説明

放熱板付き配線板およびその製造方法

【課題】単純な構造で、製造工程も簡易であり、かつ放熱効果が高く、コストの面でも有利な放熱板付き配線板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】この放熱板付き配線板1は、貫通孔15を有する配線板2と、平面部3aより突出するバンプ20を有し、貫通孔15に当該バンプ20を挿入した状態で、平面部3aが配線板2に接着される放熱板3と、を有する。この放熱板付き配線板1の製造方法は、押し出し加工によりバンプ20を放熱板3に形成するバンプ形成工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板付き配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における電子部品の小型化、高機能化およびモジュール化などに伴い、電子部品から発生する熱の影響は大きなものとなってきている。このため、電子部品から発生した熱を効果的に外部に放出させることが必要とされている。ここで、電子部品が搭載される配線板に放熱効果を付与するため、樹脂に導電性を付与したもの、および、スルーホールを施したものなどが提案されているが、これらのものは放熱効果として十分ではない。また、配線板の一部にメタルプレートなどを埋め込む方法も知られているが、配線板と筺体もしくは放熱板との取り付けに接着剤が必要となり、製造に手間がかかってしまう。この場合、接着剤が断熱材となってしまう。
【0003】
また、特許文献1には、基板に予め設けられた貫通孔に放熱用のチップを埋め込むとともに発熱する部品と放熱用のチップとの間に充填剤を設け、該充填剤やチップ等を介して基板から外部に熱を放出させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−51088号公報(発明の詳細な説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている構造では、シート状の充填剤を配置し、さらに放熱用のチップを基板の貫通孔に埋め込むことにより、配線板に放熱部が設けられている。しかしながら、放熱部を有する配線板とヒートシンクとを接着する際に何らかの接着剤が必要となり、該接着剤が熱抵抗となって十分な放熱効果を得ることができない。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単純な構造で、製造工程も簡易であり、かつ放熱効果が高く、コストの面でも有利な放熱板付き配線板およびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、貫通孔を有する配線板と、平面部より突出するバンプを有し、貫通孔に当該バンプを挿入した状態で、平面部が配線板に接着される放熱板と、を有するものである。
【0008】
また、貫通孔にはスルーホールメッキが施されることが好ましい。
【0009】
また、バンプの裏側には表側に向かって窪む凹部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、放熱板は導電体により形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の一側面は、配線板に回路を形成する回路形成工程と、その回路形成工程と同時またはその前後において配線板に貫通孔を形成する貫通工程と、押し出し加工により突出部となるバンプを放熱板に形成するバンプ形成工程と、配線板の貫通孔に放熱板のバンプを挿入した状態で、配線板を放熱板に積層させる積層工程と、を有するものである。
【0012】
また、配線板を放熱板に積層させた工程の後の状態では、バンプが配線板の端面よりも突出するようにしても良い。
【0013】
また、積層工程の後に、配線板の表面にメッキを施し、配線板もしくは配線板に形成された回路とバンプとを導通させる蓋メッキ工程を有し、配線板の表面配線層を厚くすると共に、表面配線層の厚さをバンプの部分において薄くしその他の部分において厚くするようにしても良い。
【0014】
また、押し出し加工は、ダボ穴を形成するためのダボ形成加工であることが好ましい。
【0015】
