説明

放送受信装置

【課題】快適な受信状態を維持し最適な受信レベル得る放送局を選局する。
【解決手段】電子地図情報記憶部16は、所定区間の道路単位に、選局可能な放送局、放送局の周波数、同じ番組を放送している可能性のある放送局を識別するための系列局番号及び選局可能な放送局の優先度を放送局情報として記憶し、位置情報制御部15は与えられた現在の位置情報により電子地図情報記憶部16に記憶されている道路を特定し、特定した道路の放送局情報を取得し、選局判断部18は受信レベル検出部12により検出された受信レベルが低下した際に、位置情報制御部15により取得された放送局情報に基づき選局すべき放送局を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の移動体において、デジタル放送やアナログ放送を受信するための放送受信装置に関し、特に、デジタル放送用やアナログ放送用等の放送受信部と、カーナビゲーション装置等に用いられるGPS(Global Positioning System)位置検出部と、電子地図情報により現在走行中の道路情報を取得可能な放送受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル方式やアナログ方式のテレビ、ラジオ等の地上波放送では、各地域に配置された多くの放送局が放送を行なっている。これら地域毎の放送局が送信する放送電波の周波数配置や放送する番組はそれぞれ異なっている。このため、自動車等の移動体が移動しながら放送を受信している場合、受信可能な放送局は走行している場所によって次々に変化し、ある放送局の番組を視聴していても、受信地域が変わればその番組は受信不可能となる。
【0003】
そのため、放送地域をまたぐ場合等に受信電波が徐々に弱くなってきた場合には、ユーザーが自分で別の受信可能な放送局の受信を行うか、受信機が何らかの手段で別の放送局に自動的に選局することになる。自動的に選局を行う場合、受信電波の強度を検出して電波が弱くなってきた際に、何らかの手段で次に選局すべき放送局を特定し、その局に再選局する手段が必要になる。
【0004】
この課題に対する従来例として、例えば特許文献1に示すナビゲーション装置は、局から発せられる電波を受信する受信部と、受信部で受信した電波の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、車両の位置を測位する位置測位部と、局からの電波を受信可能な地域を示すエリア情報を記憶したエリア情報記憶部と、位置測位部から得られる車両の位置情報をエリア情報記憶部に記憶されたエリア情報と照合し、車両の位置情報に基づいた局を選択するエリア選択部と、受信部において受信可能な局が複数存在する場合、受信レベル検出部より得られる各局からの電波の受信レベル及びエリア選択部から得られる車両の位置情報に基づいた局に基づき、受信する局を判断して受信部に選局させる選局判断部とを備えている。
【0005】
また、例えば特許文献2に示す受信装置は、多重された伝送信号から希望する信号を分離する多重信号分離手段と、該多重信号分離手段で分離した信号を復調する信号復調手段と、該信号復調手段の復調結果として出力されたデータから任意のデータを分離するデータ分離手段と、受信装置の位置を検出する位置情報検出手段と、各手段の制御を行なう制御手段と、受信装置の位置に応じた分離すべき信号のチャンネルの対応を表わす選局情報を記憶する選局情報記憶手段とを備え、制御手段は、データ分離手段から、選局情報を取得して選局情報記憶手段に記憶させる一方、制御手段は、位置情報検出手段が出力する位置情報と選局情報記憶手段に記憶した選局情報とに基づき、多重信号分離手段で分離すべきチャンネルを決定している。
【0006】
図7は放送局の放送エリアの境界を走行する場合を説明する図である。従来の放送受信装置は、何れもエリア情報(選局情報)という地域の範囲での受信可能な放送局の情報を使用しているため、図7に示すように、少しの間だけある放送局Aの放送エリアを外れて放送局Bの放送エリアに入り、また元の放送エリアAに戻るような道路を走行中には、あるエリアを外れた時点で再選局がおき、また元のエリアに戻ると元の放送局に再選局するといったことが頻繁におき、実際は再選局動作をしなくても良い場合でも、再選局動作を行うことによって受信が途切れてしまい、快適な受信状態を維持できなくなるような状況が発生する。
【0007】
また、エリア境界に近い山間部等で電波状況が悪く、エリア情報では放送局Aに含まれるが、実際には別の放送局Bしか受信できないような状況も存在し、このようにエリア情報のみでは最適な受信レベルの放送局を判断できない場面が存在してしまう。
【0008】
【特許文献1】特開平9−270720号公報(段落0010)
