説明

放送受信装置及びその制御方法

【課題】緊急警報放送を受信した場合でも必要以上にユーザの利便性を損なわずに緊急警報放送を検知できる放送受信装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】放送受信装置は放送波を受信可能な第1チューナ部101及び第2チューナ部102を備え、複数のチャンネルを同時に受信する機能を有する。制御部113は視聴中のチャンネルが緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを判定する。緊急警報放送の受信制御部114は、チャンネル毎に緊急警報放送に係る放送の有無を示す情報及び放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っているか否かの情報を放送受信チャンネルリストに記憶しておく。緊急警報放送を放送しないチャンネルの選局時や放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っていないチャンネルの選局時に、受信制御部114は空いているチューナで、緊急警報放送が放送されるチャンネルを選局するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急警報放送を受信できる放送受信装置とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本や外国において地上デジタル放送や衛星デジタル放送等、複数の放送形態が運用されている。こうした複数の放送形態に対応するために、ユーザに提供されるデジタル放送受信装置は複数のチューナを搭載しており、同時に複数の放送を受信することが可能になっている。例えば1つのチューナでデジタル放送を受信して番組を視聴しながら、空いている別のチューナで違う番組(裏番組)を録画することや、番組情報を取得することができる。
【0003】
一方、デジタル放送では、重大な災害や地震の情報を視聴者に通知するための緊急警報放送システム(EWS:Emergency Warning System)が運用されている。緊急警報放送の運用では、デジタル放送受信装置が緊急警報放送を受信した場合、視聴者が緊急警報を認識できるように動作することが決められている。この緊急警報放送は、公共放送の放送局のみならず、民放の放送局でも運用されており、特定の分野に特化した専門チャンネル以外の多くのチャンネルで緊急警報を受信することが可能である。
【0004】
しかしながら、ユーザが専門チャンネル等の緊急警報放送が運用されていないチャンネルを選局している場合には、当然ながら緊急警報放送を受信することができないため、緊急時の情報が行き渡らないという問題があった。また、今後、ケーブル放送等を利用した多チャンネル化が進み、専門チャンネルが増加するものと考えられる。さらに、現在国ごとに異なるデジタル放送受信装置のハードウェア構成を共通化すると、世界共通モデルが登場し、ユーザは他国の放送を容易に視聴することが可能になる。そうなると、ユーザは専門チャンネルや外国のチャンネルを視聴する時間が多くなり、自国で発生した緊急警報放送に係る放送チャンネルを選局していない可能性が高くなる。
【0005】
この問題に対して、パススルー(OFDM)方式とトランスモジュレーション(QAM)方式による2つのチューナを持つ装置が開示されている(特許文献1参照)。つまり一方のチューナで通常の視聴等を行いながら、他方のチューナで緊急警報放送の起動制御信号を監視し、当該放送を検知した場合に視聴者に告知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−228117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された装置では、常に一方のチューナを緊急警報放送の検知のために使用することになるため、空いているチューナで違う番組(裏番組)を録画したいといった、ユーザの望む動作ができなくなってしまうという課題がある。
そこで本発明は、複数のチューナを有する放送受信装置において緊急警報放送を受信した場合でも必要以上にユーザの利便性を損なわずに、緊急警報放送を検知できる放送受信装置及びその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために本発明に係る装置は、放送波を受信可能な複数のチューナ手段によって複数のチャンネルを同時に受信する機能を有する放送受信装置であって、前記複数のチューナ手段のいずれかによって視聴中のチャンネルが緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを判定し、当該チャンネルが緊急警報放送を放送しないチャンネルであると判定した場合、当該チューナ手段とは別のチューナ手段を用いて、緊急警報放送を放送するチャンネルであることが予め判明しているチャンネルを選局するように制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、必要以上にユーザの利便性を損なわずに緊急警報放送を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】デジタル放送システムの構成を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放送受信装置の内部構成例を模式的に示す図である。