また、バンプ形成工程において、放熱板付き配線板を貫通する貫通穴を同時に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、単純な構造で、製造工程も簡易であり、かつ放熱効果が高く、コストの面でも有利な放熱板付き配線板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板を部分的に切断した断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板を、一例として高周波無線通信装置用の基板に適用した場合を示す図であり、その適用された基板の底面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板の製造方法を説明するための図であり、上段は、第1の回路形成工程、貫通工程およびバンプ形成工程後の状態を説明するための図であり、下段は、積層工程を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板の製造方法を説明するための図であり、上段は、蓋メッキ工程を説明するための図であり、中段は、第2の回路形成工程を説明するための図であり、下段は、穴あけ工程を説明するための図である。
【図6】本発明の変形例を示す図であり、電子部品としてICチップを用いた場合を示す図である。
【図7】本発明の変形例を示す図であり、凹部に導電性部材を圧入した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板1について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図1および図4〜図7に示す矢示X1方向を「表」、矢示X2方向を「裏」とそれぞれ規定する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板1を部分的に切断した断面図である。
【0020】
図1に示すように、放熱板付き配線板1は、配線板となるプリント配線板2と、放熱板3と、プリント配線板2と放熱板3とを接着する接着層となるプリプレグ4とを有する。放熱板付き配線板1は、プリプレグ4を用いて、プリント配線板2と放熱板3とを真空プレスにて積層させることによって形成される。また、放熱板付き配線板1における放熱板3の裏側にはヒートシンク5が取り付けられる。このヒートシンク5は放熱板3に対して接着層6を介して取り付けられる。
【0021】
放熱板付き配線板1には、電気機器等に取り付ける際の取り付け穴となるセット穴7が、該放熱板付き配線板1を表裏に貫通するように設けられている。該セット穴7は、たとえば、ドリル加工により形成することができる。なお、図1では、放熱板付き配線板1とヒートシンク5とをセット穴7を用いてビス止めしない構成とされているが、ヒートシンク5にセット穴7に対応する穴を設け、放熱板付き配線板1とヒートシンク5とをビス止めする構成としても良い。なお、セット穴7にスルーホールメッキ16を施すようにしても良い。この場合、後述する蓋メッキ工程(S5)の前に、セット穴7を設け、スルーホールメッキ16を施すようにする。
【0022】
本実施の形態では、プリント配線板2としては、その表裏両面に多数の配線パターンが施されている両面配線板が採用されているが、片面のみに配線パターンが施されているものとしても良い。この配線パターンは、たとえば銅箔を所定の形態に配置することにより構成される。具体的には、プリント配線板2は、図1に示すように、配線層としての表面配線層10および裏面配線層11と、絶縁層となる中間層12と、表面配線層10と裏面配線層11とを電気的に接続する層間配線13とを有する。
【0023】
プリント配線板2の表面には配線パターンを保護するためのレジスト層14が形成されている。該レジスト層14は、たとえば、ソルダーレジストを塗布することにより形成される。また、プリント配線板2には、表裏方向に向かって貫通する円柱状の貫通孔15が形成されており、該貫通孔15の内周面にはスルーホールメッキ16が施されている。このスルーホールメッキ16は、表面配線層10と裏面配線層11とを電気的に接続する役割も果たしている。なお、このスルーホールメッキ16は省略しても良い。貫通孔15は、たとえば、ドリルもしくはレーザを用いて形成することができる。
【0024】
また、プリント配線板2の表面には発光ダイオード17に代表される電子部品が実装されている。発光ダイオード17は、表面実装タイプのものであり表面配線層10に接続されている。なお、貫通孔15の形状は、円柱形に限定されるものではなく、角柱状等の他の形状に形成するようにしても良い。本実施の形態では、プリント配線板2として、厚み寸法が0.34mmのものが採用されているが、他の厚み寸法のものを採用しても良い。
【0025】
