説明

放電ランプ、放電ランプを用いた投影用光源装置及び画像投影装置

【課題】 放電ランプに用いられる電極の構造、加工方法および電極とシール部の位置関係を更に改善することにより、効率が良く、寿命の長い放電ランプを得る事を課題としている。また、その電極を安価に製造でき、更に十分な強度を得る事を課題としている。
【解決手段】 発光管の両端に一対の電極を封着し、該電極は少なくとも電極芯棒の先端部が発光管の放電空間内に突出し、他端部が封着部に埋設された発光管からなる放電ランプにおいて、前記少なくとも一方の電極の電極芯棒は、少なくとも細径部が形成されており、前記放電空間内に突出する先端部側から前記封着部に埋設される他端部側にかけて電解研磨によりテーパー状に漸次細径化されると共に、該研磨面は平滑化されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ及び放電ランプを装着した光源装置に関し、特にそれら放電ランプに用いられる主にタングステンからなる電極の加工及び電極構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、UVランプ、フラッシュランプ、i線ランプなどの放電ランプは、一般照明用だけでなく日射装置用や防虫用、植物育成用、殺菌用、プロジェクタ用のバックライト等様々な用途として用いられており、我々の生活には欠かすことのできないものとなっている。しかし、近年では、省エネ等の要求により、益々放電ランプに対する高効率化や特性の維持 (寿命延長や色特性などの諸特性の変化の低減)への要望は強くなってきている。
【0003】
一般的に、前記放電ランプの殆どのものは、少なくともタングステンからなる一対の電極を有し、その電極間にて放電することにより、特定の光を得ている。しかし、これらの放電ランプでは、電極材料のスパッタリングによる発光管バルブの黒化や発光管シール部に埋没した電極後方側の電極芯捧とガラスとの熱的特性の差によるシール部のクラックなどの不具合が生じる。また、金属ハロゲン化物を添加した放電ランプは電極後方部分のシール部の隙間に金属ハロゲン化物が入り込み、電極物質との反応もしくはそのまま堆積することで寿命中に著しい色変化が起こる。
【0004】
このように、これらの不具合は電極に起因することが多く、それら電極を改良することにより効率改善や寿命改善が試みられている。
例えば、電極芯捧の放電空間側に、電極芯捧より太径の電極部を形成し、電極部の背方にて電極芯捧に巻装したコイル等と一体化することで、電極の放熱性を高められ、電極部の過剰昇温による電極物質の蒸発を抑制することで寿命を改善している。また、そのような電極を安価で製造でき方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平10−92377号公報(東芝ライテック)
【0005】
電極の各部位の温度を各々適切に保つために、電極の後方部に断面積を減らした段差部およびテーパー状の先細部を有することで解決する方法が提案されている。(特許文献2参照)これはランプ点灯時において電極の蓄熱効果及び先端部の適切な放熱効果により安定した効率の良い放電を得られる。また、発光管シール部に埋め込まれる電極芯捧は電極先端部に対して高温動作を必要としないため、電極後方部の一部を細径化することにより、電極先端から電極後方部への熱伝導を抑制し、放電によって生じる熱が電極後方部へ逃げるのを防ぎ、封止部の温度を低下させることができる。更に、封止部内に埋没した電極後方部分や金属箔とバルブのガラスとの熱膨張率差などにより応力を生じて起こる破裂や、密着性不足から起こる封入物の侵入等を抑制できる。
【特許文献2】特開2003−346708号公報(東芝ライテック)
【0006】
開示されている電極の加工方法は記述やその形状から、従来からタングステンの加工方法に用いられている一般的な切削加工により製造したものと思われる。しかし、切削加工はコストが非常に高く、また加工時間も長くかかるうえに、加工時に加工を施すタングステンに熱が加わることでタングステンの再結晶化が起こり、強度低下が生じるため、そのタングステンからなる電極を放電ランプに用いる場合、放電ランプの製造工程やまた製品として使用されている間に、振動等が加わると電極が折れる等の問題がある。