【図3】図4と併せて本発明の第1実施形態を説明するために、緊急警報放送の受信処理例を示すフローチャートである。
【図4】緊急警報放送チャンネルリストの作成処理例を示すフローチャートである。
【図5】放送受信チャンネルリストの具体例を表形式で示した図である。
【図6】図7と併せて本発明の第2実施形態を説明するために、緊急警報放送の受信処理及び国別チャンネル判定処理の流れを例示したフローチャートである。
【図7】緊急警報放送チャンネルリストの作成処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、日本のデジタル放送に使用されている放送方式(ISDB: Integrated Services Digital Broadcasting)を例にして説明する。
図1は、放送受信機能と緊急警報放送検知機能を提供するシステムの構成を示した説明図である。なお、図には放送波を送信する送信器や中継を行う中継器、衛星(A乃至C参照)、放送事業者、ケーブル事業者による放送等を示すが、その技術は既知であるため説明を省略し、デジタル放送受信装置100についてのみ詳述する。該装置は放送波を受信可能な複数のチューナ手段を備え、複数のチャンネルを同時に受信する機能を有する。
【0012】
図2は図1におけるデジタル放送受信装置100の内部構成例を模式的に示す図である。
アンテナに接続された放送受信部は第1チューナ部101と第2チューナ部102を備える。これらのチューナ部は、設定された周波数情報に基づいて周波数のチューニングを行ってデジタル放送信号を受信し、その信号を第1復調部103と第2復調部104にそれぞれ出力する。各チューナ部は対応する復調部とともにチューナ手段を構成しており、デジタル放送信号を受信しながら、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号を検出する。このTMCC信号は、変調方式や誤り訂正方式を指定可能な階層変調方式を実現するための伝送多重制御信号である。また、TMCC信号は緊急警報放送が発信されたことを知らせる起動制御信号を含む。
【0013】
第1復調部103と第2復調部104は、入力されたデジタル放送信号に対し、復調や誤り訂正等の処理を行い、トランスポートストリーム(TS)を形成する。TS処理部105は各復調部から入力されたTSを受けて、チャンネルに関わる映像や音声のデータ、ARIB(電波産業会)標準規格STD-B10にて規定されているPSI/SIのデータを分離する。ここで、PSIは”Program Specific Information”の略号であり、SIは”Service Information”の略号である。PSI/SIには、PAT、PMT、NIT、EIT等が含まれる。ここでPATは”Program Association Table”の略号であり、PMTは”Program Map Table”の略号である。NITは”Network Information Table”の略号であり、EITは”Event Information Table”の略号である。TS処理部105は第1復調部103から入力されるTSと第2復調部104から入力されるTSをそれぞれ切り替えて別々に分離する。
【0014】
TS処理部105で分離した映像データは、映像処理部107へ出力され、ここで映像復号化処理が行われた後、映像出力部109に送られる。一方、音声データは音声処理部106へ出力され、ここで音声復号化処理が行われて音声出力部108に送られる。PSI/SIのデータは、システムバス110を介して記憶部112(RAM/ROM参照)に蓄積される。
映像出力部109は復号化された映像データを、表示解像度、表示色数、リフレッシュレートに適した表示データに変換して、映像表示を行う。また音声出力部108は、音声データの出力レベル(音量)等を変更する機能を有しており、音声を出力する。
【0015】
装置全体を制御する制御部113はCPU等の演算処理装置を備えており、その機能的構成において緊急警報放送の受信制御部114及び緊急警報放送チャンネルリスト作成部115を有する。なお、国別チャンネル判定部516については後述の第2実施形態にて説明する。
緊急警報放送の受信制御部114は、第1チューナ部101の選局先が緊急警報放送を放送しないチャンネルであった場合、緊急警報放送のチャンネルリストから、第2チューナ部102に対して緊急警報放送に係る放送チャンネルを選局するように制御する。そして、第2チューナ部102にて緊急警報放送を受信した場合、緊急警報放送を画面出力するように各処理部を制御する。
