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維については、先述した本発明の第1の解決手段による放熱材の立毛層に用いる透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維(さらに言えば、最表層の可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料)と同様である。よって、重複を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0081】なお、発明の第2の解決手段による放熱材は、上記立毛層、透明性基布層および基材層の3層以上を有するものであればよく、本発明の作用効果を損なわない範囲でさらに他の層を積層してなるものであってもよい。
【0082】以上が本発明の第2の解決手段の実施形態の構成要件ごとの説明である。以下、かかる実施の形態を図面を用いて説明する。
【0083】図9は、本発明の第2の解決手段の代表的な一つの実施形態である3層からなる放熱材(による車内用内装材)を示す側断面模式図である。図10は、図9R>9の放熱材における可視光線および近赤外線の入射の様子を模式的に示す側断面模式図である。
【0084】自動車等の車両用フロアカーペットなどに用いられる車内用内装材等として使われる、本発明の第2の解決手段による放熱材の構成としては、図9に示すように、立毛層11が形成されてなる最表層の表皮部、基布層13が形成されてなる最表層の直下層である基布部、さらに基材層15が形成されてなる基布層の下層の最裏層である基材部からなる3層構造の放熱材9が例示できる。これら各部の構成により、従来と同様に、クッション性や車室内の静粛性(吸音性)を向上することができる。
【0085】さらに、本実施形態の放熱材9の最表層の立毛層11は、可視光線および近赤外線を透過する材料12bからできている。また、本実施形態の放熱材9の基布層13は、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の材料14cからなる透過性基布層であり、立毛層11を安定して固定している。また、放熱材9の最裏層の基材層15は、常温遠赤外線放射性充填材を添加した材料16bからできている。
【0086】本実施形態の放熱材9の構成では、図10に示すように、立毛層11および透過性基布層13を透過した可視光線および近赤外線20は、さらにその下層に遠赤外線放射性充填材を添加した基材層15が存在することで、基材層15の表面で吸収され遠赤外線21として裏面側へと放射される。このように、本実施形態の放熱材9の構成では、それぞれの層に、上記の機能を持たせた3層以上が積層されることで、あたかも熱を立毛層11側から吸収し裏面層の基材層15側へと一方向的に流れているかの様な大きな効果を得ることが出来る。そのため、例えば、本実施形態の放熱材9を用いた車内用内装材等では、従来の構成の内装材に比べ、表皮材の立毛層11での吸熱、車室内への再放射による温度上昇を防止でき、大幅に室外へと放熱する性能が向上される。そのため、真夏の炎天下駐車時の車室内の著しい温度上昇を緩和するのに大いに貢献し得るものである。
【0087】また、本発明の放熱材の各層の厚みについては、上述した各実施形態によらず、各層の機能を果たすパラメータは、透過率などで決まるものであるが、適当な厚さとしては、・可視光線および近赤外線の透過に適した厚さ:3〜5mm程度、・可視光線および近赤外線の吸収に適した厚さ:1mm以下、・遠赤外線の放射に適した厚さ:5〜30mm程度、が適当であるが、使用用途や他の特性付与(例えば、意匠性、吸音性、クッション性等)なども考慮して適宜、各層の最適な厚さを決定すればよい。
【0088】また、本発明の放熱材の各層の固定(積層)方法としては、特に制限されるべきものではなく、各層の材質や形態などに応じて、従来公知の固定(積層)方法より適宜最適な方法を利用することができる。例えば、繊維からなる層同士の固定の場合には、織編加工や不織布加工などの繊維加工技術により異なる種類の繊維を多層に積層することもできるなど、特に接着が必須ではないが、固定のためには、
【0089】次に、本発明に係る車両用内装材は、上記した本発明の放熱材を用いることを特徴とするものである。本発明の放熱材を車両用内装材に用いることは有効であるといえる。これは、熱的条件の特に厳しい車両においては、特に車室内の熱を低減することが困難であり、本発明の放熱材を車両用内装材に用いることで効果的に車室外への放熱性能を向上させることが出来るからである。
【0090】本発明の車両用内装材は、フロアカーペット部に用いることが有効である。窓ガラスからの可視光線、近赤外線の入射により暖められる部位として、面積が大きい部位がフロアカーペット部であり、一番効率良く放熱をさせることが出来る部位である。このとき車両用内装材はフロアカーペット部の全面、若しくは一部分に設定することができる。これは、入射光が特定部位にのみ当たる場合は、本発明の車両用内装材を特定部位のみに設定することが経済的であり、効率的な放熱効果が得られるためである。
【0091】また、車両では車室内側が高温になると、非常に若干ではあるが車室内からフロアカーペットを通して、熱が室外に流れていく。本発明の車両用内装材を用いることで、この熱流を大きくすることが出来、また、このことから非常に効率良く室外へと放熱することが可能になる。
【0092】本発明の車両用内装材は、リアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部のの少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることが有効である。
【0093】また、車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることも有効である。
【0094】これらの車両の部位は車室内で日射を受け高温になり易い部分であり、これらの部位に本発明を用いることで効率的に室外に放熱することが可能である。
【0095】本発明に係る車両用内装材を用いることのできる車両の部位の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0096】図11は、本発明に係る車両用内装材を自動車用内装材として用いる場合に、適用し得る車両の部位を説明するための自動車の室内斜視図である。図11に示すように、本発明に係る車両用内装材を自動車用内装材として用いる場合には、ダッシュインシュレータ51、フロアカーペット52、フロアパネルのトンネル部53、リアパーセル部54、インストルメントパネル上部55、ピラー部56、ルーフパネル部57、シート部58等に好適に用いることができる。
【0097】
【作用】本発明の内装材により、従来の構成の内装材に比べ、大幅に室外へと放熱する性能が向上される。
【0098】
【実施例】以下に本発明の実験例を示す。
【0099】実験例1立毛層は、高透過率の無着色のポリエステル繊維(直径70μm)を用いたタフト表皮(その下層の不織布を作成する際に、立毛層の繊維(糸)を植毛してカーペット状としたもの;タフト表皮厚さ(繊維長)3〜10mm程度)とし、基布層は、繊維原料の無着色のポリエステルに、カーボンブラック(粒子径25nm)を2質量%混練し、紡糸してポリエステル繊維(直径40μm)にしたものを不織布化して不織布(目付600g/m2、厚さ5mm)を作成して明度0.2の吸収性基布層とし、立毛層と吸収性基布層とが積層された2層構造の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0100】なお、基布層の繊維原料には、可視光線・近赤外線透過率が82%で、遠赤外線透過率が23%である無着色のポリエステルを使用した。
