放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具
【課題】調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置Aは、直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路1と、インバータ回路1の出力間に接続され共振作用により放電灯FLを高周波点灯させる共振回路2と、インバータ回路1の動作周波数を変化させることによって放電灯FLへの出力電圧を変化させる調光部8と、放電灯FLの直流電圧成分を検出する直流成分検出部7と、直流成分検出部7の出力信号を所定周期毎に検出し、当該出力信号が所定の基準値を上回った場合には放電灯FLへの出力を低減もしくは停止させ、上記出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合には上記保護動作を禁止する制御演算部12とを備えている。
【解決手段】放電灯点灯装置Aは、直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路1と、インバータ回路1の出力間に接続され共振作用により放電灯FLを高周波点灯させる共振回路2と、インバータ回路1の動作周波数を変化させることによって放電灯FLへの出力電圧を変化させる調光部8と、放電灯FLの直流電圧成分を検出する直流成分検出部7と、直流成分検出部7の出力信号を所定周期毎に検出し、当該出力信号が所定の基準値を上回った場合には放電灯FLへの出力を低減もしくは停止させ、上記出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合には上記保護動作を禁止する制御演算部12とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電灯を高周波で点灯させる放電灯点灯装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。図10は本従来例の放電灯点灯装置の構成を示す回路図であり、2個のスイッチング素子Q1、Q2からなるハーフブリッジ型のインバータ回路1を備え、直流電源Vdcの両端間にはスイッチング素子Q1、Q2の直列回路が接続されている。また、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と直流電源VdcのグランドGND間には、共振用のインダクタT1およびコンデンサC1の直列回路を有する共振回路2が接続され、さらにコンデンサC1の両端間には共振兼直流阻止用のコンデンサC2を介して負荷である放電灯FLが接続されている。放電灯FLの一方のフィラメントF1は、インダクタL1およびコンデンサC3の直列回路ならびに予熱源n1からなる予熱回路3に接続され、他方のフィラメントF2は、インダクタL2およびコンデンサC4の直列回路ならびに予熱源n2からなる予熱回路3に接続されている。なお、予熱源n1、n2は同じ動作周波数に設定されている。
【0003】
ここにおいて、本従来例の放電灯点灯装置では、調光部8からの調光信号が周波数制御回路5に入力されると、周波数制御回路5によりスイッチング素子Q1、Q2の動作周波数が決定され、スイッチング素子Q1、Q2は、決定した動作周波数で駆動回路6により交互にオン/オフされる。そして、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオン/オフさせることで直流電源Vdcの直流電圧を高周波電圧に変換し、放電灯FLに交番電流を流すことで放電灯FLが高周波点灯するようになっている。ここに、放電灯FLへの給電経路にはインダクタT1およびコンデンサC1、C2からなる共振回路2が接続されており、スイッチング素子Q1、Q2の動作周波数と共振回路2の共振周波数の関係により、放電灯FLへの供給エネルギーを調節できるようになっている。
【0004】
さらに、放電灯FLには直流成分検出部7が並列に接続されており、放電灯FLに正または負の直流電圧成分が発生すると、この電圧に対応する出力信号が電圧比較器ELに対して出力されるようになっている。そして、電圧比較器ELがロー信号を出力する場合にはインバータ回路1は動作を継続し、ハイ信号を出力する場合にはスイッチング素子Q1、Q2の動作周波数を制御することでインバータ回路1の出力を低減あるいは停止させるようになっている。
【0005】
ここで、放電灯FLが寿命末期になり、一方のフィラメントF1(またはフィラメントF2)のエミッタ(電子放射性物質)が消耗して半波放電状態(いわゆるエミレス状態)になると、放電灯FLには直流電圧成分が発生し、直流成分検出部7ではこの直流電圧成分に応じた出力信号を出力する。そして、直流成分検出部7からの出力信号は電圧比較器ELに入力され、この値が基準値Vrefを超えると電圧比較器ELからハイ信号が出力され、インバータ回路1の出力が低減あるいは停止されて回路保護が図られるようになっている。
【0006】
このような回路において、予熱源n1、n2の動作周波数が同じであっても、インダクタL1、L2やコンデンサC3、C4のばらつきなどにより予熱回路3の共振周波数は異なってしまい、そのため調光レベルを変化させた場合のフィラメントF1、F2における常時予熱電流に位相差が生じ、その結果フィラメントF1、F2のスポット移動速度にずれが生じる。そして、フィラメントF1、F2に生じたスポット位置のずれによって、放電灯FLに発生する高周波電圧に直流電圧成分が生じるため、寿命末期の負荷が接続されていない場合であってもこの直流電圧成分により寿命末期であると誤検出し、保護機能が作動する可能性がある。
【0007】
そこで、本従来例では、このような誤動作を回避するため以下の方法をとっている。調光部8から周波数制御回路5に動作周波数を変える調光信号が入力されると、調光信号検出部9は調光信号の変化を検出し、検出信号をタイマー部11に出力する。タイマー部11では、調光信号検出部9からの信号が入力されると、駆動回路10に対してスイッチSW1(例えば、トランジスタなど)をオンにするオン信号を所定時間出力し、スイッチSW1が所定時間オンになる。そして、スイッチSW1をオンにすることで直流成分検出部7からの信号が所定時間ローレベルに固定される。
【0008】
ここで、図11は本従来例のタイミングチャートを示し、調光レベルを変化させていない場合には調光信号検出部9が調光信号の変化を検出しないため、スイッチSW1はオンにならない。そのため、直流成分検出部7からの信号がそのまま電圧比較器ELに入力されるから、寿命末期の放電灯FLが接続されている場合には回路保護が可能である。
【0009】
一方、調光レベルの変化が急峻である場合、直流成分検出部7の時定数によっては、調光信号の変化が終わった後に放電灯FLの直流電圧成分が電圧比較器ELに入力される可能性があるが、タイマー部11の遅延時間が直流成分検出部7の時定数よりも十分長い場合には、調光信号の変化に対し放電灯FLの直流電圧成分が遅れて入力されても、タイマー部11が上記のオン信号を駆動回路10に対して出力するから、上述のような誤動作を回避することができる。
【特許文献1】特開2007−172933号公報(段落[0015]−段落[0022]、及び、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1に示した放電灯点灯装置では、調光レベルが変化した場合に所定時間だけ直流成分検出部7の動作を禁止しており、調光レベルの変化時に生じる直流電圧成分による誤動作を回避できるようになっている。
【0011】
しかしながら、調光レベルが変化すると必ず直流電圧成分が生じるわけではなく、調光レベルを緩やかに変化させた場合には直流電圧成分が生じない。したがって、調光レベルの変化量が比較的小さい場合や明るさセンサなどを利用して微小な調光レベルで変化させる場合や外来ノイズにより調光レベルが変化した場合には直流電圧成分は発生しないが、上述の放電灯点灯装置では調光レベルの変化時に直流成分検出部7の検出動作を禁止するため、放電灯FLの寿命末期時に発生する直流電圧成分を検出できず回路を保護できない場合があった。
【0012】
【表1】
【0013】
ここに、図12および表1は調光レベルを変化させた場合の放電灯の両端に発生する直流電圧成分の測定結果であって、2灯直列点灯方式の放電灯点灯装置において、調光レベルをDim点灯(25%調光点灯)からFull点灯(100%点灯)へ約300msで変化させた場合の放電灯に発生する直流電圧成分のピーク値と、ピーク値に至ったときの調光レベルを放電灯の接続方向を変えて測定するとともに、測定結果を調光レベル毎に並べ替え、各調光レベルにおいて最も大きな直流電圧成分が重畳されたときのピーク値とN数のデータを示している。これらの図12および表1によれば、直流電圧成分の大きさや直流電圧成分が重畳する調光レベルは個々の放電灯のばらつきや接続方向によって様々であることが分かる。なお、本測定において、放電灯としてFHF24SEN形、FHF24SEW形、FHF24SEL形のものを計66本(計33組)用い、常温・常湿の状態で測定を行っている。