【0016】
緊急警報放送チャンネルリスト作成部(以下、リスト作成部という)115は、デジタル放送受信装置100が受信しているチャンネルに関する放送受信チャンネルリストから、緊急警報放送の放送有無に関して不明なチャンネルを抽出する。そしてリスト作成部115は、第1チューナ部101又は第2チューナ部102の一方を使用して緊急警報放送の放送有無が不明なチャンネルを一定時間に亘って巡回して選局し、TMCC起動制御信号が検出されるか否かを監視する。TMCC起動制御信号が検知された場合、リスト作成部115はその選局先のチャンネルにて緊急警報放送を放送すると判定し、その旨を放送受信チャンネルリストに設定する。
【0017】
ユーザの操作はリモートコントローラ(以下、リモコンと略称する)200を用いて行われ、リモコンコード受信・解釈部111は、ユーザのリモコン操作によって送信される赤外線信号を受信し、操作指示の内容を解釈する。また、リモコンコード受信・解釈部111はユーザ操作による選局依頼を受け取った場合、第1チューナ部101に対して、ユーザの選局先を選局するようにチューニング依頼の信号を送る。
【0018】
次に緊急警報放送の受信処理について説明する。緊急警報放送とは、地震や津波等の災害が発生したときに、放送受信装置に災害情報を伝える放送をいう。緊急警報放送は以下の3つに区分される。
1.大規模地震の警戒宣言が発せられた場合(第一種)
2.避難指示の発動があった場合(第一種)
3.津波警報が発せられた場合(第二種)
【0019】
緊急警報放送が放送局から送信されると、TMCC信号の変更指示情報の値が1増加する。これにより、緊急警報放送が送信されることを示す起動制御信号の論理値が「1」に変化する。デジタル放送受信装置は、この信号の変化を常時監視することで、緊急警報放送の有無を認識することができる。
緊急警報放送が送信されたことをデジタル放送受信装置が認識した場合、以下の処理が実行される。まず、TS処理部105で分離されたPSI/SIデータからPMTに含まれる緊急情報記述子を抽出する処理が行われる。PMTは、あるTS内に含まれる画像や音声等のパケット識別子を格納したテーブルである。そして、緊急警報放送の受信制御部114は抽出された緊急情報記述子を解析し、Service_ID、Start_end_flag、Area_codeという制御情報を取得する。ここで”Service_ID”は緊急警報放送を行うチャンネルを指定する情報である。また、”Start_end_flag”は、緊急警報放送が行われているか否かを判定するための情報であり、その値が「1」の場合に緊急警報放送の実施を意味する。また、”Area_code”は、緊急警報放送の対象地域を特定するための情報である。デジタル放送受信装置100では、このような制御情報を用いて緊急警報放送を受信する。
【0020】
また、緊急警報放送には試験放送があり、該放送においても緊急警報放送があることを示す起動制御信号の論理値が「1」に変化する。ただし、緊急情報記述子のstart_end_flagの値を「0」として運用するように決められているため、デジタル放送受信装置はその値を調べることによって、緊急警報放送が試験放送であるか否かを判断できる。
【0021】
次に、本発明の第1実施形態において、緊急警報放送の受信制御部114が行う受信処理例について図3の動作フローチャートに沿って説明する。
まずS101にて受信制御部114は、リモコンコード受信・解釈部111を通じて入力されたユーザの選局操作に応じて、第1チューナ部101に対して選局指示を送る。そして受信制御部114は、第1チューナ部101で受信している番組を表示させるように制御する(S102)。
【0022】
次に受信制御部114は、緊急警報放送チャンネルリストを参照し(S103)、第1チューナ部101で選局している視聴中のチャンネルが緊急警報放送を実施するチャンネルであるか否かを判定する(S104)。なお、緊急警報放送チャンネルリストの作成方法については後で詳述する。S104の判定処理において、視聴中のチャンネルが緊急警報放送を実施するチャンネルである場合、S105に進む。ここで受信制御部114はTMCC信号の起動制御信号を検出するよう第1チューナ部101に指示し、S106に進む。また判定の結果、対象のチャンネルが緊急警報放送を実施するチャンネルでない場合、S116に進む。
【0023】
S106にて受信制御部114はS105での検出結果に基づいて起動制御信号の状態について判定し、その論理値が「0」の場合にはS115へ移行する。起動制御信号の論理値が「1」の場合、S107に進む。ここでPMT内の緊急情報記述子を抽出する処理が行われる。そして、抽出された緊急情報記述子のうち、Start_end_flagの値を受信制御部114が判定する(S108)。その結果、Start_end_flagの値が「1」であれば、緊急警報放送が行われていると判断され、S109に進む。一方、Start_end_flagの値が「0」の場合、S115に進む。
