説明

放電プラズマを発生させ制御するための方法及び構成

少なくとも2つの一定の間隔で配置された電極(13、14)を有する放電空間(11)の中の放電プラズマを制御するための方法及び構成。ガス又はガス混合物が放電空間(11)の中に注入され、ACプラズマ付勢電圧を電極(13、14)に印加するため、電極(13、14)を付勢するための電源(15)が用意される。少なくとも1つの電流パルスが発生し、プラズマ電流及び変位電流を引き起こす。プラズマを制御するための手段が用意され、フィラメント放電などの低い動的抵抗対静的抵抗比を有するプラズマ変化に関連した局所的電流密度変化を制御するために変位電流変化率を適用するように構成される。こうした急速な変化をパルス発生回路(20)を使用して抑制することによって、均一なグロー放電プラズマが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、グロー放電プラズマなどの放電プラズマを発生させ制御するための方法及び制御構成に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも2つの一定の間隔で配置された電極を有するプラズマ放電空間の中でガス又はガス混合物中の放電プラズマを制御するための方法に関し、電極にACプラズマ付勢電圧を印加することによって少なくとも1つの電流パルスが発生し、プラズマ電流と変位電流とが引き起こされる。さらなる態様において、本発明は、少なくとも2つの一定の間隔で配置された電極と、放電空間内にガス又はガス混合物を注入するための手段と、少なくとも1つの電流パルスを発生させプラズマ電流と変位電流とを引き起こすために電極にACプラズマ付勢電圧を印加することによって電極を付勢するための電源と、プラズマを制御するための手段とを有する、放電空間内に放電プラズマを発生させ制御するための構成に関する。本方法及び構成は、(大気圧グロー放電プラズマなどの)実質的に大気状態のもとでプラズマを発生させるのに良く適しているが、例えば0.1〜10barのより広範囲な圧力に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
大気圧グロー(APG,Atmospheric Pressure Glow)放電プラズマは、実際にはとりわけ非破壊材料表面改質のために使用される。グロー放電プラズマは比較的低い出力密度(low power density)のプラズマであり、通常、真空状態又は不完全な真空環境で発生する。
【0003】
最も一般的には、プラズマはプラズマチャンバの中で、又は、向かい合って配置された2つの平行板電極の間のプラズマ放電空間の中で発生させる。しかし、また、プラズマは、例えば隣接して配置された電極などの他の電極構成を使用して発生させることもできる。最近は、大気圧でプラズマを生成することに関心が高まってきている。プラズマは、ガス又はガス混合物中でAC電源手段から電極を付勢することによって発生させる。
【0004】
安定で均一なプラズマは、例えば純粋ヘリウムガス又は純粋窒素ガス中で発生させ得ることが知られてきた。しかし、このガス中に不純物又は他のガス又は化学組成物がppmレベルで存在するとすぐに、プラズマの安定性は著しく低下する。安定性を破壊する成分の代表的な例はO、NO、COなどである。
【0005】
プラズマの不安定性は、高い電流密度プラズマの中で成長するか又はプラズマを局所的に消失させる。大きい密度の種及びプラズマ内の高周波の衝突を伴って、APGは急速な正帰還を示す。すなわち、プラズマのイオン化の不規則な局所的増加が指数関数的に高まる、それゆえに、不安定性は、高電流密度プラズマの中で成長するか又はプラズマを局所的に消失させる。プラズマ電流の指数関数的増加現象はグローアーク転移として知られている。この結果、電流アークが生じグロー放電プラズマを維持することができない。その代わりにフィラメント放電とグロー放電との組合せが生じる。
【0006】
大気圧の空気中での平行板電極間のフィラメント放電は、オゾンを大量に発生させるために使用されてきた。しかし、フィラメント放電は、プラズマ・フィラメントが表面を突き刺し又は不均一に処理する傾向があり比較的高いプラズマ電流密度を伴うことから、材料の表面処理の用途は限定されている。
【0007】
不安定性はプラズマの絶縁破壊の間の任意の時点に生じる可能性があり、特に、プラズマパルスの絶縁破壊時の状況だけでなく(例えばAC電圧を使用して発生させる)プラズマパルスの終了時の状況も、不安定性の成長をもたらすことが観察されている。これらの不安定性は、ストリーマ形成、グローアーク転移、又はグロー放電消滅などの主要なプラズマ不安定性に発展する場合がある。
【0008】
欧州特許出願公開第EP−A−1548795号は、プラズマパルスの開始時のAPGプラズマ中の不安定性を抑制するための方法及び構成を開示している。これは、プラズマパルスの開始時に、電極に印加された電圧がやがて負の変化(dV/dt)を有するように制御することによって変位電流の急峻な相対的低下を得ることによって達成される。
【0009】
電極と直列に配置された飽和状態のインダクタンスを、こうした制御メカニズムを実行するために使用することができる。また、電子的帰還回路を、帰還電圧制御を実行するために使用することもできる。この従来技術文献の中で変位電流及び電圧の制御によるプラズマ安定化が提案されている。ストリーマ電流は変位電流によって統計的なファミリーとして制御することができ、電圧の降下によって抑制することができると主張されている。しかし、この方法は、あまりに大きな電圧降下がプラズマを完全に抑制しグローを発生させられないので、放電の初期段階の絶縁破壊時に使用するのは困難である。
【特許文献1】欧州特許出願公開第EP−A−1548795号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、プラズマ絶縁破壊可制御性が向上し、極めて均一なグロー放電をもたらす能力を備えたAPGプラズマを制御するための方法及び構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上記に定義した前文による方法が提供され、この方法では放電の制御は、低い動的抵抗対静的抵抗比を有するプラズマ変化に関連した局所的な電流密度変化を制御するために、変化率dI/Idtを有する変位電流を適用するステップを含む。低い動的対静的抵抗比(r/R)は、例えば、0.1以下である。低い動的抵抗対静的抵抗比を有するプラズマの種類は例えばフィラメントプラズマであり、これらは電流密度の局所的摂動(例えば10μm程度の領域中の)によって特徴づけられる。グロープラズマは、約1値を有する比較的高い動的抵抗対静的抵抗比によって特徴付けられる。少なくとも1つの電極の容量性インピーダンスは、誘電体バリア電極、又はその電極に直列のコンデンサによって得ることができる。