説明

放送受信装置、及びアンテナ制御方法

【課題】ユーザーがオートプリセットを行う原因を逐次意識することなく、適切なオートプリセットを行うことが可能な放送受信装置の提供を目的とする。
【解決手段】放送波の受信にかかる指向性を変化させることができる可変指向性アンテナを制御する放送受信装置において、所定チャンネルの現在の受信強度を計測する第1の受信強度計測手段と、前記計測において所定数のチャンネルの受信強度が低下している場合に、全チャンネルの受信強度を計測する第2の受信強度計測手段と、前記第2の受信強度計測手段における受信強度の計測において、全ての受信強度が変化している場合は、全チャンネルの受信強度が最適となるよう調整するオートプリセット手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナの受信状況を制御する放送受信装置に関し、特に、受信波の指向性を切り替え可能な多指向性アンテナの受信状況を制御する放送受信装置、及びアンテナ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送を受信するためのアンテナ装置として、指向性を切り替えることで各チャンネルに対して最適な受信状態を維持する多指向性アンテナ(以下、スマートアンテナと記載する。)が実用化されている。スマートアンテナは複数のアンテナ素子で構成され、各アンテナ素子を適度な振幅及び位相により励振することで指向性を切り換える。このため、複数の放送局が分散して存在している場合において、チャンネル毎の指向性を放送局の方向と一致させるように制御することができる。
【0003】
近年の放送受信装置は、放送局毎に最適な周波数を自動的に取得する機能(以下、「チャンネルサーチ」という)を備えている。また、チャンネルサーチにより取得された周波数とチャンネル番号(=チャンネル識別子)とを関連付けてメモリ等の記録部に記録する機能(以下、「プリセット」という)を備えている。また、プリセットの実施を、放送受信装置が設置されている地域の全放送局に対して自動的に行う機能(以下、「オートプリセット」という)を備えている。このオートプリセットは、アンテナの初期設定以外にも、放送波の受信強度が低下した場合に、自動で実行される(例えば、特許文献1−3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−25322号公報
【特許文献2】特開2006−14026号公報
【特許文献3】特開2009−111543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナが受信した放送波の受信強度に応じてオートプリセットを行う場合、この受信強度の低下が何に起因して生じているかを判断することは難しい。例えば、受信強度が低下する要因として、周囲に放送波の受信を邪魔する建物が建設された場合や、単に放送局が何らかの理由で放送波を送信していない場合、更には、アンテナの固定状態が緩まり、アンテナの向きが物理的に変化してしまった場合も想定される。そのため、1つの放送局が放送波を送信していないため所定チャンネルで受信強度が弱まり、オートプリセットを行った場合、アンテナの指向性は最適であるのに、無駄なオートプリセットを行っていることになる。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、ユーザーがオートプリセットを行う原因を逐次意識することなく、適切なオートプリセットを行うことが可能な放送受信装置、及びアンテナ制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、放送波の受信にかかる指向性を変化させることができる可変指向性アンテナを制御する放送受信装置において、所定チャンネルの現在の受信強度を計測する第1の受信強度計測手段と、前記計測において所定数のチャンネルの受信強度が低下している場合に、全チャンネルの受信強度を計測する第2の受信強度計測手段と、前記第2の受信強度計測手段における受信強度の計測において、全ての受信強度が変化している場合は、全チャンネルの受信強度が最適となるよう調整するオートプリセット手段と、を有する構成としてある。
【0008】