【0024】
S109にて受信制御部114は取得したArea_codeを用いて、事前にデジタル放送受信装置100に設定された設置場所を示す情報と、Area_codeの示す情報とが一致するか否かを判定する。なお、設置場所を示す情報とは、デジタル放送受信装置100が置かれている地域の情報であり、ユーザ操作によって初期設定時に設定される。初期設定の処理は既知であり、よって説明を省略する。S109において、Area_codeの示す情報と設置場所を示す情報が一致した場合、S110に進むが、両者が不一致の場合、S115に進む。
【0025】
S110にて受信制御部114は、緊急情報記述子のService_IDに記述されたチャンネルを選局するように、第1チューナ部101に対して指示を送る。これにより、第1チューナ部101が緊急警報放送を受信して、放送画像が表示される(S111)。
【0026】
次のS112にて、TMCC信号の起動制御信号の状態が判定され、この判定は起動制御信号の論理値が「0」になるまで繰り返され、この間、緊急警報放送の受信及び表示が続行される。
S112で起動制御信号の論理値が「0」になったと判定された場合、S113に進む。ここで受信制御部114は、緊急警報放送の受信前に第1チューナ部101で選局していたチャンネルを選局するように制御する。これにより第1チューナ部101で受信している番組が表示される(S114)。そしてS115に進む。
【0027】
S106やS108、S109、S114からS115に進んだ場合、ユーザ操作による選局指示の有無が判定される。例えばS108においてStart_end_flagの値が「0」の場合、緊急警報放送が試験放送であるので、緊急警報放送の受信(S109乃至114)は行わずにS115に移行する。また、ステップS109にて、事前にデジタル放送受信装置100に設定された設置場所を示す情報とArea_codeの示す情報が一致しなかった場合、緊急警報放送の対象地域が他の地域であると判定される。よって緊急警報放送の受信(S110乃至114)は行われずにS115に移行する。
【0028】
S115にて選局指示があった場合、S101へ移行し、また選局指示がない場合はS105に移行する。
前記S104において、第1チューナ部101で緊急警報放送を放送しないチャンネルを選局した場合、又は緊急警報放送に係る放送有無が不明なチャンネルを選局した場合、S116に進む。ここで受信制御部114は、緊急警報放送チャンネルリストを参照する。そしてS117にて該リストから緊急警報放送を実施するチャンネルが第2チューナ部102で選局され、受信制御部114は、TMCC信号の起動制御信号を検出するよう第2チューナ部101に指示する(S118)。次のS119では、その起動制御信号の状態が判定され、起動制御信号の論理値が「0」の場合、S120へ進むが、「1」の場合にはS121に進む。
【0029】
S121にて受信制御部114は、PMT内の緊急情報記述子を抽出した後、S122に進んでStart_end_flagの状態を判定する。その結果、Start_end_flagの値が「1」であればS123に進むが、「0」の場合、S118に戻る。
S123にて受信制御部114は、Area_codeを用いて、設置場所を示す情報とArea_codeの示す情報とが一致するか否かを判定する。その結果、両者が一致した場合、S124に進む。また両者が不一致の場合、S118に戻る。S124にて受信制御部114は、緊急情報記述子のService_IDに記述されたチャンネルを選局するように第2チューナ部102に指示を送る。次のS125にて、第2チューナ部102が緊急警報放送を受信して画面表示が行われる。
【0030】
次のS126では、TMCC信号の起動制御信号の状態が判定され、この判定は起動制御信号が「0」になるまで繰り返される。この間、緊急警報放送の受信及び表示が続行される。起動制御信号が「0」になった場合、受信制御部114は、第1チューナ部101で選局しているチャンネルの番組を再び表示させるように制御する。そしてS118に戻る。
【0031】
前記ステップS122において、Start_end_flagの値が「0」であると判定された場合には、緊急警報放送が試験放送である。従って第2チューナ部102による緊急警報放送の受信(S123乃至126)は行わず、S118に移行する。また前記ステップS123において、事前にデジタル放送受信装置100に設定された設置場所を示す情報とArea_codeの示す情報が一致しなかった場合、緊急警報放送の対象は他の地域である。従って第2チューナ部102による緊急警報放送の受信(S124乃至126)は行わず、S118に移行する。
【0032】