また、動作中に、2つの金属電極を使用している場合はプラズマシースを形成することができ、それがまた容量性インピーダンスをもたらす。より大きい、又はより小さい電流密度を有するプラズマの傾向はその動的抵抗に反映される。プラズマ電流密度は、摂動の面積からは独立した、ある遅延時間を伴って変位電流の相対的変化率dI/Idtを追従する。したがって、局所的な電流密度変化でさえもその対応する動的抵抗によって個別化される。これは、極めて局所的な電流の大きな密度変化(フィラメント)さえも変位電流の急速な変化に厳密に従い、そうすることによって電流の大きな密度変化を促進又は抑制することができることを意味する。より低い電流密度変化は急速な変位電流変化を追従することができない。このようにして、フィラメントの時間的及び空間的制御を変位電流によって制御することができる。任意の電子回路によっても検出することができない低い動的抵抗対静的抵抗比を有する極めて局部的な摂動さえもこのようにして制御することができる。より一般的には、電流密度の変化が形成される確率はプラズマが発生している間の変位電流の変化によって制御される。したがって本方法は、任意のプラズマに対して、高い電流密度変化(フィラメント)の形成される確率を局所的に制御するための解決策を提案する。本方法は発生した大気圧プラズマの特性を制御するために使用することができる。本方法は、可能な限り均一性の高いグロープラズマを得るために任意の望ましくない不安定性を抑制するために使用することができる。一方、また、本方法は、例えば大気環境中でオゾンを発生させるために使用できるフィラメント放電の発生を促進するために使用することもできる。
【0012】
不安定性を制御するための本方法及び構成において、プラズマ発生の2つ段階を、単一の制御方法を使用して特定的に制御することができる。本実施形態では、変位電流変化率が少なくともプラズマパルスの絶縁破壊時に適用される。少なくともこの段階における不安定性を抑制することによって、フィラメント放電が成長することがなく安定なグロー放電プラズマが形成される。さらに、変位電流変化率は、不安定性をさらに良好に抑制するためにプラズマパルスの消失時にも付加的に適用することができる。変位電流変化率は、変位電流の急速な相対的変化を使用して適用することができる。
【0013】
さらなる実施形態で、変位電流変化率は、印加電圧変化率dV/Vdtを2つの電極に適用することによってもたらされ、印加電圧変化率はACプラズマ付勢電圧の動作周波数に概ね等しく、変位電流変化率は印加電圧変化率dV/Vdtより少なくとも5倍高い値を有する。変位電流変化率は、例えば10倍超高く、100倍超高い値さえ使用することができる。これは、プラズマパルスの開始時におけるフィラメントプラズマの成長を著しく抑制する結果をもたらし、同時に均一且つ安定なグロープラズマの形成を可能にする。
【0014】
さらなる実施形態において、プラズマを制御することは、マッチングインダクタンスと、2つの電極及び放電空間によって形成されるシステム容量(又は配線容量等を含むAPG発生器の全容量)を備えたLCマッチング回路によって得ることができる。さらに、本実施形態においては、プラズマ絶縁破壊と同期させるために、パルス発生回路は電極に直列とする。パルス発生回路は、電極のいずれか1つに接続して形成することができ、又は、パルス発生回路は電極のそれぞれに設けることができる。LCマッチング回路は、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する。本実施形態によるLCマッチング回路とパルス発生回路との組合せは、パルス発生回路の周波数をプラズマ絶縁破壊に同期させ、且つ常に変位電流変化率を発生させる。
【0015】
さらなる態様において本発明は前文で定義した構成に関する。本態様において、少なくとも1つの電極は動作中の容量性インピーダンスを備え、プラズマを制御するための手段は、低い動的抵抗対静的抵抗比を有するプラズマ変化に関連した局所的電流密度変化を制御するために、変位電流変化率を適用するように構成される。さらに、プラズマを制御するための手段は、上記に説明された方法の実施形態を実施するように構成することができる。
【0016】
特定の実施形態において、パルス発生回路はコンデンサを備え、そのコンデンサの容量はその大きさにおいてシステム容量には実質的に等しい。直列共振回路は、プラズマパルス発生時の大きな周波数電流が必要なために平衡が崩され、電源が提供する変位電流は、大きな電流を提供しようとする電源の強制によって降下する傾向にあるので、これはパルス発生回路の極めて単純な実施である。
【0017】
他の実施形態において、チョークがパルス発生回路の中で使用され、このチョークはプラズマ絶縁破壊時に飽和状態になるように構成される。プラズマ電流の急上昇とAPG容量の放電を引き起こすチョークの共振を利用した後に、変位電流及び電圧の降下がこの実施形態の回路を使用して発生する。変位電流の急上昇は変位電流の降下時間の効果を弱めている。チョーク動作はパルスを発生するコンデンサを放電させることとこのパルスとプラズマとの間の共振とに基づく。共振回路によって、飽和によるチョークインピーダンス変化の効果が最大化され、変位電流降下がプラズマ絶縁破壊と同期化される。
【0018】
1つの特定の実施形態(並列共振回路)において、パルス発生回路はチョーク及びチョークに並列に接続されたパルスコンデンサより構成され、チョークはプラズマ絶縁破壊時に実質的に飽和する寸法(長さ)を有する。パルス発生回路は、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する。この場合には、パルス発生回路は全体として容量性インピーダンスを有する。このパルス発生回路は、変位電流の制御を行うために必要な電流のパルス整形を施すようになされる。
【0019】
さらなる特定の実施形態(LC直列共振回路)において、パルス発生回路は、チョークと共振コンデンサとの直列回路及びかかる直列回路に並列に接続されたパルスコンデンサより構成され、チョークはプラズマ絶縁破壊時に実質的に飽和する寸法(長さ)を有し、パルス発生回路はACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する。このタイプの回路は変位電流のより急峻な降下(変化率dI/Idtのより高い値)を可能にする。
【0020】
なおも、さらなる実施形態において、パルス発生回路は、チョーク及び共振コンデンサの直列回路並びにこの直列回路に並列に接続されたパルスコンデンサより構成され、チョークはプラズマ絶縁破壊時に概ね飽和する寸法(長さ)を有し、直列回路は誘導性インピーダンスを有する。この場合には、パルスコンデンサは、チョーク飽和の時間内の瞬間をプラズマ絶縁破壊により近づけるように変えるために使用される。
【0021】