【0014】
本従来例では、放電灯の種類や直流成分検出部7の時定数に応じて、直流成分検出部7の動作を禁止する時間を決定しているが、上述のように同じ種類の放電灯であっても個々の特性のばらつき、調光レベルの変化の速さ、灯数、接続方向、温度などの環境条件により、放電灯に発生する直流電圧成分にも大小ばらつきがあり、また直流電圧成分が発生するタイミングや基準電圧値を上回る時間幅も様々である。したがって、本従来例では、直流成分検出部7の動作を禁止する時間幅を十分長く設定する必要があり、その結果調光レベルが変化した場合には、直流成分検出部7の動作を禁止しなくてもいい場合であっても所定時間保護動作を禁止しているため、本来の目的である放電灯FLの寿命末期を検出できない期間が長くなるという問題があった。
【0015】
また、本従来例では、寿命末期の保護機能の誤動作を防止するために、制御回路4が調光部8の調光信号の変化時間よりも長い時間をかけて放電灯FLの出力を変化させており、当然のことながら調光信号の変化時間が長くなると放電灯FLの出力を変化させる時間もさらに長くなるため、調光動作に対するパフォーマンスが低下する虞があった。
【0016】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、少なくとも1つのスイッチング素子を有し直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力間に接続され、共振作用により放電灯を高周波点灯させる共振回路と、インバータ回路の動作を制御する制御回路と、インバータ回路の動作周波数を変化させることによって放電灯への出力電圧を変化させる調光手段と、放電灯の直流電圧成分を検出する直流成分検出手段と、直流成分検出手段の出力信号を所定周期毎に検出し、当該出力信号が所定の基準値を上回ったときにスイッチング素子を制御して放電灯への出力を低減もしくは停止させる保護手段と、直流成分検出手段の出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合に保護手段の動作を禁止する動作禁止手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、動作禁止手段は、出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ出力信号が所定の基準値を超えた場合には、出力信号が所定の基準値を下回るまで保護手段の動作を禁止し、出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ出力信号が所定の基準値を超えない場合には、出力信号の周期変化量が負となるまで保護手段の動作を禁止することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、動作禁止手段は、出力信号の周期変化量から当該出力信号のピーク値を予測し、当該出力信号が所定の基準値を上回っている期間において所定の基準値を予測したピーク値よりも高く設定したことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明は、制御回路、保護手段および動作禁止手段が1つの集積回路部品で構成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を器具本体に内蔵したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、直流成分検出手段から出力される出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合には保護手段による保護動作を禁止することによって、放電灯が寿命末期ではないにも関わらず保護動作を行うのを防止できるから、寿命末期の検出精度を向上させた放電灯点灯装置を提供することができるという効果がある。また、直流成分検出手段からの出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合のみ保護動作を禁止しているので、従来例に比べて保護動作を禁止する期間を短くすることができ、その結果寿命末期を検出する期間を長く設定することができるから、放電灯の寿命末期検出機能を損なわないという効果がある。さらに、従来例のように保護機能の誤動作を防止するために調光信号の変化時間よりも長い時間をかけて放電灯の出力を変化させなくてもいいから、調光動作に対するパフォーマンスの低下を抑制できるという効果がある。
【0023】
請求項2の発明によれば、誤検出を抑制しつつ保護動作を禁止する期間を短くすることができるから、請求項1に比べて放電灯の寿命末期を検出する動作期間を長く設定することができるという効果がある。
【0024】
請求項3の発明によれば、所定の基準値を、出力信号の周期変化量から予測したピーク値よりも高い値に再設定することによって、検出した直流電圧成分が再設定した所定の基準値を超えた場合にはフィラメントが断線したと判断し、保護動作を実行することにより回路保護を図ることができるという効果がある。
【0025】
請求項4の発明によれば、制御回路、保護手段および動作禁止手段を1つの集積回路部品で構成することによって、それぞれを別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができるから、組立工数を削減することができ、その結果コストアップを抑えた放電灯点灯装置を提供することができるという効果がある。
【0026】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を用いることによって、調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない照明器具を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明に係る放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。本発明に係る放電灯点灯装置は、照明器具を構成する放電灯を高周波で点灯させるためのものであり、本発明に係る照明器具は、例えばシステム天井用の照明器具であって、室内などを照明するために用いられる。
【0028】
(実施形態1)
図1は実施形態1の放電灯点灯装置Aの構成を示す回路図であり、2個のスイッチング素子Q1、Q2からなるハーフブリッジ型のインバータ回路1を備え、直流電源Vdcの両端間にはスイッチング素子Q1、Q2の直列回路が接続されている。また、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と直流電源VdcのグランドGND間には、共振用のインダクタT1およびコンデンサC1の直列回路を有する共振回路2が接続され、さらにコンデンサC1の両端間には共振兼直流阻止用のコンデンサC2を介して負荷である放電灯FLが接続されている。放電灯FLの一方のフィラメントF1は、インダクタL1およびコンデンサC3の直列回路ならびに予熱源n1からなる予熱回路3に接続され、他方のフィラメントF2は、インダクタL2およびコンデンサC4の直列回路ならびに予熱源n2からなる予熱回路3に接続されている。なお、本実施形態では、予熱源n1、n2は同じ動作周波数に設定されている。
【0029】
ここにおいて、本実施形態の放電灯点灯装置Aは調光機能を有しており、調光部8(調光手段)からの調光信号が周波数制御回路5に入力されると、周波数制御回路5によりスイッチング素子Q1、Q2の動作周波数が決定され、スイッチング素子Q1、Q2は、決定した動作周波数で駆動回路6により交互にオン/オフされる。そして、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオン/オフさせることで直流電源Vdcの直流電圧を高周波電圧に変換し、放電灯FLに交番電流を流すことで放電灯FLが高周波点灯するようになっている。なお本実施形態では、放電灯FLへの給電経路にインダクタT1およびコンデンサC1、C2からなる共振回路2が接続されているから、スイッチング素子Q1、Q2の動作周波数と共振回路2の共振周波数の関係により、放電灯FLへの供給エネルギーを調節できるようになっている。ここに、本実施形態では、周波数制御回路5および駆動回路6により制御回路4が構成されている。
【0030】