前記ステップS119からS120に進んだ場合、ユーザからの選局指示について有無が判定される。その結果、選局指示があった場合、S101に戻るが、選局指示がない場合にはS118に戻る。
なお、本例では図3のステップS127において、第1チューナ部101で選局していたチャンネルの番組を再び表示する処理を行っているが、緊急警報放送を受信したチャンネルの番組をそのまま表示し続けてもよい。また、本例では、第1チューナ部101と第2チューナ部102の処理内容が分けられているが、それぞれ専用のチューナを用意する必要はない。つまりチューナが2つ以上搭載されていれば、第1チューナ部及び第2チューナ部として、どのチューナを選定しても構わない。
【0033】
次にリスト作成部115で実行される、緊急警報放送チャンネルリストの作成処理例について図4の動作フローチャートを沿って説明する。
まずS201にてリスト作成部115は、デジタル放送受信装置100が放送を受信しているチャンネルに関する放送受信チャンネルリストを参照し、緊急警報放送に係る放送の有無が不明なチャンネルの存否について判定する(S202)。なお放送受信チャンネルリストについては、初期設定のチャンネルスキャン時に作成されるものであって、その作成は一般的な処理であるため、説明を省略する。S202の判定結果として、緊急警報放送に関する放送の有無について不明なチャンネルが存在する場合、S203に進むが、該チャンネルが存在しない場合、S209に進む。
【0034】
S203にてリスト作成部115は、前記の不明なチャンネルを一定期間に亘って繰り返し巡回して選局し、各チャンネルのTMCC起動制御信号について検出の有無を監視する。各チャンネルのTMCC起動制御信号の検出有無を未だ一定期間に亘って監視していない場合、S204に進むが、一定期間に亘る監視が終了した場合、S209に進む。
S204にてリスト作成部115は第1チューナ部101又は第2チューナ部102のうち、空いているチューナ部があるか否かを判定する。その結果、空きチューナ部がある場合、S205に進むが、空きチューナ部がない場合にはS202に戻る。
【0035】
S205にてリスト作成部115は、緊急警報放送に係る放送の有無が不明なチャンネルを選局するように、空きチューナ部に指示を送る。そして選局されたチャンネルでTMCC信号の検出処理が行われ(S206)、検出結果に基づいてその起動制御信号の状態が判定される(S207)。その結果、起動制御信号の論理値が「1」の場合、S208に進み、選局しているチャンネルは、緊急警報放送を放送するチャンネルと判断される。リスト作成部115は当該チャンネルを放送受信チャンネルリストに設定する処理を行う。一方、起動制御信号の論理値が「0」の場合は何も設定せず、S202に戻ってS202乃至208のステップが繰り返される。なお設定の具体例については後述する。
【0036】
S202にて緊急警報放送に係る放送の有無について不明なチャンネルが無い場合や、S203にて前記不明なチャンネルを一定期間に亘って繰り返し巡回して選局する処理が終了した場合、S209へ移行する。ここでリスト作成部115は、TMCC起動制御信号が検出されなかったチャンネルを、緊急警報放送を放送しないチャンネルとして放送受信チャンネルリストに設定した後、前記した一連の処理を終了する。
以上のように作成される放送受信チャンネルリストには、緊急警報放送に係る放送の有無を示す情報が設定されており、このリストが緊急警報放送チャンネルリストとして使用される。
【0037】
注意すべき点は、ステップS207においてTMCC起動制御信号の論理値が「1」の場合であっても、放送が実際の緊急警報放送ではなく、緊急警報放送の試験放送である可能性が残ることである。しかし、対象となるチャンネルで試験放送を送信するということは、当該チャンネルが緊急警報放送を放送するチャンネルであると判断できることを意味する。よって本例では、TMCC起動制御信号の論理値が「1」の場合には、当該チャンネルを放送受信チャンネルリストにおいて緊急警報放送があるチャンネルとして設定している。なお、この緊急警報放送チャンネルリストの作成処理については、受信制御部114が緊急警報放送の受信処理を実行する時点よりも前に実行されるが、緊急警報放送の受信処理と並行して同時に実行してもよい。また、放送受信チャンネルリストに変更が生じた場合、再度緊急警報放送チャンネルリストの作成処理をリスト作成部115が実行することもあり得る。
【0038】
次に、リスト作成部115による緊急警報放送チャンネルリスト作成処理について具体例を図5に示す。図5(a)は、図4の動作フローチャート内において、ステップS201で参照している放送受信チャンネルリストの具体例を表形式で示す。このリストには、代表的なものとして、以下の情報が記載されている。
1. チャンネルのリモコンポジション番号(本例では選局番号を示す)
2. チャンネルのサービスID(本例では識別番号を示す)
3. チャンネルの名称
4. チャンネルの中心周波数(本例ではメガヘルツ単位で示す)
【0039】