チョークを使用した上記の実施形態のために、LCマッチング回路は追加のマッチング回路コンデンサを備え、該マッチング回路コンデンサの容量はその大きさにおいてシステム容量に実質的に等しい。この特徴は、APG回路容量を大きくし、本制御構成の動作及び安定性をさらに先へと向上させることができる。
【0022】
プラズマを制御するための手段についての上記実施形態のすべてにおいて、(例えばフィラメント放電によって引き起こされる高い局所的電流密度の結果としての)プラズマ電流の急速な変化は、不安定性を効果的に抑制する変位電流の大きな降下を得る要因となる。
【0023】
変位電流の中に大きなパルスを得る要因をもたらすことによって上記の実施形態を調整することにより、APGプラズマの安定化と反対のこと、すなわち、線状放電プラズマの促進を得ることができる。
【0024】
本発明は、ポリオレフィン素材などのポリマー素材(substrate)の表面処理のために適用することができる。表面処理を使用することにより、ポリマー素材の接触角を効果的に減少させることができる。このために、ガス混合物をプラズマ放電空間の中に用意してもよく、このガス混合物はネオン、ヘリウム、アルゴン、及び窒素などの希ガス又はこれらのガスの混合体を含む。ガス混合物はNH、O、CO又はこれらのガスの混合物をさらに含むことができる。少量の酸素又は水の存在下であっても均一なグロー放電プラズマを生成することができ、素材の接触角を効果的に減少させることができる。本発明は、1kHzより高い、例えば250kHzより高い、例えば50MHz迄の動作周波数の使用を可能にし、これは発生したプラズマの出力密度を以前には到達できなかったレベル、例えば、コロナ放電によって得ることができるレベルと同程度又はそれより高いレベルまで、高めることを可能にする。
【0025】
以下に別段の記載がない限り、本発明によるグロープラズマを安定化させるためのプロセス及び/又は手段の説明は主に、変位電流の正の半サイクルの期間についてのものである。変位電流の負の半サイクルについての同一の説明は、符号を逆に変えることによって等しくもたらされることができる。したがって、フィラメントの発生の防止は、本発明によって、プラズマ絶縁破壊の間に(負の)変位電流振幅を急峻に増加させることによって負のサイクルの中でも達成させることができる。
【0026】
本発明による構成及び方法は、その素材がガラス、ポリマー、金属等であることができる表面活性化処理などの素材のプラズマ表面処理のための及び親水性又は疎水性表面の生成のための装置、化学気相成長プロセスのためのプラズマ装置、揮発性有機化合物の分解のためのプラズマ装置、ガス相から有毒化合物を除去するためのプラズマ装置、殺菌又はドライ洗浄プロセスなどにおける表面洗浄目的のためのプラズマ装置など、しかしこれらに限定されない広範な種類の用途に関して実際に使用することができる。
【0027】
さらに、本方法及び構成は、一般に放電デバイス中のプラズマ絶縁破壊を制御するために使用することができる。この放電デバイスは、高圧放電ランプ、UV放電ランプ、無線周波数反応器等のグループから選択される1つである。
【0028】
いくつかの実施形態を使用し添付の図面を参照して以下により本発明について詳細に議論する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、一般に知られた大気圧グロー放電(APG)プラズマ装置又はデバイス10の概略的実施形態を示す。装置10は、(図1に示されるようにプラズマチャンバ内に配置されていてもよい)プラズマ放電空間11と、矢印17で示されたガス又はガス混合物を大気圧状態のもとで放電空間11の内部に供給するための手段12とを備える。プラズマ放電空間11内でグロー放電プラズマを発生させ且つ持続させ、物体18の表面19を処理するために、少なくとも2つの向かい合って配置された電極13及び14が、放電空間11内で好適にはAC電力手段であるAC電源手段15に中間変圧器段16を介して接続されている。前記AC電源手段の周波数は1kHzと約50MHzとの間、例えば約250kHzに選択される。
【0030】
距離dを隔てた2つの向かい合った電極13及び14が示されているが、装置10は必ずしも対向して配置される必要はない複数の電極を備えることができる。例えば、電極13、14は隣接して配置することができる。好適には、少なくとも1つの電極は、二次電子放出率が0.01〜1の誘電性材料(dielectric material)で覆われる。
【0031】
本発明によるプラズマ制御構成の例示の実施形態を図3に示す。この図で、電極13、14から電源(すなわち、AC電源手段15及び図示されるときは中間変圧器段16)に戻る電力の反射を減少させるために、インピーダンスマッチング構成が、プラズマ制御構成の中に設けられる。以下に説明される実施形態では、こうしたインピーダンスマッチング構成が設けられるが、分かり易くするためにさらに議論はされない。インピーダンスマッチング構成は、周知のLC並列又は直列マッチング回路を使用して、例えば、インダクタンスLmatchingを有するコイルと構成上の残りの容量(すなわち、主に並列インピーダンス23(例えばコンデンサ)及び/又は電極13、14間の放電空間11の容量によって形成される)とを使用して、実施することができる。しかし、こうしたインピーダンスマッチング構成は、プラズマ絶縁破壊の間に発生することがある高周波電流振動をフィルタリングすることができない。
【0032】
高周波電源15は、中間変圧器段16とインダクタンスLmatchingを有するマッチングコイルとを介して電極13、14に接続される。さらにパルス発生回路20が下部電極14に接続される。さらなるインピーダンス23が、電極13、14とパルス発生回路20からなる直列回路に並列に接続される。
【0033】
図2にAPGプラズマ発生のための典型的な電圧−電流特性を示す。プラズマは、流れる電流に左右されない初めに上昇するAC印加電圧を使用して発生させる。絶縁破壊電圧を越える印加電圧の時点で、プラズマが電極13、14間に形成され、電流が急速に上昇する。プラズマパルスは(最大電流に対応する)最大強度に到達し、次いで、印加電圧がカットオフ値Vcut−offに到達するまで減少し、この値以降は、電流は実質的にゼロに戻る。負のAC電圧サイクルについて同じプロセスが繰り返される。本発明の実施形態によるプラズマパルス発生及び制御における2つの瞬間が、参照番号1(プラズマ絶縁破壊時の不安定性を抑制するための変位電流変化率の印加)及び2(プラズマ停止時の不安定性を抑制するための変位電流変化率の印加)によって示される。
【0034】
より一般的には、本発明は、発生したプラズマの電流密度を極めて局所的に、すなわち(10umまでのサイズの)プラズマ・フィラメントの領域において制御するための方法を提供することを意図している。これは、より大きな、又はより小さな電流密度を有するプラズマの傾向はその動的抵抗r、
【0035】
【数1】