上述したように、プリント配線板2の裏側には放熱板3が配設される。放熱板3は、プリント配線板2で発生した熱を放熱板付き配線板1の外側に放出する役割を果たす。図1に示すように、放熱板3には平面部3aより表側に向かって突出する突出部となるバンプ20が設けられている。該バンプ20は、貫通孔15の形状に対応するように略円柱状に突出形成されている。放熱板3は、バンプ20を貫通孔15の内側に挿入する形態で、プリント配線板2の裏側に配置される。このため、プリプレグ4を介してプリント配線板2の裏側に放熱板3を配置した状態では、バンプ20は貫通孔15の内側に嵌まり込む。該バンプ20は、表面配線層10が中間層12と接触している端面から表側に向かって若干突出している。
【0026】
なお、バンプ20の形状は、貫通孔15の形状にぴったり対応するものや略対応するものであれば、略円柱状に限定されるものではない。たとえば、四角柱状の貫通孔15とし、その中に円柱状のバンプ20を挿入するものであっても良い。一方、バンプ20はプレス加工に代表される押し出し加工(突出成形)により形成されるため、放熱板3の裏側には、表側に向かって窪む円柱状の凹部21が形成される。この凹部21はバンプ20と対向する位置に設けられる。
【0027】
本実施の形態では、放熱板3は銅から形成されているが、放熱板3の材料として、アルミニウムもしくは鉄等の熱伝導率が大きくかつ導電性を有する金属を採用するようにしても良い。また、放熱板3の材料として、アルミニウム合金等の合金を採用しても良い。本実施の形態では、放熱板3として、厚み寸法が0.8mmのものが採用されているが、他の厚み寸法のものを採用しても良い。また、パンプ20の突出高さは、放熱板3の厚み寸法の約半分となる0.44mmとされている。しかし、バンプ20の高さ寸法は、たとえば放熱板3の厚みがより大きな場合、放熱板3の厚み寸法の約1/3とする等、他の寸法に形成しても良い。このように、バンプ20の突出高さを放熱板3の厚みの1/3以上とし2/3以下とするのが薄型化と強度の面で好ましい。
【0028】
プリプレグ4は、たとえばエポキシ系の樹脂をガラス繊維シートに含浸させることにより形成することができる。本実施の形態では、プリプレグ4として、GEA−67N(日立化成工業製)が採用されている。しかしながら、プリプレグ4は、本実施の形態で採用されているものに限定されず、たとえば、熱硬化性樹脂等から形成されるシートを採用しても良い。上述したように、プリプレグ4は、放熱板3とプリント配線板2との間に介在することで、放熱板3とプリント配線板2とを接着している。図1に示すように、プリプレグ4は、放熱板3との間に平面状の形態で介在する平面部4aと、バンプ20との間に略円周状の形態で介在する周状部4bとを有する。周状部4bは、表面配線層10が中間層12と接触している端面よりも表側に突出し、その突出はバンプ20と同じ突出量となっている。
【0029】
図1に示すように、放熱板付き配線板1の裏面には平板状のヒートシンク5が取り付けられる。ヒートシンク5は熱伝導率の大きな銅やアルミニウム等から形成することができる。このため、プリント配線板2から放熱板3に放出された熱は、ヒートシンク5を介して外部に放出されることになる。ヒートシンク5は放熱板3に対して接着層6を介して固定される。接着層6は接着剤を塗布することにより形成され、該塗布された接着剤の一部は凹部21の内部に入り込んで突出部22を形成する。このように、凹部21に接着層6を構成する突出部22が嵌まり込むことで、ヒートシンク5の放熱板3に対する位置固定の強度が向上する。
【0030】
図2は、本発明の一実施の形態に係る放熱板付き配線板1を、一例として高周波無線通信装置用の基板に適用した場合を示す図であり、その適用された基板30の底面図である。
【0031】
基板30は、本実施の形態に係る放熱板付き配線板1を、高周波無線通信装置用の基板に適用した形態である。図2に示すように、基板30は、略矩形状を呈した平板状に形成されている。基板30には、合計19個のセット穴7が設けられている。また、図2における左右方向の中央上方、右下方および左下方の3箇所の位置に凹部21が設けられている。また、図2における右下方および左下方に設けられる凹部21の近傍には、高周波無線通信装置のケーブル等を通すための貫通穴31が設けられている。該貫通穴31は長穴として形成されている。基板30の表側には、不図示の電子部品が実装されるとともに不図示の配線パターンが形成されている。
【0032】
次に、放熱板付き配線板1の製造方法について説明する。
【0033】
図3は、放熱板付き配線板1の製造方法を示すフローチャートである。図4は、放熱板付き配線板1の製造方法を説明するための図であり、上段は、第1の回路形成工程、貫通工程およびバンプ形成工程後の状態を説明するための図であり、下段は、積層工程を説明するための図である。図5は、放熱板付き配線板1の製造方法を説明するための図であり、上段は、蓋メッキ工程を説明するための図であり、中段は、第2の回路形成工程を説明するための図であり、下段は、穴あけ工程を説明するための図である。