次に、図4のステップS202において緊急警報放送に係る放送の有無について不明なチャンネルがあるか否かを判定した時の結果を図5(b)に示す。図5(b)のリストは、図5(a)の放送受信チャンネルリストに対して、緊急警報放送の有無を示す項目が増えた表として示している。また、ステップS202は、緊急警報放送に係る放送の有無を解析する前の段階であるので、各チャンネルについて緊急警報放送の有無は不明になっている(表中に「?」の記号で示す)。なお、公共放送等、緊急警報放送に係る放送の有無が事前に判明しているチャンネルがある場合には、その情報を、予め図5(b)の緊急警報放送の有無を示す項目に反映させておいてもよい。
【0040】
次に、図4のステップS202乃至208の処理が実行され、S208において緊急警報放送を放送するチャンネルがあった場合の設定結果を図5(c)に示す。本図では、サービスIDが101、103、105、106のチャンネルにおいてTMCC起動制御信号が検出された例を示す。つまり、これらのチャンネルについては緊急警報放送の有無を示す項目が「有り」と設定され、他のチャンネルについては「?」のままである。
【0041】
次に、図4のステップS203での解析後、最終的にステップS209にてTMCC起動制御信号が検出されなかったチャンネルについて、緊急警報放送を放送しないチャンネルとして設定した結果を図5(d)に示す。本図では、サービスIDが102、104、107のチャンネルにおいてTMCC起動制御信号が検出されなかった例を示す。つまり、これらのチャンネルについては緊急警報放送の有無を示す項目が「無し」と設定される。このようにして出来上がった図5(d)のリストが、緊急警報放送チャンネルリストである。
【0042】
以上、第1実施形態では、ユーザ操作によって選局されたチャンネルにて緊急警報放送を放送するか否かについて判断が行われ、緊急警報放送受信のためのチューナ部を選局制御するので、必要以上にユーザの利便性を損なわない。また、緊急警報放送チャンネルリストに基づいて緊急警報放送の受信処理を行うことができる。
なお、上記の例では、チャンネル毎に緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを示す情報を緊急警報放送チャンネルリストに記憶し、該リストを受信制御部114が参照するように構成した。放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っているか否かを示す情報についても同様にチャンネル毎に緊急警報放送チャンネルリストに記憶してもよい。例えば、放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っていないチャンネルについてはその旨を示す情報がリストに記述される。このチャンネルが選局された場合、当該チャンネルを選局したチューナ部とは別のチューナ部によって、緊急警報放送を放送するチャンネルが選局される。
【0043】
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ユーザが外国の放送チャンネルを選局している時でも緊急警報放送を受信できるようにチューナ部を制御する。
一般に緊急警報放送は、ユーザが居住する自国の緊急警報を放送するものであるため、ユーザが外国の放送チャンネルを選局している場合、そのチャンネルでは自国の緊急警報放送は放送されない。そこで、ユーザが外国の放送チャンネルを選局した場合、空いているチューナ部を使用して自国の緊急警報放送を放送するチャンネルを選局し、緊急警報放送を受信できるように制御することが望ましい。以下では、ユーザが外国の放送チャンネルを選局している場合の緊急警報放送受信方法について説明する。
【0044】
第2実施形態に係るデジタル放送受信装置については基本的には第1実施形態の構成と同様であり、相違点は、図2の制御部113内に示す国別チャンネル判定部516を設けたことである。よって以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、重複回避のため第1実施形態と同様の構成要素については説明を省略する。
【0045】
国別チャンネル判定部516は、第1チューナ部101で選局されたチャンネルに係るPSI/SIのデータから、PMTに含まれる国別受信可否記述子を抽出する。そして国別チャンネル判定部516は、国別受信可否記述子を解析し、country_availability_flagとcountry_codeという制御情報を取得する。”country_availability_flag”は、country_codeの示す国で放送サービスの受信が可能か否かを示すフラグ情報である。その値が「1」の場合、受信可能であり、「0」の場合、受信不可能であることを意味する。また、”country_code”は国名を表しており、ISO3166-1で規定されるアルファベット3文字コードが使用される。
【0046】
