説明

放熱板取付構造

【課題】 母基板に実装される補助基板上に実装された発熱対象部品を、省スペースでかつ安価に絶縁距離を確保しながら放熱できる放熱板取付構造を提供する。
【解決手段】 放熱板取付構造は、補助基板12と、補助基板12上に実装される放熱対象部品11と、放熱対象部品11の周囲に充填され、絶縁および熱伝導を兼ねる樹脂製品17と、補助基板12に樹脂製品17を介して配置される放熱板13とから構成されて母基板に実装される補助基板回路部10を備え、樹脂製品17は、高粘度であり、放熱板13を固定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母基板に実装される補助基板を有する放熱板取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路基板の一面において電子部品がはんだ固定されるとともに発熱量の大きい電子部品が一面に表面実装され、回路基板の一面と容器の内側面との間にのみ樹脂が充填される放熱板取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来より、ケースの側壁に対向するようにサブ基板が設けられ、サブ基板のケースに対向する面に電子部品のうちの放熱を必要とする発熱電子部品が面実装される放熱板取付構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、従来より、縦型サブ基板と、縦型サブ基板上に縦型サブ基板と平行に対面するように実装されたSIP型半導体素子と、縦型サブ基板およびSIP型半導体素子を囲うように成形された放熱板と、縦型サブ基板の端部に配置された基板端子によって電気的に接続されることで縦型サブ基板を実装したメイン基板と、放熱板の内側に少なくとも縦型サブ基板とSIP型半導体素子の電気的接続部を覆うようにポッティング材を充填した放熱板取付構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−141676号公報(図1、請求項1)
【特許文献2】特開2004−207384号公報(図1、請求項1)
【特許文献3】特開2006−24746号公報(図2、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、回路の小型化に対する市場の要求が高まる中、それを実現する方策として、半導体部品の小型化が進んでいる。例えば、数A〜数十Aの大きな電流の耐量が求められるチョッパ回路やインバータ回路等へも使用できる半導体スイッチング素子等が、面実装タイプのパッケージで各種提供されている。一方、小型化された半導体部品のピン間の絶縁距離の確保や、発熱する半導体部品の放熱に関して課題を有する。
【0007】
ところが、前述した特許文献1に記載された放熱板取付構造は、母基板に実装される補助基板と、ほぼ平板の簡単な構造を有する放熱板との組み合わせに用いることができない。
前述した特許文献2に記載された放熱板取付構造は、補助基板がケースに面する個所へ必ず配置される必要があるとともに、樹脂充填を後工程で行うために、補助基板とケース間に樹脂を注入することが難しい。
前述した特許文献3に記載された放熱板取付構造は、補助基板の周りを放熱板ケースで覆うために、実装スペースとして母基板上の大きな面積が占有されてしまう。
【0008】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、母基板に実装される補助基板上に実装された発熱対象部品を、省スペースでかつ安価に絶縁距離を確保しながら放熱できる放熱板取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る放熱板取付構造は、補助基板と、前記補助基板上に実装される放熱対象部品と、前記放熱対象部品の周囲に充填され、絶縁および熱伝導を兼ねる樹脂製品と、前記補助基板に前記樹脂製品を介して配置される放熱板とから構成されて母基板に実装される補助基板回路部を備え、前記樹脂製品は、高粘度であり、前記放熱板を固定可能である。
【0010】
本発明に係る放熱板取付構造は、前記補助基板に実装された前記放熱対象部品の周囲が絶縁性部材で囲まれており、前記絶縁性部材の囲いの中に前記樹脂製品が充填されて前記補助基板と前記放熱板とが固定される。
【0011】
本発明に係る放熱板取付構造は、前記放熱板は、少なくとも前記放熱対象部品を囲む面が開放された箱形状に成形されており、前記開放された面から前記樹脂製品が充填されて前記補助基板と前記放熱板とが固定される。
【0012】