【特許文献2】特開2001−53635号公報(段落0009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の放送受信装置は以上のように構成されているので、放送エリアの境界を走行する場合に、頻繁に再選局動作を行うことによって受信が途切れ、快適な受信状態を維持できなくなると共に、最適な受信レベルの放送局を選局できないという課題があった。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、頻繁な再選局動作を防ぎ快適な受信状態を維持できると共に、最適な受信レベルの放送局を選局できる放送受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る放送受信装置は、放送電波を受信する放送受信部と、該放送受信部により受信された放送電波の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、所定区間の道路単位に、選局可能な放送局、放送局の周波数、同じ番組を放送している可能性のある放送局を識別するための系列局番号及び選局可能な放送局の優先度を放送局情報として記憶している電子地図情報記憶部と、与えられた現在の位置情報により上記電子地図情報記憶部に記憶されている道路を特定し、特定した道路の放送局情報を取得する位置情報制御部と、上記受信レベル検出部により検出された受信レベルが低下した際に、上記位置情報制御部により取得された放送局情報に基づき選局すべき放送局を判断し、上記放送受信部に放送局の周波数を指定して選局を指示する選局判断部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、頻繁な再選局動作を防ぎ快適な受信状態を維持できると共に、最適な受信レベルの放送局を選局できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による放送受信装置の構成を示すブロック図である。この放送受信装置は、放送受信部11、受信レベル検出部12、GPS受信部13、補助測位部14、位置情報制御部15、電子地図情報記憶部16、地図情報制御部17及び選局判断部18を備えている。
【0014】
図1において、放送受信部11は、放送局からの放送電波を受信すると共に、選局判断部18からの指示に基づき指定された放送局の選局を行う。
受信レベル検出部12は放送受信部11により受信された放送電波の受信レベルを検出する。
【0015】
GPS受信部13はGPS信号を受信し現在の位置を測位して緯度、経度による位置情報を出力し、補助測位部14はGPS受信部13による測位を補助するための種々の位置測位用センサである。
【0016】
位置情報制御部15は、受信レベル検出部12により検出された受信レベルが低下した際に、GPS受信部13及び補助測位部14から与えられた最新の位置情報に基づき、地図情報制御部17を介して、電子地図情報記憶部16に記憶されている道路を特定し、特定した道路の電子地図情報記憶部16に記憶されている放送局情報を取得する。
【0017】
電子地図情報記憶部16は、電子地図の道路単位に、選局可能な放送局、放送局の周波数、同じ番組を放送している可能性のある放送局を識別するための系列局番号及び選局可能な放送局の優先度を放送局情報として付加した電子地図情報を記憶している。
【0018】
地図情報制御部17は位置情報制御部15からの位置情報に基づき電子地図情報記憶部16に記憶されている電子地図情報に含まれる放送局情報を取得して位置情報制御部15に通知する。
【0019】
選局判断部18は、受信レベル検出部12により検出された受信レベルが低下した際に、位置情報制御部15により取得された放送局情報に基づき選局すべき放送局を判断し、放送受信部11に放送局の周波数を指定して選局を指示する。
【0020】
図2は電子地図情報記憶部16に記憶されている電子地図情報に含まれる道路を説明する図である。例えば、図2に示すように、交差点間に道路1〜道路7を指定し、指定した道路単位に放送局情報が付加されている。
【0021】
図3は電子地図情報記憶部16に記憶されている放送局情報に含まれる道路単位に付加された選局可能な放送局を説明する図である。例えば、図3に示すように、交差点間毎にA局又はB局等の放送局からの放送電波が受信可能であることが記憶されている。
【0022】
図4は電子地図情報記憶部16に記憶されている放送局情報の例を示す図である。図4に示すように、道路単位に、受信可能放送局、放送局の周波数、同じ番組を放送している可能性のある放送局を識別するための系列局番号、選局可能な放送局の系列優先度の情報が含まれている。
【0023】
図4において、受信可能放送局における英文字は放送局の放送施設の場所を示し、例えば放送施設が存在する県を示している。英文字に続く数字は系列局番号を示す。この系列局番号は、キー局に対応してその県における系列局に与えられた番号で、同じキー局に対する系列局には同じ系列局番号が与えられている。例えば、受信可能放送局A_1と受信可能放送局B_1は、放送局の放送施設が存在する県は異なるが、同じキー局に対するそれぞれの県の系列局であることを示している。すなわち、受信可能放送局に記載された英文字と数字の組み合わせにより系列局を特定している。
【0024】
通常、同じキー局に対する系列局では同じ番組を放送している可能性が高いので、地域をまたいで走行中に受信する放送局を自動的に切り替えて選局する場合には、この系列局番号を用いて、現在受信中の系列局と同じ系列局に切り替えるような処理が可能になる。