さらに、放電灯FLには直流成分検出部7(直流成分検出手段)が並列に接続されており、直流成分検出部7が放電灯FLに発生する直流電圧成分を検出すると、検出した直流電圧成分に対応する検出信号を後述する制御演算部12に出力するようになっている。
【0031】
制御演算部12は、例えばマイコンからなり、直流成分検出部7からの出力信号を所定周期毎に読み込むとともに読み込んだデータに基づいて所定の演算を実行し、演算結果に応じて周波数制御回路5に信号を出力するようになっている。例えば、制御演算部12の出力信号がロー出力の場合にはインバータ回路1は動作を継続し、出力信号がハイ出力の場合には周波数制御回路5を制御してインバータ回路1の動作周波数を調整し、インバータ回路1の出力を低減あるいは停止させる。
【0032】
ここにおいて、制御演算部12は、直流成分検出部7からの出力信号が予めマイコンに記憶させた基準値Vrefを超えた場合にハイ信号を出力し、インバータ回路1を上記のように保護することになるが、所定周期毎に読み込んだ直流成分検出部7からの出力信号の変化量(周期変化量)が予めマイコンに記憶させた所定値以上となった場合には、検出した直流電圧成分が寿命末期状態における直流電圧成分ではないと判断し、この状態では上記の出力信号が基準値Vrefを超えている場合であっても、制御演算部12はロー信号を出力し、インバータ回路1を上記のように保護しないようになっている。以下、この状態を異常直流成分重畳状態という。
【0033】
また本実施形態では、異常直流成分重畳状態であると判断した後に直流成分検出部7からの出力信号が基準値Vrefを超えた場合には、次に出力信号が基準値Vrefを下回るまでインバータ回路1を保護しないようにし、さらに異常直流成分重畳状態であると判断した後に上記出力信号が基準値Vrefを超えない場合には、上記出力信号の周期変化量がマイナス(負)となるまでインバータ回路1を保護しないように構成されている。ここに、本実施形態では、制御演算部12により保護手段および動作禁止手段が構成されている。
【0034】
ここで、図2は上述した調光部8の外観を示しており、ロータリーボリューム8aおよび切替スイッチ8bを備えている。ロータリーボリューム8aは、調光信号を調光下限レベルから全点灯レベルまで連続的に変化させて連続調光を可能とするものであり、切替スイッチ8bは、スイッチをオン/オフさせることによって調光下限レベルと全点灯レベルとの間で切り替えられるものである。すなわち、調光レベルを調節する調光部8は、連続調光できるものであってもいいし、調光下限レベルと全点灯レベルとの間で切り替えられるものや段調光できるものであってもよい。なお本実施形態では、切替スイッチ8bを用いて調光する場合、調光下限レベルから全点灯レベルまで約300ms程度で切り替えられるようになっている。
【0035】
図3は上記の切替スイッチ8bによって放電灯FLの調光レベルを調光下限レベルから全点灯レベルに切り替える際の各回路の出力波形を示し、図3(a)は直流成分検出部7の出力信号を、図3(b)は調光部8の調光信号をそれぞれ示している。この図によれば、実線aに示すように時刻t1の時点で出力信号の周期変化量が所定値以上になり、この時点から上述した保護動作が禁止される。そして、時刻t2の時点から出力信号が基準値Vrefを超え、時刻t3を過ぎると基準値Vrefを下回っている。すなわち、図3の場合、時刻t1から時刻t3までの期間Taの間、保護動作が禁止されることになる。なおこのとき、調光信号は図3(b)中の実線bに示すように約300msで調光下限レベルから全点灯レベルまで変化する。
【0036】
一方、図4は、調光レベルを調光下限レベルから全点灯レベルに変化させた状態において、直流成分検出部7の出力信号が基準値Vrefを超えない場合を示している。この図によれば、実線cに示すように時刻t1の時点で出力信号の周期変化量が所定値以上になり、この時点から上述した保護動作が禁止される。そして、出力信号が基準値Vrefを超えることなく、時刻t2の時点で出力信号の周期変化量がマイナスになっている。すなわち、図4の場合、時刻t1から時刻t2までの期間Taの間、保護動作が禁止されることになる。なおこのとき、調光信号は図4(b)中の実線dに示すように約300msで調光下限レベルから全点灯レベルまで変化する。
【0037】
【表2】
【0038】
ここで、出力信号の周期変化量の閾値となる所定値の設定方法について説明する。表2は切替スイッチ8bによって調光状態から全点灯状態に切り替える場合の調光状態のスタート値と、スタート値に対応する直流電圧成分のピーク値の測定結果を示しており、調光レベルのスタート値が40%の場合には直流電圧成分は重畳せず、調光レベルのスタート値が35%以下では6.2V以上の直流電圧成分が重畳することが分かる。
【0039】
図5は調光レベルを35%から全点灯レベル(すなわち、調光レベル100%)に切り替えた場合の各回路の出力波形を示し、図5(a)は直流成分検出部7の出力信号を、図5(b)は調光部8の調光信号をそれぞれ示している。この図によれば、実線eに示すように時刻t1の時点から出力信号が急激に上昇し(時刻t1の時点では1V)、時刻t1から約20ms経過した時刻t2の時点でピーク値6.2Vとなっていることが分かる。また図示はしていないが、調光レベルのスタート値が30%、25%の場合も同様に約20msでピーク値となっている。したがって、基準値Vref=5.0Vとした場合には、破線fに示すように出力信号のピーク値が基準値Vrefとなる場合の出力信号の変化量(周期変化量)は(5.0−1.0)/20=0.2[V/ms]となり、この値を上記の所定値に設定すればよい。而して、この値より周期変化量が小さい場合(すなわち、傾きが緩やかな場合)には、図4(a)に示すように出力信号が基準値Vrefを超えることがないため、誤検出をすることがない。ここにおいて、制御演算部12の読み込み周期は、約20msの間に10回程度読み込めるように約2ms程度に設定するのが好ましい。
【0040】
而して本実施形態によれば、直流成分検出部7から出力される出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合には制御演算部12による保護動作を禁止することによって、放電灯FLが寿命末期ではないにも関わらず保護動作を行うのを防止できるから、寿命末期の検出精度を向上させた放電灯点灯装置Aを提供することができる。また、出力信号の周期変化量が所定値以上である状態において、出力信号が基準値Vrefを超えた場合には当該出力信号が基準値Vrefを下回ると保護動作を再開し、出力信号が基準値Vrefを超えない場合には出力信号の周期変化量が負になると保護動作を再開しており、誤検出を抑制しつつ保護動作を禁止する期間を短くすることができるから、放電灯FLの寿命末期を検出する動作期間を長く設定することができ、その結果放電灯FLの寿命末期検出機能を損なわないという利点がある。さらに、従来例のように保護機能の誤動作を防止するために調光信号の変化時間よりも長い時間をかけて放電灯FLの出力を変化させなくてもいいから、調光動作に対するパフォーマンスの低下を抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、上述した制御回路4および制御演算部12(保護手段および動作禁止手段)を1つの集積回路部品で構成しており、それぞれを別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができるから、組立工数を削減することができ、その結果コストアップを抑えた放電灯点灯装置Aを提供することができる。
【0042】
(実施形態2)
図6は実施形態2の放電灯点灯装置Aの構成を示す回路図であり、実施形態1では直流成分検出部7において放電灯FLに発生する直流電圧成分のみを検出しているが、本実施形態では直流成分検出部7’が断線検出回路7aを備えており、フィラメントF1、F2の断線も検出できるようになっている。すなわち、フィラメントF1、F2の何れかが断線した場合には、上述した基準値Vrefを大きく超える直流電圧が発生するため、この電圧を検出することでインバータ回路1を保護できるようになっている。なお、それ以外の構成は実施形態1と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0043】
ここで、図7は本実施形態の制御演算部12の動作を示すフローチャートであり、所定周期が経過すると制御演算部12が直流成分検出部7’の出力信号を読み込む(ステップS1)。次に、制御演算部12は今回読み込んだ出力信号値と前回読み込んだ出力信号値とから出力信号の変化量(周期変化量)を算出し(ステップS2)、この周期変化量が所定値以上である場合には(ステップS3)、保護動作を禁止する(ステップS4)。なお、上記周期変化量が所定値未満である場合には(ステップS3)、制御演算部12は保護動作を禁止せずステップS5に移行する。