【0036】
に反映されるという事実を利用することによってなされ、ここで、jは局所的電流密度でありSは局所プラズマの表面積である。プラズマが、例えば、誘電体バリア(例えば電極13、14のうちの1つの)に接触しているときはRC回路が形成される。また、プラズマシースが形成される場合は2つの金属電極を使用した動作中にも形成させることができる。さらに、外部コンデンサを電極13、14の1つに直列に接続させることもできる。このプラズマ電流密度は、
【0037】
【数2】

【0038】
によって与えられる遅延τを有する変位電流の相対的変化dI/Idtに従い、ここで、εは放電空間11の誘電率、dは電極13、14間の距離である。
【0039】
この遅延は摂動の面積から独立であり、したがって、電流密度の局所的摂動すらもそれらのRC定数によって個別化される。これは、プラズマの極めて局部的な電流の大きな密度変化も(低い動的抵抗対静的抵抗比{r/R<0.1}を有する、例えばフィラメント)、変位電流の急速な変化に密接に追従し、したがって、これらのプラズマの変化を促進又は抑制できることを意味する。より小さな電流密度変化(高い動的抵抗対静的抵抗比r/R、例えばグロー放電については約1、を有する)は、急速な変位電流変化を追従できない。このようにして、フィラメントの時間的及び空間的密度の制御は、変位電流によって制御することができる。任意の電子技術によって検出できない極めて局部的な摂動すらもこのような方法で制御することができる。
【0040】
より一般的には、特定の電流密度を有するプラズマの変化が形成される確率は、プラズマが発生している間の変位電流の変化によって制御される。したがって、本方法は、任意のプラズマに対して、高い電流密度変化フィラメントの形成確率を局所的に制御するための解決手法を提供する。
【0041】
フィラメント形成はプラズマ絶縁破壊時及びプラズマ消滅時により起こりやすいので、フィラメント放電を抑制するために以下の式、
【0042】
【数3】

【0043】
で示され、ここで、τbreakdownは絶縁破壊が成長する時間である(一般に100ナノ秒の範囲である)。
【0044】
より一般的には、以下の式、
【0045】
【数4】

【0046】
で示され、ここで、τinstabile_growthは、同様に通常100ナノ秒の範囲の不安定性の成長時間である。したがって、理想的には、dI/Idtは10MHzの範囲内にあるべきである。
【0047】
上記のことは、フィラメント放電を減衰させるための状態に関連することに留意されたい。また、本方法は、フィラメント放電を増強させ又は減衰させるために適用することもできる。減衰させるためには上記の積は1以上でなければならない。
【0048】
原則として、変位電流の急速な相対的変化はプラズマを制御するために使用しなければならない。こうした大きな変化をプラズマ放電の全持続期間にわたって発生させることは技術的に困難である。したがって、例示の実施形態では、強力な変位電流パルスが、不安定性のリスクがより大きくなるプラズマ絶縁破壊及びプラズマ消滅の臨海領域において発生する。
【0049】
パルス発生回路20が、パルス絶縁破壊(プラズマパルスの立上り)時に形成される場合がある不安定性を抑制(又は増強)するために、及びまた又は、プラズマパルスの減衰(プラズマパルス最大値の後の)時の不安定性を抑制(又は増強)するために、所望のパルス整形を得るように構成される。
【0050】
本出願の実施形態において、主たるアイデアは、パルス発生回路20を共振LC直列回路(すなわち、インピーダンスマッチング回路)に使用することである。このようにして、(AC印加電圧の正弦の半周期よりもはるかに短い持続期間を有する)プラズマパルスが発生すると、直列共振回路は、(より大きな電流を供給させる電源15の強制に起因する)より大きな周波数電流の要求によって平衡を崩され、電源から供給される変位電流は降下する傾向がある。パルス発生回路20の最も単純な実施はプラズマ電極13、14を直列としたコンデンサである。効率が良いためには、その容量はプラズマ反応器の容量(すなわち、電極13、14間の放電空間11の容量)と同程度でなくてはならない。こうした回路は、N高周波放電の場合に及び場合によってはAr高周波放電の場合でも効率が良いことが証明された。
【0051】
従来技術のシステムでは、飽和状態のチョークがパルス発生回路20に使用されてきたが、しかし、プラズマパルス発生を伴う複雑なタイミングは付加的な問題を提起する。以下に説明されるような本発明の例示の実施形態では、非線形素子として再びチョーク21が、しかしさらなる付加的素子と共に使用される。チョーク動作は、パルスを発生させるためにコンデンサを放電させることと、このパルスとプラズマとの間の共振とに基づいている。
【0052】
チョーク21をプラズマ絶縁破壊に同期させ変位電流を発生させるために新しい構成が設計された。この設計では、チョーク21は、(キャパシタを形成している)プラズマ電極13、14に直列に取り付けられ、直列共振回路が形成される(図4及び図5に示された実施形態を参照されたい)。チョーク21はその巻線のところでコンデンサ22(Cpulse)に並列に取り付けられ、したがって、パルス発生回路20を形成している。コンデンサ22(Cpulse)とチョーク21(Lchoke)との回路20は、電源15の周波数で共振するように選択される。この共振回路によって、飽和に起因するチョークインピーダンス変化の効果が最大化され、変位電流降下がプラズマ絶縁破壊に同期する。プラズマ絶縁破壊まで、回路(すなわち、電極13、14)を通して流れる電流は主に共振周波数RF成分からなり、共振回路は抵抗Rrlcを有する抵抗性となる。プラズマの絶縁破壊の後では、RF周波数の大きな電流成分が発生し、チョーク21は飽和状態になる(すなわち、低インピーダンスを有する)が、共振回路のインピーダンスは増加する。したがって、チョークコンデンサ回路は準容量性となり、下部電極14上の電圧はIRrlcからI/ωC(pulse)へと急速に上昇する。このような方法で、変位電流の降下が起きる。
【0053】
チョーク21が飽和していない(且つ値Lchokeを有する)場合の小さなプラズマ電流においては、より高い周波数を有するプラズマパルスは、共振回路を通過しないで容量Cpulseを有するより大きなインピーダンス22を通過する。
【0054】
こうしたパルス発生回路20を有するAPG装置10のためのプラズマ制御構成の第1実施形態を概略的に図4に示す。こうした制御構成において、チョーク21上の電圧降下は、チョーク21に並列なコンデンサ22の短絡を引き起こす飽和チョークインピーダンス(Lsaturation)の減少によって発生する。図4の実施形態では、チョーク21はグラウンド側(すなわち電極14)に取り付けられている。また、パルス発生回路は、高圧側に取り付けることもでき、その場合にはチョーク21が高圧側(電極13)に取り付けられる。また、グラウンド側と高圧側との両方でパルス発生回路を使用することもできる。示された並列コンデンサ23は、挿入された容量と、電極13までの高圧(HV,high voltage)電線の容量と、グラウンドまでのHV電極13の容量との総和(すなわち、全体の値Cparallel)を表す。
【0055】
また、もし抵抗器がそのインピーダンスが高から低に突然変化する非線形特性を有するならば、インピーダンスRを有する抵抗器をチョーク21の代わりに使用することができる。最初に、わかり易くするためこの回路はチョーク21の変わりに抵抗器Rを使用して議論される。この場合、抵抗器の上の電圧は、
【0056】
【数5】