本発明に係る放熱板取付構造は、前記放熱対象部品は、前記樹脂製品により前記放熱板に放熱することにより、表面温度が85℃以下に保つことが可能な半導体部品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る放熱板取付構造によれば、母基板に実装される補助基板上に実装された発熱対象部品を、省スペースでかつ安価に絶縁距離を確保しながら放熱できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る第1実施形態の放熱板取付構造が適用される高圧放電灯用電子安定器の回路構成図
【図2】高圧放電灯用電子安定器の断面図
【図3】高圧放電灯用電子安定器に適用される補助基板回路部の平面図
【図4】補助基板回路部の側面図
【図5】高圧放電灯用電子安定器の組立手順を説明する外観斜視図および補助基板回路部の側面図
【図6】本発明に係る第2実施形態の放熱板取付構造が適用される高圧放電灯用電子安定器における補助基板回路部の平面図
【図7】補助基板回路部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る複数の実施形態の放熱板取付構造について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の放熱板取付構造に適用される高圧放電灯用電子安定器50は、交流電源51に接続された入力部52と、入力部52に接続された点灯部53と、点灯部53に接続された制御部54とから構成される。
【0016】
高圧放電灯用電子安定器50は、70W型であり、入力部52および点灯部53に、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5や、集積回路IC1,IC2,IC3や、ダイオードD1,D2,D3,D4,D5の半導体部品である第1電子部品11を有し、制御部54に第2電子部品であるインバータ制御部55を有する。第1電子部品11には、ランプDLの定常状態において1A前後の大きい電流が流れて発熱する。これに対して、インバータ制御部55には、数μA〜数mAの微小電流しか流れないために発熱量が非常に少ない。
【0017】
図2に示すように、高圧放電灯用電子安定器50は、アルミニウム製で放熱性を有するケース56内に母基板57が収容されており、この母基板57上に、第3電子部品58と、補助基板12を有して放熱対象部品である第1電子部品11が実装された補助基板回路部10とが実装されている。ケース56内には、第1電子部品11とインバータ制御部55と第3電子部品58とが十分に埋まるようにウレタン製等の充填樹脂59が充填されている。
【0018】
図3および図4に示すように、補助基板12に実装された第1電子部品11は、放熱板13が取り付けられる絶縁性部材14に囲まれる。絶縁性部材14は、四方を囲む周板15と中間板16とを有して第1電子部品11を囲む箱形状に形成されている。絶縁性部材14は、内部に樹脂製品17が充填された後に補助基板12に取り付けられる。
従って、絶縁性部材14により囲まれた内部に充填された樹脂製品17が硬化されることにより、樹脂製品17により第1電子部品11を位置ずれすることなく補助基板12上に配置できるとともに、補助基板12と放熱板13とを簡単に固定できる。
【0019】
絶縁性部材14内に充填される樹脂製品17は、樹脂UF−1179等の市販されている高粘度樹脂であり、第1電子部品11の端子間や端子と放熱板との間での絶縁特性を有するとともに、優れた粘着力により放熱板13を確実に固定できる。
従って、樹脂製品17により絶縁性部材14に放熱板13が固定されるために、別構成の取付部品や接着剤等を用いることなく、放熱板13の取り付けを簡単にできる。
【0020】
次に、高圧放電灯用電子安定器50の組立手順について説明する。
図5に示すように、まず、樹脂製品17が充填された絶縁性部材14が、補助基板12に実装された第1電子部品11を囲むように補助基板12に取り付けられることにより補助基板回路部10が組み立てられる。
【0021】
次に、補助基板回路部10が母基板57に取り付けられた後に、はんだ槽に漬け込まれてはんだ付けされる。
従って、絶縁性部材14内の樹脂製品17が硬化されることにより、樹脂製品17が第1電子部品11に熱的に接続されるとともに放熱板13に熱的に接続されて、第1電子部品11から放熱板13への放熱経路が形成される。
【0022】
はんだ付けの後に、母基板57がケース56内に収容され、ケース56内に充填樹脂59が充填されることにより、高圧放電灯用電子安定器50の組み立てが終了される。
【0023】
高圧放電灯用電子安定器50は、動作により第1電子部品11が発熱する。そして、第1電子部品11が発した熱は樹脂製品17に伝わり、樹脂製品17から放熱板13に伝わる。