【0034】
まず、図4上段に示すように、プリント配線板2を用意し、その裏面にのみ配線パターンとなる回路を形成する。具体的には、裏面配線層11の裏側に、たとえばエッチングにより回路を形成する(第1の回路形成工程:S1)。次に、プリント配線板2の所定の位置に貫通孔15を形成する(貫通工程:S2)。該貫通孔15は、たとえば、ドリルもしくはレーザを用いて形成することができる。貫通孔15の形状は、バンプ20の外形に対応するような円柱形に形成される。なお、バンプ20の形状が角柱状等の他の形状の場合は、円柱形に限定しなくても良い。また、貫通工程(S2)を第1の回路形成工程と同時またはその前に行うようにしても良い。さらに、貫通孔15の内周面にスルーホールメッキ16を施す。なお、必要に応じて、スルーホールメッキ16を施さないようにしても良い。
【0035】
また、図4上段に示すように、放熱板3を用意し、押し出し加工となるプレス加工により、該放熱板3にバンプ20を形成する(バンプ形成工程:S3)。放熱板3としては、銅、アルミニウムもしくは鉄等の熱伝導率の大きな金属からなるものが好ましい。なお、押し出し加工として、プレス加工以外の加工方法を採用しても良い。具体的には、バンプ20は、たとえば、放熱板3の表側に配置された不図示の雌金型と放熱板3の裏側に配置された不図示の雄金型に高い圧力を加えてプレスすることにより形成される。この際、不図示の雄金型の突出部が不図示の雌金型の凹部の方向に移動することにより、放熱板3が塑性変形し、バンプ20が形成される。このため、バンプ20と同時に放熱板3の裏側に凹部21が形成されることになる。それゆえ、プレス加工は、ダボ穴となる凹部21を形成するためのダボ形成加工ともなる。
【0036】
バンプ20の高さ寸法は、プリント配線板2の厚み寸法と、後述する圧着後のプリプレグ4の厚み寸法との約合計寸法となるように形成される。上述したように、本実施の形態では、放熱板3として、厚み寸法が0.8mmのものが採用されており、パンプ20は、その高さ寸法が、放熱板3の厚み寸法の約半分となる0.44mmとなるように形成されている。なお、本実施の形態では、バンプ形成工程において、凹部21と同時に、高周波無線通信装置用の基板30に貫通穴31をプレス加工にて形成する。
【0037】
図4上段に示すように、プリント配線板2と放熱板3との間に、プリプレグ4を配置させる。該プリプレグ4には、バンプ20に対応するように、貫通孔4cが形成されている。そして、プリント配線板2の貫通孔15に放熱板3のバンプ20が挿入可能となるように、プリント配線板2、プリプレグ4および放熱板3の位置合わせを行う。その後、プリント配線板2、プリプレグ4および放熱板3を真空プレスにて積層させる(積層工程:S4)。これにより、プリプレグ4は、プリント配線板2と放熱板3との間に介在して両者を接着する。積層した状態では、バンプ20は、この状態時の表面配線層10の表面よりも表側に向かって若干突出する。なお、バンプ20の先端を表面配線層10の表面よりも突出させないようにしても良い。その場合、表面配線層10のセンター(厚さ方向の中央)と表面配線層10の表面との間に、バンプ20の先端が来るようにするのが好ましい。
【0038】
また、プリプレグ4は、積層工程(S4)において、プリント配線板2と放熱板3との間で引き延ばされ、バンプ20とスルーホールメッキ16との間の空間に入り込む。すなわち、図4下段に示すように、平面部4aと、周状部4bとを有するように変形する。周状部4bは、プリント配線板2の表面配線層10よりも表側に突出している。このため、積層工程(S4)後の状態では、プリント配線板2とバンプ20との間の電気的な接続が遮断された状態となる。なお、積層工程(S4)後に周状部4bおよびバンプ20においてプリント配線板2から表側に突出した部分を研磨して除去する。これによって、バンプ20の先端平面の面積を大きくし、放熱性を高くしている。しかし、表側への突出部分を除去しないようにしても良い。本実施の形態では、プリプレグ4として、GEA−67N(日立化成工業製)が採用されている。しかしながら、プリプレグ4は、本実施の形態で採用されているものに限定されず、たとえば、熱硬化性樹脂等から形成されるシートを採用しても良い。
【0039】
次に、図5上段に示すように、プリント配線板2の表面にメッキ処理によりメッキを施し、プリント配線板2とバンプ20とを導通可能な状態とする(蓋メッキ工程:S5)。具体的には、プリント配線板2における表面配線層10の表側にメッキが施され、表面配線層10の厚さが増すこととなる。これにより、周状部4bの突出部分の表側がメッキに覆われ、プリント配線板2とバンプ20とが導通状態となる。なお、メッキ処理は電解メッキもしくは無電解メッキにより行うことが可能である。