上記のように構成された発明では、第1の受信強度計測手段は、所定チャンネルの現在の受信強度を計測し、この計測において所定数のチャンネルの受信強度が低下している場合は、第2の受信強度計測手段は、全チャンネルの受信強度を計測する。そして、第2の受信強度計測手段における受信強度の計測において、全ての受信強度が変化している場合は、スマートアンテナの向きが物理的に変更されていると判断し、オートプリセット手段は、全チャンネルの受信強度が最適となるよう調整を行う。
【0009】
そのため、放送受信装置が、受信強度の低下が、単に放送局から電波が送信されていないためなのか、アンテナの取り付け位置が変更されてしまったのかを自動で判断し、アンテナの向きが変更されたと判断した場合には、自動でオートプリセットを行うため、ユーザーがオートプリセットを行う原因を逐次意識することなく、適切なオートプリセットを行うことが可能となる。
【0010】
また、各チャンネルの最適な受信強度を記録する最適受信強度記録手段を有し、前記オートプリセット手段は、前記記録された最適な受信強度と比較を行うことで受信強度の状態を判断する構成としてもよい。
上記のように構成された発明では、初期設定等で行うオートプリセットにより取得された受信強度をもとに、受信強度の比較を行うため、より精度よく受信強度の状況を判定することができる。
【0011】
そして、前記第2の受信強度計測手段は、当該放送受信装置の待機状態において全チャンネルの受信強度を計測する構成としてもよい。
上記のように構成された発明では、放送受信装置の待機状態において受信強度を計測するため、ユーザーの当該放送受信装置の使用に影響を与えることなく受信強度を計測することができる。
【0012】
さらに、前記第1の受信強度計測手段は、現在選局されたチャンネルの受信強度が低い場合に、他のチャンネルの受信強度を計測する構成としてもよい。
【0013】
また、本発明は、放送受信装置のみならず、他指向性アンテナの制御方法にも適用することができる。そのため、本発明の他の局面として、放送波の受信にかかる指向性を変化させることができる可変指向性アンテナを制御するアンテナ制御方法において、所定チャンネルの現在の受信強度を計測する第1の受信強度計測工程と、前記計測において所定数のチャンネルにおいて受信強度が低下している場合に、全チャンネルの受信強度を計測する第2の受信強度計測工程と、前記第2の受信強度計測工程における受信強度の計測において、全ての受信強度が変化している場合は、全チャンネルの受信強度が最適となるよう調整するオートプリセット工程と、を有する構成としてもよい。
【0014】
さらに、本発明の他の局面として、各チャンネルの最適な受信強度を記録する最適受信強度記録手段を有し、前記オートプリセット手段は、前記記録された最適な受信強度と比較を行うことで受信強度の状態を判断し、前記第1の受信強度計測手段は、現在選局されたチャンネルの受信強度が低い場合に、他のチャンネルの受信強度を計測し、前記第2の受信強度計測手段は、当該放送受信装置の待機状態において全チャンネルの受信強度を計測する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、ユーザーがオートプリセットを行う原因を逐次意識することなく、適切なオートプリセットを行うことができる。
また請求項2にかかる発明によれば、より精度よく受信強度の状況を判定することができる。
そして請求項3にかかる発明によれば、ユーザーの当該放送受信装置の使用に影響を与えることなく受信強度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放送受信装置1を示す構成図である。
【図2】制御部11の各機能を説明するための機能ブロックである。
【図3】チャンネルテーブルを説明するための図である。
【図4】放送受信装置1が実行する受信強度調整処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.第1の実施形態:
2.その他の実施形態:
【0018】
1.第1の実施形態:
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放送受信装置1を示す構成図である。図1に示す放送受信装置は、スマートアンテナと接続し、このスマートアンテナの駆動を制御可能な表示装置を例に説明を行う。なお、各図における矢印線はデータの流れを示している。また、矢印のない直線は、制御部11が各装置に対する制御信号等を送受信するための通信バスを示している。
【0019】