【0044】
さらに、ステップS5において、前回算出した周期変化量が前々回算出した周期変化量よりも小さい場合には、制御演算部12が過去3回の読み込み値から直流電圧成分のピーク値を予測し(ステップS6)、基準値Vrefをピーク値よりも高い値に設定するとともに(ステップS7)、上述した保護動作の禁止状態を解除する(ステップS8)。そして、制御演算部12が直近の過去3回の読み込み値をメモリ(図示せず)に記憶させた後(ステップ9)、保護動作が禁止されない場合には、制御演算部12は今回の読み込み値と基準値Vrefを比較し、読み込み値が基準値Vrefを超えていると保護動作を実行する。なお、ステップS5において、前回算出した周期変化量が前々回算出した周期変化量以上である場合には、制御演算部12が直近の過去3回の読み込み値をメモリに記憶させた後(ステップS9)、同様に読み込み値と基準値Vrefを比較し、読み込み値が基準値Vrefを超えていると保護動作を実行する。さらに、次の所定周期が経過するとステップS1から同様の処理を実行することになり、以下所定周期毎に上記の動作を繰り返す。
【0045】
すなわち、本実施形態では、制御演算部12が直流成分検出部7からの出力信号を過去3回まで記憶し、前回の周期変化量が前々回の周期変化量を下回ったときに直流電圧成分のピーク値を予測し、基準値Vrefをこのピーク値よりも高い値に再設定するとともに、保護動作の禁止状態を解除する点で実施形態1と異なっている。これは、フィラメントF1(またはフィラメントF2)が断線した場合、直流電圧成分がピーク値を大きく超えるため基準値Vrefをピーク値よりも高く再設定し、さらにインバータ回路1を保護するために保護動作の禁止状態を解除するのである。なお、本実施形態では、直流成分検出部7’からの出力信号が元の基準値Vrefを下回った場合には、基準値Vrefを再び元の基準値Vref(すなわち、寿命末期状態を検出するための基準値)に再設定している。
【0046】
ここで、図8(a)(b)は切替スイッチ8b(図2参照)によって放電灯FLの調光レベルを調光下限レベルから全点灯レベルに切り替える際の各回路の出力波形を示し、図8(a)は直流成分検出部7’の出力信号を、図8(b)は調光部8の調光信号をそれぞれ示している。この図によれば、実線hに示すように時刻t1の時点で出力信号の周期変化量が所定値以上になり、この時点から保護動作が禁止される。しかし、時刻t2の時点で前回算出した周期変化量が前々回算出した周期変化量を下回っているため、メモリに記憶させた過去3回の読み込み値から制御演算部12が直流電圧成分のピーク値を予測し、基準値Vrefをこのピーク値よりも高い値に再設定するとともに、保護動作の禁止状態を解除する。すなわち、本実施例では時刻t1から時刻t2までの期間Taのみ保護動作が禁止されることになる。ここにおいて、異常直流成分が重畳する場合には放物線を描くので、周期変化量が減少したところから3回分の直流電圧成分が分かればピーク値を求めることができるのである。
【0047】
以下に基準値Vrefの設定方法について説明する。例えば図8(c)に示す拡大図において、前回の周期変化量が前々回の周期変化量を下回った時刻t2の時点から、1回目に読み込んだ出力信号値をV1、2回目に読み込んだ出力信号値をV2、3回目に読み込んだ出力信号値をV3、ΔV2=V2−V1、ΔV3=V3−V1、マイコンの読み込み周期をΔtとして2次関数で近似すると、直流電圧成分のピーク値Vp=(4×ΔV2−ΔV3)2/(16×ΔV2−8×Δ3)+V1となる。ここで、V1=3.00[V]、V2=3.50[V]、V3=3.97[V]とすると、Vp=6.42[V]となるから、この場合基準値Vrefを6.5[V]以上に設定すればよい。ここにおいて、瞬間的に直流電圧成分が重畳する場合、重畳時間は実施形態1の実測値から約20ms程度であるから、マイコンの読み込み周期Δtは2ms程度に設定するのが好ましい。また、本実施形態では2次関数で近似しているが、3次関数で近似することでさらに精度よくピーク値を求めることができる。しかしこの場合、計算量が増えるためさらに高速でマイコンを動作させる必要がある点に留意すべきである。
【0048】
而して本実施形態によれば、基準値Vrefを、出力信号の周期変化量から予測したピーク値よりも高い値に再設定することによって、検出した直流電圧成分が再設定した基準値Vrefを超えた場合にはフィラメントF1(またはフィラメントF2)が断線したと判断し、保護動作を実行することによりインバータ回路1の回路保護を図ることができる。
【0049】
(実施形態3)
図9は実施形態3の照明器具Bを示し、実施形態1または実施形態2で説明した放電灯点灯装置Aを用いている。
【0050】
本実施形態の照明器具Bは、2灯調光用の放電灯点灯装置Aが内蔵された矩形状の器具本体13を備え、器具本体1の上面寄りには反射板14、14が横並びに配置され、各反射板14の下側には各放電灯(図示せず)がそれぞれ装着される1組のランプソケット15、15(図9では片側のみ図示)が配置されている。なお、放電灯点灯装置Aの出力端子(図示せず)と各ランプソケット15の間は電線(図示せず)を介して電気的に接続されており、各放電灯には対応するランプソケット15を介して点灯電力が供給される。
【0051】
而して本実施形態によれば、実施形態1または実施形態2で説明した放電灯点灯装置Aを用いることによって、調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない照明器具Bを提供することができる。
【0052】
なお本実施形態では、放電灯点灯装置として2灯調光用の放電灯点灯装置Aを例に説明したが、放電灯点灯装置は本実施形態に限定されるものではなく、例えば1灯調光用の放電灯点灯装置を2台内蔵するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図2】同上に用いられる調光部の正面図である。
【図3】同上のタイミングチャート図である。
【図4】同上の別のタイミングチャート図である。
【図5】同上のさらに別のタイミングチャート図である。
【図6】実施形態2の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図7】同上を構成する制御演算部の動作を説明するフローチャート図である。
【図8】同上のタイミングチャート図である。
【図9】実施形態3の照明器具を示す概略斜視図である。
【図10】従来例の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図11】同上のタイミングチャート図である。
【図12】同上における直流電圧成分と調光レベルの測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 インバータ回路
2 共振回路
4 制御回路
7 直流成分検出部(直流成分検出手段)
8 調光部(調光手段)
12 制御演算部(保護手段、動作禁止手段)
A 放電灯点灯装置
FL 放電灯
Q1、Q2 スイッチング素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電灯を高周波で点灯させる放電灯点灯装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。図10は本従来例の放電灯点灯装置の構成を示す回路図であり、2個のスイッチング素子Q1、Q2からなるハーフブリッジ型のインバータ回路1を備え、直流電源Vdcの両端間にはスイッチング素子Q1、Q2の直列回路が接続されている。また、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と直流電源VdcのグランドGND間には、共振用のインダクタT1およびコンデンサC1の直列回路を有する共振回路2が接続され、さらにコンデンサC1の両端間には共振兼直流阻止用のコンデンサC2を介して負荷である放電灯FLが接続されている。放電灯FLの一方のフィラメントF1は、インダクタL1およびコンデンサC3の直列回路ならびに予熱源n1からなる予熱回路3に接続され、他方のフィラメントF2は、インダクタL2およびコンデンサC4の直列回路ならびに予熱源n2からなる予熱回路3に接続されている。なお、予熱源n1、n2は同じ動作周波数に設定されている。
【0003】