【0007】
また、特許文献2の図中にも示されている電極芯棒は、段差部の角部を有する。このため、ランプ始動時に放電が開始されるポイントが、電極先端からでは無く電極後方部の段差部となる可能性が高くなりバックアークの原因となる。これにより電極スパッタや破裂等を引き起こし易いという問題がある。
【0008】
更に、発光管を作成する際に、発光管材料である石英管を加熱し、圧着封止により電極等の金属材料を気密シールしているが、電極後方部の断面積を減らした段差部および先細としたテーパー状部を有しているとしても、断面積を減らす度合いが大きい場合は、その圧着封止加工時に折れる可能性があり、また逆に断面積を減らす度合いが小さい場合は電極の蓄熱効果や、圧着封止時の電極芯捧部分や金属箔と発光管(バルブ)のガラスとの気密性の向上等の効果が得られない。よって、電極後方部の細径化による特性、寿命の向上を図るには、ある適当な範囲内で電極の径を細くしなければ効果は得られない。
【0009】
また、シール部に封着される電極芯棒の長さも重要な要因の一つである。ある適当な範囲内で電極の径を細くしていても、シール部に封着される電極芯棒の長さが長すぎると、シール部の放熱効果が大きくなり、電極先端部の蓄熱効果が得られなくなる。逆に、シール部に封着される電極芯棒の長さが短すぎると振動等が加わった際に電極が折れる可能性が高い。よって、電極芯棒の径だけでなく、シール部に封着される電極芯棒の長さもある適当な範囲内にしなければ効果は得られない。
【0010】
この他に、短時間で加工でき、電極にほとんど負担をかけない複合電解研磨によって電極先端部や電極後方部分(発光管バルブの接触部)の表面の粗さを低減する方法が開示されている。このようにすることでシール部クラック等を防止し、寿命改善(不良率)を図ることが可能である。(例えば、特許文献3参照)
【特許文献3】特許第3447706号公報(エヌイーシーマイクロ波管)
【0011】
しかし、電極先端と電極後方の径はほとんどかわらないため、電極の先端部、後端部の温度を適切に保つことができず、電極先端部から電極後方部への熱伝導が大きいため、電極後方部分の温度が高くなり、シール部のクラックやハロゲン化物との反応等の不具合は否めない。
【0012】
以上のように、従来から電極を加工、処理を行うことで放電ランプの不具合の改善を図る提案はなされているが、低コストにて前記改善を行ったり、電極の強度を維持したり、寿命改善や効率改善するためには十分なものではない。しかし、近年の省エネ等の要求により低ワットで高効率の放電ランプが望まれ、さらなる特性改善、寿命の向上が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述のような問題点を考慮し、なされたもので、放電ランプに用いられる電極の構造、加工方法および電極とシール部の位置関係を更に改善することにより、効率が良く、寿命の長い放電ランプを得る事を課題としている。また、その電極を安価に製造でき、更に十分な強度を得る事を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の課題を解決するため、発光管の両端に一対の電極を封着し、該電極は少なくとも電極芯棒の先端部が発光管の放電空間内に突出し、他端部が封着部に埋設された発光管からなる放電ランプにおいて、前記少なくとも一方の電極の電極芯棒は、少なくとも細径部が形成されており、前記放電空間内に突出する先端部側から前記封着部に埋設される他端部側にかけて電解研磨によりテーパー状に漸次細径化されると共に、該研磨面は平滑化されていることを特徴とする。
【0015】
また前記電極芯棒の先端部は、コイル部が形成されており、該電極芯棒の細径部はコイル部の終端部から他端部側にかけて、電解研磨によりテーパー状に漸次細径化されると共に、平滑面を有することを特徴とする。
更に、前記発光管内に突出した電極芯棒の先端部側に形成されたテーパー部の最大径(Φ)
と他端部側の発光管封着部と放電空間との境界に形成された該電極の径(Φ)とが式1の関係を有し、
〔式1〕:0.3<Φ/Φ<0.9