【0025】
また、図4において、系列優先度は、同じ地点(道路)で同じキー局に対する複数の県の系列局からの放送電波を複数受信可能な場合、その地点(道路)で、どの系列局からの放送電波の受信感度が良いか等の理由で、どの系列局からの放送電波を優先して受信するのが良いかを表す値である。例えば、ある地点(道路)で、同じキー局に対応する系列局A_xとB_xの両方からの放送電波が受信可能な場合に、その地点(道路)では、系列局A_xの方がより系列局B_xよりも受信感度が良く、安定した受信が可能な場合には、系列優先度は系列局A_xが1で、系列局B_xは2として、系列局A_xの方が選局の際の優先度が高いことを示している。
【0026】
次に動作について説明する。
移動中に放送受信部11がある放送局からの放送電波を受信し、受信レベル検出部12が放送受信部11により受信された放送電波の受信レベルを検出して位置情報制御部15及び選局判断部18に通知する。放送エリア境界に近づいて受信している放送電波が弱くなり、受信レベル検出部12により検出された受信レベルが低下した場合に、位置情報制御部15は、GPS受信部13及び補助測位部14からの最新の位置情報に基づき、地図情報制御部17を介して、電子地図情報記憶部16に記憶されている道路を特定し、特定した道路の電子地図情報記憶部16に記憶されている図4に示すような放送局情報を取得する。
【0027】
選局判断部18は、受信レベル検出部12により検出された受信レベルが低下した際に、位置情報制御部15により取得された放送局情報に、現在受信中の放送局(系列局)が放送局情報内にあるかどうか調べ、ある場合には、そのまま現在の放送局(系列局)からの放送電波の受信を続行し、現在受信中の放送局(系列局)が放送局情報に含まれておらず、現在受信中の放送局(系列局)の系列番号と同じ系列番号の放送局(系列局)がある場合には、その中で最も系列優先度が最も高い放送局(系列局)を次に選局すべき放送局と判断し、その放送局の周波数を選局情報として放送受信部11に通知し、指定した周波数での放送電波の受信を指示する。
【0028】
放送受信部11は、選局判断部18からの指示に基づき、指定された放送局の選局を行い放送電波の受信を行う。
【0029】
図5は電子地図情報記憶部16に記憶されている放送局情報に含まれる道路単位に付加された選局可能な放送局を説明する図である。上記図3では、交差点間毎にA局又はB局等の放送局からの放送電波が受信可能であるということが記憶されているが、交差点間が長い道路の場合には、道路の途中で受信レベルの高い最適な放送局が変わる可能性があるため、図5に示すように、交差点間を複数の道路に分割し、分割した道路の単位で、それぞれに選局可能な放送局を記憶することで、よりきめの細かい設定を行うことができる。
【0030】
図6は電子地図情報記憶部16に記憶されている放送局情報に含まれる道路単位に付加された選局可能な放送局を説明する図である。この図6では、1つの道路でも走行方向により受信レベルの高い最適な放送局が変わる可能性があるため、各道路の走行方向毎に選局可能な放送局を記憶している。この場合、位置情報制御部15は、GPS受信部13及び補助測位部14からの位置情報により、その道路をどちらの方向に走行しているかを検出して、位置情報と走行方向情報に基づき放送局情報を取得する。
【0031】
上記のように、電子地図情報内の全ての道路毎に放送局情報を記憶すると、電子地図情報記憶部16に記憶されるデータ量が非常に大きくなってしまう。そこで、放送局の放送局エリア情報を別のデータとして持たせ、例えば、地図をメッシュ状に分割し、そのメッシュ毎を1つのエリアとして定義したり、放送局から半径XXKm内毎を1つのエリアとして定義したり、ある県単位を1つのエリアと定義したりといったように道路単位よりも広い範囲の所定のエリアを定義し、そのエリアを特定する位置情報を保持し、そのエリア単位に図4に示すような放送局情報を持たせても良い。
【0032】
この場合、再選局動作を行う際に、道路単位に放送局情報がない場合は、現在位置と放送局の放送エリア情報から放送局情報を取得して選局を行うようにする。これにより、放送局の選択が難しい道路にのみ道路単位に放送局情報を入れておくだけで良く、電子地図情報記憶部16に記憶されるデータ量を削減することができる。
【0033】