【0040】
次に、蓋メッキ工程後のプリント配線板2の表面にエッチングにより回路を形成する(第2の回路形成工程:S6)。具体的には、プリント配線板2における表面配線層10の表面にエッチングにより回路を形成する。
【0041】
次に、外部環境から回路パターンを保護するために、プリント配線板2の表面にレジスト処理を施しレジスト層14を形成する(図5中段参照)。レジスト処理は、ソルダーレジストを塗布し回路パターンを形成することによりなされる。ソルダーレジストの塗布方法としては、スクリーン印刷法、カーテン法および静電スプレー法を挙げることができる。さらに、レジスト処理後のプリント配線板2の表面に、たとえば、無電解Ni・Au処理もしくは電解Ni・Au処理により表面処理を行う。なお、レジスト処理および/または表面処理は必須ではなく適宜、必要な状況に応じて行うようにしても良い。
【0042】
次に、図5下段に示すように、放熱板付き配線板1の表裏を貫通するようにセット穴7を設ける(穴あけ工程:S7)。セット穴7は、電気機器等に取り付ける際の取り付け穴であり、ドリル加工により形成される。なお、セット穴7を、レーザ加工等ドリル加工以外の方法で形成するようにしても良い。加えて、放熱板付き配線板1をその仕様に応じた形状とするために、外形加工を行う。以上の工程を経て放熱板付き配線板1が製造される。なお、セット穴7にスルーホールメッキ16を施す場合は、蓋メッキ工程(S5)前に行うようにする。
【0043】
また、必要に応じて、製造された放熱板付き配線板1の表面に、発光ダイオード17などの電子部品が実装される(図1参照)。さらに、外部への放熱効果を向上させるべく、放熱板付き配線板1の裏側にヒートシンク5が取り付けられる。ヒートシンク5は、接着層6を介在させて放熱板3の裏側に取り付けられる。具体的には、放熱板3の裏側もしくはヒートシンク5の表側または両者に接着剤を塗布し、該ヒートシンク5を放熱板3の裏側に密着させる。すると、接着剤が固着して接着層6となり、該接着層6を介して放熱板付き配線板1の裏側にヒートシンク5が取り付けられる。この際、塗布された接着剤の一部は凹部21の内部に入り込み、図1に示すように、表側に突出する突出部22が形成される。このように、凹部21に接着層6を構成する突出部22が嵌まり込むことで、ヒートシンク5の放熱板3に対する位置固定の強度が向上する。
【0044】
以上のように、放熱板付き配線板1の裏側にヒートシンク5が取り付けられる。その結果、プリント配線板2から放熱板3に伝達された熱を、ヒートシンク5を介して外部に効率良く放出することができることになる。また、ヒートシンク5と放熱板付き配線板1とがしっかりと位置決めされ固定される。
【0045】
以上のように構成された放熱板付き配線板1では、バンプ20を有する放熱板3がプリント配線板2の裏側に取り付けられているため、実装されている電子部品から発生する熱を、バンプ20および放熱板3を経由して外部に放出することができる。このため、放熱板付き配線板1から外部に熱を効果的に放出することができ、放熱板付き配線板1の熱による損傷を防止することができる。また、放熱板3を、熱伝導率が大きくかつ導電性を有する銅から形成しているため、熱抵抗を小さくすることができ、より放熱効果を高めることが可能となる。
【0046】
また、放熱板付き配線板1では、プレス加工によりバンプ20が形成される。このため、突出部となるバンプ20を容易に形成することができ、放熱板付き配線板1の構成を簡易化することができる。また、バンプ20が接着層等を介することなく放熱板3と一体に形成されている。このため、熱抵抗となるものが介在することがなくなり、その分、放熱効果を高めることができる。
【0047】
また、バンプ20はプレス加工により形成されている。このため、エッチングもしくはメッキ等を用いる場合と比較して、コストを抑えることが可能となる。また、プレス加工を用いることで、エッチングもしくはメッキ等を用いる場合と比較して、バンプ20の高さの調節が容易となる。また、プレス加工を用いているため、放熱板の平板状のベース部分の厚みを変えることによって、容易にバンプ20の高さを調節することができる。
【0048】
また、放熱板付き配線板1では、プリント配線板2の貫通孔15の内周面にスルーホールメッキ16が施されている。このため、貫通孔15が形成されていても、表面配線層10と裏面配線層11との電気的な接続性能がアップする。
【0049】