放送受信装置1は少なくとも、制御部11、メモリー12、フラッシュメモリー13、アンテナ制御部14、放送受信部15、操作部16、信号分離部17、D/A変換部18、音声信号出力部19、映像再生部20、及び映像信号出力部21を含むように構成されている。
【0020】
制御部11は、放送受信装置1の各部材の駆動を制御することにより、テレビ放送の受信や、受信したテレビ放送の信号変換処理等を統括制御するためのものである。制御部11は例えば、複数のマイクロプロセッサから構成されている。また制御部11は、各装置の制御やデータの計算、加工処理等を行う中枢部分となっている。なお、制御部11が備える各機能部の詳細については後述する。
【0021】
メモリー12は、放送受信装置1が保持する各種データを一時的に記録する媒体であり、例えば書込可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリー12は、例えば制御部11によって各種情報処理が行われる際の処理データや、ユーザーから受けた指示命令等を一時的に記録しておくためのバッファメモリーとしての役割を持つ。
【0022】
フラッシュメモリー13は、書き換え可能であり、電源を切ってもデータが消えない不揮発性半導体メモリである。フラッシュメモリー13はEEPROMの一種であるが、EEPROMとは異なり1バイト単位の書き換えはできず、予めブロック単位で消去してから書き込みを行う。本発明では、制御部11が各機能部を実現するためのプログラムや、後述するチャンネルテーブルを記録するのに用いられる。
【0023】
アンテナ制御部14は、制御部11からの指示に応じて、受信方向切換信号をスマートアンテナ91へ出力する。スマートアンテナ91は与えられた受信方向切換信号に基づき、各アンテナ素子に対する励振を変化させることにより、指向性を切り換える。
【0024】
放送受信部15は、スマートアンテナ91に接続されてデジタル放送、或いはアナログ放送の選局、受信、周波数変換、増幅、復調等を行う。これによりアナログ放送であればアナログの映像信号及び音声信号が、デジタル放送であればMPEG信号が得られる。放送受信部15は、アナログ放送受信のためのアナログチューナ、映像中間周波増幅回路、復調回路、及び増幅回路等を含むように構成されている。またデジタル放送のためのデジタルチューナ、誤り訂正部、多重分離部等を含むように構成されている。
【0025】
操作部16は、ユーザーが受信放送の選局等を行うための各種指示を放送受信装置1に対して行うためのものである。操作部16により出力された指示は、制御部11により受け付けられる。指示を受け付けた制御部11は、指示の内容に基づいて選局処理等を行う。
【0026】
信号分離部17は、放送受信部15より与えられた信号がMPEG2方式等で符号化されたデジタル信号である場合に、MPEGデコードを行うことにより、音声情報を含むデジタル信号と、映像情報を含むデジタル信号とに分離する。このうち音声情報を含むデジタル信号はD/A変換部18に送られてアナログ信号に変換され、音声信号出力部19により外部装置へ出力される。
【0027】
また、映像情報を含むデジタル信号は、映像再生部20により復号化が行われ、さらにNTSC方式の映像信号に変換される。変換により得られた映像信号は映像信号出力部21から外部の表示装置に出力される。なお、放送受信部15より与えられた信号がアナログ信号である場合、信号分離部17は特に処理を施さず、音声信号出力部19及び映像信号出力部21を用いて図示しないディスプレイやスピーカーに出力される。
【0028】
===制御部11の機能について===
図2は、制御部11の各機能を説明するための機能ブロックである。ここで、本発明の第一の実施形態に係る放送受信装置1が備える受信状態確認機能を構成する各機能部の関係を、図2の機能ブロック図を用いながら説明する。
【0029】
制御部11は主たる要素として、最適受信強度記録部(最適受信強度記録手段)11aと、第1の受信強度計測部(第1の受信強度計測手段)11bと、第2の受信強度計測部(第2の受信強度計測手段)11cと、プリセット実行部(オートプリセット手段)11dと、の機能を備えて構成されている。
【0030】
最適受信強度記録部11aは、各チャンネルの最適な受信強度をフラッシュメモリー13に記録する。即ち、最適受信強度記録部11aは、放送受信装置1が所定期間に実行するオートプリセットにおいて設定された各チャンネルの受信強度をフラッシュメモリー13に記録する。
【0031】