ここにおいて、本従来例の放電灯点灯装置では、調光部8からの調光信号が周波数制御回路5に入力されると、周波数制御回路5によりスイッチング素子Q1、Q2の動作周波数が決定され、スイッチング素子Q1、Q2は、決定した動作周波数で駆動回路6により交互にオン/オフされる。そして、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオン/オフさせることで直流電源Vdcの直流電圧を高周波電圧に変換し、放電灯FLに交番電流を流すことで放電灯FLが高周波点灯するようになっている。ここに、放電灯FLへの給電経路にはインダクタT1およびコンデンサC1、C2からなる共振回路2が接続されており、スイッチング素子Q1、Q2の動作周波数と共振回路2の共振周波数の関係により、放電灯FLへの供給エネルギーを調節できるようになっている。
【0004】
さらに、放電灯FLには直流成分検出部7が並列に接続されており、放電灯FLに正または負の直流電圧成分が発生すると、この電圧に対応する出力信号が電圧比較器ELに対して出力されるようになっている。そして、電圧比較器ELがロー信号を出力する場合にはインバータ回路1は動作を継続し、ハイ信号を出力する場合にはスイッチング素子Q1、Q2の動作周波数を制御することでインバータ回路1の出力を低減あるいは停止させるようになっている。
【0005】
ここで、放電灯FLが寿命末期になり、一方のフィラメントF1(またはフィラメントF2)のエミッタ(電子放射性物質)が消耗して半波放電状態(いわゆるエミレス状態)になると、放電灯FLには直流電圧成分が発生し、直流成分検出部7ではこの直流電圧成分に応じた出力信号を出力する。そして、直流成分検出部7からの出力信号は電圧比較器ELに入力され、この値が基準値Vrefを超えると電圧比較器ELからハイ信号が出力され、インバータ回路1の出力が低減あるいは停止されて回路保護が図られるようになっている。
【0006】
このような回路において、予熱源n1、n2の動作周波数が同じであっても、インダクタL1、L2やコンデンサC3、C4のばらつきなどにより予熱回路3の共振周波数は異なってしまい、そのため調光レベルを変化させた場合のフィラメントF1、F2における常時予熱電流に位相差が生じ、その結果フィラメントF1、F2のスポット移動速度にずれが生じる。そして、フィラメントF1、F2に生じたスポット位置のずれによって、放電灯FLに発生する高周波電圧に直流電圧成分が生じるため、寿命末期の負荷が接続されていない場合であってもこの直流電圧成分により寿命末期であると誤検出し、保護機能が作動する可能性がある。
【0007】
そこで、本従来例では、このような誤動作を回避するため以下の方法をとっている。調光部8から周波数制御回路5に動作周波数を変える調光信号が入力されると、調光信号検出部9は調光信号の変化を検出し、検出信号をタイマー部11に出力する。タイマー部11では、調光信号検出部9からの信号が入力されると、駆動回路10に対してスイッチSW1(例えば、トランジスタなど)をオンにするオン信号を所定時間出力し、スイッチSW1が所定時間オンになる。そして、スイッチSW1をオンにすることで直流成分検出部7からの信号が所定時間ローレベルに固定される。
【0008】
ここで、図11は本従来例のタイミングチャートを示し、調光レベルを変化させていない場合には調光信号検出部9が調光信号の変化を検出しないため、スイッチSW1はオンにならない。そのため、直流成分検出部7からの信号がそのまま電圧比較器ELに入力されるから、寿命末期の放電灯FLが接続されている場合には回路保護が可能である。
【0009】
一方、調光レベルの変化が急峻である場合、直流成分検出部7の時定数によっては、調光信号の変化が終わった後に放電灯FLの直流電圧成分が電圧比較器ELに入力される可能性があるが、タイマー部11の遅延時間が直流成分検出部7の時定数よりも十分長い場合には、調光信号の変化に対し放電灯FLの直流電圧成分が遅れて入力されても、タイマー部11が上記のオン信号を駆動回路10に対して出力するから、上述のような誤動作を回避することができる。
【特許文献1】特開2007−172933号公報(段落[0015]−段落[0022]、及び、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1に示した放電灯点灯装置では、調光レベルが変化した場合に所定時間だけ直流成分検出部7の動作を禁止しており、調光レベルの変化時に生じる直流電圧成分による誤動作を回避できるようになっている。
【0011】
しかしながら、調光レベルが変化すると必ず直流電圧成分が生じるわけではなく、調光レベルを緩やかに変化させた場合には直流電圧成分が生じない。したがって、調光レベルの変化量が比較的小さい場合や明るさセンサなどを利用して微小な調光レベルで変化させる場合や外来ノイズにより調光レベルが変化した場合には直流電圧成分は発生しないが、上述の放電灯点灯装置では調光レベルの変化時に直流成分検出部7の検出動作を禁止するため、放電灯FLの寿命末期時に発生する直流電圧成分を検出できず回路を保護できない場合があった。
【0012】
【表1】
【0013】
ここに、図12および表1は調光レベルを変化させた場合の放電灯の両端に発生する直流電圧成分の測定結果であって、2灯直列点灯方式の放電灯点灯装置において、調光レベルをDim点灯(25%調光点灯)からFull点灯(100%点灯)へ約300msで変化させた場合の放電灯に発生する直流電圧成分のピーク値と、ピーク値に至ったときの調光レベルを放電灯の接続方向を変えて測定するとともに、測定結果を調光レベル毎に並べ替え、各調光レベルにおいて最も大きな直流電圧成分が重畳されたときのピーク値とN数のデータを示している。これらの図12および表1によれば、直流電圧成分の大きさや直流電圧成分が重畳する調光レベルは個々の放電灯のばらつきや接続方向によって様々であることが分かる。なお、本測定において、放電灯としてFHF24SEN形、FHF24SEW形、FHF24SEL形のものを計66本(計33組)用い、常温・常湿の状態で測定を行っている。
【0014】
本従来例では、放電灯の種類や直流成分検出部7の時定数に応じて、直流成分検出部7の動作を禁止する時間を決定しているが、上述のように同じ種類の放電灯であっても個々の特性のばらつき、調光レベルの変化の速さ、灯数、接続方向、温度などの環境条件により、放電灯に発生する直流電圧成分にも大小ばらつきがあり、また直流電圧成分が発生するタイミングや基準電圧値を上回る時間幅も様々である。したがって、本従来例では、直流成分検出部7の動作を禁止する時間幅を十分長く設定する必要があり、その結果調光レベルが変化した場合には、直流成分検出部7の動作を禁止しなくてもいい場合であっても所定時間保護動作を禁止しているため、本来の目的である放電灯FLの寿命末期を検出できない期間が長くなるという問題があった。
【0015】
また、本従来例では、寿命末期の保護機能の誤動作を防止するために、制御回路4が調光部8の調光信号の変化時間よりも長い時間をかけて放電灯FLの出力を変化させており、当然のことながら調光信号の変化時間が長くなると放電灯FLの出力を変化させる時間もさらに長くなるため、調光動作に対するパフォーマンスが低下する虞があった。
【0016】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、少なくとも1つのスイッチング素子を有し直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力間に接続され、共振作用により放電灯を高周波点灯させる共振回路と、インバータ回路の動作を制御する制御回路と、インバータ回路の動作周波数を変化させることによって放電灯への出力電圧を変化させる調光手段と、放電灯の直流電圧成分を検出する直流成分検出手段と、直流成分検出手段の出力信号を所定周期毎に検出し、当該出力信号が所定の基準値を上回ったときにスイッチング素子を制御して放電灯への出力を低減もしくは停止させる保護手段と、直流成分検出手段の出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合に保護手段の動作を禁止する動作禁止手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、動作禁止手段は、出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ出力信号が所定の基準値を超えた場合には、出力信号が所定の基準値を下回るまで保護手段の動作を禁止し、出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ出力信号が所定の基準値を超えない場合には、出力信号の周期変化量が負となるまで保護手段の動作を禁止することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、動作禁止手段は、出力信号の周期変化量から当該出力信号のピーク値を予測し、当該出力信号が所定の基準値を上回っている期間において所定の基準値を予測したピーク値よりも高く設定したことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明は、制御回路、保護手段および動作禁止手段が1つの集積回路部品で構成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を器具本体に内蔵したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、直流成分検出手段から出力される出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合には保護手段による保護動作を禁止することによって、放電灯が寿命末期ではないにも関わらず保護動作を行うのを防止できるから、寿命末期の検出精度を向上させた放電灯点灯装置を提供することができるという効果がある。