【0101】実験例2ポリエステルに、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)の無機粉粒体(直径1μm)を5質量%混練した繊維(直径25μm)を用いて不織布(目付1000g/m2、厚さ30mm)を作成し、基材層とした。この基材層を実験例1の吸収性基布層の変わりに用い、直接立毛層をこの基材層の不織布に植毛して積層することで2層構造の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0102】なお、基材層の繊維原料には、可視光線・近赤外線透過率が82%で、遠赤外線透過率が23%である無着色のポリエステルを使用した。
【0103】実験例3実験例1の車両用内装材の基布層裏面に、実験例2で作成した基材層を積層して3層構造の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0104】実験例4基布層として、無着色のポリエステル繊維(直径40μm)を用いた不織布(目付600g/m2、厚さ5mm)を作成し、透過性基布層としたものを用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0105】実験例5基材層に混練する無機粉粒体をTiO2(直径1μm)とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0106】実験例6基材層に混練する無機粉粒体をAl2O3(直径1μm)とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0107】実験例7基材層に混練する無機粉粒体をMgO(直径1μm)とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0108】実験例8基材層に混練する無機粉粒体をSiO2とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0109】実験例9基布層に、カーボンファイバー(繊維径0.2μm、繊維長1μm)を混練したポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度0.3の吸収性基布層とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0110】実験例10立毛層に、高透過率の着色ポリエステル繊維(直径70μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0111】実験例11基布層に、カーボンブラックを1質量%混練したポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度5.2の吸収性基布層とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0112】実験例12基布層に、着色ポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度4.6の基布層とした以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0113】なお、本実験例12の基布層は、明度が大きな値を持つと共に、可視光線・近赤外線透過性で、遠赤外線透過非透過性であるので、吸収性基布層と透過性基布層の両方の性質を併せ持つ、中間的に扱うことのできる基布層の例である。
【0114】比較例1立毛層に低透過率の着色ポリエステル繊維(直径70μm)を用い、基布層に着色ポリエステル繊維(直径40μm)を用い、明度6.8とし、基材層に無着色ポリエステル繊維(直径25μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0115】比較例2基材層に無着色ポリエステル繊維(直径25μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0116】比較例3立毛層に低透過率の着色ポリエステル繊維(直径70μm)を用いた以外は、実験例3と同様の放熱材からなる車両用内装材を得た。
【0117】試験例上記の実験例および比較例において得られた車両用内装材について、以下の試験を実施した。
【0118】試験例1(放熱性能評価)
評価箱の一面にサンプル(車両用内装材)を敷設し、箱内を人工太陽灯で加熱、箱内温度とサンプルの箱外側表面温度をとった。雰囲気条件として、箱内気温を40℃、外部気温を30℃をした。
【0119】試験例2(太陽光線透過率測定)
【0120】
【0121】試験例3(遠赤外線放射率測定)
基材層の遠赤外線放射率の測定は、混練物を含んだ繊維または混練物を含まない繊維を不織布化した不織布に対して、簡易放射率計(D and S AERD)を用いて行った。
【0122】試験例4(遠赤外線放射線量測定)
サンプル(車両用内装材)の遠赤外線放射線量の測定は、B&K製MM0036を用いて、サンプルの裏面層側での放射線量を測定した。
【0123】上記の実験例および比較例において得られた内装材の概要および試験結果を表1、2に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】表2に示す結果において、比較例1の内装材に比較して箱外側表面温度(サンプルの裏面温度)が、3℃以上上昇したものを◎、3℃未満1℃以上上昇したものを○、1℃未満上昇したものを△、温度が同等以下だったものを×で示した。
【0127】表1、2より、実験例で作製した内装材は放熱性能が向上した。
【0128】また、特許請求の範囲から外れる仕様で作製された比較例は、放熱性能が向上しなかった。
【0129】
【発明の効果】本発明の放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材は、従来の構成の内装材に比べ、非常に大きく放熱性能が向上される。そのため、本発明の放熱材およびこれを用いてなる車両用内装材では、放射材の最表部に受けた日射を、放射材の最表部から最裏層、さらには室外へと放熱することができるものであり、車室内への再放射による温度上昇を大幅に低減することができる。
【0130】本発明では、最表層での可視光線や赤外線吸収による吸熱を抑え、かつ車室内へのこれら光線や熱線の再放射を抑制し、さらに最裏層での断熱効果を大幅に低減し、最裏層に達した可視光線や近赤外線を遠赤外線として裏面側に放射することで、効率よく最裏層から室外に放熱することができ、車室内の温度上昇を低減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の内装材を示す側断面模式図である。
【図2】 従来の内装材を示す側断面模式図である。
【図3】 従来の内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図4】 従来の内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図5】 本発明に関る内装材を示す側断面模式図である。
【図6】 本発明に関る内装材を示す側断面模式図である。