かつ、前記電極芯棒の全長(L)と発光管封着部に埋設された電極芯棒の他端部の長さ(L)とが式2の関係を有することを特徴とする。
【0016】
〔式2〕:0.2<L/L<0.8
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電解研磨法を用いて電極後方部に細径加工を施した電極は、従来の切削加工方法と比較して十分な強度を保持し、かつ非常に短時間で安価に製造できる。また、この電極を放電ランプに用いることで、従来の方法で細径加工を施した電極を用いることで生じる上述のような不具合を改善し、更に細径化の度合いや位置関係を適切な範囲にすることで、効率が良く寿命の長い放電ランプを得ることができる。
以上の理由から、それらの効果を有する高圧放電ランプを組み込んだ照明器具やプロジェクタ等の光源装置の特性を向上させ、また長寿命化によりメンテナンス回数を従来と比較して低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本例では、電極の芯棒として用いるタングステン棒に細径加工を施し、従来の切削加工による製造方法と比較して、電極芯棒の強度を低下させる事は無く、更に短時間、且つ安価で加工できる。
また、その電極を高圧放電ランプの電極に用いる事で、効率や寿命などのランプ性能を向上させる事が出来る。
更に光源装置に、この高圧放電ランプを装着することによりランプ交換回数も少なく安価な光源装置が実現した。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は本発明に係る電極芯捧として用いるタングステン棒の加工方法を示す説明図、
図2は電解研磨法により細径加工を施した電極芯捧として用いるタングステン棒の例を示す図である。
【0019】
電極芯捧として用いるタングステン棒の根本部を電解研磨により細径化する加工例について説明する。
図1の電解研磨装置において、直流電源の陽極側には加工を行う全長15mm、直径φ0.8mmからなる電極芯捧として用いるタングステン棒1が取り付けられ、陰極側には短冊状の銅板2が取り付けられている。電解液3としては、5N水酸化ナトリウム水溶液を用い、その水溶液中に電極芯棒として用いるタングステン棒及び銅板を浸漬させる。このとき、タングステン棒は細径化を行いたい部分のみを浸漬する。この実施例では、全長15mmのタングステン棒のうち研磨する部分を8mmとする。しかし、電解研磨装置の電解液面が揺らぐため、電解研磨をする部分は一定にすることが出来ず、ばらついてしまう。このばらつきを考慮して約7mmを浸漬した。そして、30Vで20Aの電流を25s間流し電解研磨を施した結果、図2のように(a)の電界研磨加工していない電極芯捧と比較して、(b)の電界研磨を行った電極芯捧は加工部4が滑らかで連続的に径が細くなっていくテーパー形状に細径化することが出来た。また、電極端部の消耗も無く、全長が短くなることはなかった。電極のテーパー形状部の絞りの度合いは、直流電源の電圧、電流、研磨時間を変えることで制御できる。
【0020】
また、強度の実験を行うために比較用として切削加工により略同様の寸法に加工したタングステン棒を用意し、電解研磨により細径化したタングステン棒との強度の比較実験を行った。タングステン棒の細径加工が施されていない側の端部を固定し水平に保ち、タングステン棒の細径化部分の略中央部に対して垂直に荷重を加えていったところ、切削加工を行ったタングステン棒に対し、電解研磨法を用いて加工したタングステン棒の方が10倍以上の強度が得られた。これは、切削加工を施す場合、加工で生じる摩擦熱でタングステン棒が加熱し、再結晶化による強度低下を起こすのに対し、電解研磨では摩擦熱を発生させる事無く、タングステン棒を加工できるため、再結晶化などによる強度低下が起こらないからである。
【0021】
次に、タングステン棒に細径化加工を施すための、1本あたりの加工にかかるコスト比較を行ったが、切削加工に対し電解研磨の加工時間が短いため、コストも安くすむ。この時、切削加工で用いる加工機の回転数や、切削器具の接触圧力を増す事により加工時間を短縮することは可能であるが、その場合、更に摩擦熱が発生増すため一段と強度が低下することが判明した。