また、直流成分検出手段からの出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合のみ保護動作を禁止しているので、従来例に比べて保護動作を禁止する期間を短くすることができ、その結果寿命末期を検出する期間を長く設定することができるから、放電灯の寿命末期検出機能を損なわないという効果がある。さらに、従来例のように保護機能の誤動作を防止するために調光信号の変化時間よりも長い時間をかけて放電灯の出力を変化させなくてもいいから、調光動作に対するパフォーマンスの低下を抑制できるという効果がある。
【0023】
請求項2の発明によれば、誤検出を抑制しつつ保護動作を禁止する期間を短くすることができるから、請求項1に比べて放電灯の寿命末期を検出する動作期間を長く設定することができるという効果がある。
【0024】
請求項3の発明によれば、所定の基準値を、出力信号の周期変化量から予測したピーク値よりも高い値に再設定することによって、検出した直流電圧成分が再設定した所定の基準値を超えた場合にはフィラメントが断線したと判断し、保護動作を実行することにより回路保護を図ることができるという効果がある。
【0025】
請求項4の発明によれば、制御回路、保護手段および動作禁止手段を1つの集積回路部品で構成することによって、それぞれを別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができるから、組立工数を削減することができ、その結果コストアップを抑えた放電灯点灯装置を提供することができるという効果がある。
【0026】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を用いることによって、調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない照明器具を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明に係る放電灯点灯装置およびそれを用いた照明器具の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。本発明に係る放電灯点灯装置は、照明器具を構成する放電灯を高周波で点灯させるためのものであり、本発明に係る照明器具は、例えばシステム天井用の照明器具であって、室内などを照明するために用いられる。
【0028】
(実施形態1)
図1は実施形態1の放電灯点灯装置Aの構成を示す回路図であり、2個のスイッチング素子Q1、Q2からなるハーフブリッジ型のインバータ回路1を備え、直流電源Vdcの両端間にはスイッチング素子Q1、Q2の直列回路が接続されている。また、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と直流電源VdcのグランドGND間には、共振用のインダクタT1およびコンデンサC1の直列回路を有する共振回路2が接続され、さらにコンデンサC1の両端間には共振兼直流阻止用のコンデンサC2を介して負荷である放電灯FLが接続されている。放電灯FLの一方のフィラメントF1は、インダクタL1およびコンデンサC3の直列回路ならびに予熱源n1からなる予熱回路3に接続され、他方のフィラメントF2は、インダクタL2およびコンデンサC4の直列回路ならびに予熱源n2からなる予熱回路3に接続されている。なお、本実施形態では、予熱源n1、n2は同じ動作周波数に設定されている。
【0029】
ここにおいて、本実施形態の放電灯点灯装置Aは調光機能を有しており、調光部8(調光手段)からの調光信号が周波数制御回路5に入力されると、周波数制御回路5によりスイッチング素子Q1、Q2の動作周波数が決定され、スイッチング素子Q1、Q2は、決定した動作周波数で駆動回路6により交互にオン/オフされる。そして、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオン/オフさせることで直流電源Vdcの直流電圧を高周波電圧に変換し、放電灯FLに交番電流を流すことで放電灯FLが高周波点灯するようになっている。なお本実施形態では、放電灯FLへの給電経路にインダクタT1およびコンデンサC1、C2からなる共振回路2が接続されているから、スイッチング素子Q1、Q2の動作周波数と共振回路2の共振周波数の関係により、放電灯FLへの供給エネルギーを調節できるようになっている。ここに、本実施形態では、周波数制御回路5および駆動回路6により制御回路4が構成されている。
【0030】
さらに、放電灯FLには直流成分検出部7(直流成分検出手段)が並列に接続されており、直流成分検出部7が放電灯FLに発生する直流電圧成分を検出すると、検出した直流電圧成分に対応する検出信号を後述する制御演算部12に出力するようになっている。
【0031】
制御演算部12は、例えばマイコンからなり、直流成分検出部7からの出力信号を所定周期毎に読み込むとともに読み込んだデータに基づいて所定の演算を実行し、演算結果に応じて周波数制御回路5に信号を出力するようになっている。例えば、制御演算部12の出力信号がロー出力の場合にはインバータ回路1は動作を継続し、出力信号がハイ出力の場合には周波数制御回路5を制御してインバータ回路1の動作周波数を調整し、インバータ回路1の出力を低減あるいは停止させる。
【0032】
ここにおいて、制御演算部12は、直流成分検出部7からの出力信号が予めマイコンに記憶させた基準値Vrefを超えた場合にハイ信号を出力し、インバータ回路1を上記のように保護することになるが、所定周期毎に読み込んだ直流成分検出部7からの出力信号の変化量(周期変化量)が予めマイコンに記憶させた所定値以上となった場合には、検出した直流電圧成分が寿命末期状態における直流電圧成分ではないと判断し、この状態では上記の出力信号が基準値Vrefを超えている場合であっても、制御演算部12はロー信号を出力し、インバータ回路1を上記のように保護しないようになっている。以下、この状態を異常直流成分重畳状態という。
【0033】
また本実施形態では、異常直流成分重畳状態であると判断した後に直流成分検出部7からの出力信号が基準値Vrefを超えた場合には、次に出力信号が基準値Vrefを下回るまでインバータ回路1を保護しないようにし、さらに異常直流成分重畳状態であると判断した後に上記出力信号が基準値Vrefを超えない場合には、上記出力信号の周期変化量がマイナス(負)となるまでインバータ回路1を保護しないように構成されている。ここに、本実施形態では、制御演算部12により保護手段および動作禁止手段が構成されている。
【0034】
ここで、図2は上述した調光部8の外観を示しており、ロータリーボリューム8aおよび切替スイッチ8bを備えている。ロータリーボリューム8aは、調光信号を調光下限レベルから全点灯レベルまで連続的に変化させて連続調光を可能とするものであり、切替スイッチ8bは、スイッチをオン/オフさせることによって調光下限レベルと全点灯レベルとの間で切り替えられるものである。すなわち、調光レベルを調節する調光部8は、連続調光できるものであってもいいし、調光下限レベルと全点灯レベルとの間で切り替えられるものや段調光できるものであってもよい。なお本実施形態では、切替スイッチ8bを用いて調光する場合、調光下限レベルから全点灯レベルまで約300ms程度で切り替えられるようになっている。
【0035】
図3は上記の切替スイッチ8bによって放電灯FLの調光レベルを調光下限レベルから全点灯レベルに切り替える際の各回路の出力波形を示し、図3(a)は直流成分検出部7の出力信号を、図3(b)は調光部8の調光信号をそれぞれ示している。この図によれば、実線aに示すように時刻t1の時点で出力信号の周期変化量が所定値以上になり、この時点から上述した保護動作が禁止される。そして、時刻t2の時点から出力信号が基準値Vrefを超え、時刻t3を過ぎると基準値Vrefを下回っている。すなわち、図3の場合、時刻t1から時刻t3までの期間Taの間、保護動作が禁止されることになる。なおこのとき、調光信号は図3(b)中の実線bに示すように約300msで調光下限レベルから全点灯レベルまで変化する。