以上のように、この実施の形態1によれば、電子地図情報記憶部16が所定区間の道路単位に、選局可能な放送局、放送局の周波数、同じ番組を放送している可能性のある放送局を識別するための系列局番号及び選局可能な放送局の優先度を放送局情報として記憶し、位置情報制御部15が与えられた現在の位置情報により電子地図情報記憶部16に記憶されている道路を特定し、特定した道路の放送局情報を取得し、選局判断部18が、受信レベル検出部12により検出された受信レベルが低下した際に、位置情報制御部15により取得された放送局情報に基づき選局すべき放送局を判断し、放送受信部11に放送局の周波数を指定して選局を指示することにより、頻繁な再選局動作を防ぎ快適な受信状態を維持できると共に、最適な受信レベルの放送局を選局できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態1による放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による放送受信装置の電子地図情報記憶部に記憶されている電子地図情報に含まれる道路を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1による放送受信装置の電子地図情報記憶部に記憶されている放送局情報に含まれる道路単位に付加された選局可能な放送局を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1による放送受信装置の電子地図情報記憶部に記憶されている放送局情報の例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による放送受信装置の電子地図情報記憶部に記憶されている放送局情報に含まれる道路単位に付加された選局可能な放送局を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態1による放送受信装置の電子地図情報記憶部に記憶されている放送局情報に含まれる道路単位に付加された選局可能な放送局を説明する図である。
【図7】放送局の放送エリアの境界を走行する場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0035】
11 放送受信部、12 受信レベル検出部、13 GPS受信部、14 補助測位部、15 位置情報制御部、16 電子地図情報記憶部、17 地図情報制御部、18 選局判断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送電波を受信する放送受信部と、
該放送受信部により受信された放送電波の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
所定区間の道路単位に、選局可能な放送局、放送局の周波数、同じ番組を放送している可能性のある放送局を識別するための系列局番号及び選局可能な放送局の優先度を放送局情報として記憶している電子地図情報記憶部と、
与えられた現在の位置情報により上記電子地図情報記憶部に記憶されている道路を特定し、特定した道路の放送局情報を取得する位置情報制御部と、
上記受信レベル検出部により検出された受信レベルが低下した際に、上記位置情報制御部により取得された放送局情報に基づき選局すべき放送局を判断し、上記放送受信部に放送局の周波数を指定して選局を指示する選局判断部とを備えた放送受信装置。
【請求項2】
上記電子地図情報記憶部は交差点間の道路単位に放送局情報を記憶していることを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項3】
上記電子地図情報記憶部は交差点間を複数の区間に分割した道路単位に放送局情報を記憶していることを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項4】
上記電子地図情報記憶部は所定区間の道路単位及びその道路の走行方向毎に放送局情報を記憶し、
上記位置情報制御部は与えられた現在の位置情報により上記電子地図情報記憶部に記憶されている道路を特定し、特定した道路の与えられた走行方向の放送局情報を取得することを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項5】
上記選局判断部は、上記位置情報制御部により取得された放送局情報に、現在受信中の放送局が選局可能な放送局として含まれている場合には、上記放送受信部に現在の放送局からの受信を続行させることを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項6】
上記選局判断部は、上記位置情報制御部により取得された放送局情報に、現在受信中の放送局が選局可能な放送局として含まれていない場合には、現在受信中の放送局と同じ系列局番号を有し優先度が最も高い放送局を選局すべき放送局として判断することを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項7】
上記電子地図情報記憶部は道路単位よりも広い範囲の所定のエリア単位に放送局情報を記憶し、
上記位置情報制御部は、与えられた現在の位置情報により上記電子地図情報記憶部に記憶されているエリアを特定し、特定したエリアの放送局情報を取得することを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−312110(P2007−312110A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139182(P2006−139182)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】