【図7】 本発明に関る内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図8】 本発明に関る内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図9】 本発明に関る内装材を示す側断面模式図である。
【図10】 本発明に関る内装材に可視光線、近赤外線が入射される様子を示した模式図である。
【図11】 車両に設置された内装材を車室内側から見た模式図である。
【符号の説明】
1…従来の内装材、 2…従来の内装材、5…本発明の内装材、 6…本発明の内装材、9…本発明の内装材、 11…立毛層、12a…従来の立毛層、12b…可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性の立毛層、13…基布層、 14a…従来の基布層、14b…吸収性基布層、 14c…透過性基布層、15…基材層、 16a…従来の基材層、16b…常温遠赤外線放射性充填材を混練した基材層、20…可視光線および近赤外線、 21…遠赤外線、51…ダッシュロアー部、 52…フロアカーペット部、53…フロアパネルのトンネル部、 54…リアパーセル部、55…インストルメントパネル部、 56…ピラー部、57…ルーフパネル部、 58…シート部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いてなる最裏層と、の少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【請求項2】 積層された構造からなる放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【請求項3】 請求項1または2に記載の放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【請求項4】 吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材。
【請求項5】 吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対し、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを0.1〜30質量%混練してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱材。
【請求項6】 常温遠赤外線放射性充填材として、無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放熱材。
【請求項7】 常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対して1〜40質量%混練または固定してなることを特徴とする請求項6に記載の放熱材。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱材を用いることを特徴とする車両用内装材。
【請求項9】 フロアカーペット部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする請求項8項に記載の車両用内装材。
【請求項10】 リアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部の少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする請求項8項に記載の車両用内装材。
【請求項11】 車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする請求項8項に記載の車両用内装材。
【請求項1】 積層された構成からなる放熱材において、可視光線および近赤外線透過性、遠赤外線非透過性材料からなる最表層と、可視光線および赤外線吸収性材料からなる吸収性基布層および/または常温遠赤外線放射性充填材を含む基材層を用いてなる最裏層と、の少なくとも2層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【請求項2】 積層された構造からなる放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が透明な熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる透過性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【請求項3】 請求項1または2に記載の放熱材において、最表層が透明な熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる立毛層からなり、その直下層が明度0.1〜6の熱可塑樹脂または熱可塑性繊維からなる吸収性基布層からなり、さらにその下層が常温遠赤外線放射性充填材を含む熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維からなる基材層からなる、少なくとも3層以上が積層された構成からなることを特徴とする放熱材。
【請求項4】 吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを混練してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱材。
【請求項5】 吸収性基布層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対し、カーボンブラックおよび/またはカーボンファイバーを0.1〜30質量%混練してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱材。
【請求項6】 常温遠赤外線放射性充填材として、無機粉粒体の、TiO2、Al2O3、MgO、SiO2および2MgO・2Al2O3・5SiO2よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放熱材。
【請求項7】 常温遠赤外線放射性充填材を熱可塑性樹脂または熱可塑性繊維に対して1〜40質量%混練または固定してなることを特徴とする請求項6に記載の放熱材。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の放熱材を用いることを特徴とする車両用内装材。
【請求項9】 フロアカーペット部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする請求項8項に記載の車両用内装材。
【請求項10】 リアパーセル部、インスト部、各種ピラー部、ルーフパネル部およびダッシュロア部の少なくとも1種の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする請求項8項に記載の車両用内装材。
【請求項11】 車両のシート部の全面、若しくは一部に用いることを特徴とする請求項8項に記載の車両用内装材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2003−136618(P2003−136618A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−334623(P2001−334623)
【出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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