【0022】
以上から、電解研磨による電極芯捧として用いるタングステン棒の細径化加工は、従来から用いられている切削加工より低コスト、短時間で作成でき、また強度も高くなる事が判った。更に、電解研磨による加工部は、切削加工と比較して削り跡が残らず均一であり滑らかである事が判った。また、切削加工で生じる太径部と加工部の境界も角がなく滑らかで連続的に径が細くなっていくテーパー形状であった。
【0023】
次に、本発明の加工方法により作成された細径化加工が施されたタングステン棒を電極の芯棒に使用している電極を、高圧放電ランプの主電極として用いた実施例について説明する。
図3は、本発明に係る一般照明用放電ランプの実施の形態を示す概略面図である。この実施の形態では非線形セラミックコンデンサ6(FECと呼ばれる)を始動器として内蔵した定格電力400Wのメタルハライドランプを示している。
【0024】
高圧放電ランプ5は、図3に示すように最大外径φ22mm、最大内径φ20mm、内容積1.4×10mmからなる略円柱状の放電空間を有する石英製発光管7であり、その放電空間内には同一形状からなる主電極8a,8bが43mmの電極間距離で対向して配置されると共に、また一方の主電極8aに近接して補助電極9が封着されており、約60mgの水銀及び希ガス(アルゴン)が約2kPa(常温時)と沃化スカンジウム等の金属ハロゲン化物が総量で約40mg封入されている。また、発光管7の両端の主電極の外周部には保温膜10a,10bが被着されている。このような発光管7は一端にE39と呼ばれる口金11を有する窒素を適量封入した中央部に最大外径が約116mmの膨部を有する硬質ガラス製の外球12内に保持されている。
【0025】
また、外球内にはランプ始動に際し、始動電圧を発生するための非線形セラミックコンデンサ(FEC)からなる内部始動器6と、内部始動器にて発生した電圧やランプ内の回路に流れる電流等を制御するための3個の抵抗13が接続されている。
【0026】
更に、図4(b)は同一形状からなる前記一対の主電極8a,8bの拡大図である。なお比較として(a)には電界研磨加工をしていない電極の拡大図を示す。電極8a,8bは、前記タングステン捧加工方法を用いて作られた長さが全長15mm、径(Φ)1.0mmからなる細径加工の施されたタングステン棒からなる電極芯棒を有している。この電極芯捧のうち電極後方部側の約8mm分を電解研磨し、細径化した。電解研磨を行った約8mmのうち、4.5mmを発光管へシールする。そして、電極芯捧の電解研磨をしていない部分の径(Φ)は1.0mmであり、それに対して放電空間とシール部の境界部分の電極芯捧の径(Φ)を0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mmと変化させた。比較として、電解研磨による加工を施していない電極を準備した。図5には上記した電極の電界研磨部分、発光管へのシール位置、Φ、Φの位置関係を示している。なお、Oを境にA側が発光管へシールされている部分であり、B側が放電空間部となる。
【0027】
また、電極芯棒14の先端部側の端部から2mm離れた箇所には、φ0.5からなるタングステン線が、内側には疎巻きにて4ターン巻きまわされ、その外側には密巻きにて6ターン巻き回されコイル15を形成している。そして、そのコイル15の隙間には、酸化スカンジウムが含侵されている。
【0028】
このような高圧放電ランプを照明器具である光源装置に組み込み銅鉄安定器にて点灯試験を行った。結果を表1に示す。但し、電極芯棒の全長をLと発光管シール部に封着された電極芯棒の後端側の長さをLとした時、上記ランプはLを15mm、Lを4.5mmとして、L/L=0.3となるようにしている。これは、L/Lが0.8より大きいとシール部に封着された後端側の電極芯棒の放熱効果が大きくなり、電極先端部の蓄熱効果が得られなくなる。また、L/Lが0.2より小さいと振動等が加わった際に電極折れが生じるという結果が事前に行なった実験で得られているため、電極芯棒の全長であるLと発光管シール部に封着された電極芯棒の後端側の長さであるLが、次式を満足する範囲内で選んでいる。
〔式〕:0.2<L/L<0.8