【0036】
一方、図4は、調光レベルを調光下限レベルから全点灯レベルに変化させた状態において、直流成分検出部7の出力信号が基準値Vrefを超えない場合を示している。この図によれば、実線cに示すように時刻t1の時点で出力信号の周期変化量が所定値以上になり、この時点から上述した保護動作が禁止される。そして、出力信号が基準値Vrefを超えることなく、時刻t2の時点で出力信号の周期変化量がマイナスになっている。すなわち、図4の場合、時刻t1から時刻t2までの期間Taの間、保護動作が禁止されることになる。なおこのとき、調光信号は図4(b)中の実線dに示すように約300msで調光下限レベルから全点灯レベルまで変化する。
【0037】
【表2】
【0038】
ここで、出力信号の周期変化量の閾値となる所定値の設定方法について説明する。表2は切替スイッチ8bによって調光状態から全点灯状態に切り替える場合の調光状態のスタート値と、スタート値に対応する直流電圧成分のピーク値の測定結果を示しており、調光レベルのスタート値が40%の場合には直流電圧成分は重畳せず、調光レベルのスタート値が35%以下では6.2V以上の直流電圧成分が重畳することが分かる。
【0039】
図5は調光レベルを35%から全点灯レベル(すなわち、調光レベル100%)に切り替えた場合の各回路の出力波形を示し、図5(a)は直流成分検出部7の出力信号を、図5(b)は調光部8の調光信号をそれぞれ示している。この図によれば、実線eに示すように時刻t1の時点から出力信号が急激に上昇し(時刻t1の時点では1V)、時刻t1から約20ms経過した時刻t2の時点でピーク値6.2Vとなっていることが分かる。また図示はしていないが、調光レベルのスタート値が30%、25%の場合も同様に約20msでピーク値となっている。したがって、基準値Vref=5.0Vとした場合には、破線fに示すように出力信号のピーク値が基準値Vrefとなる場合の出力信号の変化量(周期変化量)は(5.0−1.0)/20=0.2[V/ms]となり、この値を上記の所定値に設定すればよい。而して、この値より周期変化量が小さい場合(すなわち、傾きが緩やかな場合)には、図4(a)に示すように出力信号が基準値Vrefを超えることがないため、誤検出をすることがない。ここにおいて、制御演算部12の読み込み周期は、約20msの間に10回程度読み込めるように約2ms程度に設定するのが好ましい。
【0040】
而して本実施形態によれば、直流成分検出部7から出力される出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合には制御演算部12による保護動作を禁止することによって、放電灯FLが寿命末期ではないにも関わらず保護動作を行うのを防止できるから、寿命末期の検出精度を向上させた放電灯点灯装置Aを提供することができる。また、出力信号の周期変化量が所定値以上である状態において、出力信号が基準値Vrefを超えた場合には当該出力信号が基準値Vrefを下回ると保護動作を再開し、出力信号が基準値Vrefを超えない場合には出力信号の周期変化量が負になると保護動作を再開しており、誤検出を抑制しつつ保護動作を禁止する期間を短くすることができるから、放電灯FLの寿命末期を検出する動作期間を長く設定することができ、その結果放電灯FLの寿命末期検出機能を損なわないという利点がある。さらに、従来例のように保護機能の誤動作を防止するために調光信号の変化時間よりも長い時間をかけて放電灯FLの出力を変化させなくてもいいから、調光動作に対するパフォーマンスの低下を抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、上述した制御回路4および制御演算部12(保護手段および動作禁止手段)を1つの集積回路部品で構成しており、それぞれを別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができるから、組立工数を削減することができ、その結果コストアップを抑えた放電灯点灯装置Aを提供することができる。
【0042】
(実施形態2)
図6は実施形態2の放電灯点灯装置Aの構成を示す回路図であり、実施形態1では直流成分検出部7において放電灯FLに発生する直流電圧成分のみを検出しているが、本実施形態では直流成分検出部7’が断線検出回路7aを備えており、フィラメントF1、F2の断線も検出できるようになっている。すなわち、フィラメントF1、F2の何れかが断線した場合には、上述した基準値Vrefを大きく超える直流電圧が発生するため、この電圧を検出することでインバータ回路1を保護できるようになっている。なお、それ以外の構成は実施形態1と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0043】
ここで、図7は本実施形態の制御演算部12の動作を示すフローチャートであり、所定周期が経過すると制御演算部12が直流成分検出部7’の出力信号を読み込む(ステップS1)。次に、制御演算部12は今回読み込んだ出力信号値と前回読み込んだ出力信号値とから出力信号の変化量(周期変化量)を算出し(ステップS2)、この周期変化量が所定値以上である場合には(ステップS3)、保護動作を禁止する(ステップS4)。なお、上記周期変化量が所定値未満である場合には(ステップS3)、制御演算部12は保護動作を禁止せずステップS5に移行する。
【0044】
さらに、ステップS5において、前回算出した周期変化量が前々回算出した周期変化量よりも小さい場合には、制御演算部12が過去3回の読み込み値から直流電圧成分のピーク値を予測し(ステップS6)、基準値Vrefをピーク値よりも高い値に設定するとともに(ステップS7)、上述した保護動作の禁止状態を解除する(ステップS8)。そして、制御演算部12が直近の過去3回の読み込み値をメモリ(図示せず)に記憶させた後(ステップ9)、保護動作が禁止されない場合には、制御演算部12は今回の読み込み値と基準値Vrefを比較し、読み込み値が基準値Vrefを超えていると保護動作を実行する。なお、ステップS5において、前回算出した周期変化量が前々回算出した周期変化量以上である場合には、制御演算部12が直近の過去3回の読み込み値をメモリに記憶させた後(ステップS9)、同様に読み込み値と基準値Vrefを比較し、読み込み値が基準値Vrefを超えていると保護動作を実行する。さらに、次の所定周期が経過するとステップS1から同様の処理を実行することになり、以下所定周期毎に上記の動作を繰り返す。
【0045】
すなわち、本実施形態では、制御演算部12が直流成分検出部7からの出力信号を過去3回まで記憶し、前回の周期変化量が前々回の周期変化量を下回ったときに直流電圧成分のピーク値を予測し、基準値Vrefをこのピーク値よりも高い値に再設定するとともに、保護動作の禁止状態を解除する点で実施形態1と異なっている。これは、フィラメントF1(またはフィラメントF2)が断線した場合、直流電圧成分がピーク値を大きく超えるため基準値Vrefをピーク値よりも高く再設定し、さらにインバータ回路1を保護するために保護動作の禁止状態を解除するのである。なお、本実施形態では、直流成分検出部7’からの出力信号が元の基準値Vrefを下回った場合には、基準値Vrefを再び元の基準値Vref(すなわち、寿命末期状態を検出するための基準値)に再設定している。
【0046】
ここで、図8(a)(b)は切替スイッチ8b(図2参照)によって放電灯FLの調光レベルを調光下限レベルから全点灯レベルに切り替える際の各回路の出力波形を示し、図8(a)は直流成分検出部7’の出力信号を、図8(b)は調光部8の調光信号をそれぞれ示している。この図によれば、実線hに示すように時刻t1の時点で出力信号の周期変化量が所定値以上になり、この時点から保護動作が禁止される。しかし、時刻t2の時点で前回算出した周期変化量が前々回算出した周期変化量を下回っているため、メモリに記憶させた過去3回の読み込み値から制御演算部12が直流電圧成分のピーク値を予測し、基準値Vrefをこのピーク値よりも高い値に再設定するとともに、保護動作の禁止状態を解除する。すなわち、本実施例では時刻t1から時刻t2までの期間Taのみ保護動作が禁止されることになる。ここにおいて、異常直流成分が重畳する場合には放物線を描くので、周期変化量が減少したところから3回分の直流電圧成分が分かればピーク値を求めることができるのである。
【0047】