従って、樹脂製品17により、母基板57に実装された補助基板13上に実装された第1電子部品11を、絶縁距離を確保しながら放熱できる。
【0024】
高圧放電灯用電子安定器1は、第1電子部品11が発した熱が、樹脂製品17を通じて放熱板13に伝わり、放熱板13から充填樹脂59を通じて放熱されるために、第1電子部品11の表面温度が85℃以下に保たれる。
従って、半導体素子である第1電子部品11の特性に支障を与えることがない。
【0025】
以上、説明した第1実施形態の放熱板取付構造によれば、樹脂製品17により放熱板13が固定されるために、別構成の取付部品や接着剤等を用いることなく、放熱板13の取り付けを簡単にできる。
【0026】
また、第1実施形態の放熱板取付構造によれば、絶縁性部材14により囲まれた内部に充填された樹脂製品17が硬化されることにより、第1電子部品11を位置ずれすることなく補助基板12上に配置できるとともに、補助基板12と放熱板13とを簡単に固定できる。
【0027】
さらに、第1実施形態の放熱板取付構造によれば、半導体素子である第1電子部品11の特性に支障を与えることがない。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の放熱板取付構造について説明する。
なお、以下の第2実施形態において、前述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0029】
図6および図7に示すように、本発明に係る第2実施形態に適用される補助基板回路部30は、底板32と周板33と開口部34とを有して第1電子部品11を囲む箱形状の放熱板31が適用される。そして、樹脂製品17は開口部34から放熱板31の内部に充填された後に、補助基板35に接合される。
【0030】
動作時に第1電子部品11が発した熱は、樹脂製品17に伝わり、樹脂製品17から放熱板31に伝わって放熱される。そのため、樹脂製品17により、母基板57に実装された補助基板12上に実装された第1電子部品11を、絶縁距離を確保しながら放熱できる。
【0031】
第2実施形態の放熱板取付構造によれば、樹脂製品17が、箱形状の放熱板31の開口部34から内部に充填されるために、外部への漏れを防止して樹脂製品17を放熱板31の隅々まで確実に充填できる。
【0032】
なお、本発明の放熱板取付構造においてケース,母基板等は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
【符号の説明】
【0033】
10,30 補助基板回路部
11 第1電子部品(発熱部品,放熱対象部品)
12,35 補助基板
13,31 放熱板
14 絶縁性部材
17 樹脂製品
57 母基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助基板と、
前記補助基板上に実装される放熱対象部品と、
前記放熱対象部品の周囲に充填され、絶縁および熱伝導を兼ねる樹脂製品と、
前記補助基板に前記樹脂製品を介して配置される放熱板とから構成されて母基板に実装される補助基板回路部を備え、
前記樹脂製品は、高粘度であり、前記放熱板を固定可能である放熱板取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱板取付構造において、
前記補助基板に実装された前記放熱対象部品の周囲が絶縁性部材で囲まれており、前記絶縁性部材の囲いの中に前記樹脂製品が充填されて前記補助基板と前記放熱板とが固定される放熱板取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放熱板取付構造において、
前記放熱板は、少なくとも前記放熱対象部品を囲む面が開放された箱形状に成形されており、前記開放された面から前記樹脂製品が充填されて前記補助基板と前記放熱板とが固定される放熱板取付構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の放熱板取付構造において、
前記放熱対象部品は、前記樹脂製品により前記放熱板に放熱することにより、表面温度が85℃以下に保つことが可能な半導体部品である放熱板取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69877(P2012−69877A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215518(P2010−215518)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】