ここで、受信強度の計測としては、例えば、受信信号の信号レベル、又はビットエラーレートを用いて実行する。即ち、受信強度を信号レベルを用いて実行する場合は、受信信号の信号レベルが所定の閾値を下回る場合を受信強度が低下しているとして判断する。また、受信強度をビットエラーレートを用いて判断する場合は、放送受信部15により出力されるデジタルデーターのビットエラーレートが一定値以上である場合を受信強度が低下していると判断する。
【0032】
第1の受信強度計測部11bは、各チャンネルの現在の受信強度を計測する。第1の受信強度計測部11bによる受信強度の計測は、上記最適受信強度記録部11aにより実行されたオートプリセットの実行後行われる計測であり、ユーザーが視聴中のチャンネルに対して実行される処理である。
【0033】
第2の受信強度計測部11cは、放送受信装置1が受信可能な全チャンネルの受信強度を計測する。即ち、第1の受信強度計測部11bにおける計測において、受信強度が低下しているチャンネルが所定数存在する場合は、第2の受信強度計測部11cは、何らかの原因でスマートアンテナ91が放送波を最適に受信していないと判断し、放送受信装置1が受信可能な全チャンネルにおける受信強度を計測する。
【0034】
プリセット実行部11dは、チャンネルに対してオートプリセットを行い、各チャンネルにおけるチャンネルテーブルを更新する。即ち、プリセット実行部は、アンテナ制御部14に対してスマートアンテナ91のオートプリセットを実行させる。ここで、オートプリセットとは、アンテナ制御部14がスマートアンテナ91の受信方向を変化させて、チャンネル毎に最適なアンテナ方向となるよう設定するものである。そして、設定されたアンテナ方向は、チャンネルテーブル(後述)に記録される。また、本実施形態にかかる処理においては、第2の受信強度計測部11cによる全てのチャンネルの受信強度の計測において受信強度が低いものが所定数に達している場合、プリセット実行部11dはスマートアンテナ91の向きが最初に行ったオートプリセット時の位置よりも、物理的に変化していると見なし再度オートプリセットを実行させる。
【0035】
===チャンネルテーブルについて===
ここで、本発明の第一の実施形態に係るチャンネルテーブルの一例を、図3のテーブル図を用いながら説明する。図3は、チャンネルテーブルを説明するための図である。なお、図3に示すチャンネルテーブルは、地上デジタル放送受信用のチャンネルテーブルであるが、これ以外に地上アナログ放送受信用のチャンネルテーブルやBSデジタル放送受信用のチャンネルテーブルが存在する形態であってもよい。
【0036】
図3に示すようにチャンネルテーブルは、左から順に「リモコン番号」欄と「物理チャンネル(=チャンネル識別子)」欄と「アンテナ方向」欄と「放送局名」欄と「周波数」欄の五つの欄から構成されている。
【0037】
「リモコン番号」欄は、地上デジタル放送において、放送局単位で決められているリモコンの押しボタン用の番号を示した欄である。ユーザーは放送受信装置1のリモコン(不図示)に含まれるこれらの番号のボタンを押下することにより、放送局の選局を行うことができる。
【0038】
「物理チャンネル」欄は、リモコン番号の一つ一つに対応した物理チャンネルを示した欄である。物理チャンネルは、アナログのUHF放送のチャンネル番号と一致する。地上デジタル放送では、アナログ放送と異なり、リモコン番号とチャンネル番号が一致しない。このため、周波数と関連付けられた実際のチャンネル番号を現す言葉として、アナログUHF放送の13チャンネル〜62チャンネルのチャンネル番号を「物理チャンネル」と呼んでいる。
【0039】
「アンテナ方向」欄は、スマートアンテナ91の指向性の方向を示す欄である。本実施形態のスマートアンテナ91は、全方位を22.5度毎に16分割し、それぞれの方位にナンバー1〜16の数字を付加している。「アンテナ方向」欄には、プリセット実行部11dによるオートプリセットの結果、放送局毎に最適であると判断された受信方向を示す値が記録されている。従って放送局の位置が大きく異なれば「アンテナ方向」の値も異なる。また、スマートアンテナ91の設置場所や設置方向が異なれば「アンテナ方向」の値も異なるため、スマートアンテナ91を移動させた場合等は再設定を行う必要がある。
【0040】
「放送局名」欄は、各物理チャンネルを使用して放送波を送信する放送局の名称を示した欄である。なお物理チャンネルが同じであっても、放送受信装置1の設置地域が異なれば放送局も異なる場合がある。
【0041】