また、放熱板付き配線板1では、蓋メッキ工程により表面配線層10にはさらにメッキ処理がなされている。このため、プリプレグ4の周状部4bの表面をメッキが覆う構成となり、プリント配線板2の表面側の回路とバンプ20との間の電気的な接続が遮断されるのを防止でき、導通状態を維持できる。
【0050】
また、放熱板付き配線板1では、プリント配線板2の表面にはレジスト層14が形成されているため、放熱板付き配線板1の回路パターンを外部環境から保護することができ、放熱板付き配線板1がショートすることを防止できる。
【0051】
また、放熱板付き配線板1の裏側にはヒートシンク5が取り付けられる。このため、プリント配線板2から放熱板3に伝達された熱を、ヒートシンク5を介して外部に効率良く放出することができる。また、接着層6における突出部22が凹部21に嵌まり込む構成となるため、ヒートシンク5の放熱板3に対する位置固定の強度が向上するとともに位置決めが容易となる。
【0052】
また、放熱板付き配線板1の製造方法では、バンプ形成工程(S3)においてプレス加工を用いてバンプ20を形成している。このため、エッチングもしくはメッキ処理等を用いてバンプ20を形成する場合と比較して、コストを抑えることが可能となるとともに、バンプ20の高さの調節が容易となる。また、放熱板の平板状のベース部分の厚みを変えることによって、容易にバンプ20の高さを調節することができる。なお、プレス加工は、作製の際に使用するワークサイズにて行うようにしても良いし、NCプレス(タレットパンチプレス)にてダボ部分の型を形成するようにしても良い。NCプレスを採用する場合、バンプ形状のみを決めておけば、そのレイアウトを自由に行うことができる。
【0053】
また、放熱板付き配線板1の製造方法では、積層工程(S4)において、プリント配線板2および放熱板3の間にプリプレグ4を介在させ真空プレスにて積層させている。このため、プリント配線板2と放熱板3を接着剤によって接着させる等の余分な工程を省くことができ、製造工程の簡易化を図ることが可能となる。
【0054】
また、放熱板付き配線板1の製造方法では、蓋メッキ工程(S5)において、プリント配線板2の表面にメッキ処理を施すため、バンプ20とプリント配線板2との間にプリプレグ4等の非導電部材が介在することがなくなり、プリント配線板2の導電性を確保することが可能となる。また、バンプ20を覆う蓋メッキ工程(S5)を有することにより、バンプ20と、バンプ20の周囲にあった表面配線層10(図4の下段参照)とが厚い表面配線層10によって覆われることで、完全に導通する。このため、導通性を確保するために、通常なら、絶縁性のプリプレグ4の周状部4bの先端を大きく除去する必要があるが、バンプ20を覆う蓋メッキ工程(5S)を採用することで、絶縁性のプリプレグ4の周状部4bの先端を大きく除去する必要がなくなる。
【0055】
また、バンプ形成工程(S3)においてプレス加工を用いてバンプ20を形成するため、放熱板3の裏側にはダボ穴となる凹部21が形成される。このため、バンプ形成工程(S3)の前後において放熱板3の体積が変化することがなくなり、放熱効果の著しい変動を防止できる。
【0056】
また、バンプ形成工程(S3)では、凹部21と同時に、高周波無線通信装置用の基板30に貫通穴31を形成している。このため、より製造工程の簡易化を図ることが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の一実施の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0058】
上述の実施の形態では、バンプ20を押し出し加工の一種であるプレス加工によって形成しているが、バンプ20を他の方法で形成するようにしても良い。たとえば、放熱板3に穴を開け、該穴に突出部材を圧入すると共に、平面部3aから突出部材を突出させる構成としても良い。
【0059】
また、上述の実施の形態では、バンプ形成工程において、凹部21と同時に、高周波無線通信装置用の基板30に貫通穴31を形成しているが、両者を別個に形成するようにしても良い。
【0060】
また、上述の実施の形態では、プリント配線板2は単層の配線板とされているが、プリント配線板2として多層に積層された多層板を用いても良い。また、上述の実施の形態では、プリント配線板2に実装される電子部品として、発光ダイオード17が示されているが、図6に示すように、たとえば、ICチップ30等の他の電子部品を接着剤などを利用して実装するようにしても良い。
【0061】