【0029】
【表1】

【0030】
尚、各仕様共に5本のランプを作成して試験を行い、表中の明るさは比較例1の明るさを基準とし、5%以上の明るさが得られたものを○とし、明るさが得られないものを×とした。また、強度は落下試験を行い、電極が折れないものを○、電極が折れたものを×とした。そして、総合評価として明るさと強度の評価で両方とも○であったものを○、それ以外を×とした。
【0031】
以上の結果から、
式1:0.3< φ/φ <0.9
の範囲であれば良好な特性が得られた。また、φ/φが0.9以上の場合では、明るさ改善の効果がほとんど得られず、電極芯棒に細径加工を施さないものとの差が無く、特性改善の効果がみられない。一方、φ/φが0.3以下の場合には、ランプ作成中、並びにランプ点灯中に電極折れが発生することがわかった。
【0032】
前記実験で総合評価が○であったランプのライフテストを行った結果、5000時間時点でとくに問題は無かった。また、表1に5000hと100h点灯後の色温度の比率で表した色温度変化を示しているが、5000hで0.9以上にすることが出来た。
更に
式2:0.4< φ/φ <0.8
の範囲であれば、8000時間時点でも特に問題は無く、色温度変化も0.9以上であった。
【0033】
次に、ランプ電力や電極芯棒径等の差を確認するため、定格電力100W(アーク長17mm、内容積1.3×10mm)の前記400Wと寸法は異なるものの略同様の構造からなるメタルハライドランプを用い、前記同様の試験を行った。発光管内には量は異なるが前記同様の水銀や希ガスと共に金属ハロゲン化物が封入されている。
【0034】
尚、用いた電極芯捧は、芯棒径0.4mm、全長7mmであり、この電極芯捧のうち電極後端部側の約4.0mm分を電解研磨し、細径化した。電解研磨を行った約4.0mmのうち、3mmを発光管へシールする。そして、電極芯捧の電解研磨をしていない部分の径(Φ)は0.4mmであり、それに対して放電空間とシール部の境部分の電極芯捧の径(Φ)とし、この電極芯捧の径(Φ)を0.35mm、0.3mm、0.25mm、0.2mm、0.15mm、0.1mmと変化させている。比較として、電解研磨による加工を施していない電極を準備した。図5には上記した電極の電界研磨部分、発光管へのシール位置、Φ、Φの位置関係を示している。なお、Oを境にA側が発光管へシールされている部分であり、B側が放電空間部となる。
【0035】
図4(b)に示すように、この電極芯捧14の先端部から0.5mmの箇所に内側にはφ0.5からなるタングステン線が、疎巻きにて4ターン巻きまわされ、その外側には密巻きにて6ターン巻き回されている。そして、コイル15間には、スカンジアからなるエミッターが含侵されている。
このような高圧放電ランプを照明器具である光源装置に組み込み銅鉄安定器にて点灯試験を行った。
【0036】
試験の結果を表2に示す。但し、電極芯棒の全長をLと発光管シール部に封着された電極芯棒の後端側の長さをLとした時、上記ランプはLを7mm、Lを3mmとして、L/L=0.43となるようにしている。これは、L/Lが0.8より大きいとシール部に封着された後端側の電極芯棒の放熱効果が大きくなり、電極先端部の蓄熱効果が得られなくなる。また、L/Lが0.2より小さいと振動等が加わった際に電極折れが生じるという結果が事前に行なった実験で得られているため、電極芯棒の全長であるLと発光管シール部に封着された電極芯棒の後端側の長さであるLが、次式を満足する範囲内で選んでいる。
〔式〕:0.2<L/L<0.8
【0037】
【表2】

【0038】
尚、各仕様共に5本のランプを作成して試験を行い、表中の明るさは比較例2の明るさを基準とし、5%以上の明るさが得られたものを○とし、得られないものを×とした。また、強度は落下試験を行い、電極が折れないものを○、電極が折れたものを×とした。そして、総合評価として明るさと強度の評価で両方とも○であったものを○、それ以外を×とした。
【0039】
以上の結果からも前記実験と同様に、
式1:0.3< φ/φ <0.9
の範囲であれば良好な特性が得られた。