【0057】
となり、ここで、Rpulseは低インピーダンス状態にある抵抗器の抵抗値、Cpulse、は抵抗器Rに並列なコンデンサ22の容量、及びVはインピーダンス降下が引き起こされる前の初期電圧である。変位電流変化に関してはこの変化はAPG装置10の電圧変化に依存し、この電圧変化は、順にAPG反応器(すなわち、電極13、14間の空間)に直列に接続された電線及び電極の寄生容量に依存する。パルス電流が極めて高く電源15によっては供給されることができないと仮定すると、この場合は、電力を供給するためのエネルギーはコンデンサ22によって提供されなくてはならず(すなわち、V/Rpulse>>Igenerator)、下記、
【0058】
【数6】

【0059】
が当てはまる。
【0060】
効率的なパルス絶縁破壊のためには、RCパルス回路によって生成される電圧変化は電源15によって発生するものよりもはるかに大きくなければならない。
【0061】
寄生容量がAPG容量よりもはるかに大きい条件を保証するためには、RCパルス回路20が下部電極14に接続されているならば、大きな容量23がAPG電極13、14に並列に挿入される。このようにして、グラウンドに対するHV電極13の容量は増加される。RCパルス回路20がHV電極13に接続されているなら、この場合はグラウンドに対する下部電極14の容量はより大きな容量を直列に取り付けることによって増加させなければならない。
【0062】
また、コンデンサ22の値(Cpulse)がAPG容量(CAPG)と同程度の大きさであることも重要である。インピーダンスは、さもなければコンデンサ22を有意な電圧まで充電することができないので(電圧降下の前の)抵抗器Rのインピーダンスよりもはるかに大きくなくてはならない。
【0063】
もし電線の寄生容量に依拠するだけならば、パルス発生回路20システムの効果は、その場合にはCAPG/Cparallel>>1及びCpulse<<CAPGであるのでゼロに準じた状態になる。回路最適化のための条件が満たされるならば、変位電流の降下は、
【0064】
【数7】

【0065】
によって与えられる。この式は、パルス発生回路20の電圧変化が有意である時間、すなわち、Rpulsepulse程度の時間期間の間だけ有効である。Rpulseが大きく、しかし大きすぎないならば(Rpulse≒1/ωCpulse)、回路の中の全電流はパルス発生によってあまり大きく乱されることはないが、それにもかかわらず、APGキャパシタ(電極13、14間の)上の変位電流はこの式によって近似的に与えられる速度で降下する。低い電流パルスの上記の場合の注目すべき例外と共に、RC並列パルスシステムは実際に、後になって減衰されるインピーダンス降下の瞬間における変位電流の突然の増加によって定義される変位電流パルスを発生させる。そのため、フィラメント形成の程度の減少は十分に無視できる程度であることができる。
【0066】
使用に適した実施形態においては、非線形素子として抵抗器Rが使用されるのではなく図4に示されるようにチョーク21が使用される。チョーク21が飽和されていない場合はインダクタンスLchokeを有し飽和されたときにはより小さなインピーダンスLsaturatedにすぐに切り替わると仮定して単純化することができ、dI/Idtに関する上の式は、
【0067】
【数8】

【0068】
と書き換えることができる。
【0069】
効率的なdI/Idtの発生のためには、変位電流の降下(対数的微分)は少なくとも1/μs程度である。抵抗器Rの代わりにチョーク21を使用する場合は、いくつかの補足的な条件が考慮される。例えば、チョーク21はプラズマ絶縁破壊の前に飽和されるが、しかし、この飽和は、LmatchingとAPG装置10内に存在する残りの静電容量とによって形成されるシステムに電力供給するLC共振回路に著しい影響は及ぼさない。共振回路20の摂動は、チョーク21が飽和した場合にコンデンサ22(Cpulse)は短絡しAPG装置10の容量が増加するという事実に起因する。共振回路20の摂動を回避するために、下記の要件、
【0070】
【数9】