国別チャンネル判定部516は、country_availability_flagとcountry_codeを解析する。そして国別チャンネル判定部516は、選局先のチャンネルが自国向けの放送チャンネルであるか否かを判定する。視聴中のチャンネルが自国向けの放送チャンネルであると判定された場合、緊急警報放送に係る放送の有無に従って、国別チャンネル判定部516は第1チューナ部101及び第2チューナ部102を制御する。一方、第1チューナ部101で視聴中のチャンネルがユーザの自国向けの放送チャンネルではないと判定された場合、国別チャンネル判定部516は自国の緊急警報放送を放送しないと判断し、第2チューナ部102で緊急警報放送を受信するように制御する。
【0047】
次に、緊急警報放送の受信制御部114及び国別チャンネル判定部516による受信処理例について、図6の動作フローチャートに沿って説明する。なお、S101乃至127のステップは第1実施形態に関する図3にて説明済みであるため、それらの説明を省略し、S102とS103との間に挿入したS303乃至305について説明する。
【0048】
S303にて国別チャンネル判定部516は、第1チューナ部101が選局したチャンネルのPMTに含まれる国別受信可否記述子を抽出する。そして国別チャンネル判定部516は、国別受信可否記述子内のcountry_availability_flagの状態を解析し、その値を判別する(S304)。その結果、country_availability_flagの値が「1」の場合、S305に進むが、その値が「0」の場合、S116に進む。
【0049】
S305にて国別チャンネル判定部516はcountry_codeを解析し、country_codeが示す国コードと、初期設定時に設定された設置情報を比較し、現在選局しているチャンネルがユーザの自国向けのチャンネルか否かを判定する。設置情報には装置設置時の国名に関する情報を含む。判定の結果、国コードにユーザの自国があった場合、S103に進み、これ以降は第1実施形態の場合と同様に処理が行われる。つまり受信制御部114によって緊急警報放送チャンネルリストが参照され、選局先チャンネルの緊急警報放送に係る放送の有無に従って、第1及び第2チューナ部が制御される。
【0050】
S304にてcountry_availability_flagの値が「0」の場合や、S305にてcountry_codeが示す国コードにユーザの自国がなかった場合には、S116に進む。これ以降の処理は第1実施形態の場合と同様である。つまり第2チューナ部102が使用され、緊急警報放送チャンネルリストに記載されている、緊急警報放送を放送するチャンネルを選局し、TMCC起動制御信号を監視する処理が行われる。
【0051】
次に、リスト作成部115及び国別チャンネル判定部516で実行される緊急警報放送チャンネルリストの作成処理例について、図7の動作フローチャートに沿って説明する。なお、S201乃至209のステップは第1実施形態に関する図4にて説明済みであるため、それらの説明を省略し、S207とS208との間に挿入したS408乃至410について説明する。
S408にて国別チャンネル判定部516はPMTに含まれる国別受信可否記述子を抽出する。次のS409にて国別チャンネル判定部516は、国別受信可否記述子内のcountry_availability_flagの状態を解析する。その結果、country_availability_flagの値が「1」の場合、S410に進むが、その値が「0」の場合、S202に戻る。
【0052】
S410にて国別チャンネル判定部516は、country_codeが示す国コードと、初期設定時に設定された設置情報を比較し、選局しているチャンネルがユーザの自国のチャンネルか否かを判定する。その結果、country_codeが示す国コードにユーザの自国があった場合、選局しているチャンネルは自国の緊急警報放送を放送するチャンネルであると判定される。そしてS208に進んで当該チャンネルを放送受信チャンネルリストに設定する処理が行われる。こうして設定し終わった放送受信チャンネルリストが緊急警報放送チャンネルリストとして使用される。一方、S410にて、country_codeが示す国コードにユーザの自国がなかった場合、何も設定せずにS202に戻る。
【0053】
以上のように第2実施形態によれば、自国のみならず他国の放送を視聴できる放送受信環境において、ユーザが外国の放送チャンネルを選局している時でも自国の緊急警報放送を受信することができる。
【符号の説明】
【0054】
100 デジタル放送受信装置
101 第1チューナ部
102 第2チューナ部
103 第1復調部
104 第2復調部
105 TS処理部
106 音声処理部
107 映像処理部
108 音声出力部
109 映像出力部
111 リモコンコード受信・解釈部
112 記憶部
113 制御部
114 緊急警報放送の受信制御部
115 緊急警報放送チャンネルリスト作成部