前記実験で総合評価が○であったランプのライフテストを行った結果、5000時間時点でとくに問題は無く、5000hでの色変化は0.9以上であった。
更に、式2:0.4< φ/φ <0.8
の範囲であれば、8000時間時点でも特に問題は無く、色温度変化も0.9以上であった。
【0040】
次に、プロジェクタ用として使用される光源装置での実施例について説明する。
図6はプロジェクタの光源装置として使用される光学装置であって、超高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプ17を反射鏡18の光軸に配したランプユニット16である。
【0041】
高圧放電ランプ17は、図6に示すように、石英ガラス製の発光管から成り、中央部に形成された最大外径約10mm、最大内径約4.5mm、内容積約60mmの放電空間内に、同一の形状からなる一対の電極19が1.0mmの電極間距離で対向して配置されると共に、水銀が約0.18mg/mm、始動用補助ガスの希ガス(アルゴン)が約20kPa(常温時)と、黒化防止のための微量のハロゲンが封入されて、定格150Wに設計されている。
【0042】
そして、各電極19は、放電空間の両端を気密に封止する封止部20に埋設されたモリブデン箔21を介して電力供給用リード線に接続され、該リード線を通じて点灯装置からランプ電力が供給されるようになっている。
【0043】
また、図7の(b)は図6で示す同一形状からなる前記一対の電極19の拡大図である。なお比較として(a)には電界研磨加工をしていない電極の拡大図を示す。電極19は、前記タングステン加工方法を用いて作られた長さ8mmで直径φ0.7mmからなり、この電極芯捧のうち電極後端部側の約6mmを電解研磨し、細径化した。電解研磨を行った約6mmのうち、3.5mmを発光管へシールする。そして、電極芯捧の電解研磨をしていない部分の径(Φ)は0.7mmであり、それに対して放電空間とシール部の境部分の電極芯捧の径(Φ)とし、この電極芯捧の径(Φ)を0.6mm、0.4mm、0.2mmと変化させている。比較として、電解研磨による加工を施していない電極を準備した。また図5には上記した電極の電界研磨部分、発光管へのシール位置、Φ、Φの位置関係を示している。なお、Oを境にA側が発光管へシールされている部分であり、B側が放電空間部となる。
【0044】
電極先端部には直径φ0.26mmのタングステン線を7回巻きまわしたコイル部23を形成している。更に電極芯棒22とコイル状のタングステン線の一部が一体的に溶着されるように溶融加工を施してある。
【0045】
以上のランプユニット16と比較のため、本例と電極芯棒の細径部の径だけを変化させたランプユニットと共にプロジェクタに組み込み評価を行った。
尚、各仕様共に5本のランプを作成して試験を行い、評価基準は前記実験と同様である。この結果を表3に示す。但し、電極芯棒の全長をLと発光管シール部に封着された電極芯棒の後端側の長さをLとした時、上記ランプはLを8mm、Lを3.5mmとして、L/L=0.44となるようにしている。これは、L/Lが0.8より大きいとシール部に封着された後端側の電極芯棒の放熱効果が大きくなり、電極先端部の蓄熱効果が得られなくなる。また、L/Lが0.2より小さいと振動等が加わった際に電極折れが生じるという結果が事前に行なった実験で得られているため、電極芯棒の全長であるLと発光管シール部に封着された電極芯棒の後端側の長さであるLが、次式を満足する範囲内で選んでいる。
〔式〕:0.2<L/L<0.8
【0046】
【表3】

【0047】
前記実験同様に
式1:0.3< φ/φ <0.9
の範囲であれば、強度並びに明るさにおいて問題は無く、良好な特性が得られた。
また、前記実験で問題の無かったランプのライフテストを行った結果、3000時間時点で使用上の問題は無かった。
更に、
式2:0.4< φ/φ <0.8
の範囲であれば、5000時間時点でも使用上の問題は無く、良好な結果が得られた。
以上の事から本発明の範囲で細径部を成形した主にタングステンからなるタングステン棒を放電ランプの電極芯棒として用いる事で、効率が良く、寿命の長い放電ランプを得る事ができた。また、本発明の加工方法では、細径化されたタングステン棒を安価に製造でき、更に十分な強度を得る事ができる。