【0071】
が設定される。
【0072】
したがって再び、より大きな容量Cparallelを有するコンデンサ23が、APG電極13、14と本実施形態のパルス発生回路20との直列回路に並列に取り付けられる。
【0073】
チョーク21を飽和させるためには、印加電圧の振幅がプラズマパルスの絶縁破壊電圧に等しい場合に計算されたチョーク21を流れる電流は、少なくとも飽和電流に等しくならなければならない。しかし、チョーク21はプラズマの絶縁破壊以前には十分に飽和せることはできず、さもなければ、チョークの飽和によって発生されたパルスはプラズマの絶縁破壊の終了することになる。そのため、条件は、APGプラズマの電圧が絶縁破壊電圧Ubrに等しい場合にチョーク21がなおも飽和状態にあることである。
【0074】
【数10】



【0075】
ここで、Imax chokeは(もしもチョーク21が飽和していないならば)チョーク21を通じて流れることができる最大電流、すなわち、チョークの飽和していないインピーダンスLchokeを考慮して計算した値である。Imax chokeは、ω×Lchoke×Cpulse=1の場合に共振を有する。これは、チョーク21が低い電圧(及びAPGに印加される電力)で飽和することを可能にし、それにより、プラズマがより低い絶縁破壊電圧を備えて動作することを可能にする。しかし、また、パルス回路上の電圧降下もω×Lchoke×Cpulse=1の場合には共振を有し、それによってより大きな全電圧がシステムに加えられなければならない。
【0076】
電源15の電圧の関数として表されるチョーク電流の共振は、ωchoke(CAPG+Cpulse)=1に移動する。ωchokepulse>1の場合にだけチョーク21の大きなインピーダンス降下がチョークの飽和の結果として発生することに留意されたい。チョーク21が飽和し始めるとインピーダンスは低下するが飽和を強めるためにチョーク21の電流は増加しなければならない。この条件が飽和の結果として満たされるならば、チョーク21はパルス発生回路の共振周波数、
【0077】
【数11】

【0078】
にほぼ等しい周波数帯を有する高い電圧電流パルスを発生させる。
【0079】
変位電流降下のメカニズムを以下に説明する。プラズマ絶縁破壊の間に、変位電流降下及び電圧降下を、プラズマ絶縁破壊の結果としての電流周波数帯の変化による共鳴励起に起因して得ることができる。これは、インピーダンス共振に起因する。インピーダンスはω×Lchoke×(Cpulse+CAPG)=1において最小値を有する。プラズマがオンの場合は、プラズマのAPG容量はプラズマによって短絡され、次いで、パルス発生回路20に直列の唯一の残りの容量は、主に、APG容量と同じ程度の大きさのイオンシースのものである。誘電体容量はシースの容量に比較して無視できる大きさである。したがって、新しい共振が、ω×Lsaturated×(Cpulse+CAPG)=1であるところの周波数ωresについて得られ、ここで、CAPGはプラズマがオンのときのAPGの等価容量である。チョーク21の周波数帯がプラズマ特性周波数に一致する場合は、プラズマへの電流は引き上げられ、APG容量及び並列容量23は放電し、電圧及び変位電流降下が発生する。
【0080】
電圧降下及び変位電流降下のメカニズムは以下のステップからなる。
プラズマがオフの場合に、インピーダンスの変化によって電流共振周波数がプラズマ特性周波数と同じ程度の値に変化し、
APG等価容量がCpulseと同程度である場合は、飽和チョーク21によって発生する電圧が高められたパルスもまた電流共振の帯域内の周波数を有し、プラズマ電流共振が引き起こされ、
大きな電流によってAPGプラズマ上の電圧が減少する。
【0081】
上記の状態は、それらが共振に関連付けられているのでω×Lchoke×Cpulse=1についての限られた値の範囲だけに許される。
【0082】
結論として、重要な設計基準は、
APG容量の大きさと同程度のパルスシステム容量、
parallel>CAPG
saturated<Lchoke(これはチョーク21のフェライトコアの選択のための条件である)、
saturated×Cpulse<10−12
ωplasmasaturated(CAPG+Cpulse)=1、
チョーク飽和と大きなインダクタンス減少を達成するためにωchokepulse>2〜3、又は、チョークインピーダンスが主に抵抗である超強力な飽和共振の場合はωchokepulse=1、
である。
【0083】
ここで、図5の概略図を参照して本発明の代替の実施形態を議論する。パルスコンデンサ22に並列に、チョーク21と容量Cresを有するさらなるコンデンサ24とを備える直列共振LC回路を取り付ける。本実施形態のチョーク21は図4の実施形態の中で使用されたチョーク21と異なる特性を有することは明らかであろう。さらなるコンデンサ24の容量Cresは、この回路がAPG装置10の動作周波数において共振するように設定される。
【0084】
【数12】

【0085】
初めに、この場合には、チョーク21はコンデンサ22(Cpulse)の放電によって飽和状態になることが妨げられる。これは、周波数が、
【0086】
【数13】

【0087】
に等しくなる場合にだけ生じる。
【0088】
プラズマ絶縁破壊までは、回路を通じて流れる電流は主に共振周波数RF成分のものであり、共振回路は抵抗Rrlcを有する抵抗性である。プラズマ絶縁破壊の後では、RF周波数の大きな電流成分が発生され、チョーク21は飽和状態になり(すなわち低インピーダンスを有し)、共振回路のインピーダンスは増加する。チョーク21が飽和できない低いプラズマ電流においては、より高い周波数を有するプラズマは共振回路を通過するのではなくより大きなインピーダンスCpulseのコンデンサ22を通過する。したがって、チョークコンデンサ回路は準容量性になり、下部電極14上の電圧は、少なくとも、
【0089】
【数14】