以下に基準値Vrefの設定方法について説明する。例えば図8(c)に示す拡大図において、前回の周期変化量が前々回の周期変化量を下回った時刻t2の時点から、1回目に読み込んだ出力信号値をV1、2回目に読み込んだ出力信号値をV2、3回目に読み込んだ出力信号値をV3、ΔV2=V2−V1、ΔV3=V3−V1、マイコンの読み込み周期をΔtとして2次関数で近似すると、直流電圧成分のピーク値Vp=(4×ΔV2−ΔV3)2/(16×ΔV2−8×Δ3)+V1となる。ここで、V1=3.00[V]、V2=3.50[V]、V3=3.97[V]とすると、Vp=6.42[V]となるから、この場合基準値Vrefを6.5[V]以上に設定すればよい。ここにおいて、瞬間的に直流電圧成分が重畳する場合、重畳時間は実施形態1の実測値から約20ms程度であるから、マイコンの読み込み周期Δtは2ms程度に設定するのが好ましい。また、本実施形態では2次関数で近似しているが、3次関数で近似することでさらに精度よくピーク値を求めることができる。しかしこの場合、計算量が増えるためさらに高速でマイコンを動作させる必要がある点に留意すべきである。
【0048】
而して本実施形態によれば、基準値Vrefを、出力信号の周期変化量から予測したピーク値よりも高い値に再設定することによって、検出した直流電圧成分が再設定した基準値Vrefを超えた場合にはフィラメントF1(またはフィラメントF2)が断線したと判断し、保護動作を実行することによりインバータ回路1の回路保護を図ることができる。
【0049】
(実施形態3)
図9は実施形態3の照明器具Bを示し、実施形態1または実施形態2で説明した放電灯点灯装置Aを用いている。
【0050】
本実施形態の照明器具Bは、2灯調光用の放電灯点灯装置Aが内蔵された矩形状の器具本体13を備え、器具本体1の上面寄りには反射板14、14が横並びに配置され、各反射板14の下側には各放電灯(図示せず)がそれぞれ装着される1組のランプソケット15、15(図9では片側のみ図示)が配置されている。なお、放電灯点灯装置Aの出力端子(図示せず)と各ランプソケット15の間は電線(図示せず)を介して電気的に接続されており、各放電灯には対応するランプソケット15を介して点灯電力が供給される。
【0051】
而して本実施形態によれば、実施形態1または実施形態2で説明した放電灯点灯装置Aを用いることによって、調光動作に対するパフォーマンスを損なうことなく、放電灯の寿命末期時の保護機能の誤動作を防止するとともに、放電灯の寿命末期検出機能を損なわない照明器具Bを提供することができる。
【0052】
なお本実施形態では、放電灯点灯装置として2灯調光用の放電灯点灯装置Aを例に説明したが、放電灯点灯装置は本実施形態に限定されるものではなく、例えば1灯調光用の放電灯点灯装置を2台内蔵するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図2】同上に用いられる調光部の正面図である。
【図3】同上のタイミングチャート図である。
【図4】同上の別のタイミングチャート図である。
【図5】同上のさらに別のタイミングチャート図である。
【図6】実施形態2の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図7】同上を構成する制御演算部の動作を説明するフローチャート図である。
【図8】同上のタイミングチャート図である。
【図9】実施形態3の照明器具を示す概略斜視図である。
【図10】従来例の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図11】同上のタイミングチャート図である。
【図12】同上における直流電圧成分と調光レベルの測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 インバータ回路
2 共振回路
4 制御回路
7 直流成分検出部(直流成分検出手段)
8 調光部(調光手段)
12 制御演算部(保護手段、動作禁止手段)
A 放電灯点灯装置
FL 放電灯
Q1、Q2 スイッチング素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのスイッチング素子を有し直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力間に接続され、共振作用により放電灯を高周波点灯させる共振回路と、インバータ回路の動作を制御する制御回路と、インバータ回路の動作周波数を変化させることによって放電灯への出力電圧を変化させる調光手段と、放電灯の直流電圧成分を検出する直流成分検出手段と、直流成分検出手段の出力信号を所定周期毎に検出し、当該出力信号が所定の基準値を上回ったときに前記スイッチング素子を制御して放電灯への出力を低減もしくは停止させる保護手段と、直流成分検出手段の出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合に保護手段の動作を禁止する動作禁止手段とを備えたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記動作禁止手段は、前記出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ前記出力信号が前記所定の基準値を超えた場合には、前記出力信号が前記所定の基準値を下回るまで前記保護手段の動作を禁止し、前記出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ前記出力信号が前記所定の基準値を超えない場合には、前記出力信号の周期変化量が負となるまで前記保護手段の動作を禁止することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記動作禁止手段は、前記出力信号の周期変化量から当該出力信号のピーク値を予測し、当該出力信号が前記所定の基準値を上回っている期間において前記所定の基準値を予測した前記ピーク値よりも高く設定したことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路、前記保護手段および前記動作禁止手段が1つの集積回路部品で構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を器具本体に内蔵したことを特徴とする照明器具。
【請求項1】
少なくとも1つのスイッチング素子を有し直流電圧を高周波電圧に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力間に接続され、共振作用により放電灯を高周波点灯させる共振回路と、インバータ回路の動作を制御する制御回路と、インバータ回路の動作周波数を変化させることによって放電灯への出力電圧を変化させる調光手段と、放電灯の直流電圧成分を検出する直流成分検出手段と、直流成分検出手段の出力信号を所定周期毎に検出し、当該出力信号が所定の基準値を上回ったときに前記スイッチング素子を制御して放電灯への出力を低減もしくは停止させる保護手段と、直流成分検出手段の出力信号の周期変化量が所定値以上となった場合に保護手段の動作を禁止する動作禁止手段とを備えたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記動作禁止手段は、前記出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ前記出力信号が前記所定の基準値を超えた場合には、前記出力信号が前記所定の基準値を下回るまで前記保護手段の動作を禁止し、前記出力信号の周期変化量が所定値以上となり且つ前記出力信号が前記所定の基準値を超えない場合には、前記出力信号の周期変化量が負となるまで前記保護手段の動作を禁止することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記動作禁止手段は、前記出力信号の周期変化量から当該出力信号のピーク値を予測し、当該出力信号が前記所定の基準値を上回っている期間において前記所定の基準値を予測した前記ピーク値よりも高く設定したことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路、前記保護手段および前記動作禁止手段が1つの集積回路部品で構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を器具本体に内蔵したことを特徴とする照明器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−9862(P2010−9862A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166218(P2008−166218)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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