「周波数」欄は、プリセット実行部11dによるチャンネルサーチの結果、物理チャンネル毎に最適であると判断された周波数を示す欄である。周波数は、物理チャンネル毎に定められているチャンネル帯域幅の範囲内で決定される。例えばUHF放送であれば、周波数帯域幅は470MHz〜770MHzの300MHzの区間である。その中で例えば、物理チャンネル27の場合、554MHz〜560MHzの6MHz区間が物理チャンネル27のチャンネル帯域幅となっている。
【0042】
===受信状態確認処理について===
図4は、放送受信装置1が実行する受信強度調整処理を示すフローチャートである。以下、図を参照しつつ放送受信装置1が実行する受信強度調整処理を説明する。なお、図4に示された処理は、スマートアンテナ91の固定位置が変更している場合を想定して実行される処理であり、この処理以外にもユーザーの操作入力、又は一定期間毎に通常のオートプリセットを行うものであってもよい。
【0043】
ステップS1では、最適受信強度記録部11aは、スマートアンテナが受信可能な全てのチャンネルにかかる最適な受信強度をフラッシュメモリー13に記録する。このステップS1における処理は、例えば、プリセット実行部11dがオートプリセットを実行した際に、最適受信強度記録部11aがこのオートプリセットにより設定された各チャンネルの受信強度をフラッシュメモリー13に記録するものである。
【0044】
ステップS2では、ユーザーが所定チャンネルを視聴している場合に、第1の受信強度計測部11bが、このチャンネルにかかる受信強度を計測する。即ち、ユーザーが任意のチャンネルを選局し、このチャンネルを視聴している間、第1の受信強度計測部11bは、このチャンネルの受信強度を計測し、所定の閾値と比較する。なお、ステップS2により計測対象となるチャンネルは任意であり、予め計測対象を決めておくものであってもよい。
【0045】
ステップS2で計測した所定チャンネルの受信強度が所定値(閾値T1)より低い場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、第1の受信強度計測部11bは他チャンネルに対しても受信強度を計測する(ステップS4)。即ち、第1の受信強度計測部11bは、ユーザーが他のチャンネルを選局した際に、選局チャンネルに対して受信強度を計測する。ここで、現在視聴中のチャンネルにおいて受信強度が低下している場合、受信強度を低下させる何らかの要因が存在するため、第1の受信強度計測部11bは、計測範囲を他チャンネルにも広げる。一方、ユーザーが現在視聴中のチャンネルにおいて受信強度が所定値より高い場合(ステップS3:NO)、第1の受信強度計測部11bは、受信強度の計測を終了する。
【0046】
他チャンネルに対する受信強度の計測においても受信強度が低いチャンネル数が閾値T2を超えている場合は(ステップS5:YES)、制御部11は、ステップS6に進む。一方、受信強度が低いチャンネル数が閾値T2を超えない場合は(ステップS5:NO)、受信強度の低下がスマートアンテナ91の向きの変化に起因する可能性が低いため、第2の受信強度計測部11cは処理を終了する。
【0047】
ステップS6において、放送受信装置1が待機状態に移行した場合は(ステップS6:YES)、第2の受信強度計測部11cは受信可能な全てのチャンネルに対して受信強度を計測する(ステップS7)。即ち、第2の受信強度計測部11cは、チャンネルテーブルに記録された全チャンネルにかかる現在の受信強度を計測する。上記構成とすることで、ユーザーが放送受信装置1を使用していない状態で、全チャンネルにかかる受信強度を計測するため、ユーザーが放送受信装置1を使用することを妨げない。
【0048】
ステップS8において、第2の受信強度計測部11cは、スマートアンテナ91の向きが前回オートプリセット時と比べて変化しているか否かを判断する。即ち、ステップS7で計測した全チャンネルの受信強度がステップS1で記録された最適受信強度と異なっている場合は(ステップS8:YES)、第2の受信強度計測部11cは、スマートアンテナ91の向きが前回オートプリセット時と比べて変化していると判断する。そのため、プリセット実行部11dは、受信可能な全チャンネルにかかるオートプリセットを実行する(ステップS9)。
【0049】