【0090】
の急速な上昇を有する。
【0091】
チョーク飽和の効果が考慮されるならば、急上昇はより大きく、すなわち、
【0092】
【数15】

【0093】
となることができる。
【0094】
本実施形態における電圧急上昇を最大化させるためには、下記の条件、
1/ω(Cpulse+Cres)<<Rrlc
が要求される。
【0095】
同様に、チョーク21は、プラズマ電流によってより強い飽和状態なるためにはプラズマ絶縁破壊の近くではわずかに飽和すべきであり、したがって、
sat=0.8UbrωC
となる。
【0096】
上記の条件において、電圧急上昇はプラズマ電流に依存し、したがって帰還もプラズマ電流に依存し、(したがって低い電流における帰還はごく少なくなる)ことが理解できよう。解決法は、インダクタンス飽和電流を、プラズマ絶縁破壊時にチョーク21がプラズマからの任意の寄与なく、より飽和するような方法で構成することである。この場合には、電圧の急上昇はチョーク飽和によって発生させることができる。
【0097】
図4に示された実施形態のチョーク及びコンデンサの並列構成は、より長いパルスの利点だけでなく変位電流のより緩慢な降下の利点も有する。図5に示された実施形態のチョーク及びコンデンサの直列構成は、プラズマとの良好な同期化及び変位電流のより急峻な降下(これは絶縁破壊のために最適である)の利点を有する。それでもなお、持続時間は絶縁破壊及び/又はカットオフの範囲に限定される。両方の実施形態の同時取り付け(例えば、HV電極13に接続された構成の一方と、下部電極14に接続された他方)がより良好な結果をもたらすことができる。
【0098】
さらに、APG電極13、14のいずれかの側での2つの並列構成、又はAPG電極13、14のいずれかの側での2つの直列構成、又は1つの側での並列構成と他の側での直列構成が、さらなる安定性の向上をもたらす。
【0099】
なお、さらなる実施形態が図5の実施形態と同じ構成を有するが、この場合にはパルス発生回路20は必ずしも共振性である必要はないが、全体として誘導性インピーダンスを有する必要がある。この実施形態では、コンデンサCres24は、チョーク21の飽和の瞬間をプラズマ絶縁破壊のより近くに移動させるために使用される。
[実施例]
【0100】
本方法及び制御構成が、ポリマ材料の表面を処理するための実験設備の中で使用された。
【0101】
Ar及びN又は純粋Nを使用した大気圧で動作する標準的なAPGシステムは極めて不安定であり、したがって、産業用途のためには適していない。さらに、APGプラズマの中に加えられる出力密度(通常、<<1W/cm)はコロナ装置の中(6W/cmまで)よりも低い。励起周波数を高めることはプラズマの出力密度(有効性)を高めるが、しかし、通常状態では放電は、処理の均一性を極度に低下させるストリーマの中に局在したものになる。
【0102】
本大気圧誘電体バリア放電(DBD,dielectric barrier discharge)設備の中では、APGプラズマはAr−N混合物又は純粋Nを使用して高周波(HF)で発生させられ、ここでプラズマ安定性は、極めて強力且つ均一な表面エネルギー増加をもたらす変位電流を制御することによって(専用マッチング回路を使用して)制御された。HF電源が、プラズマの出力密度をコロナ放電と同程度に、典型的には6W/cmまで増加させるために使用された。本発明による制御構成の形式において、安定化手段がない場合には放電は強度にフィラメント状態になったが、安定化手段を使用した場合には放電は均一で拡散されたグロープラズマに切り替わった。
【0103】
参照用に、(ポリエチレン(PE)及び)ポリプロピレン(PP)試料を異なるプラズマ線量で処理するために、セラミックバーを装備した小型のソフタル(Softal)コロナ処理機、型式VTG3005(コロナ放電処理)装置が使用された。プラズマ線量の増加と共に接触角の緩やかな減少が見られた。しかし、実用的なプラズマ線量を用いて得ることができる最小接触角は、典型的にはPEについて60°及びPPについて65°であった。プラズマ線量をさらに高いレベルに増加させることは、ポリオレフィンの表面を低分子量酸化材料(LMWOM、Low Molecular Weight Oxidized Materials)の形成による艶なしの状態にさせる。照射時間に応じて接触角はその最低値まで漸近的に減少した。
【0104】
本発明による制御構成を使用した設備では、電極設備は標準的な平板の誘電体バリア放電(DBD、Dielectric Barrier Discharge)構成からなっていた。両電極13、14は誘電体で覆われた。上部電極13は固定された誘電体からなり、下部電極14はプラズマによって処理されるべきポリオレフィンを含んでいた。DBDシステムは、高圧変圧器16(図3を参照されたい)を含む高周波電源15によって電力を供給された。このシステムは240kHzの共振周波数で動作され、5対1の割合のアルゴン及び窒素からなるガスがAPG電極に供給された。送られた出力密度は約5W/cmであった。静的な設備が使用されたのでポリオレフィンは下部電極14の上に固定された。短い照射時間(1秒未満)が最も望まれるのでプラズマはパルスにされた。必要とされる照射時間を実現するために、2つの異なるパルス持続時間100ms及び25msが適用された。後者の設備のアルゴン窒素プラズマは、著しくより効果的であり、処理の0.5秒後にはすでに接触角の減少は約30°まで可能であることがわかった。さらに、処理はこれがAPGプラズマであるので極めて均一であり、他の低周波APGプラズマと同程度に極めて安定であった。一般に、アルゴン及び1〜50%の窒素(例えば、10〜30%の窒素)のガス混合物又は概ね純粋な窒素ガスが適切な結果をもたらした。かなりの量の酸素又は水の汚染物質が存在する場合でさえ、安定且つ高エネルギーのAPGプラズマを発生させることができた。
【0105】
また、本発明による制御構成は、表面処理等のための大気圧グロー放電の発生に加えて様々な他の用途に使用されることができることもわかった。例えば0.1barと10barとの間の範囲の亜大気又は加圧された環境の中で、他のタイプのプラズマを発生させることができる。高圧放電ランプ、UVランプ等、さらに無線周波数発生器までも、電極間の電界を使用して異なる種類のものが形成される任意のデバイスが、本発明が提供する安定性向上の恩恵を受けることができる。
【0106】
上記の説明の中では向かい合って配置された電極に関して議論し関連図面に示したが、また、本発明は、隣接して配置された電極対を用いて、又は他の構成のAPG装置の電極を用いて実施することもできる。
【0107】
当業者は、添付の特許請求の範囲に定義した本発明の斬新且つ創意に富んだ範囲から逸脱することなく多くの変更及び追加が行われることができることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】従来技術のシステムによるプラズマ発生構成の簡略化された図である。
【図2】APGプラズマ絶縁破壊の代表的な電圧電流特性を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の電気的な図である。
【図4】本発明の実施形態のより詳細な図である。