また、上述の実施の形態では、凹部21の内部は中空な状態となっているが、図7に示すように、凹部21に銅や鉄等の導電性を有する導電性部材31を圧入するようにしても良い。このような構成により、放熱板3の熱伝導性が大きくなり、放熱効果を向上させることができる。また、上述の実施の形態では、接着層6に突出部22を有する構成とされているが、接着層6に突出部22を設けないようにしても良い。
【0062】
また、上述の実施の形態では、バンプ20およびプリプレグ4の周状部4bが最初に形成されていた表面配線層10より突出する構成とされているが、バンプ20およびプリプレグ4の周状部4bが最初に形成されていた表面配線層10よりも突出しない構成としても良い。
【0063】
また、上述の実施の形態では、第1の回路形成工程においてプリント配線板2の裏面に回路を形成し、第2の回路形成工程においてプリント配線板2の表面に回路を形成しているが、第1の回路形成工程においてプリント配線板の表裏両面に回路を形成するようにしても良い。なお、この場合は、蓋メッキ工程(S5)が省略される。
【0064】
また、上述の実施の形態では、放熱板付き配線板1を、高周波無線通信装置用の基板30に適用する例を示しているが、放熱板付き配線板1をパーソナルコンピュータ等、他の装置用の基板30に適用しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1…放熱板付き配線板、2…プリント配線板(配線板)、3…放熱板、3a…平面部、4…プリプレグ、10…表面配線層、15…貫通孔、16…スルーホールメッキ、20…バンプ、21…凹部、ダボ穴、31…貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する配線板と、
平面部より突出するバンプを有し、前記貫通孔に当該バンプを挿入した状態で、前記平面部が前記配線板に接着される放熱板と、
を有することを特徴とする放熱板付き配線板。
【請求項2】
請求項1記載の放熱板付き配線板において、
前記貫通孔にはスルーホールメッキが施されることを特徴とする放熱板付き配線板。
【請求項3】
請求項1または2記載の放熱板付き配線板において、
前記バンプの裏側には表側に向かって窪む凹部が形成されていることを特徴とする放熱板付き配線板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱板付き配線板において、
前記放熱板は導電体により形成されていることを特徴とする放熱板付き配線板。
【請求項5】
配線板に回路を形成する回路形成工程と、
その回路形成工程と同時またはその前後において配線板に貫通孔を形成する貫通工程と、
押し出し加工により突出部となるバンプを放熱板に形成するバンプ形成工程と、
前記配線板の前記貫通孔に前記放熱板の前記バンプを挿入した状態で、前記配線板を前記放熱板に積層させる積層工程と、
を有することを特徴とする放熱板付き配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の放熱板付き配線板の製造方法において、
前記配線板を前記放熱板に積層させた工程の後の状態では、前記バンプが前記配線板の端面よりも突出していることを特徴とする放熱板付き配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の放熱板付き配線板の製造方法において、
前記積層工程の後に、前記配線板の表面にメッキを施し、前記配線板もしくは前記配線板に形成された前記回路と前記バンプとを導通させる蓋メッキ工程を有し、前記配線板の表面配線層を厚くすると共に、前記表面配線層の厚さを前記バンプの部分において薄くしその他の部分において厚くしたことを特徴とする放熱板付き配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の放熱板付き配線板の製造方法において、
前記押し出し加工は、ダボ穴を形成するためのダボ形成加工であることを特徴とする放熱板付き配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の放熱板付き配線板の製造方法において、
前記バンプ形成工程において、前記放熱板付き配線板を貫通する貫通穴を同時に形成することを特徴とする放熱板付き配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98185(P2013−98185A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236460(P2011−236460)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(595068195)株式会社アイン (9)
【Fターム(参考)】