516 国別チャンネル判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波を受信可能な複数のチューナ手段によって複数のチャンネルを同時に受信する機能を有する放送受信装置であって、
前記複数のチューナ手段のいずれかによって視聴中のチャンネルが緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを判定し、当該チャンネルが緊急警報放送を放送しないチャンネルであると判定した場合、当該チューナ手段とは別のチューナ手段を用いて、緊急警報放送を放送するチャンネルであることが予め判明しているチャンネルを選局するように制御する制御手段を備えることを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かが不明なチャンネルを巡回して前記チューナ手段で選局するように制御し、選局したチャンネルについて緊急警報放送に係る放送の有無を示す信号を検出することを特徴とする、請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、選局したチャンネルで緊急警報放送に係る放送が実施されることを示す信号を検出し、当該チャンネルが放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っているチャンネルであると判断した場合、緊急警報放送を受信するように制御することを特徴とする、請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かが不明なチャンネルを巡回して前記チューナ手段で選局して、緊急警報放送の起動制御信号の有無を検出し、検出結果に基づいて緊急警報放送に係る放送受信チャンネルリストを作成するリスト作成手段を備えたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の放送受信装置。
【請求項5】
チャンネル毎に緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを示す情報を前記リスト作成手段が放送受信チャンネルリストに記憶しておき、
緊急警報放送を放送しないチャンネルが選局された場合、当該チャンネルを選局したチューナ手段とは別のチューナ手段によって、緊急警報放送が放送されるチャンネルを選局するように前記制御手段が制御することを特徴とする、請求項4に記載の放送受信装置。
【請求項6】
放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っているか否かを示す情報を前記リスト作成手段が放送受信チャンネルリストに記憶しておき、
前記放送受信装置の設置場所向けに放送サービスを行っていないチャンネルが選局された場合、当該チャンネルを選局したチューナ手段とは別のチューナ手段によって、緊急警報放送が放送されるチャンネルを選局するように前記制御手段が制御することを特徴とする、請求項4に記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記チューナ手段で選局したチャンネルが自国向けの放送チャンネルであるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって視聴中のチャンネルが自国向けの放送チャンネルであると判定された場合、当該チャンネルが緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを判定して前記チューナ手段による選局を制御する受信制御手段と、を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の放送受信装置。
【請求項8】
放送波を受信可能な複数のチューナ手段によって複数のチャンネルを同時に受信する機能を有する放送受信装置の制御方法であって、
前記複数のチューナ手段のいずれかによって視聴中のチャンネルが緊急警報放送を放送するチャンネルであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて視聴中のチャンネルが緊急警報放送を放送しないチャンネルであると判定された場合、当該チャンネルを選局したチューナ手段とは別のチューナ手段を用いて、緊急警報放送を放送するチャンネルであることが予め判明しているチャンネルを選局する制御ステップと、を有することを特徴とする放送受信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−23816(P2011−23816A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164886(P2009−164886)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】