一方、ステップS7で計測した全チャンネルの受信強度がステップS1で記録された最適受信強度と異なっていない場合は(ステップS8:NO)、第2の受信強度計測部11cは、スマートアンテナ91の向きが前回オートプリセット時と比べて変化していないと判断し、処理を終了させる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態にかかる放送受信装置1では、各チャンネルにおける受信強度の低下が、単に放送局から電波が送信されていないためなのか、スマートアンテナ91の取り付け位置が変更されてしまったのかを自動で判断し、スマートアンテナ91の取り付け位置が変更されたと判断した場合には、自動でオートプリセットを行うため、ユーザーがオートプリセットを行う原因を逐次意識することなく、適切なオートプリセットを行うことが可能となる。
【0051】
2.その他の実施形態:
本発明は様々な変形例が存在する。
放送受信装置として、表示装置を用いることは一例であり、スマートアンテナ91が受信した受信信号をもとに処理を行なうものであればどの様な装置であってもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1…放送受信装置、11…制御部、11a…最適受信強度記録部、11b…第1の受信強度計測部、11c…第2の受信強度計測部、11d…プリセット実行部、12…メモリー、13…フラッシュメモリー、14…アンテナ制御部、15…放送受信部、16…操作部、17…信号分離部、18…D/A変換部、19…音声信号出力部、20…映像再生部、21…映像信号出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波の受信にかかる指向性を変化させることができる可変指向性アンテナを制御する放送受信装置において、
所定チャンネルの現在の受信強度を計測する第1の受信強度計測手段と、
前記計測において所定数のチャンネルの受信強度が低下している場合に、全チャンネルの受信強度を計測する第2の受信強度計測手段と、
前記第2の受信強度計測手段における受信強度の計測において、全ての受信強度が変化している場合は、全チャンネルの受信強度が最適となるよう調整するオートプリセット手段と、を有することを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
各チャンネルの最適な受信強度を記録する最適受信強度記録手段を有し、
前記オートプリセット手段は、前記記録された最適な受信強度と比較を行うことで受信強度の状態を判断することを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記第2の受信強度計測手段は、当該放送受信装置の待機状態において全チャンネルの受信強度を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記第1の受信強度計測手段は、現在選局されたチャンネルの受信強度が低い場合に、他のチャンネルの受信強度を計測することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項5】
放送波の受信にかかる指向性を変化させることができる可変指向性アンテナを制御するアンテナ制御方法において、
所定チャンネルの現在の受信強度を計測する第1の受信強度計測工程と、
前記計測において所定数のチャンネルにおいて受信強度が低下している場合に、全チャンネルの受信強度を計測する第2の受信強度計測工程と、
前記第2の受信強度計測工程における受信強度の計測において、全ての受信強度が変化している場合は、全チャンネルの受信強度が最適となるよう調整するオートプリセット工程と、を有することを特徴とするアンテナ制御方法。
【請求項6】
各チャンネルの最適な受信強度を記録する最適受信強度記録手段を有し、
前記オートプリセット手段は、前記記録された最適な受信強度と比較を行うことで受信強度の状態を判断し、
前記第1の受信強度計測手段は、現在選局されたチャンネルの受信強度が低い場合に、他のチャンネルの受信強度を計測し、
前記第2の受信強度計測手段は、当該放送受信装置の待機状態において全チャンネルの受信強度を計測することを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−130196(P2011−130196A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286855(P2009−286855)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】