【0048】
尚、本発明は一般照明用放電ランプやプロジェクタ用放電ランプに限らず、その他の用途の放電ランプにも適用可能である。また、酸化トリウムや酸化セリウムなどを数%以下含んだタングステン棒においても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電極は一般照明用のランプや特殊用ランプなど各種放電ランプに用いる事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るタングステンの加工方法を示す説明図実施の形態を示す正面図である。
【図2】加工したタングステン棒(電極芯棒)の例を示す図である。
【図3】本発明に係る一般照明用放電ランプの実施の形態を示す概略面図である。
【図4】同一形状からなる前記一対の主電極15a,15bの拡大図である。
【図5】電界研磨を行った電極を発光管に装着したときの位置関係を示す図。
【図6】プロジェクタの光源装置として使用される光学装置した照明器具の他の実施の形態。
【図7】プロジェクタに使用されるランプの本発明の電極の拡大図。
【符号の説明】
【0051】
1 タングステン棒
2 銅板
3 電解液
4 加工部
5 高圧放電ランプ
6 始動器
7 発光管
8a、8b 電極
9 電極
10a、10b 保温膜
11 口金
12 外球
13 抵抗
14 電極芯捧
15 コイル部
16 ランプユニット
17 高圧放電ランプ
18 反射鏡
19 電極
20 封止部
21 モリブデン箔
22 電極芯棒
23 コイル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の両端に一対の電極を封着し、該電極は少なくとも電極芯棒の先端部が発光管の放電空間内に突出し、他端部が封着部に埋設された発光管からなる放電ランプにおいて、前記少なくとも一方の電極の電極芯棒は、少なくとも細径部が形成されており、前記放電空間内に突出する先端部側から前記封着部に埋設される他端部側にかけて電解研磨によりテーパー状に漸次細径化されると共に、該研磨面は平滑化されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記電極芯棒の先端部は、コイル部が形成されており、該電極芯棒の細径部はコイル部の終端部から他端部側にかけて、電解研磨によりテーパー状に漸次細径化されると共に、平滑面を有することを特徴とする請求項1記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記発光管内に突出した電極芯棒の先端部側に形成されたテーパー部の最大径(Φ)
と他端部側の発光管封着部と放電空間部との境界に形成された該電極の径(Φ)とが式1の関係を有することを特徴とする請求項1項または2項記載の放電ランプ。
〔式1〕:0.3<Φ/Φ<0.9
【請求項4】
前記発光管内に突出した電極芯棒の先端部側に形成されたテーパー部の最大径(Φ)
と他端部側の発光管封着部と放電空間との境界に形成された該電極の径(Φ)とが式1の関係を有し、
〔式1〕:0.3<Φ/Φ<0.9
かつ、前記電極芯棒の全長(L)と発光管封着部に埋設された電極芯棒の他端部の長さ(L)とが式2の関係を有することを特徴とする請求項1項または2項記載の放電ランプ。
〔式2〕:0.2<L/L<0.8
【請求項5】
請求項1項ないし4項記載の放電ランプと、凹面状の反射鏡とからなる投影用光源装置。
【請求項6】
請求項1項ないし4項記載の放電ランプを光源装置として使用することを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項5項記載の光源装置として使用することを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−103199(P2007−103199A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292675(P2005−292675)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】