【図5】本発明のさらなる実施形態のより詳細な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの一定の間隔で配置された電極(13、14)を有するプラズマ放電空間(11)の中で、ガス又はガス混合物の中で放電プラズマを発生させ制御するための方法であって、少なくとも1つの電流パルスがACプラズマ付勢電圧の前記電極(13、14)への印加によって発生し、これによりプラズマ電流及び変位電流が生じ、前記放電プラズマの制御が、低い動的抵抗対静的抵抗比を有するプラズマの変化に関連した局所的電流密度変化を制御するために変位電流変化率dI/Idtを適用するステップを含む方法。
【請求項2】
変位電流変化率をプラズマパルスの少なくとも絶縁破壊時に適用するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変位電流変化率を少なくともプラズマパルスの絶縁破壊時及びプラズマパルスのカットオフ時に適用するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
変位電流の変化が、印加電圧の変化率dV/Vdtを前記2つの電極(13、14)に適用することによってもたらされ、前記印加電圧の変化が、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数に概ね等しく、変位電流変化率dI/Idtが、前記印加電圧変化率dV/Vdtよりも少なくとも5倍大きい値を有する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
プラズマの制御が、マッチングインダクタンス(Lmatching)及び、2つの電極(13、14)と放電空間(11)とによって形成されるシステム容量を備えたLCマッチング回路並びに前記電極(13、14)の少なくとも1つに直列であるパルス形成回路(20)よって得られる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
LCマッチング回路が、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの一定の間隔で配置された電極(13、14)と、ガス又はガス混合物を放電空間(11)の中に注入するための手段(12)と、少なくとも1つの電流パルスを発生させプラズマ電流及び変位電流を引き起こすために前記電極(13、14)にACプラズマ付勢電圧を印加することによって前記電極(13、14)を付勢するための電源(15)と、前記プラズマを制御するための手段とを有する、放電空間(11)の中に放電プラズマを発生させ制御するための構成であって、
前記プラズマを制御するための手段が、低い動的抵抗対静的抵抗比を有するプラズマの変化に関連した局所的電流密度変化を制御するために変位電流変化率dI/Idtを適用するようになされた構成。
【請求項8】
プラズマを制御するための手段が、変位電流変化率を少なくともプラズマパルスの絶縁破壊時に適用するように構成された請求項7に記載の構成。
【請求項9】
プラズマを制御するための手段が、変位電流変化率を少なくともプラズマパルスの絶縁破壊時及び前記プラズマパルスのカットオフ時に適用するように構成された請求項7に記載の構成。
【請求項10】
プラズマを制御するための手段が、印加電圧の変化率dV/Vdtを2つの電極(13、14)に適用することによって変位電流変化をもたらすようにさらに構成され、前記印加電圧変化率が、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数に概ね等しく、変位電流変化率dI/Idtが、前記印加電圧変化率dV/Vdtよりも少なくとも5倍高い値を有する、請求項7、8又は9に記載の構成。
【請求項11】
プラズマを制御するための手段が、マッチングインダクタンス(Lmatching)と、2つの電極(13、14)及び放電空間(11)によって形成されるシステム容量と、前記電極(13、14)の少なくとも1つに直列なパルス形成回路(20)とによって形成されたLCマッチング回路を備えた請求項7〜10のいずれかに記載の構成。
【請求項12】
LCマッチング回路が、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する請求項11に記載の構成。
【請求項13】
パルス形成回路(20)がコンデンサを備え、該コンデンサの容量がその大きさにおいて前記システム容量に実質的に等しい請求項11又は12に記載の構成。
【請求項14】
パルス形成回路(20)がチョーク(21)及び前記チョーク(21)に並列に接続されたパルスコンデンサ(22)より構成され、前記チョーク(21)が、プラズマ絶縁破壊時に実質的に飽和する寸法(長さ)を有し、前記パルス形成回路(20)が、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する請求項11又は12に記載の構成。
【請求項15】
パルス形成回路(20)が、チョーク(21)及び共振器コンデンサ(24)の直列回路並びに前記直列回路に並列に接続されたパルスコンデンサ(22)より構成され、前記チョーク(21)が、プラズマ絶縁破壊時に実質的に飽和する寸法(長さ)を有し、前記パルス形成回路(20)が、ACプラズマ付勢電圧の動作周波数にほぼ等しい共振周波数を有する請求項11又は12に記載の構成。
【請求項16】
パルス形成回路(20)が、チョーク(21)及び共振器コンデンサ(24)の直列回路並びに前記直列回路に並列に接続されたパルスコンデンサ(22)より構成され、前記チョーク(21)が、プラズマ絶縁破壊時に実質的に飽和する寸法(長さ)を有し、前記直列回路が誘導性インピーダンスを有する請求項11又は12に記載の構成。
【請求項17】
LCマッチング回路が追加のマッチング回路コンデンサ(23)を備え、前記コンデンサの容量がその大きさにおいてシステム容量に実質的に等しい請求項11〜16のいずれかに記載の構成。
【請求項18】
ポリマー素材の表面処理のための請求項1〜6のいずれかに記載の方法の使用、又は請求項7〜17のいずれかに記載の制御構成。
【請求項19】
表面処理が、プラズマ放電空間(11)の中にガス混合物を提供するステップを含み、該ガス混合物が、ネオン、ヘリウム、アルゴン、窒素又はこれらのガスの混合物を含む請求項18に記載の使用。
【請求項20】
ガス混合物が、NH、O、CO又はこれらのガスの混合物をさらに含む請求項19に記載の使用。
【請求項21】
動作周波数が、1kHzより大きく、例えば250kHzより大きく、例えば50MHzまでの周波数で使用される請求項18、19又は20に記載の使用。
【請求項22】
高圧放電ランプ、UV放電ランプ又は無線周波数反応器などの放電デバイスの中のプラズマの発生を制御するための、請求項1〜6のいずれかに記載の方法の使用、又は請求項7〜17のいずれかに記載の制御構成。
【請求項23】
化学的気相成長プロセスのためのプラズマの発生を制御するための請求項1〜6のいずれかに記載の方法の使用、又は請求項7〜17のいずれかに記載の制御構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−506496(P2009−506496A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527864(P2008−527864)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050209
【国際公開番号】WO2007/024134
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】